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  • 特許-水中油型乳化化粧料及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-12
(45)【発行日】2023-09-21
(54)【発明の名称】水中油型乳化化粧料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/81 20060101AFI20230913BHJP
   A61K 8/06 20060101ALI20230913BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20230913BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20230913BHJP
   A61K 8/37 20060101ALI20230913BHJP
   A61K 8/27 20060101ALI20230913BHJP
   A61K 8/891 20060101ALI20230913BHJP
   A61K 8/365 20060101ALI20230913BHJP
   A61K 8/39 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
A61K8/81
A61K8/06
A61Q17/04
A61Q19/00
A61K8/37
A61K8/27
A61K8/891
A61K8/365
A61K8/39
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019135340
(22)【出願日】2019-07-23
(65)【公開番号】P2021017426
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2022-06-14
(73)【特許権者】
【識別番号】595048544
【氏名又は名称】ちふれホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149032
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 敏明
(72)【発明者】
【氏名】階堂 睦子
(72)【発明者】
【氏名】木藤 はるみ
【審査官】▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-122075(JP,A)
【文献】特開2016-108304(JP,A)
【文献】国際公開第2011/055761(WO,A1)
【文献】特開2019-064960(JP,A)
【文献】特開2014-114273(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
疎水化表面処理された微粒子金属酸化物 17質量%以下、親油性乳化剤、アクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム共重合体 0.56質量%以上及び液状油を含む油相に、
親水性乳化剤を含む水相を添加して、
転相乳化することにより、
水中油型乳化化粧料を得る工程を含む、水中油型乳化化粧料の製造方法。
【請求項2】
前記アクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム共重合体の含有量は0.56質量%~2質量%である、請求項1に記載の方法
【請求項3】
前記親水性乳化剤は、HLBが8以上の親水性乳化剤である、請求項1~2のいずれか1項に記載の方法。
【請求項4】
前記疎水化表面処理された微粒子金属酸化物の含有量は、5質量%~17質量%である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記親油性乳化剤及び前記親水性乳化剤の合計含有量が2質量%未満である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線散乱剤を含有する水中油型乳化化粧料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
日常生活における日焼け止め対策の重要性が指摘される中、皮膚への紫外線照射を効果的に遮断する目的として紫外線吸収剤や紫外線散乱剤が配合された化粧料の開発がされている。
【0003】
紫外線散乱剤としては、酸化亜鉛、酸化チタンなどの金属酸化物の粉末(微粒子金属酸化物)が一般的に用いられている。微粒子金属酸化物を配合する場合、皮膚に塗布した後の粉末の保持性や分散性を良好に保つために油中水型乳化化粧料が利用されてきた。
【0004】
近年は、高い紫外線防御能を有しながらも、一般のスキンケア化粧品と同程度の使用感を有する水中油型乳化化粧料が求められている。しかし、水中油型乳化化粧料の場合、高いSPF(Sun Protection Factor)を達成しようとして、微粒子金属酸化物を多く配合しようとすると、皮膚における粉末の保持性や分散性が悪くなり、使用感が損なわれる。
【0005】
微粒子金属酸化物を多く配合するために、油性成分を多く配合することが考えられる。しかし、油性成分を多く配合しようとすると、均一な乳化状態を維持することが難しくなり、そもそも均一な乳化状態が得られないこともある。
【0006】
微粒子金属酸化物を含有しながらも、微粒子金属酸化物の分散性を改善して、安定性及び使用感を向上したものとして、ポリヒドロキシステアリン酸及び部分架橋型アルキル変性若しくはフェニル変性オルガノポリシロキサン重合体を配合した水中油型乳化化粧料(特許文献1を参照)、p-メンタン-3,8-ジオールを配合した日焼け止め乳液(特許文献2を参照)などが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2017-137300号公報
【文献】特開2017-088599号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、特許文献1に記載の水中油型乳化化粧料は、配合できる微粒子金属酸化物の含有量が10質量%未満であり、所望の紫外線防御効果が得られないという問題がある。
【0009】
それに対して、特許文献2に記載の日焼け止め乳液は、微粒子金属酸化物の含有量を10質量%にすることができる。しかし、微粒子金属酸化物及び油性成分を配合するために、乳化剤が用いられているところ、その含有量は3.0質量%以上と多い。乳化剤の含有量が多いと、乳液はベタつきが生じ易く、使用感が悪くなる。また、乳化剤の含有量を減らそうとすると、乳化状態が不安定になり易い。
【0010】
さらに、特許文献2に記載の日焼け止め乳液は、油性成分の含有量に対して、乳化剤の含有量が多い。したがって、特許文献2に記載の日焼け止め乳液は、乳化剤によるベタつきを感じるという問題がある。
【0011】
