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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-12
(45)【発行日】2023-09-21
(54)【発明の名称】ファンモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 5/08 20060101AFI20230913BHJP
   H02K 5/22 20060101ALI20230913BHJP
   H02K 7/14 20060101ALN20230913BHJP
【FI】
H02K5/08 A
H02K5/22
H02K7/14 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019164706
(22)【出願日】2019-09-10
(65)【公開番号】P2021044917
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096884
【弁理士】
【氏名又は名称】末成 幹生
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正昭
【審査官】保田 亨介
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-148606(JP,A)
【文献】特開2012-080747(JP,A)
【文献】特開2009-112067(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K5/00-7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータと、
前記ステータに電流を供給する回路基板と、
前記ステータに供給された電流により回転するロータと、
前記回路基板に外部電源を接続するリード線と、
前記ステータの少なくとも一部、前記回路基板の少なくとも一部、および前記リード線の一部を覆う平面視略円形の第1モールド樹脂と、
前記第1モールド樹脂から引き出されたリード線の第1モールド樹脂から所定範囲を覆う第2モールド樹脂とを備え、
前記第2モールド樹脂は、前記第1モールド樹脂よりも低い硬度を有し、
前記第2モールド樹脂は、前記第1モールド樹脂の外周部から突出する凸部を備え、前記リード線は、前記第1モールド樹脂の中心を通らない方向に引き出されているモータ。
【請求項2】
前記第1モールド樹脂の外周部の前記リード線が引き出された部分に凹部または切欠部を設け、該凹部または該切欠部に前記第2モールド樹脂を設けた請求項1に記載のモータ。
【請求項3】
ステータと、
前記ステータに電流を供給する回路基板と、
前記ステータに供給された電流により回転するロータと、
前記回路基板に外部電源を接続するリード線と、
前記ステータの少なくとも一部、前記回路基板の少なくとも一部、および前記リード線の一部を覆う平面視略円形の第1モールド樹脂と、
前記第1モールド樹脂から引き出されたリード線の第1モールド樹脂から所定範囲を覆う第2モールド樹脂とを備え、
前記第2モールド樹脂は、前記第1モールド樹脂よりも低い硬度を有し、
前記第1モールド樹脂の外周部に径方向に突出する凸部を設け、前記第2モールド樹脂は、該凸部から引き出された前記リード線を覆い、
前記リード線は、前記第1モールド樹脂の中心を通らない方向に引き出されているモータ。
【請求項4】
前記第1モールド樹脂または前記第2モールド樹脂から引き出された前記リード線は複数本あり、前記第1モールド樹脂または前記第2モールド樹脂から所定範囲に前記リード線の外周を前記第2モールド樹脂で1本ずつ覆う被覆部を設けた請求項1~のいずれかに記載のモータ。
【請求項5】
前記第1モールド樹脂の23℃における硬度はD70以上であり、前記第2モールド樹脂の23℃における硬度はA90以下である請求項1~のいずれかに記載のモータ。
【請求項6】
ケーシングに、ステータと、前記ステータに電流を供給する回路基板と、前記ステータに供給された電流により回転するロータと、前記回路基板に外部電源を接続するリード線と、を備えたモータの製造方法であって、
