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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-12
(45)【発行日】2023-09-21
(54)【発明の名称】セラミックス焼結体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 37/00 20060101AFI20230913BHJP
   C04B 35/645 20060101ALI20230913BHJP
   C04B 35/575 20060101ALI20230913BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
C04B37/00 Z
C04B35/645
C04B35/575
H01L21/68 R
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019188339
(22)【出願日】2019-10-15
(65)【公開番号】P2021062987
(43)【公開日】2021-04-22
【審査請求日】2022-07-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】市川 佳孝
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 良太
(72)【発明者】
【氏名】傳井 美史
【審査官】山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-059634(JP,A)
【文献】特開昭62-202874(JP,A)
【文献】特開2016-069265(JP,A)
【文献】特開平09-082786(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B
H01L 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1セラミックス成形体を第1温度で仮焼し、第1セラミックス仮焼体を得る第1仮焼工程と、
第1セラミックス成形体と主成分が同一の第2セラミックス成形体を前記第1温度より高い第2温度で仮焼し、第2セラミックス仮焼体を得る第2仮焼工程と、
周面と底面とに囲われ、第1方向に開口を有する収容空間を前記第1セラミックス成形体または前記第1セラミックス仮焼体に形成する収容空間形成工程と、
前記第1セラミックス成形体もしくは前記第2セラミックス成形体の少なくとも一方、または前記第1セラミックス仮焼体もしくは前記第2セラミックス仮焼体の少なくとも一方、に前記第1方向に開口を有する付加的空間を形成する付加的空間形成工程と、
前記収容空間に前記第2セラミックス仮焼体を前記開口から前記第1方向に沿って挿入することにより、前記収容空間を画定する前記第1セラミックス仮焼体の収容面のうちの前記底面と前記第2セラミックス仮焼体の被収容面の一部の挿入先端面とが前記第1方向において対向するように配置される挿入工程と、
前記収容空間に前記第2セラミックス仮焼体を挿入した状態で、前記第1セラミックス仮焼体及び前記第2セラミックス仮焼体を、前記第2温度より高い第3温度で、前記第1方向に沿った一軸方向からの1MPa以上の圧力を加え前記第1方向に対向する前記収容面の前記底面及び前記被収容面の一部の前記挿入先端面を当接させた状態で焼成する一軸加圧焼成を行い、前記第1セラミックス仮焼体と前記第2セラミックス仮焼体とが嵌合して一体化し、前記付加的空間の前記第1方向の開口が前記底面又は前記挿入先端面により塞がれた状態とされたセラミックス焼結体を得る焼結工程と、
を含むことを特徴とするセラミックス焼結体の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のセラミックス焼結体の製造方法であって、
前記挿入工程において、前記第2セラミックス仮焼体を前記収容空間に挿入したとき、前記第1セラミックス仮焼体と前記第2セラミックス仮焼体との間には、前記第1方向に直交する第2方向において隙間が形成されるように、前記第2セラミックス仮焼体と前記収容空間とが構成されており、
前記焼結工程において、前記第1セラミックス仮焼体と前記第2セラミックス仮焼体とが一体化して前記隙間は消滅することを特徴とするセラミックス焼結体の製造方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のセラミックス焼結体の製造方法であって、
