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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-12
(45)【発行日】2023-09-21
(54)【発明の名称】検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/02 20060101AFI20230913BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20230913BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
G01N35/02 A
G01N37/00 101
C12M1/00 A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019190506
(22)【出願日】2019-10-17
(65)【公開番号】P2021067466
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-09-22
(73)【特許権者】
【識別番号】517448489
【氏名又は名称】合同会社H.U.グループ中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【弁理士】
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】松野 達樹
(72)【発明者】
【氏名】小▲高▼ 健之
【審査官】草川 貴史
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0016170(US,A1)
【文献】特開2005-204592(JP,A)
【文献】特開2008-200006(JP,A)
【文献】特開2017-166989(JP,A)
【文献】特開2016-017877(JP,A)
【文献】特開2002-048765(JP,A)
【文献】国際公開第2012/036296(WO,A1)
【文献】特開2019-088332(JP,A)
【文献】国際公開第2019/189753(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0327867(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00-37/00
G01N 1/00- 1/44
C12M 1/00- 3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象を含む試料を収容する収容デバイスと、前記収容デバイスを保持する保持部材と、前記保持部材を上側から覆うカバー部材と、を備え、
前記収容デバイスは、上面と底面を有し、上面に前記試料を吐出吸引手段によって流入又は流出させるための開口部を有し、
前記保持部材及びカバー部材の少なくとも一方に、前記吐出吸引手段の鉛直度を前記吐出吸引手段との接触によって調整することにより、前記開口部に対する前記吐出吸引手段の位置を調整する調整手段を備え、
前記吐出吸引手段がピペットチップであり、
前記調整手段は、前記吐出吸引手段が水平方向から当接される当接部と、前記水平方向において開いている開拡部であって、前記吐出吸引手段を前記当接部側へ案内するための前記開拡部とを含み、
前記吐出吸引手段は、前記水平方向において前記開拡部を介して前記当接部側へ移動して当該当接部に当接することにより、前記開口部に対する前記吐出吸引手段の位置が調整される、
検査装置。
【請求項2】
前記調整手段は、前記吐出吸引手段の先端が上側から挿入される挿入孔、を含む、
請求項に記載の検査装置。
【請求項3】
検体中の前記検査対象を検査に適した状態とする検体処理デバイス、を備え、
前記収容デバイスは、前記検体処理デバイスで処理された前記検査対象を検査するために前記検査対象を含む前記試料を収容するデバイスであって、前記検体処理デバイスに対して所定間隔を隔てて設けられているデバイスである、
請求項1又は2に記載の検査装置。
【請求項4】
前記検査対象が核酸であり、前記処理が核酸抽出である、
請求項に記載の検査装置。
【請求項5】
前記保持部材が前記収容デバイス及び前記検体処理デバイスを保持し、
前記保持部材又はカバー部材の少なくとも一部は、前記吐出吸引手段が前記収容デバイス及び前記検体処理デバイスの上側を前記検体処理デバイスと前記収容デバイスとの間で移動する場合に前記吐出吸引手段の開口部と対向する底部を形成する、
請求項3又は4に記載の検査装置。
【請求項6】
前記カバー部材は、前記検体処理デバイスと対向する位置から前記収容デバイスと対向する位置に至る、上下方向に貫通する長孔を有する、
請求項に記載の検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、生体成分検査のうち核酸増幅検査に用いられる平板形状の流路デバイスが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この流路デバイスを含めて、一般的には流路デバイスには、注入口が設けられており、当該注入口にピペットチップの先端を挿入して、ピペットチップから検査対象を含む試料を分注することにより、当該試料を流路デバイスに注入していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-200504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、流路デバイスの注入口が比較的小径となっていたので、ピペットチップの先端を注入口に挿入するために、例えば、自動化する場合、ピペットチップの向きを鉛直方向に沿った向きに維持した状態でピペットチップを高精度に移動させる必要があり、一度、ピペットチップの向きが変動した場合、注入口にピペットチップの先端を挿入できなくなる可能性があった。
【0005】
本発明は、上記従来技術における課題を解決するためのものであって、収容デバイスの開口部に対する吐出吸引手段の位置を調整することが可能になる、検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の検査装置は、検査対象を含む試料を収容する収容デバイスと、前記収容デバイスを保持する保持部材と、前記保持部材を上側から覆うカバー部材と、を備え、前記収容デバイスは、上面と底面を有し、上面に前記試料を吐出吸引手段によって流入又は流出させるための開口部を有し、前記保持部材及びカバー部材の少なくとも一方に、前記吐出吸引手段の鉛直度を前記吐出吸引手段との接触によって調整することにより、前記開口部に対する前記吐出吸引手段の位置を調整する調整手段を備え、前記吐出吸引手段がピペットチップであり、前記調整手段は、前記吐出吸引手段が水平方向から当接される当接部と、前記水平方向において開いている開拡部であって、前記吐出吸引手段を前記当接部側へ案内するための前記開拡部とを含み、前記吐出吸引手段は、前記水平方向において前記開拡部を介して前記当接部側へ移動して当該当接部に当接することにより、前記開口部に対する前記吐出吸引手段の位置が調整される。
【0009】
請求項に記載の検査装置は、請求項に記載の検査装置において、前記調整手段は、前記吐出吸引手段の先端が上側から挿入される挿入孔、を含む。
【0010】
請求項に記載の検査装置は、請求項1又は2に記載の検査装置において、検体中の前記検査対象を検査に適した状態とする検体処理デバイス、を備え、前記収容デバイスは、前記検体処理デバイスで処理された前記検査対象を検査するために前記検査対象を含む前記試料を収容するデバイスであって、前記検体処理デバイスに対して所定間隔を隔てて設けられているデバイスである。
【0011】
請求項に記載の検査装置は、請求項に記載の検査装置において、前記検査対象が核酸であり、前記処理が核酸抽出である。
【0012】
請求項に記載の検査装置は、請求項又はに記載の検査装置において、前記保持部材が前記収容デバイス及び前記検体処理デバイスを保持し、前記保持部材又はカバー部材の少なくとも一部は、前記吐出吸引手段が前記収容デバイス及び前記検体処理デバイスの上側を前記検体処理デバイスと前記収容デバイスとの間で移動する場合に前記吐出吸引手段の前記開口部と対向する底部を形成する。
【0013】
請求項に記載の検査装置は、請求項に記載の検査装置において、前記カバー部材は、前記検体処理デバイスと対向する位置から前記収容デバイスと対向する位置に至る、上下方向に貫通する長孔を有する。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の検査装置によれば、吐出吸引手段の鉛直度を吐出吸引手段との接触によって調整することにより、開口部に対する吐出吸引手段の位置を調整する調整手段を備えることにより、例えば、吐出吸引手段の鉛直度を調整し、開口部に対する吐出吸引手段の位置を調整することができるので、収容デバイスの開口部に対する吐出吸引手段の位置を調整することが可能となる。
また、吐出吸引手段がピペットチップであることにより、例えば、収容デバイスの開口部に対するピペットチップの位置を調整することが可能となる。
また、調整手段は吐出吸引手段が水平方向から当接される当接部を含むことにより、例えば、吐出吸引手段の上下方向の移動を行うことなく、吐出吸引手段の鉛直度を容易に調整することが可能となる。
【0017】
請求項に記載の検査装置によれば、調整手段は吐出吸引手段の先端が上側から挿入される挿入孔を含むことにより、例えば、吐出吸引手段の先端を挿入孔に挿入することにより、鉛直度を確実に調整すること可能となる。
