IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社巴川製紙所の特許一覧

<>
  • 特許-乾燥機構およびその使用方法 図1
  • 特許-乾燥機構およびその使用方法 図2
  • 特許-乾燥機構およびその使用方法 図3
  • 特許-乾燥機構およびその使用方法 図4
  • 特許-乾燥機構およびその使用方法 図5
  • 特許-乾燥機構およびその使用方法 図6
  • 特許-乾燥機構およびその使用方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-12
(45)【発行日】2023-09-21
(54)【発明の名称】乾燥機構およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
   F26B 9/00 20060101AFI20230913BHJP
   F26B 3/04 20060101ALI20230913BHJP
   F26B 21/00 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
F26B9/00 A
F26B3/04
F26B21/00 G
F26B21/00 H
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019165256
(22)【出願日】2019-09-11
(65)【公開番号】P2021042900
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000153591
【氏名又は名称】株式会社巴川製紙所
(74)【代理人】
【識別番号】100107102
【弁理士】
【氏名又は名称】吉延 彰広
(74)【代理人】
【識別番号】100164242
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 直人
(74)【代理人】
【識別番号】100172498
【弁理士】
【氏名又は名称】八木 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】土田 実
【審査官】岩瀬 昌治
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-000052(JP,A)
【文献】特開2013-134034(JP,A)
【文献】実開昭54-083066(JP,U)
【文献】国際公開第2018/131591(WO,A1)
【文献】特開2003-225077(JP,A)
【文献】特開平02-159239(JP,A)
【文献】実開昭59-060491(JP,U)
【文献】実開昭59-124988(JP,U)
【文献】特開2006-007025(JP,A)
【文献】特開2012-052786(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B 9/00
F26B 3/04
F26B 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気中の水分を吸着する吸着剤、および該吸着剤を加熱する第一の加熱器とを乾燥室内に備え、
前記乾燥室内に乾燥空気を供給する乾燥空気供給器と、
前記乾燥室内の空気を前記乾燥室外へ放出する排気口と、
前記排気口から放出される空気の流量を調節する流量調節機構と、
を備え、
前記吸着剤は、前記排気口に設けられたものである、
ことを特徴とする乾燥機構
【請求項2】
請求項1に記載の乾燥機構であって、
前記第一の加熱器は、電気を流すと発熱する導電性繊維を有するものであり、
前記第一の加熱器は、前記導電性繊維による発熱領域が平面において蛇行している、
ことを特徴とする乾燥機構
【請求項3】
請求項1または2に記載の乾燥機構であって、
前記乾燥室内には半導体検査装置を配置するものである、
ことを特徴とする乾燥機構。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の乾燥機構であって、
前記流量調節機構は、
前記排気口に設けられ、温度によって開閉度合いが変化するバイメタルの扉と、
前記扉を加熱する第二の加熱器と、を有するものであり、