前記焼結工程において、前記セラミックス焼結体の焼成工程における収縮特性を示す収縮曲線の変曲点の温度である変曲点温度以上前記第3温度以下に設定された第4温度に前記セラミックス焼結体が達した時点から前記第1方向から加圧することを特徴とするセラミックス焼結体の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載のセラミックス焼結体の製造方法であって、
前記第1セラミックス成形体と前記第2セラミックス成形体の主成分が炭化ケイ素であり、前記第1温度は900℃~1700℃、前記第2温度は1200℃~1900℃、前記第3温度は1800℃~2200℃、前記第4温度は1200℃~1900℃、であることを特徴とするセラミックス焼結体の製造方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れか1項に記載の製造方法にて製造されたセラミックス焼結体を用いた半導体製造部材の製造方法であって、
前記セラミックス焼結体に静電チャックを取り付ける取付工程を含む半導体製造部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックス焼結体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、収容空間を有する第1セラミックス成形体と、前記収容空間に収容されるべき第2セラミックス成形体とを準備し、焼成による収縮率において、第1セラミックス成形体の方が第2セラミックス成形体よりも大きくなるように、成形時のプレス圧力などを用いて調整した後、収容空間に第2セラミックス成形体を挿入し、挿入した状態で両者を焼成する製法が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-59634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のセラミックス焼結体の製造方法では、2つの成形体を接合するにあたり、成形時のプレス圧力を調整する必要があり、製造が困難であり、さらに容易に接合強度を高められるセラミックス焼結体の製造方法が望まれる。
本発明は、従来よりも容易に接合強度を向上させることができるセラミックス焼結体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[1]上記目的を達成するため、本発明は、
第1セラミックス成形体を第1温度で仮焼し、第1セラミックス仮焼体を得る第1仮焼工程と、
第1セラミックス成形体と主成分が同一の第2セラミックス成形体を前記第1温度より高い第2温度で仮焼し、第2セラミックス仮焼体を得る第2仮焼工程と、
周面と底面とに囲われ、第1方向に開口を有する収容空間を前記第1セラミックス成形体または前記第1セラミックス仮焼体に形成する収容空間形成工程と、
前記第1セラミックス成形体もしくは前記第2セラミックス成形体の少なくとも一方、または前記第1セラミックス仮焼体もしくは前記第2セラミックス仮焼体の少なくとも一方、に前記第1方向に開口を有する付加的空間を形成する付加的空間形成工程と、
前記収容空間に前記第2セラミックス仮焼体を前記開口から前記第1方向に沿って挿入することにより、前記収容空間を画定する前記第1セラミックス仮焼体の収容面のうちの前記底面と前記第2セラミックス仮焼体の被収容面の一部の挿入先端面とが前記第1方向において対向するように配置される挿入工程と、
前記収容空間に前記第2セラミックス仮焼体を挿入した状態で、前記第1セラミックス仮焼体及び前記第2セラミックス仮焼体を、前記第2温度より高い第3温度で、前記第1方向に沿った一軸方向からの1MPa以上の圧力を加え前記第1方向に対向する前記収容面の前記底面及び前記被収容面の一部の前記挿入先端面を当接させた状態で焼成する一軸加圧焼成を行い、前記第1セラミックス仮焼体と前記第2セラミックス仮焼体とが嵌合して一体化し、前記付加的空間の前記第1方向の開口が前記底面又は前記挿入先端面により塞がれた状態とされたセラミックス焼結体を得る焼結工程と、
を含むことを特徴とする。
【0006】
本発明によれば、第1セラミックス成形体を仮焼成するときの第1温度よりも高い第2温度で第2セラミックス成形体を仮焼成して得ることにより、第1セラミックス仮焼体の収縮度合いを第2セラミックス仮焼体の収縮度合いよりも大きくすることができる。そして、第2セラミックス仮焼体を収容空間に挿入して本焼成を行うことにより、従来よりもさらに接合強度を向上させたセラミックス焼結体を得ることができる。
【0007】
[2]また、本発明においては、
前記挿入工程において、前記第2セラミックス仮焼体を前記収容空間に挿入したとき、前記第1セラミックス仮焼体と前記第2セラミックス仮焼体との間には、前記第1方向に直交する第2方向において隙間が形成されるように、前記第2セラミックス仮焼体と前記収容空間とが構成されており、