前記ステータ、前記回路基板、および前記リード線を一体的に結合してステータ集合体とし、
前記ステータ集合体を、金型から前記リード線を引き出した状態で前記金型に配置し、前記金型の前記リード線を引き出した部分の近傍の空間に熱硬化性樹脂からなる第2モールド樹脂を充填し、
前記金型を前記第2モールド樹脂の硬化開始温度以上の温度に加熱して前記第2モールド樹脂を硬化させ、
次いで、前記金型の残りの空間に硬化開始温度が前記第2モールド樹脂の硬化開始温度よりも高く硬度が前記第2モールド樹脂よりも高い第1モールド樹脂を充填し、
前記金型を前記第1モールド樹脂の硬化開始温度以上の温度に加熱して前記第1モールド樹脂を硬化させるモータの製造方法。
【請求項7】
前記第2モールド樹脂および第1モールド樹脂を硬化させた前記ステータ集合体を、前記ケーシングに取り付ける請求項6に記載のモータの製造方法。
【請求項8】
前記第1モールド樹脂の硬化開始温度と前記第2モールド樹脂の硬化開始温度の差は10℃以上である請求項6または7に記載のモータの製造方法。
【請求項9】
前記第1モールド樹脂の23℃における硬度はD70以上であり、前記第2モールド樹脂の23℃における硬度はA90以下である請求項6~8のいずれかに記載のモータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸流ファンや遠心ファンなどのファンモータに係り、特に、部品を樹脂でモールドしたファンモータに関する。
【背景技術】
【0002】
防水性や耐油性を持たせたファンモータは、ステータや回路基板、リード線の一部などを樹脂でモールドすることで作製される。モールド樹脂から引き出されたリード線には、モールド樹脂からの引出部付近に応力が集中するため、モールドした部品をケーシングに設置するまでの間に行う作業時に損傷するおそれがある。
【0003】
モールド樹脂からのリード線の引出部を保護する手段として、たとえば特許文献1には、弾性体などで構成されたグロメット部材にリード線が挿入された状態でモールドすることで、リード線の引出部付近を保護する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-112067号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、グロメット部材という部品が増えるとともに、グロメット部材にリード線を挿入する作業が煩雑で作業性が悪いという課題があった。
【0006】
本発明は上述の事情に鑑みてなされたもので、グロメット部材のような別部品を用いることなく、モールド樹脂からのリード線の引出部を保護して損傷を抑制することができるファンモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ステータと、前記ステータに電流を供給する回路基板と、前記ステータに供給された電流により回転するロータと、前記回路基板に外部電源を接続するリード線と、前記ステータの少なくとも一部、前記回路基板の少なくとも一部、および前記リード線の一部を覆う平面視略円形の第1モールド樹脂と、前記第1モールド樹脂から引き出されたリード線の第1モールド樹脂から所定範囲を覆う第2モールド樹脂とを備え、前記第2モールド樹脂は、前記第1モールド樹脂よりも低い硬度を有し、前記第2モールド樹脂は、前記第1モールド樹脂の外周部から突出する凸部を備え、前記リード線は、前記第1モールド樹脂の中心を通らない方向に引き出されているモータである。
【0008】
本発明のモールドモータにあっては、第1モールド樹脂よりも低い硬度を有する第2モールド樹脂がグロメット部材の機能を果たし、モールド樹脂からのリード線の引出部を保護して損傷を抑制することができるのは勿論のこと、グロメット部材のような部品を必要とせず、したがって、グロメット部材にリード線を挿入する必要がないため作業性がよい。
【0009】
ここで、ステータの少なくとも一部、回路基板の少なくとも一部、およびリード線の一部を第1モールド樹脂で覆ってモールド体を形成し、モールド体の外周部のリード線が引き出された部分に凹部または切欠部を設け、凹部または切欠部に第2モールド樹脂を設けることができる。このような態様では、第2モールド樹脂をモールド体の輪郭から突出しないように形成することができ、外観が従来のものと変わらないようにすることができる。
