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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-12
(45)【発行日】2023-09-21
(54)【発明の名称】義足ソール用ゴム組成物及び義足ソール
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/66 20060101AFI20230913BHJP
   C08L 7/00 20060101ALI20230913BHJP
   C08L 9/00 20060101ALI20230913BHJP
   C08L 9/06 20060101ALI20230913BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20230913BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20230913BHJP
【FI】
A61F2/66
C08L7/00
C08L9/00
C08L9/06
C08K3/04
C08K3/013
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019557338
(86)(22)【出願日】2018-11-29
(86)【国際出願番号】 JP2018044091
(87)【国際公開番号】W WO2019107519
(87)【国際公開日】2019-06-06
【審査請求日】2021-11-24
(31)【優先権主張番号】P 2017228651
(32)【優先日】2017-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】桜井 秀之
(72)【発明者】
【氏名】中根 慎介
(72)【発明者】
【氏名】小平 美帆
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/145480(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/133028(WO,A1)
【文献】特開平09-322805(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0009238(US,A1)
【文献】特開2004-143249(JP,A)
【文献】特開2011-182881(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/66
C08L 7/00
C08L 9/00
C08L 9/06
C08K 3/04
C08K 3/013
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ゴム及び合成ジエン系ゴムから選ばれる少なくとも一種のゴム成分と、充填剤とを含有し、
前記充填剤は、カーボンブラックと、水酸化アルミニウムとを含み、且つ、シリカを含まず、
前記充填剤の総量が、前記ゴム成分100質量部に対して、50質量部以上150質量部以下であり、前記カーボンブラックが、前記ゴム成分100質量部に対して、59.7質量部以上90質量部以下であり、前記水酸化アルミニウムが、前記ゴム成分100質量部に対して、10質量部以上30質量部以下である、義足ソール用ゴム組成物。
【請求項2】
前記ゴム成分は、天然ゴム及びスチレン-ブタジエン共重合体ゴムから選ばれる少なくとも一種を含む、請求項1に記載の義足ソール用ゴム組成物。
【請求項3】
前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、30m/g以上200m/g以下である、請求項1または請求項2に記載の義足ソール用ゴム組成物。
【請求項4】
請求項1~のいずれか1項に記載の義足ソール用ゴム組成物を用いた義足ソール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、義足ソールに関し、特に、義足ソール用ゴム組成物及び義足ソールに関する。
【背景技術】
【0002】
義足の装着者は、安心して歩行及び走行できる義足を要望している。義足として板ばねを有するものが知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。しかし、板ばねを有する義足を装着した場合、板ばね自体のグリップ性能が低いため、市販の靴の一部を転用したり、市販のゴムシートを切り貼りしたりすることで路面への食い込み性(グリップ性)を確保してきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-35324号公報
