(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-12
(45)【発行日】2023-09-21
(54)【発明の名称】超音波診断装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 8/14 20060101AFI20230913BHJP
【FI】
A61B8/14
(21)【出願番号】P 2020001794
(22)【出願日】2020-01-09
【審査請求日】2022-11-14
(73)【特許権者】
【識別番号】320011683
【氏名又は名称】富士フイルムヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西浦 朋史
【審査官】冨永 昌彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-023347(JP,A)
【文献】特開2012-161537(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0024883(US,A1)
【文献】国際公開第2013/105197(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0031690(US,A1)
【文献】特開2006-141508(JP,A)
【文献】特開2005-168807(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0131293(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0148376(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 - 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波の送受信によって順次生成される複数の超音波フレーム
をメモリに記憶させる記憶処理と、
複数の前記超音波フレームに対し、所定の注目条件を満たすフレームによって構成される注目グループを特定するグループ化処理と、
前記注目グループを構成する複数のフレームの中から、代表フレームを選出する代表フレーム選出処理と、を実行するプロセッサを備え、
前記注目条件は、
領域認識処理であって、画像において特徴のある領域を認識する領域認識処理によって特定さ
れ、被検体における病変候補領域に対応する特異領域を示すフレームであるという条件を含み、
前記代表フレーム選出処理は、
前記特異領域の幾何学的性質に基づいて、前記代表フレームを選出する処理を含
み、
前記プロセッサは、
時間軸上または空間軸上の異なる位置に存在する複数の前記病変候補領域に対応する複数の前記注目グループのそれぞれに対し、前記代表フレームを特定する情報を対応付ける処理と、
複数の前記注目グループのうちの1つの前記代表フレームを、ユーザの操作に応じて前記メモリから読み出す処理と、
前記ユーザの操作に応じて読み出された前記代表フレームに基づく画像を、表示部に表示させる処理と、を実行することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の超音波診断装置であって、
前記プロセッサは、
複数の前記注目グループのそれぞれに対応する前記代表フレームを特定する情報を、前記表示部に表示させる代表フレーム特定情報表示処理を実行し、
前記代表フレーム特定情報表示処理を実行したときにおけるユーザの操作に応じて、複数の前記注目グループのうちの1つの前記代表フレームを前記メモリから読み出す処理を実行することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項3】
請求項1
または請求項2に記載の超音波診断装置において、
前記グループ化処理は、
時間軸上または空間軸上で隣接する前記超音波フレームについての前記特異領域の位置関係に基づいて、複数の前記超音波フレームの中から前記注目グループを構成するフレームを特定する処理を含むことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項4】
請求項1
から請求項
3のいずれか1項に記載の超音波診断装置において、
前記グループ化処理は、
前記超音波フレームを特定するフレーム識別情報と、前記超音波フレームが示す前記特異領域の幾何学的性質を示す情報とを対応付けた検出情報テーブルを生成する処理と、
