(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-12
(45)【発行日】2023-09-21
(54)【発明の名称】車輪駆動装置、車輪駆動装置のメンテナンス方法
(51)【国際特許分類】
B62B 3/00 20060101AFI20230913BHJP
F16H 7/02 20060101ALI20230913BHJP
F16H 37/02 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
B62B3/00 B
F16H7/02 Z
F16H37/02 C
(21)【出願番号】P 2019129185
(22)【出願日】2019-07-11
【審査請求日】2022-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100116274
【氏名又は名称】富所 輝観夫
(72)【発明者】
【氏名】徳田 貴司
(72)【発明者】
【氏名】栗本 直彰
【審査官】山本 賢明
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-045000(JP,A)
【文献】特開2016-209427(JP,A)
【文献】特開2018-002065(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62B 3/00
F16H 7/02
F16H 37/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、前記モータの回転を減速する減速機と、前記減速機の出力回転により駆動される車輪と、を備えた車輪駆動装置であって、
前記モータと前記減速機は、軸方向と直交する方向から見て重なるように配置され、
前記モータは、後部側を車体外側に向けて配置され、
前記モータの後部に、前記モータから取り外し可能な交換部品が装着されており、
前記モータおよび前記減速機を覆うケースを有し、当該ケースは車体下側に取り外し可能に構成され、
前記ケースは、個々の車輪駆動装置ごとに設けられ、複数の車輪駆動装置が車体に取り付けられた場合、個々の車輪駆動装置ごとに前記ケースを取り外し可能であることを特徴とする車輪駆動装置。
【請求項2】
前記モータは、モータ本体と、前記モータ本体の前部から前記モータ本体外に突出するモータ軸と、を有し、
前記減速機は、減速機本体と、前記減速機本体外に突出する出力軸と、を有し、
前記モータ本体と前記減速機本体は、軸方向と直交する方向から見て重なるように配置されることを特徴とする請求項1に記載の車輪駆動装置。
【請求項3】
前記交換部品を覆うカバーを有し、前記モータのモータ軸の軸方向から見たときに、前記カバーと前記車輪が重ならないことを特徴とする請求項1または2に記載の車輪駆動装置。
【請求項4】
前記モータのモータ軸に設けられた第1プーリと、前記減速機の入力軸に設けられた第2プーリと、前記第1プーリと前記第2プーリに掛け渡されるベルトと、を有することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の車輪駆動装置。
【請求項5】
前記第1プーリおよび前記第2プーリの少なくとも一方を外径の異なる複数のプーリから選択することで減速比を変更可能に構成されることを特徴とする請求項4に記載の車輪駆動装置。
【請求項6】
モータと、前記モータの回転を減速する減速機と、前記減速機の出力回転により駆動される車輪と、を備えた車輪駆動装置であって、
前記モータと前記減速機は、軸方向と直交する方向から見て重なるように配置され、
前記モータは、後部側を車体外側に向けて配置され、
前記モータの後部に、前記モータから取り外し可能な交換部品が装着されており、
前記モータおよび前記減速機を覆うケースを有し、当該ケース
に窓があって、当該窓から前記交換部品を取り外し可能に構成されることを特徴とする車輪駆動装置。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の車輪駆動装置をメンテナンスする方法であって、
前記車輪駆動装置を車体に取り付けた状態のまま、前記モータの後部から前記交換部品を取り外すことを特徴とする車輪駆動装置のメンテナンス方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車輪駆動装置および車輪駆動装置のメンテナンス方法に関する。
【背景技術】
【0002】
