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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-12
(45)【発行日】2023-09-21
(54)【発明の名称】顎部の硬組織の動きを追跡する追跡部品
(51)【国際特許分類】
   A61C 19/045 20060101AFI20230913BHJP
   A61B 6/14 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
A61C19/045 110
A61B6/14
A61C19/045 ZDM
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019534126
(86)(22)【出願日】2017-12-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-01-23
(86)【国際出願番号】 FI2017050890
(87)【国際公開番号】W WO2018115576
(87)【国際公開日】2018-06-28
【審査請求日】2020-12-11
(31)【優先権主張番号】20166026
(32)【優先日】2016-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】591036309
【氏名又は名称】プランメカ オイ
【氏名又は名称原語表記】Planmeca Oy
【住所又は居所原語表記】Asentajankatu 6, 00880 Helsinki, Finland
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トイメラ ラッセ
(72)【発明者】
【氏名】ニホルム クスタ
【審査官】沼田 規好
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第203914924(CN,U)
【文献】米国特許出願公開第2016/0262711(US,A1)
【文献】特表2015-517364(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0166174(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 19/045
A61B 6/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物理的な追跡部品(110)を作製する方法であって、前記物理的な追跡部品(110)が、突出部(112)およびスプリント部(111)を備えており、前記物理的な追跡部品(110)が、人に取り付けられるように、かつ人の顎部の動きに追随するように構成されており、前記方法が、
- 撮影装置(310)が、前記人の口腔内の解剖学的構造の少なくとも一部、または前記解剖学的構造の痕跡を撮影して、撮影結果を取得するステップと、
- データ処理システム(320)が、前記撮影結果に基づいて、前記口腔内の解剖学的構造の表面の少なくとも一部を表現する第1のデジタルモデルを生成するステップと、
- 前記データ処理システム(320)が、前記スプリント部(111)を表現しており、かつ、前記第1のデジタルモデルが前記口腔内の解剖学的構造の前記表面の前記少なくとも一部に完全に嵌まる前記スプリント部(111)の内面の少なくとも一部を表現するように前記第1のデジタルモデルを含む第2のデジタルモデルを生成するステップと、前記第2のデジタルモデルは、前記スプリント部(111)の前記内面の前記少なくとも一部を形成するための開始データとして前記第1のデジタルモデルを使用し、次に、前記解剖学的構造の前記表面の前記少なくとも一部を表現する前記第1のデジタルモデルの表面の形状とは無関係に、前記解剖学的構造の当該モデル化された表面の上部に、前記スプリント部(111)を表現する前記第2のデジタルモデルの実際の形状全体を構築することによって生成される、
前記データ処理システム(320)が、前記第2のデジタルモデルに合成される第3のデジタルモデルであって、前記第3のデジタルモデルが、前記突出部(112)のための取付け構造を表現する、前記第3のデジタルモデルを生成するステップと、
