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特許7348750情報表示システムとそれを利用した車両用情報表示システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-12
(45)【発行日】2023-09-21
(54)【発明の名称】情報表示システムとそれを利用した車両用情報表示システム
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/01 20060101AFI20230913BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20230913BHJP
   G03B 21/00 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
G02B27/01
B60K35/00 A
G03B21/00 E
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2019102049
(22)【出願日】2019-05-31
(65)【公開番号】P2020197564
(43)【公開日】2020-12-10
【審査請求日】2022-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000005810
【氏名又は名称】マクセル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平田 浩二
(72)【発明者】
【氏名】藤田 浩司
(72)【発明者】
【氏名】杉山 寿紀
(72)【発明者】
【氏名】高木 栄治
【審査官】鈴木 俊光
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-208583(JP,A)
【文献】特開2019-003081(JP,A)
【文献】特表2009-500662(JP,A)
【文献】国際公開第2015/170406(WO,A1)
【文献】特開平09-033856(JP,A)
【文献】特表平03-505489(JP,A)
【文献】特開2010-079197(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0023315(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0079218(US,A1)
【文献】特開平06-160638(JP,A)
【文献】特開2007-317665(JP,A)
【文献】特開2018-059965(JP,A)
【文献】特開平10-011031(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01
B60K 35/00
G02F 1/1335
G02F 1/13357
G03B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空間を構成する透明な被投写部材を介して映像を前記空間の内部または外部に対して一方向に表示する情報表示システムであって、
前記空間の内部に配置され、光源からの光束を変調して映像光を生成して投写する映像投写装置と、
前記被投写部材の一部に設定された表示領域の内側面に設けられた透明シートと、
前記映像投写装置からの前記映像光の方向を前記表示領域の前記透明シートに向ける光方向変換手段と、
前記映像投写装置からの映像光の出射方向を屈折により変化させる形状とされている前記光方向変換手段の光出射面側に設けられた保護カバーと、を備え、
前記映像投写装置は、映像光特性変換手段を備えており、
前記映像光特性変換手段は、前記映像投写装置を構成する前記光源から前記映像光特性変換手段へ入射するの拡散角度より前記映像光特性変換手段から出射するの拡散角度の方が小さく、かつ特定の偏波成分からなるへ変換するように構成されている、情報表示システム。
【請求項2】
請求項1に記載の情報表示システムにおいて、
前記映像投写装置の前記映像光特性変換手段は、前記映像光の拡散分布を制御するレンチキュラーレンズと偏光板を備えている、情報表示システム。
【請求項3】
請求項1に記載の情報表示システムにおいて、
前記光方向変換手段は、リニアフレネルレンズにより形成されている、情報表示システム。
【請求項4】
請求項1に記載の情報表示システムにおいて、
前記空間は、前記透明な被投写部材により仕切られており、前記空間は店舗である、情報表示システム。
【請求項5】
請求項1に記載の情報表示システムにおいて、
前記映像投写装置は、単数の液晶パネルまたは複数枚の液晶表示パネルを組み合わせて構成されている、情報表示システム。
【請求項6】
請求項1に記載の情報表示システムにおいて、
前記透明シートは、位相差板、特定の偏波を吸収する吸収型偏光板、光拡散作用を有した透明拡散シート材を含み、前記光方向変換手段によってその方向が変換された前記映像光を、前記空間の内部または外部に向けて投写する、情報表示システム。
【請求項7】
請求項1に記載の情報表示システムにおいて、
前記映像投写装置を構成する前記光源は、自然光を出射する発散光源を導光体により面光源とし、前記導光体の端面の形状により前記発散光源を略平行光束として前記映像光特性変換手段に入射させる、情報表示システム。
【請求項8】
請求項1に記載の情報表示システムにおいて、
前記保護カバーは、
基材と、
前記保護カバーの光入射面に設けられ、特定の偏波成分を吸収または反射する偏光膜と、
前記基材と前記特定の偏波成分を吸収または反射する偏光膜との間に波長板と、を備えている、情報表示システム。
【請求項9】
車両を構成する透明な被投写部材の一部を表示領域として利用し、情報を前記車両の内部または外部に表示する車両用情報表示システムであって、
前記車両の内部に設けられ、光源からの光束を変調して前記情報の映像光を投写する映像投写装置と、
前記被投写部材の一部に設定された前記表示領域の内側面に設けられた透明シートと、
前記映像投写装置からの前記映像光の方向を前記透明シートに向けて変換する光方向変換手段と、
前記映像投写装置からの映像光の出射方向を屈折により変化させる形状とされている前記光方向変換手段の光出射面側に設けられた保護カバーと、を備え、
前記映像投写装置は、映像光特性変換手段を備えており、
前記映像光特性変換手段は、前記映像投写装置を構成する前記光源から前記映像光特性変換手段へ入射するの拡散角度より前記映像光特性変換手段から出射するの拡散角度の方が小さく、かつ特定の偏波成分からなるへ変換するように構成されている、車両用情報表示システム。
【請求項10】
請求項9に記載の車両用情報表示システムにおいて、
前記映像投写装置の前記映像光特性変換手段は、前記映像光の拡散分布を制御するレンチキュラーレンズと偏光板を備えている、車両用情報表示システム。
【請求項11】
請求項9に記載の車両用情報表示システムにおいて、
前記光方向変換手段は、リニアフレネルレンズにより形成されている、車両用情報表示システム。
【請求項12】
請求項9に記載の車両用情報表示システムにおいて、
映像光を投写する前記映像投写装置は、前記車両の天井部分に取り付けられている、車両用情報表示システム。
【請求項13】
請求項9に記載の車両用情報表示システムにおいて、
前記映像投写装置は、単数または複数枚の液晶表示パネルを組み合わせて構成されている、車両用情報表示システム。
【請求項14】
請求項9に記載の車両用情報表示システムにおいて、
前記透明シートは、位相差板、特定の偏波を吸収する吸収型偏光板、光拡散作用を有した透明拡散シート材を含み、
前記光方向変換手段によって、その方向が変換された前記映像光を、前記車両の内部または外部に向けて投写する、車両用情報表示システム。
【請求項15】
請求項9に記載の車両用情報表示システムにおいて、
前記保護カバーは、
基材と、
前記保護カバーの光入射面に設けられ、特定の偏波成分を吸収または反射する偏光膜と、
前記基材と前記特定の偏波成分を吸収または反射するための部材との間に波長板と、を備えている、車両用情報表示システム。
【請求項16】
請求項14記載の車両用情報表示システムにおいて、
前記透明シートは、前記光方向変換手段によって、その方向が変換された前記映像光を反射することにより、前記車両の内部に向けて投射する、車両用情報表示システム。
【請求項17】
請求項14に記載の車両用情報表示システムにおいて、
前記透明シートは、前記光方向変換手段によって、その方向が変換された前記映像光を透過することにより、前記車両の外部に向けて投射する、車両用情報表示システム。
【請求項18】
請求項9に記載の車両用情報表示システムにおいて、
前記被投写部材は、フロントガラスであることを特徴とする車両用情報表示システム。
【請求項19】
請求項18に記載の車両用情報表示システムにおいて、
前記フロントガラスでは、前記車両用情報表示システムを複数利用することにより、前記映像光を、前記車両の内部および外部に向けて投射するように構成されている、車両用情報表示システム。
【請求項20】
請求項18に記載の車両用情報表示システムにおいて、
ヘッドアップディスプレイ装置を搭載して構成されている、車両用情報表示システム。
【請求項21】
請求項9に記載の車両用情報表示システムにおいて、
前記被投写部材は、リアガラスまたはサイドガラスである、車両用情報表示システム。
【請求項22】
請求項21に記載の車両用情報表示システムにおいて、
前記リアガラスまたは前記サイドガラスでは、1つまたはそれ以上の前記車両用情報表示システムを利用することにより、前記映像光を、前記車両の外部に向けて投射するように構成されている、車両用情報表示システム。
【請求項23】
請求項9に記載の車両用情報表示システムにおいて、
前記映像投写装置は、複数枚の液晶表示パネルを組み合わせて構成されている、車両用情報表示システム。
【請求項24】
請求項9に記載の車両用情報表示システムにおいて、
前記映像投写装置を構成する前記光源は、自然光を出射する発散光源を導光体により面光源とし、前記導光体の端面の形状により前記発散光源を略平行光束として前記映像光特性変換手段に入射させる、車両用情報表示システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、ショーウインドウのガラス等の空間を仕切る透明な部材を介して反射または透過して店舗(空間)の内部または外部に映像を表示することが可能な情報表示システムに関し、更には、かかる情報表示システムにより自動車や電車や航空機等(以下では、総称して「車両」と言う)のフロントガラスやリアガラスやサイドガラス、または、コンバイナなどに映像光を投射して、車両の内部または外部に表示することが可能な車両用情報表示システムに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の情報表示システムとして、一般的に、透明または反射型スクリーンを用いて映像を表示することは既に知られており、例えば、以下の特許文献1および特許文献2によれば、バインダや微粒子を含む光拡散層を備えた透明または反射型スクリーンは、既に知られている。
【0003】
一方、車両用途の情報映像装置とそれを利用した情報表示システムについては、自動車のフロントガラスやコンバイナに映像光を投射して虚像を形成し、ルート情報や渋滞情報などの交通情報や燃料残量や冷却水温度等の自動車情報を表示する、いわゆる、ヘッドアップディスプレイ(HUD:Head-Up-Display)装置が、例えば、以下の特許文献3などにより既に知られている。なお、この種の情報表示装置においては、一般的に、運転者の視点の移動を低減することを目的として映像情報を虚像として監視可能とするため、映像表示装置に表示された映像を、凹面ミラー(凸レンズの作用)を含む光学系を用いて運転者の視点に投射するものが多く採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6133522号公報
【文献】特許第6199530号公報
【文献】特開2015-194707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来技術である拡大投影型の情報表示システムや装置では、映像光を観察者に対して効率良く届けて光の利用効率を向上することに関しては考慮されておらず、その結果、システムや装置の光源を含む映像投写装置による消費電力を低減することが難しいという第一の課題があった。