【0018】
請求項に記載の検査装置によれば、検体中の検査対象を検査に適した状態とする検体処理デバイスを備えることにより、例えば、検査装置を用いて試料の処理及び検査の両方を行うことができるので、検査装置の利便性を向上させることが可能となる。
【0019】
請求項に記載の検査装置によれば、検査対象が核酸であり、処理が核酸抽出であることにより、例えば、検査装置を用いて核酸の抽出及び抽出した核酸の検査の両方を行うことができるので、検査装置の利便性を向上させることが可能となる。
【0020】
請求項に記載の検査装置によれば、保持部材又はカバー部材の少なくとも一部は、吐出吸引手段が収容デバイス及び検体処理デバイスの上側を検体処理デバイスと収容デバイスとの間で移動する場合に吐出吸引手段の開口部と対向する底部を形成することにより、例えば、試料が検査装置よりも下側に落ちることを防止し、試料による汚損を防止することが可能となる。
【0021】
請求項に記載の検査装置によれば、カバー部材は、検体処理デバイスと対向する位置から収容デバイスと対向する位置に至る、上下方向に貫通する長孔を有するにより、例えば、吐出吸引手段の開口部をカバー部材の上部よりも下側に設けた状態で、長孔に沿って吐出吸引手段を移動させることができるので、試料が飛び散って汚損してしまうリスクを軽減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施の形態に係るカートリッジ装置の斜視図である。
図2】検体検査システムの平面図である。
図3】検体検査システムの正面図である。
図4】検体検査システムの側面図である。
図5】カートリッジ装置の分解斜視図である。
図6】上側から見た状態の流路デバイスの一例の斜視図である。
図7】下側から見た状態の流路デバイスの一例の斜視図である。
図8】流路デバイスの一例の平面図である。
図9】上側から見た状態の保持部材の斜視図である。
図10】下側から見た状態の保持部材の斜視図である。
図11図9のA-A線の断面図である。
図12】流路デバイスを保持した状態の保持部材の断面図である。
図13】上側から見た状態の貯留部材の斜視図である。
図14】下側から見た状態の貯留部材の斜視図である。
図15】上側から見た状態のカバー部材の斜視図である。
図16】下側から見た状態のカバー部材の斜視図である。
図17図16のB-B線の断面図である。
図18】カートリッジ装置の一部の構成要素の斜視図である。
図19】カートリッジ装置の一部の構成要素の斜視図である。
図20】カートリッジ装置の断面図である。
図21】カートリッジ装置を取り付ける場合の保持部材及び流路デバイスと温調装置の断面図である。
図22】カートリッジ装置を取り付ける場合の保持部材及び流路デバイスと温調装置の断面図である。
図23】検体検査システムの側面図である。
図24】検体検査システムの正面図である。
図25】検体検査システムの正面図である。
図26】検体検査システムの正面図である。
図27】検体検査システムの正面図である。
図28】変形例の検体処理システムの平面図である。
図29】変形例の検体処理システムの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る検体検査システムの実施の形態を詳細に説明する。まず、〔I〕実施の形態の基本的概念について説明した後、〔II〕実施の形態の具体的内容について説明し、最後に、〔III〕実施の形態に対する変形例について説明する。ただし、実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0024】
〔I〕実施の形態の基本的概念
まず、実施の形態の基本的概念について説明する。実施の形態に係る検体検査システムとは、概略的には、検査対象を含む検体に対して、検査対象を抽出する処理を行うことにより検査対象を含む試料を生成し、生成した検査対象を含む試料について生化学検査、血液学検査、核酸検査、又は免疫検査等の検査を行うためのシステムである。
【0025】
ここで、「生化学検査」とは、血液等の試料中の成分を、比色法、濁度測定法、酵素法、酵素活性法等を用いて測定する検査を意味する。この「生化学検査」で測定される項目については任意であるが、例えば、肝機能検査のAST、ALT、及びγ-GT、脂質検査のLDLコレステロール、HDLコレステロール、及び中性脂肪、並びに、糖尿病検査の血糖、及びHbA1c等が挙げられる。また、「血液学検査」とは、血液中の、主に血球成分および血漿成分の定量、定性試験を行う検査を意味する。この「血液学検査」で測定される項目については任意であるが、例えば、赤血球数、血色素量、白血球数、ヘマトクリット、血小板数等が挙げられる。また、「核酸検査」とは、核酸増幅検査であり、試料中の特定のデオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)を検出または定量する検査である。代表的な核酸検査としては、核酸増幅方法であるポリメラーゼ連鎖反応法(PCR法)、TMA法、NASBA法、LAMP法等の他、DNAプローブ法、サザンハイブリダイゼーション法、ノーザンハイブリダイゼーション法などが知られる。また、「免疫検査」とは、尿、血液等の試料中の成分を、抗原抗体反応を用いて測定または検出する検査を意味する。本発明に適用可能な「免疫検査」の種類については、例えば、ネフェロメトリー法、免疫比濁法、凝集法、酵素免疫測定法(EIA)(例、化学発光EIA(CLEIA)、ELISA)、蛍光免疫測定法、化学発光免疫測定法、電気化学発光免疫測定法、化学増幅型ルミネッセンス・プロキシミティ・ホモジニアス・アッセイ等が挙げられる。また、「免疫検査」で測定される項目については任意であるが、例えば、感染症の病原菌若しくはウイルス、又はこれらに対する抗体、ホルモン、癌マーカー、自己抗体等が挙げられる。
【0026】
また、「検査対象を含む検体」の種類については、例えば、血清、血漿、全血、血球成分、尿、便、喀痰、髄液、口腔粘膜、咽頭粘膜、腸管粘膜、膣粘膜及び生検試料(例、甲状腺刺吸引細胞診(Fine needle aspiration:FNA)試料、腸管試料、肝臓試料)が挙げられる。また、「検査対象を含む試料」の種類については、前述の検査対象を含む検体を、酸、アルカリ、タンパク変性剤、界面活性剤、酸化剤、還元剤、酵素、希釈、ろ過、抽出、加熱、濃縮等、またはこれらの組み合わせにより処理した処理済みの試料が挙げられる。
【0027】
(構成)
まず、検体検査システムの構成について説明する。図1は、本発明の実施の形態に係るカートリッジ装置の斜視図であり、図2は、検体検査システムの概略平面図であり、図3は、検体検査システムの概略正面図であり、図4は、検体検査システムの概略側面図であり、図5は、カートリッジ装置の分解斜視図である。なお、図2においては、温調装置91及び処理用装置92の一部は、実際には隠れ見えない状態となっているが、説明の便宜上、破線で図示されている。なお、各図のX-Y-Z軸を相互に直交する軸であることとし、Z軸方向を鉛直方向とし、+Z方向を上側と称し、-Z方向を下側と称し、また、Y軸方向及びX軸方向を水平方向として、以下説明する。
【0028】
図2の検体検査システム100は、生化学検査、血液学検査、核酸検査、又は免疫検査を行うためのシステムである。以下では、検体検査システム100が、検査対象である核酸を含む検体に対して、検査対象を抽出する処理を行うことにより検査対象を含む試料を生成し、生成した検査対象を含む試料について、リアルタイムPCR法に基づいた核酸増幅検査を行うシステムである場合について例示的に説明する。なお、「リアルタイムPCR法」とは、DNAまたはRNAの増幅を行うPCR法の一種であって、DNAまたはRNAを増幅させながらリアルタイムでモニタリングして解析する方法である。
【0029】
図2の検体検査システム100は、検体中の検査対象を検査に適した状態とするための処理を行う検体検査システムであり、また、当該処理を行うことにより生成される検査対象を含む試料について核酸検査(具体的には、核酸増幅検査)を行うシステムである。
【0030】
概略的には、検体検査システム100は、図3のピペットチップ1、吐出吸引装置(図示省略)、カートリッジ装置200、回転駆動装置(図示省略)、検出装置(例えば、光照射装置と蛍光検出装置、図示省略)、温調装置91、処理用装置92、及び制御ユニット(図示省略)を備えている。
【0031】
また、検体検査システム100における各部の電気的な接続方法については任意であるが、吐出吸引装置、回転駆動装置、検出装置、温調装置91、又は処理用装置92と、制御ユニットとの相互間で通信又は電力供給を直接的又は間接的に行うことが可能となる。
【0032】
(構成-ピペットチップ)
図3又は図4のピペットチップ1は、検査対象である核酸を含む試料又は試薬等の液体又は気体(例えば、空気)を吐出及び吸引するための吐出吸引手段である。このピペットチップ1の種類や構成は任意であるが、例えば、樹脂材料又はガラス材料にて形成されており、また、先端に設けられているピペットチップ側開口部11を介して試料又は試薬等の液体又は気体を吐出及び吸引するように構成されている。なお、このピペットチップ1については、吐出吸引装置の一部の要素と解釈してもよい。吐出吸引のための開口を有するピペットチップは、使用する試料や試薬毎に付け替えることができ、コンタミネーションを防ぐために好適に使用できるが、吐出吸引のための開口は、ピペットチップに限定されず、例えば、ノズル先端等を用いてもよい。なお、ノズル先端の開口を用いる場合は、使用毎にノズル先端を洗浄するための装置を要する。
【0033】