- 前記データ処理システム(320)が、前記第3のデジタルモデルを前記第2のデジタルモデルに合成して前記追跡部品(110)のデジタルモデルを生成するステップと、
- 作製ユニット(330)が、前記物理的な追跡部品(110)の作製において、前記追跡部品(110)の前記デジタルモデルを使用するステップと、
含む、方法。
【請求項2】
前記データ処理システム(320)が、追跡マーカー(113)または追跡マーカー(113)のための取付け構造を表現する第4のデジタルモデルを生成するステップと、前記第4のデジタルモデルを、前記突出部(112)を表現する前記デジタルモデルに合成するステップと、をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも1つの追跡マーカー(113)が、前記突出部(112)に一体化されている、または取り外し自在に前記突出部(112)に取り付けられており、前記突出部(112)に一体化されているかまたは取り付けられている前記追跡マーカー(113)が、少なくとも1つの波長を反射するかまたは発する手段、を備えている、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記撮影装置(310)が、口腔内表面の光学スキャン装置またはCTもしくはCBCT撮影装置である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記作製ユニット(330)が、積層造形機、3Dプリンタ、またはフライスカッターである、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
追跡部品(110)のデジタルモデルを生成する方法であって、前記追跡部品(110)が、人の解剖学的構造に取り付けられるように、かつ人の顎部の動きに追随するように構成されており、前記追跡部品(110)が、スプリント部(111)および突出部(112)、または、前記スプリント部(111)および前記突出部(112)のための結合構造、を備えており、前記方法が、
- 撮影装置(310)が、前記人の口腔内の解剖学的構造の少なくとも一部、または前記解剖学的構造の痕跡を撮影して、撮影結果を取得するステップと、
- データ処理システム(320)が、前記撮影結果に基づいて、前記口腔内の解剖学的構造の表面の少なくとも一部を表現する第1のデジタルモデルを生成するステップと、
- 前記データ処理システム(320)が、前記スプリント部(111)を表現しており、かつ、前記第1のデジタルモデルが前記口腔内の解剖学的構造の前記表面の前記少なくとも一部に完全に嵌まる前記スプリント部(111)の内面の少なくとも一部を表現するように前記第1のデジタルモデルを含む第2のデジタルモデルを生成するステップと、前記第2のデジタルモデルは、前記スプリント部(111)の前記内面の前記少なくとも一部を形成するための開始データとして前記第1のデジタルモデルを使用し、次に、前記解剖学的構造の前記表面の前記少なくとも一部を表現する前記第1のデジタルモデルの表面の形状とは無関係に、前記解剖学的構造の当該モデル化された表面の上部に、前記スプリント部(111)を表現する前記第2のデジタルモデルの実際の形状全体を構築することによって生成される、
前記データ処理システム(320)が、前記第2のデジタルモデルに合成される第3のデジタルモデルであって、前記第3のデジタルモデルが、前記突出部(112)のための取付け構造を表現する、前記第3のデジタルモデルを生成するステップと、
- 前記データ処理システム(320)が、前記第3のデジタルモデルを前記第2のデジタルモデルに合成して前記追跡部品(110)のデジタルモデルを生成するステップと、
含む、方法。
【請求項7】
前記データ処理システム(320)が、追跡マーカー(113)または追跡マーカー(113)のための取付け構造を表現する第4のデジタルモデルを生成するステップと、前記第4のデジタルモデルを、前記突出部(112)を表現する前記デジタルモデルに合成するステップと、をさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
人の顎部の硬組織の動きを追跡する方法であって、
検出手段(601)が、人の解剖学的構造に取り付けられている少なくとも1つのマーカーの動きを検出するステップと、
マッピング手段(603)が、前記動きを前記人の解剖学的構造にマッピングするステップと、
を含み、