【0006】
また、ヘッドアップディスプレイ等に代表される車両用の情報表示装置では、運転者から車両外部の視界を妨げることのないよう、虚像であるAR(Augmented-Reality=拡張現実)情報を表示するが、例えば、地図などの情報を表示する場合には、高解像度で視認性が高いことも要求されている。そのため、高品位な映像が容易に得られ、かつ、安価であることから、液晶表示素子(液晶表示パネル)が用いられることが多いが、一方で、セットの小型化のためには、小型の液晶表示素子が用いられることから、得られる投写画像の解像度が不足し、例えばスマートフォンなどに表示される高解像度な映像を表示するには不向きであるという新たな第二の課題が明確になった。
【0007】
また、かかる従来技術のヘッドアップディスプレイ方式の車両用の情報表示装置では、フロントガラスの傾斜角度が大きい(垂直に近い)場合には、映像装置を配置する場所がステアリングとフロントガラスの間に限られているため、映像装置からの映像光がフロントガラスで反射後に運転者の眼に届かない方向に反射しシステムが成立しないという、設置できる車両の構造要件に制約があるという第三の課題が明確になった。
【0008】
また、かかる従来技術のヘッドアップディスプレイ方式の車両用の情報表示装置は、車両の外部に対して映像情報を表示することを目的とするものではない。そのため、車両の外部に対して映像情報を表示しようとする場合、車両の内部にディスプレイ等の映像表示装置等を搭載し、車両のガラス越しに当該映像情報を表示することが行われる。しかしながら、その場合、これらの映像表示装置が運転者の視界を妨害することとなり、安全運転上も好ましくない。
【0009】
なお、従来技術である特許文献1および特許文献2では、情報表示装置において利用されるバインダや微粒子を含む光拡散層を備えた反射型スクリーンまたは透明スクリーンが開示されているが、映像光を観察者に対して効率良く届けること、即ち、光の利用効率を向上することに関しては考慮されておらず、また、車両における応用やそのための具体的な方法や形態や構成については何ら教示されていない。
【0010】
本発明は、従来の情報表示システムや装置に代え、ショーウインドウのガラス面などでも高解像度な映像情報が表示可能であり、映像光を観察者に対して効率良く届けて光の利用効率を向上することによって、光源や映像投写装置を含むシステムや装置による消費電力を大幅に低減することが可能な情報表示システムと、それを利用した車両用情報表示システムを提供する。車両用情報表示システムでは、光の利用効率の向上による消費電力の低減と共に、車両のフロントガラスやリアガラスやサイドガラスを含むシールドガラスを介して、その傾斜角度に拘らず、車両内部においては運転者を含む搭乗(同乗)者からは視認可能であるが、他方、車両の外部からは視認不可能であり、或いは、車両の外部からは視認可能であるが、他方、車両の内部の搭乗(同乗)者からは視認不可能である、いわゆる、一方向性の表示が可能な車両用情報表示システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明では、上述した目的を達成するため、まず、空間を構成する透明な被投写部材を介して映像を前記空間の内部または外部に対して一方向に表示する情報表示システムであって、前記空間の内部に配置され、光源からの光束を変調して映像光を生成して投写する映像投写装置と、前記被投写部材の一部に設定された表示領域の内側面に設けられた透明シートと、前記映像投写装置からの前記映像光の方向を前記表示領域の前記透明シートに向ける光方向変換手段とを備えており、前記映像投写装置は、当該映像投写装置を構成する前記光源からの映像光を、拡散角度が狭く、かつ特定の偏波成分からなる映像光へ変換するための映像光特性変換手段を備えている情報表示システムが提供される。
【0012】
また、本発明では、上述した目的を達成するため、車両を構成する透明な被投写部材の一部を表示領域として利用し、情報を前記車両の内部または外部に表示する車両用情報表示システムであって、前記車両の内部に設けられた、前記情報の映像光を投写する映像投写装置と、前記被投写部材の一部に設定された前記表示領域の内側面に設けられた透明シートと、前記映像投写装置からの前記映像光の方向を前記透明シートに向けて変換する光方向変換手段とを備え、前記映像投写装置は、当該映像投写装置を構成する前記光源からの映像光を、拡散角度が狭く、かつ特定の偏波成分からなる映像光へ変換するための映像光特性変換手段を備えている車両用情報表示システムが提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ショーウインドウのガラス面などでも高解像度な映像情報が表示可能であり、映像光を観察者に対して効率良く届けて光の利用効率を向上することによって消費電力を大幅に低減することが可能な新規で利用性に優れた情報表示システムを提供できる。更には、当該情報表示システムを利用して、消費電力を大幅に低減することが可能な車両用情報表示システムが提供され、当該車両用情報表示システムでは、更に、車両のフロントガラスやリアガラスやサイドガラスを含むシールドガラスを介して、車両内部においては運転者を含む搭乗(同乗)者からは視認可能であるが、他方、車両の外部からは視認不可能であり、或いは、車両の外部からは視認可能であるが、他方、車両の内部の搭乗(同乗)者からは視認不可能である、いわゆる、一方向性の表示が可能な車両用情報表示システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施例に係る情報表示システムの全体構成の一例を示す図である。
図2】情報表示システムの映像投写装置を構成する光源装置の具体的な構成の一例を示す図である。
図3】映像投写装置において偏光変換する光源の構成とその作用を説明するための断面配置図である。
図4】映像投写装置において偏光変換する光源の構成とその作用を説明するための断面配置図である。
図5】情報表示システムの映像投写装置を構成するレンチキュラーレンズの構成の一例を示す図である。
図6】映像表示装置の映像光拡散特性を示すグラフを含む図である。
図7】映像表示装置の映像光拡散特性を示すグラフを含む図である。
図8】情報表示システムの映像投写装置を構成する光方向変換パネルの原理を説明するための断面図である。
図9】情報表示システムの映像投写装置を構成する保護カバーの概略構成の一例を示す断面図である。
図10】液晶パネルの視覚特性を測定する座標系を示す図である。
図11】一般的な液晶パネルの輝度角度特性(上下方向)を示す図である。
図12】一般的な液晶パネルのコントラストの角度特性(上下方向)を示す図である。
図13】一般的な液晶パネルの輝度角度特性(左右方向)を示す図である。
図14】一般的な液晶パネルのコントラストの角度特性(左右方向)を示す図である。
図15】情報表示システムの映像表示装置に設ける光方向規制パネルの構成例を示す断面図である。
図16】情報表示システムの映像投写装置を構成する一方向性の透明シート(反射型)(例1)の構成を示す断面図である。
図17】情報表示システムの映像投写装置を構成する一方向性の透明シート(反射型)(例2)の構成を示す断面図である。
図18】情報表示システムの映像投写装置を構成する一方向性の透明シート(透過型)(例1)の構成を示す断面図である。
図19】情報表示システムの映像投写装置を構成する一方向性の透明シート(透過型)(例2)の構成を示す断面図である。
図20】情報表示システムを乗用車に適用した例を示す図である。
図21】情報表示システムの映像表示装置を車両である乗用車の天井部分に設置した例を示す図である。
図22】情報表示システムの映像表示装置を車両である乗用車の天井部分に設置した場合に映像が自動車のガラス部分において表示される場所を示す図である。
図23】情報表示システムの映像表示装置を車両である乗用車の天井部分に設置した例を示す図である。
図24】情報表示システムの映像表示装置を車両である乗用車の天井部分に設置した場合に映像が自動車のガラス部分において表示される場所を示す図である。
図25】情報表示システムを車両であるバスに適用した例を示す図である。
図26】情報表示システムを車両である電車に適用した例を示す図である。
図27】太陽光などの自然光の波長分布を示すグラフを含む図である。
図28】太陽光などの自然光のp偏光とs偏光に対するガラスの反射率を示すグラフを含む図である。
図29】情報表示システムを車両に適用した車両用表示システムの具体的な構成の一例を示す図である。
図30】情報表示システムを車両に適用した車両用表示システムの、より具体的な構成の一例を示す図である。
図31】情報表示システムを乗用車に適用した例を示す図である。
図32】車両のフロントガラスを介してドライバに情報を表示する車両用表示システムの配置の例を示す図である。
図33】車両のフロントガラスを介してドライバと助手席の監視者に情報を表示する車両用表示システムの配置の例を示す図である。
図34】車両のリアガラスを介して車両の外部に情報を表示する例を示す図である。
図35】情報表示システムにより得られる虚像サイズと虚像の生成される位置の関係を示す図である。
図36】情報表示システムの映像表示装置に設けた光方向規制パネルを映像表示装置と共に車両に設置した例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面等を用いて、本発明の実施例について詳細に説明する。なお、本発明は以下の説明に限定されるものではなく、本明細書に開示される技術的思想の範囲内において当業者による様々な変更および修正が可能である。また、本発明を説明するための全図において、同一の機能を有するものには、同一の符号を付与し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。
【0016】
<情報表示システム>
図1は、本発明の一実施例に係る情報表示システムの全体構成を示している。例えば、店舗等においては、ガラス等の透光性の部材であるショーウインドウ(「ウィンドガラス」とも言う)220により空間が仕切られており、本実施例の情報表示システムによれば、かかる透明な部材を介して反射または透過して、映像を店舗(空間)の内部または外部に対して一方向に表示することが可能である。なお、この図1では、ショーウインドウ220の内側(店舗内)を奥行方向にしてその外側(例えば、歩道)が手前になるように示している。
【0017】
より具体的には、図1に示すように、ガラス等の透明な部材であるショーウインドウ220の上方には、以下に詳述するが、光源を備えて表示すべき映像光を生成して投写する映像表示装置48が配置されており、当該映像表示装置48により生成された映像光は、やはり以下に詳述する光方向変換パネル54やショーウインドウ220に貼着された透明シート(フィルム)51の働きにより、選択的に、内部または外部に対して一方向に表示される。このことによれば、ショーウインドウ220を利用して、その内部または外部に対して様々な情報を表示することが可能となり、ショーウインドウの利用効率を著しく向上することが可能となる。
【0018】
次に、図2には、上述した情報表示システムのより具体的な構成が示されており、上記の映像表示装置48を構成する映像表示素子52は、例えば、画面サイズが6インチを超える比較的大型な液晶表示パネルにより構成されている。また、歪補正によって実用上問題のないレベルの補正を行うためには、パネルの解像度は1280×720ドット以上が好ましい。
【0019】
また、映像表示装置48は、上述した液晶表示パネル52と共に、その光源を構成する光源装置101を備えており、図2では、当該光源装置101を、上記液晶表示パネル52と共に展開斜視図として示している。
【0020】
この液晶表示パネル(素子)52は、以下にも詳細に説明するが、図2に矢印30で示すように、バックライト装置である光源装置101からの光により指向性(直進性)が強く、かつ、偏光面を一方向に揃えたレーザ光に似た特性の照明光束を得て、入力される映像信号に応じて変調をかけた映像光を、ウィンドガラス220の表面に設けた透明シート51に向かって出射する。
【0021】
