(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-12
(45)【発行日】2023-09-21
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 9/08 20060101AFI20230913BHJP
B60C 9/02 20060101ALI20230913BHJP
B60C 9/04 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
B60C9/08 J
B60C9/02 B
B60C9/02 Z
B60C9/04 Z
(21)【出願番号】P 2019225709
(22)【出願日】2019-12-13
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100111039
【氏名又は名称】前堀 義之
(72)【発明者】
【氏名】三宅 正也
【審査官】増永 淳司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0305204(US,A1)
【文献】特開2017-109517(JP,A)
【文献】特開2009-214628(JP,A)
【文献】特許第5629356(JP,B2)
【文献】特開2017-109367(JP,A)
【文献】特開2006-027010(JP,A)
【文献】国際公開第2008/099473(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0154705(US,A1)
【文献】特開2013-082397(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 9/08
B60C 9/02
B60C 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部と、
前記トレッド部の両端からタイヤ径方向内側にそれぞれ延びる一対のサイドウォール部と、
前記トレッド部の前記タイヤ径方向内側に位置する中央部と、前記中央部の両端から前記タイヤ径方向内側にそれぞれ延び、前記サイドウォール部のタイヤ幅方向内側にそれぞれ位置する一対の第1サイド部とを備える第1プライと、
前記中央部のタイヤ径方向外側に配置されて、前記トレッド部に位置する内端部を有し、前記内端部から前記タイヤ径方向内側に延び、前記一対のサイドウォール部のいずれかにおいて前記第1サイド部のタイヤ幅方向外側に位置する第2サイド部をそれぞれ有する一対のプライ片を備える、不連続な第2プライと、
を備え、
前記第1プライには、複数の通気孔が設けられており、
前記中央部の前記通気孔の密度は、前記一対の第1サイド部の前記通気孔の密度よりも高い、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記一対の第1サイド部の前記通気孔の密度はゼロを含む、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記中央部は、前記プライ片の前記内端部に対して前記タイヤ幅方向内側にそれぞれ隣接した一対の第1領域と、前記一対の第1領域それぞれに対して前記タイヤ幅方向内側に隣接した第2領域とを備え、
前記第1領域の前記通気孔の密度は、前記第2領域の前記通気孔の密度よりも高い、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記中央部は、前記プライ片の前記内端部に対して前記タイヤ幅方向内側にそれぞれ隣接した一対の第1領域と、前記一対の第1領域に対して前記タイヤ幅方向内側にそれぞれ隣接した一対の第2領域と、前記一対の第2領域それぞれに対して前記タイヤ幅方向内側に隣接した第3領域とを備え、
前記通気孔の密度は、前記第1領域、前記第3領域、及び前記第2領域の順で高い、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記第1領域は、前記中央部のうち、前記内端部よりも前記タイヤ幅方向内側の第1部分から、前記内端部よりも前記タイヤ幅方向外側の第2部分までの幅を有し、
前記第1領域の幅は、0mmよりも広く50mm以下である、請求項3又は4に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記第1プライの表面及び前記第2プライの表面にはそれぞれ、複数の繊維からなるブリーダーコードが配置されており、