そこで、本発明は、上記先行技術の問題点を鑑みて、紫外線防御効果が得られる程度の微粒子金属酸化物を含有し、比較的多量の油性成分を含有しつつも、乳化剤の含有量を低減して、水中油型乳化化粧料を製造する方法及び該方法によって製造される水中油型乳化化粧料を提供することを、発明が解決しようとする課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記の課題を解決しようとして、化粧料を製造する過程における油相及び水相に含まれるそれぞれの成分の種類及び配合順序、油相及び水相の混合方法などについて試行錯誤を繰り返した結果、驚くべきことに、微粒子金属酸化物とともに、親油性乳化剤、アクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム共重合体及び液状油を含む油相を用意し、さらに親水性乳化剤を含む水相を用意して、水相に油相を徐々に添加して乳化する順相乳化ではなく、油相に水相を徐々に添加して乳化する転相乳化を利用することにより、紫外線防御作用を有し、かつ、均一な乳化状態を呈する水中油型乳化化粧料を得ることに成功した。
【0013】
さらに驚くべきことに、本発明者らは、このようにして得られた水中油型乳化化粧料は、微粒子金属酸化物及び液状油の含有量に対して乳化剤の含有量を小さくすることができ、さらに乳化粒子の粒子径が小さいことから、紫外線防御効果を高めつつ、紫外線散乱剤を含有していない通常のスキンケア化粧品と同程度の使用感を有するものであることを見出した。
【0014】
そして、本発明者らは、遂に、本発明の課題を解決するものとして、水中油型乳化化粧料を製造する方法及び該方法によって製造される水中油型乳化化粧料を創作することに成功した。本発明は、これらの知見及び成功例に基づき完成された発明である。
【0015】
したがって、本発明の一態様によれば、以下の方法及び化粧料が提供される。
[1]疎水化表面処理された微粒子金属酸化物、親油性乳化剤、アクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム共重合体及び液状油を含む油相に、
親水性乳化剤を含む水相を添加して、
転相乳化することにより、
水中油型乳化化粧料を得る工程を含む、水中油型乳化化粧料の製造方法。
[2]疎水化表面処理された微粒子金属酸化物と、
親油性乳化剤と、
アクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム共重合体と、
液状油と、
親水性乳化剤と
を含む、転相乳化物である、水中油型乳化化粧料。
[3]前記親水性乳化剤は、HLBが8以上の親水性乳化剤である、[1]~[2]のいずれか1項に記載の方法又は化粧料。
[4]前記疎水化表面処理された微粒子金属酸化物の含有量は、5質量%~20質量%である、[1]~[3]のいずれか1項に記載の方法又は化粧料。
[5]前記親油性乳化剤及び前記親水性乳化剤の合計含有量が2質量%未満である、[1]~[4]のいずれか1項に記載の方法又は化粧料。
[6]前記水中油型乳化化粧料は、さらに紫外線吸収剤を含む、[2]~[5]のいずれか1項に記載の化粧料。
[7]前記水中油型乳化化粧料は、油性成分の合計含有量が15質量%以上である、[2]~[6]のいずれか1項に記載の化粧料。
[8]前記水中油型乳化化粧料は、粘度が10,000mPa・s以下であり、及び/又は体積平均粒子径が9.5μm以下である、[2]~[7]のいずれか1項に記載の化粧料。
[9]前記水中油型乳化化粧料は、日焼け止め乳液である、[2]~[8]のいずれか1項に記載の化粧料。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一態様の方法によれば、紫外線防御効果があり、油性成分に対する乳化剤の含有量を低減した水中油型乳化化粧料を製造することができる。
【0017】
本発明の一態様の化粧料は、均一な乳化状態を安定的に維持し得ることから、製造後、比較的長期間にわたって使用及び保存することが期待される。また、本発明の一態様の化粧料によれば、潤いやのびの軽さといった使用感を良好なものにし得ることから、乳液、化粧水、美容液などの形態で、同様の形態を有するスキンケア化粧品に代えて使用し、又は併用することが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、実施例に記載されているとおりの、化粧料の体積平均粒子径の測定結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一態様である方法及び化粧料の詳細について説明するが、本発明の技術的範囲は本項目の事項によってのみに限定されるものではなく、本発明はその目的を達成する限りにおいて種々の態様をとり得る。
【0020】
本明細書における各用語は、別段の定めがない限り、当業者により通常用いられている意味で使用され、不当に限定的な意味を有するものとして解釈されるべきではない。また、本明細書においてなされている理論や推測は、本発明者らのこれまでの知見や経験によってなされたものであることから、本発明の技術的範囲はこのような理論や推測のみによって拘泥されるものではない。
【0021】
例えば、「及び/又は」との用語は、列記した複数の関連項目のいずれか1つ、又は2つ以上の任意の組み合わせ若しくは全ての組み合わせを意味する。
「含有量」は、濃度と同義であり、化粧料の全体量に対する成分の量の割合を意味する。本明細書では、別段の定めがない限り、含有量の単位は「質量%(wt%)」を意味する。
数値範囲の「~」は、本明細書において、その前後の数値を含む範囲であり、例えば、「0質量%~100質量%」は、0質量%以上であり、かつ、100質量%以下である範囲を意味する。
「使用感」は、化粧料を皮膚へ塗布する際に感じる潤い及びのびの軽さからなる群から選ばれる少なくとも1種の感覚を意味する。また、「潤い」は、皮膚に塗布している最中、しっとりしながらも油性感を感じずに、みずみずしく感じることをいう。「のびの軽さ」は、皮膚に塗布している際に、抵抗感が少なく、タッチが軽く感じることをいう。「潤い」及び「のびの軽さ」は、後述する実施例に記載の使用感評価により評価及び確認できる。
「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸及びメタクリル酸を包含する総称である。
【0022】
[本発明の一態様の方法]
本発明の一態様の方法は、水中油型乳化化粧料を製造するための方法である。
本発明の一態様の方法は、疎水化表面処理された微粒子金属酸化物、親油性乳化剤、アクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム共重合体及び液状油を含む油相に、親水性乳化剤及び基剤である水を含む水相を添加して、転相乳化することにより、水中油型乳化化粧料を得る工程を少なくとも含む。
【0023】
本発明の一態様の方法における油相は、疎水化表面処理された微粒子金属酸化物、親油性乳化剤、アクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム共重合体及び液状油を少なくとも含む。
【0024】
疎水化表面処理された微粒子金属酸化物は、通常化粧料において紫外線散乱剤として使用されるものであれば特に限定されず、その形状、疎水化表面処理の方法、金属酸化物の種類、微粒子の形状及び粒子径などは適宜選択し得る。疎水化表面処理された微粒子金属酸化物は、例えば、疎水化表面処理された、形状が球状、棒状、針状、紡錘状、板状又は不定形状である体積平均粒子径がナノオーダー(例えば、10~100nm程度)の酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウムなどが挙げられるが、これらに限定されない。疎水化表面処理された微粒子金属酸化物は、上記したものの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用し得る。