また、この図2では、情報表示システムは、映像表示装置48を構成する液晶表示パネル52と共に示されているが、更に、以下にも示すように、光源装置101からの出射光束の指向特性を制御する光方向変換パネル54、および、必要に応じて挟角拡散板(図示せず)を備えて構成されている。即ち、液晶表示パネル52の両面には偏光板が設けられ、特定の偏波の映像光が映像信号により光の強度を変調して出射する(図2の矢印30を参照)構成となっている。
【0022】
これにより、所望の映像を、指向性(直進性)の高い特定偏波の光として、光方向変換パネル54を介して、ウィンドガラス220に向けて投写し、その表面に設けた透明シート51を介して、店舗(空間)の内部または外部の監視者の眼(図示せず)に向けて反射または透過する。なお、上述した光方向変換パネル54の表面には保護カバー(図示せず)を設けることもある。
【0023】
本実施例では、光源装置101からの出射光束30の利用効率を向上させ消費電力を大幅に低減するため、光源装置101と液晶表示パネル52を含んで構成される映像表示装置48において、以下に述べるように、当該光源装置101からの光(図2の矢印30を参照)であって、ウィンドガラス220の表面に設けた透明シート51を透過しまたは拡散する映像光の輝度に対して、以下に述べるレンチキュラーレンズ等の光学部品によって高い指向性を付与する。このことによれば、映像表示装置48からの映像光は、レーザ光のように、ショーウインドウ220の内側(店舗内)にいる観察者、または、その外側(例えば、歩道)にいる観察者に対して高い指向性(直進性)で効率良く届くこととなり、その結果、高品位な映像を高解像度で表示すると共に、光源であるLED素子201を含む映像表示装置48による消費電力を著しく低減することが可能となる。
【0024】
<映像表示装置の実施例>
図3は、上述した光源装置101の具体的な構成を示す。但し、この図3では、図2の光源装置101を含んだ映像表示装置48の上に液晶表示パネル52と光方向変換パネル54を配置して示す。この光源装置101は、図2に示したケース状に、例えば、プラスチックなどにより形成され、その内部に後に詳述するLED素子201、導光体203を収納して構成されており、導光体203の端面には、図2に示したようにそれぞれのLED素子201からの発散光を略平行光束に変換するために、受光部に対して対面に向かって徐々に断面積が大きくなる形状を有し、内部を伝搬する際に複数回全反射することで発散角が徐々に小さくなるような作用を有するレンズ形状を設けている。その上面には、映像投写装置48を構成する液晶表示パネル52が取り付けられている。
【0025】
また、光源装置101のケースのひとつの側面(図3の例では左側の端面)には、半導体光源であるLED(Light Emitting Diode)素子201や、その制御回路を実装したLED基板202が取り付けられると共に、当該LED基板202の外側面には、上記LED素子および制御回路で発生する熱を冷却するための部材であるヒートシンクが取り付けることもある。
【0026】
他方、光源装置101のケースの上面に取り付けられる液晶表示パネルのフレーム(図示せず)には、当該フレームに取り付けられた液晶表示パネル52と、更に、当該液晶表示パネルに電気的に接続されたFPC(Flexible Printed Circuits:フレキシブル配線基板)(図示せず)などが取り付けられて構成される。即ち、液晶表示素子である液晶表示パネル52は、後に詳細に説明するが、固体光源であるLED素子201と共に、電子装置を構成する制御回路(ここでは図示せず)からの制御信号に基づいて、透過光の強度を変調することによって表示映像を生成する。この時、生成される映像光は拡散角度が狭く特定の偏波成分のみとなるため、映像信号により駆動された面発光レーザ映像源に近い、従来にない新しい映像表示装置が得られることとなる。
【0027】
なお、現状では、レーザ装置により、上述した映像表示装置48で得られる画像と同等のサイズのレーザ光束を得ることは、安全上からも不可能である。そこで、本実施例では、例えば、LED素子を備えた一般的な光源からの光束から、上述した面発光レーザ映像光に近い光を得る。
【0028】
<レンチキュラーレンズ>
液晶表示パネル52からの映像光の拡散分布を制御するためには、前述した光源装置101と液晶表示パネル52の間、或いは、液晶表示パネル52の表面に、図5に示すようなレンチキュラーレンズ800を設けてレンズ形状を最適化することで、一方向(図ではX軸方向の映像光)の出射特性を制御できる。更に、マイクロレンズアレイをマトリックス状に配置することで映像投写装置48からの映像光束をx軸およびy軸方向に出射特性を制御することができ、この結果所望の拡散特性を有する映像表示装置を得ることができる。
【0029】
続いて、光源装置101のケース内に収納されている光学系の構成について、以下に、上記の図3と共に、図4を参照しながら、詳細に説明する。
【0030】
図3および図4は断面図であるため、光源を構成する複数のLED素子201が1つだけ示されており、これらは前述したように導光体203の受光端面203aの形状により略コリメート光に変換される。このため導光体端面の受光部とLED素子は所定の位置関係を保って取り付けられている。
【0031】
なお、この導光体203は、各々、例えば、アクリル等の透光性の樹脂により形成されている。そして、この導光体端部のLED受光面は例えば、放物断面を回転して得られる円錐凸形状の外周面を有し、その頂部では、その中央部に凸部(即ち、凸レンズ面)を形成した凹部有し、その平面部の中央部には、外側に突出した凸レンズ面(或いは、内側に凹んだ凹レンズ面でも良い)を有するものである(図示せず)。なお、LED素子201を取り付ける導光体の受光部外形形状は円錐形状の外周面を形成する放物面形状をなし、LED素子から周辺方向に出射する光をその内部で全反射することが可能な角度の範囲内において設定され、或いは、反射面が形成されている。
【0032】
他方、LED素子201は、その回路基板である、いわゆる、LED基板202の表面上の所定の位置にそれぞれ配置されている。このLED基板202は、LEDコリメータ(受光端面203a)に対して、その表面上のLED素子201が、それぞれ、前述した凹部の中央部に位置するように配置されて固定される。
【0033】
かかる構成によれば、上述した導光体203の受光端面203aの形状によって、LED素子201から放射される光は略平行光として取り出すことが可能となり、発生した光の利用効率を向上することが可能となる。
【0034】
以上述べたように、光源装置101は、導光体203の端面に設けた受光部である受光端面203aに、光源であるLED素子201を複数並べた光源ユニットを取り付けて構成され、当該LED素子201からの発散光束を導光体端面の受光端面203aのレンズ形状によって略平行光として、矢印で示すように、導光体203内部を導光し(図面に平行な方向)、光束方向変換手段204によって、導光体に対して略平行に配置された液晶表示パネル52に向かって(図面から手前に垂直な方向)出射する。導光体内部または表面の形状によってこの光束方向変換手段204の分布(密度)を最適化することで液晶表示パネル52に入射する光束の均一性を制御することができる。
【0035】
なお、図3は、上述した導光体203とLED素子201を含む光源装置101において、偏光変換する本実施例の光源の構成とその作用を説明するための断面配置図である。図3において、光源装置101は、例えば、プラスチックなどにより形成される表面または内部に光束方向変換手段204を設けた導光体203、光源としてのLED素子201、反射シート205、位相差板206、上述したレンチキュラーレンズ800などから構成されており、その上面には、映像投写装置48として、光源光入射面と映像光出射面に偏光板を備える液晶表示パネル52が取り付けられている。
【0036】
また、光源装置101に対応した液晶表示パネル52の光源光入射面(図の下面)にはフィルムまたはシート状の反射型偏光板49を設けており、LED光源201から出射した自然光束210のうち片側の偏波(例えばP波)212を選択的に反射させ、導光体203の一方(図の下方)の面に設けた反射シート205で反射して、再度、液晶表示パネル52に向かうようにする。
【0037】
そこで、反射シート205と導光体203の間もしくは導光体203と反射型偏光板49の間に位相差板(λ/4板)206を設けて反射シート205で反射させ、2回通過させることで反射光束をP偏光からS偏光に変換し、映像光としての光源光の利用効率を向上する。液晶表示パネル52で映像信号により光強度を変調された映像光束は(図3の矢印213)、図1に示したように、ウィンドガラス220に大きな入射角で入射するため、透明シート51での反射率が大きくなり、店舗(空間)の内部または外部で監視するためには良好な拡散特性を得ることができる。
【0038】
図4は、図3と同様に、導光体203とLED素子201を含む光源装置101において、偏光変換する本実施例の光源の構成と作用を説明するための断面配置図である。図4の光源装置101も、同様に、例えば、プラスチックなどにより形成される表面または内部に光束方向変換手段204を設けた導光体203、光源としてのLED素子201、反射シート205、位相差板206、上述したレンチキュラーレンズ800などから構成されており、その上面には、映像投写装置48として、光源光入射面と映像光出射面に偏光板を備える液晶表示パネル52が取り付けられている。
【0039】
また、光源装置101に対応した液晶表示パネル52の光源光入射面(図の下面)にはフィルムまたはシート状の反射型偏光板49を設け、LED光源201から出射した自然光束210うち片側の偏波(例えばS波)211を選択的に反射させ、導光体203の一方(図の下方)の面に設けた反射シート205で反射して、再度、液晶表示パネル52に向かう。反射シート205と導光体203の間もしくは導光体203と反射型偏光板49の間に位相差板(λ/4板)を設けて反射シート205で反射させ、2回通過させることで反射光束をS偏光からP偏光に変換し、映像光として光源光の利用効率を向上する。液晶表示パネル52で映像信号により光強度変調された映像光束は(図の矢印214)図1に示すように、ウィンドガラス220に大きな入射角で入射しても表面での反射が軽減され、透明シート51で効率良く室外に映像光を拡散させることができる。
【0040】
ここで、図5に示したレンチキュラーレンズ800による作用について説明する。このレンチキュラーレンズ800は、レンズ形状を最適化することで、上述した映像表示装置48から出射された光をウィンドガラス220上の透明シート51上で効率良く反射または拡散させることを可能とする。即ち、映像投写装置48からの映像光に対し、図6(a)および(b)に示すように、例えば、2枚のレンチキュラーレンズを組み合わせまたはマイクロレンズアレイをマトリックス状に配置して、拡散特性を制御するシートを設けて、X軸およびY軸方向において、映像光の輝度(相対輝度)をその反射角度(垂直方向を0度)に応じて制御することができる。
【0041】
本実施例では、このようなレンチキュラーレンズ800により、従来に比較し、図6(b)に示すように垂直方向の輝度特性を急峻にし、更に上下(y軸の正負方向)方向の指向特性のバランスを変化させることで反射や拡散による光の輝度(相対輝度)を高めることにより、面発光レーザ映像源からの映像光のように、拡散角度が狭く(高い直進性)かつ特定の偏波成分のみの映像光とし、効率良く監視者の眼に届くようにしている。
【0042】
また上述した光源装置により図6の(a)(b)に示した一般的な液晶パネルからの出射光拡散特性特性(図6中では従来と表記)に対して実施例1および実施例2に示すようにx軸方向およびy軸方向ともに大幅に挟角な指向特性とすることで、特定方向に対して平行に近い映像光束を出射する特定偏波の光を出射する映像表示装置が実現できる。
【0043】
図7には、本実施例で採用するレンチキュラーレンズの特性の一例を示している。この例では、特に、X方向(垂直方向)における特性を示しており、特性Oは、光の出射方向のピークが垂直方向(0度)から上方に30度付近の角度であり上下に対称な輝度特性を示している。また、図7の特性AやBは、更に、30度付近においてピーク輝度の上方の映像光を集光して輝度(相対輝度)を高めた特性の例を示している。このため、これらの特性AやBでは、30度を超えた角度において、特性Oに比較して、急激に光の輝度(相対輝度)が低減する。
【0044】
