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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-12
(45)【発行日】2023-09-21
(54)【発明の名称】無人航空機制御システム
(51)【国際特許分類】
   G05D 1/00 20060101AFI20230913BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20230913BHJP
   B64D 47/08 20060101ALI20230913BHJP
   B64C 13/20 20060101ALI20230913BHJP
   G05D 1/10 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
G05D1/00 B
B64C39/02
B64D47/08
B64C13/20 Z
G05D1/10
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019121894
(22)【出願日】2019-06-28
(65)【公開番号】P2021009481
(43)【公開日】2021-01-28
【審査請求日】2022-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大澤 淳司
(72)【発明者】
【氏名】山田 拓久
(72)【発明者】
【氏名】今仲 雅之
(72)【発明者】
【氏名】石丸 謙吾
(72)【発明者】
【氏名】湯淺 嵩之
【審査官】田中 友章
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-142246(JP,A)
【文献】特開2019-064349(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0162822(US,A1)
【文献】特開2017-138162(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05D 1/00
B64C 39/02
B64D 47/08
B64C 13/20
G05D 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前方の方位を検出する第1方位センサを有する無人航空機と、
前記無人航空機の飛行を制御する制御部を有し、前記無人航空機の飛行を操作する操作装置とを備えた無人航空機制御システムであって、
前記操作装置は、前記無人航空機を旋回させて前記無人航空機の前方の方位を変更する変更ボタンをさらに有し、
前記制御部は、目標方位を設定する方位設定部と、前記目標方位と前記変更ボタンの入力時の前記第1方位センサが検出した検出方位とから前記無人航空機の旋回角度を算出する旋回角度算出部と、前記旋回角度に基づいて前記無人航空機を旋回させ前記無人航空機の前方の方位を前記目標方位に変更する方位制御部と、を備え
前記無人航空機には、建物の屋根を撮像する撮像装置が搭載されており、
前記方位設定部は、前記建物の前記屋根の輪郭線を構成する複数の直線部のうち、所定の直線部と直交する方位を、前記目標方位に設定することを特徴とする無人航空機制御システム。
【請求項2】
前方の方位を検出する第1方位センサを有する無人航空機と、
前記無人航空機の飛行を制御する制御部を有し、前記無人航空機の飛行を操作する操作装置とを備えた無人航空機制御システムであって、
前記操作装置は、前記無人航空機を旋回させて前記無人航空機の前方の方位を変更する変更ボタンをさらに有し、
前記制御部は、目標方位を設定する方位設定部と、前記目標方位と前記変更ボタンの入力時の前記第1方位センサが検出した検出方位とから前記無人航空機の旋回角度を算出する旋回角度算出部と、前記旋回角度に基づいて前記無人航空機を旋回させ前記無人航空機の前方の方位を前記目標方位に変更する方位制御部と、を備え
前記無人航空機には、構造物を撮像する撮像装置が搭載されており、
前記操作装置は、前記撮像装置により撮像する撮像ボタンをさらに有し、
前記制御部は、前記撮像ボタンの入力時の前記第1方位センサが検出した検出方位を撮像画像データに関連付けて記憶し、
前記方位設定部は、前記撮像画像データに関連付けて記憶された前記検出方位を、前記目標方位に設定することを特徴とする無人航空機制御システム。
【請求項3】
前記方位設定部は、前記無人航空機が離陸したタイミングで前記第1方位センサが検出した検出方位を前記目標方位に設定することを特徴とする請求項1または2に記載の無人航空機制御システム。
【請求項4】
前記操作装置は、前記操作装置の方位を検出する第2方位センサを有し、
前記方位設定部は、前記変更ボタンの入力時の前記第2方位センサが検出した検出方位を、前記目標方位に設定することを特徴とする請求項1または2に記載の無人航空機制御システム。
【請求項5】
前記旋回角度算出部は、前記所定の直線部が前記撮像装置による撮像画像の横方向に沿って写るように前記目標方位を補正し、補正した目標方位と前記検出方位とから前記旋回角度を算出することを特徴とする請求項に記載の無人航空機制御システム。
【請求項6】
前記無人航空機は、前記無人航空機の位置を検出する位置検出装置をさらに有し、
前記制御部は、
前記撮像ボタンの入力時の前記位置検出装置が検出した検出位置を前記記憶された検出方位とともに前記撮像画像データに関連付けて記憶し、
前記制御部による前記目標方位の変更に伴って、前記無人航空機の位置を前記検出位置に制御することを特徴とする請求項に記載の無人航空機制御システム。
【請求項7】
前記無人航空機には、前記撮像装置として、光軸が前記無人航空機の前方に対して水平方向に成す角度であるパン角を変更可能な撮像装置が搭載されており、
前記制御部は、前記変更ボタンの入力時の前記パン角を初期設定値に変更するパン角制御部を有することを特徴とする請求項1または2に記載の無人航空機制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人航空機と操作装置とを備えた無人航空機制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、無人航空機を用いて、例えば高所の位置等を点検する方法が知られている。また、無人航空機の操縦を補助する機能が種々検討されている。例えば、特許文献1には、無人航空機の操縦を補助する機能として、無人航空機の離陸時の不安定性を減少させる方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2017-501926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、無人航空機は操縦者から数百m~数km離れていても飛行可能であるが、操縦者と無人航空機との距離が離れている場合、操縦者は無人航空機の向きを判別することが困難となる。これにより、操縦者の前方方向と無人航空機の前方方向とが異なる場合、無人航空機を操縦者の意図する方向に操縦するのは困難である。このため、無人航空機による障害物等への接近や飛行禁止区域への侵入につながる、という問題点がある。