搬送台車等の車輪を駆動する車輪駆動装置が知られている。本出願人は、特許文献1において車輪駆動装置を開示している。この車輪駆動装置は、駆動源から伝達される回転を減速する減速機構と、この減速機構で減速された回転が伝達される回転体と、回転体と一体化されている車輪とを含む。この車輪駆動装置では、駆動源の出力軸が減速機構の入力軸に直結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、車輪駆動装置に関して以下の認識を得た。
車輪駆動装置において、減速機構の入力軸を回転駆動するモータと、当該減速機構の入力軸とを直結する構造は、軸方向に長くなり小型化に不利である。また、モータ後部を車体内側に向けて配置するため、モータ後部に装着される交換部品のメンテナンス性が悪いという問題がある。
これらから、本発明者らは、従来の車輪駆動装置には、小型化を図りつつメンテナンス性を向上させる観点で改善の余地があることを認識した。
【0005】
本発明の目的は、このような課題に鑑みてなされたもので、小型化を図りつつメンテナンス性を確保することが可能な車輪駆動装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の車輪駆動装置は、モータと、モータの回転を減速する減速機と、減速機の出力回転により駆動される車輪と、を備えた車輪駆動装置であって、モータと減速機は、軸方向と直交する方向から見て重なるように配置され、モータは、後部側を車体外側に向けて配置され、モータの後部に、モータから取り外し可能な交換部品が装着されている。
【0007】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、本発明の構成要素や表現を方法、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、小型化を図りつつメンテナンス性を確保することが可能な車輪駆動装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施の形態に係る車輪駆動装置を備えた台車を示す斜視図である。
【
図2】
図1の車輪駆動装置を概略的に示す平面図である。
【
図3】
図1の車輪駆動装置のケースの一部を破断して示す平面図である。
【
図4】
図1の車輪駆動装置を概略的に示す正面図である。
【
図5】
図1の車輪駆動装置のカバーを外した状態を示す正面図である。
【
図6】
図1の車輪駆動装置から交換部品を取外した状態を示す平面図である。
【
図7】第1変形例に係る車輪駆動装置を概略的に示す斜視図である。
【
図8】
図7の車輪駆動装置のケースを外した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに各図面を参照しながら説明する。実施の形態および変形例では、同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、各図面における部材の寸法は、理解を容易にするために適宜拡大、縮小して示される。また、各図面において実施の形態を説明する上で重要ではない部材の一部は省略して表示する。
【0011】
また、第1、第2などの序数を含む用語は多様な構成要素を説明するために用いられるが、この用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的でのみ用いられ、この用語によって構成要素が限定されるものではない。
なお、以下の説明において、「平行」、「垂直(直交)」は、完全な平行、垂直(直交)だけではなく、誤差の範囲で平行、垂直(直交)からずれている場合も含むものとする。
【0012】
[実施の形態]
以下、図面を参照して、実施の形態に係る車輪駆動装置100の構成について説明する。
図1は、本実施形態に係る車輪駆動装置100を備えた台車10を概略的に示す斜視図である。この図は、台車10を斜め下から視た図を示す。台車10は、荷を積載する平板状の積載台10bと、積載台(車体)10bの下面後部に左右に離隔して固定された2台の車輪駆動装置100とを備える。また、台車10には、積載台10bの上面に設けられたハンドル10hと、積載台10bの下面前部に左右に離隔して設けられた2つのキャスタ10eとが設けられる。台車10は、遠隔制御、追尾制御、自律制御などで車輪駆動装置100が制御されることによって前進、後退、停止、旋回などを行うことができる。
【0013】
一例として、台車10は、車輪駆動装置100に電力を供給するバッテリと、自動追尾をするための自動追尾モジュールとを備えてもよい。自動追尾モジュールは、カメラで取得した画像情報に基づきターゲットを追尾するように、車輪駆動装置100を制御することができる。なお、自動追尾ではなく、例えば、ライン上を走行するものや、周辺物との距離を計測しながら走行するものであってもよい。