前記少なくとも1つのマーカーが、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法で作製される前記追跡部品(110)の一部であり、
前記検出手段(601)が、前記追跡部品(110)を設計したときにベースとなった表面に対応する解剖学的構造に前記追跡部品(110)が嵌合によって取り付けられている間に、前記追跡部品(110)の動きを検出する、
方法。
【請求項9】
請求項1~5のいずれか1項に記載の方法を実施するように構成されている、前記撮影装置(310)としてのCT撮影装置または光学的な口腔内スキャナーと、前記データ処理システム(320)としてのコンピュータと、前記作製ユニット(330)としてのCAD/CAM作製機と、前記撮影装置(310)、前記データ処理システム(320)、および前記作製ユニット(330)を動作させるためのソフトウェア製品と、を備えている、装置。
【請求項10】
人に取り付けられるように、かつ顎部の動きに追随するように設計されている追跡部品であって、前記追跡部品(110)が、スプリント部(111)と、前記スプリント部(111)から突き出している少なくとも1つの部分(112)と、前記少なくとも1つの部分(112)のための対応する取付け構造とを備えており、前記追跡部品(110)が、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法で作製されている、追跡部品。
【請求項11】
前記追跡部品(110)が、少なくとも1つの波長を反射するかまたは少なくとも1つの波長を発する少なくとも1つの追跡マーカー(113)、を備えている、請求項10に記載の追跡部品。
【請求項12】
前記少なくとも1つの追跡マーカー(113)が、少なくとも1つのLED、少なくとも1つの赤外線反射物、または少なくとも1つの光反射物、を備えている、請求項11に記載の追跡部品。
【請求項13】
前記少なくとも1つの追跡マーカー(113)は、放射線不透過性でありまたは放射線不透過性部分を含む、請求項11または12に記載の追跡部品。
【請求項14】
コンピュータ可読記憶媒体に具体化されているコンピュータプログラムであって、前記コンピュータプログラムが、請求項6または7に記載の方法を実行するためのプロセスを制御するためのプログラムコード、を備えている、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顎部の硬組織の動きの追跡に関連して使用される追跡部品、特に、このような追跡部品のデジタルモデルの生成と、このような追跡部品の作製と、このような追跡部品の設計および作製に関連するソフトウェア製品ならびに装置と、に関する。
【背景技術】
【0002】
顎関節症(temporomandibular disorder)の診断および治療に関して、顎部の動きを記録することに関連してさまざまな方法および装置が使用されてきた。上顎骨に対する下顎骨の姿勢および動きを解明することは難しく、なぜなら軟組織の層の背後に位置する解剖学的構造を視覚的に観察することが不可能であるためである。人の顎部の動きを記録することに関連して、機械技術を採用するシステム、電子技術を採用するシステム、超音波技術を採用するシステム、電磁気技術を採用するシステム、および光学技術を採用するシステムなど、さまざまなシステムが使用されてきた。1つの一般的な解決策は、上顎および下顎の両方に物理的マーカー(代理オブジェクト(surrogate object)と称されることもある)を取り付けるステップと、それぞれの相対的な動きを記録するステップを含む。マーカーは、一般には、人の口の中から外に延びる細長い部品であり、人の顎部の動きによって生じる部品の動きが観察および記録される。次にこの動きをディスプレイ上に(例えば関連する解剖学的構造のデジタルモデルに適用された状態で)視覚化することができる。
【0003】
このような手順において使用される技術とは無関係に、関与する作業工程はしばしば時間および労力を要し、なぜなら作業工程は、個別の装置と、個別に実行される互いに別の操作の使用を含みうるためである。これらの操作には、解剖学的構造にマーカーを取り付けるステップと、顎部の動きを生成するステップと、マーカーの動きを検出および記録するステップと、顎部の動きを視覚化するモデルを生成する(次にこの視覚化をディスプレイに示すことができる)ステップとが含まれうる。マーカーの動きに関連する撮影結果を取得するステップと、顎部の動きを視覚化するステップとが個別のプロセスであり、後になって、顎部の動きのデジタルモデルの質を高めるために追加の動き情報が必要であった、または少なくとも望ましいことが認識された場合、そのような追加の情報を生成することは、次回に同じ人にマーカーを取り付けて、そのマーカーの動きを新たに検出および記録するまで不可能である。