【0025】
微粒子金属酸化物の疎水化表面処理の方法は特に限定されず、例えば、含水シリカ、シリカなどによるシリカ処理;メチルハイドロゲンポリシロキサン、メチルハイドロゲンポリシロキサン・ジメチルポリシロキサンコポリマー、ジメチルポリシロキサン、メチルポリシロキサンなどによるシリコーン処理;水酸化アルミニウム、酸化アルミニウムなどによるアルミニウム処理;トリエトキシカプリリルシラン、オクチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシランなどによるシラン処理;パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸などによる脂肪酸処理;脂肪酸のアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩などによる金属石鹸処理;パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルリン酸ジエタノールアミン塩、パーフルオロアルキルトリメトキシシランなどによるフッ素処理などが挙げられ、これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせた方法であり得る。上記の表面処理のうち、化粧品分野において微粒子金属酸化物の疎水化表面処理の実績が豊富であり、微粒子金属酸化物の光触媒作用を減じて、適用される皮膚への影響を小さくすることができるという観点から、シリカ処理、シリコーン処理、アルミニウム処理及びシラン処理が好ましく、これらを組合せた処理であることがより好ましい。
【0026】
疎水化表面処理された微粒子金属酸化物は、常法に従って微粒子金属酸化物を疎水化表面処理したものであっても、市販されているものであっても、どちらでもよい。市販されている疎水化表面処理された微粒子金属酸化物としては、例えば、「ST-457SA」(チタン工業社製)、「MT-100Z」(テイカ社製)、「MT-150EX」(テイカ社製)、「LT-050」(テイカ社製)、「LT-051」(テイカ社製)、「FLT-01」(テイカ社製)、「STR-40-LP」(堺化学工業社製)、「DIS-11A」(堺化学工業社製)、「DIS-12C」(堺化学工業社製)、「SPD-T6」(信越化学工業社製)、「IOPP50TIJ」(KOBOディスパテック社製)、「MZY-303S」(テイカ社製)、「LZ-014」(テイカ社製)、「LZ-021」(テイカ社製)、「FLZ-01」(テイカ社製)、「FINEX-25-LPT」(堺化学工業社製)、「DIF-AW4」(堺化学工業社製)、「DIF-3W4」(堺化学工業社製)、「SPD-Z6」(信越化学工業社製)、「IOPP60ZSJ」(KOBOディスパテック社製)などが挙げられるが、これらに限定されない。市販の疎水化表面処理された微粒子金属酸化物分散体を使用する場合は、分散媒が非極性の油剤であることが好ましい。
【0027】
疎水化表面処理された微粒子金属酸化物(以下、単に微粒子金属酸化物とよぶ場合がある。)の含有量は、光散乱又は光反射効果が認められる量であれば特に限定されないが、例えば、1質量%~30質量%であり、微粒子金属酸化物の分散性及び水中油型乳化化粧料の乳化安定性を考慮すれば、1質量%~20質量%が好ましく、5質量%~20質量%がより好ましく、9質量%~17質量%がさらに好ましい。ただし、微粒子金属酸化物の分散性及び水中油型乳化化粧料の乳化安定性は、水相における親水性乳化剤、油相におけるアクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム共重合体及び液状油などの含有量によっても変動し得るので、疎水化表面処理された微粒子金属酸化物の含有量のみによって決まるものではない。
【0028】
親油性乳化剤は、化粧品分野で乳化剤として使用されているものであり、脂溶性であり、かつ、水にほとんど分散しないか、又は一部が水に分散するものであれば特に限定されないが、例えば、HLBが2~7の乳化剤などが挙げられ、微粒子金属酸化物の分散性を良好にしつつも得られる水中油型乳化化粧料の安定性を高め得るという観点から、好ましくはHLBが3~6の乳化剤であり、より好ましくはHLBが3~6のアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤である。
【0029】
親油性乳化剤の具体例としては、セスキイソステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、ステアリン酸グリセリル、ステアリン酸グリセリル(SE)、トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-2、ジステアリン酸ポリグリセリル-2、オレイン酸ポリグリセリル-2、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、イソステアリン酸PEG-3グリセリル及びポリオキシエチレンセチルエーテルなどが挙げられるが、これらに限定されない。親油性乳化剤は、常法に従って製造されたものであっても、市販されているものであっても、どちらでもよい。また、親油性乳化剤は、他の成分を含有する市販品に含まれていてもよい。親油性乳化剤は、上記したものの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用し得る。
【0030】
親油性乳化剤の含有量は、油相における微粒子金属酸化物の分散性を促進し得る量であれば特に限定されないが、例えば、0.05質量%~5質量%であり、水中油型乳化化粧料における乳化剤の全体量を低減することを目的とするのであれば、上限は2質量%が好ましく、1質量%がより好ましく、0.5質量%がさらに好ましく;微粒子金属酸化物の分散性を考慮すれば、下限は0.1質量%が好ましく、0.2質量%がより好ましく、0.3質量%がさらに好ましい。
【0031】
アクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム共重合体は、アクリル酸ナトリウムとアクリロイルジメチルタウリンナトリウムとをモノマー成分として含む共重合体であれば特に限定されず、例えば、アクリル酸ナトリウムとアクリロイルジメチルタウリンナトリウムとの共重合体に加えて、置換若しくは非置換のアクリル酸ナトリウムと置換若しくは非置換のアクリロイルジメチルタウリンナトリウムとの共重合体やアクリル酸ナトリウム及びアクリロイルジメチルタウリンナトリウムに加えてさらなるモノマー成分を含む共重合体などが挙げられる。アクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム共重合体は、上記したものの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用し得る。
【0032】
アクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム共重合体は、常法に従って製造されたものであっても、市販されているものであっても、どちらでもよい。市販されているアクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム共重合体としては、例えば、「SIMULGEL EG」(37.5質量%のアクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム共重合体を含有する;SEPPIC社製)などとして販売されているアクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム共重合体が挙げられる。
【0033】
アクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム共重合体の含有量は、油相における微粒子金属酸化物、親油性乳化剤及び液状油の相溶性を高め得る量及び/又は転相乳化を促進し得る量であれば特に限定されないが、例えば、0.05質量%~5質量%であり、得られる水中油型乳化化粧料の安定性を高めるという観点を考慮すれば、0.1質量%~3質量%が好ましく、0.3質量%~2質量%がより好ましい。
【0034】
液状油は、化粧品分野で用いられている液状の油性成分であれば特に限定されず、例えば、化粧料に通常用いられる25℃で液状である油性成分などが挙げられるが、より具体的には、ジエチルヘキサン酸ネオペンチルグリコール、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール、トリエチルヘキサノイン、パルミチン酸エチルヘキシル、パルミチン酸イソプロピル、テトライソステアリン酸ペンタエリスリチル、2-エチルヘキサン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、イソノナン酸イソトリデシル、セバシン酸ジイソプロピル、テトラ2-エチルヘキサン酸ペンタエリスリチル、コハク酸ジエチルヘキシル、炭素数12~15のアルキルベンゾエートなどのエステル油;オクチルドデカノール、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、ヘキシルデカノール、2-デシルテトラデシノール、モノオレイルグリセリルエーテル(セラキルアルコール)などの高級アルコール;ジメチコン、ラウリルPEG-9ポリジメチルシロキシエチルジメチコン、ジメチルポリシロキサン、ジメチルシクロポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、高級アルコール変性シリコーン油などのシリコーン油;水添ポリイソブテン、流動パラフィン、軽質イソパラフィン、スクワラン、スクワレンなどの直鎖及び分岐鎖の炭化水素油;ポリヒドロキシステアリン酸、イソヘキサデカン、ウンデシレン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、イソステアリン酸などの高級脂肪酸;液状ラノリンなどの動物油;フルオロポリエーテル、パーフルオロアルキルエーテルシリコーンなどのフッ素油;オリーブ油、ホホバ油、ラベンダー油、月見草油、アボガド油、ツバキ油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、ナタネ油、卵黄油、ゴマ油、パーシック油、コムギ胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、アマニ油、サフラワー油、綿実油、エゴマ油、大豆油、ピーナッツ油、チャ実油、カヤ種子油、コメヌカ油、コメ胚芽油などの天然油性成分などが挙げられる。液状油は、これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用し得る。液状油としては、化粧料中の紫外線散乱剤の分散性を良好にし得るものであることから、エステル油、高級アルコール及びシリコーン油が好ましく、液状油の少なくとも1種がエステル油であることがさらに好ましい。
【0035】
液状油の含有量は、水中油型乳化化粧料における微粒子金属酸化物の分散性を促進し得る量であれば特に限定されないが、例えば、5質量%~25質量%であり、水中油型乳化化粧料に対して微粒子金属酸化物を多く含有しながらも良好な使用感を付与するためには、8質量%~20質量%が好ましく、10質量%~17質量%がより好ましい。
【0036】
油相は、得られる水中油型乳化化粧料をより大きな紫外線防御効果を有するものとするために、紫外線吸収剤を含有することが好ましい。紫外線吸収剤としては、例えば、ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、ジメトキシベンジリデンジオキソイミダゾリジンプロピオン酸2-エチルヘキシル、ビス(レスルシニル)トリアジン、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール、t-ブチルメトキシジベンゾイルメタンなどのUV-A吸収剤;メトキシケイヒ酸エチルヘキシル(パラメトキシ桂皮酸2-エチルヘキシル)、パラジメチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシル、2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリル酸2-エチルヘキシル、ジメチコジエチルベンザルマロネート、2,4,6-トリアニリノ-p-(カルボ-2’-エチルヘキシル-1’-オキシ)-1,3,5-トリアジン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、サリチル酸ホモメンチル、サリチル酸オクチルなどのUV-B吸収剤、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、トリスビフェニルトリアジン、などのUV-A・B両波吸収剤などが挙げられる。紫外線吸収剤は、これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0037】
紫外線吸収剤の含有量は、紫外線吸収効果が認められる量であれば特に限定されないが、例えば、0.1質量%~20質量%であり、良好な紫外線吸収効果を示しつつも安定した水中油型乳化化粧料を得るためには、1質量%~15質量%が好ましく、5質量%~12質量%がより好ましい。
【0038】
本発明の一態様の方法において、油相は、疎水化表面処理された微粒子金属酸化物、親油性乳化剤、アクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム共重合体、液状油及び紫外線吸収剤に加えて、その他の成分を含有してもよい。
【0039】
油相におけるその他の成分は特に限定されず、例えば、通常の水中油型乳化化粧料に用いられる親油性成分などが挙げられ、より具体的には、保湿剤、清涼剤、防腐剤、キレート剤、pH調整剤、酸化防止剤、増粘剤、美白剤、ビタミン類、その他各種薬効成分、香料などが挙げられる。その他の成分の含有量は、本発明の課題解決を妨げない限り、当業者により適宜設定し得る。
【0040】