前記焼結工程において、前記第1セラミックス仮焼体と前記第2セラミックス仮焼体とが一体化して前記隙間は消滅することが好ましい。
【0008】
本発明によれば、挿入工程においては第1セラミックス仮焼体と第2セラミックス仮焼体との第2方向における間に隙間が形成されているため、第2セラミックス仮焼体を収容空間に容易に挿入することができる。また、焼成工程においては、第1セラミックス仮焼体と第2セラミックス仮焼体との間の第2方向における隙間が消滅するため、隙間が残っている場合と比較して、第1セラミックス仮焼体と第2セラミックス仮焼体とをしっかりと一体化させたセラミックス焼結体を製造することができる。
【0009】
[3]また、本発明においては、
前記焼結工程において、前記セラミックス焼結体の焼成工程における収縮特性を示す収縮曲線の変曲点の温度である変曲点温度以上前記第3温度以下に設定された第4温度に前記セラミックス焼結体が達した時点から前記第1方向から加圧することが好ましい。
【0010】
変曲点温度未満の温度から加圧すると第2方向における収縮率が低下することが分かった。
そこで、本発明においては、変曲点温度以上第3温度以下に設定された第4温度にセラミックス仮焼体が達した時点から第1方向から加圧することにより第2方向へ十分に収縮させることができ、第1セラミックス仮焼体と第2セラミックス仮焼体との一体化をより高めることができる。
【0011】
[4]また、本発明においては、
前記第1セラミックス成形体と前記第2セラミックス成形体の主成分が炭化ケイ素である場合には、前記第1温度は900℃~1700℃、前記第2温度は1200℃~1900℃、前記第3温度は1800℃~2200℃、前記第4温度は1200℃~1900℃、とすることができる。
【0012】
[5]また、本発明においては、
上記製造方法にて製造されたセラミックス焼結体を用いた半導体製造部材の製造方法であって、前記セラミックス焼結体に静電チャックを取り付ける取付工程を含むように製造してもよい。
【0013】
本発明によれば、セラミックス焼結体に静電チャックを取り付けて半導体製造部材として用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態のセラミックス焼結体の製造方法に用いられるセラミックス成形体を示す説明図。
図2】本実施形態のセラミックス焼結体の製造工程を示すフローチャート。
図3】本実施形態のセラミックス仮焼体を示す説明図。
図4】本実施形態のセラミックス焼結体を示す説明図。
図5】本実施形態のセラミックス仮焼体の温度変化に伴う収縮特性又は密度変化特性を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図面を参照して、本発明のセラミックス焼結体の製造方法の実施形態について説明する。
図1及び図3を参照して、本実施形態のセラミックス焼結体の製造方法は、円盤形状の第1セラミックス成形体11と、第1セラミックス成形体と主成分が同一で円盤形状の第2セラミックス成形体21とを用いて、セラミックス焼結体を製造する方法である。
【0016】
本実施形態においては、第1セラミックス成形体11を成形するときに、収容空間31、および付加的空間33を形成している。収容空間31は、第1セラミックス成形体11を仮焼成した第1セラミックス仮焼体12における収容空間31が第2セラミックス成形体21を仮焼した第2セラミックス仮焼体22を挿入できるように形成される。第2セラミックス仮焼体22を第1セラミックス仮焼体12の収容空間31に挿入する方向が本実施形態の第1方向に該当し、図1では第1方向は上下方向となる。本実施形態においては、成形工程が収容空間形成工程を兼ねている。
【0017】
なお、収容空間31及び付加的空間33は、仮焼成する前の第1セラミックス成形体11に形成しなくてもよく、例えば、第1セラミックス成形体11を仮焼成した後の第1セラミックス仮焼体12に形成してもよい。この場合、第1セラミックス成形体11を仮焼成した後に収容空間形成工程および付加的空間形成工程を行うことになる。また、付加的空間33は、第1セラミックス成形体11に形成しなくてもよく、例えば、第2セラミックス成形体21または第2セラミックス仮焼体22に形成してもよい。
【0018】
さらに、付加的空間33は第1セラミックス成形体11と第2セラミックス成形体21の双方または第1セラミックス仮焼体12と第2セラミックス仮焼体22の双方に形成してもよい。付加的空間33は第1方向に開口している。そして、第1セラミックス成形体11と第2セラミックス成形体21の双方または第1セラミックス仮焼体12と第2セラミックス仮焼体22の双方に付加的空間33が形成されている場合であっても、何れか一方の付加的空間は底面又は挿入先端面に含まれるものとして規定し、「付加的空間の第1方向の開口が底面又は挿入先端面により塞がれた状態」に該当するものと規定する。