【0004】
代理オブジェクトを人の解剖学的構造に取り付ける公知のプロセスは、接着剤または他の取付け方法を使用することを含む。このプロセス全体では、代理オブジェクトと解剖学的構造の相対的な空間位置を何らかの方法で解明することを必要とする。いかなる較正システム(calibration system)も不正確性が生じやすく、従来技術の多くに関して、その次の検査において代理オブジェクトと解剖学的構造のまったく同じ相対位置を繰り返すことは、実際には不可能である。
【0005】
顎部の動きの追跡に関連する従来技術の例としては、特許公報である特許文献1、特許文献2、特許文献3、および特許文献4に記載されているシステムが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第4,836,778号明細書
【文献】米国特許第4,859,181号明細書
【文献】米国特許出願公開第2013/0157218号明細書
【文献】国際公開第2013/0175018号
【発明の概要】
【0007】
以下では、本発明のいくつかの態様または目的を基本的に理解できるようにする目的で、本発明の単純化された要約を提示する。この要約は、本発明の主要な要素もしくは重要な要素を識別する、または本発明の範囲を示すようには意図されていない。
【0008】
本発明の目的は、新規のタイプの追跡部品を使用することによって、人の顎部の硬組織の動きを追跡する新規の手段であって、新規性が、そのような追跡部品を設計する新規の方法に基づく、手段、を提供することである。この新規の設計方法は、人の解剖学的構造の撮影結果から生成されるデジタルモデルを利用することに基づき、これによって患者に固有な追跡部品を作製することが可能になる。
【0009】
本発明のさまざまな態様は、添付の独立請求項に記載されている内容を特徴とする、方法、装置、追跡部品、配置構造、およびコンピュータプログラム、を含む。本発明のさらなる態様は、添付の従属請求項と、発明を実施するための形態のセクションに開示されている。
【0010】
本発明の1つまたは複数の態様によって提供される1つの利点として、人の顎部の解剖学的構造の上部、特に、下顎部の歯の少なくとも一部の上部に完全に嵌まる外殻を形成している患者に固有な追跡部品を使用することによって、顎部の硬組織の動きを追跡できることが挙げられる。完全に嵌まることによって、解剖学的構造に追跡部品を確実に取り付けるために追加の接着剤が必要ない、または最小限の量の接着剤のみが必要である。本発明に係る追跡部品が、解剖学的構造との正確に既知の結合状態にあるとき、人の解剖学的構造に追跡部品を取り付けた後に個別の較正ステップが必要ない。さらには、同じ追跡部品を、追加の較正段階なしで何度か使用することができる。したがって、硬組織の動きの追跡を、ただ1つの物理的な追跡部品を使用してスムーズに行うことができ、たとえ長期間にわたっても同じ追跡部品を何度か使用することができる。
【0011】
以下の図は、本発明のさまざまな実施形態のいくつかの態様を提示している。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】人の下顎部に取り付けられている追跡部品を示している。
図2】本発明の一実施形態に係る、設計およびその後の作製プロセスの流れ図を示している。
図3】本発明に係る1つの好ましい装置の一部のブロック図を示している。
図4】本発明に関連する使用に適用可能な撮影装置の例を示している。
図5】2つのカメラの視野の中で追跡部品が下顎骨に取り付けられている状態で動きを追跡撮影する1つの原理的な配置構造を例として示している。
図6】代理オブジェクトの動きを検出し、顎部の硬組織の動きをモデル化する原理的な追跡システムを示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下は、本発明の実施形態の例である。本明細書では、さまざまな箇所において、実施形態、「一」実施形態、または「いくつかの」実施形態を参照しているが、これは、そのような参照それぞれが(1つまたは複数の)同じ実施形態を指す、または実施形態の特徴がその特定の1つの実施形態に適用されるのみであることを必ずしも意味しない。さまざまな実施形態の個々の特徴を組み合わせる、または省いて、必ずしも説明の中で詳しく開示されていない実施形態を提供することができる。