「試薬」とは、検体を後述する流路デバイス内で検査するのに適した状態とするために用いられる薬品であり、例えば、検体中の核酸を核酸増幅反応に供するために用いられる薬品である。核酸増幅反応に供するための「試薬」としては、例えば、試料中の核酸を、細胞や細菌等から抽出するためのカオトロピック剤、界面活性剤等の核酸抽出液、抽出された核酸を回収するための磁性シリカビーズを含む磁性粒子液、不純物を除去するための洗浄液、並びに核酸増幅を行うためのDNAポリメラーゼ等の酵素、dNTP等を含む核酸増幅液等が挙げられる。
【0034】
(構成-吐出吸引装置)
吐出吸引装置(図示省略)は、ピペットチップ1を介して核酸を含む試料又は試薬等の液体又は気体を吐出及び吸引したり、ピペットチップ1を支持して移動させたりする装置である。この吐出吸引装置の種類や構成は任意であるが、例えば、公知の分注装置(一例として、図示しないノズル及びポンプを備える分注装置)等を用いて構成されており、また、ピペットチップの上側(+Z方向)の一部を保持することにより支持する支持機構を備えて構成されており、また、当該ピペットチップ1を支持した状態で、当該ピペットチップ1を上下方向(Z軸方向)、前後方向(Y軸方向)、又は左右方向(X軸方向)に移動させるためのアクチュエータ等を備えて構成されている。
【0035】
(構成-カートリッジ装置)
図1図5のカートリッジ装置200は、検体を検査に適した状態とする処理を行うための検体処理装置であり、また、核酸を含む試料については、核酸検査を行うための検査装置である。なお、このカートリッジ装置200の詳細については、後述する。
【0036】
(構成-回転駆動装置)
回転駆動装置(図示省略)は、図5の貯留部材32を、当該貯留部材32の中心を通る回動軸300を軸として回動させる装置である。「回動軸」300とは、貯留部材32が回動する基準となる軸であり、また、上下方向(Z軸方向)に沿っている軸であり、また、説明の便宜上図示されている軸である。回動駆動装置の具体的な種類や構成は任意であるが、例えば、貯留部材32の下側(-Z方向)に設けられている回動モーターと、当該回動モーターの回動力を貯留部材32に伝達するための長尺状の伝達部材とを備えて構成される。そして、この伝達部材の先端が貯留部材32の回動部材取付部301に接続されることにより、回動モーターの回動力を貯留部材32に当該伝達部材を介して伝達することが可能となり、当該伝達された回動力に基づいて貯留部材32が回動することになる。回動駆動装置は、貯留部材32の下方ではなく、例えば側方に配して、ベルト等を介して回動軸300を回動させてもよい。また、回動駆動装置は、動力源として一般的に各種モーターやエアシリンダーが用いられ、動力をベルトを介したプーリー、クランク、ギア等で伝達する機構等としてもよい。
【0037】
(構成-検出装置)
検出装置(図示省略)は、図5の流路デバイス2の収容部21に収容された試料に含まれる目的成分を検出する検出手段である。この検出装置は、例えば公知の検出装置(一例として、光照射装置と蛍光検出装置)等を用いて構成されており、流路デバイス2近傍に設けられている。
【0038】
(構成-温調装置)
図2図4の温調装置91は、直接的または間接的に流路デバイス2を加熱又は冷却する温度調節手段であり、また、少なくとも温調装置91の一部、好ましくは上面(上側(+Z方向)の面)を介して加熱又は冷却するものであり、また、流路デバイス2近傍に固定されて設けられている。この温調装置91の具体的な種類や構成は任意であるが、例えば、ペルチェ素子、油浴、エア等、通常のリアルタイムPCR反応に使用される加熱手段又は冷却手段のいずれも使用可能であるが、図示例では、直接的に流路デバイス2を加熱及び冷却可能なペルチェ素子を用いて構成されている。
【0039】
(構成-処理用装置)
図2図4の処理用装置92は、核酸検査においては、検体から核酸を抽出する処理を行うために用いられる装置であり、また、図3及び図4に示すように、好適にはカートリッジ装置200の下側(-Z方向)に設けられている装置であり、また、不図示のアクチュエータを備えており当該アクチュエータにより上下方向(Z軸方向)に移動可能となっている装置である。この処理用装置92の具体的な種類や構成は任意であるが、例えば、温調部921、及び分離部922を備える。なお、温調部921、分離部922は、図示例のように処理用装置92として一体的に形成されていてもよいが、それぞれ別の処理用装置として形成されていてもよい。
【0040】
温調部921は、図示例においては、処理用装置92の上側(+Z方向)から1個の貯留部32bが挿入される凹部であり、また、挿入された貯留部32bを加熱するための公知の加熱手段(例えば、電熱線等)が周辺に設けられている部分であり、また、貯留部材32が回動した場合に各貯留部32bと対向する位置に設けられている部分である。なお、処理用装置92における温調部921及び加熱手段が、温調装置に対応する。図示例においては、温調部921は凹部で構成されているが、形状は、貯留部32bの温度を適切な温度に維持することができれば凹部に限定されるものではなく、例えば貫通孔であってもよく、また、平板状の加熱手段を一方向または複数方向から貯留部32bに接触させる形状であってもよい。また、油浴槽、水浴槽であってもよい。温調部921は、必ずしも貯留部32bを直接取り囲む必要はなく、例えば、貯留部32bに近傍から温風を当てる部材であってもよい。
【0041】
分離部922は、貯留部32bに磁界を印加するための部材である。図示例においては、貯留部32bの下側(-Z方向)に設けられている処理用装置92に配置されるが、処理用装置92が上側(+Z方向)に移動する(つまり、分離部922が貯留部32b側に移動する)ことによって、1個の貯留部32bが挿入されるよう構成される。分離部922は、公知の磁界発生手段(例えば、ネオジウム磁石、電磁石等)を有する部分であり、上下方に移動し貯留部32bの側方の一方向または複数方向から磁界を印加する。また、分離部922は、貯留部材32が回動した場合に各貯留部32bと対向する位置に隣接して設けられている部分であり、図2に示す例においては、XY平面において後述するカバー部材33の長孔331の第2端部331bに対応する位置に設けられている部分であるが、設置位置は必ずしも図示例の位置である必要はなく、例えば、貯留部32bに対向する位置より回動軸側に配置されていてもよい。なお、処理用装置92における分離部922及び磁界発生手段が、分離装置に対応する。図示例では、処理用装置92が上下動する構成が示されているが、分離部922が上下動する構成としてもよく、また、分離部922が水平方向に移動する構成としてもよい。
【0042】
(構成-制御ユニット)
制御ユニット(図示省略)は、検体検査システム100の各部を制御するユニットであり、操作部、通信部、出力部、電源部、制御部、及び記憶部を備えている(いずれも図示省略)。
【0043】
(構成-制御ユニット-操作部、通信部、出力部、電源部)
通信部は、吐出吸引装置、回転駆動装置、検出装置、温調装置91、又は処理用装置92と、制御ユニットとの相互間で通信する通信手段である。出力部は、制御ユニットの制御に基づいて各種の情報を出力する出力手段であり、例えば公知の表示手段又は音声出力手段を用いて構成されている。電源部は、商用電源又は電池(例えば、バッテリ等)から供給された電力を、制御ユニットの各部に供給すると共に、吐出吸引装置、回転駆動装置、検出装置、温調装置91、又は処理用装置92に供給する電源手段である。
【0044】
(構成-制御ユニット-制御部)
制御部は、制御ユニットの各部を制御する制御手段である。この制御部は、具体的には、CPU、当該CPU上で解釈実行される各種のプログラム(OSなどの基本制御プログラムや、OS上で起動され特定機能を実現するアプリケーションプログラムを含む)及びプログラムや各種のデータを格納するためのRAMの如き内部メモリを備えて構成されるコンピュータである。
【0045】
(構成-制御ユニット-記憶部)
記憶部は、制御ユニットの動作に必要なプログラム及び各種のデータを記憶する記憶手段であり、書き換え可能な公知の記録媒体を用いて構成され、例えばフラッシュメモリ等の不揮発性記録媒体を用いることができる。
【0046】
(構成-カートリッジ装置の構成の詳細)
次に、図1図5のカートリッジ装置200の構成の詳細について説明する。ただし、このカートリッジ装置200は、特記する場合を除いて、任意の形状、方法、及び材質で製造することができる。
【0047】
カートリッジ装置200は、図5に示すように、流路デバイス2、保持部材31、貯留部材32、及びカバー部材33を備えている。
【0048】
(構成-カートリッジ装置の構成の詳細-流路デバイス)
図6は、上側から見た状態の流路デバイスの一例の斜視図であり、図7は、下側から見た状態の流路デバイスの一例の斜視図であり、図8は、流路デバイスの一例の平面図である。なお、図6及び図7では、流路デバイス2の内部に設けられている収容部21が破線で図示されており、また、図8では、収容部21及び流路デバイス側開口部22相互間で連通している流路が破線で図示されている。なお、流路デバイス内の流路及び収容部21の形状は、目的に応じて適宜変更するものであり、公知の形状をいずれも使用可能である。
【0049】
図6図8の流路デバイス2は、核酸検査においては、核酸を含む液体の試料を収容する収容デバイスである。この流路デバイス2の具体的な種類や構成は任意であるが、例えば、全体として平板形状のものであり、また、リアルタイムPCRに使用する場合においては、蛍光を検出するため、透光性の材料(透明な樹脂等)で形成されているものであり、また、弾性変形可能なものである。また、流路デバイス2は、第1部分2a、第2部分2b、突出部2c、収容部21、及び流路デバイス側開口部22を備えている。