【0005】
本発明は、このような点を鑑みてなされたものであり、無人航空機の操縦性を向上させることが可能な無人航空機制御システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る無人航空機制御システムは、前方の方位を検出する第1方位センサを有する無人航空機と、前記無人航空機の飛行を制御する制御部を有し、前記無人航空機の飛行を操作する操作装置とを備えた無人航空機制御システムであって、前記操作装置は、前記無人航空機を旋回させて前記無人航空機の前方の方位を変更する変更ボタンをさらに有し、前記制御部は、目標方位を設定する方位設定部と、前記目標方位と前記変更ボタンの入力時の前記第1方位センサが検出した検出方位とから前記無人航空機の旋回角度を算出する旋回角度算出部と、前記旋回角度に基づいて前記無人航空機を旋回させ前記無人航空機の前方の方位を前記目標方位に変更する方位制御部と、を備える。
【0007】
なお、本明細書および特許請求の範囲において、「ボタン」とは、物理ボタン(物理キーともいう)に限らず、タッチパネル等の非機械式のボタンを含む概念である。
【0008】
本発明の無人航空機制御システムによれば、操縦者と無人航空機との距離が離れており操縦者が無人航空機の向きを判別することができない場合であっても、操縦者が変更ボタンを操作(入力)することにより、旋回角度算出部が算出した旋回角度に基づいて方位制御部は無人航空機を旋回させ無人航空機の前方の方位を目標方位に変更する。このため、無人航空機を操縦者の意図する方向に操縦することができるので、無人航空機による障害物等への接近や飛行禁止区域への侵入を抑制することができる。このように、無人航空機の操縦性を向上させることができる。
【0009】
上記無人航空機制御システムにおいて、好ましくは、前記方位設定部は、前記無人航空機が離陸したタイミングで前記第1方位センサが検出した検出方位を前記目標方位に設定する。このように構成すれば、操縦者が変更ボタンを操作することにより、無人航空機の向き(前方の方位)を離陸位置での方位(離陸時の方位)に変更することができる。このため、操縦者は離陸位置での無人航空機の向き(方位)を覚えておくだけで、意図する方向に無人航空機を容易に操縦することができる。
【0010】
上記無人航空機制御システムにおいて、好ましくは、前記操作装置は、前記操作装置の方位を検出する第2方位センサを有し、前記方位設定部は、前記変更ボタンの入力時の前記第2方位センサが検出した検出方位を、前記目標方位に設定する。このように構成すれば、操縦者が変更ボタンを操作することにより、無人航空機の向き(前方の方位)を操作装置の方位(向き)に変更することができる。このため、操縦者は無人航空機の方向に操作装置を向けるだけで、すなわち操縦者は無人航空機の方向に体を向けるだけで、操作装置の向きと無人航空機の向きとが一致するので、操縦者は意図する方向に無人航空機を容易に操縦することができる。
【0011】
上記無人航空機制御システムにおいて、好ましくは、前記無人航空機には、建物の屋根を撮像する撮像装置が搭載されており、前記方位設定部は、前記建物の前記屋根の輪郭線を構成する複数の直線部のうち、所定の直線部と直交する方位を、前記目標方位に設定する。このように構成すれば、無人航空機の前後左右方向と屋根の輪郭線を構成する直線部の方向とが平行になるので、無人航空機を屋根の輪郭線に沿って容易に移動させることができる。
【0012】
この場合、前記旋回角度算出部は、前記所定の直線部が前記撮像装置による撮像画像の横方向に沿って写るように前記目標方位を補正し、補正した目標方位と前記検出方位とから前記旋回角度を算出してもよい。このように構成すれば、撮像装置のパン角が0度以外の場合(撮像装置の光軸方向と無人航空機の前後方向とが一致していない場合)であっても、屋根の直線部を撮像画像の横方向に沿って写らせることができる。
【0013】
上記無人航空機制御システムにおいて、好ましくは、前記無人航空機には、構造物を撮像する撮像装置が搭載されており、前記操作装置は、前記撮像装置により撮像する撮像ボタンをさらに有し、前記制御部は、前記撮像ボタンの入力時の前記第1方位センサが検出した検出方位を撮像画像データに関連付けて記憶し、前記方位設定部は、前記撮像画像データに関連付けて記憶された前記検出方位を、前記目標方位に設定する。このように構成すれば、例えば、同じ構造物に対して繰り返し点検等を行う場合に、初回の検査時に無人航空機の方位を撮像画像データに関連付けて記憶し、2回目以降の検査時に無人航空機の方位を初回の検査時に記憶した方位に変更することができる。これにより、初回の検査時の撮像画像と2回目以降の検査時の撮像画像とを同じ向きにすることができるので、画像の確認を容易に行うことができる。
【0014】
この場合、好ましくは、前記無人航空機は、前記無人航空機の位置を検出する位置検出装置をさらに有し、前記制御部は、前記撮像ボタンの入力時の前記位置検出装置が検出した検出位置を前記記憶された検出方位とともに前記撮像画像データに関連付けて記憶し、前記制御部による前記目標方位の変更に伴って、前記無人航空機の位置を前記検出位置に制御する。このように構成すれば、初回の検査時に無人航空機の位置を撮像画像データに関連付けて記憶し、2回目以降の検査時に無人航空機の位置を初回の検査時に記憶した位置に移動させることができる。これにより、初回の検査時の撮像位置と2回目以降の検査時の撮像位置とを同じ位置にすることができるので、画像の確認をより容易に行うことができる。
【0015】
上記無人航空機制御システムにおいて、好ましくは、前記無人航空機には、光軸が前記無人航空機の前方に対して水平方向に成す角度であるパン角を変更可能な撮像装置が搭載されており、前記制御部は、前記変更ボタンの入力時の前記パン角を初期設定値に変更するパン角制御部を有する。このように構成すれば、例えば、無人航空機の向きと撮像装置の光軸の向きとを容易に一致させることができる。これにより、操縦者は操作装置の表示画面を見ながら無人航空機を操縦することができるので、無人航空機の操縦性をより向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、無人航空機の操縦性を向上させることが可能な無人航空機制御システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の第1実施形態に係る無人航空機制御システムを示す模式図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る無人航空機制御システムの無人航空機の構成を示すブロック図である。
図3】本発明の第1実施形態に係る無人航空機制御システムの操作装置の操縦装置の構成を示すブロック図である。