複数の前記超音波フレームに対し、前記検出情報テーブルに基づいて前記注目グループを特定する処理と、を含み、
前記代表フレーム選出処理は、
前記注目グループを構成する複数のフレームの中から、代表フレームを選出する処理を含むことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項5】
請求項1から請求項
4のいずれか1項に記載の超音波診断装置において、
前記プロセッサは、
前記代表フレームを特定する情報に基づいて、前記メモリから前記代表フレームを読み出すことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項6】
請求項
5に記載の超音波診断装置において、
前記プロセッサは、
複数の前記超音波フレームが前記メモリに記憶されると共に、複数の前記超音波フレームに基づく画像を時間経過と共に、前記表示部に順次表示させる表示処理を実行し、
前記メモリに記憶されている複数の前記超音波フレームに対し、前記グループ化処理および前記代表フレーム選出処理を、前記表示処理と共に並行して実行することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項7】
請求項
6に記載の超音波診断装置において、
前記プロセッサは、
前記代表フレーム選出処理によって選出された前記代表フレームに基づいて、前記特異領域に対する計測処理を、前記表示処理と共に並行して実行することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項8】
請求項
5に記載の超音波診断装置において、
前記プロセッサは、
複数の前記超音波フレームが前記メモリに記憶されると共に、複数の前記超音波フレームに基づく画像を時間経過と共に、前記表示部に順次表示させる表示処理と、
ユーザの操作に基づいて前記表示処理を停止し、前記操作があったときに前記表示部に表示されていた画像、または過去に生成された前記超音波フレームに基づく画像を、前記表示部に表示させる状態を保持するフリーズ処理と、
前記メモリに記憶されている複数の前記超音波フレームに対し、前記操作があった後に前記グループ化処理および前記代表フレーム選出処理を実行することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項9】
請求項
5に記載の超音波診断装置において、
被検体に対し超音波を送受信する超音波プローブと、
前記超音波プローブの位置を検出する位置センサと、を備え、
前記プロセッサは、
前記超音波フレームと、前記超音波フレームが生成されたときの前記超音波プローブの位置とを対応付けて前記メモリに記憶し、
新たに生成された前記超音波フレームに対応する前記位置が、先に前記メモリに記憶された前記超音波フレームに対応する前記位置と一致し、あるいは各前記位置の相違が所定範囲内であるときは、新たに生成された前記超音波フレームまたは先に前記メモリに記憶された前記超音波フレームのうちの一方のみを前記メモリに記憶することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項10】
超音波診断プログラムであって、
超音波の送受信によって順次生成される複数の超音波フレーム
をメモリに記憶させる記憶処理と、
複数の前記超音波フレームに対し、所定の注目条件を満たすフレームによって構成される注目グループを特定するグループ化処理と、
前記注目グループを構成する複数のフレームの中から、代表フレームを選出する代表フレーム選出処理と、をプロセッサに実行させ、
前記注目条件は、
領域認識処理であって、画像において特徴のある領域を認識する領域認識処理によって特定さ
れ、被検体における病変候補領域に対応する特異領域を示すフレームであるという条件を含み、
前記代表フレーム選出処理は、
前記特異領域の幾何学的性質に基づいて、前記代表フレームを選出する処理を含
み、
前記超音波診断プログラムは、
時間軸上または空間軸上の異なる位置に存在する複数の前記病変候補領域に対応する複数の前記注目グループのそれぞれに対し、前記代表フレームを特定する情報を対応付ける処理と、
複数の前記注目グループのうちの1つの前記代表フレームを、ユーザの操作に応じて前記メモリから読み出す処理と、
前記ユーザの操作に応じて読み出された前記代表フレームに基づく画像を、表示部に表示させる処理と、を前記プロセッサに実行させることを特徴とする超音波診断プログラム。
【請求項11】
請求項10に記載の超音波診断プログラムであって、
複数の前記注目グループのそれぞれに対応する前記代表フレームを特定する情報を、前記表示部に表示させる代表フレーム特定情報表示処理を前記プロセッサに実行させ、