【文献】特表2017-515525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ソールにかかる負荷が大きい義足用途では、十分なグリップ性能を発揮する必要があり、特に雨などで濡れた路面(湿潤環境)で十分なグリップ性能を発揮する必要がある。
【0005】
そこで、本発明は、全天候で高いグリップ性能を発揮し、耐久性に優れた義足ソール用ゴム組成物及び義足ソールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、特定の充填剤を含有させることで、全天候で高いグリップ性能を発揮し、耐久性に優れる義足ソール用ゴム組成物及び義足ソールとすることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明は、以下の[1]~[6]を提供するものである。
[1]天然ゴム及び合成ジエン系ゴムから選ばれる少なくとも一種のゴム成分と、カーボンブラック及び無機充填剤から選ばれる少なくとも一種の充填剤とを含有し、前記充填剤の総量が、前記ゴム成分100質量部に対して、50質量部以上150質量部以下である、義足ソール用ゴム組成物。
[2]前記充填剤は、前記カーボンブラックが0質量部以上90質量部以下であり、前記無機充填剤が10質量部以上100質量部以下である、[1]の義足ソール用ゴム組成物。
[3]前記無機充填剤は、シリカ及び水酸化アルミニウムのいずれか少なくとも1つから選ばれる、[1]又は[2]の義足ソール用ゴム組成物。
[4]前記ゴム成分は、天然ゴム及びスチレン-ブタジエン共重合体ゴムから選ばれる少なくとも一種を含む、[1]~[3]のいずれかの義足ソール用ゴム組成物。
[5]前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積は、30m/g以上200m/g以下である、[1]~[4]のいずれかの義足ソール用ゴム組成物。
[6][1]~[5]のいずれかの義足ソール用ゴム組成物を用いた義足ソール。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、全天候で高いグリップ性能を発揮し、耐久性に優れた義足ソール用ゴム組成物及び義足ソールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施の形態に係る義足ソール用ゴム組成物を用いた義足を説明するための模式図(その1)である。
図2】本発明の実施の形態に係る義足ソール用ゴム組成物を用いた義足ソールを説明するための模式図である。
図3】本発明の実施の形態に係る義足ソール用ゴム組成物を用いた義足を説明するための模式図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[義足ソール用ゴム組成物]
本発明の実施の形態に係る義足ソール用ゴム組成物について詳細に説明する。
本発明の実施の形態に係る義足ソール用ゴム組成物は、天然ゴム及び合成ジエン系ゴムから選ばれる少なくとも一種のゴム成分と、カーボンブラック及び無機充填剤から選ばれる少なくとも一種の充填剤とを含有し、充填剤の総量が、ゴム成分100質量部に対して、50質量部以上150質量部以下である。
【0010】
義足ソール用ゴム組成物の動的貯蔵弾性率のうち、5℃から20℃の平均値である低温想定動的貯蔵弾性率(E’)は、低温時(5℃から20℃)における耐摩耗性、ドライグリップ性能及びウェットグリップ性能を高度に発現させる観点から、5.0MPa以上80.0MPa以下であることが好ましく、20.0MPa以上65.0MPa以下であることがより好ましく、40.0MPa以上50.0MPa以下であることがさらに好ましい。低温想定動的貯蔵弾性率(E’)は、値が小さすぎると低温時(5℃から20℃)における耐摩耗性が悪化し、値が大きすぎると低温時(5℃から20℃)におけるグリップ特性が悪化する。5℃から20℃の平均値を規定する理由は、外気温や路面温度に左右されることなく性能を評価することが目的である。
【0011】
義足ソール用ゴム組成物の動的貯蔵弾性率のうち、20℃から50℃の平均値である高温想定動的貯蔵弾性率(E’)は、高温時(20℃から50℃)における耐摩耗性、ドライグリップ性能及びウェットグリップ性能を高度に発現させる観点から、5.0MPa以上60.0MPa以下であることが好ましく、10.0MPa以上45.0MPa以下であることがより好ましく、20.0MPa以上30.0MPa以下であることがさらに好ましい。高温想定動的貯蔵弾性率(E’)は、値が小さすぎると高温時(20℃から50℃)における耐摩耗性が悪化し、値が大きすぎると高温時(20℃から50℃)におけるグリップ特性が悪化する。20℃から50℃の平均値を規定する理由は、外気温や路面温度に左右されることなく性能を評価することが目的である。
【0012】
義足ソール用ゴム組成物のゴム硬度(Hd)は、JIS K6253-3(タイプA)に準拠して測定され、耐久性を向上させる観点から、50度以上70度以下であることが好ましく、52度以上68度以下であることがより好ましく、54度以上66度以下であることがさらに好ましい。
