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特許7348787制御装置、スマートキーシステム、制御方法、および携帯機
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-12
(45)【発行日】2023-09-21
(54)【発明の名称】制御装置、スマートキーシステム、制御方法、および携帯機
(51)【国際特許分類】
   B62J 45/00 20200101AFI20230913BHJP
   B60R 25/31 20130101ALI20230913BHJP
   B62H 5/00 20060101ALI20230913BHJP
   E05B 49/00 20060101ALI20230913BHJP
   G01S 11/06 20060101ALI20230913BHJP
   G01S 13/74 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
B62J45/00
B60R25/31
B62H5/00 Z
E05B49/00 J
G01S11/06
G01S13/74
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019170684
(22)【出願日】2019-09-19
(65)【公開番号】P2021046137
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2022-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】510123839
【氏名又は名称】ニデックモビリティ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100155712
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 尚
(72)【発明者】
【氏名】榎本 豊
【審査官】渡邊 義之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/190187(WO,A1)
【文献】特開2009-248662(JP,A)
【文献】国際公開第2019/031247(WO,A1)
【文献】特開2019-121949(JP,A)
【文献】特開2006-306161(JP,A)
【文献】特表2018-538520(JP,A)
【文献】特開2016-171486(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0063860(US,A1)
【文献】特開2015-183482(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62J 45/00
B62H 5/00
B60R 25/31
B60R 25/24
E05B 1/00- 85/28
G01S 11/06
G01S 13/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザーに車両の位置を知らせるための出力装置を備える鞍乗型車両に搭載され、携帯機と無線通信可能な制御装置であって、
前記制御装置は、
前記携帯機へ応答要求信号を送信し、該応答要求信号に応じて前記携帯機から送信される応答信号を受信すると前記応答信号に含まれる識別情報に基づき照合を行う照合部、
を備え、
前記照合部は、
前記制御装置と前記携帯機との間の距離が第一距離以内である場合、前記携帯機を照合する第一照合と、
前記制御装置と前記携帯機との間の距離が前記第一距離よりも短い第二距離以内である場合、前記携帯機を照合する第二照合とを行い、
前記制御装置は、
前記第一照合に成功すると、前記ユーザーに前記車両の位置を知らせるための前記出力装置による出力を実行させ、
前記第一照合と前記第二照合とに成功すると、前記鞍乗型車両のエンジンを始動可能にする、
ことを特徴とする制御装置。
【請求項2】
前記照合部は、
前記制御装置と前記携帯機との間の距離が前記第二距離よりも短い第三距離以内である場合、前記携帯機を照合する第三照合を行い、
前記制御装置は、
前記第一照合と前記第二照合とに成功したことに加えて、さらに、前記第三照合に成功すると、前記鞍乗型車両のエンジンを始動可能にする、
ことを特徴とする請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記制御装置は、前記携帯機との間で行う通信に暗号化技術を利用し、
前記照合部は、前記携帯機の照合において、前記携帯機から送信される暗号化された応答信号を復号化し、復号化された前記応答信号に含まれる識別情報認証を行う、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記応答要求信号に応じて前記携帯機から送信される応答信号の電波強度に基づき、前記制御装置と前記携帯機との間の距離を測定する測距部、
を備える、
ことを特徴とする請求項1~の何れか一項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記応答要求信号を送信してから、該応答要求信号に応じて前記携帯機から送信される応答信号を受信するまでの時間に基づき、前記制御装置と前記携帯機との間の距離を測定する測距部、
を備える、
ことを特徴とする請求項1~の何れか一項に記載の制御装置。
【請求項6】
出力装置は、発光装置を含み、
前記制御装置は、前記第二照合に成功すると、前記発光装置を点灯させる、
ことを特徴とする請求項1~の何れか一項に記載の制御装置。
【請求項7】
前記制御装置は、前記照合部による照合に成功すると、前記携帯機への応答要求信号の送信間隔を短くする、
ことを特徴とする請求項1~の何れか一項に記載の制御装置。