【0050】
第1部分2aは、流路デバイス2の一部であり、図示例においては第2部分2bよりも厚くなっている部分である。第2部分2bは、流路デバイス2の一部であり、また、図示例においては第1部分2aよりも薄くなっている部分であり、また、第1部分2aから突出している部分である。突出部2cは、流路デバイス2における第1部分2a側の端部に2個設けられている部分であり、また、流路デバイス2が延在する方向(Y軸方向)と直交する方向(X軸方向)に向かって突出している部分である。なお、本発明において、突出部2cを設けることは必須ではないが、後述の通り、保持部材への流路デバイスの固定をより確実にする観点から、突出部2cを設置することが好ましい。
【0051】
収容部21は、核酸検査においては核酸を含む液体の試料を収容する部分であり、また、流路デバイス2における第2部分2bに設けられている部分であり、また、当該第2部分2bにおける先端側(+Y方向)に設けられている部分であり、また、図示例においては6個設けられている部分である。流路デバイス側開口部22は、少なくとも、核酸を含む液体の試料を収容部21に流入させるための入口として機能する部分であり、流路を介して収容部21と連通している部分であり、また、流路デバイス2における上面(+Z方向の面)又は底面(-Z方向の面)のうちの、上面(+Z方向の面)に設けられている部分である。そして、この流路(例えば、図8に例示する流路)は、流路デバイス側開口部22に供給された試料が、当該流路を介して収容部21に供給されるように構成されている。流路の具体的な構成は、公知の構成を含む任意の構成を適用することができるので、詳細の説明は省略する。
【0052】
(構成-カートリッジ装置の構成の詳細-保持部材)
図9は、上側から見た状態の保持部材の斜視図であり、図10は、下側から見た状態の保持部材の斜視図であり、図11は、図9のA-A線の断面図であり、図12は、流路デバイスを保持した状態の保持部材の断面図である。なお、図12においては、流路デバイス2を保持した状態の図9のA-A線の断面図が図示されている。
【0053】
図9図12の保持部材31は、図5の流路デバイス2及び貯留部材32を保持する部材である。この保持部材31の具体的な種類や構成は任意であるが、例えば、全体として平板形状のものであり、また、図3のピペットチップ1が保持部材31の上側(+Z方向)を移動する場合に、ピペットチップ1のピペットチップ側開口部11と対向する底部を形成するものであり、また、樹脂材等で形成されているものである。また、保持部材31は、図9の上面31a、図10の底面31b、図9の側面31c、凹部311、第1開口部312、図10の傾斜面313、及び第2開口部314を備えている。
【0054】
図9の上面31aは、保持部材31における上側(+Z方向)の面であり、また、図10の底面31bは、保持部材31における下側(-Z方向)の面であり、また、側面31cは、保持部材31における周縁を形成している面である。
【0055】
図9の凹部311は、保持部材31に対して流路デバイス2を位置決めするための窪んでいる部分であり、また、保持部材31の上面31aにおける図9及び図11の第1開口部312と隣接する位置に設けられている部分であり、また、図6の流路デバイス2の第1部分2a(つまり、流路デバイス2の端部)を収容する部分であり、また、当該第1部分2aに対応する形状の部分である。
【0056】
図9及び図11の第1開口部312は、流路デバイス2が貫通されて配置される開口部であり、また、上面31a側から底面31b側にかけて貫通している開口部である。図10及び図11の傾斜面313は、凹部311から離れるに従って下側(-Z方向)に向かうように傾斜している面である。この傾斜面313の傾斜角度は任意であるが、例えば、図12に示すように、保持部材31に保持された状態の流路デバイス2の一部が傾斜面313の先端部313aに当接して弾性変形することにより、流路デバイス2の少なくとも一部が保持部材31の底面31bに対して傾斜した状態となるように、予め実験又はシミュレーション等を行うことにより設定することとしてもよい。なお、傾斜面313は、流路デバイス2を設置しやすくするための構成であるが、保持部材31の厚さが十分に薄い、流路デバイス2の可撓性が十分に高い等の条件が整い、流路デバイス2に所望の傾斜をつけることができれば、必ずしも傾斜面として形成する必要はなく、上下方向に鉛直な面としてもよい。
【0057】
図9及び図10の第2開口部314は、貯留部材32を保持する部分であり、全体としては図6の貯留部材32の円盤部32aよりも僅かに大径となっているものの、内部の段部314aが円盤部32aよりも小径となっている開口部である。このように、段部314aが設けられているので、貯留部材32の上側(+Z方向)から貯留部材32を第2開口部314に通した場合に、当該貯留部材32の円盤部32aの周縁部が段部314aに引っ掛かることにより、当該貯留部材32が保持部材31に保持されることとなる。
【0058】
(構成-カートリッジ装置の構成の詳細-貯留部材)
図13は、上側から見た状態の貯留部材の斜視図であり、図14は、下側から見た状態の貯留部材の斜視図である。
【0059】
図13及び図14の貯留部材32は、核酸検査においては、検体中の核酸を検査に適した状態とする検体処理デバイスであり、具体的には、核酸抽出を行うためのデバイスである。貯留部材32の具体的な種類や構成は任意であるが、例えば、保持部材31に貯留部材32の円盤部32aの中心を軸として回動可能に保持されているものであり、また、後述するカバー部材33の長孔331の第2端部331bに対応する位置に対して複数の貯留部32bが択一的に対向するように回動可能となっているものであり、また、樹脂材等で形成されているものであり、また、円盤部32a、及び貯留部32bを備えている。
【0060】
円盤部32aは、貯留部材32における上側(+Z方向)の一部であり、また、円盤形状の部分であって円盤であり、また、回動部材取付部301、及び開口部302を備えている。回動部材取付部301は、回転駆動装置(図示省略)の伝達部材が接続される部分であり、また、円盤部32aの中心に設けられている。開口部302は、円盤部32aの中心を基準した当該円盤部32aにおける同一円周上に設けられている開口部であり、また、円盤部32aの下側(-Z軸方向)に設けられている貯留部32bの内部に通じている開口部である。
【0061】
貯留部32bは、検体及び検体の処理を行うための試薬がそれぞれ貯留される複数の貯留手段であり、また、円盤部32aの円周に沿って、円盤部32aの下方(-Z方向)に延在冤罪するように設けられ、複数の貯留部32bが設けられる。これらの各貯留部32bの数、形状やサイズは任意であり、所望の検体処理の条件によって適宜変更可能である。図示例においては、長さ、形状の異なる8つの貯留部32bが設けられている。また、これらの各貯留部32bに貯留されるものも任意であるが、例えば、1つの貯留部に検体及び試薬が混合されて貯留され、また、他の貯留部に試薬(例えば、カオトロピック剤を含む液体、又は磁性ビーズを含む液体)が貯留され、また、さらに他の貯留部に試薬(例えば、洗浄液)が貯留される。
【0062】
(構成-カートリッジ装置の構成の詳細-カバー部材)
図15は、上側から見た状態のカバー部材の斜視図であり、図16は、下側から見た状態のカバー部材の斜視図であり、図17は、図16のB-B線の断面図である。
【0063】
図15図17のカバー部材33は、図5の保持部材31及び貯留部材32を上側(+Z方向)から覆う部材であり、具体的には、保持部材31の少なくとも一部を図9の上面31a側から覆う部材である。このカバー部材33の具体的な種類や構成は任意であるが、例えば、樹脂材等で形成されているものである。また、カバー部材33は、図15の上部33a、側部33b、図16及び図17の中空部33c、図15の長孔331、調整部332、及び図17の突起333を備えている。なお、カバー部材33には、保持部材31に固定するための係合部335を設けてもよい。
【0064】
図15の上部33aは、カバー部材33における上側(+Z方向)の面(上面)を形成する部分であり、また、側部33bは、カバー部材33における周縁側の面を形成する部分であり、図16及び図17の中空部33cは、カバー部材33における裏側(-Z方向)に設けられている空間であり、上部33a及び側部33bに囲まれている部分である。
【0065】
図15の長孔331は、図5の貯留部材32と対向する位置から流路デバイス2と対向する位置に至る、上下方向(Z軸方向)に貫通する長孔であり、また、ピペットチップ1が挿通可能な開口部であり、また、図15の第1端部331a及び第2端部331bを備えている。図15の第1端部331aは、図5の流路デバイス側開口部22と対向する部分であり、また、ピペットチップ1を先端から所望の長さまで挿通可能な径を有する円形の部分である。図15の第2端部331bは、図5の貯留部材32の各開口部302と対向する部分であり、また、ピペットチップ1を先端から所望の長さまで挿通可能な径を有する円形の部分である。
【0066】