油相におけるその他の成分として、親水性乳化剤を含有してもよい。親水性乳化剤は、後述する水相に含有させる親水性乳化剤と同一のものでも異なるものでも、どちらでもよい。油相における親水性乳化剤の含有量は、油相における成分の均一な混合を妨げない程度の量であれば特に限定されないが、0質量%~1質量%であることが好ましい。また、油相における親水性乳化剤の含有量は、水相における親水性乳化剤の含有量よりも少ないことが好ましく、水相における親水性乳化剤の含有量に対して40%未満であることがより好ましく、30%未満であることがさらに好ましい。
【0041】
疎水化表面処理された微粒子金属酸化物、親油性乳化剤、アクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム共重合体及び液状油、並びに任意のその他の成分を含む油相は、各成分を加温又は室温下で順次添加し、撹拌などによって混合することなどにより得られる。例えば、疎水化表面処理された微粒子金属酸化物、親油性乳化剤及び液状油を撹拌機を用いて均一に混合して得られる混合物に、アクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム共重合体を添加して撹拌機を用いて均一に混合することなどによって、油相が得られる。
【0042】
また、例えば、その他の成分としてパラベンなどの室温で固体状の固形成分を用いる場合、固形成分を溶解するために、液状の成分に固形成分を入れた容器を60℃程度に加温し、該容器の内容物を撹拌機を用いて均一に混合し、次いで該容器の加温を維持して、又は加温することなく、疎水化表面処理された微粒子金属酸化物、親油性乳化剤、液状油及び紫外線吸収剤、並びにアクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム共重合体を添加して撹拌機を用いて均一に混合することによって油相を得てもよい。
【0043】
本発明の一態様の方法における水相は、基剤である水とともに、親水性乳化剤を少なくとも含む。
【0044】
親水性乳化剤は、化粧品分野で乳化剤として使用されているものであり、かつ、水に分散又は溶解する水溶性のものであれば特に限定されないが、例えば、HLBが8~20の乳化剤などが挙げられ、転相乳化を容易にして安定な水中油型乳化化粧料が得られ得るという観点から、好ましくはHLBが10~18の乳化剤であり、より好ましくはHLBが10~18のアニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤であり、さらに好ましくはHLBが10~18の非イオン性界面活性剤である。
【0045】
親水性乳化剤の具体例としては、自己乳化型モノステアリン酸グリセリルなどのグリセリン脂肪酸エステル;ラウリン酸ポリグリセリル-6、ミリスチン酸ポリグリセリル-10、ステアリン酸ポリグリセリル-10、イソステアリン酸ポリグリセリル-10などのポリグリセリン脂肪酸エステル;ステアリン酸PEG-5グリセリル、ステアリン酸PEG-15グリセリル、イソステアリン酸PEG-15グリセリル、トリイソステアリン酸PEG-20グリセリル、オレイン酸PEG-5グリセリル、オレイン酸PEG-15グリセリルなどのポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル;ヤシ脂肪酸ソルビタン、パルミチン酸ソルビタンなどのソルビタン脂肪酸エステル;ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、ステアリン酸PEG-6ソルビタン、イソステアリン酸PEG-20ソルビタンなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;ラウリン酸ソルベス-6、テトラオレイン酸ソルベス-6、テトラオレイン酸ソルベス-30、テトラオレイン酸ソルベス-60などのポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル;PEG-20水添ヒマシ油、PEG-30水添ヒマシ油などのポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル;ラウリン酸PEG-10、ステアリン酸PEG-10、ステアリン酸PEG-25、ステアリン酸PEG-40、ステアリン酸PEG-45、ステアリン酸PEG-55、オレイン酸PEG-10、ジステアリン酸PEG-150、ジイソステアリン酸PEG-8などのポリエチレングリコール脂肪酸エステル;水添レシチン、水添リゾレシチンなどのレシチン誘導体などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
親水性乳化剤は、常法に従って製造されたものであっても、市販されているものであっても、どちらでもよい。また、親水性乳化剤は、他の成分を含有する市販品に含まれていてもよい。親水性乳化剤は、上記したものの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用し得る。
【0047】
水相における親水性乳化剤の含有量は、転相乳化を生じせしめて転相乳化物として水中油型乳化化粧料が得られ得る量であれば特に限定されないが、例えば、0.05質量%~5質量%であり、水中油型乳化化粧料における乳化剤の全体量を低減することを目的とするのであれば、上限は2質量%が好ましく、1質量%がより好ましく、0.5質量%がさらに好ましく;良好な転相乳化を達成して良好な紫外線防御効果を水中油型乳化化粧料に付与するためには、下限は0.1質量%が好ましく、0.2質量%がより好ましく、0.3質量%がさらに好ましい。
【0048】
水相の基剤として水が用いられる。水は通常化粧料を作製するために用いられる水であればよい。水の含有量は、水中油型乳化化粧料を構成し得る量であれば特に限定されないが、例えば、40質量%~70質量%であり、好ましくは45質量%~60質量%である。
【0049】
本発明の一態様の方法において、水相は、水及び親水性乳化剤に加えて、その他の成分を含有し得る。
【0050】
水相におけるその他の成分は特に限定されず、例えば、通常の水中油型乳化化粧料に用いられる親水性成分などが挙げられ、より具体的には、保湿剤、清涼剤、防腐剤、キレート剤、pH調整剤、酸化防止剤、増粘剤、美白剤、ビタミン類、その他各種薬効成分、香料などが挙げられる。その他の成分の含有量は、本発明の課題解決を妨げない限り、当業者により適宜設定し得る。油相及び水相に使用し得るその他の成分のいくつかについて以下に列挙するが、これらはあくまでも例示であり、限定されるものではない。
【0051】
保湿剤としては、例えば、グリセリン、ジグリセリン、トレハロース、ブチレングリコール(BG)、ジプロピレングリコール(DPG)、キシリトール、マルチトール、マルトース、ソルビトール、ブドウ糖、果糖、加水分解エラスチン、乳酸ナトリウム、シクロデキストリン、ピロリドンカルボン酸などが挙げられ、これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。保湿剤の含有量は、0質量%~15質量%であることが好ましい。
【0052】
キレート剤としては、例えば、アラニン、エデト酸2ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、フィチン酸ナトリウム、リン酸3ナトリウムなどが挙げられ、これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。キレート剤の含有量は、0質量%~0.5質量%が好ましい。