【0013】
義足ソール用ゴム組成物の300%伸び引張応力(Md300)は、JISK 6251に準拠して測定され、耐久性を向上させる観点から、8.0MPa以上15.0MPa以下であることが好ましく、10.5MPa以上14.5MPa以下であることがより好ましく、11.0MPa以上14.0MPa以下であることがさらに好ましい。
【0014】
(ゴム成分)
ゴム成分としては、天然ゴム(NR)及び合成ジエン系ゴムが挙げられる。合成ジエン系ゴムとして、具体的には、ポリブタジエンゴム(BR)、合成ポリイソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)、臭素化ブチルゴム(Br-IIR)、塩素化ブチルゴム(Cr-IIR)、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)、スチレン-イソプレン共重合体ゴム(SIR)、等が挙げられる。ゴム成分は、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。ゴム成分は、変性されていても、未変性であってもよい。
ゴム成分は、湿潤路面でのグリップ特性(ウェットグリップ特性)及び乾燥路面でのグリップ特性(ドライグリップ特性)を向上させる観点から、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)を含むことが好ましく、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)のみであることがより好ましい。
【0015】
(充填剤)
充填剤としては、カーボンブラック及び無機充填剤が挙げられる。充填剤は、カーボンブラック及び無機充填剤のそれぞれ一種単独で使用してもよい。充填剤は、カーボンブラック及び無機充填剤のそれぞれの効果を発揮する観点から、併用であることが好ましい。
なお、本明細書において、カーボンブラックは、無機充填剤には含まれない。
【0016】
充填剤の配合量の総量は、湿潤路面でのグリップ特性(ウェットグリップ特性)及び乾燥路面でのグリップ特性(ドライグリップ特性)を向上させ、かつ、耐久性を向上させる観点から、ゴム成分100質量部に対して、50質量部以上であることが好ましく、60質量部以上であることがより好ましく、70質量部以上であることがさらに好ましい。充填剤の配合量は、分散性の観点から、ゴム成分100質量部に対して、150質量部以下であることが好ましく、130質量部以下であることがより好ましく、120質量部以下であることがさらに好ましい。
【0017】
<カーボンブラック>
充填剤としてカーボンブラックを配合することにより、高弾性化することができ、耐摩耗性を向上させることができる。
カーボンブラックとしては、特に制限はなく、例えば、高、中又は低ストラクチャーのSAF、ISAF、IISAF、N339、HAF、HAF-HS、FEF、GPF、SRFグレードのカーボンブラック、特にSAF、ISAF、IISAF、HAF、HAF-HS、FEFグレードのカーボンブラックを用いるのが好ましい。カーボンブラックは、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
カーボンブラックとしては、例えば、東海カーボン社製、商品名「シースト9」、「シースト3H」等の市販品を用いることができる。
【0018】
カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)は、JISK 6217-2:2001に準拠して測定され、30m/g以上200m/g以下であることが好ましく、40m/g以上180m/g以下であることがより好ましく、60m/g以上160m/g以下であることがさらに好ましい。
【0019】
カーボンブラックの配合量は、ゴムの補強性及び耐摩耗性を向上させる観点から、ゴム成分100質量部に対して、1質量部以上であることが好ましく、3質量部以上であることがより好ましく、5質量部以上であることがさらに好ましい。カーボンブラックの配合量は、分散性の観点から、ゴム成分100質量部に対して、90質量部以下であることが好ましく、85質量部以下であることがより好ましく、80質量部以下であることがさらに好ましい。ただし、黒色以外の着色ゴムとする場合、カーボンブラックは0質量部の場合もある。
【0020】
<無機充填剤>
充填剤として無機充填剤を配合することにより、湿潤路面でのグリップ特性(ウェットグリップ特性)及び耐摩耗性を向上させることができる。
無機充填剤は、シリカ及び水酸化アルミニウム(Al(OH))が挙げられる。無機充填剤は、シリカ及び水酸化アルミニウムのいずれか少なくとも1つから選ばれることが好ましい。
【0021】