【請求項8】
ユーザーに車両の位置を知らせるための出力装置を備える鞍乗型車両に搭載され、携帯機と無線通信可能な制御装置と、
前記制御装置から送信される応答要求信号に応じて応答信号を送信する携帯機と、
を含むスマートキーシステムであって、
前記制御装置は、
前記携帯機へ応答要求信号を送信し、該応答要求信号に応じて前記携帯機から送信される応答信号を受信すると前記応答信号に含まれる識別情報に基づき照合を行う照合部、
を備え、
前記照合部は、
前記制御装置と前記携帯機との間の距離が第一距離以内である場合、前記携帯機を照合する第一照合と、
前記制御装置と前記携帯機との間の距離が前記第一距離よりも短い第二距離以内である場合、前記携帯機を照合する第二照合とを行い、
前記制御装置は、
前記第一照合に成功すると、前記ユーザーに前記車両の位置を知らせるための前記出力装置による出力を実行させ、
前記第一照合と前記第二照合とに成功すると、前記鞍乗型車両のエンジンを始動可能にする、
ことを特徴とするスマートキーシステム。
【請求項9】
ユーザーに車両の位置を知らせるための出力装置を備える鞍乗型車両に搭載され、携帯機と無線通信可能な制御装置の制御方法であって、
前記制御装置は、
前記携帯機へ応答要求信号を送信し、該応答要求信号に応じて前記携帯機から送信される応答信号を受信すると前記応答信号に含まれる識別情報に基づき照合を行う照合ステップ、
を含み、
前記照合ステップでは、
前記制御装置と前記携帯機との間の距離が第一距離以内である場合、前記携帯機を照合する第一照合と、
前記制御装置と前記携帯機との間の距離が前記第一距離よりも短い第二距離以内である場合、前記携帯機を照合する第二照合とが行われ、
前記制御装置は、
前記第一照合に成功すると、前記ユーザーに前記車両の位置を知らせるための前記出力装置による出力を実行させ、
前記第一照合と前記第二照合とが成功すると、前記鞍乗型車両のエンジンを始動可能にする、
ことを特徴とする制御装置の制御方法。
【請求項10】
ユーザーに車両の位置を知らせるための出力装置を備える鞍乗型車両に搭載される制御装置と無線通信を行う携帯機であって、
前記携帯機は、前記制御装置へ応答信号を送信し、
前記制御装置は、前記携帯機から送信される応答信号を受信すると、前記応答信号に含まれる識別情報に基づき照合を行う照合部、
を備え、
前記照合部は、
前記制御装置と前記携帯機との間の距離が第一距離以内である場合、前記携帯機を照合する第一照合と、
前記制御装置と前記携帯機との間の距離が前記第一距離よりも短い第二距離以内である場合、前記携帯機を照合する第二照合とを行い、
前記制御装置は、
前記第一照合に成功すると、前記ユーザーに前記車両の位置を知らせるための前記出力装置による出力を実行させ、
前記第一照合と前記第二照合とに成功すると、前記制御装置は、前記鞍乗型車両のエンジンを始動可能にする、
ことを特徴とする携帯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鞍乗型車両における制御装置、スマートキーシステム、制御方法、および携帯機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、鞍上型車両を多く使用する地域、或いは国において、多数駐車されている鞍乗型車両の中から、自車両を発見するのが困難な場合がある。自車両を発見するのが困難な場合、例えば、特許文献1に記載のアンサーバック機能を使用し、自車両の発見をし易くする事が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-183482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような従来技術は、自車両を発見するために携帯機の操作を行い、携帯機からアンサーバック指令信号を送信し、車両からのアンサーバックを受けなければ、自車両と離れた位置から自車両を確認することができないという煩わしさがある。また、携帯機を操作しなくとも自車両と離れた位置から自車両を確認することができる手段について、鞍乗型車両のユーザーからの潜在的なニーズが高まってきている。
【0005】
本発明の一態様は、携帯機を操作しなくとも自車両と離れた位置から自車両を確認することができる、というユーザーフレンドリーな手段を実現することを目的とする。また、本発明の一態様は、携帯機を操作しなくとも自車両のエンジンを始動可能にすることができる、というユーザーフレンドリーな手段を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の態様1に係る制御装置は、ユーザーに車両の位置を知らせるための出力装置を備える鞍乗型車両に搭載され、携帯機と無線通信可能な制御装置であって、前記制御装置は、前記携帯機へ応答要求信号を送信し、該応答要求信号に応じて前記携帯機から送信される応答信号を受信すると前記応答信号に含まれる識別情報に基づき照合を行う照合部、を備え、前記照合部は、前記制御装置と前記携帯機との間の距離が第一距離以内である場合、前記携帯機を照合する第一照合と、前記制御装置と前記携帯機との間の距離が前記第一距離よりも短い第二距離以内である場合、前記携帯機を照合する第二照合とを行い、前記制御装置は、前記第一照合に成功すると、前記出力装置による出力を実行させ、前記第一照合と前記第二照合とに成功すると、前記鞍乗型車両のエンジンを始動可能にする、構成である。
【0007】
前記の構成によれば、携帯機を操作しなくても、携帯機を持ったユーザーが鞍乗型車両と離れた位置から鞍乗型車両に近づき、鞍乗型車両に搭載された制御装置とユーザーが持つ携帯機との間の距離が第一距離以内になると、第一照合として携帯機を照合できる。それゆえ、携帯機を操作しなくとも自車両と離れた位置から自車両を確認することができる、というユーザーフレンドリーな手段を実現することができる。