【0053】
増粘剤としては、例えば、水溶性高分子が挙げられ、具体的にはヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、アセチル化ヒアルロン酸、アセチル化ヒアルロン酸ナトリウム、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン硫酸ナトリウム、フコイダン、チューベロース多糖体、キサンタンガムなどの水溶性多糖類;カラギーナン、アルギン酸などの天然高分子;クインスシード、オレンジ果皮エキス、チューベロースエキスなどの植物抽出物;カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルデンプンリン酸などの半合成高分子;カルボマー、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸/(メタ)アクリル酸アルキル共重合体などのアクリル酸系ポリマーなどの合成高分子などが挙げられる。増粘剤は、これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。増粘剤の含有量は、0質量%~1質量%であることが好ましい。得られる水中油型乳化化粧料について、微粒子金属酸化物に由来するきしみ感や指止まり感について改善するためには、水溶性高分子を配合することが好ましい。
【0054】
防腐剤としては、例えば、プロピルパラベン、メチルパラベン、安息香酸、サリチル酸、石炭酸、ソルビン酸、パラクロロメタクレゾール、ヘキサクロロフェン、塩化ベンザルコニウム、塩化クロルヘキシジン、トリクロロカルバニリド、感光素、フェノキシエタノール、エチルヘキシルグリセリン、アルカンジオールなどが挙げられ、これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。防腐剤の含有量は、0質量%~1質量%であることが好ましい。
【0055】
pH調整剤としては、例えば、乳酸、クエン酸、グリコール酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、リンゴ酸ナトリウム、エチドロン酸、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アルギニン、トリエタノールアミン、モノエタノールアミンなどが挙げられ、これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。pH調整剤の含有量は、0質量%~1質量%であることが好ましい。
【0056】
酸化防止剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、d-δ-トコフェロールなどのビタミンE及びその誘導体;チオタウリン、メマツヨイグサ抽出液、βカロチン、カテキン化合物、フラボノイド化合物、ポリフェノール化合物などが挙げられ、これらの1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて使用できる。酸化防止剤の含有量は、0質量%~1質量%であることが好ましい。
【0057】
水及び親水性乳化剤、並びに任意のその他の成分を含む水相は、各成分を加温又は室温下で順次添加し、撹拌などによって混合することにより得られる。例えば、その他の成分としてパラベン類、エデト酸2ナトリウムなどの難水溶性の物質を用いる場合、水、親水性乳化剤及びその他の成分を入れた容器を60℃程度に加温して、該容器の内容物を撹拌機を用いて均一に混合することなどによって水相を得ることができる。
【0058】
本発明の一態様の方法では、上記のようにして得られた油相に、水相を添加して、転相乳化することにより、水中油型乳化化粧料を得る。
【0059】
転相乳化するための操作及び条件は、化粧品分野の当業者により適宜設定することができる。例えば、後述する実施例に記載があるように、室温下で、撹拌機を用いて撹拌しつつ油相に水相を徐々に添加して、目視により乳化の状態を確認しながら、転相乳化を誘導することができる。この際、化粧料の総量が増加するとともに、乳化により粘度が上がることから、撹拌速度を徐々に上げることが好ましい。また、油相に水相の全量を添加した後、数分間撹拌を続けて、安定した水中油型乳化化粧料を得ることが好ましい。
【0060】
油相及び水相の含有量は、油相に対して水相の量が多くなる量であれば特に限定されないが、例えば、油相の含有量は20質量%~49質量%であり、好ましくは30質量%~45質量%であり;水相の含有量は51質量%~80質量%であり、好ましくは55質量%~70質量%である。
【0061】
本発明の一態様の方法の具体例としては、撹拌せずに、又は500rpm~1,000rpmの撹拌速度の撹拌機を用いて、室温下で、又は50℃~70℃に加温して、油相及び水相を調製し、次いで室温下で、油相に水相を徐々に添加して、全体量及び/又は粘度の増加に応じて、撹拌速度を3,000rpm~5,000rpmに変更して、転相乳化を生じせしめ、次いで油相に水相の全量を入れた後、数分間、好ましくは3分間~10分間程度撹拌を続けて、水中油型乳化化粧料を得ることを含む方法が挙げられるが、これに限定されない。
【0062】
本発明の一態様の方法では、本発明の課題を解決し得る限り、上記した工程の前段若しくは後段又は工程中に、種々の工程や操作を加入することができる。
【0063】
[本発明の一態様の化粧料]
本発明の一態様の化粧料は、本発明の一態様の方法によって得られる、水中油型乳化化粧料である。
【0064】
本発明の一態様の化粧料は、疎水化表面処理された微粒子金属酸化物と、親油性乳化剤と、アクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム共重合体と、液状油と、親水性乳化剤とを少なくとも含み、かつ、転相乳化物である。本発明の一態様の化粧料は、このような構成をとる限りにおいて、物性、機能、作用などの特性については特に限定されない。ただし、本発明の一態様の化粧料は、下記に示す体積平均粒子径、粘度、pH、SPF、安定性及び使用感からなる群から選ばれる少なくとも1種の特性を有することが好ましい。
【0065】
本発明の一態様の化粧料は、乳化粒子の体積平均粒子径が、後述する比較例5の化粧料の体積平均粒子径よりも小さいことが好ましく、9.5μm以下であることがより好ましく、5.0μm以下であることがさらに好ましく、4.0μm以下であることがなおさらに好ましい。乳化粒子が微細エマルションであることにより、より安定な乳化状態を保ち、良好なSPFを示しつつ、皮膚に対して良好な使用感を付与することが期待される。乳化粒子の体積平均粒子径の測定は、後述する実施例に記載があるとおりに、レーザー回折粒度分布計によって測定することができる。
【0066】
本発明の一態様の化粧料は、液状の形態にある場合には、粘度が10,000mPa・sであることが好ましく、9,000mPa・s以下であることがより好ましい。粘度の下限は典型的には1,000mPa・s程度である。粘度が10,000mPa・sを大きく上回る場合、例えば、15,000mPa・s以上である場合は、クリーム状の形態に近づき、使用感が重くなり得る。粘度の測定は、後述する実施例に記載があるとおりに、BM型粘度計によって測定することができる。
【0067】