図15の調整部332は、ピペットチップ1との接触によって、図5の流路デバイス側開口部22に対するピペットチップ1の鉛直度を調整する調整手段であり、ピペットチップ1が当接する部分である。なお、整部332におけるピペットチップ1と当接する部分が、「当接部」に相当する。「ピペットチップ1の鉛直度」とは、鉛直方向(Z軸方向)に対してピペットチップ1の長軸が沿っている度合いに対応する概念であり、例えば、ピペットチップ1のピペットチップ側開口部11を流路デバイス側開口部22に対して正確に位置決めする観点から、ピペットチップ1の長軸が鉛直方向に沿っている程(つまり、ピペットチップ1の長手方向と鉛直方向とで形成される内角が0度に近い程)好ましいとされる度合いに対応する概念である。図15の調整部332は、上部33aから上側(+Z方向)に向かって突出しており、また、図示例においては、長孔331の第1端部331aの一部を覆っている。また、図示例においては、第2端部331b側(-X方向)に向かって開いている開拡部を備えており、第2端部331b側から第1端部331a側(+X方向)に水平に移動するピペットチップ1が当該開拡部を介して調整部332の内部に案内され、当該調整部332の内部に当接可能となっている。なお、調整部332は、必ずしも長孔331の第1端部331aの位置に存在する必要はなく、長孔331と隣接または離間した別の位置に存在してもよい。この場合、ピペットチップ1は、長孔331の第1端部331aから離間した位置でその鉛直度が調整された後、第1端部331aまで移動する。
【0067】
図15図17の突起333は、図12の流路デバイス2を保持部材31に対して固定する固定手段である。突起333は、図16及び図17に示す例においては、長孔331の長手方向(X軸方向)に沿って一部が当該長孔331に隣接して設けられている。そして、この突起333の上下方向(Z軸方向)の高さは、カバー部材33を図12の保持部材31に取り付けた場合に、保持部材31に保持されている流路デバイス2の第1部分2aに突起333が当接するように構成されている。このように構成することにより、突起333に当接された流路デバイス2は、当該突起333によって保持部材31に押し付けられて固定されることになる。なお、突起333の位置は、流路デバイス2を保持部材に固定できれば、必ずしも長孔331に隣接する必要はない。
【0068】
(カートリッジ装置の組み立て方法)
次に、図示例のカートリッジ装置200の組み立て方法について説明する。図18及び図19は、カートリッジ装置の一部の構成要素の斜視図であり、図20は、カートリッジ装置の断面図である。なお、図20においては、図12の断面図と同様な断面の断面図が図示されている。
【0069】
まず、図5の保持部材31に貯留部材32を取り付ける。例えば、図9の保持部材31の第2開口部314に対して上側(+Z方向)から貯留部材32を通すことにより、図18に示すように、保持部材31に貯留部材32を取り付ける。ここでは、貯留部材32の円盤部32aの周縁部が図9の段部314aに引っ掛かることにより、当該貯留部材32が保持部材31に回転可能に取付けられて保持されることなる。
【0070】
次に、図5の保持部材31に流路デバイス2を取り付ける。例えば、流路デバイス2の先端(収容部21が設けられている側の端部)を、図9の凹部311及び第1開口部312を通すことにより、図19に示すように、保持部材31に流路デバイス2を取り付ける。図示例においては、図6の流路デバイス2の突出部2cが、図9の保持部材31の凹部311に配設されて引っ掛かることにより、保持部材31から流路デバイス2が抜け落ちることが防止されることになる。流路デバイス2は、貯留部材32に対して所定間隔を隔てて設けられることになるが、流路デバイス2と貯留部材32との離間距離は、吐出吸引手段の移動距離を短くするため、保持部材の強度が損なわれない程度に、できるだけ短くすることが好ましい。
【0071】
次に、図5の保持部材31にカバー部材33を取り付ける。具体的には、カバー部材33を保持部材31の上側(+Z方向)から当該保持部材31に取り付ける。図示例では、図16の係合部335と保持部材31の外形とを相互に係合させることにより、保持部材31に対してカバー部材33が固定されることになる。この場合、図15図17のカバー部材33に設けられている突起333が、図20の流路デバイス2の第1部分2aに当接して、上側(+Z方向)から当該第1部分2aを保持部材31における凹部311の底に押し付けて固定することにより、図12に示すように、流路デバイス2の一部が傾斜面313の先端部313aに当接して弾性変形し、流路デバイス2の少なくとも一部が保持部材31の底面31bに対して傾斜した状態となる。また、この場合、流路デバイス2の第2部分2bは、保持部材31の底面31b側より下方(-Z方向)に向かって傾斜を持って延出することになる。これにて、図1のカートリッジ装置200の組み立てが完了する。
【0072】
(カートリッジ装置の取付方法)
次に、カートリッジ装置200の取付方法について説明する。なお、検体検査システム100のカートリッジ装置200以外の各構成要素が、当該検体検査システム100の不図示の筐体内の予め定められた位置に設けられていることを前提とし、特に温調装置91及び処理用装置92とカートリッジ装置200との相対位置に着目して説明する。図21及び図22は、カートリッジ装置を取り付ける場合の保持部材及び流路デバイスと温調装置の断面図である。なお、図21及び図22においては、図12の断面図と同様な断面の断面図が図示されている。
【0073】
まず、図1のカートリッジ装置200を、不図示の取付部材(例えば、カートリッジ装置200の一部を支持する任意の部材)に対して、カートリッジ装置200の一部を載置して固定することにより、カートリッジ装置200を取り付ける。この場合、カートリッジ装置200における図22の保持部材31の底面31bの高さが温調装置91の上面(+Z方向の面であり、水平な面)の高さと略同一となる。従って、図21に示すように、カートリッジ装置200を不図示の取付部材に固定する前に、下側(-Z方向)に傾斜していた流路デバイス2の第2部分2bの一部が、図22に示すように、温調装置91に押し付けられて弾性変形することにより、当該第2部分2bの一部が水平になって温調装置91の上面に密着して、流路デバイス2の図5の収容部21が温調装置91に密着することになる。なお、この場合、前述したように、流路デバイス2の第1部分2aは、図16のカバー部材33の突起333によって、図22の保持部材31に固定されているので、流路デバイス2の収容部21が温調装置91に確実に密着することになる。
【0074】
次に、図5の回動部材取付部301に回転駆動装置(図示省略)の伝達部材を接続する。そして、このようにカートリッジ装置200が不図示の取付部材に取り付けられた場合、図2及び図3に示すように、処理用装置92が貯留部材32の下側(-Z方向)に設けられることになる。これにて、カートリッジ装置200の取付を完了する。
【0075】
(検体検査システムの制御)
次に、検体検査システム100の制御について説明する。検体検査システム100の制御は任意であるが、例えば、検体検査システム100の制御ユニット(図示省略)の制御部が記録部のプログラムを実行することにより、以下で説明する検体処理及び検体測定を行うために、吐出吸引装置、回転駆動装置、検出装置、温調装置91、処理用装置92を適宜のタイミングで制御する。ここでは、各装置の制御を個別に説明した後に、核酸抽出処理及核酸検査処理を説明する。図23は、検体検査システムの側面図であり、図24は、検体検査システムの概略正面図である。なお、図23においては、説明の便宜上、複数の貯留部32bのうちの1つのみが図示されており、他の貯留部については図示が省略されている。
【0076】
(検体検査システムの制御-吐出吸引装置の制御)
まず、吐出吸引装置(図示省略)を制御する場合、制御ユニットの制御部は、吐出吸引装置との間で通信することにより、吐出吸引装置のポンプ又はアクチュエータを制御して、図3のピペットチップ1の吐出又は吸引を制御したり、又は、当該ピペットチップ1を上下方向(Z軸方向)前後方向(Y軸方向)、又は左右方向(X軸方向)に移動させることが可能となる。特に、左右方向(X軸方向)の移動については、ピペットチップ1が図2の長孔331と対向する位置で基本的に鉛直方向(Z軸方向)に沿って支持されているので、ピペットチップ1のピペットチップ側開口部11が図23のカバー部材33の図2の長孔331と対向した状態で移動することになる。図示例においては、ピペットチップ1を長孔331の第1端部331aで上下方向(Z軸方向)に移動させることにより、ピペットチップ側開口部11を図2の流路デバイス側開口部22に対して近づけたり(図24)遠ざけたり(図23)することが可能となる。また、ピペットチップ1を長孔331の第2端部331bで上下方向(Z軸方向)に移動させることにより、ピペットチップ側開口部11を図5の貯留部材32の開口部302を介して貯留部32bに対して出し入れすることが可能となる。なお、ピペットチップ1の上下方向への移動は、必ずしも長孔331の端部である必要はない。例えば、図15の例においては、長孔331の長手方向中央付近に略円形の幅広部331cが存在し、この幅広部331cでもピペットチップ1の上下方向への移動が可能な構成となっている。
【0077】
図示例においては、検体検査システム100中のXY平面上の位置であって、第2端部331bが設けられているXY平面上の位置が、ピペットチップ1又は貯留部32bに関する所定位置に対応する。
【0078】
(検体検査システムの制御-回転駆動装置の制御)
また、回転駆動装置(図示省略)を制御する場合、制御ユニットの制御部は、回転駆動装置との間で通信することにより、回動駆動装置の回動モーターを時計回り又は反時計回りに任意の角度だけ回動させることにより、回転駆動装置の伝達部材を介して図5の貯留部材32に対して回動力を伝達することにより、回動軸300を中心に時計回り又は反時計回りに任意の角度だけ回動させることが可能となる。
【0079】
(検体検査システムの制御-検出装置の制御)