図4】本発明の第1実施形態に係る無人航空機制御システムの操作装置の携帯端末の構成を示すブロック図である。
図5】本発明の第1実施形態に係る無人航空機制御システムの携帯端末の制御ブロック図である。
図6】本発明の第1実施形態に係る無人航空機制御システムを用いた屋根の点検方法のフローを示す図である。
図7】無人航空機が離陸位置の上方まで自律飛行して戻って来た際に携帯端末の表示部に表示される画像を示す図である。
図8】無人航空機の向きと撮像装置の光軸の向きとが異なっている状態で携帯端末の表示部に表示される画像を示す図である。
図9】本発明の第2実施形態に係る無人航空機制御システムの操作装置の操縦装置の構成を示すブロック図である。
図10】本発明の第2実施形態に係る無人航空機制御システムの携帯端末の制御ブロック図である。
図11】本発明の第2実施形態に係る無人航空機制御システムを用いた屋根の点検方法のフローを示す図である。
図12】本発明の第3実施形態に係る無人航空機制御システムの携帯端末の制御ブロック図である。
図13】本発明の第3実施形態に係る無人航空機制御システムを用いた屋根の点検方法のフローを示す図である。
図14】屋根の長手方向となる直線部が撮像装置による撮像画像の横方向に沿って写った状態を示す図である。
図15】本発明の第4実施形態に係る無人航空機制御システムの無人航空機の構成を示すブロック図である。
図16】本発明の第4実施形態に係る無人航空機制御システムの携帯端末の制御ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態に係る無人航空機制御システムについて、図面を参照しながら説明する。
【0019】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る無人航空機制御システム1を示す模式図である。図2は、本発明の第1実施形態に係る無人航空機制御システム1の無人航空機10の構成を示すブロック図である。図3は、本発明の第1実施形態に係る無人航空機制御システム1の操作装置2の操縦装置30の構成を示すブロック図である。図4は、本発明の第1実施形態に係る無人航空機制御システム1の操作装置2の携帯端末50の構成を示すブロック図である。
【0020】
図1に示すように、本実施形態に係る無人航空機制御システム1は、無人航空機(UAV)10と、無人航空機10を制御する操作装置2と、によって構成されている。本実施形態では、無人航空機制御システム1は、例えば建物の屋根に損傷等の異常が生じているか否かを点検する際に用いられる。
【0021】
無人航空機10は、所謂ドローンであり、操作装置2から送信される後述する撮像位置データ等に基づいて、目標の屋根の上方まで自律飛行し屋根を撮像する。無人航空機10は、撮像した画像を操作装置2に送信する。
【0022】
操作装置2は、操縦装置30および携帯端末50によって構成されている。携帯端末50は、操縦装置30の所定位置に固定されている。携帯端末50は、例えば、所定のプログラム(アプリケーションソフトウェア)をインストールしたスマートフォン、タブレット端末、パーソナルコンピュータ等であり、本実施形態ではスマートフォンである。操作装置2は、無人航空機10が撮像した画像を取得するとともに、後述する表示部52に画像を表示する。
【0023】
以下、無人航空機10および操作装置2をより具体的に説明する。
【0024】
[無人航空機10の構成]
無人航空機10は図2に示すように、送受信部11と、受信機12と、高さセンサ13と、撮像装置14と、駆動部16と、第1方位センサ19と、ジャイロセンサ20と、制御部21と、を備えている。
【0025】
送受信部11は、操縦装置30との間でデータの無線送受信を行う。送受信部11が操縦装置30から受信する主要なデータとしては、飛行高さデータ、撮像位置データ、旋回角度データ等が挙げられる。送受信部11が操縦装置30に送信する主要なデータとしては、撮像した画像データ、方位データ等が挙げられる。
【0026】
受信機12は、GPS信号を受信するとともに、受信したGPS信号に基づいて受信機12の位置(経度、緯度)、すなわち無人航空機10自身の位置を検出する。
【0027】
高さセンサ13は、例えば気圧を計測する気圧センサからなり、無人航空機10の地面に対する高さ位置を検出する。なお、高さセンサ13を設けず、受信機12が受信したGPS信号に基づいて無人航空機10の地面に対する高さ位置を検出してもよい。
【0028】
撮像装置14は、カラーのデジタル画像を撮像できるカメラ(撮像部)を含んでおり、屋根を撮像して画像データを取得する。この画像データには、撮像位置データが関連付けられていてもよい。撮像装置14は、カメラに含まれるレンズの光軸を水平方向に動かすパン機能、上下方向に動かすチルト機能を有する。撮像装置14は、カメラの光軸のパン角およびチルト角を調整する調整部14aを含んでいる。なお、パン角とは、光軸が無人航空機10の前方に対して水平方向に成す角度であり、パン角の範囲は、例えば、無人航空機10の前方を中心として左右方向に約75度の角度範囲である。チルト角とは、光軸が無人航空機10の前方に対して上下方向に成す角度であり、チルト角の範囲は、例えば、無人航空機10の前方に対して、上側に30度の位置から下側に90度の位置(無人航空機10の真下の位置)までの角度範囲である。
【0029】
駆動部16は、複数の回転翼と、回転翼に付与する駆動力を発生するモータと、モータに電力を供給する蓄電池と、を含んでいる。複数の回転翼の回転速度を個別に制御することによって、無人航空機10の飛行高さ、飛行経路、飛行速度、水平度、向き等を変更することができる。
【0030】
第1方位センサ19は、無人航空機10が向いている方位(前方の方位)を検出する。
【0031】
ジャイロセンサ20は、無人航空機10のピッチ軸、ロール軸およびヨー軸回りの角速度を検出する。これにより、無人航空機10の姿勢や旋回角度(水平面内における回転角度)を制御することが可能となる。
【0032】
制御部21は、演算装置(CPU)21aおよび記憶装置(例えばRAM、ROM等)21bを含んでいる。演算装置21aは、記憶装置21bに記憶されている動作プログラムを実行する。
【0033】
制御部21は、送受信部11が受信した飛行高さデータ、撮像位置データ、旋回角度データ等を記憶する。また、制御部21は、撮像位置データおよび飛行高さデータに基づいて駆動部16を制御して、無人航空機10を自律飛行させる。また、制御部21は、撮像位置データに基づいて撮像装置14を制御して、撮像位置で屋根を撮像する。また、制御部21は、旋回角度データに基づいて駆動部16を制御して、無人航空機10を水平方向に所定角度旋回させる。また、制御部21は、撮像装置14が取得した画像データを記憶するとともに、操縦装置30に送信する。また、制御部21は、第1方位センサ19の検出結果(検出方位)を航空機方位データとして記憶するとともに、操縦装置30に送信する。
【0034】