【0014】
図2は、車輪駆動装置100を概略的に示す平面図である。この図は、台車10に設けられた2台の車輪駆動装置100のうちの左側のものを示している。左右2つの車輪駆動装置100は、平面視で左右対称の構造を有しており、以下の説明は、右側の車輪駆動装置100にも適用される。
【0015】
図3は、車輪駆動装置100のケース60の一部を破断して示す平面図である。説明の便宜上、図示のように、水平なある方向をX軸方向、X軸方向に直交する水平な方向をY軸方向、両者に直交する方向すなわち鉛直方向をZ軸方向とするXYZ直交座標系を定める。X軸、Y軸、Z軸のそれぞれの正の方向は、各図における矢印の方向に規定され、負の方向は、矢印と逆向きの方向に規定される。このような方向の表記は車輪駆動装置100の使用姿勢を制限するものではなく、車輪駆動装置100は、用途に応じて任意の姿勢で使用されうる。
【0016】
図3に示すように、車輪駆動装置100は、モータ20と、伝達機構28と、減速機30と、車輪40と、交換部品50と、ケース60とを備える。以下、モータ20のモータ軸20sの回転軸線Laに沿った方向を「モータの軸方向」、「軸方向」という。
【0017】
モータ20は、車輪40を回転駆動する原動機として機能する。伝達機構28は、モータ20の回転を減速機30に伝達する。減速機30は、モータ20の回転を減速する。車輪40は、減速機30の出力回転により駆動される。モータ20の後部に、モータ本体20dから取り外し可能な交換部品50が装着される。本実施形態の交換部品50は、電磁ブレーキ52とエンコーダ54とを含む。ケース60は、モータ20と、減速機30と、交換部品50とを覆うハウジングとして機能する。車輪駆動装置100の筐体70は、モータ20と減速機30とを支持する取付ベース72とケース60とを含んで構成される。以下、これらについて詳細に説明する。
【0018】
モータ20は、車輪40を駆動可能なものであればよく、種々の原理に基づくモータを採用できる。本実施形態のモータ20は、サーボモータである。この場合、小型で出力が大きく、比較的長寿命でメンテナンスが殆ど不要である点で好ましい。モータ20は、モータ本体20dと、モータ軸20sとを有し、モータ軸20sはモータ本体20dの前後両側に延出している。モータ20の制御回路は、ケース60の内部に設けられていてもよいし、ケース60の外部に設けられていてもよい。
【0019】
モータ20と減速機30とが軸方向に並ぶと、車輪駆動装置100の軸方向長さが過大となる。そこで、車輪駆動装置100では、モータ20と減速機30とは、モータ20の回転軸線Laに沿った軸方向と直交する方向から見て、重なるように配置される。具体的には、
図3の矢印Aの方向(X軸方向)に見てモータ20と減速機30とは互いに重なっている。この場合、軸方向の小型化に有利である。また、モータ20の回転軸線Laと、減速機30の出力軸30kの回転軸線Lbとは平行に延びており、特に、これらは同じ水平面上に延びている。
【0020】
なお、本実施形態においては、車輪駆動装置100が台車10に取り付けられたときに、モータ20と減速機30が台車10の前後方向から見て重なるように配置されている。しかし、これに限定されるものではなく、軸方向と直交する方向から見て重なるように配置されていればよく、例えば台車10に取り付けたときに、鉛直方向から見て重なるように配置されてもよい。また、モータ20と減速機30は、その全体が重なる必要はなく、少なくとも一部同士が軸方向と直交する方向から見て重なるように配置されていればよい。
【0021】
モータ20には、第1プーリ28pと、電磁ブレーキ52と、エンコーダ54とが取付けられている。特に、第1プーリ28pと、電磁ブレーキ52とは、モータ軸20sに取付けられている。便宜上、回転軸線Laに沿って、モータ本体20dのうち第1プーリ28pが設けられている側の部分を前部20fといい、電磁ブレーキ52と、エンコーダ54とが設けられている側の部分を後部20bという。モータ本体20dは、その前部20fが取付ベース72に固定されている。第1プーリ28pは、モータ軸20sの取付ベース72から突出た部分に取付けられる。
【0022】
交換部品50は、車輪駆動装置100を構成する部材のうち、相対的に交換または調整の頻度が高い部品であってもよい。車輪駆動装置100は、交換部品50を交換または調整することより、長期間にわたって使用することができる。交換部品50の交換や調整を容易にする観点から、モータ20は、後部20b側を台車10の外側に向けて配置され、交換部品50は、モータ20の後部20bに装着されている。つまり、車輪駆動装置100が駆動対象の車体(台車10)に取り付けられたときに、モータ20の後部20bが当該車体の外側を向くように構成されている。本実施形態においては、モータ20の後部20bが、車輪40の取り付け側を向くように配置されている。