また、検出装置(図示省略)を制御する場合、制御ユニットの制御部は、検出装置との間で通信することにより、図5の流路デバイス2の収容部21に収容された試料に含まれる目的成分を検出することが可能となる。
【0080】
(検体検査システムの制御-温調装置の制御)
また、図2及び図3の温調装置91を制御する場合、制御ユニットの制御部は、温調装置91との間で通信することにより、加熱又は冷却することが可能となる。
【0081】
(検体検査システムの制御-処理用装置の制御)
また、図2図3、及び図23の処理用装置92を制御する場合、制御ユニットの制御部は、処理用装置92との間で通信することにより、処理用装置92のアクチュエータを制御して、処理用装置92を上下方向(Z軸方向)に移動させることが可能となる。また、制御ユニットの制御部は、処理用装置92との間で通信することにより、図2の温調部921の周辺の加熱手段を用いて加熱することが可能となり、また、分離部922の周辺の磁界発生手段(ネオジウム磁石、電磁石等)を介して磁界を印加することが可能となる。特に、前述のように、図2の温調部921及び分離部922が、貯留部材32が回動した場合に各貯留部32bと対向する位置に設けられているので、所定の貯留部32bを温調部921と対向する位置に回動させた状態で、処理用装置92を上側(+Z方向)に移動させた場合、当該貯留部32bが温調部921に挿入され、当該貯留部32bを加熱することが可能となる。また、同様にして、当該貯留部32bを分離部922と対向する位置に回動させた状態で、処理用装置92を上側(+Z方向)に移動させた場合、図23に示すように、貯留部32bが分離部922に挿入され、当該貯留部32bに磁界を印加することが可能となる。なお、この場合、図示例においては、当該貯留部32bに隣接する他の貯留部が、当該貯留部32bよりも短くなっているので、当該他の貯留部が処理用装置92と干渉することを防止できるので、所定の貯留部32bが温調部921又は分離部922に確実に挿入されることになる。
【0082】
なお、検体検査システム100中のXY平面上の位置であって、処理用装置92の温調部921及び分離部922が設けられているXY平面上の位置が、処理用装置92に関する所定位置に対応する。
【0083】
(検体処理)
次に、検体検査システム100を用いて行われる検体処理について説明する。本明細書においては、検体処理の一例として、核酸抽出処理について説明する。核酸抽出処理とは、検体中に含まれる検査対象となる核酸を細胞や結合タンパク質から分離したり、核酸を含む試料溶液より後段の核酸検出において反応阻害等を生じる物質を除去したりする処理であり、公知の核酸抽出のプロトコールに従って、核酸を核酸検出に適した状態とする処理である。
【0084】
例えば、前述のように、カートリッジ装置200を組み立てる場合に、図13及び図14の1つの貯留部32bに核酸を含む検体を貯留させ、他の複数の貯留部32bに、カオトロピック剤や界面活性剤を含む変性試薬、磁性ビーズを含む試薬、DNAポリメラーゼ、dNTP等を含む核酸増幅試薬及び洗浄液等をそれぞれ貯留させた状態でカートリッジ装置200を組み立てることができる。
【0085】
核酸抽出処理は、例えば下記の手順で実施される。図13及び図14に示す貯留部32bのうち1つに貯留されている試薬を、該貯留部32bに開口部302を介して挿入されたピペットチップ1で吸引する。試薬を吸引・保持したピペットチップ1は、該貯留部32bの開口部上端より上側(+Z方向)に移動し、次いで検体を貯留する他の貯留部32bに、開口部を介して下側(-Z方向)に移動することで挿入され、その位置で前記試薬を吐出する。吐出された試薬と検体が混合され、検体の所望の反応が得られる。試薬と混合した検体を、ピペットチップ1でその場で吸引吐出して、さらに混合させてもよい。この際、変性試薬を吸引・保持したピペットチップ1は、例えば図2の長孔331の第2端部331bの位置で上下方向にのみ移動し、貯留部材32が回動軸300を中心に回転することで、液体の吸引/吐出を要する貯留部32bの開口部302がピペットチップ側開口部11に対向する位置まで移動する。なお、液状の検体を用いる場合は、試薬ではなく検体をピペットチップ1で吸引吐出することもできるが、検体のコンタミネーション防止の観点では、試薬を吸引吐出することが好ましい。ここでいう試薬としては、特に限定されるものではないが、一般的にはタンパク変性剤であるカオトロピック剤や、SDS等の界面活性剤が含まれる変性試薬が使用される。同様にして、試薬と混合した後の検体に他の試薬を注入し、混合することができる。
【0086】
前記検体は、必要に応じて加温してもよい。この場合、例えば、図4に示す温調部921を下側から上方(+Z方向)に移動させて、前記検体を含む貯留部32bに接触又は近接させることができる。ここで、温調部921ではなく、貯留部材32を下方(-Z方向)に移動させてもよいが、検体の飛びはね防止等の観点から、温調部921を移動させることが好ましい。
【0087】
また、前記検体から、核酸検出に不要な物質、核酸検出を阻害する物質等を除去する精製工程を設けてもよい。例えば、検体に目的物質を捕捉する磁性粒子を懸濁した粒子液を加え、混合反応させた後、該磁性粒子を集磁して、不要物質等を含む液体を除去することができる。また、集磁した磁性粒子に洗浄液を加え、懸濁した後、集磁・液体除去を行うことを数回繰り返すことで、残留する不要物質等をさらに除去することができる。前記集磁は、例えば、図4に示す分離部922を下側から上方(+Z方向)に移動させて、目的とする貯留部32bに接触又は近接させることで実行できる。分離部922ではなく、貯留部材32を下方(-Z方向)に移動させてもよいが、検体の飛びはね防止等の観点から、分離部922を移動させることが好ましい。
【0088】
(検体測定)
次に、検体検査システム100において行われる検体測定について説明する。本明細書においては、検体測定の一例として、核酸増幅法を用いた核酸検出(核酸検査処理)について説明する。核酸増幅法を用いた核酸検出においては、検査対象となる核酸は、上記に例示したような検体処理によって検査に適した状態とした後、核酸増幅試薬と混合される。核酸増幅試薬は、例えば、リアルタイムPCRを行う場合は、DNAポリメラーゼ、dNTP等を含むものを使用する。核酸増幅試薬についても、他の試薬と同様に、予め1つの貯留部32bに貯留させておいたものをピペットチップ1を用いて吸引し、処理後の核酸を含む検体が貯留された他の貯留部32b内に吐出する。
【0089】
核酸増幅試薬と混合された検体(増幅前検体)を、ピペットチップ1を用いて吸引する。増幅前検体を吸引・保持したピペットチップ1は、貯留部32bの開口部302より上方(+Z方向)に移動した後、長孔331の長手方向に沿って図15及び図16における第1端部331aに向かって(+X方向)、原則として高さを変えずに移動する。移動時のピペットチップ1の高さは、ピペットチップ1が保持する検体の漏れ等の影響をより小さくするため、移動が妨げられない程度に低くすることが好ましい。
【0090】
ピペットチップ1に保持された増幅前検体は、核酸増幅反応用デバイスとして図6~8に例示される流路デバイス2の内部に注入される。図19に示す例においては、流路デバイス2の開口部22は、流路デバイス2を保持部材31にセットした状態で保持部材31の上側に露出する。ピペットチップ1の開口部11は、露出した流路デバイス側開口部22の上側から鉛直に下方(-Z方向)に移動して、該流路デバイス側開口部22に接触し、増幅前検体を該流路デバイス側開口部22に向かって吐出する。
【0091】
流路デバイス2内部の複数の収容部21は、それぞれ異なるプライマー、プローブ等を予め備えておいてもよい。注入された増幅前検体中に含まれる、核酸、DNAポリメラーゼ、dNTP等と混合されることにより、核酸増幅反応を実行することが可能となる。なお、収容部21は、予めDNAポリメラーゼ、dNTP等も予め備えていてもよく、また、前記核酸増幅試薬がプライマー、プローブ等も含んでいてもよい。
【0092】
流路デバイス2は、図22に例示するように温調装置91に密着した状態で設置される。温調装置91は、流路デバイス2の収納部21に収納された検体に対して、予めプログラムされた所望の温度変化をもたらす。温度変化のプログラムは、特にリアルタイムPCRの場合、鋳型となるDNA、プライマー、プローブの塩基配列、流路デバイスの素材、形状等によって適宜変更することができる。
【0093】
なお、流路デバイス2を使用しない場合、増幅前検体は、上記の吐出吸引手段または手動で通常のPCRチューブ等に分注して、公知のサーマルサイクラー等を用いて核酸増幅反応を行ってもよい。
【0094】
(鉛直度の調整)
次に、ピペットチップ1の鉛直度の調整について説明する。図25図27は、検体検査システムの正面図である。任意の要因(例えば、吐出吸引装置に対するピペットチップ1の初期の取り付け時の誤差等、又は、振動等の周辺環境の影響等の環境要因等)により、図25に示すように、ピペットチップ1が鉛直方向(Z軸方向)からずれた状態で、吐出吸引装置に支持される場合がある。この場合、前述の各処理における任意のタイミングで、ピペットチップ1を調整部332側(+X方向)に移動させる場合に、ピペットチップ1が水平方向から調整部332の開拡部に接触して、調整部332の内部に案内され、図26に示すように調整部332の内部と当接することにより、当接した場合に調整部332から受ける力により、ピペットチップ1の吐出吸引装置による支持が修正されて、図27に示すようにピペットチップ1が鉛直方向(Z軸方向)に沿うように支持されて鉛直度が調整されることになる。従って、流路デバイス2の流路デバイス側開口部22に対して、ピペットチップ側開口部11を挿入して、試料を確実に注入することが可能となる。