即ち、上述したレンチキュラーレンズを含んだ光学系によれば、映像投写装置48からの映像光を、以下に述べるウィンドガラス220上の透明シート51を介して、特定の方向において、その輝度を増大(強調)して反射または拡散させることができる。これにより、映像投写装置48からの映像光を、面発光レーザ映像源からの映像光のように、拡散角度が狭く(高い直進性)かつ特定の偏波成分のみの光として効率良く室外または室内の監視者の眼に届くようにすることが可能となる。このことによれば、映像投写装置48からの映像光の強度(輝度)が低減しても、監視者は映像光を正確に認識して情報を得ることができる。換言すれば、映像投写装置48の出力をより低減することにより、より消費電力の低い情報表示システムを実現することが可能となる。
【0045】
<光方向変換パネル>
図8は、本実施例の情報表示システムの一部を構成し、上述した映像表示装置48の上面に設けられる光方向変換パネル54の原理を説明するための概略説明図である。上述した光源装置101の導光体203からの光束は、光方向変換パネル54の入射面(図の下面)から入射し、出射面(図の上面)に設けられたリニアフレネルレンズのレンズ作用によりに所望の方向θ3に光束を屈折させる。この時、所望の方向θ3は光束のフレネルレンズへの入射角θ2とフレネルレンズのフレネル角θ0と基材の屈折率nによりスネルの法則から一義的に導き出される。
【0046】
この結果、導光体からの略平行光束に対して所望の方向に指向性を与えることができる。即ち、映像表示装置48を構成する液晶表示パネル52からの高い直進性を有し特定の偏波成分のみの光である映像光は、店舗(空間)の内部または外部の監視者により視認されることなく、以下に述べるウィンドガラス220に設けられた透明シート51へ向かう。その後、映像光は透明シート51によって一方向に反射・拡散されて、その反射像が監視者により視認される。
【0047】
即ち、この光方向変換パネル54により、映像表示装置48(図1参照)からの映像光は、それ自体が、直接、空間内から視認されることはなく、そのため店舗内の監視者の邪魔になることはなく、その反射光による反射像のみが監視者によって監視されることとなる。なお、フレネルレンズの繋ぎ面88には光吸収性の塗料や顔料を設けることで所望の方向に進む光束以外の光の発生を抑制する。この結果、ウィンドガラス220で反射した映像光に不要な光が混入することがなくなるので結像性能を損ねることがなくなる。
【0048】
<保護カバー>
図9は、上述した光方向変換パネル54の上面に設けられる保護カバー50の概略構成を示す横断面図である。略透明な基材56の光出射側の一部にはブラックストライプ59を設ける。太陽光を含めた外光の表面反射を低減するために、ブラックストライプ59は黒色塗料としてカーボンブラックを含んだ塗料を用いると良い。またブラックストライプを設けない部分には、表面反射を抑えるため反射防止膜を設けることにより保護カバー50の表面での外光反射が大幅に軽減され、外光反射による支障が軽減される。一方、太陽光に対する遮光性能を強化するためには近赤外光および赤外光を反射する特性を反射防止膜に持たせると良い。
【0049】
他方、略透明な基材56の光入射側(図の下側)には、太陽光束のうちP波成分を吸収または反射する膜またはフィルム50aを、成膜または粘着する。この結果、太陽光のP波成分等が映像投写装置48に入射することがないため、耐光性や耐熱性に関する信頼性が大幅に向上する。一方、映像投写装置48からの出力されるS偏波の映像光を選択的に透過するフィルターの特性も併せ持つため、得られる映像のコントラスト性能が大幅に向上する。
【0050】
ところで、一般的なTFT(Thin Film Transister)液晶パネルは、光の出射方向によって液晶と偏光板相互の特性により輝度、コントラスト性能が異なる。図10に示した測定環境での評価では、パネル上下方向での輝度と視野角の特性は図11に示すようにパネル面に垂直(出射角度0度)な出射角より少しずれた角度での特性(本実施例では+5度)が優れている。これは液晶の上下方向では光をねじる特性が印加電圧最大の時に0度とならないためである。
【0051】
他方、上下方向のコントラスト性能は図12に示すように、-15度から+15度の範囲が優れており、輝度特性と合わせると5度を中心にして±10度の範囲での使用が最も優れた特性を得ることとなる。
【0052】
また、パネル左右方向での輝度と視野角の特性は図13に示すようにパネル面に垂直(出射角度0度)な出射角での特性が優れている。これは液晶の左右方向では光をねじる特性が印加電圧最大の時に0度となるためである。
【0053】
同様に、左右方向のコントラスト性能は図14に示すように、-5度から―10度の範囲が優れており、輝度特性と合わせると―5度を中心にして±5度の範囲での使用が最も優れた特性を得ることとなる。このため液晶パネルから出射する映像光の出射角度は前述した光源装置101の導光体203に設けた光束方向変換手段204により最も優れた特性が得られる方向から液晶パネルに光を入射させ映像信号により光変調することが映像表示装置48の画質と性能を向上させることになる。
【0054】
映像表示素子としての液晶パネルからの映像光を所望の方向に曲げるためには、液晶パネルの出射面に光方向変換パネル54を設けると良い。
【0055】
<映像光制御フィルム>
図15は、映像光の出射方向を規制する作用を持つ映像光制御フィルム70の断面図である。この映像光制御フィルム70は、例えば映像表示装置48の上面に設けられて液晶表示パネル52からの映像光を特定方向(図では白抜きの矢印方向)に出射し、一部の光は黒色部70bで遮られるために直接監視者の眼に入ることはないため、映像表示装置48からの直接光が監視者の眼に入って支障となることを防止する。
【0056】
この映像光制御フィルム70は監視者に直接映像光が向かわないようにする作用を持ち、他方映像光は透明部分70aを通過してフロントガラス6等で反射し監視者である運転者が認識できる。この映像光制御フィルム70としては、例えば信越ポリマー(株)の視野角制御フィルム(VCF:View Contorol Film)が適しており、その構造は透明シリコンと黒色シリコンを交互に配置し、光入出射面に合成樹脂を配置してサンドウィツチ構造としているため本実施例の映像光制御フィルム70と同様の効果が期待できる。
【0057】
以上述べた視野角制御フィルムの透明部70aと黒色部70bのピッチhは、表示する映像の画素に対して1/3以下であることが望ましい。この時、厚さWは視野角αを90度より大きく取りたい場合にはh/wを1.0より大きく、視野角αを90度より小さくしたい場合にはh/wを1.0より小さくすれば良い。一方、透明シート51の拡散透過率と平行光線透過率の比率により定義される曇度(HAZE)は10%以下であれば実用上問題ないが、望ましくは4%以下であれば良い。
【0058】
<一方向性の透明シート:反射型の例1>
次に、本実施例に係る情報表示システムの全体構成において、特に透明シート51の構成と作用について図16により説明する。ここで、ウィンドガラス220に斜め方向から入射する太陽光は、そのS偏波は反射され、P偏波が透過して透明シート51に向かう。透明シート51はS波を透過する偏光板57と透明拡散シート材55および位相差板58で構成されている。
【0059】
この透明シート51は、屈折率の大きいナノ粒子ジルコニウムやナノ粒子ダイヤモンドを分散させた熱可塑性高分子を溶かしながら延伸したフィルム、例えば、JXTGエネルギー社製「カレイドスクリーン」を用いることで(上述した特許文献3を参照)、映像を表示していない場合には透明であり、監視者が外界(店外)の風景を監視する妨げとならず、他方、映像表示時には、映像光を拡散、反射させ、これにより、店舗(空間)の内部または外部の監視者に映像情報を視認させる、いわゆる、一方向性の表示を実現することが可能となる。この時、透明シート51の拡散透過率と平行光線透過率の比率により定義される曇度(HAZE)は10%以下であれば実用上問題ないが、望ましくは4%以下であれば良い。
【0060】
映像投写装置48からの映像光はS偏波であるため斜め入射した場合の反射率が高い状態で、前述した透明拡散シート材55の内部で散乱し監視者に向かって出射する。一方、映像光の一部は散乱により偏光方向が乱れ、透明拡散シート材55を拡散透過してウィンドガラス220に向かって出射する。ウィンドガラス220の入射面では屈折率差が小さいため、反射光で発生する二重像のレベルは低い。
【0061】
これに対して、ウィンドガラス220の出射面(外界に接する面)で発生する反射光の強度はS偏光成分が大部分であるため反射率が大きい。この面で反射した映像光は、反射後再び偏光板57を通過して吸収されるため、監視者側に戻ることがない。このためウィンドガラス220の反射映像により生じる二重像の光強度を大幅に軽減できるので画質が大幅に向上した。なお、同様に、映像の反射面としてウィンドガラス220の代わりにコンバイナに前述した透明シート51を貼っても、同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0062】
以上に述べた透明シート51により、昼間の所定条件化においてウィンドガラス220を通過したP偏光の太陽光成分(コンバイナ方式では、その後コンバイナも通過)を情報表示システムやその上面に設けられる光方向変換パネル54や保護カバー50の手前で吸収することで、液晶表示パネルと偏光板に戻らないようにすることが可能となる。
【0063】
<一方向性の透明シート:反射型の例2>
一方向性の透明シートの反射型の例2について図17により説明する。この例では、上述した透明シート51上に、更に、図15で示した映像光制御フィルム70を加えて外光制御フィルム(以下、参照符号70で示す)としている。
【0064】
ウィンドガラス220に斜め方向から入射する太陽光は、上述したようにそのS偏波は反射され、P偏波が透過して透明シート51に向かう。この時、外光制御フィルム70に設けた黒色領域70b(図17ではグレー表示)に吸収され、映像表示装置を配置した室内または車内には到達しない。
【0065】
また、映像表示装置48からの映像光に混合することもないため画質の低下も防止する。透明シート51は透明拡散シート材55で構成されている。この透明シート51は、屈折率の大きいナノ粒子ジルコニウムやナノ粒子ダイヤモンドを分散させた熱可塑性高分子を溶かしながら延伸したフィルム、例えば、JXTGエネルギー社製「カレイドスクリーン」を用いることで(上述した特許文献3を参照)、映像を表示していない場合には透明であり、監視者が外界(店外)の風景を監視する妨げとならず、他方、映像表示時には、映像光を拡散、反射させ、これにより、店舗(空間)の内部または外部の監視者に映像情報を視認させる、いわゆる、一方向性の表示を実現することが可能となる。
【0066】
また、前述した外光制御フィルム70は、監視者が外界の風景を監視する場合には外界の光は透明部分70aを通過するため、外界の風景環視の妨げにならない。この外光制御フィルム70として、例えば信越ポリマー(株)の視野角制御フィルム(VCF:View Contorol Film)が適しており、その構造は透明シリコンと黒色シリコンを交互に配置し光入出射面に合成樹脂を配置してサンドウィツチ構造としているため、本実施例の外光制御フィルムと同様の効果が期待できる。以上述べた視野角制御フィルムの透明部70aと黒色部70bのピッチhは、表示する映像の画素に対して1/3以下であることが望ましい。この時、厚さWは視野角αを90度より大きく取りたい場合にはh/wを1.0より大きく、視野角αを90度より小さくしたい場合にはh/wを1.0より小さくすれば良い。
【0067】
一方、透明シート51の拡散透過率と平行光線透過率の比率により定義される曇度(HAZE)は10%以下であれば実用上問題ないが、望ましくは4%以下であれば良い。またトータルの透過率は車載用のフロントガラスに貼り付け使用する場合には75%以上必要となる。
【0068】
映像投写装置48からの映像光はS偏波であるため、斜め入射した場合の反射率が高い状態で、前述した透明拡散シート材55の内部で散乱し監視者に向かって出射する。一方、映像光の一部は散乱により偏光方向が乱れ、透明拡散シート材55を拡散透過してウィンドガラス220に向かって出射する。ウィンドガラス220の入射面では屈折率差が小さいため、反射光で発生する二重像のレベルは低い。
【0069】