前記第二の加熱器を用いて前記扉の温度を変化させることで、前記排気口から排出される空気の流量を調節するものである、
ことを特徴とする乾燥機構。
【請求項5】
請求項4に記載の乾燥機構であって、
前記第一の加熱器は、前記第二の加熱器である、
ことを特徴とする乾燥機構。
【請求項6】
請求項1から3のいずれか一項に記載の乾燥機構であって、
前記排気口は、前記乾燥室の外側に端部が突出した形状のものであり、
前記流量調節機構は、前記端部に対して空気を送る送風機であり、
前記送風機からの送風量を変化させることで前記端部の気圧を変化させ、前記排気口から排出される空気の流量を調節するものである、
ことを特徴とする乾燥機構。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の乾燥機構の使用方法であって、
前記乾燥室内の露点温度が、対象物の処理を行うにあたって定められた露点温度を超えている場合には、前記第一の加熱器によって前記吸着剤を加熱せずに、前記流量調節機構によって前記排気口から排出される空気の流量を低下させ、
前記乾燥室内の露点温度が、前記対象物の処理を行うにあたって定められた露点温度を下回っている場合には、前記第一の加熱器によって前記吸着剤を加熱するとともに、前記流量調節機構によって前記排気口から排出される空気の流量を増加させる、
ことを特徴とする乾燥機構の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乾燥室、乾燥機構およびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体製造装置などでは、乾燥室を用いて処理を行うものがある(例えば、特許文献1)。また、処理を行う場合に限らず、装置の運搬、保管の際にも乾燥室を用いる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-105339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
乾燥室を用いる際には、露点温度が上昇しないようにする必要がある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑み、露点温度を低下させる乾燥室、および乾燥機構、並びにこの乾燥機構の使用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための乾燥機構の一態様は、
空気中の水分を吸着する吸着剤、および該吸着剤を加熱する加熱器とを乾燥室内に備え、
前記乾燥室内に乾燥空気を供給する乾燥空気供給器と、
前記乾燥室内の空気を前記乾燥室外へ排出する排気口と、
前記排気口から排出される空気の流量を調節する流量調節機構と、
を備え、
前記吸着剤は、前記排気口に設けられたものである、
ことを特徴とする。
【0007】
この乾燥機構によれば、吸着剤を用いて乾燥室内の水分を吸着させて露点温度を低下させることができる。また、吸着剤の水分を乾燥室外に放出させることができ、吸着剤を取り換えることなく露点温度を低下させた乾燥室を提供することができる。
【0010】
また、上記乾燥機構は、
記加熱器が、電気を流すと発熱する導電性繊維を有するものであり、
前記加熱器が、前記導電性繊維による発熱領域が平面において蛇行しているものであってもよい。
【0011】
この乾燥機構によれば、吸着剤を効率よく加熱し、吸着剤の水分を放出しやすくすることができる。また、発熱ムラの発生を抑えて水分の放出にムラが生じないようにすることができる。
【0012】
また、上記乾燥機構は、
前記乾燥室内には半導体検査装置を配置するものであってもよい。
【0016】
ここで、上記乾燥機構は、
前記流量調節機構が、
前記排気口に設けられ、温度によって開閉度合いが変化するバイメタルの扉と、
前記扉を加熱する第二の加熱器と、を有するものであり、
前記第二の加熱器を用いて前記扉の温度を変化させることで、前記排気口から排出される空気の流量を調節するものであってもよい。
【0017】
この乾燥機構によれば、第二の加熱器を用いて乾燥室内の空気を乾燥室外に放出させることができる。
【0018】
また、上記乾燥機構は、
前記第一の加熱器が、前記第二の加熱器であってもよい。
【0019】
この乾燥機構によれば、吸着剤を加熱して水分を放出させるとともに、この空気を乾燥室外に放出させることができる。
【0020】