【0095】
(実施の形態の効果)
このように実施の形態によれば、ピペットチップ1の鉛直度をピペットチップ1との接触によって調整することにより、流路デバイス側開口部22に対するピペットチップ1の位置を調整する調整部332を備えることにより、例えば、ピペットチップ1の鉛直度を調整し、流路デバイス側開口部22に対するピペットチップ1の位置を調整することができるので、流路デバイス2の路デバイス側開口部22に対するピペットチップ1の位置を調整することが可能となる。
【0096】
また、調整部332はピペットチップ1が水平方向から当接される当接部を含むことにより、例えば、ピペットチップ1の上下方向(Z軸方向)の移動を行うことなく、ピペットチップ1の鉛直度を容易に調整することが可能となる。
【0097】
また、検体中の検査対象を検査に適した状態とする貯留部材32を備えることにより、例えば、カートリッジ装置200を用いて試料の処理及び検査の両方を行うことができるので、カートリッジ装置200の利便性を向上させることが可能となる。
【0098】
また、検査対象が核酸であり、処理が核酸抽出であることにより、例えば、カートリッジ装置200を用いて核酸の抽出及び抽出した核酸の検査の両方を行うことができるので、カートリッジ装置200の利便性を向上させることが可能となる。
【0099】
また、保持部材31又はカバー部材33の少なくとも一部は、ピペットチップ1が流路デバイス2及び貯留部材32の上側(+Z方向)を貯留部材32と流路デバイス2との間で移動する場合にピペットチップ1のピペットチップ側開口部11と対向する底部を形成することにより、例えば、試料がカートリッジ装置200よりも下側(-Z方向)に落ちることを防止し、試料による汚損を防止することが可能となる。
【0100】
また、カバー部材33は、貯留部材32と対向する位置から流路デバイス2と対向する位置に至る、上下方向(Z軸方向)に貫通する長孔331を有するにより、例えば、ピペットチップ1のピペットチップ側開口部11をカバー部材33の上部33aよりも下側(-Z軸)に設けた状態で、長孔3311に沿ってピペットチップ1を移動させることができるので、試料が飛び散って汚損してしまうリスクを軽減することが可能となる。
【0101】
〔III〕実施の形態に対する変形例
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0102】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、前記に記載されていない課題を解決したり、前記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。
【0103】
(形状、数値、構造、時系列について)
上記実施の形態や図面において例示した構成要素に関して、形状、数値、又は複数の構成要素の構造若しくは時系列の相互関係については、本発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。
【0104】
(弾性変形について)
上記実施の形態では、図22の流路デバイス2が弾性変形することにより、流路デバイス2の第2部分2bが温調装置91に対して密着する場合について説明したが、これに限らない。例えば、流路デバイス2の代わり、あるいは、流路デバイス2と共に、保持部材31又はカバー部材33が弾性変形することにより、流路デバイス2の第2部分2bが温調装置91に対して密着するように構成してもよい。
【0105】
(カートリッジ装置について)
【0106】
上記実施の形態では、カートリッジ装置200を用いて核酸抽出及び核酸検査を行う場合について説明したが、これに限らない。例えば、カートリッジ装置200の形状を任意に変更して、核酸抽出又は核酸検査の一方のみを行うための装置として構成してもよい。具体的には、左右方向(X軸方向)において、図9の保持部材31における第2開口部314と、凹部311の間に対応する位置で分割して、検体処理又は検体測定の一方のみを行うための装置として構成してもよい。
【0107】
(調整部について(その1))
上記実施の形態では、調整手段として図15に示すように、調整部332をカバー部材33に1個のみ設ける場合について説明したが、これに限らない。例えば、調整部332と同様な形状の調整部(調整手段)を、カバー部材33の上部33aにおける長孔331の第2端部331bに対応する一部に設けてもよい。この場合の調整部については、第1端部331a側(+X方向)に向かって開いている開拡部を備えるように構成してもよい。
【0108】
また、カバー部材33の上部33aにおける任意の位置に、下側(-Z方向)に向かうにつれて小径となるすり鉢状の孔(挿入孔)を調整手段として設けて、定期的にピペットチップ1の先端を、このすり鉢状の孔の上側(+Z方向)から当該孔に挿入することにより、ピペットチップ1の吐出吸引装置による支持を修正し、ピペットチップ1の鉛直度を調整するように構成してもよい。なお、この場合、カバー部材33における中空部33c側に前述の鉢状の孔を形成するためのボス(突出部)を設けてもよい。また、この場合、当該孔の最も広い部分(最も上側(+Z方向)の部分)の径については、流路デバイス側開口部22よりも大径となるように設定することとする。このように構成することにより、調整手段はピペットチップ1の先端が上側(+Z方向)から挿入される挿入孔を含むことにより、例えば、ピペットチップ1の先端を挿入孔に挿入することにより、鉛直度を確実に調整すること可能となる。
【0109】
(調整部について(その2))
上記実施の形態では、ピペットチップ1を図26の調整部332に当接させて、ピペットチップ1の吐出吸引装置による支持を修正することにより、ピペットチップ1の鉛直度を調整する場合について説明したが、これに限らない。例えば、調整部332の内部の形状を下側(-Z方向)に向かうにつれて小径となるように構成した上で、調整部332内でピペットチップ1を下側(-Z方向)に移動させた場合に、ピペットチップ1が鉛直方向(Z軸方向)を向くように案内することにより、ピペットチップ1の鉛直度を調整するように構成してもよい。また、前述の「(調整部について(その1))」で説明した調整部も同様に構成してもよい。また、これらの調整部を、カバー部材33における任意の位置に設けてもよい。
【0110】
(調整部について(その3))
上記実施の形態の吐出吸引装置(図示省略)又はピペットチップ1に対して、ピペットチップ1の鉛直度を測定するための任意のセンサを設けて、制御ユニット(図示省略)の制御部が、当該センサと通信することにより、ピペットチップ1の鉛直度を任意のタイミングで把握できるように構成してもよい。この場合、制御ユニット(図示省略)の制御部は、センサの検出値に基づいて、ピペットチップ1が鉛直方向(Z軸方向)に対して傾いていることを検出した場合に、ピペットチップ1の少なくとも一部を、実施の形態で説明した調整部332、又は「(調整部について(その1))」で説明した長孔331の第2端部331b側に設けられている調整部に対して当接させる処理を行ったり、あるいは、ピペットチップ1の先端部を「(調整部について(その1))」で説明したすり鉢状の孔に挿入する処理を行ったりして、鉛直度を調整するように構成してもよい。
【0111】
(調整部について(その4))
上記実施の形態では、調整手段をカバー部材33に設ける場合について説明したが、これに限らず、例えば、保持部材31に設けてもよい。具体的には任意であるが、例えば、図2における長孔331を介して露出している保持部材31の一部に、「(調整部について(その1))」で説明したすり鉢状の孔又は調整部332の如き突出した調整部を調整手段として設けてもよい。また、カバー部材33の任意の位置に貫通している開口部を設けて、保持部材31における当該開口部を介して露出する部分に、鉢状の孔又は調整部332の如き突出した調整部を調整手段を設けてもよい。
【0112】
(調整部について(その5))
上記実施の形態の検体検査システム100の構成を任意に変更した上で、調整部を設けてもよい。図28は、変形例の検体検査システムの平面図であり、図29は、変形例の検体検査システムの側面図である。なお、図28及び図29のカートリッジ装置600は、図2の実施の形態のカートリッジ装置200のカバー部材33と同様なカバー部材又は後述する変形例の「(カバー部材について)」で説明する長孔を有さないカバー部材を含む任意のカバー部材を備えて構成することものできるし、あるいは、カバー部材を備えずに構成することもできる。
【0113】
図28及び図29の検体検査システム500は、特記する事項を除いて、実施の形態の検体検査システム100と同様であることとする。検体検査システム500は、温調装置51、及びカートリッジ装置600を備えている。なお、温調装置51は、実施の形態の温調装置91と同様である。カートリッジ装置600は、流路デバイス6及び保持部材71を備えている。
【0114】
流路デバイス6は、実施の形態の流路デバイス2と同様にして構成されており、特に、全体として平板の矩形形状のものであり、収容部61、及び流路デバイス側開口部62を備えている。なお、この収容部61、及び流路デバイス側開口部62は、実施の形態の同一名称の構成要素と同様である。
【0115】