これに対して、ウィンドガラス220の出射面(外界に接する面)で発生する反射光の強度はS偏光成分が大部分であるため反射率が大きい。この面で反射した映像光は、反射後再び外光制御フィルム70を通過して黒色領域70bに吸収されるため、監視者側に戻ることがない。このためウィンドガラス220の反射映像により生じる二重像の光強度を大幅に軽減できるので画質が大幅に向上した。なお、同様に、映像の反射面としてウィンドガラス220の代わりにコンバイナに前述した透明シート51を貼っても、同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0070】
以上に述べた一方向性透明シート51により、昼間の所定条件化においてウィンドガラス220を通過したP偏光の太陽光成分(コンバイナ方式では、その後コンバイナも通過)を情報表示システムやその上面に設けられる光方向変換パネル54や保護カバー50の手前で吸収することで、液晶表示パネルと偏光板に戻らないようにすることが可能となる。
【0071】
<一方向性の透明シート:透過型の例1>
図18には映像光束を車外または室外に拡散させる透明シート51’の構成を示す。透明拡散シート材55の映像光束入射面にはP波を透過する偏光板57と位相差板58が設けられ、透明拡散シート材55で反射した映像光束が室内(情報表示装置が設置してある空間)に戻ることを阻止する。この結果、監視者がウィンドガラス220に映し出された映像により監視者に支障をきたすことがない。偏光板57と透明拡散シート材55の間に設けた位相差板58の最適な位相差は、透明拡散シートの拡散特性に合わせて最適な値を選ぶと良く、拡散角が大きい場合はλ/4に近いほうが良く、拡散角が小さい場合にはλ/8板などと組み合わせたほうが良好な変換性能を得ることができる。
【0072】
また、上述した透明拡散シート材55に代えて特定の偏波の反射率を高めた増反射コーティングを施したシートを前述の偏光板の代用として、または、増反射コートを偏光板の表面に設けることで映像光束の反射率が大きくでき、同時に、ウィンドガラス220の反射映像により生じる二重像の強度も大幅に軽減できることが確認でき、即ち、上述した技術と同様の効果が得られることを確認した。
【0073】
更に、上述した透明拡散シート材55に代えて、例えばサンテックディスプレイ(株)のPDLC(Polymer Dispersed Liquid Crystal)を使用し、映像表示状態では電圧を印加せず映像光を分散させ、映像非表示状態では電圧を印加して透明な状態とすることで透明シートの代用とすると良い。また、執筆者たちは実験により前述のPDLCに印加する電圧を可変させて分散特性を可変、映像信号のON/OFFまたは強弱に同期させて印加電圧を変調させることで。映像に合わせて透過率を可変できる新たな機能を執するスクリーンが実現できることを明らかにした。
【0074】
<一方向性の透明シート:透過型の実施例2>
図19には映像光束を車外または室外に拡散させる透明シート51’に加え、更に、図15で示した映像光制御フィルム70を外光制御フィルム(以下、参照符号70で示す)とした構成を示す。ウィンドガラス220に斜め方向から入射する太陽光は、上述したようにそのS偏波は反射され、P偏波が透過して透明シート51に向かう。この時、外光制御フィルム70に設けた黒色部分70b(図19ではグレー表示)に吸収され映像表示装置を配置した室内または車内には到達しない。また映像表示装置48からの映像光に混合することがなく画質の低下も防止する。透明シート51’は透明拡散シート材55で構成されている。
【0075】
この透明シート51’は、屈折率の大きいナノ粒子ジルコニウムやナノ粒子ダイヤモンドを分散させた熱可塑性高分子を溶かしながら延伸したフィルム、例えば、JXTGエネルギー社製「カレイドスクリーン」を用いることで(上述した特許文献3を参照)、映像を表示していない場合には透明であり、監視者が外界(店外)の風景を監視する妨げとならず、他方、映像表示時には、映像光を拡散、反射させ、これにより、店舗(空間)の外部の監視者に映像情報を視認させる、いわゆる、一方向性の表示を実現することが可能となる。
【0076】
また、前述した外光制御フィルム70はウィンドガラス220に斜め方向から入射する映像光は黒色部分70bでほとんど遮蔽されることなく、透明部分70aを通過するため、透明シート51’で拡散され、外界(車外また店外)に向けての映像表示が可能となる。この外光制御フィルム70として、例えば信越ポリマー(株)の視野角制御フィルム(VCF:View Contorol Film)が適しており、その構造は透明シリコンと黒色シリコンを交互に配置し光入出射面に合成樹脂を配置してサンドウィッチ構造としているため、本実施例の外光制御フィルムと同様の効果が期待できる。
【0077】
以上述べた視野角制御フィルムの透明部70aと黒色部70bのピッチhは表示する映像の画素に対して1/3以下であることが望ましい。この時、厚さWは視野角αを90度より大きく取りたい場合にはh/wを1.0より大きく、視野角αを90度より小さくしたい場合にはh/wを1.0より小さくすれば良い。また黒色部分の傾斜角γは映像表示装置48とウィンドガラスの取り付け位置で決まる映像光入射角度と一致させることでエネルギー損失を低減できる。
【0078】
一方、透明シート51の拡散透過率と平行光線透過率の比率により定義される曇度(HAZE)は10%以下であれば実用上問題ないが、望ましくは4%以下であれば良い。また、上述した透明拡散シート材55に代えて特定の偏波の反射率を高めた増反射コーティングを施したシートを設けることで映像光束の反射率が大きくでき、同時に、ウィンドガラス220の反射映像により生じる二重像の強度も大幅に軽減できることが確認でき、即ち、上述した技術と同様の効果が得られることを確認した。
【0079】
更に、上述した透明拡散シート材55に代えて、例えばサンテックディスプレイ(株)のPDLC(Polymer Dispersed Liquid Crystal)を使用しても、映像表示状態では電圧を印加せず映像光を分散させ、映像非表示状態では電圧を印加して透明な状態とすることで透明シートの代用とすると良い。また、発明者たちは実験により前述のPDLCに印加する電圧を可変させて分散特性を可変、映像信号のON/OFFまたは強弱に同期させて印加電圧を変調させることで、映像に合わせて透過率を可変できる新たな機能を執するスクリーンが実現できることを明らかにした。
【0080】
なお、上述した映像投写装置48を構成する映像源が液晶パネルであるため、監視者が偏光サングラスを着用している場合には、特定の偏波が遮蔽されて映像が見えない不具合が発生する。これを防ぐために、上述したように映像投写装置48の光出射側に設けた保護カバー50の光入射側面に設けた太陽光束のうちP波成分を吸収または反射するための膜またはフィルム50aと、基材56の間に、λ/4板またはλ/8板またはλ/16板などの波長板50bが配置されている。波長板50bを設けることにより、光束の偏光方向を特定の方向に揃え、映像光を最適な偏光角として、偏光サングラスの偏光方向と所望量偏光軸をずらすと良い。
【0081】
一方、同一偏光でも吸収軸を回転させ、例えば偏光サングラスの吸収軸に対して液晶パネル出射側偏光板の吸収軸を30度以上ずらすことで、吸収が50%程度となるため、映像が見えない不具合を解消することができる。
【0082】
また、偏光軸を回転させて円偏光に近づけると情報表示システムからの映像光はS偏光から偏光軸が回転する。このため、ウィンドガラス220による反射率が低下し映像の明るさが低下するので、両者のバランスを取って選択すると良い。
【0083】
以上に詳述した本実施例に係る情報表示システムによれば、映像投写装置48からの映像光は、面発光レーザ映像源からの映像光のように、拡散角度が狭く(高い直進性)かつ特定の偏波成分のみの光であることから、例えば空間を構成するショーウインドウ220を利用して、空間の内部または外部に対して様々な情報を表示することができ、ショーウインドウの利用効率を著しく向上することが可能となり、かつ、高品位な映像を高解像度で表示すると共に、光源からの出射光の利用効率を向上して消費電力を大幅に低減することが可能な情報表示システムが実現される。
【0084】
また、より大きな映像を表示する場合には、光源装置101と共に映像投写装置48を構成する映像表示素子である液晶表示パネル52として、比較的安価な液晶表示パネルを複数枚組み合わせて接合部を連続的にして一体とした大型の液晶表示パネル52を採用することも可能である。この場合、上述した光源装置101からの光束を平行にウィンドガラス220に設けられた透明シート51へ向け、当該透明シート51によって一方向に反射・拡散させることによっても、消費電力を大幅に低減しながらも、より拡大した映像情報を表示することが可能となる。
【0085】
なお、以上の説明では、情報表示システムをガラス等の透明な部材であるショーウインドウにより仕切られる空間である店舗に適用し、当該ショーウインドウ220を利用してその内部または外部に対して一方向に表示する例について述べたが、本発明はかかる例にのみ限定されるものではない。即ち、本発明の情報表示システムは、ガラス等の透明な部材を利用して仕切られる所定の空間であれば、当該空間を仕切る透明な部材を利用して内部または外部に対して一方向に表示することが可能であり、以下では、情報表示システムの他の例について説明する。
【0086】
<車両用情報表示システム>
上述した実施例の情報表示システムによれば、映像投写装置48から発生して被投写部材であるショーウインドウ220に向けて出射する映像光を、(1)面発光レーザ映像源からの映像光のような拡散角度が狭く(高い直進性)かつ特定の偏波成分のみの映像光とし、これにより高品位な映像を高解像度で表示すると共に出射光の利用効率を向上して消費電力を大幅に低減することを可能とし、同時に、(2)上述した構成部品からも明らかなように、装置の全体外形を平面(パネル)状に構成することが可能となっている。そこで、これらの特徴を利用して、上述した実施例の情報表示システムを、上述した店舗などの空間に代え、自動車や電車や航空機等の車両に適用した、いわゆる、車両用情報表示システムの様々な例について、以下に詳細に説明する。
【0087】
図20は、普通の乗用車に車両用情報表示システムを搭載した例を示しており、この例では、本実施例に係る車両用情報表示パネル100により、フロントガラス6の一部(ステアリング43の上部)、リアガラス、および、サイドガラス6”等の一部(グレー部分)または全部に映像情報を表示する。
【0088】
自動車の(一部または全部の)ウィンドガラスに映像を表示する具体的な手段としては、例えば、図21に示すように、大型の液晶パネル52a(図2の符号52も参照)を含む映像投写装置48が車体1の天井部分に設置され、当該液晶パネルの裏面の一部には、光源装置101を構成する複数の導光体203a,203b,203c、203d、203e,203f,203g(図2の符号101、203も参照)が光源装置101として設けられ、それぞれ、図に白抜きの矢印で示すように、面発光レーザ光源からの光のような拡散角度が狭く(高い直進性)かつ偏光面の揃った映像光が得られる。
【0089】
これらの光束は、更に、これらの導光体203a~203gのそれぞれに対応して設けられた光方向変換パネル(ここでは図示せず。図2の符号54を参照)により、映像情報の被投写面であるフロントガラス6、リアガラス6’、および、サイドガラス6”に向けて投射され、映像が車両1の内部または外部に向けて一方向に表示される。なお、この時、図22に示すように、映像投写装置48を構成する液晶パネルの位置には、それぞれに対応する映像を分割して表示する。この時、映像表示装置からそれぞれのウィンドガラスまでの距離とウィンドガラスの形状が異なるため、投写映像が正しい形状で表示されるように元画像を歪ませる。大型液晶パネル52aの解像度としては8k相当でも十分であった。
【0090】
または、図23および図24に示すように、上述した大型の液晶パネル52aからなる映像投写装置48に代えて、複数の映像表示装置48a,48b,48c,48d,48e,48fとし車体の天井部分に設置することにより、それぞれのウィンドガラスに向けて映像を表示することも可能である。この時も、映像表示装置からそれぞれのウィンドガラスまでの距離とウィンドガラスの形状が異なるため投写映像が正しい形状で表示されるように元画像を歪ませると良い。
【0091】