本発明の一態様の化粧料は、pHが、乳化状態を不安定にせず、皮膚に刺激を与えない程度であることが好ましく、6~9がより好ましく、7~8.5がさらに好ましい。pHの測定は、後述する実施例に記載があるとおりに、pHメーターによって測定することができる。
【0068】
本発明の一態様の化粧料は、優れた紫外線防御効果を有するというためには、SPFが20以上であることが好ましく、22以上であることがより好ましく、25以上であることがさらに好ましく、27以上であることがなおさらに好ましい。SPFの測定値上限は、典型的には100程度であり、商品として表示される場合はSPF50以上を示す50+が上限である。SPFの評価方法は、後述する実施例に記載があるとおりに、SPFアナライザーによって測定することができる。
【0069】
本発明の一態様の化粧料は、安定性について、後述する実施例に記載の安定性試験に従って40℃で1ヵ月保管した場合に、水相と油相とが分離する相分離や油浮きが認められない程度であることが好ましい。
【0070】
本発明の一態様の化粧料は、使用感について、後述する実施例に記載の「潤い」及び/又は「のびの軽さ」に関する使用感評価により、対照品1を基準としてパネラー間の平均点が1.0よりも大きいことが好ましく、1.5以上であることがより好ましい。
【0071】
本発明の一態様の化粧料は、体積平均粒子径、粘度、pH、SPF、安定性及び使用感が上記した好ましい範囲内にあることにより、紫外線防御効果があり、安定かつ市販のスキンケア商品と遜色の無い使用感を備えた水中油型乳化化粧料であり得る。
【0072】
本発明の一態様の化粧料のより具体的な態様は、疎水化表面処理された微粒子金属酸化物を5質量%~17質量%、親油性乳化剤を0.1質量%~2質量%、アクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム共重合体を0.1質量%~2質量%、液状油を10質量%~17質量%、親水性乳化剤を0.2質量%~1質量%、水を40質量%~60質量%を含有し(ただし、全体の成分の含有量は100質量%を超過しない)、かつ、転相乳化物である、水中油型乳化化粧料である。
【0073】
本発明の一態様の化粧料のより具体的な別の態様は、紫外線吸収剤を5質量%~15質量%、疎水化表面処理された微粒子金属酸化物を5質量%~17質量%、親油性乳化剤を0.1質量%~2質量%、アクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム共重合体を0.1質量%~2質量%、液状油を10質量%~17質量%、親水性乳化剤を0.2質量%~1質量%、水を40質量%~60質量%を含有し(ただし、全体の成分の含有量は100質量%を超過しない)、かつ、転相乳化物である、水中油型乳化化粧料である。
【0074】
本発明の一態様の化粧料のより具体的な別の態様は、紫外線吸収剤を5質量%~15質量%、疎水化表面処理された微粒子金属酸化物を5質量%~17質量%、親油性乳化剤を0.1質量%~2質量%、アクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム共重合体を0.1質量%~2質量%、液状油を10質量%~17質量%、親水性乳化剤を0.2質量%~1質量%、水を40質量%~60質量%を含有し(ただし、全体の成分の含有量は100質量%を超過しない)、転相乳化物であり、かつ、乳化粒子の体積平均粒子径が9.5μm以下であり、粘度が4,000mPa・s~10,000mPa・sであり、pHが6~9であり、SPFが20~50であり、及び/又は安定性が認められる、水中油型乳化化粧料である。
【0075】
本発明の一態様の化粧料は、液状油、紫外線吸収剤などの油性成分の合計含有量を大きく、かつ、親油性乳化剤及び親水性乳化剤からなる乳化剤の合計含有量を小さくするように設計できる。例えば、本発明の一態様の化粧料において、油性成分の合計含有量は好ましくは15質量%以上、より好ましくは18質量%~30質量%、さらに好ましくは20質量%~28質量%であり;乳化剤の合計含有量は好ましくは2質量%未満、より好ましくは0.5質量%~1.5質量%、さらに好ましくは0.7質量%~1.2質量%であり;乳化剤の合計含有量に対する油性成分の合計含有量の割合(油性成分/乳化剤)は、好ましくは15以上、より好ましくは20~50、さらに好ましくは23~40である。
【0076】
本発明の一態様の化粧料は、その使用態様や剤形については特に限定されず、例えば、乳液、化粧水、美容液、サンスクリーンジェル、ファンデーション、パック、ハンドクリーム、化粧下地、コンシーラー、日焼け止め乳液などが挙げられる。本発明の一態様の化粧料は、乳液、化粧水、美容液などの液状の剤形である場合、紫外線散乱剤を含有しないスキンケア化粧品と同程度の良好な使用感触を有し得るものとして、スキンケア化粧品に代替して使用できることから好ましい。本発明の一態様の化粧料は、ガラス;プラスチック;アルミといった金属などを素材とする容器に充填及び密閉して、スキンケア化粧品、メーキャップ化粧品、フレグランス化粧品、ボディケア化粧品、オールインワン化粧品などの商品形態で提供することができる。
【0077】
本発明の一態様の化粧料は、皮膚に塗布することで、皮膚に対して紫外線防御効果とみずみずしい使用感を付与することが期待されることから、皮膚用水中油型乳化化粧料であることが好ましい。また、本発明の一態様の化粧料は、日焼止め用又は紫外線防御用の水中油型乳化化粧料として使用することができる。
【0078】
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではなく、本発明の課題を解決し得る限り、本発明は種々の態様をとることができる。
【実施例
【0079】
[1.化粧料の調製]
(1-1)実施例1~実施例11の化粧料
表1に示した処方に従い、以下の手順により、実施例1~実施例11の化粧料を調製した。なお、表中の数値は、質量%(wt%)を表わす。
【0080】
500mL容量のビーカーに、A相の成分を順次添加して、約60℃に加温及び撹拌して均一に混合することによりA相を得た。
【0081】
別の500mL容量のビーカーに、B相の成分を順次添加して、約60℃に加温及び撹拌して均一に混合することによりB相(水相)を得た。
【0082】
室温下で、A相にA’相の各成分を順次添加して、ホモディスパー(「ラボ・リューション」;プライミクス社製 )を用いて、500rpm~1,000rpmにて撹拌して均一に混合し、さらに撹拌を続けながらA’’相を添加して均一に混合することにより、油相を得た。
【0083】
油相に水相を徐々に添加し、転相乳化を誘導した。この際、全体量が増加し、乳化により粘度が上がることから、撹拌速度を3,000rpm~5,000rpmの範囲で調整し、水相の成分を全て添加した後、5分間撹拌して、実施例1~実施例11の化粧料を得た。
【0084】
(1-2)比較例1~比較例4の化粧料
表1に示した処方に従い、上記(1-1)と同様にして、比較例1~比較例4の化粧料を得た。
【0085】
(1-3)比較例5、比較例6及び参考例4の化粧料(順相乳化)
表1に示した処方に従い、上記(1-1)と同様にして、油相及び水相をそれぞれ調製した。
【0086】
水相に油相を徐々に添加し、順相乳化を誘導した。この際、撹拌速度を3,000rpmとし、油相の成分を全て添加した後、5分間撹拌して、比較例5、比較例6及び参考例4の化粧料を得た。