前記第1プライに配置された前記ブリーダーコードの密度は、前記第2プライに配置された前記ブリーダーコードの密度よりも高い、請求項1から5のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示された空気入りタイヤのカーカスプライは、一対のビード部間で連続する第1プライと、この第1プライのタイヤ径方向外側に配置された不連続な第2プライとを備える。第2プライは、トレッド部から一対のサイドウォール部のいずれかにそれぞれ延びる一対のプライ片を備える。トレッド部の中央、より具体的には一対のプライ片の内端部間には、2枚のプライ片がいずれも存在しない領域、つまり中抜き部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一対のプライ片の内端部間にはプライ片が存在しない領域が形成されるため、第2プライの中抜き部には空気が入り込んで残留するというエア入りが生じる虞がある。この中抜き部へのエア入りについて、特許文献1では何も考慮されていない。
【0005】
本発明は、中抜き部を有するカーカスプライを備える空気入りタイヤにおいて、中抜き部へのエア入りを抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、トレッド部と、前記トレッド部の両端からタイヤ径方向内側にそれぞれ延びる一対のサイドウォール部と、前記トレッド部の前記タイヤ径方向内側に位置する中央部と、前記中央部の両端から前記タイヤ径方向内側にそれぞれ延び、前記サイドウォール部のタイヤ幅方向内側にそれぞれ位置する一対の第1サイド部とを備える第1プライと、前記中央部のタイヤ径方向外側に配置されて、前記トレッド部に位置する内端部を有し、前記内端部から前記タイヤ径方向内側に延び、前記一対のサイドウォール部のいずれかにおいて前記第1サイド部のタイヤ幅方向外側に位置する第2サイド部をそれぞれ有する一対のプライ片を備える、不連続な第2プライと、を備え、前記第1プライには、複数の通気孔が設けられており、前記中央部の前記通気孔の密度は、前記一対の第1サイド部の前記通気孔の密度よりも高い、空気入りタイヤを提供する。
【0007】
第2プライは一対のプライ片を備え、不連続である。つまり、一対のプライ片の内端部の間には、プライ片が存在しない中抜き部がある。かかる中抜き部のある第2プライを採用したことにより、第2プライが1枚の連続したプライである場合と比較して、軽量化とそれによる転がり抵抗の低減を図ることができる。また、第1プライと第2プライは、サイドウォール部のタイヤ幅方向内側に位置するサイド部をそれぞれ備えるため、サイドウォール部の剛性とそれによる操縦安定性と耐カット性とを確保できる。
【0008】
空気入りタイヤ(グリーンタイヤ)の成形時に行われるタイヤ構成部材の圧接によって、中抜き部に存在する空気の大部分は押し出される。第1プライには複数の通気孔が形成されており、中抜き部が形成される中央部の通気孔の密度は、第1サイド部の通気孔の密度よりも高い。つまり、中抜き部を画定する第1プライの中央部には、空気の逃げ込みが可能な通気孔(空間)が点在して設けられている。よって、圧接によって出し切れなかった空気は、複数の通気孔に分散され、第1プライと対向部材の間に集中して介在しない。よって、中抜き部への局部的なエア入りを大幅に抑制できる。
【0009】
前記一対の第1サイド部の前記通気孔の密度はゼロを含む。
【0010】
つまり、本態様には、第1プライの第1サイド部に通気孔を形成しない構成が含まれる。よって、通気孔の形成に伴う第1サイド部の剛性低下を防止できる。その結果、サイドウォール部における剛性とそれによる操縦安定性と耐カット性とを確保できる。
【0011】
前記中央部は、前記プライ片の前記内端部に対して前記タイヤ幅方向内側にそれぞれ隣接した一対の第1領域と、前記一対の第1領域それぞれに対して前記タイヤ幅方向内側に隣接した第2領域とを備え、前記第1領域の前記通気孔の密度は、前記第2領域の前記通気孔の密度よりも高い。
【0012】
本態様では、プライ片の内端部と第1プライの段差によってエア入りが生じ易い第1領域の通気孔の密度を、第1領域よりもエア入りが生じ難い第2領域の通気孔の密度よりも高くしている。よって、中抜き部へのエア入りを抑制できるとともに、通気孔を過度に形成することに伴うトレッド部の剛性低下を防止できる。
【0013】