また、制御部21は、操縦装置30からの各種制御信号に基づいて、無人航空機10を所定方向に移動させたり、所定角度旋回させたり、撮像装置14のパン角やチルト角を変更したり、撮像装置14により画像を撮像したりする。また、制御部21は、後述するように、操縦装置30からの初期設定信号により、撮像装置14のパン角およびチルト角を初期設定値に変更する。
【0035】
[操作装置2の構成]
操作装置2は図1に示すように、操縦装置30および携帯端末50によって構成されている。
【0036】
操縦装置30は、無人航空機10の飛行を操作するためのものであり、図3に示すように、送受信部31と、操作部32と、入力部34と、制御部39と、を備えている。なお、制御部39および携帯端末50の後述する制御部59は、本発明の「制御部」の一例である。
【0037】
送受信部31は、無人航空機10との間でデータの送受信を行うとともに、後述するように携帯端末50との間でデータの送受信を行う。
【0038】
操作部32は、操作レバー、操作ボタン、ダイヤル等からなる。例えば操作レバー32a(図1参照)は、無人航空機10を前進後進および水平方向に旋回させるためのものであり、操作レバー32b(図1参照)は、無人航空機10を上下方向および左右方向に移動させるためのものである。操作部32には、操作レバー32aおよび32bの他、無人航空機10の撮像装置14のパン角およびチルト角を変更するためのダイヤル(図示せず)等が設けられている。
【0039】
入力部34は、無人航空機10の撮像装置14により撮像を行うための撮像ボタン34a、及び変更ボタン34b等からなる。変更ボタン34bは、後述するように、無人航空機10を旋回させて無人航空機10の向き(前方の方位)を目標方位に変更するためのボタンである。なお、変更ボタン34bは、操縦装置30に予め設けられているボタンを、無人航空機10の向きを目標方位に変更するための変更ボタンとして割り当てたものである。
【0040】
制御部39は、操作部32の操作や入力部34の入力により、無人航空機10の飛行や撮像等を制御する。制御部39は、演算装置(CPU)39aおよび記憶装置(例えばRAM、ROM等)39bを含んでいる。演算装置39aは、記憶装置39bに記憶されている動作プログラムを実行する。また、制御部39は、送受信部31が受信した画像データ、航空機方位データ(無人航空機10の第1方位センサ19の検出結果)等を記憶する。
【0041】
図4に示すように、携帯端末50は、送受信部51と、表示部52と、入力部53と、制御部59と、を備えている。
【0042】
送受信部51は、操縦装置30との間でデータの送受信を行う。ここでは、携帯端末50の送受信部51と操縦装置30の送受信部31との間で無線通信を行う例について説明するが、携帯端末50と操縦装置30とを有線接続することにより通信を行ってもよい。
【0043】
表示部52は、例えば液晶表示パネルからなり、地図データを表示したり、無人航空機10の撮像装置14が撮像した画像を表示したりする。なお、地図データは、インターネットを介して取得したものであってもよいし、後述する記憶装置59bに予め記憶されているものであってもよい。
【0044】
入力部53は、操縦者により操作・入力されるものであり、例えば、表示部52上に配置されるタッチパネルや、物理ボタンからなる。入力部53は、無人航空機10の撮像装置14により撮像を行うための撮像ボタン53aおよび変更ボタン53b等からなる。撮像ボタン53aおよび変更ボタン53bは、それぞれ操縦装置30の撮像ボタン34aおよび変更ボタン34bと同様の機能を有する。
【0045】
制御部59は、入力部53の入力により無人航空機10の飛行や撮像等を操縦装置30を介して制御する。制御部59は、演算装置(CPU)59aおよび記憶装置(例えばRAM、ROM等)59bを含んでいる。演算装置59aは、記憶装置59bに記憶されている動作プログラムを実行する。制御部59がプログラムを実行することによって、後述する各処理を実現することができる。このようなプログラムは、例えばインターネットを介してダウンロードすることによって取得され、記憶装置59bに記憶される。制御部59は、送受信部51が受信した画像データ、航空機方位データ(無人航空機10の第1方位センサ19の検出結果)等を記憶する。
【0046】
図5は、本発明の第1実施形態に係る無人航空機制御システム1の携帯端末50の制御ブロック図である。次に、図5を参照して、本実施形態の携帯端末50の制御部59について詳細に説明する。制御部59は、ソフトウェアとして、方位設定部59c、旋回角度算出部59d、方位制御部59eおよびパン角制御部59fを備えている。
【0047】
方位設定部59cは、無人航空機10を旋回させて無人航空機10の前方をある方位に向ける際の目標方位を設定する。方位設定部59cには、第1方位センサ19の検出信号が入力される。本実施形態では、方位設定部59cは、第1方位センサ19が離陸したタイミングで第1方位センサ19が検出した検出方位を目標方位に設定する。方位設定部59cは、設定した目標方位を旋回角度算出部59dに出力する。
【0048】
旋回角度算出部59dは、無人航空機10を旋回させて無人航空機10の前方の方位を目標方位に変更するために必要な無人航空機10の旋回角度を算出する。旋回角度算出部59dは、目標方位と、操縦装置30の変更ボタン34b又は携帯端末50の変更ボタン53bの入力時(操縦者により押された時)の第1方位センサ19が検出した検出方位と、から無人航空機10の旋回角度を算出する。
【0049】
具体的には、本実施形態では、旋回角度算出部59dには、方位設定部59cが設定した目標方位と、第1方位センサ19の検出信号と、操縦装置30の変更ボタン34bおよび携帯端末50の変更ボタン53bの入力信号と、が入力される。旋回角度算出部59dは、目標方位と、変更ボタン34b又は53bの入力時の第1方位センサ19が検出した検出方位と、の角度差を算出する。この角度差は、無人航空機10の前方の方位を目標方位にするために必要な無人航空機10の旋回角度である。旋回角度算出部59dは、算出した旋回角度を方位制御部59eに出力する。
【0050】
方位制御部59eは、入力された旋回角度に基づいて無人航空機10に制御信号を送信する。これにより、無人航空機10は旋回角度算出部59dにより算出された旋回角度だけ旋回し、無人航空機10の向き(前方の方位)が目標方位に変更される。
【0051】
パン角制御部59fには、操縦装置30の変更ボタン34bおよび携帯端末50の変更ボタン53bの入力信号と、が入力される。パン角制御部59fは、変更ボタン34b又は53bの入力時に撮像装置14の調整部14aによりパン角およびチルト角を初期設定値に変更するための初期設定信号を操縦装置30を介して無人航空機10に送信する。
【0052】
次に、本実施形態の屋根の点検方法について詳細に説明する。なお、ここでは、撮像装置14で撮像される画像の縦横比を3:4、撮像装置14のパン角の初期設定値を0度、撮像装置14のチルト角の初期設定値を-90度(すなわち、撮像装置14の光軸は鉛直方向)、として説明する。
【0053】