また、上記乾燥機構は、
前記排気口が、前記乾燥室の外側に端部が突出した形状のものであり、
前記流量調節機構が、前記端部に対して空気を送る送風機であり、
前記送風機からの送風量を変化させることで前記端部の気圧を変化させ、前記排気口から排出される空気の流量を調節するものであってもよい。
【0021】
この乾燥機構によれば、送風機を用いて乾燥室内の空気を乾燥室外に放出させることができる。
【0022】
また、上記課題を解決するための上記乾燥機構の使用方法の一態様は、
前記乾燥室内の露点温度が、対象物の処理を行うにあたって定められた露点温度を超えている場合には、前記第一の加熱器によって前記吸着剤を加熱せずに、前記流量調節機構によって前記排気口から排出される空気の流量を低下させ、
前記乾燥室内の露点温度が、前記対象物の処理を行うにあたって定められた露点温度を下回っている場合には、前記第一の加熱器によって前記吸着剤を加熱するとともに、前記流量調節機構によって前記排気口から排出される空気の流量を増加させる、
ことを特徴とする。
【0023】
この方法によれば、乾燥室内の露点温度を、対象物を処理するにあたって適切な温度に制御することができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、露点温度を低下させる乾燥室、および乾燥機構、並びにこの乾燥機構の使用方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本実施形態の乾燥機構およびこれを設けた半導体検査装置(以下、プローバ)の構成を示す概略図である。
図2】本実施形態の乾燥機構に設けられた吸着剤付近の構成例を示す概略図である。
図3図2とは異なる流量調節機構を採用した一例を示す図である。
図4図2図3とは異なる流量調節機構を採用した一例を示す図である。
図5】基礎部材の一例を示す図である。
図6】導電性繊維による発熱領域を蛇行した形状とした例を示す図である。
図7】水分の吸着および放出の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[乾燥機構の実施形態]
以下、図面を用いて、本発明の乾燥機構を設けた装置の実施形態について説明する。図1は、本実施形態の乾燥機構を設けた半導体検査装置(以下、プローバ)の構成を示す概略図である。図2は、本実施形態の乾燥機構の排気口付近の構成を示す概略図である。
【0027】
図1に示すプローバ1は、乾燥機構10と、チャックステージCと、プローブカードPを備えたものである。チャックステージCとプローブカードPは半導体ウエハを検査するためのものであり、乾燥機構10が有する乾燥室11の内部に設けられている。この乾燥室11内は、検査、製造等の処理を行うための作業空間であり、乾燥機構10によってこの乾燥室11内が乾燥した状態に維持される。
【0028】
乾燥機構10は、半導体ウエハの検査が行われる乾燥室11と、この乾燥室11内に乾燥空気を供給する乾燥空気供給器12と、乾燥室11内の空気を室外に排出するための排気口14と、この排気口14に設けられた吸着シート15、加熱器16、およびバイメタルの扉17、を備えている。吸着シート15は、空気中の水分を吸着する吸着剤を支持部材に担持させてシート状にしたものである。加熱器16は、吸着シート15を加熱して吸着剤からの水分を放出させるために用いられる。吸着シート15と加熱器16は透気性を有するものである。
【0029】
また、乾燥室11の内側と外側にはそれぞれ湿度センサ20,21が設けられている。乾燥室11の内側の湿度センサ20は、乾燥室11内の露点温度の観測に用いられ、乾燥室11の外側の湿度センサ21は、排気口14から排出される空気の露点温度の観測に用いられる。
【0030】
乾燥室11は、ベース110と、このベース110上に設けられた開閉可能なカバー111によって区画された空間である。なお、処理が行われる空間については、例えば箱や半球で区画された空間といったように、この空間を区画するものの形状や構造について限定されるものではない。
【0031】
乾燥空気供給器12は、乾燥室11内の空気が所定の露点温度となるように、ダクト13を経由して乾燥室11内に所定の露点温度よりも低い露点温度の乾燥空気を供給するものである。なお、このとき供給される空気は、上記所定の露点温度と同じ露点温度の空気であってもよい。また、乾燥空気供給器12を複数設け、異なる露点温度の空気を乾燥室11内に供給するようにしてもよい。