【0019】
図2を参照して、本実施形態のセラミックス焼結体の製造方法は、図1に示す第1セラミックス成形体11、および第2セラミックス成形体21を成形する成形工程(図2のSTEP1)と、仮焼工程(STEP2)と、挿入工程(STEP3)と、焼成工程(STEP4)と、を備える。
【0020】
仮焼工程(STEP2)は、第1セラミックス成形体11を第1温度T1で仮焼し、第1セラミックス仮焼体12を得る第1仮焼工程と、第1セラミックス成形体11と主成分が同一の第2セラミックス成形体21を第1温度T1より高い第2温度T2で仮焼し、第2セラミックス仮焼体22を得る第2仮焼工程と、を含む。
【0021】
次に、挿入工程(STEP3)で、第1セラミックス仮焼体12の第1方向の表面に開口31aを有する収容空間31に第2セラミックス仮焼体22を第1方向に沿って挿入する。収容空間31を画定する第1セラミックス仮焼体12の収容面は、内底面31bと内側面31cとで構成される。第2セラミックス仮焼体22の収容空間31に収容される面である被収容面は、第2セラミックス仮焼体22の外底面22bと外側面22cとで構成される。本実施形態においては、内底面31bが収容空間31を画定する底面、内側面31cが収容空間31を画定する周面、外底面22bが挿入先端面に該当する。
【0022】
この挿入工程(STEP3)では、収容空間31を画定する第1セラミックス仮焼体12の収容面のうちの一部である内底面31bと、第2セラミックス仮焼体22の被収容面の一部である外底面22b(挿入先端面)とが第1方向において対向するように配置される。
【0023】
次に、焼成工程(STEP4)として、収容空間31に第2セラミックス仮焼体22を挿入した状態で、第1セラミックス仮焼体12及び第2セラミックス仮焼体22を、第2温度T2より高い第3温度T3で、第1方向に沿った一軸方向からの1MPa以上の圧力を加え第1方向に対向する収容面の一部としての内底面31b(底面)及び被収容面の一部としての外底面22b(挿入先端面)を当接させた状態で焼成する一軸加圧焼成を行う。このときに加える圧力の上限は設備にも依存するが、例えば、25MPa以下とすることができる。
【0024】
焼成工程(STEP4)では、第1セラミックス仮焼体12と第2セラミックス仮焼体22とが嵌合して一体化し、付加的空間33の第1方向の開口が外底面22b(挿入先端面)により塞がれた状態とされたセラミックス焼結体4を得ることができる。
【0025】
図5は、焼結工程における温度変化とセラミックス仮焼体の寸法との関係を示すグラフであり、セラミックス焼結体の焼成工程における収縮特性を示す収縮曲線を示し、横軸が温度、縦軸がセラミックス仮焼体の寸法を示している。図5から明らかなように、セラミックス仮焼体は、温度が上がるにつれて次第に寸法の変化量が大きくなっていくが、所定の温度以上になると次第に寸法の変化量が小さくなっていく。この寸法の変化量が次第に大きくなる状態から次第に小さくなる状態に切り替わる点、または、曲線の二回導関数が0になる点、または、曲線が凹から凸に切り替わる点、を変曲点という。
【0026】
焼結工程においては、図5の収縮曲線の変曲点の温度である変曲点温度T5以上第3温度T3以下に設定された第4温度T4にセラミックス焼結体が達した時点から第1方向から加圧するようにしている。これは、変曲点温度T5未満の温度から加圧すると第2方向における収縮率が低下することが分かった。そこで、本実施形態においては、変曲点温度T5以上第3温度T3以下に設定された第4温度T4にセラミックス仮焼体が達した時点から第1方向から加圧することにより第2方向へ十分に収縮させることができ、第1セラミックス仮焼体と第2セラミックス仮焼体との一体化をより高めることができる。
【0027】
一例として、第1セラミックス成形体11と第2セラミックス成形体21の主成分が炭化ケイ素である場合には、第1温度は900℃~1700℃、第2温度は1200℃~1900℃、第3温度は1800℃~2200℃、第4温度は1200℃~1900℃、変曲点温度T5は1300℃と、することができる。
【0028】
また、挿入工程(STEP3)において、第2セラミックス仮焼体22を収容空間31に挿入したとき、第1セラミックス仮焼体12と第2セラミックス仮焼体22との間には、第1方向に直交する第2方向において隙間が形成されて、内側面31cと外側面22cとが離隔するように、第2セラミックス仮焼体22と収容空間31を有する第1セラミックス仮焼体12とが構成されている。
【0029】
この隙間は、焼結工程(STEP4)において、第1セラミックス仮焼体12と第2セラミックス仮焼体22とが一体化して消滅する。
【0030】