無機充填剤の配合量は、湿潤路面でのグリップ特性(ウェットグリップ特性)及び耐摩耗性を向上させる観点から、ゴム成分100質量部に対して、10質量部以上であることが好ましく、15質量部以上であることがより好ましく、20質量部以上であることがさらに好ましい。無機充填剤の配合量は、分散性の観点から、ゴム成分100質量部に対して、95質量部以下であることが好ましく、90質量部以下であることがより好ましく、85質量部以下であることがさらに好ましい。
【0022】
《シリカ》
無機充填剤としてシリカを配合することにより、湿潤路面でのグリップ特性及び耐摩耗性を向上させることができる。
シリカとしては、特に制限はなく、例えば、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム等が挙げられ、これらの中でも、湿式シリカが好ましい。シリカは、一種単独で使用してもよいし、二種以上を併用してもよい。
シリカとしては、例えば、東ソー・シリカ社製、商品名「ニップシールAQ」(BET比表面積=205m/g)、デグッサ社製、商品名「ウルトラジルVN3」(BET比表面積=175m/g)等の市販品を用いることができる。
【0023】
シリカのBET比表面積は、ISO 5794/1に準拠して測定され、40m/g以上350m/g以下の範囲が好ましく、80m/g以上350m/g以下の範囲がより好ましく、120m/g以上350m/g以下の範囲がさらに好ましい。シリカのBET比表面積が上記範囲であることによって、ゴム補強性とジエン系ゴム中への分散性とを両立できる。
【0024】
シリカの配合量は、湿潤路面でのグリップ特性(ウェットグリップ特性)及び耐摩耗性を向上させる観点から、ゴム成分100質量部に対して、40質量部以上であることが好ましく、45質量部以上であることがより好ましく、50質量部以上であることがさらに好ましい。シリカの配合量は、耐摩耗性及び分散性の観点から、ゴム成分100質量部に対して、100質量部以下であることが好ましく、95質量部以下であることがより好ましく、90質量部以下であることがさらに好ましい。
【0025】
《水酸化アルミニウム》
無機充填剤として水酸化アルミニウムを配合することにより、湿潤路面でのグリップ特性(ウェットグリップ特性)を向上させることができる。
水酸化アルミニウムとしては、特に制限はなく、ギブサイト及びバイヤライトのいずれも用いることができる。
水酸化アルミニウムとしては、例えば、昭和電工社製、商品名「ハイジライト H-43M」(平均粒子径:0.75μm)、「ハイジライトH-43」(平均粒子径:0.75μm)、「ハイジライト H-42M」(平均粒子径:1.1μm)、「ハイジライト H-42」(平均粒子径:1.1μm)、「ハイジライトH-32」(平均粒子径:8μm)、「ハイジライト H-31」(平均粒子径:20μm)、「ハイジライト H-21」(平均粒子径:26μm)、「ハイジライトH-10」(平均粒子径:55μm)及び「ハイジライト H-10A」(平均粒子径:50μm)等が挙げられる。また、水酸化アルミニウムとしては、例えば、日本軽金属社製、商品名「B1403」(平均粒子径:1μm)、「B703」(平均粒子径:2μm)、「B103」(平均粒子径:8μm)、「B153」(平均粒子径:15μm)、「B303」(平均粒子径:30μm)及び「B53」(平均粒子径:50μm)等が挙げられる。また、水酸化アルミニウムとしては、例えば、住友化学社製「C301」(平均粒子径:2μm)、「C303」(平均粒子径:3μm)及び「C308」(平均粒子径:8μm)等が挙げられる。
【0026】
水酸化アルミニウムの配合量は、湿潤路面でのグリップ特性(ウェットグリップ特性)を向上させる観点から、ゴム成分100質量部に対して、1質量部以上であることが好ましく、5質量部以上であることがより好ましく、15質量部以上であることがさらに好ましい。水酸化アルミニウムの配合量は、分散性の観点から、ゴム成分100質量部に対して、40質量部以下であることが好ましく、35質量部以下であることがより好ましく、30質量部以下であることがさらに好ましい。
【0027】
<その他の配合剤>
本発明における義足ソール用ゴム組成物は、通常、ゴム工業界で通常使用される配合剤(充填剤を除く)を適宜選択して配合することができる。このような配合剤としては、例えば、老化防止剤、軟化剤(オイル)、ワックス、シランカップリング剤、ステアリン酸等の加硫促進剤、酸化亜鉛等の加硫促進助剤、硫黄等の加硫剤等が挙げられる。配合剤は、市販品を好適に使用することができる。
【0028】
軟化剤(オイル)の配合量は、摩耗特性を向上させる観点から、ゴム成分100質量部に対して、100質量部以下であることが好ましく、10質量部以上75質量部以下であることがより好ましく、20質量部以上50質量部以下であることがさらに好ましい。軟化剤(オイル)の配合量が100質量部以下であれば、ウェットグリップ特性及びドライグリップ特性が悪化するのを抑制することができる。