【0032】
乾燥室内11に乾燥空気が供給されると、乾燥室11内の圧力が高まる。このため、乾燥室11内の空気は乾燥室11の隙間(例えば、土台110とカバー111の隙間)から外部に排出され、乾燥室11内の空気は乾燥空気供給器12から供給される空気と入れ換えられる。これにより、乾燥室11内の空気の露点温度を、時間経過と共に所定の露点温度以下にすることができる。なお、本実施形態では、吸着シート15が設けられた排気口14以外に乾燥室11に排気口が設けられていない構成となっているが、別途排気口を設けてもよい。
【0033】
上記プローバ1では、カバー111を開けて乾燥室11内に検査対象となる半導体ウエハWを搬入する。そして、カバー111を閉じ、搬入された半導体ウエハWをチャックステージC上に配置し、プローブカードPによって検査する。この半導体ウエハWの搬入の際に、露点温度の高い外部の空気が侵入したり、半導体ウエハに水分が付着していたりすることにより、乾燥室11内の露点温度が上昇する。この場合、乾燥空気供給器12から供給される乾燥空気によって、時間経過と共に乾燥室11内の空気を所定の露点温度以下にすることができるが、検査の効率化のためにはこの時間が短いことが好ましい。
【0034】
本実施形態の乾燥機構10では、乾燥室11内に設けられた吸着シート15が水分を吸着するため、乾燥室11内の露点温度が上昇した場合に乾燥室11内の露点温度をより短時間で所定の露点温度以下にすることができる。
【0035】
しかし、吸着シート15が吸着可能な水分量には限りがあり、吸着シート15が限界まで水分を吸着した場合には上記の効果を奏しないことになる。このため本実施形態の乾燥機構10では、吸着シート15が吸着した水分を放出させる構成を採用している。この構成によって吸着シート15が水分を吸着可能な状態にすることができる。以下、この構成について説明する。
【0036】
本実施形態では図2Aに示すように、吸着シート15と加熱器16が隣接して設けられている。この加熱器16によって吸着シート15を加熱することで、吸着シート15に吸着された水分を放出させることができる。
【0037】
吸着シート15および加熱器16の組み合わせは、金属製の取付部材18を用いて排気口14に設けられている。また、金属製の取付部材18は扉17に接した状態になっており、加熱器16により生じた熱が吸着シート15と金属製の取付部材18を介して扉17に伝わるように構成されている。扉17は乾燥室11の外側(図2Aでは右)の方が内側(図2Aでは左)よりも膨張率が低いバイメタルであり、加熱されると図2Bに示すように排気口14が開く構造となっている。上記説明したように乾燥室11内の気圧は乾燥空気供給器12から供給される乾燥空気によって陽圧になっているため、排気口14が開くと乾燥室11内から乾燥室11外に空気が排出される。なお、本実施形態では取付部材18が加熱器16に直接接触していない構成を採用しているが、取付部材18が加熱器16に直接接触した構成としてもよい。
【0038】
以上説明したように、加熱器16を発熱させることにより、扉17を加熱して排気口14を開かせるとともに、吸着シート15を加熱して吸着した水分を放出させることができる。このように、本実施形態の乾燥機構10では、吸着シート15に吸着した水分を乾燥室11外に放出させて吸着シート15を回復させることができるため、吸着シート15を取り換えることなく運用することができる。
【0039】
なお、吸着シート15が吸着した水分の放出に伴い排気口14から排出される空気の露点温度が上昇し、水分の放出が止まると、乾燥室11内の露点温度と排気口14から排出される空気の露点温度は同じになる。これらの露点温度の変化を、乾燥室11の内側と外側にそれぞれ設けた湿度センサ20,21を用いて観察することで、吸着シート15が回復したか否かを判断することができる。
【0040】
なお、図1の構成では、吸着シート15が設けられた排気口14が乾燥室11の側壁に設けられているが、例えば天井に設けた構成としてもよく、位置が限定されるものではない。また、図1の構成では、吸着シート15が排気口14を覆った状態となっているが、このような構成に限らず排気口14の周囲に設けた構成としてもよい。なお、水分を放出した際に効率よく乾燥室11の外に排出させるためには吸着シート15を排気口14に近い位置に設けることが好ましい。