【0023】
車輪駆動装置100は、意図しない動きを規制するために、ブレーキを備えることが望ましい。また、車輪駆動装置100は、ブレーキを設けることで安全規制に準拠することが容易になる。このため、車輪駆動装置100は、非通電時にブレーキが作動し、通電時にブレーキが解放される無励磁作動型の電磁ブレーキ52を備える。無励磁作動型の電磁ブレーキは、一例として、ディスクなどの回転体とパッドとコイルとで構成できる。このブレーキでは、コイルが無励磁のときはスプリングがパッドを回転体に押し付けてブレーキ力を発生させ、コイルが励磁されたときにはパッドを回転体から解放してブレーキを解除する。
【0024】
本実施形態では、電磁ブレーキ52は、モータ軸20sのうち後部20bから延出する部分を囲むように取付けられている。電磁ブレーキ52は、後部20bにスクリュウなどの留具52sによって固定されている。電磁ブレーキ52は、非通電時にモータ軸20sの回転を規制し、通電時にこの規制を解除する。
【0025】
電磁ブレーキ52は、回転体とパッドとが接触している時間が長く、これらは摩耗しやすいため、車輪駆動装置100の他の部材より交換や調整の頻度が高い。したがって、電磁ブレーキ52を容易に交換可能とすることで、車輪駆動装置100のメンテナンス性を高められる。
【0026】
エンコーダ54は、モータ20の回転を制御するために、モータ軸20sの回転角を検知する。エンコーダ54の構成に限定はないが、一例として、本実施形態のエンコーダ54は、磁石54mと、この磁石54mの磁極に応じて回転角を検知する磁気式回転角センサ54cとによって構成されている。磁石54mは、モータ軸20sの電磁ブレーキ52から延出した部分の端面に取付けられている。回転角センサ54cは、磁石54mと対向するようにセンサホルダ54hに設けられ、センサホルダ54hは、スクリュウなどの留具54sによって、電磁ブレーキ52の後部52bに固定されている。
【0027】
エンコーダ54が故障すると、車輪駆動装置100の動作が不安定になる。したがって、故障した場合にはエンコーダ54を交換または調整することが望ましい。エンコーダ54を容易に交換可能とすることで、車輪駆動装置100のメンテナンス性を高められる。
【0028】
伝達機構28は、モータ20の回転を減速機30に伝達できる機構であればよく、歯車列や動力伝達用チェーンなど種々の原理に基づく伝達機構を採用できる。本実施形態の伝達機構28は、第1プーリ28pと、第2プーリ28sと、ベルト28bとを含む。第1プーリ28pは、モータ20のモータ軸20sに設けられ、第2プーリ28sは、減速機30の入力軸30jに設けられている。ベルト28bは、第1プーリ28pと前記第2プーリ28sに掛け渡されている。ベルト28bは、歯付ベルト(例えば、タイミングベルト)や平ベルトであってもよいし、その他の種類のベルトであってもよい。プーリおよびベルトを用いる構成は、他の構成よりも部品点数が少なく軽量化に有利である。
【0029】
台車は、軽い荷物を高速で搬送する用途や、重い荷物を搬送する用途など、様々な用途に使用できることが望ましい。しかし、台車の用途によって、望ましい速度・トルク特性は異なる。しかし、用途ごとに異なる速度・トルク特性を有する多種類の台車を用意することは製造、販売の管理上で不利である。また、ユーザにとっては、用途を変更する際に、既存台車の速度・トルク特性がマッチせず、新用途への転用が難しいという問題もある。
【0030】
そこで、本実施形態の伝達機構28は、第1プーリ28pおよび第2プーリ28sの少なくとも一方を外径の異なる複数のプーリから選択することで減速比を変更可能に構成されている。減速比を変更することによって車輪駆動装置100の速度・トルク特性を容易に変更できる。したがって、外径の異なる複数のプーリを用意することによって、多様な速度・トルク特性に対応できる。製造販売時には、ユーザが希望する速度・トルク特性に応じて減速比を設定して提供できる。つまり、製造する車輪駆動装置100の種類を減らすことができる。ユーザは、用途変更時にプーリを交換することによって容易に転用できる。
【0031】
減速機30は、偏心揺動型減速機、撓み波動減速機、単純遊星歯車減速機など種々の原理に基づく減速機を採用できる。本実施形態の減速機30は、偏心揺動型減速機である。減速機30は、入力軸30jに入力された回転を減速して出力軸30kに出力する歯車装置である。入力軸30jは、出力軸30kからオフセットして配置されてもよいが、本実施形態の入力軸30jは、出力軸30kの回転軸線Lb上に配置される。減速機30の減速機本体30mは取付ベース72に固定されている。入力軸30jは、減速機本体30mの前部30fから延出している。第2プーリ28sは、入力軸30jの取付ベース72から突出た部分に取付けられている。