工程S1において、操縦者(点検者)は、携帯端末50に点検対象の建物の住所等を入力する。これにより、携帯端末50の表示部52には、入力した住所周辺の上空からの地図画像が表示され、操縦者は、地図画像から点検対象の建物の屋根を指定するとともに屋根の輪郭線を指定する。この輪郭線の指定は、タッチパネル等の入力部53を用いて地図画像上で容易に行うことができる。地図画像には位置情報(緯度、経度)および方位情報が含まれているため、指定した輪郭線に対応するように、位置情報(緯度、経度)および方位情報を含む輪郭線データが生成される。生成された輪郭線データは記憶装置59bに記憶されるとともに、操縦装置30を介して無人航空機10に送信される。
【0054】
工程S2において、操縦者は、屋根の高さを入力部53に入力する。これにより、屋根よりも所定高さだけ高い位置に無人航空機10の飛行高さが設定され、飛行高さデータが操縦装置30を介して無人航空機10に送信される。
【0055】
工程S3において、無人航空機10は、離陸位置(ホームポイントともいう)から離陸する。無人航空機10が離陸位置から上昇する際に、無人航空機10の第1方位センサ19は、無人航空機10の前方の方位を検出し、検出結果(航空機方位データ)を操縦装置30を介して携帯端末50に送信する。携帯端末50は、この検出結果を記憶装置59bに記憶する。
【0056】
工程S4において、方位設定部59cは、第1方位センサ19が離陸した際に第1方位センサ19が検出した検出方位を目標方位に設定する。方位設定部59cは、設定した目標方位を旋回角度算出部59dに出力する。
【0057】
工程S5において、無人航空機10は、建物の上空の目標位置まで自律飛行する。また、無人航空機10は、撮像装置14により屋根の画像を撮像し、撮像データを記憶装置21bに記憶するとともに操縦装置30を介して携帯端末50に送信する。携帯端末50は、撮像データを記憶装置59bに記憶するとともに、撮像画像を表示部52に表示する。
【0058】
なお、無人航空機10が建物の上空の目標位置に到達した際に、例えば、無人航空機10が建物の上空に到達したことを知らせるためのメッセージ等が携帯端末50の表示部52に表示されてもよい。
【0059】
建物の屋根の検査においては、必要に応じて、操縦者は手動で無人航空機10を操縦する。具体的には、本実施形態では、撮像装置14の調整部14aによりパン角を0度とし、撮像装置14のチルト角を-90度(すなわち、撮像装置14の光軸は鉛直方向)としているため、撮像画像は屋根の真上方向からの画像になる。しかしながら、例えば建物の側壁を点検したり、屋根を斜め上方から点検したりする場合がある。この場合、操縦者は、撮像装置14のパン角およびチルト角を変更したり、無人航空機10を前後左右に移動させたり旋回させたりする。又、無人航空機10を障害物等から遠ざけたり、飛行禁止区域に侵入するのを防止したりすることを目的として、無人航空機10を前後左右に移動させたりする。
【0060】
このとき、操縦者と無人航空機10との距離が離れている場合、操縦者は無人航空機10の向きを判別することが困難であるため、無人航空機10を操縦者の意図する方向に操縦するのは困難である。
【0061】
そこで、本実施形態では、操縦者は、無人航空機10を手動で操縦する場合、操縦装置30の変更ボタン34b又は携帯端末50の変更ボタン53bを押す。これにより、無人航空機10は、所定角度だけ旋回し、無人航空機10の向き(方位)は、離陸位置での無人航空機10の向き(方位)に変更される。
【0062】
具体的には、操縦者が操縦装置30の変更ボタン34b又は携帯端末50の変更ボタン53bを押すと、工程S6において、変更ボタン34b又は53bが入力されたと判断され、工程S7に進む。操縦者が無人航空機10を手動で操縦しない場合は、工程S10に進む。
【0063】
工程S7において、旋回角度算出部59dは、目標方位と、変更ボタン34b又は53bの入力時の第1方位センサ19が検出した検出方位と、から旋回角度を算出する。旋回角度算出部59dは、算出した旋回角度を方位制御部59eに出力する。
【0064】
工程S8において、方位制御部59eは、入力された旋回角度に基づいて無人航空機10に制御信号を送信する。これにより、無人航空機10は旋回角度算出部59dにより算出された旋回角度だけ旋回する。このとき、無人航空機10は、ジャイロセンサ20を用いて正確に上記旋回角度だけ旋回する。これにより、無人航空機10は、離陸位置における無人航空機10の向き(方位)と同じ方向を向く。このため、操縦者は、離陸位置における無人航空機10の向き(方位)を覚えておくだけで、意図する方向に無人航空機10を容易に操縦することが可能となる。
【0065】
工程S9において、パン角制御部59fは、撮像装置14のパン角およびチルト角を初期設定値に変更するための初期設定信号を無人航空機10に送信する。これにより、撮像装置14の調整部14aによりパン角が0度、チルト角が-90度に変更され、無人航空機10の前後左右方向と撮像画像の上下左右方向とが一致する。このため、操縦者は表示部52を見ながら無人航空機10を意図する方向に容易に操縦することができる。
【0066】
無人航空機10の手動での操縦が終了すると、工程S10において、操縦者は操縦装置30のリターンボタン(図示せず)を押す。これにより、操縦装置30から無人航空機10にリターン信号が送信され、無人航空機10が離陸位置の上方まで自律飛行して戻ってくる。このとき、携帯端末50の表示部52には、図7に示すような画像が表示される。なお、図7の領域Rは、無人航空機10の真下の位置(着陸予定位置)を示している。
【0067】
操縦者は、表示画像の領域Rがホームポイントにある場合、操縦装置30の図示しない着陸ボタンを押す。これにより、無人航空機10がホームポイントに着陸する。なお、無人航空機10がホームポイントの上方まで自律飛行して戻って来た際に、表示部52に、着陸の可否を操縦者に求めるメッセージ(例えば「着陸しますか?」)が表示されてもよい。そして、表示部52に表示されている「OK」ボタンを操縦者が押すことによって無人航空機10をホームポイントに着陸させてもよい。
【0068】
また、例えば、無人航空機10の着陸できる範囲が狭い場合には、GPS等の受信機12を利用しても、画像の領域Rがホームポイントからずれる場合がある。この場合、操縦者は、無人航空機10を操縦して表示画像の領域Rをホームポイントに移動させた後、手動または自律飛行により無人航空機10を着陸させる。また、風が強い場合も、操縦者は無人航空機10を徐々に降下させながら位置を修正し着陸させる。このように着陸時に操縦者による操縦が必要な場合にも、上述したように、操縦装置30の変更ボタン34b又は携帯端末50の変更ボタン53bを用いて、無人航空機10の向き(方位)をホームポイント(離陸位置)での無人航空機10の向き(方位)に変更してもよい。
【0069】