【0014】
図1は、人の下顎部(120)に取り付けられている物理的な追跡部品(110)を側面図として示している。追跡部品(110)は、スプリント部(splint part)(111)および少なくとも1つの突出部(112)を備えている。突出部(112)は、人の口の中から外に延びるように構成されている。図1の突出部(112)は、少なくとも1つの追跡マーカー(113)をさらに備えている。追跡マーカー(113)は、突出部(112)と一体化することができ、または、突出部(112)に取付け可能である、場合によっては取り外し自在に突出部(112)に取付け可能である、ように構成することができる。追跡マーカー(113)は、少なくとも1つの波長を反射する、または発するように構成することができ、例えば、少なくとも1つのLED、少なくとも1つの赤外線反射物、または少なくとも1つの光反射物を備えていることができる。追跡マーカー(113)は、放射線不透過性とすることができ、または、放射線不透過性部分を含むことができる。
【0015】
図1による物理的な追跡部品(110)は、追跡部品(110)のデジタルモデルを最初に生成することによって患者に固有な追跡部品として設計および作製することができ、追跡部品(110)は、そのスプリント部(111)に関して、人の実際の解剖学的構造のデジタル表面データ(3D表面モデル)に基づいて設計される。表面データを生成するための画像データは、解剖学的構造の痕跡を撮影することによって、または、人の解剖学的構造を直接撮影することによって、取得することができる。次に、口腔内の解剖学的構造と接触するスプリント部(111)の内面を、人のその解剖学的構造の表面に完全に嵌まるように設計することができる。スプリント部(111)の全体の形状(すなわち人の解剖学的構造に合致している表面のみならず、スプリント部(111)の他の表面も含むデジタルモデル)は、より自由に設計することができる。
【0016】
追跡部品(110)の設計プロセス全体は、少なくとも1つの突出部(112)(スプリント部(111)に取り付けられるかまたは一体化される)のデジタルモデルを設計するステップ、および/または、少なくとも1つの突出部(112)の少なくとも1つの結合構造をスプリント部(111)に設計するステップ、をさらに含むことができる。したがってこのプロセスは、例えば、特定の人の口腔内の解剖学的構造の表面に合致している1つの表面領域を有するスプリント部(111)のデジタルモデルを設計するステップと、そのモデルを、少なくとも1つの突出部(112)、およびオプションとして、少なくとも1つの追跡マーカー(113)の構造または少なくとも1つの追跡マーカー(113)に関連する構造、の表面を表現するモデルと合成して、追跡部品(110)のデジタルモデルを形成するステップと、を含むことができる。
【0017】
図2は、追跡部品のデジタルモデルの生成に関連するステップの例を示す流れ図である。
【0018】
図2は、物理的な追跡部品を作製する次のステップをさらに示しており、追跡部品は、スプリント部と、さらに、少なくとも1つの突出部または少なくとも1つの突出部のための少なくとも1つの結合構造、を備えている。
【0019】
図2に示したプロセスに関して、ステップ(201)においては、人の口腔内の解剖学的構造の少なくとも一部、または解剖学的構造の痕跡を撮影して、撮影結果を取得する。この解剖学的構造は、例えば、少なくとも歯の一部、歯の表面、歯肉、または人の口腔内の解剖学的構造の他の細部、を含むことができる。この撮影結果を取得するステップは、口腔内表面の光学スキャン装置、またはCTもしくはCBCT撮影装置を使用するステップを含むことができる。
【0020】
ステップ(202)においては、撮影結果に基づいて第1のデジタルモデルを生成し、このモデルは、人の口腔内の解剖学的構造の表面の少なくとも一部を表現する。
【0021】