本実施形態のセラミックス焼結体4の製造方法によれば、第1セラミックス仮焼体12を得るために第1セラミックス成形体11を仮焼成するときの第1温度T1よりも高い第2温度T2で第2セラミックス仮焼体22を仮焼成して得ることにより、第2セラミックス仮焼体22の収縮度合いを第1セラミックス仮焼体12の収縮度合いよりも大きくすることができる。そして、第2セラミックス仮焼体22を収容空間31に挿入して本焼成を行うことにより、従来よりもさらに接合界面の接合強度を向上させたセラミックス焼結体4を得ることができる。
【0031】
また、本実施形態によれば、挿入工程(STEP3)においては第1セラミックス仮焼体12と第2セラミックス仮焼体22との第2方向における間に隙間が形成されているため、第2セラミックス仮焼体22を収容空間31に容易に挿入することができる。また、焼成工程(STEP4)においては、第1セラミックス焼結体12の第2方向における収縮率が第2セラミックス仮焼体22の第2方向における収縮率よりも大きく、第1セラミックス仮焼体12と第2セラミックス仮焼体22との間の第2方向における隙間が消滅するため、隙間が残っている場合と比較して、第1セラミックス仮焼体12と第2セラミックス仮焼体22とをしっかりと一体化させたセラミックス焼結体4を製造することができる。
【0032】
また、本実施形態の製造方法にて製造されたセラミックス焼結体4を用いた半導体製造部材の製造方法として、セラミックス焼結体4に静電チャックを取り付ける取付工程を含むようにしてもよい。これにより、セラミックス焼結体4に静電チャックを取り付けて付加的空間33に媒体を流すことにより種々の半導体製造プロセスに適用し得る半導体製造部材として用いることができる。
【0033】
以下、実施例と比較例について説明する。各実施例と比較例は、直径300mm、厚み25mmの静電チャック用基台を作成して評価したものである。評価内容として、付加的空間33に6[kgf/cm]の水圧を負荷し、セラミックス焼結体4の付加的空間33を画定する周壁からの水漏れの有無も確認した。また、付加的空間33に0.5MPaのHeガスを加圧、封止し、1分経過後の封止された空間の圧力変動の有無によりガスリークの有無を確認した。このとき、圧力変動が1%以内である場合には、ガスリーク無しと判定した。
【0034】
[実施例1]
実施例1では、原料は酸化アルミニウム(Al)を純度99.5%、平均粒子径0.5μmの酸化アルミニウム(Al)の原料粉を用いた。実施例1の成形体は、ポリビニルアルコール(PVA)バインダーを3%添加して顆粒状にしてCIP成形した後、第1セラミックス成形体11及び第2セラミックス成形体21の形状に機械加工した。仮焼成及び本焼成は大気雰囲気で行った。また、本焼成時の加圧は1MPaで行った。結果を表1に示す。表1から明らかなように、実施例1の付加的空間33を画定する周壁からの水漏れは検知されなかった。また、ガスリークも確認されなかった。
【0035】
[実施例2]
実施例2では、純度98%、平均粒子径0.5μmの原料として、炭化ケイ素(SiC)に炭化ホウ素(BC)及び炭素(C)を添加したものを用いた。セラミックス成形体は、ポリビニルアルコール(PVA)バインダーを3%添加して顆粒状にしてCIP成形した後、第1セラミックス成形体11及び第2セラミックス成形体21の形状に機械加工した。仮焼成及び本焼成はアルゴン雰囲気で行った。また焼成時の加圧は4MPaで行った。結果を表1に示す。表1から明らかなように、実施例2の付加的空間33を画定する周壁からの水漏れは検知されなかった。また、ガスリークも確認されなかった。
【0036】
[比較例1]
比較例1は、焼成時の一軸加圧の圧力を0.5MPaとした以外は、実施例2と同一とした。比較例1では、付加的空間33を画定する周壁から水漏れが発生した。また、Heガスを用いたガスリークの確認試験ではHeガスの圧力変動が確認されガスリークが発生した。
【0037】
[実施例3]
実施例3は、一軸加圧焼成の時の加圧を変曲点温度(1300℃)に達する前の800℃で開始した場合のものであり、他は、実施例2と同一に構成している。実施例3の付加的空間33を画定する周壁からの水漏れは検知されなかった。一方でHeガスを用いたガスリークの確認試験ではHeガスの圧力電動が確認されガスリークが発生した。
【0038】
【表1】
【符号の説明】
【0039】
11 第1セラミックス成形体
12 第1セラミックス仮焼体
21 第2セラミックス成形体
22 第2セラミックス仮焼体
22b 外底面(挿入先端面)
22c 外側面
31 収容空間
31a 開口
31b 内底面(底面)
31c 内側面(周面)
33 付加的空間
4 セラミックス焼結体
T1 第1温度
T2 第2温度
T3 第3温度
T4 第4温度
T5 変曲点温度
図1
図2
図3
図4
図5