【0008】
また、携帯機を操作しなくても、携帯機を持ったユーザーが鞍乗型車両と離れた位置から鞍乗型車両に近づき、鞍乗型車両に搭載された制御装置とユーザーが持つ携帯機との間の距離が第一距離よりも短い第二距離以内になると、第二照合として携帯機を照合できる。このため、制御装置は、第一照合に成功すると、出力装置による出力を実行させ、第一照合と第二照合とに成功すると、鞍乗型車両のエンジンを始動可能にすることができる。それゆえ、携帯機を操作しなくとも自車両と離れた位置から自車両を確認することができる、というユーザーフレンドリーな手段を実現することができる。
【0009】
本発明の態様2に係る制御装置は、上記の態様1において、前記照合部は、前記制御装置と前記携帯機との間の距離が前記第二距離よりも短い第三距離以内である場合、前記携帯機を照合する第三照合を行い、前記制御装置は、前記第一照合、前記第二照合および前記第三照合に成功すると、前記鞍乗型車両のエンジンを始動可能にする、構成としてもよい。
【0010】
前記の構成によれば、携帯機を操作しなくても、携帯機を持ったユーザーが鞍乗型車両と離れた位置から鞍乗型車両に近づき、鞍乗型車両に搭載された制御装置とユーザーが持つ携帯機との間の距離が第二距離よりも短い第三距離以内になると、第三照合として携帯機を照合できる。
【0011】
本発明の態様3に係る制御装置は、上記の態様1において、前記制御装置は、前記携帯機との間で行う通信に暗号化技術を利用し、前記照合部は、前記第一照合又は前記第二照合のうち少なくとも一つとして、復号化された前記応答信号に含まれる識別情報に基づき認証を行う、構成としてもよい。
【0012】
前記の構成によれば、照合部による照合において、復号化された応答信号に含まれる識別情報に基づき認証することができる。よって、単に照合する時に比べて、防盗性を向上する事ができる。
【0013】
本発明の態様4に係る制御装置は、上記の態様2において、前記制御装置は、前記携帯機との間で行う通信に暗号化技術を利用し、前記照合部は、前記第一照合、前記第二照合、および前記第三照合のうち少なくとも一つとして、復号化された前記応答信号に含まれる識別情報に基づき認証を行う、構成としてもよい。
【0014】
前記の構成によれば、照合部による照合において、復号化された応答信号に含まれる識別情報に基づき認証することができる。よって、単に照合する時に比べて、防盗性を向上する事ができる。
【0015】
本発明の態様5に係る制御装置は、上記の態様1~4の何れか一項において、前記制御装置は、前記応答要求信号に応じて前記携帯機から送信される応答信号の電波強度に基づき、前記制御装置と前記携帯機との間の距離を測定する測距部、を備える、構成としてもよい。
【0016】
前記の構成によれば、応答信号の電波強度に基づき、制御装置と携帯機との間の距離を測定することができる。
【0017】
本発明の態様6に係る制御装置は、上記の態様1~4の何れか一項において、前記制御装置は、前記応答要求信号を送信してから、該応答要求信号に応じて前記携帯機から送信される応答信号を受信するまでの時間に基づき、前記制御装置と前記携帯機との間の距離を測定する測距部、を備える、構成としてもよい。
【0018】
前記の構成によれば、応答要求信号を送信してから、該応答要求信号に応じて携帯機から送信される応答信号を受信するまでの時間に基づき、制御装置と携帯機との間の距離を測定することができる。
【0019】
本発明の態様7に係る制御装置は、上記の態様1~6の何れか一項において、前記鞍乗型車両は、発光装置を備え、前記制御装置は、前記第二照合に成功すると、前記発光装置を点灯させる、構成としてもよい。
【0020】
前記の構成によれば、第二照合に成功すると、発光装置を点灯させることができる。発光装置は、例えば、LEDなどである。発光装置を点灯させることによって、自車両と離れた位置から自車両を確認しやすくなる。
【0021】
本発明の態様8に係る制御装置は、上記の態様1~7の何れか一項において、前記制御装置は、前記照合部による照合に成功すると、前記携帯機への応答要求信号の送信間隔を短くする、構成としてもよい。
【0022】
前記の構成によれば、照合部による照合に成功すると、制御装置は携帯機への応答要求信号の送信間隔を短くする。これにより、携帯機の検出精度を向上することができる。
【0023】
本発明の態様9に係るスマートキーシステムは、鞍乗型車両に搭載され、携帯機と無線通信可能な制御装置と、前記制御装置から送信される応答要求信号に応じて応答信号を送信する携帯機と、を含むスマートキーシステムであって、前記制御装置は、前記携帯機へ応答要求信号を送信し、該応答要求信号に応じて前記携帯機から送信される応答信号を受信すると前記応答信号に含まれる識別情報に基づき照合を行う照合部、を備え、前記照合部は、前記制御装置と前記携帯機との間の距離が第一距離以内である場合、前記携帯機を照合する第一照合と、前記制御装置と前記携帯機との間の距離が前記第一距離よりも短い第二距離以内である場合、前記携帯機を照合する第二照合とを行い、前記第一照合と前記第二照合とに成功すると、前記制御装置は、前記鞍乗型車両のエンジンを始動可能にする、構成である。前記の構成によれば、前記制御装置と同様の効果を奏する。
【0024】
本発明の態様10に係る制御装置の制御方法は、鞍乗型車両に搭載され、携帯機と無線通信可能な制御装置の制御方法であって、前記制御装置は、前記携帯機へ応答要求信号を送信し、該応答要求信号に応じて前記携帯機から送信される応答信号を受信すると前記応答信号に含まれる識別情報に基づき照合を行う照合ステップ、を含み、前記照合ステップでは、前記制御装置と前記携帯機との間の距離が第一距離以内である場合、前記携帯機を照合する第一照合と、前記制御装置と前記携帯機との間の距離が前記第一距離よりも短い第二距離以内である場合、前記携帯機を照合する第二照合とが行われ、前記第一照合と前記第二照合とが成功すると、前記制御装置は、前記鞍乗型車両のエンジンを始動可能にする、方法である。前記の構成によれば、前記制御装置と同様の効果を奏する。