なお、上記においては、各種の映像を、車両用情報表示システムにより、ウィンドガラス6に透明シート51を貼り付けた画像表示領域に表示する例について説明した。しかしながら、本発明はそれのみに限定されることなく、上述した透明拡散シート材に代えて特定の偏波の反射率を高めた増反射コーティングを前述の偏光板の表面に設けることで、映像光束の反射率が大きくでき、同時にウィンドガラス6の反射映像により生じる二重像の強度も大幅に軽減できるので上述した技術と同様の効果が得られることを確認した。
【0092】
図25および図26は、車両用情報表示システムを、特に、バスや電車などの商用車両に搭載した場合の外観図である。車両本体1の運転席前部には、映像光を投射して表示するための透光性の被投写部材としてのフロントガラス6、リアガラス6’(図示せず)、サイドガラス6”等(総称して「シールドガラス」とも言う)が存在する。特に、フロントガラス6は車両のタイプによって車体に対する傾斜角度が異なる。発明者らは最適な虚像光学系を実現するためこの曲率半径も調査した。その結果、バス、鉄道車両などのフロントガラス6は、車両の接地面に対して水平な水平方向の曲率半径Rhと水平軸に対して垂直方向の曲率半径Rvは、以下の関係にあり水平方向の曲率半径Rhは平面に近いものが多いことが判った。
Rh>Rv
【0093】
この車両用情報表示システムは、車内の空間を仕切る透光性部材であり、かつ、車両の一部を構成する被投写部材としてのフロントガラス6、リアガラス6’、および/または、サイドガラス6”を利用して、映像情報を車両の内部または外部に一方向に表示するものであり、運転者が自車を運転する際には、車両内の運転者や同乗者に映像情報を監視させ、他方、車両の外部に対しても映像情報を表示することが可能なシステムに関する。その結果、運転者や同乗者は、必要な情報をフロントガラス6などの表示領域に適宜表示して、車両内で監視することができるが、他方、車両の外部からは、当該情報を監視することはできない。或いは、リアガラス6’やサイドガラス6”(フロントガラス6を含んでも良い)を介して、車両の外部に対しても映像情報を表示することができ、この表示した情報は外部からは監視可能であるが、車内からは監視できず、運転者や同乗者が外部の景観を監視することを妨げることなく、運転の妨げとはならない。
【0094】
また、車両用情報表示システムでは、車両自体が太陽光を含む自然光の下に晒されることから、かかる太陽光に対する対応が必要となるが、太陽光などの自然光は、図27に示すように、紫外線から赤外線までの幅広い波長領域の光であるばかりでなく、偏光方向も光の進行方向に垂直な振動方向の光と水平方向の光である2種類の偏光方向(以下S偏光とP偏光と記載)の光が混ざった状態で存在する。特に、フロントガラス6への入射角度が50度を超えるような領域では図28に示すように、ガラス面上での反射率は、S偏光やP偏光、更には、入射角によりそれぞれ異なる。
【0095】
そこで、本実施例では、上述した発明者による知見に基づき、即ち、フロントガラス6を通して侵入する太陽光の多くはP偏光成分であることを考慮し、情報表示装置内に侵入する太陽光を含む外光を抑制するためには、特に、P波成分の低減が有効であること、加えて、情報表示装置から出射され車内に反射して監視者である運転者や同乗者に認識されるべき映像光としては、S波成分を利用することが効果的であることを確認した。
【0096】
<車両用情報表示システムの他の具体的な構成1>
続いて、図29および図30を参照しながら、本実施例に係る情報表示システムを車両に適用したその他の車両用情報表示システムとその具体的な構成について、詳細に説明する。
【0097】
図29および図30は、本実施例に係る情報表示システムを車両に適用して、映像情報を車両の一部を構成する透明な被投写部材であるフロントガラス6を介して、運転者が監視する外部景観の一部に表示する車両用情報表示システムの全体構成を示している。ここでは、フロントガラス6を複数の領域に分割してその一部の領域(本例では、フロントガラス6の上部)で映像投写装置48からの映像光を拡散、反射させ、その反射像を、直接、運転者や同乗者が一方向に監視する。この結果、運転者や同乗者は、必要な情報をフロントガラス6の表示領域に、適宜、表示して監視することができるが、他方、車両の外部からは、当該情報を視認することはできない。
【0098】
この車両用情報表示システムでは、映像投写装置48は、図29に示すように、例えば、スマートフォン300等からの高解像度の地図情報(大型高解像度の映像表示装置の映像)を、以下に詳述するが、光方向変換パネル54や保護カバー50を介して(以下、本実施例の情報表示システムを構成するバックライト装置である光源装置101、映像投写装置48、光方向変換パネル54、保護カバー50は、これらを総称して「情報表示装置」100と言う)、フロントガラス6の内側表面に投射し、当該フロントガラス6の表面に設けた透明シート51を介して監視者(運転者)の眼8に向かって反射させることで、フロントガラス6上に映像を表示する。
【0099】
なお、この例では、地図情報等を提供するナビゲーション機能を搭載した高性能の携帯端末装置であるスマートフォン300を利用する場合の一例を示しており、スマートフォン300からの表示画面が、有線の接続端子を介して、または、Bluetooth(登録商標)やWifi(登録商標)等の無線によって入力されてその映像を表示することが可能となっており、これにより、運転者は、車両用情報表示システムを利用して、高解像度の映像情報を監視することができる。なお、ここでは図示しないが、スマートフォンは、上記した映像投写装置48と同様、CPU(Central Processing Unit)、ワークメモリや情報蓄積・記憶手段としての機能を有するRAMやROM等の各種の固体メモリ等により構成された制御部を備えており、必要な映像を生成してその表示装置(液晶ディスプレイ)に表示する機能を備えていることは当然であろう。
【0100】
更に、車両用情報表示システムのより具体的な構成について説明する。情報表示装置100の映像投写装置48を構成する映像表示素子52は、例えば、画面サイズが6インチを超える比較的大型な液晶表示パネルにより構成される。一般的に、フロントガラス6の曲率半径は部分的に異なることが多いため、映像を反射させる場所によって表示映像に不均一(縦方向と横方向)な歪が発生する。このため監視方向から反射像を見た場合に正しい映像を得るために歪補正が必要となる。この歪補正によって実用上問題のないレベルの補正を行うにはパネルの解像度は1280×720ドット以上が必要となる。
【0101】
また、映像投写装置48は、上述した液晶表示パネル52と共に、その光源を構成する光源装置101を備えており、図29では、当該光源装置101を、上記液晶表示パネル52の上方に示している。
【0102】
この液晶表示パネル(素子)52は、図29に示すように、バックライト装置である光源装置101により指向性の強い照明光束を得て、入力される映像信号に応じて変調をかけた映像光を、フロントガラス6に設けた透明シート51に向かって出射する。また、この図29では、車両用情報表示システムは、光源装置101や液晶表示パネル52を含む映像投写装置48と共に、更に、光源装置101からの出射光束30の指向特性を制御する光方向変換パネル54、および、必要に応じて挟角拡散板(図示せず)を備えて構成されている。即ち、液晶表示パネル52の両面には偏光板が設けられ、特定の偏波の映像光が映像信号により光の強度を変調して出射する構成となっている。これにより、スマートフォン300等からの高解像度の映像(大型高解像度の映像表示装置の映像)を、光方向変換パネル54を介してフロントガラス6に向けて出射し、その表面に設けた透明シート51を介して、監視者(運転者)の眼8に向けて反射させる。
【0103】
なお、車両用情報表示システムを構成する映像投写装置48は、図に示すように、光源装置101や液晶表示パネル52等を備えており、当該映像投写装置48の光源装置101を含めた構成や作用については、既に上記において映像表示装置の実施例として示しており、ここでは詳述しないが、LEDにより発生された光のほぼ全てを平行光として取り出すことができ、発生した光の利用効率を向上することが可能であり、更に、その均一な照明特性をより向上すると同時に、モジュール化されたS偏光の光源装置を含め、小型かつ低コストで製造することが可能となる。
【0104】
なお、ここでは図示しないが、上記図5図7に構成や特性示したレンチキュラーレンズやマイクロレンズアレイシート(図示せず)を採用することにより得られる、面発光レーザ映像源からの映像光のように拡散角度が狭く(高い直進性)かつ特定の偏波成分のみの映像光によれば、映像投写装置48からの映像光を効率良く室外または室内の監視者の眼8に届くようにすることにより、高品位な映像を高解像度で表示すると共に映像投写装置48の出力をより低減した消費電力の低い車両用情報表示システムを実現することが可能となる。
【0105】
また、上述した映像投写装置48の下面に設けられる光方向変換パネル54も、上記の図8およびそれに関連する記載で既に述べたのと同様であり、ここではその構成や作用については詳述しないが、車両用情報表示システムの映像投写装置48を構成する液晶表示パネル52からの光である映像光を、車両内部の運転者や同乗者によって視認されることなく、フロントガラス6に設けられた透明シート51へ向かわせ、その後、映像光は透明シート51によって一方向に反射、拡散されて、その反射像が運転者により視認される。即ち、この光方向変換パネル54により、映像投写装置48からの映像光は、それ自体が、直接、車内から視認されることはなく、そのため運転の邪魔にはなることはなく、その反射光による反射像のみが運転者や同乗者によって監視されることとなる。
【0106】
また、車両の天井面に接して配置され、上述した光方向変換パネル54の上面に設けられる保護カバー50についても、上記の図9およびそれに関連する記載で既に述べたと同様であり、ここではその構成や作用については詳述しないが、車両用情報表示システムでは、特に、ドライバが自車を運転する際に外光反射による支障が軽減されることとなる。
【0107】
加えて、フロントガラス6に斜め方向から入射する太陽光は、そのS偏波は反射し、P偏波が透過して透明シート51に向かう。この透明シート51は、上記図16およびそれに関連する記載でも既に述べたように、S波を透過する偏光板57と透明拡散シート材55で構成されており、映像を表示していない場合には透明であり、運転者が外界(車外)の風景を監視する妨げとならず、他方、映像表示時には、映像光を拡散・反射させ、これにより、運転者や同乗者に映像情報を視認させる一方向性の表示を実現することが可能となる。
【0108】
また、図17に示した構成でも同様な効果が得られることも既に述べている。この時、透明シート51の拡散透過率と平行光線透過率の比率により定義される曇度(HAZE)は10%以下であれば実用上問題ないが、望ましくは4%以下であれば良い。一方、自動車用のウィンドガラスのHAZEは2%以下である。
【0109】
他方、車両用情報表示システムを構成する映像投写装置48からの映像光はS偏波であるため、斜め入射した場合の反射率が高い状態で、前述した透明シート51を構成する透明拡散シート材55の内部で散乱し監視者に向かって出射する。一方、映像光の一部は散乱により偏光方向が乱れ、透明拡散シート材55を拡散透過してフロントガラス6に向かって出射する。フロントガラス6の入射面では屈折率差が小さいため、反射光で発生する二重像のレベルは低い。
【0110】
これに対して、フロントガラス6の出射面(外界に接する面)で発生する反射光の強度はS偏光成分が大部分であるため反射率が大きい。この面で反射した映像光は反射後、再び、偏光板57を通過して吸収されるため監視者側に戻ることがない。このためフロントガラス6の反射映像により生じる二重像が発生しなくなるので画質が大幅に向上した。なお、同様に、映像の反射面としてフロントガラス6の代わりにコンバイナに前述した透明シート51を貼っても、同様の効果が得られることは言うまでもない。
【0111】
以上に述べた透明シート51によれば、上記の図16図17からも明らかなように、昼間の所定条件化においてフロントガラス6を通過したP偏光の太陽光成分(コンバイナ方式ではその後コンバイナも通過)を、車両用情報表示システムを構成する光源装置101や液晶表示パネル52を含む映像投写装置48や、更には、光方向変換パネル54等を含めた装置やその上面に設けられる光方向変換パネル54や保護カバー50の手前で吸収することで、液晶表示パネルと偏光板に戻らないようにすることが可能となる。