前記中央部は、前記プライ片の前記内端部に対して前記タイヤ幅方向内側にそれぞれ隣接した一対の第1領域と、前記一対の第1領域に対して前記タイヤ幅方向内側にそれぞれ隣接した一対の第2領域と、前記一対の第2領域それぞれに対して前記タイヤ幅方向内側に隣接した第3領域とを備え、前記通気孔の密度は、前記第1領域、前記第3領域、及び前記第2領域の順で高い。
【0014】
本態様によれば、プライ片の内端部と第1プライの段差によってエア入りが生じ易い第1領域の通気孔の密度を、第1領域よりもエア入りが生じ難い第2領域及び第3領域の通気孔の密度よりも高くしている。よって、プライ片の内端部近傍でのエア入りを抑制できるとともに、通気孔を過度に形成することに伴うトレッド部の剛性低下を防止できる。
【0015】
また、グリーンタイヤの成形時、両持ち構造の加圧ローラによってタイヤ構成部材を加圧する場合、加圧ローラの中央での加圧力が両端での加圧力よりも小さくなる。これに対して本態様では、加圧ローラの中央に位置する第3領域の通気孔の密度を第2領域の通気孔の密度よりも高くしている。よって、第1プライの第3領域と対向部材との間への空気の介在、つまりエア入りを抑制できる。
【0016】
前記第1領域は、前記中央部のうち、前記内端部よりも前記タイヤ幅方向内側の第1部分から、前記内端部よりも前記タイヤ幅方向外側の第2部分までの幅を有し、
前記第1領域の幅は、0mmよりも広く50mm以下である。
【0017】
本態様では、プライ片の内端部近傍でのエア入りを効果的に抑制できる。
【0018】
前記第1プライの表面及び前記第2プライの表面にはそれぞれ、複数の繊維からなるブリーダーコードが配置されており、前記第1プライに配置された前記ブリーダーコードの密度は、前記第2プライに配置された前記ブリーダーコードの密度よりも高い。
【0019】
本態様では、意図しないエア入りが生じても、ブリーダーコードを構成する繊維の隙間を通して空気を分散できる。よって、局部的なエア入りによる不具合を効果的に抑制できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、中抜き部を有するカーカスプライを備える空気入りタイヤにおいて、中抜き部へのエア入りを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る空気入りタイヤの子午線断面図。
【
図2】本発明の実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド部及びその周辺の子午線断面図。
【
図3】第1実施形態の第1プライと第2プライの展開図。
【
図4B】
図3の第2プライにおけるB-B線断面図。
【
図5】第2実施形態の第1プライと第2プライの展開図。
【
図6】第3実施形態の第1プライと第2プライの展開図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0023】
(第1実施形態)
図1及び
図2は、本発明の第1実施形態に係るゴム製の空気入りタイヤ(以下、タイヤという)1を示す。タイヤ1は、トレッド部2、一対のサイドウォール部3、及びリング状の一対のビード部4を備える。
【0024】
トレッド部2は、タイヤ幅方向(
図1において符号TWで示す。)に延びるトレッドゴム5を備える。トレッドゴム5の表面、つまり踏面には溝5aが設けられている。
【0025】
一対のサイドウォール部3は、トレッド部2の両端からタイヤ径方向(
図1において符号TR)の内側にそれぞれ延びるサイドゴム6をそれぞれ備える。
【0026】
一対のビード部4は、一対のサイドウォール部3のタイヤ径方向内側の端部にそれぞれ配置されている。個々のビード部4は、ビードコア7とビードフィラー8を備える。ビードコア7は、リング状に束ねられた多数の鋼線を備える。ビードフィラー8は、リング状で、トレッド部2及びサイドウォール部3を構成するゴムよりも硬質のゴムからなる。ビードフィラー8は、ビードコア7のタイヤ径方向外側に隣接して配置された基端8aと、基端8aとは反対側の先端8bとを備え、基端8aから先端8bに向かってタイヤ径方向外側へテーパ状に延びている。個々のビード部4は、ビードコア7とビードフィラー8とを包むように設けられたストリップゴム9を備える。
【0027】