【0041】
また、本実施形態の乾燥機構10では、加熱器16によって吸着シート15と扉17の双方を加熱する構成について説明したが、例えば、吸着シート15と扉17のそれぞれに対して別個に加熱器を設けた構成としてもよい。なお、本実施形態のように吸着シート15と扉17の双方を同じ加熱器16で加熱する構成とした場合には、加熱器16を一つだけ制御すればよいため、吸着シート15の回復の際の制御を単純化することができる。また、吸着シート15と扉17のそれぞれを加熱する加熱器を別個に設けた構成とした場合には、吸着シート15から水分が放出されるよりも前に扉17が開くように(乾燥室11の内部に水分が放出されないように)、タイミングを調整することが容易になる。
【0042】
[流量調節機構について]
上記説明した乾燥機構10では、吸着シート15が吸着した水分を放出させている状態で、バイメタルの扉17を用いて吸着シート15が設けられた排気口14を開く構成について説明した。この構成は、吸着シート15が設けられた排気口14から排出される空気の流量を調節する構成であり、以下この構成を流量調節機構と称する。
【0043】
本実施形態の乾燥機構10では、上記説明した流量調節機構が設けられており、吸着シート15が吸着した水分を放出させる際に、排気口14を開けて乾燥室11内から水分を含んだ空気を排出させるため、この水分が乾燥室11内に放出されないようすることができる。なお、通常時はこの排気口14が閉じているため、吸着シート15によって乾燥室11内の空気を乾燥させることができる。
【0044】
なお、流量調節機構については、図2で説明した構成に限られるものではなく、排気口14から乾燥室11外に排出される空気の流量を調節できるものであればよい。以下、このような構成の一例について、図3を用いて説明する。同図は、図2とは異なる流量調節機構を採用した一例を示す図である。
【0045】
図3には、カバー111の一部において、乾燥室11の外側に端部が突出し、ノズル状に形成された排出口14が示されている。この排出口14は、カバー111に沿った方向(図3では下方向)に空気を排出する向きに形成されている。この排気口14には、図2に示す扉17が設けられておらず、また、排気口14が空気を排出する方向とは逆方向に、送風機19が設けられている。この送風機19は、排気口14から排出される空気の流れと同じ方向(図3では下方向)に空気を送るものである。なお、上記説明した、排気口14の形状、扉17の有無、送風機19の有無、が図2の構成とは異なり、それ以外の構成については図2の構成と同じである。
【0046】
図3の流量調節機構では、吸着シート15に水分を吸着させる際には送風機19を作動させない。この場合、乾燥室11内の空気が排気口14から排出される。なお、この構成では吸着シート15によって水分を奪われた空気も排出されてしまうが、この場合の排出量は乾燥室11の隙間のような他の排出経路との関係によって決まるため、排気口14の大きさを調整することで吸着シート15による乾燥効果が低下しないようにすることができる。
【0047】
一方、吸着シート15が吸着した水分を放出させる際には送風機19を作動させる。この送風機19によって、排気口14から排出される空気の流れと同じ方向(図3では下方向)に空気が送られると、排気口14の出口付近の気圧が低下して乾燥室11の内外の気圧差が増加する。すなわち、送風機19を用いて排気口14から排出される空気の流量を増加させることができ、吸着シート15から放出された水分を乾燥室11外に排出しやすくすることができる。なお、送風機19を用いる構成に限らず、乾燥室11内の気圧が外の気圧よりも高くなるように気圧差を増加させる構成であればよく、例えば排気口14から乾燥室11外に空気を吸引する吸引ポンプを用いた構成であってもよい。
【0048】