また、図8に示すように、無人航空機10(機体)の向きと撮像装置14の向きとが異なっている場合もある。具体的には、図8では、無人航空機10は図中、左上方向を向いており、撮像装置14は無人航空機10の前方方向に対して右方向にパン角(ここでは約45度)が設定されている。この状態では、操縦者は意図する方向に無人航空機10を操縦することが困難である。そこで、携帯端末50の表示部52に、無人航空機10の向き(図中、左上の表示)や、操縦装置30の操作方向(図中、右上の表示)および無人航空機10の移動方向(図中、中央の表示)を表示してもよい。この場合、操縦装置30の操作方向と無人航空機10の移動方向との対応関係が容易に理解できるように、操縦装置30の操作方向を示す矢印とこれに対応する無人航空機10の移動方向を示す矢印とに同じ着色やハッチング等を施してもよい。この場合、操縦者は、表示部52を見ながら、意図する方向に無人航空機10を容易に操縦することが可能となる。
【0070】
本実施形態では、上記のように、操縦者と無人航空機10との距離が離れており操縦者が無人航空機10の向きを判別することができない場合であっても、操縦者が変更ボタン34b又は53bを操作(入力)することにより、旋回角度算出部59dが算出した旋回角度に基づいて方位制御部59eは無人航空機10を旋回させ無人航空機10の前方の方位を目標方位に変更することができる。このため、無人航空機10を操縦者の意図する方向に操縦することができる。その結果、無人航空機10による障害物等への接近や飛行禁止区域への侵入を抑制することができる。このように、無人航空機10の操縦性を向上させることができる。
【0071】
また、上記のように、方位設定部59cは、無人航空機10が離陸したタイミングで第1方位センサ19が検出した検出方位を目標方位に設定する。これにより、操縦者が変更ボタン34b又は53bを操作することにより、無人航空機10の向き(前方の方位)を離陸位置での方位(離陸時の方位)に変更することができる。このため、操縦者は離陸位置での無人航空機10の向き(方位)を覚えておくだけで、意図する方向に無人航空機10を容易に操縦することができる。
【0072】
また、上記のように、制御部59は、変更ボタン34b又は53bの入力時にパン角を初期設定値に変更するパン角制御部59fを有する。これにより、無人航空機10の向きと撮像装置14の光軸の向きとを容易に一致させることができる。このため、操縦者は携帯端末50の表示部52を見ながら無人航空機10を操縦することができるので、無人航空機10の操縦性をより向上させることができる。
【0073】
(第2実施形態)
図9は、本発明の第2実施形態に係る無人航空機制御システム1の操作装置2の操縦装置30の構成を示すブロック図である。この第2実施形態では、上記第1実施形態と異なり、無人航空機10の向き(方位)を操縦装置30の向き(方位)に変更する場合について説明する。
【0074】
操縦装置30は、図9に示すように、送受信部31、操作部32、入力部34および制御部39に加え、第2方位センサ37を備えている。
【0075】
第2方位センサ37は、操縦装置30の方位を検出する。ここで、操縦装置30の方位とは、操縦装置30を上方から見た際に、操縦装置30の下部から上部に向かう方向の方位である。例えば、図1においては、上方向の方位である。
【0076】
制御部39は、第2方位センサ37の検出結果を操縦装置方位データとして記憶するとともに、携帯端末50に送信する。
【0077】
図10は、本発明の第2実施形態に係る無人航空機制御システム1の携帯端末50の制御ブロック図である。次に、図10を参照して、本実施形態の携帯端末50の制御部59について説明する。
【0078】
本実施形態では、方位設定部59cには、第1方位センサ19の検出信号は入力されず、第2方位センサ37の検出信号が入力される。また、方位設定部59cには、変更ボタン34bおよび53bの入力信号が入力される。
【0079】
本実施形態では、方位設定部59cは、変更ボタン34b又は53bの入力時の第2方位センサ37が検出した検出方位を、目標方位に設定する。
【0080】
第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0081】
次に、本実施形態の屋根の点検方法について説明する。
【0082】
本実施形態の屋根の点検方法は図11に示すように、上記第1実施形態と異なり、工程S4がなく、工程S6と工程S7との間に目標方位を設定する工程S11が設けられている。
【0083】
本実施形態では、操縦者が操縦装置30の変更ボタン34b又は携帯端末50の変更ボタン53bを押すと、工程S6において、変更ボタン34b又は53bが入力されたと判断され、工程S11に進む。
【0084】
工程S11において、方位設定部59cは、変更ボタン34b又は53bの入力時の第2方位センサ37が検出した検出方位を、目標方位に設定する。方位設定部59cは、設定した目標方位を旋回角度算出部59dに出力する。
【0085】
工程S8において、無人航空機10は、所定の旋回角度だけ旋回し、操縦装置30の向き(方位)と同じ方向を向く。
【0086】
第2実施形態のその他の点検方法は、上記第1実施形態と同様である。
【0087】
本実施形態では、上記のように、方位設定部59cは、変更ボタン34b又は53bの入力時の第2方位センサ37が検出した検出方位を、目標方位に設定する。これにより、操縦者が変更ボタン34b又は53bを操作することによって、無人航空機10の向きを操縦装置30の方位(向き)に変更することができる。このため、操縦者は無人航空機10の方向に操縦装置30を向けるだけで、すなわち操縦者は無人航空機10の方向に体を向けるだけで、操縦装置30の向きと無人航空機10の向きとが一致するので、操縦者は意図する方向に無人航空機10を容易に操縦することができる。
【0088】
第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0089】
(第3実施形態)
図12は、本発明の第3実施形態の携帯端末50の制御ブロック図である。この第3実施形態では、上記第1および第2実施形態と異なり、屋根71(図14参照)の長手方向となる直線部71aが撮像装置14による撮像画像の横方向に沿って写るように、無人航空機10の向き(方位)を変更する場合について説明する。また、点検する屋根71が寄棟であり、平面視矩形状である場合について説明する。
【0090】
本実施形態では図12に示すように、制御部59は、ソフトウェアとして、地図画像データ記憶部59gをさらに備えている。地図画像データ記憶部59gには、位置情報(緯度、経度)および方位情報を含む上空からの地図画像のデータが記憶されている。
【0091】
本実施形態では、方位設定部59cには、第1方位センサ19の検出信号は入力されない。方位設定部59cは、上空からの地図画像において建物70の屋根71の輪郭線を構成する複数の直線部のうち、所定の直線部(ここでは直線部71a)と直交する方位を、目標方位に設定する。
【0092】
第3実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0093】
次に、本実施形態の屋根71の点検方法について説明する。