【0025】
本発明の態様11に係る携帯機は、ユーザーに車両の位置を知らせるための出力装置を備える鞍乗型車両に搭載される制御装置と無線通信を行う携帯機であって、前記携帯機は、前記制御装置へ応答信号を送信し、前記制御装置は、前記携帯機から送信される応答信号を受信すると、前記応答信号に含まれる識別情報に基づき照合を行う照合部、を備え、前記照合部は、前記制御装置と前記携帯機との間の距離が第一距離以内である場合、前記携帯機を照合する第一照合と、前記制御装置と前記携帯機との間の距離が前記第一距離よりも短い第二距離以内である場合、前記携帯機を照合する第二照合とを行い、前記制御装置は、前記第一照合に成功すると、前記出力装置による出力を実行させ、前記第一照合と前記第二照合とに成功すると、前記制御装置は、前記鞍乗型車両のエンジンを始動可能にする、構成である。前記の構成によれば、前記制御装置と同様の効果を奏する。
【発明の効果】
【0026】
本発明の一態様によれば、携帯機を操作しなくとも自車両と離れた位置から自車両を確認することができる、というユーザーフレンドリーな手段を実現することができる。また、本発明の一態様によれば、携帯機を操作しなくとも自車両のエンジンを始動可能にすることができる、というユーザーフレンドリーな手段を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の一実施形態に係るスマートキーシステムの適用場面の一例を示す図である。
図2】本発明の一実施形態に係るスマートキーシステムに含まれる各種装置の要部構成の一例を示すブロック図である。
図3】本発明の一実施形態に係る制御装置の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図4】本発明が非搭載の鞍乗型車両について、一般的なリレーアタックが利用される場面を想定した模式図。
図5】本発明を搭載した鞍乗型車両について、一般的なリレーアタックが利用される場面を想定した模式図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
〔実施形態1〕
以下、本発明の一実施形態(以下、「本実施形態」とも表記する)について、図面に基づいて説明する。ただし、以下で説明する本実施形態は、あらゆる点において本発明の例示に過ぎない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。
【0029】
§1 適用例
まず、図1を用いて本発明が適用される場面の一例について説明する。図1は、本実施形態に係るスマートキーシステム1の適用場面の一例を示す。本実施形態に係るスマートキーシステム1は、携帯機20と制御装置30とを用いて、鞍乗型車両10を制御するシステムである。
【0030】
図1に示すとおり、スマートキーシステム1は、携帯機20と制御装置30とを有する構成である。また、携帯機20と制御装置30との間の通信方式としては、種々の方式を採用することができるが、本実施形態においては、パッシブエントリ方式を一例に挙げて説明する。
【0031】
パッシブエントリ方式とは、鞍乗型車両10のユーザーHが所持する携帯機20を操作することなく、鞍乗型車両10に近づき、鞍乗型車両10のメインスイッチノブを回すことでエンジン始動が可能となる双方向通信の電子照合によるエントリ方式である。また、鞍乗型車両10のシート、コンソールボックスの施解錠も可能となる。
【0032】
パッシブエントリ方式は、携帯機20に対して制御装置30が応答要求信号を送信し、応答要求信号を受信した携帯機20が応答信号を制御装置30に返信する。
【0033】
制御装置30は、携帯機20からの応答信号をもとにして携帯機20の照合を行い、照合が成功すれば、正規の携帯機20が存在すると判定してのエンジンの始動又は停止などの所定の制御を行う。よって、パッシブエントリ方式は、携帯機20を所持するユーザーHが鞍乗型車両10に近付くだけで、制御装置30と携帯機20との間の通信が開始され、当該通信の結果に基づき、携帯機20に対する照合が実行される。
【0034】
図1では、携帯機20を所持したユーザーHが鞍乗型車両10に近づく様子を示している。図1に示すR1、R2、R3は、それぞれ、鞍乗型車両10に搭載された制御装置30から送信される応答要求信号の電波が届く距離を示している。
【0035】
例えば、R1は制御装置30からの距離が約10mあることを示し、R2は制御装置30からの距離が約5mあることを示し、R3は制御装置からの距離が約2mあることを示す。なお、R1は、本発明における「第一距離」に相当するものであり、R2は、本発明における「第二距離」に相当するものであり、R3は、本発明における「第三距離」に相当するものである。
【0036】
また、図1に示すT1、T2、T3は、それぞれ領域を示す。具体的には、領域T1は、制御装置30を中心とする半径R1の領域から、制御装置30を中心とする半径R2の領域を除いた領域である。
【0037】
領域T2は、制御装置30を中心とする半径R1の領域から、領域T1と制御装置30を中心とする半径R3の領域と、を除いた領域である。
【0038】
領域T3は、制御装置30を中心とする半径R1の領域から、領域T1と領域T2と、を除いた領域である。
【0039】
領域T1、領域T2、および領域T3の各領域において、携帯機20は、制御装置30から送信される応答要求信号の受信が可能である。
【0040】
§2 要部構成
図2は、本実施形態におけるスマートキーシステム1に含まれる各要部構成の一例を示すブロック図である。
【0041】
スマートキーシステム1は携帯機20、鞍乗型車両10に搭載された制御装置30、および出力装置40を含む構成である。
【0042】