前記代表フレーム特定情報表示処理を実行したときにおけるユーザの操作に応じて、複数の前記注目グループのうちの1つの前記代表フレームを前記メモリから読み出す処理を前記プロセッサに実行させることを特徴とする超音波診断プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置およびプログラムに関し、特に、超音波画像を示す複数のフレームの中から所定の条件を満たすフレームのグループを特定する処理に関する。
【背景技術】
【0002】
被検体を観測する装置として超音波診断装置が広く用いられている。超音波診断装置は、超音波の送受信によって被検体の超音波画像を示すフレームデータ(以下、フレームという)を時間経過と共に順次生成し、フレームに基づく画像を時間経過と共にモニタに表示する。
【0003】
超音波診断装置には、時間経過と共に順次生成されたフレームを記憶するシネメモリを備えたものがある。フレームが時間経過と共に順次生成され、フレームに基づく画像が時間経過と共に順次モニタに表示されると共に、表示された画像に対応するフレームがシネメモリに記憶される。シネメモリには、最新のフレームと共に、過去に遡って一定期間に生成された一連のフレームが記憶される。超音波診断装置は、シネメモリに記憶されたフレームをユーザの操作に基づいて指定し、その指定されたフレームに基づく画像をモニタに表示する。
【0004】
以下の特許文献1~4には、超音波の送受信によって順次生成されたフレームに基づいて、被検体の組織の評価を行う技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-97256号公報
【文献】特開2016-112033号公報
【文献】特開2018-339号公報
【文献】特開2019-24925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
シネメモリに記憶されたフレームをユーザの操作に基づいて指定し、その指定されたフレームに基づく画像をモニタに表示する処理では、シネメモリに記憶された複数のフレームの中から表示対象とするものが指定される。表示対象とするフレームには、例えば、癌、肝硬変等の所見が認められる領域等、被検体において注目すべき領域を示すフレームがある。数多くのフレームが規則性のない状態でシネメモリに記憶されている場合、このような指定表示をする際には、ユーザの操作負担が重くなってしまうことがある。
【0007】
本発明の目的は、被検体において注目すべき領域に対応するフレームを、簡単な処理によって複数のフレームの中から指定することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、超音波の送受信によって順次生成される複数の超音波フレームをメモリに記憶させる記憶処理と、複数の前記超音波フレームに対し、所定の注目条件を満たすフレームによって構成される注目グループを特定するグループ化処理と、前記注目グループを構成する複数のフレームの中から、代表フレームを選出する代表フレーム選出処理と、を実行するプロセッサを備え、前記注目条件は、領域認識処理であって、画像において特徴のある領域を認識する領域認識処理によって特定され、被検体における病変候補領域に対応する特異領域を示すフレームであるという条件を含み、前記代表フレーム選出処理は、前記特異領域の幾何学的性質に基づいて、前記代表フレームを選出する処理を含み、前記プロセッサは、時間軸上または空間軸上の異なる位置に存在する複数の前記病変候補領域に対応する複数の前記注目グループのそれぞれに対し、前記代表フレームを特定する情報を対応付ける処理と、複数の前記注目グループのうちの1つの前記代表フレームを、ユーザの操作に応じて前記メモリから読み出す処理と、前記ユーザの操作に応じて読み出された前記代表フレームに基づく画像を、表示部に表示させる処理と、を実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、被検体において注目すべき領域に対応するフレームを、簡単な処理によって複数のフレームの中から指定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】超音波画像生成部の構成を、超音波送受信部、病変候補検出部および表示部と共に示す図である。
【
図3】超音波画像およびフレームを概念的に示す図である。
【
図4】病変候補検出部の構成を、シネメモリおよび制御部と共に示す図である。
【