【0032】
車輪40は、車輪本体40mと、車輪本体40mの中心に設けられるリム40hとを有する。車輪本体40mは、合成ゴムなどの樹脂で形成されるゴムタイヤであってもよい。リム40hの中心は減速機30の出力軸30kに固定されている。出力軸30kは筐体70から外部側に延出している。リム40hは、出力軸30kの筐体70から外部側に延出している部分に取付けられている。したがって、リム40hおよび車輪本体40mは、筐体70の外側において、出力軸30kと一体的に回転する。
【0033】
図4、
図5も参照して、ケース60を説明する。
図4は、車輪駆動装置100を概略的に示す正面図である。
図5は、車輪駆動装置100のカバー62を外した状態を示す正面図である。ケース60は、モータ20および減速機30を覆うことができればよく、種々の形状を採用できる。本実施形態のケース60は、側面視の外形が略矩形であり、長手方向がX軸方向に延びる略直方体形状の箱体である。
【0034】
図6も参照する。
図6は、車輪駆動装置100から交換部品50を取外した状態を示す平面図である。交換部品50の交換を容易にするために、ケース60に作業用の開口部を設けることが望ましい。そこで、本実施形態のケース60には、
図5に示すように、正面視で矩形の窓60wが設けられており、この窓60wから交換部品50を取り外し可能に構成されている。この場合、
図6に示すように、窓60wを開くだけで交換部品50を着脱できるので、短時間でメンテナンスできる。
【0035】
具体的には、窓60wは、交換部品50が通過できるように、交換部品50の外形に所定のマージンを加えた大きさを有している。本実施形態では、正面視における窓60wのX軸方向寸法およびZ軸方向寸法は、それぞれ正面視における電磁ブレーキ52のX軸方向寸法およびZ軸方向寸法よりも大きい。
【0036】
交換部品50への異物等の侵入を防ぐ観点から、メンテナンス時以外には窓60wを閉じることが望ましい。このため、本実施形態は、交換部品50を覆うカバー62を有している。
図4に示すように、カバー62は、正面視で略矩形状を呈しており、窓60wを閉塞可能な大きさを有している。カバー62は、窓60wの大きさに所定のマージンを加えた大きさを有している。カバー62は、複数(例えば、4つ)のスクリュウなどの留具62s)によって、ケース60に固定されてもよい。この場合、留具62sの着脱によりカバー62を容易に取付け取り外しすることができる。
【0037】
本実施形態のカバー62は、ケース60の車輪40が設けられる側に取付けられている。このため、カバー62が車輪40と干渉すると、カバー62の取付け取り外しに時間がかかる。そこで、本実施形態では、モータ軸20sの軸方向から見たときに、カバー62と車輪40が重ならないように構成されている。この場合、カバー62を短時間で取付け取り外しすることができる。なお、留具62sを外した後に、カバー62を横にスライドさせることで、車輪との干渉を回避して取り外せるのであれば、カバー62が軸方向から見て車輪40と重なっていてもよい。
【0038】
以上のように構成された車輪駆動装置100のメンテナンス方法の一例を説明する。以下説明するメンテナンス作業は、車輪駆動装置100を台車(車体)10に取り付けた状態のまま行うことができる。
(1)まず、モータ20の後部20bの少なくとも一部を露出させる。具体的には、留具62sを外し、カバー62をケース60から取り外し、窓60wから交換部品50を露出させる。
【0039】
(2)次に、露出させたモータ20の後部20b側から交換部品50を交換する。エンコーダ54を交換する場合は、留具54sを外し、エンコーダ54をセンサホルダ54hと共に電磁ブレーキ52の後部52bから取り外す。そして、交換用のエンコーダ54とセンサホルダ54hとを留具54sによって、電磁ブレーキ52の後部52bに取付ける。
【0040】
(3)電磁ブレーキ52を交換する場合は、留具52sを外し、電磁ブレーキ52をモータ20の後部20bから取り外す。そして、交換用の電磁ブレーキ52を留具52sによって、モータ20の後部20bに取付ける。
【0041】
(4)次に、カバー62を留具62sによって、ケース60に取付ける。カバー62を取付けることによって、車輪駆動装置100のメンテナンスは終了する。このプロセスはあくまでも一例であり、工程の順序を変更したり、他の工程を追加したり、一部の工程を省いてもよい。