携帯機20は、アンテナ20aを含む。アンテナ20aは、単一のアンテナであってもよいし、複数のアンテナから成るアンテナアレイであってもよい。携帯機20は、アンテナ20aを介して応答信号を送信する。また、携帯機20は、アンテナ20aを介して、制御装置30から送信される応答要求信号を受信する。携帯機20は、制御装置との通信において、周知の暗号化技術を用いてもよい。周知の暗号化技術とは、例えば、「特開平4-302682号公報」に記載の暗号化技術である。
【0043】
携帯機20は、鞍乗型車両10が備えるランプやハンドルロックなどを制御するための各種の信号を送信可能である。なお、図示はしていないが、携帯機20にはスイッチが備えられている。
【0044】
携帯機20に備えられたスイッチは、複数の押しボタンなどから構成され、アンサーバックを機能させたり、ハンドルロックを制御したりするためのボタンなどから成る。
【0045】
なお、携帯機20は、一般的に使用されるスマートキーである電子キーに限られるものではない。例えば、スマートフォン、携帯電話、タブレット端末、ウェアラブルコンピュータ(スマートウォッチ等)といった小型のコンピュータであってもよい。
【0046】
例えば、携帯機20がスマートフォンである場合、携帯機20に備えるスイッチは物理的なスイッチだけではなく、スマートフォンの画面(タッチパネル)に表示されるアイコンボタン、タッチセンサを利用した感圧式のボタン等となる。
【0047】
制御装置30は制御部31、送受信部32、および、タイマ33を備えている。制御装置30は、携帯機20との通信において、周知の暗号化技術を用いてもよい。周知の暗号化技術とは、例えば、「特開平4-302682号公報」に記載の暗号化技術である。
【0048】
制御部31は、鞍乗型車両10のエンジンの始動又は停止を制御する。制御部31は、照合部31bから携帯機20の照合が成功したことを示す指令を受信した場合、エンジンを始動可能な状態にする。
【0049】
制御部31は、出力装置40を制御する。例えば、ヘッドライトや方向指示器などのランプを点灯、点滅、或いは消灯などさせ、また、クラクションなどのブザー40aを鳴動又は停止などさせるための制御を行う。
【0050】
制御部31はCPUとメモリなどから構成されており、送受信部32、および、出力装置40に指令する。また、制御部31は、測距部31a、および照合部31bを含む。
【0051】
測距部31aは、送受信部32から送信される応答要求信号に応じて携帯機20から送信される応答信号の電波の受信強度に基づき、鞍乗型車両10と携帯機20との間の距離を測定する(以下、第一測定という)。一例として、携帯機20は、制御装置30からの応答要求信号を受信すると、応答要求信号の電波の受信強度(RSSI:Receive Signal strength indication)を計測する。そして、応答要求信号の電波の受信強度の情報を応答信号として返信することにより、鞍乗型車両10と携帯機20との間の距離を測定する。なお、電波の帯域や周波数は送受信距離などの条件により適宜に選択することが可能である。
【0052】
例えば、一般的に利用されるLF(Low Frequency)信号、およびRF(Radio Frequency)信号による周波数帯域ではなく、Bluetooth(登録商標)LowEnergy規格(以下、BLE)による周波数帯域を用いて通信を行う。BLEとは、Bluetoothによる低電力通信規格であり、機器同士のペアリングを必要とせず、相手を検知することですぐに通信を開始できるという特徴を有する。
【0053】
なお、本実施形態において、携帯機20は、制御装置30からの応答要求信号を受信すると、応答要求信号の電波の受信強度を計測するが、これに限られない。例えば、制御装置30が携帯機20から送信される応答信号の電波の受信強度を計測することにより、鞍乗型車両10と携帯機20との間の距離を測定してもよい。
【0054】
測距部31aは、第一測定により測定した距離を第一測定信号として照合部31bへ送る。
【0055】
照合部31bは、携帯機20との通信に基づいて正規の携帯機20であることを照合する。具体的には、携帯機20からの応答信号に含まれる識別情報(ID)と照合部31bが保持している識別情報(ID)とが一致した場合、応答信号を送信した携帯機20が正規の携帯機20であると判定する。
【0056】
また、照合部31bは、周知の暗号化技術を用いて暗号化された、携帯機20から送信される応答信号に基づき認証を行ってもよい。具体的には、制御装置30から携帯機20へ暗号化された応答要求信号が送信されると、携帯機20は、暗号化された応答要求信号を復号化する。携帯機20は、復号化した応答要求信号に対して、暗号化した応答信号を制御装置30へ送信する。
【0057】
制御装置30は、携帯機20から送信される暗号化された応答信号を受信すると、照合部31bへ暗号化された応答信号を送る。照合部31bは、暗号化された応答信号を受け取ると、暗号化された応答信号を復号化し、応答信号に含まれる識別情報(ID)の認証を行う。照合部31bは、照合部31bが保持している識別情報(ID)と一致した場合、応答信号を送信した携帯機20が正規の携帯機20であると判定する。なお、ここでは、照合部31bにより暗号化された応答信号を復号化すると説明しているが、制御装置30が復号化してもよい。
【0058】
照合部31bは、測距部31aから送られてくる第一測定信号を取得する。
【0059】
照合部31bは、測距部31aから取得した第一測定信号に基づき、ユーザーHが所持する携帯機20が領域T1にあると判断する場合、第一照合を行う。また、照合部31bは、測距部31aから取得した第一測定信号に基づき、ユーザーHが所持する携帯機20が領域T2にあると判断する場合、第二照合を行う。また、照合部31bは、測距部31aから取得した第一測定信号に基づき、ユーザーHが所持する携帯機20が領域T3にあると判断する場合、第三照合を行う。