タイヤ1は、ビード部4間にトロイダル状に掛け渡されたカーカス12を備える。本実施形態では、カーカス12は、第1カーカスプライ(以下、「第1プライ」と呼ぶ)11と、第2カーカスプライ(以下、「第2プライ」と呼ぶ)12とを備える。第2プライ14は中抜き部14aを有するプライであるが、第1プライ13は中抜き部を有しない通常のプライである。第1プライ11及び第2プライ12については後に詳述する。カーカス12の内側、つまりタイヤ1の最内周面には、インナーライナ10が設けられている。
【0028】
図2を参照すると、トレッド部2、より具体的にはカーカス12とトレッドゴム5との間には、無端状のベルト層18が設けられている。本実施形態では、ベルト層18は、2枚のベルト19,20を備える。ベルト19は、カーカス12のタイヤ径方向外側に隣接して配置され、ベルト20は、ベルト19のタイヤ径方向外側に隣接して配置されている。また、下層のベルト19のタイヤ幅方向の寸法は、上層のベルト20のタイヤ幅方向の寸法よりも大きく、ベルト19の端部19aは、ベルト20の端部20aよりもタイヤ幅方向外側に位置している。ベルト19,20は、スチール製又は有機繊維製のベルトコードをゴム被覆して形成されている。ベルト層18は、1枚のベルトで構成されていてもよいし、3枚以上のベルトを備えてもよい。
【0029】
ベルト層18のタイヤ径方向外側に隣接して、無端状のキャップ層22が設けられている。キャップ層22は、ベルト19,20の両方の端部19a,20aのいずれかをそれぞれ直接的に覆う幅狭の一対のエッジプライ23を備える。本実施形態のキャップ層22は、エッジプライ23のタイヤ径方向外側に隣接して配置され、端部19a,20aを含むベルト19,20全体を1枚で覆う幅広のキャッププライ24を備える。キャップ層22は、1枚又は3枚以上のプライを備えてもよい。また、キャップ層22をなくしてもよい。
【0030】
ベルト層18のタイヤ幅方向外側の両端の部分とカーカス12との間には、ゴム製で無端状の一対のパッド26がそれぞれ配置されている。パッド26の断面形状は偏平な三角形状である。ベルト19,20の端部19a,20a、エッジプライ23のタイヤ幅方向外側の端部23a、及びキャッププライ24の端部24aのタイヤ幅方向の位置は、パッド26のタイヤ幅方向の外側の端部26aと内側の端部26bとの間の領域、つまりパッド26が存在する領域に設定されている。パッド26をなくしてもよい。
【0031】
以下、カーカス12を構成する第1プライ13及び第2プライ14について説明する。
【0032】
図1及び
図2に示すように、第1プライ13は単一のプライであるが、第2プライ14は前述のように中抜き部14aを有する不連続なプライである。第2プライ14は一対のプライ片15から構成されている。
図3を参照すると、第1プライ13と第2プライ14のプライ片15はいずれも、間隔をあけて並設した複数本のコード30,31をゴムで被覆した帯状のシートである。
【0033】
図1及び
図2に示すように、第1プライ13は、トレッド部2のタイヤ径方向内側に位置する中央部13aと、中央部13aのタイヤ幅方向の両端からタイヤ径方向内側にそれぞれ延びる一対のサイド部(第1サイド部)13bとを備える。また、第1プライ13は、サイド部13bと連続して設けられ、ビード部4に対してタイヤ幅方向の内側から外側に巻き上げられた巻上部13cを備える。
【0034】
中央部13aは、トレッド部2においてインナーライナ10のタイヤ径方向外側に隣接して配置されている。
【0035】
サイド部13bは、中央部13aに連続して設けられ、サイドウォール部3においてインナーライナ10のタイヤ幅方向外側に隣接して配置されている。
【0036】
巻上部13cはサイドウォール部3で終端している。より具体的には、巻上部13cは、内側部13d、巻掛部13e、及び外側部13fを備える。内側部13dは、ビード部4、つまりビードコア7とビードフィラー8よりもタイヤ径方向内側にプライ片15を介して配置されている。巻掛部13eは、内側部13dと連続して設けられて、プライ片15を介してビードコア7に巻き掛けられている。外側部13fは、巻掛部13eと連続して設けられ、ビード部4よりもタイヤ径方向外側にプライ片15を介して配置されている。外側部13fの端部が第1プライ13の端部13gを構成している。端部13gは、ビードフィラー8の先端8bよりもタイヤ径方向外側であって、トレッド部2よりもタイヤ径方向内側に位置する。
【0037】
第2プライ14は、第1プライ13に対してタイヤ径方向外側に隣接して配置されており、一対のプライ片15により構成された不連続なプライである。プライ片15は、ベルト層18と第1プライ13の中央部13aとの間に配置された内端部15aを有する。内端部15aとベルト層18との間にはパッド26が介在している。