また、図1の構成では乾燥室11内に乾燥空気を送り込む構成を採用しているが、例えば、乾燥室11内の空気を排出口14から吸引ポンプを用いて吸引する構成を採用してもよい。また、空気の流量については図2の扉17や図3の構成に限らず、手動あるいは電動で開閉する扉やバルブを用いて制御する構成としてもよく、さらにはこれらを組み合わせた構成としてもよい。図4には、吸引ポンプとバルブを用いた構成の一例として、図1の排気口14の周辺の構成を異ならせた例が示されている。図4の例では、排気口14に図1に示す扉17が設けられておらず、排気口14からバルブ30を経由して吸引ポンプ31に接続された構成となっている。この構成では、吸着シート15から水分を放出する際にバルブ30を開放し、さらに吸引ポンプ31を稼働させることで吸着シート15から放出された水分を乾燥室11外に排出する。なお、この水分放出の制御にあたっては図1と同様に乾燥室11内の空気と排出された空気の露点温度の変化を湿度センサを用いて観察することで、吸着シート15が回復したか否かを判断することができる。
【0049】
また、上記説明した構成の他にも例えば、吸着シート15が設けられた排出口14以外の他の排気口が設けられている構成において、この他の排気口を開閉することで、吸着シート15が設けられた排出口14から乾燥室11外に排出される空気の流量を調節する構成としてもよい。
【0050】
以上説明したように、流量調節機構は、排気口14から乾燥室11外に排出される空気の流量を調節できるものであればよい。この流量調節機構により、水分の吸着の際には、吸着シート15が設けられた排気口14から乾燥室11外に空気を排出させない、あるいは乾燥室11外への空気の排出量を抑えることで、乾燥室11内を乾燥させることができる。また、水分の放出の際には、吸着シート15が設けられた排気口14から乾燥室11外に空気を排出させる、あるいは乾燥室11外への空気の流量を増加させることで、乾燥室11内の露点温度を上昇させずに吸着シート15が吸着した水分を放出させることができる。
【0051】
[吸着剤およびこれを担持させる支持部材について]
吸着シート15に担持されている吸着剤の素材や形態については特に限定されるものではなく、種々の材料を採用することができる(例えば、活性炭、活性白土、珪藻土、活性アルミナ、シリカゲル、ゼオライト、低結晶性粘土と非晶質アルミニウムケイ酸塩からなる複合体等)。この中でも、低結晶性粘土と非非晶質アルミニウムケイ酸塩からなる複合体は、吸湿率に優れ、かつ比較的低温で脱湿が可能である点において好ましい。また、織物、紙、不織布といった繊維に対して担持させて用いてもよい。この場合、より広い表面積に吸着剤を担持させてより多くの水分を吸着させることができ、吸着シート15の効果を高めることができる。また、吸着シート15の透気性を向上させ、水分の吸着及び放出をしやすくすることができる。この複合体を含め、吸着シート15および吸着剤の構成については国際公開公報WO2009/084632や、国際公開公報WO2018/131591に記載された吸着層の素材や構成を適宜使用することができる。
【0052】
また、上記支持部材は、土台となる基礎部材に繊維を付着させたものであってもよい。特に図5の基礎部材40に示すように、基礎部材が網状である場合には、支持部材の透気性が高まるため、水分を吸着および放出させる効果を高めることができる。また、例えばセラミックや、カーボンナノファイバーを有する基礎部材に対してセルロースナノファイバーを付着させた支持部材、のように、吸着剤を主として担持する繊維よりも熱伝導率が高い素材を基礎部材に用いることで、吸着剤への熱伝導の効率が高まり、水分を放出する効果を高めることができる。
【0053】
[加熱器について]
加熱器16の構成については、吸着シート15の水分を放出させるために加熱するものであればよい。よって、加熱器の構成や加熱方法、またその設置位置について限定されるものではなく、例えば、本実施形態とは異なり吸着シート15と加熱器16は離れて設けられたものであってもよい。また例えば、金属繊維のような導線性繊維を設けた構成とし、この導電性繊維の部分に電気を流して自己発熱させる構成としてもよい。この構成では、加熱器16の透気性を向上させ、吸着シート15に効率よく熱を伝えて水分を放出しやすくすることができる。この場合の導電性繊維としては、例えば、ステンレス、アルミニウム、真ちゅう、銅、鉄、白金、金、スズ、クロム、鉛、チタン、ニッケル、マンガン、ニクロム等の金属を一種あるいは複数種類組み合わせたもの、有機繊維に金属をコートした金属被覆繊維、炭素繊維等がある。なお、適度な電気抵抗と、酸化しにくいこと、および加工適正等から、ステンレスを用いることが好ましい。なお、導電性繊維に電気を流す構成を採用する場合、導電性繊維の設け方によっては電流方向に対する幅が広くなることで発熱にムラが生じる可能性がある。さらにこの発熱ムラによって吸着シート15の水分の放出にもムラが生じると、吸着シート15を効率よく使用することができなくなってしまう。このため、導電性繊維による発熱領域を蛇行した形状にしてもよい。図6には、導電性繊維による発熱領域Hを蛇行した形状とした例が示されている。この構成では、発熱領域が広くなっても電流方向に対して幅を広げずにすむため、発熱ムラの発生を抑えることができる。また、発熱領域の幅を調整することにより、発熱量をコントロールすることもできる。