【0112】
なお、上記の例では、フロントガラス6に設けられる一方向性の透明シート51として反射型の透明シート51を採用するものについて述べたが、これに代えて、上記図18で説明した透過型の透明シート51’を採用することにより、映像光束を一方向に、即ち、車両の外部に拡散させることも可能である。その場合、透明シート51’を構成する透明拡散シート材55の映像光束入射面にはP波を透過する偏光板と位相差板が設けられ透明拡散シート材55で反射した映像光束が車内(車両用情報表示システムが設置された空間)に戻ることを阻止する。この結果、運転者がフロントガラス6に映し出された映像により運転に支障をきたすことがない。
【0113】
偏光板57と透明拡散シート材55の間に設けた位相差板58の最適な位相差は、透明拡散シートの拡散特性に合わせて最適な値を選ぶと良く、拡散角が大きい場合はλ/4に近いほうが良く、拡散角が小さい場合にはλ/8板などと組み合わせたほうが良好な変換特性を得ることができる。更に、図19で説明した一方向性の透明シートの例2でも同様の効果を得ることができる。
【0114】
以上に詳細に述べた光源装置101や液晶表示パネル52を含む映像投写装置48や光方向変換パネル54等を含んで構成された車両用情報表示システムでは、図29において矢印で示すように、車内空間を仕切る透明部材であるフロントガラス6の上部領域の映像表示領域に対応した位置(図の天井面)に大型高解像度の映像投写装置48を設け、その表示映像をフロントガラスで反射させることにより、その反射像を、直接、運転者や同乗者に監視させることが可能となる。その際、面発光レーザ映像源からの映像光のような拡散角度が狭く(高い直進性)かつ特定の偏波成分のみの映像光により高品位な映像を高解像度で表示すると共に出射光の利用効率を向上して消費電力を大幅に低減することが可能となる。
【0115】
<車両用情報表示システムのその他の具体的な構成2>
なお、上記では、車両空間を仕切るフロントガラス6やサイドガラス6”を含むウィンドガラスを利用して、映像投写装置48や光方向変換パネル54等により映像を表示する車両用情報表示システムについて述べたが、本発明はこれに限定されることなく、更に、リアガラスを利用して映像を表示し、或いは、ヘッドアップディスプレイ(HUD)型の情報表示装置(以下、「HUD装置」と言う)も同時に搭載して利用することも可能であり、以下にはその例について述べる。
【0116】
続いて、図31は、上述した大型の車両に代えて図30に外観を示した普通の乗用車に車両用情報表示システムを搭載した例を示しており、フロントガラス6の一部(ステアリング43の上部)、および、サイドガラス6”の一部に、上述した映像投写装置48や光方向変換パネル54に替えて設けられた、HUD装置700の映像表示装置704や光源装置710により映像を表示車両の内部または外部に向けて一方向に表示する。
【0117】
ここでHUD装置としては、既知の一般的な装置を採用することができるが、ここでは、その一例として、以下にその概略を説明する。
【0118】
図31は、HUD装置700をその周辺機器構成を含めて示す概略構成図であり、ここでは、運転者8の視線(アイポイント)において自車両の前方に虚像V1を形成するため、被投影部材6(フロントガラスの内面)にて反射された各種情報をフロントガラス6に設けた透明シート51で車内に拡散反射させ実像として表示する。
【0119】
上述したHUD装置700では、上記映像投写装置48に対応して表示する情報の映像光を生成する映像表示装置704と、上記光源装置101に対応して当該映像表示装置704に光を供給する光源装置710を備えている。映像表示装置704からの映像光の拡散分布を制御するためには、前述したのと同様に、映像表示装置704の一部の表面にレンチキュラーレンズを設け、レンズ形状を最適化することで一方向に制御できる。
【0120】
更に、HUD装置700からの映像光束は開口部(図示せず)からフロントガラス6に向かって出射する。即ち、車両用情報表示システムを構成するHUD装置700において上述したレンチキュラーレンズやマイクロレンズアレイシートを採用することにより得られる面発光レーザ映像源からの映像光のように拡散角度が狭く(高い直進性)かつ特定の偏波成分のみの映像光を適用することにより、同様に、映像光を効率良く室外または室内の監視者の眼8に届くようにし、もって、高品位な映像を高解像度で表示すると共に、HUD装置700の出力をより低減した消費電力の低い車両用情報表示システムを実現することが可能となる。
【0121】
また、上記HUD装置700はそのバックライトを制御する制御装置740を備えている。なお、上記映像表示装置704やバックライトなどを含む光学部品は映像表示装置704の表示映像をフロントガラス6に貼付した透明シート51に反射させ同時に拡散させることで運転者の視線8へと向かう。なお、映像表示装置704としては、例えば、バックライトを有するLCD(Liquid Crystal Display)などがある。
【0122】
かかるHUD装置を構成する図示の制御装置740は、ナビゲーションシステム761から、自車両が走行している現在位置に対応する道路の制限速度や車線数、ナビゲーションシステム761に設定された自車両の移動予定経路などの各種の情報を、前景情報(即ち、上記虚像により自車両の前方に表示する情報)として取得する。
【0123】
また、運転支援ECU762は、周辺監視装置763での監視の結果として検出された障害物に従って駆動系や制御系を制御することで、運転支援制御を実現するための制御装置である。かかる運転支援制御としては、例えば、クルーズコントロール、アダプティブクルーズコントロール、プリクラッシュセーフティ、レーンキーピングアシストなどの周知技術を含む。図示の周辺監視装置763は、自車両の周辺の状況を監視する装置であり、一例としては、自車両の周辺を撮影した画像に基づいて自車両の周辺に存在する物体を検出するカメラや、探査波を送受信した結果に基づいて自車両の周辺に存在する物体を検出する探査装置などである。
【0124】
上述したHUD装置の制御装置740は、このような運転支援ECU762からの情報(例えば、先行車両までの距離および先行車両の方位、障害物や標識が存在する位置など)を前景情報として取得する。更に、この制御装置740には、イグニッション(IG)信号、および、自車状態情報が入力される。これらの情報のうち、自車状態情報とは、車両情報として取得される情報であり、解像度の高い表示を必要としない、例えば、内燃機関の燃料の残量や冷却水の温度など、予め規定された異常状態となったことを表す警告情報を含んでいる。
【0125】
また、方向指示器の操作結果や、自車両の走行速度、更には、シフトポジション情報なども含まれている。以上述べた制御装置740は、イグニッション信号が入力されると起動する。なお、被投影部材6は、情報が投影される部材であれば良く、前述したフロントガラスだけではなく、その他、コンバイナであっても良く、運転者の視線8において自車両の前方に実像を形成して運転者に視認させるものであれば良い。
【0126】
続いて、上述した映像投写装置48や透明シート51、および/または、HUD装置700を搭載した自動車のコックピット内の配置の一例を図32に示す。図32(a)は左側にステアリングを配置した自動車に対応したシステムの配置を、図32(b)は右側にステアリングを配置した自動車に対応したシステムの配置を示す。
【0127】
図32のHUD画像表示領域(1a)には、上記に示したHUD装置700を用いて映像情報をフロントガラス6で反射させて表示し、画像表示領域(1b)(透明シート51の貼付領域に対応する)には、上記光源装置101や液晶表示パネル52を含む映像投写装置48や光方向変換パネル54等を含んで構成された装置(ここでは「車両情報表示装置」として符号100で示す)を用いて映像情報をフロントガラス6で反射させ、その反射像を運転者に監視させる。その際、図にも示すように、画像表示領域(1b)はフロントガラス6の上部に、HUD画像表示領域(1a)は、例えば、自車両のボンネットが監視される範囲など、運転者にとって車外の景観の監視に邪魔とならない範囲や領域に設定することが好ましいであろう。
【0128】
上述した車両情報表示装置100は、図32に示すように、車両の天井面に、他方、HUD装置700はフロントガラス6とステアリング43の間のダッシュボード47の内部において、フロントガラス6に続く位置に、ステアリング43に向け配置される。この結果、運転者が自車を運転する際には、フロントガラス6を介して監視する外部の景観、即ち、フロントガラス6の一部領域には、車両情報表示装置100により、大型高解像度の映像表示装置の映像をフロントガラス6で反射させることにより、当該反射像を運転者や同乗者が監視可能であり、または、必要に応じてHUD装置700からの情報をも表示可能な車両用情報表示システムを提供することができる。
【0129】
即ち、透明シート51をウィンドガラス6に貼り付けた画像表示領域(1b)には、車両情報表示装置100からの映像光を反射させて運転者に監視させる。その際、画像表示領域(1b)は、例えば、運転者が運転中に監視する景観に重畳することで拡張現実を疑似的に実現できる。この時映し出す映像は、運転者にとって車外の景観の監視に邪魔とならない範囲や領域に設定することが好ましい。
【0130】
なお、図32に示すルームミラー71には運転者の状態監視と自動車内様子をモニタするカメラ72を設け、例えば運転者の目の高さに適合して前述した車両情報表示装置100からの映像光の出射方向を制御することも可能であろう。
【0131】
<車両用情報表示システムのその他の変形例:外部への表示>
以上に詳述した実施例によれば、運転者が自車を運転する際に、車両を構成するシールドガラスである被投射部材としてのフロントガラス6を介して、必要な映像情報を、車両内部の運転者や同乗者に対して、一方向に、高解像度で表示して監視させることが可能となる。
【0132】
なお、その際、車両の外部からは、当該情報を監視することはできない。しかしながら、本発明に係る車両用情報表示システムは上述した実施例に限定されるものではなく、その他、映像情報を車両の外部に対しても表示することも可能である。即ち、上述したフロントガラス6だけではなく、更には、シールドガラスであるリアガラス6’やサイドガラス6”を介しても、上記と同様にして、映像情報を車両内部へ、または、外部に対して表示することが可能である。
【0133】
例えば、本実施例のシステムでは、「空車」などの車両の状態を示す情報を、タクシーのフロントガラス6の一部に、更には、リアガラス6’やサイドガラス6”に表示することも可能であり、或いは、その他の情報宣伝・広告等の情報を、車両の外部に対して表示することも可能である。また、バスや電車などの車両においても、その路線や行先などの情報をフロントガラスやリアガラスやサイドガラスなどに、一方向に、車外に対して表示することも可能である。以下には、情報を外部に対して表示する場合の車両用情報表示システムの構成について述べる。
【0134】
図33には、被投射部材としてのフロントガラス6を介して、必要な映像情報を、車両の外部に対して、一方向に、高解像度で表示して監視させるシステム、より具体的には、ここでは、タクシーのフロントガラスにタクシーの状態(「空車」など)を表示する例について示す。なお、この例では、上記図32に示した構成において、フロントガラス6の表面に設けた透明シート51’(図18を参照)として、車両情報表示装置100’からの映像光をフロントガラス6で拡散・透過させ、その映像を、図18等に矢印で示すように、車両の外部に透過して表示し、例えば、歩行者等が監視可能とするものである。その結果、運転者や同乗者は、必要な情報をフロントガラス6上に車外に対して比較的大きく表示することができるが、その表示が車内から監視する車外の景観の監視を妨害することはなく、運転者の運転を妨げることはない。
【0135】
また、上述した透明シート51’の透明拡散シート材55に代えて特定の偏波の反射率を高めた増反射コーティングを前述の偏光板の裏面に設けることで映像光束の反射率が大きくでき、同時にフロントガラス6の反射映像により生じる二重像の強度も大幅に軽減できる。即ち、上述した技術と同様の効果が得られることを確認した。
【0136】