【0094】
本実施形態の屋根71の点検方法は図13に示すように、上記第1実施形態と異なり、工程S4がなく、工程S1と工程S2との間に目標方位を設定する工程S21が設けられている。
【0095】
本実施形態では、工程S21において、方位設定部59cは、工程S1で生成された輪郭線データに基づいて、屋根71の長手方向となる直線部71aと短手方向となる直線部71bとを決定する。そして、方位設定部59cは、直線部71aと直交する方位を、目標方位に設定する。これにより、工程S8において無人航空機10が所定の旋回角度だけ旋回すると、図14に示すように、屋根71の長手方向となる直線部71aが撮像装置14による撮像画像の横方向に沿って写る。
【0096】
第3実施形態のその他の点検方法は、上記第1実施形態と同様である。
【0097】
本実施形態では、上記のように、方位設定部59cは、建物70の屋根71の輪郭線を構成する複数の直線部のうち、所定の直線部71aと直交する方位を、目標方位に設定する。これにより、無人航空機10の前後左右方向と屋根71の輪郭線を構成する直線部71b、71aの方向とが平行になるので、無人航空機10を屋根71の輪郭線に沿って容易に移動させることができる。
【0098】
第3実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0099】
(第4実施形態)
図15は、本発明の第4実施形態に係る無人航空機制御システム1の無人航空機10の構成を示すブロック図である。この第4実施形態では、上記第3実施形態と異なり、変更ボタン34b又は53bの入力時にパン角を初期設定値に変更しない場合について説明する。
【0100】
無人航空機10では図15に示すように、撮像装置14は、調整部14aの動作からカメラ(撮像部)のパン角を検出するパン角検出センサ14bを含んでいる。パン角検出センサ14bは、検出したパン角を制御部21に出力する。
【0101】
制御部21は、入力されたパン角を記憶するとともに、操縦装置30を介して携帯端末50に送信する。
【0102】
図16は、本発明の第4実施形態に係る無人航空機制御システム1の携帯端末50の制御ブロック図である。次に、図16を参照して、本実施形態の携帯端末50の制御部59について説明する。
【0103】
本実施形態では図16に示すように、制御部59には、パン角制御部59fが設けられていない。このため、上記第3実施形態のように無人航空機10の向きを変更したとしても、撮像装置14のパン角が0度以外の場合には、直線部71b、71aは撮像画像の上下左右方向と平行にならない。すなわち、表示部52に対して屋根71が斜めに表示されてしまう。そこで、本実施形態では、制御部59は、以下のように構成されている。
【0104】
本実施形態では、旋回角度算出部59dには、パン角検出センサ14bの検出信号が入力される。また、旋回角度算出部59dは、入力されたパン角から、直線部71aが撮像装置14の撮像画像の横方向に沿って写るように、目標方位を補正する。具体的には、例えば、パン角が右方向に45度に設定されている場合には、目標方位を左方向に45度補正する。また、旋回角度算出部59dは、補正した目標方位と第1方位センサ19が検出した検出方位とから旋回角度を算出する。
【0105】
これにより、無人航空機10の方位を制御する工程S8において無人航空機10が所定の旋回角度だけ旋回すると、上記第3実施形態と同様、屋根71の長手方向となる直線部71aが撮像装置14による撮像画像の横方向に沿って写る。なお、このとき、無人航空機10は、直線部71aおよび71bに対して例えば45度傾斜した方向を向いている。
【0106】
第4実施形態のその他の構成および点検方法は、上記第3実施形態と同様である。
【0107】
本実施形態では、上記のように、旋回角度算出部59dは、所定の直線部が撮像装置14による撮像画像の横方向に沿って写るように、目標方位を補正し、補正した目標方位と検出方位とから旋回角度を算出する。これにより、撮像装置14のパン角が0度以外の場合(撮像装置14の光軸方向と無人航空機10の前後方向とが一致していない場合)であっても、屋根71の直線部71aを撮像画像の横方向に沿って写らせることができる。また、建物70の紙図面に描かれている屋根71の向きと画像の屋根71の向きとを一致させることができるので、例えば屋根71の点検作業性を向上させることができる。
【0108】
第4実施形態のその他の効果は、上記第3実施形態と同様である。
【0109】
(第5実施形態)
この第5実施形態では、上記第1~第4実施形態と異なり、例えば同一の構造物を繰り返し点検する場合に特に有効な構成について説明する。
【0110】
無人航空機10(図1参照)による点検において、例えば補修が必要な懸念がある部分を一定期間経過後に再度点検することが想定される。補修が必要な懸念がある部分とは、例えば、住宅(構造物)の屋根材においてひび割れに進展する懸念のある変色部分や、橋梁等の構造物に発生したひび割れ部分等が挙げられる。又、構造物の施工状況の進捗を把握する際にも、ある範囲を一定期間経過後に再度点検することが想定される。このように同じ位置で繰り返し点検等を行う場合、撮像装置14の向きを同じにすると、画像の確認を容易に行うことが可能となる。
【0111】
そこで、本実施形態では図3および図4に示すように、携帯端末50の制御部59は、撮像ボタン34aまたは53aの入力時に第1方位センサ19が検出した検出方位を撮像画像データに関連付けて記憶装置59bに記憶する。具体的には、撮像ボタン34aまたは53aが入力されると、第1方位センサ19が無人航空機10の方位を検出し、検出結果が携帯端末50に送信される。また、撮像装置14が撮像した撮像画像も携帯端末50に送信される。そして、制御部59は、無人航空機10の方位を撮像画像データに関連付けて記憶する。これにより、例えば入力部53を用いて撮像画像を選択することにより、構造物を撮像した時の無人航空機10の方位を後から読み出すことが可能となる。
【0112】
本実施形態では、制御部59は、撮像ボタン34aまたは53aの入力時における無人航空機10の方位だけでなく、撮像位置(経度、緯度および飛行高さ)、撮像装置14のパン角、チルト角、ズーム(焦点距離)も同様にして、撮像画像データに関連付けて記憶装置59bに記憶する。無人航空機10の位置(経度、緯度および飛行高さ)を検出する受信機12および高さセンサ13は、本発明の「位置検出装置」の一例である。
【0113】
変更ボタン34b又は53bが操縦者によって入力される(押される)と、方位設定部59cは、撮像画像データに関連付けて記憶された方位を目標方位に設定し、上記実施形態と同様、無人航空機10の向き(方位)が目標方位に変更される。また、本実施形態では、制御部59による目標方位の変更に伴って、無人航空機10の撮像位置、撮像装置14のパン角、チルト角、ズームも、この撮像画像データに関連付けて記憶された撮像位置、撮像装置14のパン角、チルト角、ズームに制御される。
【0114】