【0010】
上記態様とは逆に第2モールド樹脂をモールド体から突出させることもできる。すなわち、ステータの少なくとも一部、回路基板の少なくとも一部、およびリード線の一部を第1モールド樹脂で覆ってモールド体を形成し、モールド体から突出するリード線の所定範囲に第2モールド樹脂からなる凸部を設けることができる。このような態様では、凸部の長さを任意に設定することができ、リード線の保護を確実に行うことができる。
【0011】
本発明では、上記のような凹部または切欠部と凸部を組み合わせた構成とすることもできる。すなわち、ステータの少なくとも一部、回路基板の少なくとも一部、およびリード線の一部を第1モールド樹脂で覆ってモールド体を形成し、モールド体の外周部のリード線が引き出された部分に凹部または切欠部を設け、凹部または切欠部に第2モールド樹脂を設けるとともに、モールド体の外周部から突出する第2モールド樹脂からなる凸部を凹部または切欠部に設けられた第2モールド樹脂と一体的に設けることができる。
【0012】
また、第1モールド樹脂または第2モールド樹脂から突出したリード線に、第1モールド樹脂または第2モールド樹脂から所定範囲にリード線の外周を被覆する第2モールド樹脂を設けることができる。
【0013】
本発明では、第1、第2モールド樹脂は例えば熱硬化性樹脂であり、第2モールド樹脂は、第1モールド樹脂よりも硬化開始温度が低いものとすることができる。このような態様では、第2モールド樹脂を金型へ充填してから昇温させて硬化させ、次いで、第1モールド樹脂を金型へ充填してさらに昇温させて硬化させることにより、第1、第2モールド樹脂を区別して形成することができる。
【0014】
また、第1モールド樹脂の23℃における硬度は例えばD70以上であり、第2モールド樹脂の23℃における硬度は例えばA90以下であることが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、グロメット部材のような別部品を用いることなく、モールド樹脂からのリード線の引出部を保護して損傷を抑制することができるモータが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】(A)は本発明の第1実施形態の軸流ファンを示す断面図であり、(B)は(A)の矢印Bで示す部分の拡大図である。
図2図2(A)は第1実施形態の変更例のモールド体を示す側面図、(B)は本発明の第2実施形態の平面図、(C)は(B)の要部の拡大図である。
図3】本発明の第3実施形態を示し、(A)はモールド体を示す側面図、(B)はその平面図である。
図4】本発明の第4実施形態を示し、(A)はモールド体を示す側面図、(B)はその平面図である。
図5】本発明の第5実施形態を示し、(A)はモールド体を示す側面図、(B)はその平面図である。
図6】本発明の第6実施形態を示し、(A)はモールド体を示す側面図、(B)はその平面図である。
図7】本発明の第7実施形態を示し、(A)はモールド体を示す側面図、(B)はその平面図である。
図8】本発明の第8実施形態を示し、(A)はモールド体を示す側面図、(B)はその平面図である。
図9】本発明の第9実施形態を示し、(A)はモールド体を示す側面図、(B)はその平面図である。
図10】(A)は本発明の実施形態の変更例のファンモータ(ブロアファン)を示す断面図であり、(B)はその平面図である。
図11】(A)は本発明の実施形態の他の変更例のファンモータ(AC軸流ファン)を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
1.第1実施形態
(軸流ファンの全体構成)
図1(A)は軸流ファンに適用される本発明の実施形態のファンモータ10を示す軸断面図、図1(B)は(A)の矢印Bで示す部分の拡大図である。図1(A)に示すように、実施形態のファンモータ10は、合成樹脂製のケーシング11と、ステータ20と、ロータ30とを備えている。
【0018】