ステップ(203)においては、スプリント部(111)を表現しており、かつ上記の第1のデジタルモデルの少なくとも一部を含む第2のデジタルモデル、を生成する。このステップを説明するための1つの方法として、スプリント部の内面、すなわち底面の少なくとも一部を形成するための開始データとして、解剖学的構造の表面モデルを使用し、次に解剖学的構造のモデル化された表面の上部に、スプリント部(111)のモデルの実際の形状全体を「構築する」ことによって、スプリント部(111)のモデルを生成する。
【0022】
ステップ(204)においては、少なくとも1つの突出部(112)、または少なくとも1つの突出部(112)のための取付け構造を表現する少なくとも1つの第3のデジタルモデルを生成する。
【0023】
ステップ(205)においては、スプリント部(112)を表現する第2のデジタルモデルと、少なくとも1つの第3のデジタルモデルとを合成して、追跡部品(110)のデジタルモデルを形成する。
【0024】
追跡部品のデジタルモデルを生成する方法は、図2には、特定の具体的な個々のステップ(201)~(205)を含むものとして提示してあるが、当然ながら、これらのステップのすべてを個別に実行する必要はない。例として、上に開示したステップ(203)~(205)は、「スプリント部(111)と前出の第1のデジタルモデルの少なくとも一部とを表現する第2のデジタルモデルと、この第2のデジタルモデルに合成される第3のデジタルモデルであって、少なくとも1つの突出部(112)または少なくとも1つの突出部(112)のための取付け構造を表現する、第3のデジタルモデルと、を含む、追跡部品(110)のデジタルモデル、を生成するステップ」、を含むものとして、記載することができる。
【0025】
突出部(112)のモデルは、オプションとして、少なくとも1つの追跡マーカー(113)のモデル、または、少なくとも1つの追跡マーカー(113)のための取付け構造のモデル、を含むことができる。当然ながら、この場合も、突出部(112)のモデルは、このような1つもしくは複数のモデルを含むように直接生成してもよく、または、このような1つもしくは複数のモデルを個別に設計し、次に突出部(112)のモデルと合成することができる。
【0026】
言い換えれば、追跡マーカー(113)の1つもしくはいくつかのモデルを突出部(112)のモデルと統合することができる、または、追跡マーカー(113)を突出部(112)に取付け可能であるように設計することができるが、「第3のデジタルモデル」は、突出部(112)のみならず、少なくとも1つの追跡マーカー(113)または少なくとも1つの追跡マーカー(113)のための取付け構造も含むことができる。
【0027】
追跡部品(110)または追跡部品の一部のデジタルモデルは、患者に固有な物理的な追跡部品(110)または患者に固有な追跡部品の一部を作製する目的などで、後から使用できるように記憶しておくことができる。
【0028】
したがって、本発明の一態様によれば、図2のステップ(205)の後に、物理的な追跡部品(110)または物理的な追跡部品の一部の作製において、追跡部品(110)の生成されたデジタルモデルの少なくとも一部を使用するステップ(206)、が続く。言い換えれば、追跡部品(110)のデジタルモデルは、その後に物理的な追跡部品(110)または物理的な追跡部品の一部を作製するための基礎データを形成する。
【0029】
物理的な追跡部品(110)は、3Dプリンタやフライスカッターなどの装置を含むCAD/CAM装置において作製することができる。
【0030】
物理的な追跡部品(110)は、追跡部品(110)のスプリント部(111)を設計するために使用される、人の口腔内の解剖学的構造のデジタル表面モデルに対する、少なくとも1つの追跡マーカー(113)の位置が既知であるように、設計および作製することができる。
【0031】
これに対して、設計によっては、人の口腔内の解剖学的構造の特定のデジタル表面モデルに対する位置が既知であるべき追跡部品(110)の1つまたは複数の部分は、図1に示した追跡マーカー(113)以外の、追跡部品(110)の何らかの別の構造であってもよい。
【0032】
本発明の一態様によれば、本発明を実施するための装置は、CTまたはCBCT撮影装置と、図2および関係する上の説明部分に関連して記載されているプロセスステップの少なくともいくつかを実施するためのソフトウェアを備えたコンピュータと、本発明に従って設計された物理的造形物を作製するための例えば積層造形機またはフライス盤と、を備えていることができる。
【0033】