【0038】
プライ片15の内端部15aのタイヤ幅方向の位置は、トレッド部2におけるタイヤ幅方向外側の領域に、より具体的にはベルト層18を構成するベルト19,20の端部19a,20aのいずれよりもタイヤ幅方向内側の領域に設定されている。トレッド部2におけるタイヤ幅方向中央の領域、より具体的には一対のプライ片15の内端部15a間の領域に、中抜き部14aが設けられている。この中抜き部14aでは、第2プライ14は存在せず、第1プライ13の中央部13aのみが存在する。
【0039】
プライ片15は、内端部15aからタイヤ径方向内側に延びるサイド部(第2サイド部)15bと、ビードコア7に対してタイヤ幅方向の内側から外側に巻き上げられた巻上部15cとを備える。
【0040】
サイド部15bは、サイドウォール部3において第1プライ13のサイド部13bのタイヤ幅方向外側に隣接して配置されている。
【0041】
巻上部15cは、サイド部15bと連続して設けられ、サイドウォール部3で終端している。巻上部15cは、内側部15d、巻掛部15e、及び外側部15fを備える。内側部15dは、ビード部4のタイヤ径方向内側、より具体的にはビード部4と第1プライ13の内側部13dとの間に配置されている。巻掛部15eは、内側部15dと連続して設けられ、ビードコア7に巻き掛けられている。より具体的には、巻掛部15eは、ビードコア7と第1プライ13の巻掛部13eとの間に配置されている。外側部15fは、巻掛部15eと連続して設けられ、ビード部4よりもタイヤ径方向外側に配置されている。外側部15fのうち、タイヤ径方向内側に位置する一部はビード部4のタイヤ径方向外側に重ねて配置され、残りはサイド部15bのタイヤ径方向外側に重ねて配置されている。外側部15fの端部がプライ片15の外端部15gを構成している。外端部15gは、ビードフィラー8の先端8bよりもタイヤ径方向外側であって、トレッド部2、より具体的には第1プライ13の端部13gよりもタイヤ径方向内側に位置する。
【0042】
第2プライ14が中抜き部14aを備える場合、一対の内端部15a間にプライ片15が存在しない領域が形成されるため、その領域(中抜き部14a)に空気が入り込むというエア入りが生じる虞がある。
【0043】
中抜き部14aへのエア入りを抑制するために、本実施形態では
図3に示すように、第1プライ13には複数の通気孔33が設けられている。また、
図4A及び
図4Bに示すように、第1プライ13の表面と第2プライ14の表面にはブリーダーコード34がそれぞれ配置されている。第2プライ14のプライ片15には、通気孔33は設けられていない。
図3は第1実施形態のカーカス12を展開した状態を示し、
図4Aは
図3のA-A線断面図を示し、
図4Bは
図3における第2プライ14のみのB-B線断面図を示す。これらの図には、通気孔33及びブリーダーコード34を明確に示すために誇張して描いている。
【0044】
図3及び
図4Aに破線で示すように、第1プライ13には、タイヤ周方向(
図3において上下方向)に間隔をあけて複数のコード30が埋設されている。個々のコード30は、トレッド部2においてタイヤ幅方向TWに延び、サイドウォール部3においてタイヤ径方向に延びている。
図3及び
図4Bを参照すると、第2プライ14のプライ片15には、複数のコード31が並設されている。個々のコード31は、コード30に対して平行に延び、タイヤ周方向に間隔をあけて配置されている。これらのコード30,31はいずれも、0.1mm以上3mm以下の間隔をあけて配置されている。個々のコード30,31の直径は概ね0.6mmである。
【0045】
通気孔33は、第1プライ13の一面から他面にかけて貫通した貫通孔であり、コード30を避けて設けられている。通気孔33の直径は、隣接したコード30の間隔未満である。例えば通気孔33は、加硫前のグリーンタイヤの成形時、第1プライ13を送り出すローラに配置した多数の針によって、1mm程度の直径で形成される。送出ローラの部位によって配置する針の数を変更することで、幅方向における第1プライ13の部位によって通気孔33の密度を変更できる。
【0046】
本実施形態では、中央部13aに形成する通気孔33の密度と、サイド部13bに形成する密度とを相違させている。また、サイド部13bに連なる巻上部13cには、サイド部13bと同様に通気孔33が設けられている。なお、巻上部13cには通気孔33を設けなくてもよい。