ケーシング11は、基端部中央のベース部14と、ベース部14の中央に固定された円筒状の軸受ハウジング15を備えている。軸受ハウジング15は、例えば真鍮などの金属製であり、ケーシング11にインサート成形されている。軸受ハウジング15の内周には、一対の玉軸受16,17が圧入などの手段によって互いに離間して固定されている。図1(A)において符号16aは玉軸受16,17に予圧を与えるコイルばねである。
【0019】
ステータ20は、軸受ハウジング15の外周側に配置されており、半径方向外側に放射状に延びる複数の突極を有するステータコア21と、ステータコア21に装着されたボビン22と、ボビン22に巻回されたコイル23とから構成されている。また、軸受ハウジング15の基部の周囲には回路基板24がボビン22の下部に固定されている。回路基板24には、ファンモータ10を駆動させるための駆動回路が形成されており、電子部品26,27が実装されている。
【0020】
回路基板24には、駆動回路に通電するためのリード線25が接続されている。リード線25の端部25aはポリ塩化ビニルやポリエチレンなどの樹脂製の被覆が剥離されて回路基板24に半田付けされている。図中符号24aはコネクタピンであり、回路基板24とボビン22に挿入された状態で回路基板24とコイル23とを接続している。これにより、ステータ20、回路基板24、およびリード線25は、一体的に結合されたステータ集合体Cとされている。
【0021】
ロータ30は、玉軸受16,17に圧入などの手段によって固定された金属製のシャフト31と、シャフト31がインサート成形されたカップ状をなすハブ32とを備えている。ハブ32の円筒状の部分の外周には、複数の羽根33が一体的に形成され、その内周にはヨーク34が固定されている。ヨーク34の内周には磁石35が固定され、磁石35は、ステータ20の外周に対向するように配置されている。
【0022】
上記構成のファンモータ10では、羽根33の上端側の開口部が空気の吸込口33aとされ、下端側の開口部が吐出口33bとされている。また、ファンモータ10では、ステータ20、回路基板24、およびリード線25からなるステータ集合体Cのうちのリード線25の回路基板24近傍までの部分が、ケーシング11への組み付け前に第1モールド樹脂28と第2モールド樹脂29とによって一体的にモールドされている。なお、以下の説明において、ステータ集合体Cのうちの第1モールド樹脂28でモールドされた部分をモールド体19と称する。このように形成されたモールド体19は、ステータ20を覆う円筒部19aと、回路基板24を覆うフランジ部19bからなる円筒体である。
【0023】
(リード線の引出部の構成)
図1(B)はリード線25の第1モールド樹脂28からの引出部の詳細を示す図である。図1(B)に示すように、モールド体19のフランジ部19bからリード線25が引き出される箇所には、凹部28aが形成され、凹部28aには第2モールド樹脂29が充填されている。なお凹部28aの形状は特に限定されず、例えば、平面視で弓形状の部分が欠けた切欠部であってもよい。
【0024】
第1モールド樹脂28は、例えば熱硬化性樹脂のエポキシ樹脂であり、第2モールド樹脂29は、例えば熱硬化性樹脂のウレタン樹脂である。第2モールド樹脂29は、第1モールド樹脂28よりもよりも低い硬度を有する。たとえば、第1モールド樹脂28の23℃における硬度はD70以上であり、第2モールド樹脂29の23℃における硬度はA90以下である。好ましくは、第2モールド樹脂29の23℃における硬度はA30~A80である。第2モールド樹脂の硬度がこの範囲内であると、モールド体が形成されたステータ集合体Cをケーシング11に取り付けるまでの作業時において、リード線25をより適切に保護することができる。また、さらに好ましくは、第1モールド樹脂28の硬度はD80~D95であり、ガラス転移点が125℃以上であり、ガラス転移点以下における線膨張係数が4×10-5/℃以下であることが望ましい。第1モールド樹脂28の硬度、ガラス転移点およびガラス転移点以下における線膨張係数といった特性がこの範囲内であると、ステータ集合体Cを構成する各部品の上記特性との差が小さくなる。そのため、温度変化に伴う内部応力の発生が抑制され、熱衝撃に伴うステータ集合体Cを構成する各部品の損傷を防止することができ、防水性および耐油性をより長期的に確保することができる。なお、ここでいう硬度は、JIS K 7215(デュロメータ:タイプAおよびD)に準じた方法で測定されたものであり、ガラス転移点および熱膨張係数はJIS K 7121に準じた方法で測定されたものである。