更に、上述した透明シート51’の透明拡散シート材55に代えて、例えばサンテックディスプレイ(株)のPDLC(Polymer Dispersed Liquid Crystal)を使用し、映像表示状態では電圧を印加せず映像光を分散させ、映像非表示状態では電圧を印加して透明な状態とすることで透明シートの代用とすると良い。
【0137】
なお、透明シート51’は、上記と同様、S波を透過する偏光板57と透明拡散シート材55で構成されており、なお、ここでは、屈折率の大きいナノ粒子ジルコニウムやナノ粒子ダイヤモンドを分散させた熱可塑性高分子を溶かしながら延伸したフィルム、例えば、JXTGエネルギー社製「カレイドスクリーン」(特許文献2を参照)を用いることで、映像を表示していない場合には透明であり、他方、映像表示時には、映像光を拡散・透過させる。これにより、運転者や同乗者には映像情報を視認させずに車外の風景の監視を妨げず、外部に映像情報を表示可能となる。
【0138】
この場合の透明シート51’による作用について述べる。透明シート51’は、偏光板57と透明拡散シート材55および位相差板58で構成されており、上記と同様に、斜め方向から入射する太陽光を、そのS偏波は反射し、他方、P偏波を透過することにより太陽光の照度を軽減する。この時、位相差板58によってP偏光の偏光軸を回転させることで一部の太陽光を偏光板で吸収させる。この結果、映像投写装置48が太陽光により受けるダメージを分散できる。
【0139】
一方、透明拡散シート材55(図18を参照)の作用によって車外に拡散する映像光はリアガラス6’等で反射し車内に戻る。この光はドライバの視界を遮るために運転上支障となる。そこで本実施例ではリアガラス6’等と偏光板57の間に位相差板58を配置し反射光を偏光板で吸収させることで映像光による情報は、車内の運転者や同乗者に視認されることなく、一方向に、車両の外部へ向かって表示される。
【0140】
図19に示す一方向性透明シートの例2でも同様の効果を得ることができることは言うまでもない。その際、当該映像光による情報が、車内の運転手や同乗者による車外の景観の監視を妨げて運転を妨害することもない。以上述べた透明シート51の拡散透過率と平行光線透過率の比率により定義される曇度(HAZE)は10%以下であれば実用上問題ないが望ましくは4%以下であれば良い。一方、自動車用のウィンドガラスのHAZEは2%以下である。
【0141】
なお、上記のように、フロントガラス6、更には、リアガラスやサイドガラス等のシールドガラスの一部を利用した車両外部への情報の表示は、特に、上述したタクシーの空車状態を示す「空車」等の情報を路上の歩行者等に対して表示するのに適しているであろう。また、本実施例に係る車両用情報表示システムは、上述したように、映像情報を、一方向に、フロントガラス上に表示するだけではなく、更に、例えば、バスや電車などの大型の車両においても、その車両を構成するシールドガラスであるリアガラス6’やサイドガラス6”(図25図26等を参照)などの被投射部材を利用して、宣伝、広告や通知等を含む各種の情報を表示することも可能である。以下には、情報を車両の外部に対して表示する場合の車両用情報表示システムの構成やその作用について更に述べる。
【0142】
図34は、一例として、車両の一部を構成する被投射部材として、車両を構成するリアガラス6’を介して、例えば、車両の外部にいる歩行者等に対して情報を表示するものである。その結果、運転者や同乗者は、必要な情報を、上述したフロントガラス6上に監視することができるが(図25等を参照)、同時に、リアガラス6’によっても車外に情報を表示できる。なお、運転者や同乗者は、外部に対して表示した情報については、これを監視することはできず、そのため、運転者の視野を妨害することもない。即ち、車外への情報の表示によって車内の運転者や同乗者が外部の景観を監視することの妨げとはならない。
【0143】
この例では、車両の一部を構成する被投射部材であるリアガラス6’の上方に車両情報表示装置100’を配置し、その映像光をリアガラス6’の全面または一部に設定した画像表示領域(1e)に向けて投射することにより、映像情報の表示を行う。
【0144】
なお、この例でも、リアガラス6’の画像表示領域には上述した図18および図19に示した透明シート51’が設けられることは当然であろう。加えて、映像情報を車外へ向けて一方向に表示する被投射部材として、上述したフロントガラス6やリアガラス6’に限定されることはなく、その他、例えば、車両の側面を構成するサイドガラス6”(図25図26図31等を参照)を利用することも可能であり、その場合、ここでは図示しないが、サイドガラス6”の近傍の部材(例えば、隣接する天井面や窓の枠組の一部など)に車両情報表示装置100’を配置すると共に、当該サイドガラス6”の画像表示領域(1d)には、上記図18および図19に示した透明シート51’が設けられることは当然であろう。
【0145】
かかるサイドガラス6”への情報の表示は、例えば、タクシーにおいて、「お待たせしました」または「ご乗車ください」等のメッセージを路上の乗客等に対して表示するのに適しているであろう。
【0146】
加えて、以上に述べた例では、表示する映像情報を、車両を構成する被投写部材であるフロントガラス6やリアガラス6’やサイドガラス6”を介して、一方向に、車両の外部、または、内部に表示する車両情報表示装置100および100’について述べた。しかしながら、本発明はこれらに限定されることなく、例えば、情報を車両の内部に表示する車両情報表示装置100と共に、情報を車両の外部に対して表示する車両情報表示装置100’を、適宜、組み合わせることも可能である。
【0147】
このことによれば、例えば、公共の交通機関であるバスや電車などに適用した場合、そのリアガラス6’やサイドガラス6”を介して、車外の公衆に対して宣伝・広告や通知等を含む各種の情報を表示することが可能であり(但し、車内からは視認されないように制御可能)、公衆への有効な情報の表示ができる。また、上述したように、車両情報表示装置としてヘッドアップディスプレイ(HUD)700も同時に搭載して利用することも可能である。
【0148】
更に、上述した透明拡散シート材55(図18を参照)に代えて、例えばサンテックディスプレイ(株)のPDLC(Polymer Dispersed Liquid Crystal)を使用し映像光入射側に特定の偏波を吸収または反射するシートまたは膜を成膜することで映像表示状態では電圧を印加せず白色状態とすることで映像光を車内外に映像表示が可能となる。映像非表示状態では電圧を印加して透明な状態とすることで透明シートの代用とすると良い。運転者が後部景観を観る必要がある、例えば後進ギアにシフトした場合やリアミラーやルームミラーに視点を移動させたことを運転者監視カメラで確認した場合には、PDLCの一部に電圧を印加してPDLC全面や一部を透明として後方視認性を確保する。上述したシートまたは膜により運転者側に映像光が戻ることを軽減し運転の支障とならないようにする。
【0149】
更には、上述したHUD装置700からの映像を、上述した映像投写装置48や光方向変換パネル54を含む表示装置を利用してウィンドガラス6に表示することも可能であり、その一例は上記図29図31に示した。なお、HUD装置700の構成や動作は上記と同様であり、また、車両情報表示装置100の構成や動作も上記と同様である。なお、この場合においても、上記と同様に、発生した光の利用効率を向上することが可能であり、更に、その均一な照明特性をより向上すると同時に、モジュール化されたS偏光波の光源装置等を含め、小型かつ低コストで製造することが可能となる。
【0150】
加えて、車両を構成する被投射部材であるフロントガラス6やリアガラス6’やサイドガラス6”を介してより大きな映像を表示する場合には、上述した車両情報表示装置100および100’において光源装置101と共に映像投写装置48を構成する映像表示素子52として、比較的安価な液晶表示パネルを複数枚組み合わせて接合部を連続的にして一体とした大型の液晶表示パネル52を採用することも可能である。この場合、上述した光源装置101からの光束を平行にウィンドガラス6に設けられた透明シート51へ向けて出射し、当該透明シート51によって一方向に反射・拡散させることによっても、消費電力を大幅に低減しながら、より拡大した映像情報を表示することが可能な車両用情報表示システムを、比較的、簡単かつ安価に実現することができる。
【0151】
以上述べた本発明のHUD装置型の車両用映像表示システムにおいて、映像表示装置48からの映像光が平行な場合、例えばウィンドガラスから監視者の眼8までの距離を80cmとし、虚像が見える距離(ウィンドガラスに反射する位置)をパラメータとして、映像表示装置48の画面水平寸法を10インチおよび20インチとした場合のウィンドガラスに見える反射像(虚像)の相対サイズを計算により求めた。結果を図35に示す。
【0152】
監視者の眼に対して水平な軸L-L’に対して虚像が上部に成立すると空中に虚像が現れ、自動車が上下に変動すると監視者が乗り物酔いを起こす。このため、虚像は水平線L-L‘の上または下方に表示するのが良く、発明者らの実験の結果、虚像と水平軸とがなす角度βは0度から8度までの範囲が好適であり、拡張現実を実現する場合には0度から4度の範囲が更に良好であることが判明した。βが4度の場合の虚像距離は20mで、映像表示装置の水平サイズが10インチの場合、ウィンドで反射して得られる虚像は250インチ相当、20インチの場合は500インチ相当となる。
【0153】
更に、図36は、上述した映像光の出射方向を規制する作用を持つ映像光制御フィルム70(図15を参照)を設けた映像表示装置48を、特に自動車に搭載した場合の一例を示す断面図である。図36において、光源装置101は、上記図3図4などと同様に、例えば、プラスチックなどにより形成される表面または内部に光束方向変換手段204を設けた導光体203、光源としてのLED素子201、反射シート205、位相差板206などから構成されており、その上面には、映像投写装置48として、光源光入射面と映像光出射面に偏光板49を備える液晶表示パネル52が取り付けられており、その最上部には、上記図15に示した映像光制御フィルム70が設けられている。液晶表示パネル52からの映像光は特定方向(図ではフロントガラス6)に出射され、一部の光は黒色部70bで遮られるために直接監視者の眼に入ることはないため、映像表示装置48からの直接光が運転の支障となることはない。
【0154】
この映像光制御フィルム70は監視者に直接映像光が向かわないようにする作用を持ち、他方映像光は透明部分70aを通過してフロントガラス6で反射し監視者である運転者が認識できる。この映像光制御フィルム70としては、例えば信越ポリマー(株)の視野角制御フィルム(VCF:View Contorol Film)が適しており、その構造は透明シリコンと黒色シリコンを交互に配置し光入出射面に合成樹脂を配置してサンドウィツチ構造としているため、本実施例の映像光制御フィルム70と同様の効果が期待できる。
【0155】
以上述べた視野角制御フィルムの透明部70aと黒色部70bのピッチhは、表示する映像の画素に対して1/3以下であることが望ましい。この時、厚さWは視野角αを90度より大きく取りたい場合にはh/wを1.0より大きく、視野角αを90度より小さくしたい場合にはh/wを1.0より小さくすれば良い。一方、透明シート51の拡散透過率と平行光線透過率の比率により定義される曇度(HAZE)は10%以下であれば実用上問題ないが、望ましくは4%以下であれば良い。
【0156】
以上、種々の実施例について詳述したが、しかしながら、本発明は、上述した実施例のみに限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するためにシステム全体を詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0157】
1…自動車(車両)本体、6…フロントガラス、6’…リアガラス、6”…サイドガラス、100…車両情報表示装置、101…光源装置、48…映像投写装置、49…反射型偏光板、52…液晶表示パネル(素子)、50…保護カバー、51…一方向性の透明シート、54…光方向変換パネル、55…透明拡散シート材、57…偏光板、58…位相差板、透明部分…70a,黒色部分…70b、202…LED基板、203…導光体、反射シート…205…反射シート、220…ショーウィンドウ(ウィンドガラス)、300…スマートフォン。
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