したがって、本発明の一実施形態は、コンピュータ可読記憶媒体に具体化されているコンピュータプログラムを備えており、このコンピュータプログラムは、図2に関連して説明されている本方法のステップの少なくともいくつか(図2を参照しながら説明されているステップ(201)~(205)の少なくとも一部など)を制御および実行するためのプログラムコード、を備えている。
【0034】
本発明を実施するための1つの装置(300)の一般的なアーキテクチャ(図3に示してある)は、撮影装置(310)(検出器(311)および放射線源(312)を備えたCBCTスキャナーとすることができる)と、メモリ(321)およびスキャン結果処理ユニット(322)を備えていることのできるデータ処理システム(320)と、を備えている。スキャン結果処理ユニット(322)は、スキャン結果を数値的に再構築して、スキャンされた解剖学的構造を表現する、3次元ピクセル(すなわちボクセル)から構成されているいわゆるデジタルボリューム(digital volume)またはボリュームデータ(volumetric data)を生成するように構成することができる。データ処理システム(320)は、処理ユニット(322)によって生成されたデータと相互作用して、スキャンされた解剖学的構造のデジタルモデルおよび追跡部品(110)のデジタルモデルを生成するように構成されているモデリングユニット(323)、をさらに備えていることができる。データ処理システム(320)は、このようなモデルをメモリ(321)に記録するようにも構成することができる。
【0035】
図3に示した実施形態などの本発明の一実施形態は、モデリングユニット(323)によって作成された追跡部品(110)のデジタルモデルまたはデジタルモデルの一部から、物理的な追跡部品(110)または物理的な追跡部品(110)の一部を生成するように構成されている作製ユニット(330)(例えば3Dプリンタまたはフライスカッター)、をさらに備えていることができる。
【0036】
解剖学的構造の表面モデルのための撮影結果を取得するための装置は、光学的な口腔内スキャナー(登録商標Planmeca PlanScanとして市販されているものなど)とすることができるが、図4には、本発明に関連しての使用に適用可能なCBCT装置の例を示してある。図4の撮影装置(410)は、垂直支持構造(11)を含み、この垂直支持構造(11)から、患者支持手段(17)を支持しているアーム(12)と、この装置の撮影手段を支持しているアーム部(14)を支持しているアーム部(13,13’)とが、水平方向に延びている。撮影手段を支持しているアーム部(14)は、回転可能に配置されており、撮影手段を支持しているアーム部(14)を支持しているアーム部(13,13’)を回転可能に配置してもよい。(図4に示した装置では、撮影手段を支持しているアーム部(14)を支持しているアーム部(13,13’)が2つの部分からなり、そのうちの少なくとも第2の部分(13’)を回転可能に配置することができるが、これら2つの部分(13,13’)を、ただ1つのモノリシックなアーム部を形成するように構成することもできる。)この装置の撮影手段は、撮影手段を支持しているアーム部(14)に互いに距離をおいて配置されているX線源(15)およびX線画像情報の受信機(21)を含む。撮影手段は、患者支持手段(17)に対して以下のように配置されている、すなわち、X線源(15)とX線画像情報の受信機(21)との間の領域内に撮影ステーション(18)が形成され、X線源(15)によって生成されたビームをこの撮影ステーション(18)を通ってX線画像情報の受信機(21)に向けて導くことができるように、配置されている。この装置は制御手段を含み、図4には、制御手段のうち、患者支持手段(17)を支持しているアーム(12)に配置されているユーザインタフェース(16)を示してあり、ユーザインタフェース(16)は動作モード選択手段(19)を含むことができる。X線画像情報の受信機(21)は、画像情報の受信機モジュール(20)(すなわち検出器モジュール(20))の一部として配置することができ、この受信機モジュール(20)は、X線画像情報の受信機(21)に加えて、1つまたは複数の光学カメラ(後述する)を備えていることができる。画像情報を処理する手段がコンピュータ(30)に配置されており、コンピュータ(30)はさらにディスプレイ(31)に動作接続された状態に配置されている。ユーザインタフェース(16)がディスプレイを備えていてもよく、撮影装置の何らかの別の構造に配置されたディスプレイを設けてもよい。