図8】検出情報テーブルと代表フレームテーブルとの対応関係の例を示す図である。
【
図9】画像データによって模式的に示される複数のフレームを示す図である。
【
図11】各フレームに併せて病変候補領域を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(1)超音波診断装置の構成および基本動作
各図を参照して本発明の実施形態に係る超音波診断装置が説明される。複数の図面に示された同一の事項については同一の符号が付されており、その説明が簡略化されている。
【0012】
図1には、本発明の実施形態に係る超音波診断装置100の構成が示されている。超音波診断装置100は、超音波プローブ10、超音波送受信部12、プロセッサ24、表示部16および操作パネル22を備えている。プロセッサ24は、制御部20、超音波画像生成部14および病変候補検出部18を備えている。プロセッサ24は、外部から読み込まれ自らに記憶された超音波診断プログラム、あるいは、自らに予め記憶された超音波診断プログラムを実行し、制御部20、超音波画像生成部14および病変候補検出部18を構成する。モニタとしての表示部16は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等のディスプレイであってよい。
【0013】
操作パネル22は、キーボード、マウス、タッチパネル、レバー、回転ツマミ等を備えてよい。操作パネル22は、ユーザの操作に基づく操作情報を制御部20に出力する。制御部20は、操作情報に基づいて超音波送受信部12、超音波画像生成部14、病変候補検出部18および表示部16を制御する。操作パネル22は、表示部16と一体化されたタッチパネル・ディスプレイであってもよい。
【0014】
超音波送受信部12、超音波画像生成部14、病変候補検出部18および表示部16は、制御部20の制御によって次のように動作する。超音波プローブ10は複数の振動素子を備えており、超音波送受信部12は、複数の振動素子のそれぞれに電気信号である送信信号を出力する。複数の振動素子は、それぞれに与えられた送信信号に応じて被検体90に超音波を送信する。複数の振動素子のそれぞれは、被検体90で反射した超音波を受信し、電気信号である受信信号を超音波送受信部12に出力する。
【0015】
超音波送受信部12は、複数の振動素子のそれぞれに出力する送信信号の遅延時間を調整することで、複数の振動素子から被検体90に送信される超音波を特定の方向に向けて、超音波ビームを形成する。超音波送受信部12は、超音波ビームの方向から受信された超音波に基づく複数の受信信号が強め合うように、複数の振動素子から出力された受信信号を整相加算する。超音波送受信部12は、整相加算によって得られた整相加算・受信信号を超音波画像生成部14に出力する。
【0016】
超音波送受信部12は、複数の振動素子のそれぞれに出力する送信信号の遅延時間を変化させることで、被検体90内に形成される超音波ビームを走査する。また、超音波ビームの走査に応じて複数の振動素子から出力された受信信号を整相加算し、超音波ビームの各方向または各位置に対して整相加算・受信信号を超音波画像生成部14に出力する。
【0017】
図2には、超音波画像生成部14の構成が超音波送受信部12、病変候補検出部18および表示部16と共に示されている。超音波画像生成部14は、フレーム生成部30、フレーム出力部32およびシネメモリ34を備えている。フレーム生成部30は、超音波ビームの各方向または各位置に対する整相加算・受信信号に基づいて、超音波画像を表すフレーム(超音波フレーム)を生成する。フレーム生成部30は、被検体90における断層面に対して超音波ビームが一回走査されるごとに1つのフレームを生成してよい。1つのフレームは1枚の超音波画像を示す。
【0018】
フレーム生成部30は、時間経過と共に順次、所定のフレームレートでフレーム出力部32およびシネメモリ34にフレームを出力する。ここで、フレームレートは、単位時間当たりにフレーム生成部30から出力されるフレームの数として定義される。シネメモリ34は、最新のフレームに加えて過去に遡ってN-1個のフレームを記憶する。N個のフレームがシネメモリ34に記憶されているときにおいて、新たに生成されたフレームがシネメモリ34に記憶されるときは、最も先に記憶されたフレームが削除され、最新のフレームがシネメモリ34に記憶される。
【0019】
超音波診断装置100の動作モードが
図1および