【0060】
なお、照合部31bにより行われる、第一照合、第二照合、および第三照合のそれぞれの照合は、単に、携帯機20から制御装置30へ送信される応答信号に含まれる識別情報(ID)を照合するだけではなく、第一照合、第二照合、および第三照合のうち少なくとも一つの照合において、携帯機20によって暗号化された応答信号を、制御装置30によって復号化し、該復号化された応答信号に含まれる識別情報に基づき認証を行ってもよい。
【0061】
送受信部32は、アンテナ32aを含む。アンテナ32aは、単一のアンテナであってもよいし、複数のアンテナから成るアンテナアレイであってもよい。アンテナ32aは、携帯機20へ応答要求信号を発信する。また、アンテナ32aは、携帯機20から送信される応答信号を受信する。
【0062】
送受信部32は、アンテナ32aを介して応答要求信号を送信する。また、送受信部32は、アンテナ32aを介して応答信号を受信する。
【0063】
送受信部32は、応答信号に含まれる種々の情報を制御部31に出力する。例えば、送受信部32は、応答信号に含まれる携帯機20の識別情報(ID)を制御部31に出力する。
【0064】
出力装置40は、ブザー40a、ウィンカー40b、およびLED40cを含む。出力装置40は、制御部31からの指令に基づき、ブザー40aの鳴動、ウィンカー40bの点滅、LED40cの発光などを行う。なお、LED40cは、本発明の「発光装置」の一例である。
【0065】
§3 動作例
次に、図3を用いて、スマートキーシステム1の動作例を説明する。図3は、本実施形態に係るスマートキーシステム1における処理動作を示したフローチャートである。
【0066】
まず、制御装置30は、送受信部32を介して応答要求信号を携帯機20に対して送信する。また、制御装置30は、応答要求信号を携帯機20に対して送信するのと同時に、測距部31aに対して、測定結果を得るための測定手段を実行するよう指令する。携帯機20は、アンテナ20aを介して応答要求信号を受信すると、応答要求信号の電波の受信強度を計測する。そして、携帯機20は、応答要求信号の電波の受信強度の情報を含む応答信号を送信する。
【0067】
測距部31aは、送受信部32を介して該応答信号を受信すると、電波の受信強度に基づき算出される距離の測定結果を第一測定信号として照合部31bに送る。
【0068】
照合部31bは、測距部31aから取得した第一測定信号に基づき、ユーザーHが所持する携帯機20が領域T1にあると判断する場合、応答信号に含まれる識別情報を照合し、第一照合を行う(S1)。第一照合に成功すると(S1でYES)、制御部31は、出力装置40へウィンカー40bの点滅、ブザー40aの鳴動を指令する。該指令を受けた出力装置40は、ウィンカー40bの点滅、ブザー40aの鳴動を実行する(S2)。
【0069】
また、制御部31は、送受信部32へ応答要求信号の出力間隔を短くするよう指令する(S3)。応答要求信号の出力間隔を短くすることで、携帯機20の検出精度を向上することができる。なお、送受信部32からの応答要求信号は携帯機20の位置に関係なく、間欠的に出力されている。
【0070】
一方、制御装置30は、第一照合に失敗すると(S1でNO)、再び第一照合を行う。すなわち、第一照合に成功するまで、第一照合を繰り返し行う。
【0071】
次に、照合部31bは、測距部31aから取得した第一測定信号に基づき、ユーザーHが所持する携帯機20が領域T2にあると判断する場合、応答信号に含まれる識別情報を照合し、第二照合を行う(S4)。第二照合に成功すると(S4でYES)、制御部31は、出力装置40へLED40cの発光を指令する。該指令を受けた出力装置40は、LED40cの発光を実行する(S5)。
【0072】
また、制御部31は、送受信部32へ応答要求信号の出力間隔をS3で指令した出力間隔よりも更に短くするよう指令する(S6)。応答要求信号の出力間隔を更に短くすることで、携帯機20の検出精度を更に向上することができる。
【0073】
一方、制御装置30は、第二照合に失敗すると(S4でNO)、再び第二照合を行う。すなわち、第二照合に成功するまで、第二照合を繰り返し行う。
【0074】
なお、ここでは第二照合を再び行うことを説明しているが、第一照合を行う工程(S1)に戻ってもよい。
【0075】
次に、照合部31bは、測距部31aから取得した第一測定信号に基づき、ユーザーHが所持する携帯機20が領域T3にあると判断する場合、応答信号に含まれる識別情報を照合し、第三照合を行う(S7)。第三照合に成功すると(S7でYES)、鞍乗型車両10のイグニッションの電源がON可能となる。
【0076】
本実施形態においては、第一照合、第二照合、および、第三照合の全ての照合に成功することを条件として、鞍乗型車両10のイグニッションの電源がON可能となる。
【0077】
なお、第一照合、第二照合、および、第三照合のうち、何れか2つ以上の照合に成功すると、鞍乗型車両10のイグニッションの電源がON可能となる構成としてもよい。
【0078】
イグニッションの電源がONになると、鞍乗型車両10において、スタータースイッチを操作することが可能になる。例えば、スタータースイッチはユーザーHによって長押しされた場合にONされる。スタータースイッチがONされると、制御部31は、鞍乗型車両10のエンジンを駆動させる。
【0079】
携帯機20を所持するユーザーHが鞍乗型車両10と離れた位置から鞍乗型車両10に近づくだけで、鞍乗型車両10に搭載された制御装置30は、ユーザーHの携帯機20の照合を行う。よって、携帯機20を操作しなくとも自車両と離れた位置から自車両を確認することができ、また、携帯機20を操作しなくとも自車両のエンジンを始動可能にすることができる、というユーザーフレンドリーな手段を実現することができる。
【0080】