【0047】
図2に示すように、本実施形態の中央部13aは、トレッド部2のうち、タイヤ幅方向外側に位置する一対のショルダー部2a間、より具体的には、一対のパッド26それぞれのタイヤ幅方向中央間の範囲R1である。タイヤ幅方向において、中央部13aの外端13hは、プライ片15の内端部15aよりも外側に位置している。中央部13aの外端13hから端部13gまでの範囲R2が、巻上部13cを含めたサイド部13bを構成する。そのうち、サイド部13bは、中央部13bの外端13hからビードフィラー8の先端8bまでの範囲である。
【0048】
図3に最も明瞭に示すように、中央部13aに形成された通気孔33の密度は、巻上部13cを含むサイド部13bに形成された通気孔33の密度よりも高い。つまり、第1プライ13の第1の範囲R2に形成する単位面積当たりの通気孔33の数は、第1プライ13の第2の範囲R2に形成する単位面積当たりの通気孔33の数よりも多い。
【0049】
例えば、第1プライ13の第1の範囲R1には、単位面積(m
2)当たり50個以上300個以下の通気孔33が設けられている。これに対して、第1プライ13の第2の範囲R2には、単位面積当たり0個以上250個以下の通気孔33が設けられている。即ち、巻上部13cを含むサイド部13bには通気孔33を形成しない構成、つまり通気孔33の密度がゼロである構成が含まれる(
図7参照)。本実施形態では、第1プライ13の第1の範囲R1には、5mm以上50mm以下の間隔をあけてマトリクス状に通気孔33が設けられている。第1プライ13の第2の範囲R2には、20mm以上100mm以下の間隔をあけてマトリクス状に通気孔33が設けられている。
【0050】
引き続いて
図3及び
図4Aを参照すると、ブリーダーコード34は、第1プライ13において、タイヤ径方向内側に位置する内表面とタイヤ径方向外側に位置する外表面とにそれぞれ設けられている。第1プライ13のブリーダーコード34は、トレッド部2ではタイヤ幅方向に延び、サイドウォール部3ではタイヤ径方向に延びている。
図3及び
図4Bを参照すると、第2プライ14においてブリーダーコード34は、第1プライ13と同様に、タイヤ径方向内側に位置する内表面とタイヤ径方向外側に位置する外表面とにそれぞれ設けられ、サイドウォール部3においてタイヤ径方向に延びている。ブリーダーコード34は、綿糸やポリエステル糸等の複数の繊維からなり、空気を透過させることによって局部的なエア入りを軽減する機能を有する。個々のブリーダーコード34の直径は概ね0.1mmである。
【0051】
図3に最も明瞭に示すように、第1プライ13に配置するブリーダーコード34の密度は、第2プライ14に配置するブリーダーコード34の密度よりも高い。つまり、第1プライ13に配置するブリーダーコード34の間隔I1と、第2プライ14に配置するブリーダーコード34の間隔I2とは異なっており、間隔I1は間隔I2よりも狭い。本実施形態では、第1プライ13のブリーダーコード34は、コード30に沿って延びるように、タイヤ周方向に隣接した通気孔33間にそれぞれが配置されている。第2プライ14のブリーダーコード34は、コード31に沿って延びるように、タイヤ周方向に隣接したコード31間において1つ置きにそれぞれ配置されている。
【0052】
ここで、空気入りタイヤ1を構成する加硫前のグリーンタイヤは、成形ドラムに前述した複数のタイヤ構成部材を定められた順で積層して円筒状に成形される。積層したタイヤ構成部材を圧接部材によって加圧することで、部材間に存在する空気を押し出すことができる。第1プライ13、一対のプライ片15からなる第2プライ14、及びベルト19のように横幅が広い部材の加圧には、例えば両持ち構造の加圧ローラが用いられる。
【0053】
加圧ローラによるプライ片15の圧接によって、第1プライ13と第2プライ14の間に存在する空気の大部分は押し出される。加圧ローラによるベルト19の圧接によって、中抜き部14aに存在する空気の大部分は押し出される。この際、第1プライ13に形成された通気孔33は空気が逃げ込む空間として機能する。よって、圧接によって出し切れなかった空気は、複数の通気孔33に分散され、第1プライ13と対向部材15,19の間に集中して介在することはない。
【0054】
以上のように構成した空気入りタイヤ1は以下の特徴を有する。
【0055】