保持部材71は、実施の形態の保持部材31と同様にして構成されており、特に、図29に示すように、温調装置51との間に流路デバイス6を挟んで当該流路デバイス6を保持するものであり、また、図28に示すように、第1開口部711、及び調整部712を備えている。第1開口部711は、貫通している開口部であり、また、図28に示すように、流路デバイス6の一部を露出させるものである。調整部712は、ピペットチップ1の鉛直度をピペットチップ1との接触によって調整することにより、流路デバイス側開口部62に対すピペットチップ1の位置を調整する調整手段であり、挿入孔である。そして、この挿入孔については、下側(-Z方向)に向かうにつれて小径となるように構成し、当該孔の最も広い部分(最も上側(+Z方向)の部分)の径については、流路デバイス側開口部62よりも大径となるように設定することとする。このように構成した場合、ピペットチップ1が、不図示のカバー部材の長孔を介して流路デバイス側開口部62側(つまり、調整部712側)に移動した場合において、当該ピペットチップ1が鉛直方向(Z軸方向)から多少ずれていたとしても、ピペットチップ1を下側(-Z方向)へ移動させる場合に、当該ピペットチップ1の先端部を調整部712に当接させつつ流路デバイス側開口部62に案内することができるので、ピペットチップ1の鉛直度を調整することが可能となる。
【0116】
(流路デバイス側開口部について)
上記実施の形態では、流路デバイス側開口部22について、核酸を含む液体の試料を収容部21に流入させるための入口として機能する部分であるものと説明したが、ピペットチップ1のピペットチップ側開口部11を流路デバイス側開口部22に挿入した状態で吸引した場合、収容部21に収容されている試料を吸引することができるので、流路デバイス側開口部22を介して、ピペットチップ1によって試料を流入又は流出させることが可能となる。
【0117】
(カバー部材について)
上記実施の形態では、カバー部材に長孔331が設けられていたが、長孔を設けない形態とすることができる。例えば、チップの先端部分を鉛直方向に挿入可能な孔を、図15の第1端部331a及び第2端部331b若しくは幅広部331cの位置に相当する2箇所、または3箇所に設け、他の部分は開口を有しない構造としてもよい。このように構成した場合、ピペットチップ1がカバー部材33の上側(+Z方向)を移動する場合に、カバー部材33における当該ピペットチップ1の移動中に対向する部分が、ピペットチップ1のピペットチップ側開口部11と対向する底部を形成することとなる。
【0118】
(ピペットチップの移動について)
上記実施の形態で説明した核酸検査処理において、試料を流路デバイス2に注入する場合に、ピペットチップ1を図2の長孔331に沿って第2端部331b側から第1端部331a側に移動させものと説明したが、この場合、ピペットチップ側開口部11の高さを、上下方向(Z軸方向)において保持部材31とカバー部材33の上部33aとの間の高さに維持した状態で移動させてもよいし、あるいは、ピペットチップ側開口部11の高さを、カバー部材33の上部33aよりも上側(+Z方向)の高さに維持した状態で移動させてもよい。また、ピペットチップ側開口部11の高さを、カバー部材33の上部33aよりも上側(+Z方向)の高さに維持した状態で移動させる場合、ピペットチップ1を図2の長孔331と対向せずに、カバー部材33の上部33aと対向する任意の位置を移動させてもよい。
【0119】
(ピペットチップについて)
上記実施の形態では、吐出吸引手段がピペットチップ1である場合について説明したが、これに限らない。例えば、ピペットチップ1と同様な役割を果たす任意のもの(ノズル等)を、吐出吸引手段として用いてもよい。
【0120】
(組み合わせについて)
上記実施の形態の技術及び変形例の技術を任意に組み合わせてもよい。例えば、調整手段として、実施の形態で説明した調整部332に加えて、変形例の「(調整部について(その1))」で説明した鉢状の孔を加えてもよいし、あるいは、変形例の「(調整部について(その4))」で説明した保持部材に設けられる調整手段を追加してもよい。
【0121】
(付記)
付記1の検査装置は、検査対象を含む試料を収容する収容デバイスと、前記収容デバイスを保持する保持部材と、前記保持部材を上側から覆うカバー部材と、を備え、前記収容デバイスは、上面と底面を有し、上面に前記試料を吐出吸引手段によって流入又は流出させるための開口部を有し、前記保持部材及びカバー部材の少なくとも一方に、前記吐出吸引手段の鉛直度を前記吐出吸引手段との接触によって調整することにより、前記開口部に対する前記吐出吸引手段の位置を調整する調整手段を備える。
【0122】
付記2の検査装置は、付記1に記載の検査装置において、前記吐出吸引手段がピペットチップである。
【0123】
付記3の検査装置は、付記1又は2に記載の検査装置において、前記調整手段は、前記吐出吸引手段が水平方向から当接される当接部、を含む。
【0124】
付記4の検査装置は、付記1から3のいずれか一項に記載の検査装置において、前記調整手段は、前記吐出吸引手段の先端が上側から挿入される挿入孔、を含む。
【0125】
付記5の検査装置は、付記1から4のいずれか一項に記載の検査装置において、検体中の前記検査対象を検査に適した状態とする検体処理デバイス、を備え、前記収容デバイスは、前記検体処理デバイスで処理された前記検査対象を検査するために前記検査対象を含む前記試料を収容するデバイスであって、前記検体処理デバイスに対して所定間隔を隔てて設けられているデバイスである。
【0126】
付記6の検査装置は、付記5に記載の検査装置において、前記検査対象が核酸であり、前記処理が核酸抽出である。
【0127】
付記7の検査装置は、付記5又は6に記載の検査装置において、前記保持部材が前記収容デバイス及び前記検体処理デバイスを保持し、前記保持部材又はカバー部材の少なくとも一部は、前記吐出吸引手段が前記収容デバイス及び前記検体処理デバイスの上側を前記検体処理デバイスと前記収容デバイスとの間で移動する場合に前記吐出吸引手段の前記開口部と対向する底部を形成する。
【0128】
付記8の検査装置は、付記7に記載の検査装置において、前記カバー部材は、前記検体処理デバイスと対向する位置から前記収容デバイスと対向する位置に至る、上下方向に貫通する長孔を有する。
【0129】
(付記の効果)
付記1に記載の検査装置によれば、吐出吸引手段の鉛直度を吐出吸引手段との接触によって調整することにより、開口部に対する吐出吸引手段の位置を調整する調整手段を備えることにより、例えば、吐出吸引手段の鉛直度を調整し、開口部に対する吐出吸引手段の位置を調整することができるので、収容デバイスの開口部に対する吐出吸引手段の位置を調整することが可能となる。
【0130】
付記2に記載の検査装置によれば、吐出吸引手段がピペットチップであることにより、例えば、収容デバイスの開口部に対するピペットチップの位置を調整することが可能となる。
【0131】
付記3に記載の検査装置によれば、調整手段は吐出吸引手段が水平方向から当接される当接部を含むことにより、例えば、吐出吸引手段の上下方向の移動を行うことなく、吐出吸引手段の鉛直度を容易に調整することが可能となる。
【0132】
付記4に記載の検査装置によれば、調整手段は吐出吸引手段の先端が上側から挿入される挿入孔を含むことにより、例えば、吐出吸引手段の先端を挿入孔に挿入することにより、鉛直度を確実に調整すること可能となる。
【0133】
付記5に記載の検査装置によれば、検体中の検査対象を検査に適した状態とする検体処理デバイスを備えることにより、例えば、検査装置を用いて試料の処理及び検査の両方を行うことができるので、検査装置の利便性を向上させることが可能となる。
【0134】
付記6に記載の検査装置によれば、検査対象が核酸であり、処理が核酸抽出であることにより、例えば、検査装置を用いて核酸の抽出及び抽出した核酸の検査の両方を行うことができるので、検査装置の利便性を向上させることが可能となる。
【0135】
付記7に記載の検査装置によれば、保持部材又はカバー部材の少なくとも一部は、吐出吸引手段が収容デバイス及び検体処理デバイスの上側を検体処理デバイスと収容デバイスとの間で移動する場合に吐出吸引手段の開口部と対向する底部を形成することにより、例えば、試料が検査装置よりも下側に落ちることを防止し、試料による汚損を防止することが可能となる。
【0136】
付記8に記載の検査装置によれば、カバー部材は、検体処理デバイスと対向する位置から収容デバイスと対向する位置に至る、上下方向に貫通する長孔を有するにより、例えば、吐出吸引手段の開口部をカバー部材の上部よりも下側に設けた状態で、長孔に沿って吐出吸引手段を移動させることができるので、試料が飛び散って汚損してしまうリスクを軽減することが可能となる。
【符号の説明】
【0137】
1 ピペットチップ
2 流路デバイス
2a 第1部分
2b 第2部分
2c 突出部
6 流路デバイス
11 ピペットチップ側開口部
21 収容部
22 流路デバイス側開口部
31 保持部材
31a 上面
31b 底面
31c 側面
32 貯留部材
32a 円盤部
33 カバー部材
33a 上部
33b 側部
33c 中空部
51 温調装置
61 収容部
62 流路デバイス側開口部
71 保持部材
91 温調装置
92 処理用装置
100 検体検査システム
200 カートリッジ装置
300 回動軸
311 凹部
312 第1開口部
313 傾斜面
313a 先端部
314 第2開口部
314a 段部
301 回動部材取付部
302 開口部
32b 貯留部
331 長孔
331a 第1端部
331b 第2端部
331c 幅広部
332 調整部
333 突起
335 係合部
500 検体検査システム
600 カートリッジ装置
711 第1開口部
712 調整部
921 温調部
922 分離部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29