一方、制御装置30は、第三照合に失敗すると(S7でNO)、再び第三照合を行う。すなわち、第三照合に成功するまで、第三照合を繰り返し行う。
【0081】
なお、ここでは第三照合を再び行うことを説明しているが、第一照合を行う工程(S1)、或いは、第二照合を行う工程(S4)に戻ってもよい。
【0082】
以上、本発明の実施の形態を詳細に説明してきたが、前述までの説明はあらゆる点において本発明の例示に過ぎない。本発明の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。例えば、以下のような変更が可能である。なお、以下では、上記実施形態と同様の構成要素に関しては同様の符号を用い、上記実施形態と同様の点については、適宜説明を省略した。
【0083】
〔実施形態2〕
例えば、上記実施形態では、測距部31aにより、第一測定を行っている。しかしながら、測距部31aは、このような例に限定されなくてもよい。例えば、測距部31aは、送受信部32から送信される応答要求信号を送信してから、該応答要求信号に応じて携帯機20から送信される応答信号を受信するまでの時間に基づき、鞍乗型車両10と携帯機20との間の距離を測定してもよい(以下、第二測定という)。
【0084】
一例として、制御装置30は、携帯機20に対して応答要求信号を送信するのと同時に、タイマ33にカウント開始の指令信号を送信する。タイマ33は、カウント開始の指令信号を受け取るとカウントを開始する。制御装置30は、携帯機20から応答信号を受信すると、タイマ33にカウント終了の指令信号を送信する。タイマ33は、カウント終了の指令信号を受け取るとカウントを終了し、カウント結果信号を測距部31aへ送る。この様にして送られてきたカウント結果信号を測距部31aが受け取ると、測距部31aはカウント結果信号を距離に換算し、鞍乗型車両10と携帯機20との間の距離を決定する。
【0085】
また、測距部31aは、第二測定により測定した距離を第二測定信号として照合部31bへ送る。
【0086】
また、照合部31bは、測距部31aから送られてくる第二測定信号を取得する。
【0087】
また、照合部31bは、測距部31aから取得した第二測定信号に基づき、ユーザーHが所持する携帯機20が領域T1にあると判断する場合、第一照合を行う。また、照合部31bは、測距部31aから取得した第二測定信号に基づき、ユーザーHが所持する携帯機20が領域T2にあると判断する場合、第二照合を行う。また、照合部31bは、測距部31aから取得した第二測定信号に基づき、ユーザーHが所持する携帯機20が領域T3にあると判断する場合、第三照合を行う。
【0088】
<動作例>
次に、本実施形態に係るスマートキーシステム1における処理動作について、上記実施形態1で示した内容と異なる点について、再び図3を用いて説明をする。
【0089】
(第一照合)
本実施形態において、測距部31aは、送受信部32から携帯機20に対して送信される応答要求信号に応じて、携帯機20から送信される応答信号を受信するまでの時間に基づき、鞍乗型車両10と携帯機20との間の距離を測定する。
【0090】
また、測距部31aは、測定結果を第二測定信号として照合部31bに送る。照合部31bは、測距部31aから取得した第二測定信号に基づき、ユーザーHが所持する携帯機20が領域T1にあると判断する場合、応答信号に含まれる識別情報を照合し、第一照合を行う(S1)。
【0091】
(第二照合)
次に、照合部31bは、測距部31aから取得した第二測定信号に基づき、ユーザーHが所持する携帯機20が領域T2にあると判断する場合、応答信号に含まれる識別情報を照合し、第二照合を行う(S4)。
【0092】
(第三照合)
次に、照合部31bは、測距部31aから取得した第二測定信号に基づき、ユーザーHが所持する携帯機20が領域T3にあると判断する場合、応答信号に含まれる識別情報を照合し、第三照合を行う(S7)。
【0093】
〔本発明の他の効果〕
本発明に係るスマートキーシステム1は、いわゆるリレーアタックに対する防盗性の向上にも効果を奏する。
【0094】
リレーアタックは、制御装置30から送受信部32を介して送信された応答要求信号を中継器により中継して、遠方にある携帯機20に受信させ、携帯機20が鞍乗型車両10の近傍にあるかのように偽装する不正な通信行為である。リレーアタックにより、鞍乗型車両10のユーザーHではない第三者が、鞍乗型車両10のエンジンの始動などを行い、窃盗などの犯罪を行う恐れがある。
【0095】
本発明における制御装置30が非搭載の鞍乗型車両100について、一般的なリレーアタックの手法を用いて鞍乗型車両100が盗難されるまでの流れを、図4を参照しながら説明する。
【0096】
リレーアタックは、鞍乗型車両100の正規の所有者(ユーザーU)ではない、少なくとも2名の第三者(以下、窃盗犯という)により実行される。
【0097】
ここでは、図4に示すとおり、窃盗犯50と窃盗犯51との2名により実行される場合を例として説明する。
【0098】
図4で示すとおり、窃盗犯50は中継器50aを保持し、窃盗犯51は中継器51aを保持している。
【0099】
まず、窃盗犯50が鞍乗型車両100に近づき、窃盗犯51が鞍乗型車両100のユーザーUに近づく。次に、窃盗犯50が、鞍乗型車両100から送信される応答要求信号を中継器50aで受信し、受信した応答要求信号を窃盗犯51の中継器51aへ送信する。窃盗犯51が、窃盗犯50の中継器50aから送信される応答要求信号を中継器51aで受信し、受信した応答要求信号を携帯機60へ送信する。
【0100】
携帯機60は、応答要求信号を受信すると、応答信号を送信し、中継器51aは、携帯機60から送信された応答信号を受信する。そして、中継器51aで受信した応答信号の電波を増幅させて、鞍乗型車両100の近くにいる窃盗犯50の中継器50aに送信する。
【0101】