【0087】
(1-4)参考例1~参考例3の化粧料
表1に示した処方に従い、上記(1-1)と同様にして、参考例1~参考例3の化粧料を得た。
【0088】
【表1】
【0089】
[2.評価方法]
【0090】
(2-1)乳化状態観察
化粧料を目視及び顕微鏡で観察して、均一な乳化状態を確認できた場合は「○」とし、均一な乳化状態を確認できなかった場合は「×」と評価した。
【0091】
(2-2)粒子径測定
化粧料を精製水で希釈し、レーザー回折粒度分布計(「SALD-2000J」又は「(SALD-2300」;島津製作所社製)を用いて、屈折率1.60-0.10iにて乳化粒子の体積平均粒子径(平均値±標準偏差)を測定した。また、顕微鏡(「BX41」;OLYMPUS社製)、及び500万画素の高精細顕微鏡用デジタルカメラ(「DP26」;OLYMPUS社製)を用いて、乳化の状態を撮影した。
【0092】
(2-3)pH測定
pHは、常法に従ってpHメーター(「pH METER F-22」;堀場製作所社製)を使用して測定した。
【0093】
(2-4)粘度測定
粘度は、BM型粘度計(「VISCOMETER TVB-25L」;東機産業社製)を使用して測定した。測定条件は、SPINDLE No.M3、20rpmとした。調製直後の化粧料について、測定開始から3分後の粘度値(mPa・s)を読み取った。
【0094】
(2-5)SPF測定
SPFは、以下の手順によりSPFアナライザー(「HM021224 UV-1000S」;Labsphere社製)を用いて測定した。
【0095】
PMMA plate HD6(「HelioScreen Labs HELIOPLATE HD6」;Labsphere社製)に化粧料 33mg(約1.32mg/cm)を均一に塗布し、測定用プレートを作製した。次いで、SPFアナライザーを用いて、1プレートにつき10点測定した。得られた10点の測定値の平均をその化粧料のSPF値とした。
【0096】
(2-6)安定性試験
化粧料をガラス製の規格ビンに充填し、40℃で1ヵ月保管した後、目視にて相分離の有無を確認して、相分離が起きていない場合は「○」とし、相分離が起きている場合は「×」と評価した。
【0097】
(2-7)使用感評価
訓練を受けたパネラー4名を対象として、化粧料を直接的に皮膚へ塗布することにより、対照品1を用いて、「潤い」及び「のびの軽さ」を下記の基準により点数をつけてパネラー間の平均点及び標準偏差を求めた。
「対照品1」:
油剤であるトリエチルヘキサノインが10wt%であること以外は実施例2と組成が同一であり、かつ、順相乳化により得られた水中油型乳化化粧料
各項目の評価基準:
2点 対照品1より優れている
1点 対照品1と同程度
0点 対照品1より劣る
【0098】
[3.評価結果]
(3-1)乳化状態
乳化状態の観察結果を表1に示す。
【0099】
実施例1~実施例11の化粧料は転相乳化により均一な乳化が確認された。この結果より、水相における親水性乳化剤の含有量が0.3wt%~0.5wt%であれば、紫外線散乱剤の含有量を9.0wt%~15.0wt%に変えても、転相乳化により均一な乳化が生じることが確認された。また、今回用いた親水性乳化剤であれば、転相乳化により均一な乳化が可能であることがわかった。
【0100】
比較例1~比較例4の化粧料については転相乳化により均一に乳化しなかった。この結果より、油相における親水性乳化剤の含有量を増やしても、水相に親水性乳化剤を含有させない場合は、転相乳化により均一な乳化が生じないことがわかった。ただし、この場合でも、順相乳化により均一な乳化が確認されることが、比較例5及び比較例6の化粧料よりわかった。
【0101】
(3-2)粒子径
実施例2、比較例5、比較例6及び参考例4の化粧料の粒子径の測定結果を図1に示す。図1に示すとおり、転相乳化による実施例2の化粧料は、順相乳化によるその他の化粧料に比べて、粒子径が小さいことがわかった。
【0102】
(3-3)pH及び粘度
実施例2、実施例4及び実施例8~実施例11の化粧料のpH及び粘度を測定した結果を表2に示す。
【0103】
【表2】
【0104】
表2に示すとおり、試験した化粧料のpHは7.5~8.5の範囲内にあり、粘度は10,000mPa・s以下であることがわかった。
【0105】
(3-4)SPF
実施例2、実施例4、実施例6、比較例5、比較例6、参考例1及び参考例4の化粧料のSPFの測定結果を表3に示す。
【0106】
【表3】
【0107】
水相に親水性乳化剤を含有させて転相乳化した場合に、SPFが大きくなることがわかった。この理由としては、油相において微粒子金属酸化物が良好に分散しており、親水性乳化剤を含む水相を用いた転相乳化においてもその良好な分散性は維持されたことから、結果的に、最終的に得られた化粧料のSPFが大きくなったと推測される。このように、乳化剤の含有量に依らずに、乳化剤を含有する相及び乳化の方法によってSPFを高められたことは、驚くべき知見である。
【0108】
(3-5)安定性
実施例2、実施例4、実施例6及び実施例8~実施例11の化粧料の安定性を調べたところ、保管期間を通じて相分離は確認されず、すべて「○」と評価された。
【0109】
(3-6)使用感
実施例2、比較例5及び参考例4の化粧料について使用感を評価したところ、実施例2の化粧料は、パネラーの全てが「潤い」及び「のびの軽さ」について対照品1よりも優れている(2点)と評価した。それに対して、比較例5の化粧料は、「潤い」又は「のびの軽さ」が対照品1と同程度(1点)又は劣っている(0点)と評価したパネラーがいた。したがって、実施例2の化粧料は、「潤い」及び「のびの軽さ」に関する使用感について、比較例5の化粧料よりも優れたものであることがわかった。一方、実施例2及び参考例4の化粧料を比べると、「潤い」については両者においてほとんど差異はみられなかったが、「のびの軽さ」は明らかに実施例2の化粧料が優れていた。
【0110】
また、実施例2の化粧料について、紫外線散乱剤を含有していない市販のスキンケア化粧品である「HIKARIMIRAIトリートメントナイトエマルションR」(発売元:株式会社光未来)と比較したところ、「潤い」及び「のびの軽さ」は同程度であった。一方、皮膚に塗布した際に軽く、薄く広がるように感じることをいう「なめらかさ」について評価したところ、実施例2の化粧料は、上記スキンケア化粧品よりも優れていた。
【0111】
(3-7)まとめ
疎水化表面処理された微粒子金属酸化物、親油性乳化剤、アクリル酸ナトリウム/アクリロイルジメチルタウリンナトリウム共重合体及び液状油を含む油相に、親水性乳化剤を含む水相を添加して、転相乳化することにより得られた水中油型乳化化粧料は、紫外線防御効果がありながら、比較的多量の油性成分を含有しつつも、乳化剤の含有量を低減してなるものであり、さらに粒子径が細かく、使用感が優れたものであり得ることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明の一態様の方法は、紫外線防御効果があり、比較的多量の油性成分を含有しつつも、乳化剤の含有量を低減した水中油型乳化化粧料を工業的規模で製造するために利用できる。本発明の一態様の化粧料を使用することにより、使用者は、日常的に快適に、紫外線照射による皮膚への悪影響を低減又は防止することができるようになる。
図1