【0025】
上記のようなリード線25の引出部は次のようにして構成される。先ず、金型の上型を開いた状態で下型のリード線25の引出部となる箇所に流動性のある第2モールド樹脂29の一部を充填し、その状態で下型に、ステータ集合体Cを載置する。次いで、リード線25の引出部となる箇所に第2モールド樹脂29の残りを充填し、上型と下型とを閉じる。続いて上型および下型を加熱し、第2モールド樹脂29を硬化させる。
【0026】
次いで、金型の残りの空間に流動性のある第1モールド樹脂28を充填(射出)し、金型を再び加熱し、第1モールド樹脂28を硬化させる。第1モールド樹脂28が硬化したら上型を開き、モールド体19が形成されたステータ集合体Cを取り出す。そして、ケーシング11にステータ集合体Cを取り付け、ロータ30のシャフト31を玉軸受16,17に固定することによってファンモータ10が構成される。
【0027】
上記構成のファンモータ10にあっては、第2モールド樹脂29がグロメット部材の機能を果たし、第1モールド樹脂28からのリード線25の引出部を保護して損傷を抑制することができるのは勿論のこと、グロメット部材のような部品を必要とせず、したがって、グロメット部材にリード線25を挿入する必要がないため作業性がよい。
【0028】
特に、上記第1実施形態では、第2モールド樹脂29がモールド体19の円形の輪郭から突出しないので、外観が従来のものと変わらないという利点がある。また、第1モールド樹脂28よりも硬化開始温度の低い第2モールド樹脂29を用いているので、第2モールド樹脂29の金型への充填と硬化の後に、第1モールド樹脂28の金型への充填と硬化を金型を冷却することなく連続して行うことにより、第1、第2モールド樹脂28,29を区別して形成することができる。あるいは、第2モールド樹脂29を金型へ充填してから第1モールド樹脂18の硬化開始温度以上まで昇温させて硬化させ、続いて第1モールド樹脂28を金型へ充填して硬化させることにより、第1、第2モールド樹脂28,29を区別して形成することができる。第1モールド樹脂28の硬化開始温度と第2モールド樹脂29の硬化開始温度の差は特に限定されないが、10℃以上であることが望ましい。硬化開始温度の差が10℃以上であることで、第2モールド樹脂29の硬化後に第1モールド樹脂28を硬化させる一連の工程をよりスムーズに進めることができ、作業性が向上する。なお、ここでいう「硬化開始温度」とは、示差走査熱量測定(DSC)から得られる温度と発熱量の関係を示すグラフにおいて、硬化を示す上昇ピークが発生し始める温度を指す。
【0029】
2.第2実施形態
図2(A)は第1実施形態の変更例を示す図であり、リード線25が回路基板24から離間する方向に偏っている例を示している。図2(B),(C)は本発明の第2実施形態を示す図であり、図2(A)における第2モールド樹脂29は上記実施形態と同等の構成であるが、図2(B),(C)では、第2モールド樹脂29の上部に切欠部29aが設けられている。このような第2実施形態では、第2モールド樹脂29の使用量を低減することができる。
【0030】
3.第3実施形態
上記第1、第2実施形態はモールド体19のフランジ部19bの外周部に凹部28aを設け、凹部28aに第2モールド樹脂29を充填した例である。これに対して、図3に示す第3実施形態では、フランジ部19bの外周部に凹部28aが設けられておらず、第1モールド樹脂28からリード線25が引き出される箇所に、フランジ部19bの外周部から突出する第2モールド樹脂29からなる凸部29bが形成されている。この第3実施形態では、凸部29bの突出する長さを適宜設定することによってリード線25を適切に保護することができる。また、リード線25を引き出す方向は特に限定されないが、この第3実施形態では、リード線25は、モールド体19の中心を通らない方向に引き出されている。このため、凸部29bは略台形状をなし、モールド体19の半径方向外側への突出量が抑えられている。
【0031】
4.第4実施形態