第2プライ14は一対のプライ片15を備え、不連続である。つまり、一対のプライ片15の内端部15aの間には、プライが存在しない中抜き部14aがある。かかる中抜き部14aのある第2プライ14を採用したことにより、第2プライ14が1枚の連続したプライである場合と比較して、軽量化とそれによる転がり抵抗の低減を図ることができる。また、第1プライ13と第2プライ14は、サイドウォール部3のタイヤ幅方向内側に位置するサイド部13b,15bをそれぞれ備えるため、サイドウォール部3の剛性とそれによる操縦安定性と耐カット性とを確保できる。
【0056】
第1プライ13には複数の通気孔33が形成されており、中央部13aの通気孔33の密度は、サイド部13bの通気孔33の密度よりも高い。よって、サイドウォール部3における剛性とそれによる操縦安定性と耐カット性とを確保しつつ、中抜き部14aへのエア入りを大幅に抑制できる。
【0057】
一対のサイド部13bの通気孔33の密度はゼロを含む。よって、通気孔33の形成に伴うサイド部13bの剛性低下を防止できるため、サイドウォール部3における剛性とそれによる操縦安定性と耐カット性とを確保できる。
【0058】
第1プライ13の表面と第2プライ14の表面には、複数の繊維からなるブリーダーコード34が配置されており、第1プライ13のブリーダーコード34の密度は、第2プライ14のブリーダーコード34の密度よりも高い。よって、意図しない局部的なエア入りが生じても、ブリーダーコード34を構成する繊維の隙間を通して空気を分散できる。その結果、局部的なエア入りによる不具合を効果的に抑制できる。
【0059】
(第2実施形態)
図5は第2実施形態の空気入りタイヤ1のカーカス12を展開した状態を示す。この第2実施形態では、第1プライ13の中央部13aを2種3箇所の領域A1,A2に区画し、これらに形成する通気孔33の密度を異ならせた点で、第1実施形態と相違する。
【0060】
詳しくは、中央部13aは、一対の第1領域A1と、1つの第2領域A2とを備える。これらの領域A1,A2にはそれぞれ通気孔33が形成されており、第1領域A1に形成する通気孔33の密度は、第2領域A2に形成する通気孔33の密度よりも高い。第2領域A2に形成する通気孔33の密度は、サイド部13bに形成する通気孔33の密度よりも高い。
【0061】
個々の第1領域A1は、プライ片15の内端部15aに対してタイヤ幅方向内側に隣接している。より具体的には、第1領域A1は、中央部13aのうち、内端部15aよりもタイヤ幅方向内側に位置する第1部分13iから、内端部よりもタイヤ幅方向外側の外端(第2部分)13hまでの幅を有する。本実施形態では、第1領域A1の第1部分13iと第2部分13hは、プライ片15の内端部15aを中心として対称に位置する。
【0062】
第1部分13iから第2部分13hまでの第1領域A1の横幅は、0mmよりも広く(つまり0mmを含まない)50mm以下の範囲に設定することが好ましく、5mm以上30mmの範囲に設定することがより好ましい。第1領域A1の幅を過度に広くした場合、中央部13aに形成される通気孔33の数が過多になるため、トレッド部2の剛性確保が困難になる。このような不都合を防止するために、第1領域A1の幅は、上記範囲内に設定することが好ましい。
【0063】
第2領域A2は、一対の第1領域A1それぞれに対してタイヤ幅方向内側に隣接している。第2領域A2は、一対の第1領域A1のうち、一方の第1部分13iから他方の第1部分13iまでの範囲である。
【0064】
一対の第1領域A1にはそれぞれ、単位面積(m2)当たり100個以上300個以下の通気孔33が形成されている。第2領域A2には、単位面積当たり0個以上200個以下の通気孔33が形成されている。
【0065】
この第2実施形態の空気入りタイヤ1では、段差によってエア入りが生じ易い第1領域A1の通気孔33の密度を、第1領域A1よりもエア入りが生じ難い第2領域A2の通気孔33の密度よりも高くしている。よって、プライ片15の内端部15a近傍でのエア入りを効果的に抑制できるとともに、通気孔33を過度に形成することに伴うトレッド部2の剛性低下を防止できる。
【0066】
(第3実施形態)
図6は第3実施形態の空気入りタイヤ1のカーカス12を展開した状態を示す。この第3実施形態では、第1プライ13の中央部13aを3種5箇所の領域A1~A3に区画し、これらに形成する通気孔33の密度を異ならせた点で、第1実施形態と相違する。
【0067】