図2を参照して説明される。超音波診断装置100の動作モードには、リアルタイム測定モードおよびフリーズモードがある。リアルタイム測定モードは、被検体90の断層面に対して超音波ビームが繰り返し走査されることに応じてフレーム生成部30が順次フレームを生成し、順次生成されたフレームに基づく超音波画像を表示部16に順次表示する動作モードである。フリーズモードは、最後に生成されたフレームまたはシネメモリ34から読み出されたフレームに基づく超音波画像を表示部16に表示した状態が保持される動作モードである。フリーズモードでは、超音波送受信部12が送信信号を超音波プローブ10に出力し、超音波送受信部12が超音波プローブ10からの受信信号を取得する動作が停止すると共に、シネメモリ34にフレームが記憶された状態が保持される。
【0020】
リアルタイム測定モードの動作では、フレーム出力部32は、フレーム生成部30から時間経過と共に順次出力されたフレームを、時間経過と共に順次、表示部16に出力する。表示部16は、フレーム出力部32から順次出力されたフレームに基づく超音波画像を表示する。
【0021】
フリーズモードの動作では、操作パネル22におけるユーザの操作に従って、制御部20が、シネメモリ34に記憶されているフレームのうちいずれかを指定し、フレーム出力部32にその指定したフレームを読み出させる。フレーム出力部32は、制御部20によって指定されたフレームをシネメモリ34から読み出し、表示部16に出力する。表示部16は、フレーム出力部32から出力されたフレームに基づく超音波画像を表示する。
【0022】
リアルタイム測定モードの動作およびフリーズモードの動作によって、被検体90の診断を行う手順の例が以下に示される。超音波診断装置100がリアルタイム測定モードで動作しているときに、ユーザは、被検体90に超音波プローブ10を接触させながら、超音波プローブ10を被検体90の表面上で移動させる。すなわち、ユーザは、自らの手の動きによって超音波プローブ10を被検体90上で走査させる。
【0023】
このように、超音波プローブ10に対するマニュアル走査が行われている間、時間経過と共に順次フレームが生成され、各フレームに基づく超音波画像が表示部16に表示される。表示部16には、超音波画像が所定のフレームレートに従って変化する動画像が表示される。また、フレーム生成部30によって生成された各フレームがシネメモリ34に記憶される。
【0024】
リアルタイム測定モードで超音波診断装置100が動作しているときに、操作パネル22におけるユーザの操作によって、超音波診断装置100の動作モードがフリーズモードに切り換えられてよい。例えば、リアルタイム測定モードの動作によって表示部16に表示された超音波画像に癌、肝硬変等が疑われる病変候補領域(特異領域)が認められた場合には、ユーザは操作パネル22を操作し、超音波診断装置100の動作モードをリアルタイム測定モードからフリーズモードに切り換える。これによって、超音波診断装置100は、最後に生成されたフレームに基づく超音波画像を表示部16に表示する状態となる。この状態では、後述するように、ユーザの指定によってシネメモリ34から読み出されたフレームに基づく超音波画像が表示部16に表示され得る。
【0025】
このように、プロセッサ24は、複数のフレームがシネメモリ34に記憶されると共に、複数のフレームに基づく超音波画像を時間経過と共に表示部16に順次表示させる表示処理を実行する。プロセッサ24は、さらに、ユーザの操作に基づいて表示処理を停止し、ユーザによる操作があったときに表示部16に表示されていた超音波画像、または過去に生成されたフレームに基づく超音波画像を、表示部16に表示させる状態を保持するフリーズ処理を実行する。
【0026】
図3(a)には、フリーズモードにおいて表示部16に表示される各超音波画像が概念的に示されている。
図3(b)には、シネメモリ34に記憶されるフレーム36が平面状の超音波画像によって概念的に示されている。各フレーム36は、リアルタイム測定モードでの動作時に、超音波プローブ10を被検体90上で一定の速度で直線状に移動させた場合に取得されたものである。横方向に伸びる軸は時間軸(t軸)であり、時間軸に垂直にxy平面が定義されている。xy平面に平行な面において超音波ビームが走査され、各フレーム36が示す超音波画像はxy平面に対して平行に広がっており、時間軸上に複数のフレーム36が連なっている。最も左側のフレーム36-Sは、最も早期にシネメモリ34に記憶されたフレームであり、最も右側のフレーム36-Eは最後にシネメモリ34に記憶されたフレームである。
【0027】