このようにして、鞍乗型車両100と携帯機60とが中継器50aおよび中継器51aを介して応答要求信号および応答信号を送受信することにより、鞍乗型車両100から遠距離にある携帯機60が照合される。鞍乗型車両100の傍にいる窃盗犯50は、ハンドルロックの解除、エンジンの始動などを行い、鞍乗型車両100を盗難する。
【0102】
以上のとおり、リレーアタックにおいては、中継器にて中継され、携帯機60の照合に用いられる電波は、応答要求信号および応答信号である。
【0103】
これに対し、本発明の制御装置30が搭載された鞍乗型車両10に対してリレーアタックが行なわれた場合について、図5を用いて説明を行う。図5に示す弓形形状の破線は、図1に示す領域T1、領域T2、領域T3に対応する領域を模式的に表したものである。
【0104】
本発明は、制御装置30から送信される応答要求信号と該応答要求信号に応じて携帯機20から送信される応答信号に加え、さらに照合部31bは、測距部31aから取得した第一測定信号、第二測定信号、および第三測定信号(以下、各測定信号という)を用いて携帯機20の照合を行う構成である。
【0105】
また、照合部31bは、測距部31aから取得した各測定信号に基づき、ユーザーHが所持する携帯機20が領域T1にあると判断する場合、第一照合を行う。また、照合部31bは、測距部31aから取得した各測定信号に基づき、ユーザーHが所持する携帯機20が領域T2にあると判断する場合、第二照合を行う。また、照合部31bは、測距部31aから取得した各測定信号に基づき、ユーザーHが所持する携帯機20が領域T3にあると判断する場合、第三照合を行う。更に、本発明は、第一照合、第二照合、および、第三照合の全ての照合に成功することを条件として、鞍乗型車両10のイグニッションの電源がON可能となる構成である。
【0106】
すなわち、携帯機20が領域T1、領域T2、および領域T3の各領域に徐々に近づくにつれ実行される第一照合、第二照合、および第三照合の全ての照合に成功しなければ、鞍乗型車両10のエンジンを始動することはできない。
【0107】
一方、図4に示すとおり、本発明の制御装置30を非搭載の鞍乗型車両100をリレーアタックにより窃盗する場面を想定すると、携帯機60は、鞍乗型車両100から離れていく方向へ移動する、或いは一定の場所に留まることは考えられるが、鞍乗型車両100へと徐々に近づく場面は考えにくい。鞍乗型車両100のユーザーUが自車両に近づいてくる状況下で窃盗を行うことは合理的ではないからである。
【0108】
また、仮に、ユーザーUが自車両に近づいてくる場面を想定したとしても、本願発明においては、携帯機20が領域T1にある場合に第一照合を行い、携帯機20が領域T2にある場合に第二照合を行い、携帯機20が領域T3にある場合に第三照合を行う構成である。また、第一照合、第二照合、および第三照合について、順を追って行い、全ての照合に成功しなければ、鞍乗型車両10のエンジンを始動することはできない構成である。
【0109】
一方、図4に示すとおり、リレーアタックにより鞍乗型車両100の窃盗を行う場面を想定すると、窃盗犯50は、鞍乗型車両100の直ぐ傍で中継器50aを所持して待機していなければならない。
【0110】
従って、窃盗犯の中継器が応答要求信号および応答信号を中継できたとしても、携帯機20が領域T1、領域T2、および領域T3の各領域に徐々に近づくにつれ実行される第一照合、第二照合、および第三照合を再現することは困難である。すなわち、一般的なリレーアタックでは、鞍乗型車両10の近傍に窃盗犯50が中継器50aを持って待機している必要があることに鑑みれば、携帯機20が領域T1、領域T2、および領域T3の各領域に徐々に近づくにつれ実行される第一照合、第二照合、および第三照合の全ての照合を再現し得ないため、鞍乗型車両10のエンジンを始動することはできない。よって、リレーアタックに対する防犯性の向上にも効果を奏するものである。
【0111】
〔ソフトウェアによる実現例〕
制御装置30の制御部31(特に測距部31a、および、照合部31b)は、集積回路(ICチップ)等に形成された論理回路(ハードウェア)によって実現してもよいし、ソフトウェアによって実現してもよい。
【0112】
後者の場合、制御装置30は、各機能を実現するソフトウェアであるプログラムの命令を実行するコンピュータを備えている。このコンピュータは、例えば1つ以上のプロセッサを備えていると共に、上記プログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記録媒体を備えている。そして、上記コンピュータにおいて、上記プロセッサが上記プログラムを上記記録媒体から読み取って実行することにより、本発明の目的が達成される。上記プロセッサとしては、例えばCPU(Central Processing Unit)を用いることができる。上記記録媒体としては、「一時的でない有形の媒体」、例えば、ROM(Read Only Memory)等の他、テープ、ディスク、カード、半導体メモリ、プログラマブルな論理回路などを用いることができる。また、上記プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)などをさらに備えていてもよい。また、上記プログラムは、該プログラムを伝送可能な任意の伝送媒体(通信ネットワークや放送波等)を介して上記コンピュータに供給されてもよい。なお、本発明の一態様は、上記プログラムが電子的な伝送によって具現化された、搬送波に埋め込まれたデータ信号の形態でも実現され得る。
【0113】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0114】
1 スマートキーシステム
10 鞍乗型車両
20 携帯機
20a、32a アンテナ
30 制御装置
31 制御部
31a 測距部
31b 照合部
32 送受信部
40 出力装置
40a ブザー
40b ウィンカー
40c LED
図1
図2
図3
図4
図5