軟化剤(オイル)としては、ゴム成分としてスチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)を含む場合は、スチレン-ブタジエン共重合体ゴム(SBR)との相溶性の観点から、芳香族系オイルが用いることが好ましい。また、軟化剤(オイル)としては、低温時(5℃から20℃)における耐摩耗性を重視する観点から、ナフテン系オイル及びパラフィン系オイル等を用いることが好ましい。
【0029】
<義足ソール用ゴム組成物の製造方法>
本発明の義足ソール用ゴム組成物は、既述の成分を混練することにより得られる。混練方法は、当業者が通常実施する方法に従えばよく、例えば、硫黄、加硫促進剤及び酸化亜鉛以外の全成分(加硫遅延剤を用いる場合は、さらに、加硫遅延剤を含む)を、バンバリーミキサー、ブラベンダー、ニーダー及び高剪断型ミキサー等を用いて100~200℃で混練した後、硫黄、加硫促進剤及び酸化亜鉛(必要に応じて、さらに加硫遅延剤)を添加して、混練ロール機等で60~130℃で混練すればよい。
【0030】
[義足ソール]
本発明の実施の形態に係る義足ソール10は、図1に示すように、義足20の路面と接する箇所に備えられる。
義足ソール10を義足20に取り付ける手段としては、特に限定はなく、例えば、接着剤による固着手段、又は、締結具による締結手段を採用することができる。締結手段を採用した場合は、義足ソール10の付け替えが容易となる。締結手段で用いる締結具としては、ネジ、ベルト、紐、ファスナー及びバックル等が挙げられる。
【0031】
本発明の実施の形態に係る義足ソール10は、上述した義足ソール用ゴム組成物により形成される。義足ソール10の形成方法は、特に限定されず、従来公知の方法により形成することができる。
義足ソール10は、図2に示すように、ソール模様11を設けることにより、排水機能を向上させ、湿潤路面でのグリップ特性(ウェットグリップ特性)を向上させることができる。ソール模様11は、特に限定されず、例えば、丸模様、矩形模様、多角形模様及び毘沙門亀甲模様等が挙げられる。ソール模様11は、一種単独の模様を使用してもよいし、二種以上の模様を併用してもよい。また、ソール模様11は、一種単独の大きさの模様を使用してもよいし、二種以上の大きさの模様を併用してもよい。ソール模様11は、ウェットグリップ特性を向上させ、かつ、クッション性(柔軟性)を向上させる観点から、ソールに複数配置することが好ましく、ソール全面に配置することがより好ましい。
【0032】
本発明の実施の形態に係る義足ソール10は、図3に示すように、義足20との間に干渉層30を設けることが好ましい。干渉層30は、路面からの衝撃を干渉し、クッション性(柔軟性)を向上させることができる。
干渉層30としては、特に限定はなく、ウレタン樹脂素材等の弾性素材を用いることができる。
【0033】
<義足ソールの製造方法>
まず、上述した義足ソール用ゴム組成物をロール成形及びカレンダー成形等により、ゴムシートに加工する。そして、得られたゴムシートを、必要に応じて例えばモールドで成形し、130℃以上の加硫温度で加硫を行って義足ソール10を得る。
【実施例
【0034】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0035】
<動的貯蔵弾性率>
縦40mm、横5mm、厚さ2mmの試料を作製した。この試料について、東洋精機社製スペクトロメータを使用して、初期荷重160g、動的歪1%、周波数52Hzの測定条件で、-45℃から63℃まで、3℃/分の昇温速度にて動的貯蔵弾性率(E’)を測定した。
得られたデータから5℃から20℃の平均値である低温想定動的貯蔵弾性率(E’)を求める。また、得られたデータから20℃から40℃の平均値である高温想定動的貯蔵弾性率(E’)を求めた。
低温想定動的貯蔵弾性率(E’)及び高温想定動的貯蔵弾性率(E’)は、値が小さい程、クッション性(柔軟性)に優れることを示す。
【0036】
<ゴム硬度>
ゴム硬度(Hd)は、JIS K6253-3(タイプA)に準拠して測定した。
【0037】
<300%伸び引張応力>
300%伸び引張応力(Md300)は、JIS K 6251に準拠して測定した。
【0038】
<ウェットグリップ特性>
参考例1及び実施例2については、長径40mm、短径20mm、厚さ2mmの加硫ゴムを、固定した湿潤鉄板路面上に押し付けて往復させるときに発生する摩擦力をロードセルで検出し、動摩擦係数を算出した。比較例1~3については、参考例1及び実施例2と同様の条件にて動摩擦係数を算出する。なお、測定温度は15℃で行った。
各例について、比較例1を100として指数表示した。指数値が大きいほど、ウェットグリップ特性が優れていることを示す。
【0039】
<ドライグリップ特性>