【0054】
その他、加熱器16の構成については国際公開公報WO2018/131591に記載された自己発熱層の構成を適宜使用することができる。また、同公報に記載の吸着層と自己発熱層の関係(例えば、接着層の有無等)については、本件の吸着シート15と加熱器16の構成に適用することができる。
【0055】
[放出動作のタイミングについて]
吸着シート15が吸着した水分を放出させる際、この水分をそのまま乾燥室11内に放出してしまうと、乾燥室11内の露点温度が上昇し、処理に適さない状況になってしまう。このため、乾燥室11内での処理が行われていない間に吸着シート15から水分を放出させるようにしてもよい。また、吸着シート15からの水分の放出については、乾燥室11において処理が行われていない間だけでなく、処理が行われている場合にも行うことができる。以下、この動作についての流れを図7を用いて説明する。図7は、水分の吸着および放出の流れを示すフローチャートである。
【0056】
まず、ステップS01では、乾燥室11の露点温度が処理を行う際の露点温度の上限値である所定の露点温度以下となっているか(処理を行うことが可能な露点温度となっているか)否かが判定される。この条件を満たす場合にはステップS02に進み、そうでない場合にはステップS03に進む。
【0057】
ステップS02では、加熱器16を作動させ、吸着シート15を加熱するとともに、流量調節機構により排気口14から排出される空気の流量を増加させる(例えば、図2では扉17の開放、図3では送風機19の作動、図4ではバルブ30の開放および吸引ポンプ31の作動)。
【0058】
ステップS03では、加熱器16を作動させないことで、吸着シート15が水分を吸着する状態にするとともに、流量調節機構により排気口14から排出される空気の流量を低下させる(例えば、図2では扉17の閉鎖、図3では送風機19の停止、図4ではバルブ30の閉鎖および吸引ポンプ31の停止)。
【0059】
以上の流れによれば、乾燥室11で処理が行われている場合であっても、吸着シート15から水分を放出させることができるため、処理の効率を向上させることができる。
【0060】
[乾燥機構および乾燥室の適用範囲]
上記の説明では、乾燥機構10を半導体ウエハを検査するプローバ1に適用した例を説明した。乾燥室を必要とする装置や設備としては上記説明した用途以外にも、電子部品や電池、薬品の製造工程、環境試験、精密機器の運搬等の様々な用途に用いられるものがある。それぞれの用途において要求される露点温度は異なる場合があるが、こうした様々な処理を行うにあたっては、その処理内容や露点温度に限らず上記の構成を適用することができる。
【0061】
さらに、乾燥室内で処理を行う場合に限らず、例えば、装置等の運搬および保管の間に乾燥室を用いる構成としてもよい。この場合、乾燥室内の装置に対して水分が付着しないようにしたり、装置に付着した水分を除去したりすることができる。また、例えば水分の付着を避ける目的で窒素パージを行う場合等は空気の入れ換えが必要となるが、上記説明した乾燥室を用いることでこうした空気の入れ換え作業が不要となる。なお、精密機器の運搬や保管の際には、乾燥室への出し入れが調湿された空間で行われる場合があり、こうした状況下では乾燥室内に吸着剤と加熱器が最低限設けられていればよい。この構成では、吸着剤の水分の放出を乾燥室が使用されていないときに行うようにすればよい。
【符号の説明】
【0062】
1 プローバ
10 乾燥機構
11 乾燥室
110 ベース
111 カバー
12 乾燥空気供給器
13 ダクト
14 排気口
15 吸着剤
16 加熱器
17 扉
18 取付部材
19 送風機
20,21 湿度センサ
30 バルブ
31 吸引ポンプ
40 基礎部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7