詳しくは、中央部13aは、一対の第1領域A1と、一対の第2領域A2と、1つの第3領域A3とを備える。これらの領域A1~A3にはそれぞれ通気孔33が形成されており、通気孔33の密度は、第1領域A1、第3領域A3、及び第2領域A2の順で高い。つまり、第1領域A1の通気孔33の密度が最も高く、第2領域A2の通気孔33の密度が最も低い。第2領域A2に形成する通気孔33の密度は、サイド部13bに形成する通気孔33の密度よりも高い。
【0068】
個々の第1領域A1は、プライ片15の内端部15aに対してタイヤ幅方向内側に隣接している。第1領域A1の範囲は、第2実施形態と同様である。第2領域A2は、一対の第1領域A1に対してタイヤ幅方向内側にそれぞれ隣接している。第3領域A3は、一対の第1領域A2それぞれに対してタイヤ幅方向内側に隣接している。
【0069】
第3領域A3の横幅は、50mm以上200mm以下の範囲に設定することが好ましく、100mm以上150mmの範囲に設定することがより好ましい。この範囲の中心はタイヤ幅方向における中央部13aの中央である。両持ち構造の加圧ローラの場合、中央での加圧力が両端での加圧力よりも小さくなるため、中央部分に対応する第3領域A3の幅を過度に狭くすると、空気の押し出しが不十分になる虞がある。第3領域A3の幅を過度に広くすると、通気孔33の数が過多になるため、トレッド部2の剛性確保が困難になる。これらの不都合を防止するために、第3領域A3の幅は、上記範囲内に設定することが好ましい。
【0070】
一対の第1領域A1にはそれぞれ、単位面積(m2)当たり100個以上300個以下の通気孔33が形成されている。一対の第2領域A2にはそれぞれ、単位面積当たり0個以上200個以下の通気孔33が形成されている。第3領域A3には、単位面積当たり50個以上250個以下の通気孔33が形成されている。
【0071】
この第3実施形態の空気入りタイヤ1では、プライ片15の内端部15aと第1プライ13の段差によってエア入りが生じ易い第1領域A1の通気孔33の密度を、第1領域A1よりもエア入りが生じ難い第2領域A2及び第3領域A3の通気孔33の密度よりも高くしている。よって、プライ片15の内端部15a近傍でのエア入りを抑制できるとともに、通気孔33を過度に形成することに伴うトレッド部の剛性低下を防止できる。
【0072】
また、両持ち構造の加圧ローラの中央に位置する第3領域A3の通気孔33の密度を、その両側に位置する第2領域A2の通気孔33の密度よりも高くしている。よって、第1プライ13の第3領域A3とベルト(対向部材)19との間への空気の介在、つまりエア入りを抑制できる。
【0073】
なお、本発明の空気入りタイヤ1は、前記実施形態の構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【0074】
例えば、通気孔33の数と配置は必要に応じて変更が可能である。また、中央部13aに形成する通気孔33の密度は、タイヤ幅方向の中央から外側に向かうに従って徐々に高くしてもよい(多段階)。
【0075】
図7に示すように、第1プライ13及び第2プライ14には、表面にブリーダーコード34を配置していないプライを用いてもよい。また、巻上部13cを含むサイド部13bには、通気孔33を設けなくてもよい。
【0076】
第1プライ13と第2プライ14に加え、第2プライ14と同様の中抜き部14aを有するプライや第1プライ13と同様の通常のプライをさらに備えてもよい。
【符号の説明】
【0077】
1…空気入りタイヤ
2…トレッド部
2a…ショルダー部
3…サイドウォール部
4…ビード部
5…トレッドゴム
5a…溝
6…サイドゴム
7…ビードコア
8…ビードフィラー
8a…基端
8b…先端
9…ストリップゴム
10…インナーライナ
12…カーカス
13…第1プライ
13a…中央部
13b…サイド部(第1サイド部)
13c…巻上部
13d…内側部
13e…巻掛部
13f…外側部
13g…端部
13h…外端(第2部分)
13i…第1部分
14…第2プライ
14a…中抜き部
15…プライ片
15a…内端部
15b…サイド部(第2サイド部)
15c…巻上部
15d…内側部
15e…巻掛部
15f…外側部
15g…外端部
18…ベルト層
19…ベルト
19a…端部
20…ベルト
20a…端部
22…キャップ層
23…エッジプライ
23a…端部
24…キャッププライ
24a…端部
26…パッド
26a…端部
26b…端部
30…コード
31…コード
33…通気孔
34…ブリーダーコード
R1…第1の範囲(中央部)
R2…第2の範囲(巻上部を含むサイド部)
A1…第1領域
A2…第2領域
A3…第3領域