参考例1及び実施例2については、長径40mm、短径20mm、厚さ2mmの加硫ゴムを、固定した乾燥コンクリート路面上に押し付けて往復させるときに発生する摩擦力をロードセルで検出し、動摩擦係数を算出した。比較例1~3については、参考例1及び実施例2と同様の条件にて動摩擦係数を算出する。なお、測定温度は室温で行った。
各例について、比較例1を100として指数表示した。指数値が大きいほど、ドライグリップ特性が優れていることを示す。
【0040】
<摩耗評価>
日邦産業株式会社製のDFテスターを使用して、参考例1及び実施例2について摩耗量を測定し、該摩耗量を算出した。比較例1~3については、参考例1及び実施例2と同様の条件にて摩耗量を算出する。また、測定温度は30℃とする。
各例について、比較例1を100として指数表示する。指数値が小さいほど、耐摩耗性が優れていることを示す。
【0041】
参考例1、実施例2
参考例1及び実施例2は、表1に示す配合内容により、義足ソール用ゴム組成物を調製した。その後、加硫機中において160℃15分で加硫し加硫ゴムを得た。
参考例1及び実施例2の義足ソール用ゴム組成物について、上記の各評価を行った結果を表1に示す。
【0042】
[比較例1~3]
比較例1~3は、表1に示す配合内容により、義足ソール用ゴム組成物を調製する。その後、加硫機中において160℃15分で加硫し加硫ゴムを得る。
比較例1~3の義足ソール用ゴム組成物について、上記の各評価を表1に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
[注]
*1:スチレン-ブタジエン共重合体ゴム、JSR社製、商品名「JSR0150」(34.0部油展)
*2:東海カーボン社製、商品名「シースト9」、SAF(NSA:145m/g)
*3:東海カーボン社製、商品名「シースト3H」、HAF-HS(NSA:80m/g)
*4:東ソー・シリカ社製、商品名「ニップシールAQ」(BET表面積205m/g)
*5:昭和電工社製、商品名「ハイジライト H-43M」(平均粒子径:0.75μm)
*6:マイクロクリスタリンワックス、日本精鑞社製、商品名「オゾエース0280」
*7:N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、大内新興化学工業社製、商品名「ノクラック6C」
*8:信越化学工業社製、商品名「ABC-856」
【0045】
表1より、参考例1及び実施例2の義足ソール用ゴム組成物は、動的貯蔵弾性率、ゴム硬度、300%伸び引張応力、ウェットグリップ特性、ドライグリップ特性及び摩耗評価の各評価において良好であった。
【0046】
<ウェットグリップ特性(摩擦係数)>
参考例2及び実施例4については、長径40mm、短径20mmの測定冶具に合うように毘沙門亀甲模様を有する加硫ゴムを切り出し、固定した湿潤鉄板路面上に押し付けて往復させるときに発生する摩擦力をロードセルで検出し、動摩擦係数を算出した。比較例4については、長径40mm、短径20mmの測定冶具に合うように毘沙門亀甲模様を有する熱可塑性ポリウレタンを切り出し、固定した湿潤鉄板路面上に押し付けて往復させるときに発生する摩擦力をロードセルで検出し、動摩擦係数を算出した。なお、測定温度は15℃で行った。
各例について、比較例4を100として指数表示する。指数値が大きいほど、ウェットグリップ特性が優れていることを示す。
【0047】
<ウェットグリップ特性(官能評価)>
義足装着者の義足に作製した義足ソールを貼り付けて、マンホールの上等の湿潤鉄板路面、横断歩道の白線、石畳上を走行して官能評価を行った。滑る不安を感じないものを「A」評価とし、少し滑る不安を感じるものを「B」評価とし、滑ってバランスを崩す恐れを感じるものを「C」評価とした。
【0048】
参考例2
参考例1の義足ソール用ゴム組成物を用いて、参考例2の義足ソールを作製した。義足ソールには、ソール模様として毘沙門亀甲模様をソール全面に配置した。
参考例2の義足ソールについて、上記の各評価を行った結果を表2に示す。
【0049】
[実施例4]
実施例2の義足ソール用ゴム組成物を用いて、実施例4の義足ソールを作製した。義足ソールには、ソール模様として毘沙門亀甲模様をソール全面に配置した。
実施例4の義足ソールについて、上記の各評価を行った結果を表2に示す。
【0050】
[比較例4]
熱可塑性ポリウレタン製の毘沙門亀甲模様の市販の靴ソールを比較例4とした。義足ソールには、ソール模様として毘沙門亀甲模様をソール全面に配置する。
比較例4の義足ソールについて、上記の各評価を表2に示す。
【0051】
【表2】
【0052】
表2より、参考例2及び実施例4の義足ソール用ゴム組成物は、ウェットグリップ特性の各評価において良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明の義足ソール用ゴム組成物は、義足のソール材、特に、板ばね状の競技用義足のソール材として好適に用いられる。
【符号の説明】
【0054】
10…義足ソール
11…ソール模様
20…義足
30…干渉層
図1
図2
図3