図4は本発明の第4実施形態を示す図である。第4実施形態では、図2(A)に示すモールド体19において、凹部28aに充填された第2モールド樹脂29から突出したリード線25の外周面は、凹部28aに充填された第2モールド樹脂29から所定範囲において第2モールド樹脂29からなる被覆部29cで覆われている。このような第4実施形態では、モールド体19内に入り込んだ第2モールド樹脂29と被覆部29cとによってリード線25がより適切に保護されているから、リード線25の損傷をより抑制することができる。なおリード線25が複数本ある場合、被覆部29cはリード線25の外周面を1本ずつ覆うが、隣り合う被覆部29c同士が部分的に接合されていてもよいし、分離していてもよい。第4実施形態では、複数本あるリード線25を覆う被覆部29cが互いに分離して形成されている。
【0032】
5.第5実施形態
図5は本発明の第5実施形態を示す図である。この第5実施形態では、フランジ部19bから突出したリード線25が被覆部29cで覆われている。このような第5実施形態においても、リード線25が被覆部29cで保護されるので、リード線25の損傷を抑制することができる。
【0033】
6.第6実施形態
図6は本発明の第6実施形態を示す図である。第6実施形態では、フランジ部19bからリード線25が引き出される箇所に凹部28aが形成され、凹部28aには第2モールド樹脂29が充填されている。第2モールド樹脂29はフランジ部19bの外周部から突出するように設けられ、凸部29bが形成されている。さらに、凸部29bから引き出されたリード線25に被覆部29cが設けられている。このような第6実施形態では、リード線25が凹部28aまたは切欠部内、凸部29bおよび被覆部29cの第2モールド樹脂29で保護されているので、リード線25の損傷をさらに有効に抑制することができる。
【0034】
7.第7実施形態
図7は本発明の第7実施形態を示す図である。第7実施形態では、フランジ部19bからリード線25が引き出される箇所に、フランジ部19bの外周部から突出する第1モールド樹脂28からなる凸部28bが形成されている。そして、凸部28bから引き出されたリード線25に被覆部29cが設けられている。このような第7実施形態においても、リード線25が被覆部29cで保護されるので、リード線25の損傷を抑制することができる。
【0035】
8.第8実施形態
図8は本発明の第8実施形態を示す図である。第8実施形態では、リード線25は、モールド体19の中心を通る方向に引き出されている。フランジ部19bの外周部に凹部28aが設けられておらず、第1モールド樹脂28からリード線25が引き出される箇所に、フランジ部19bの外周部から突出する第2モールド樹脂29からなる凸部29bが形成されている。この第8実施形態は図5に示す第5実施形態の変更例とも言える。この第8実施形態においても、凸部29bの突出する長さを適宜設定することによってリード線25を適切に保護することができる。また凸部29bの高さを適宜設定することによって第2モールド樹脂29の使用量を低減することができる。
【0036】
9.第9実施形態
図9は本発明の第9実施形態を示す図である。第9実施形態では、フランジ部19bからリード線25が引き出される箇所に、フランジ部19bの外周部から突出する第1モールド樹脂28からなる凸部28bが形成されている。さらに、凸部28bの先端部に、第2モールド樹脂29からなる凸部29bが形成されている。そして、凸部29bから引き出されたリード線25に被覆部29cが設けられている。このような第9実施形態においては、凸部28aが設けられていることで、回路基板24をより確実に第1モールド樹脂28で覆うことができるため、防水性および耐油性をより適切に確保できると共に、リード線25が凸部29bおよび被覆部29cで保護されるので、リード線25の損傷を有効に抑制することができる。
【0037】
上記実施形態では第1、第2モールド樹脂28,29を熱硬化性樹脂で構成しているが、熱可塑性樹脂で構成することもできる。この場合、金型の上型を開いた状態で下型のリード線25の引出部となる箇所に溶融した第2モールド樹脂29の一部を充填し、その状態で下型に、ステータ集合体Cを載置する。次いで、リード線25の引出部となる箇所に第2モールド樹脂29の残りを充填し、上型と下型とを閉じる。上型および下型は室温のため第2モールド樹脂29は冷却されて硬化を開始する。次いで、金型の残りの空間に第1モールド樹脂28を充填(射出)し、冷却して硬化させる。