【0042】
以上のように、本実施形態の車輪駆動装置100によれば、車輪駆動装置100が駆動対象である台車10に取り付けられたときに、モータ20の後部が台車10の車体外側に向けて配置されているため、車輪駆動装置100を台車10の車体に取り付けた状態のまま(車輪駆動装置100を車体から取り外すことなく)、モータ20の後部から交換部品50を取り外してメンテナンスを行うことができ、メンテナンス性が向上する。
【0043】
また、本実施形態の車輪駆動装置100は、ケース60に収納された車輪駆動モジュールとして構成されているため、自立走行機能を有さない既存の台車に取り付けることで、自立走行機能を付与することも可能となる。
【0044】
以上、本発明の実施形態をもとに説明した。これらの実施形態は例示であり、いろいろな変形および変更が本発明の特許請求の範囲内で可能なこと、またそうした変形例および変更も本発明の特許請求の範囲にあることは当業者に理解されるところである。従って、本明細書での記述および図面は限定的ではなく例証的に扱われるべきものである。
【0045】
以下、変形例について説明する。変形例の図面および説明では、実施形態と同一または同等の構成要素、部材には、同一の符号を付する。実施形態と重複する説明を適宜省略し、実施形態と相違する構成について重点的に説明する。
【0046】
[第1変形例]
図7、
図8を参照して、第1変形例に係る車輪駆動装置100の構成について説明する。
図7は、第1変形例に係る車輪駆動装置100を概略的に示す斜視図である。
図8は、本変形例の車輪駆動装置100のケース60を外した状態を示す斜視図である。これらの図に示すように、本変形例は、車輪駆動装置100を台車10の車体に取り付けた状態のまま、ケース60が台車10の車体の下側(矢印Bの方向)に取り外し可能に構成されており、窓60wは設けられていない点で実施の形態と異なり、他の構成は同様である。ケース60を取り外すことにより、
図8に示すように、電磁ブレーキ52やエンコーダ54などの交換部品50を一層容易に交換することができる。
【0047】
本変形例によれば、車輪駆動装置100を台車10の車体に取り付けた状態のまま、ケース60を台車10の下側に取り外しでき、かつモータ20の後部が台車10の外側を向いているので、台車10に取り付けられた状態において車輪駆動装置100をメンテナンスできる。なお、本変形例のケース60に窓60wを設けてもよい。また、車輪40が十分に大きい場合には、車輪駆動装置100を台車10の積載台10bの上面に取り付けることも可能であり、この場合には、ケース60は台車10の車体の上方へ取り外される。
【0048】
実施の形態の説明では、伝達機構28が等速で回転を伝達する例を示したが、本発明はこれに限定されず、伝達機構28は、減速または増速してモータ20から減速機30へ回転を伝達する構成であってもよい。
【0049】
実施の形態の説明では、交換部品50が、ブレーキ52とエンコーダ54である例を示したが、本発明はこれに限定されず、交換部品50は、ブレーキ52やエンコーダ54以外の部品(例えば、各種センサ)であってもよい。
【0050】
実施の形態の説明では、車輪駆動装置100が荷物を載せる台車に使用される例を示したが、本発明はこれに限定されず、車輪駆動装置100は、台車以外の車両や移動体にも使用することができる。
【0051】
実施の形態の説明では、1つの移動体に対して2つの車輪駆動装置100が使用される例を示したが、本発明はこれに限定されず、1つの移動体に1または3以上の車輪駆動装置100が使用されてもよい。
【0052】
実施の形態の説明では、ブレーキ52が無励磁作動型の電磁ブレーキである例を示したが、ブレーキ52は、無励磁作動型の電磁ブレーキとは別の原理に基づくものであってもよく、例えば励磁作動型であってもよい。
【0053】
上述の各変形例は実施の形態と同様の作用・効果を奏する。
【0054】
上述した各実施形態と変形例の任意の組み合わせもまた本発明の実施形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施形態は、組み合わされる各実施形態および変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【符号の説明】
【0055】
20・・・モータ、20b・・・後部、20s・・・モータ軸、28b・・・ベルト、28p・・・第1プーリ、28s・・・第2プーリ、30・・・減速機、30j・・・入力軸、40・・・車輪、50・・・交換部品、52b・・・後部、58・・・カバー、60・・・ケース、60w・・・窓、62・・・カバー、70・・・筐体、100・・・車輪駆動装置。