本実施形態では、再度点検が必要な屋根を撮像する際に、操縦者によって撮像ボタン34aまたは53aが入力される。これにより、屋根を撮像した時の無人航空機10の向き(方位)が記憶される。そして、一定期間経過後に、同じ屋根を再度撮像する際に、操縦者によって変更ボタン34b又は53bが入力されることによって、記憶装置59bに記憶された方位に目標方位が設定され、無人航空機10の向きが以前同じ屋根を撮像した時の向きに変更される。また、本実施形態では、撮像位置、撮像装置14のパン角、チルト角、ズームも、以前同じ屋根を撮像した時と同じ設定に変更される。このため、以前撮像した時と同じ条件で同じ屋根を撮像することができる。
【0115】
また、本実施形態では、撮像ボタン34aまたは53aが操縦者によって入力されると、無人航空機10の方位だけでなく撮像位置も記憶されるため、操縦者が変更ボタン34b又は53bを入力するだけで、無人航空機10は離陸位置から目的の屋根上空まで自律飛行し、以前撮像した時と同じ向きで同じ位置に移動することが可能である。
【0116】
なお、繰り返し点検の必要な構造物が複数存在することが想定される。この場合、無人航空機10の方位、撮像位置、撮像装置14のパン角、チルト角、ズームに関するデータのセットが、記憶装置59bに複数セット記憶される。操縦者が携帯端末50を用いて目的の構造物の撮像画像を選択することによって、複数のデータセットの中から目的のデータセットが抽出される。操縦者が変更ボタン34b又は53bを入力することによって、無人航空機10の方位、撮像位置、撮像装置14のパン角、チルト角、ズームが、目的の構造物の撮像画像データに関連付けて記憶された方位、撮像位置、撮像装置14のパン角、チルト角、ズームに制御される。
【0117】
第5実施形態のその他の構造および点検方法は、上記第1実施形態と同様である。
【0118】
本実施形態では、上記のように、制御部59は、撮像ボタン34aまたは53aの入力時の第1方位センサ19が検出した検出方位を撮像画像データに関連付けて記憶装置59bに記憶し、方位設定部59cは、記憶された検出方位を目標方位に設定する。これにより、例えば、同じ構造物に対して繰り返し点検等を行う場合に、初回の検査時に無人航空機10の方位を撮像画像データに関連付けて記憶し、2回目以降の検査時に無人航空機10の方位を初回の検査時に記憶した方位に変更することができる。これにより、初回の検査時の撮像画像と2回目以降の検査時の撮像画像とを同じ向きにすることができるので、画像の確認を容易に行うことができる。
【0119】
また、上記のように、制御部59は、撮像ボタン34aまたは53aの入力時の受信機12および高さセンサ13が検出した検出位置を撮像画像データに関連付けて記憶し、制御部59による目標方位の変更に伴って、無人航空機10の位置を撮像画像データに関連付けて記憶された検出位置に制御する。これにより、初回の検査時に無人航空機10の位置を撮像画像データに関連付けて記憶し、2回目以降の検査時に無人航空機10の位置を初回の検査時に記憶した位置に移動させることができる。このため、初回の検査時の撮像位置と2回目以降の検査時の撮像位置とを同じ位置にすることができるので、画像の確認をより容易に行うことができる。
【0120】
第5実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0121】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0122】
例えば、上記実施形態では、操縦装置30と携帯端末50とによって操作装置2が構成される例について示したが、本発明はこれに限らない。例えば、操縦装置30の機能も有する携帯端末50のみ、又は、携帯端末50の機能も有する操縦装置30のみによって、操作装置2が構成されていてもよい。
【0123】
また、上記実施形態では、無人航空機10にジャイロセンサ20を設ける例について示したが、本発明はこれに限らない。例えば、ジャイロセンサ20の替りに加速度センサを設けてもよい。
【0124】
また、上記実施形態では、着陸時に、表示画像の領域Rがホームポイントからずれている場合に無人航空機10を手動で移動させる例について示したが、本発明はこれに限らない。例えば、ホームポイントであることを無人航空機制御システム1により識別可能なシートや板をホームポイントに配置しておき、表示画像の領域Rとシートや板の位置とが一致するように、無人航空機10が自動で位置を調整しながら着陸するように構成してもよい。
【0125】
また、表示画像の領域Rの表示サイズが無人航空機10の高さに応じて変化してもよい。例えば、無人航空機10が高い位置にある場合は領域Rの表示サイズを小さくし、無人航空機10が低くなるにつれて領域Rの表示サイズを大きくしてもよい。
【0126】
また、上記実施形態では、着陸時に撮像装置14が真下を向いており(パン角が0度、チルト角が-90度)、領域Rが表示画像の中心に配置されている例について示したが、本発明はこれに限らない。例えば、撮像装置14が斜め下方向を向いていてもよく、この場合、撮像装置14のパン角およびチルト角と無人航空機10の高さとに基づいて、表示画像中の無人航空機10の真下に該当する位置を算出して領域Rを表示してもよい。
【0127】
また、上記第2実施形態では、操作装置2の向き(方位)を検出するために操縦装置30に第2方位センサ37を設ける例について示したが、本発明はこれに限らず、携帯端末50に設けられた方位センサを用いて操作装置2の向き(方位)を検出してもよい。
【0128】
また、強風の場合などに無人航空機10の揺れや風による移動速度に応じて、着陸位置を予測して領域Rを表示してもよい。
【0129】
また、上記第5実施形態では、屋根を撮像した時の無人航空機10の向き(方位)を撮像画像データに関連付けて記憶する例について示したが、本発明はこれに限らない。例えば、操縦装置30の入力部34および携帯端末50の入力部53の少なくとも一方に、無人航空機10の向き(方位)を記憶するための方位記憶ボタン(図示せず)を撮像ボタン34aまたは53aとは別に設ける。そして、操縦者が方位記憶ボタンを入力することにより、無人航空機10の方位を記憶装置59bに記憶するように構成してもよい。
【0130】
また、上述した実施形態および変形例の構成を適宜組み合わせて得られる構成についても、本発明の技術的範囲に含まれる。例えば、上記第1~第5実施形態の構成を組み合わせてもよい。この場合、上記第1~第5実施形態の変更ボタンのそれぞれに対応する複数の変更ボタンを設けてもよい。
【符号の説明】
【0131】
1:無人航空機制御システム、2:操作装置、10:無人航空機、14:撮像装置、19:第1方位センサ、34b:変更ボタン、37:第2方位センサ、39:制御部、53b:変更ボタン、59:制御部、59c:方位設定部、59d:旋回角度算出部、59e:方位制御部、59f:パン角制御部、70:建物、71:屋根、71a、71b:直線部


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