【0038】
10.他のファンモータへの適用
本発明は上記実施形態のような軸流ファン用のファンモータ10に限定されるものではなく、種々のファンモータに適用することができる。たとえば、図10に示すようなブロアファン(シロッコファン)用のファンモータ40に適用することができる。このファンモータ40は、上記第1実施形態と同等のステータ20とロータ30を備えている。また、ケーシング41は、羽根43を備え、羽根43の上端側の開口部が空気の吸込口43aとされ、ケーシング41の側部に吐出口43bが設けられている。
【0039】
このようなファンモータ40においても、ステータ20、回路基板24、およびリード線25は、一体的に結合されたステータ集合体Cとされ、このステータ集合体Cがモールドされてモールド体49とされている。そして、リード線25のモールド体49からの引出部49aは、上記実施形態と同等の構成とされている。このようなファンモータ40においても上記実施形態と同等の効果を得ることができる。
【0040】
本発明は、上記実施形態のようなアウターロータ型のファンモータに限定されるものではなく、インナーロータ型のファンモータにも適用可能である。図11はそのようなAC軸流ファンに適用されるファンモータ50を示すものである。このファンモータ50は、ケーシング51と、ロータ60とステータ70とを備えている。
【0041】
ケーシング51の中央部にはシャフト52が固定され、シャフト52には軸受ハウジング55および一対の玉軸受56,57によってロータ60が回転自在に支持されている。
ロータ60は軸受ハウジング55の外周に固定されたハブ62および磁石65を備え、ハブ62の外周部には羽根63が形成されている。
【0042】
磁石65の外周側にはケーシング51に取り付けられたステータ70が配置されている。ステータ70は、内周側へ向かって放射状に延びる複数の突極を有するステータコア71と、ステータコア71に装着されたボビン72と、ボビン72に巻回されたコイル73とから構成されている。コイル73にはリード線75が接続されている。
【0043】
上記構成のファンモータ50では、羽根63の上端側の開口部が空気の吸込口63aとされ、下端側の開口部が吐出口63bとされている。このようなファンモータ50においても、ステータ70およびリード線75は、一体的に結合されたステータ集合体Cとされ、このステータ集合体Cがモールドされてモールド体59とされている。そして、リード線75のモールド体59からの引出部59aは、上記実施形態と同等の構成とされ、このようなファンモータ50においても上記実施形態と同等の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、軸流ファンやブロアファンなどのファンモータの技術分野に利用することができる。
【符号の説明】
【0045】
10…ファンモータ、11…ケーシング、14…ベース部、15…軸受ハウジング、16…玉軸受、17…玉軸受、16a…コイルばね、19…モールド体、19a…円筒部、19b…フランジ部、20…ステータ、21…ステータコア、22…ボビン、23…コイル、24…回路基板、24a…コネクタピン、25…リード線、26…電子部品、27…電子部品、28…第1モールド樹脂、28a…凹部、28b…凸部、29…第2モールド樹脂、29a…切欠部、29b…凸部、29c…被覆部、30…ロータ、31…シャフト、 32…ハブ、33…羽根、33a…吸込口、33b…吐出口、34…ヨーク、35…磁石、40…ファンモータ、41…ケーシング、43…羽根、43a…吸込口、43b…吐出口、49…モールド体、50…ファンモータ、51…ケーシング、52…シャフト、55…軸受ハウジング、56…玉軸受、57…玉軸受、59…モールド体、59a…引出部、60…ロータ、62…ハブ、63…羽根、63a…吸込口、63b…吐出口、65…磁石、70…ステータ、71…ステータコア、72…ボビン、73…コイル、75…リード線、C…ステータ集合体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11