【0037】
口腔内の表面のモデルを生成するために光学的な口腔内スキャナーが使用されているが、光学スキャナーに可視である以外の顎部の硬組織の動きも(顎骨の全体としての動きのように)表示できることが望まれる場合、このような表面モデルを、上述したCBCTスキャナーなど何らかの別の適用可能な撮影装置によって生成される、同じ解剖学的構造を含むモデルと合成する必要がある。人の解剖学的構造をCBCTまたは別の適用可能な装置によってスキャンする場合には、そのようなスキャンのデータを使用して所望の口腔内の表面のモデルを生成することができ、追加の光学的スキャンと、したがってそのような合成は、まったく行う必要がない。
【0038】
図5は、本発明に関連する使用に適用可能な1つのシステムに従って顎部の動きを検出するための配置構造を示している。この配置構造は、互いに距離をおいて配置されており人の頭部を写真撮影することを目的とする2つの光学カメラ(501)を含む。人の顎部が動くときに追跡部品(110)が顎部の動きに追随するように、本発明に係る追跡部品(110)が人に取り付けられている。図5の配置構造は、カメラ(501)のすぐ近くに配置されており本質的にカメラ(501)が向けられている方向に光を発する光源(502)、をさらに含む。図4に示した装置などのX線撮影装置は、例えば上述したように検出器モジュールに光学カメラを含めることによって、図5に示した配置構造をさらに備えているように構成することができる。
【0039】
上述したように頭蓋硬組織の動きを描写するデジタルモデルを生成する目的で情報を取得するための、図5による配置構造は、2台のカメラを使用することに基づいているが、何らかの別の数のカメラを使用することに基づく配置構造をこの目的に使用することもできる。
【0040】
したがって、本発明の一態様は、人の顎部の硬組織の動きを追跡する方法であって、人の顎部に取り付けられている少なくとも1つのマーカーの動きを検出するステップと、これらの動きを人の解剖学的構造にマッピングするステップと、を含み、この少なくとも1つのマーカーが、上述したように作製される追跡部品(110)の一部であり、動きを検出するステップが、追跡部品(110)を設計したときにベースとなった表面に対応する解剖学的構造に追跡部品(110)が嵌合によって取り付けられている間に、追跡部品(110)の動きを検出するステップ、を含む、方法、である。
【0041】
図6は、顎部の動きを検出およびモデル化する原理的なシステム(追跡システム(600)を示しており、このシステムは、図4の撮影装置(410)の一部として実施することができる。追跡システム(600)は、追跡部品(110)の例えば少なくとも1つの突出部(112)または追跡マーカー(113)の動きを検出することによって、および、この動きを解剖学的構造の仮想モデルにマッピングすることによって、顎部の動きを解明するように構成されている。したがって追跡システム(600)は、少なくとも1つの突出部(112)または追跡マーカー(113)の動きを検出する検出手段(601)を備えていることができる。検出手段(601)は、人の解剖学的構造に取り付けられているときに物理的な追跡部品(110)の(少なくとも一部の)動きを検出するための図5の配置構造、を備えていることができ、物理的な追跡部品(110)は、解剖学的構造に嵌め合わされるように設計および作製されている。追跡システム(600)は、検出された動きを記憶するメモリ(602)をさらに備えていることができる。図6の追跡システム(600)は、追跡部品(110)の動きのみならず実際の解剖学的構造の動きも(または解剖学的構造の動きのみを)表示することができるように、追跡部品(110)の動きを、人の口腔内の解剖学的構造の撮影結果の少なくとも一部に(すなわち患者に固有な物理的な追跡部品(110)を作製するために使用された解剖学的構造のモデル化された表面の少なくとも一部に)マッピングするマッピング手段(603)、を備えている。
【0042】
本明細書に開示されている本発明のコンセプトは、技術が進歩するにつれて、さまざまな方法で実施できることが、当業者には明らかであろう。本発明およびその実施形態は、上述した例に限定されるのではなく、添付の請求項の範囲内でさまざまな形をとることができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6