図1に示された操作パネル22の操作によって、超音波診断装置100の動作がフリーズモードに設定されたときには、最後にシネメモリ34に記憶されたフレーム36-Eに基づく超音波画像が表示部16に表示される。操作パネル22の操作によってフレーム36-1が指定されると、表示部16には超音波画像38-1が表示される。同様に、フレーム36-2または36-3が指定されると、表示部16には、超音波画像38-2または38-3が表示される。
【0028】
図3(b)には、各フレームに併せて病変候補領域40-1~40-3が示されている。病変候補領域は、フレームを構成する画素の画素値が周囲の平均的な画素値と異なる特異領域であり、画像において特徴のある領域を認識する領域認識処理によって定義付けられる。領域認識処理には、後述する二値化処理、パターンマッチング、領域分割等がある。
【0029】
超音波画像38-1には病変候補領域40-1が現れている。超音波画像38-2には病変候補領域40-1および40-2が現れている。超音波画像38-3には病変候補領域40-3が現れている。シネメモリ34に記憶されているフレームのうちいずれかをユーザが指定し、指定されたフレームによって超音波画像が表示されることで、病変候補領域に対する診断が行われる。
【0030】
(2)病変候補検出部のリアルタイム測定モードでの動作
図4には、病変候補検出部18の構成が、シネメモリ34および制御部20と共に示されている。病変候補検出部18は、フレーム解析部42、解析メモリ54および基準データ生成部44を備えている。ここでは超音波診断装置100がリアルタイム測定モードで動作しているときの病変候補検出部18の動作が説明される。
【0031】
フレーム解析部42は、シネメモリ34に新たに1つのフレームが記憶されると、そのフレームに対する検出情報を生成する。検出情報は、フレームを識別する情報(フレーム識別情報)としてのフレーム識別番号、病変候補領域の位置、および病変候補領域のサイズが対応付けられた情報である。病変候補領域の位置は、例えば、病変候補領域の重心の位置として定義される。病変候補領域のサイズは、例えば、病変候補領域の面積、最大径の長さ、最小径の長さ等によって定義される。また、病変候補領域の径は、例えば、平行な2本の直線で病変候補領域を挟んだときにおける2本の直線の間の距離として定義される。
【0032】
フレーム解析部42は、次のような二値化処理によって、フレームが示す超音波画像から病変候補領域を特定してよい。フレーム解析部42は、画素値が所定の二値化閾値を超える領域の画素値を1とし、二値化閾値以下の画素値を0とする二値化処理を実行し、二値化処理によって画素値が0となった領域を病変候補領域として特定する。
【0033】
フレーム解析部42は、次のようなパターンマッチングによって、病変候補領域を特定してもよい。基準データ生成部44は、画素値、大きさ、形状等が異なる複数種の病変候補領域のパターンを示す基準データを記憶しまたは生成する。フレーム解析部42は、基準データ生成部44から基準データを取得し、複数種の病変候補領域のパターンのそれぞれと、フレームが示す超音波画像との近似度を求める。近似度は、病変候補領域のパターンを示す画像と、フレームが示す超音波画像との相関演算によって求められる相関値であってよい。フレーム解析部42は、相関値が所定値を超えるパターンに基づいて、超音波画像における病変候補領域を特定する。
【0034】
フレーム解析部42は、次のような領域分割によって病変候補領域を特定してもよい。領域分割は、形状、大きさ、画素値等について予め定められた特徴のある領域を超音波画像から抽出する処理である。領域分割に際して必要な基準データは、基準データ生成部44が生成し、あるいは記憶している。フレーム解析部42は、基準データ生成部44から基準データを取得し、フレームが示す超音波画像に対して病変候補領域を領域分割によって特定する。
【0035】
フレーム解析部42は、シネメモリ34に順次記憶されていくフレームのそれぞれに対して検出情報を生成する。フレーム解析部42は、さらに、各フレームのフレーム識別番号に対して病変候補領域の位置、サイズ等の幾何学的性質が対応付けられた検出情報テーブルを生成し、解析メモリ54における検出情報テーブル領域46に記憶する。
図5には、検出情報テーブルの例が示されている。各フレームに対しては、シネメモリ34に記憶された順序でフレーム識別番号が付されている。この例では、フレーム識別番号1~3のフレームついては病変候補領域が検出されておらず、病変候補領域の位置、および病変候補領域のサイズが求められていないことが、記号「--」によって示されている。
【0036】
フレーム識別番号50~52、150および151のフレームについては、フレーム識別番号に対して、フレーム解析部42によって求められた検出位置およびサイズが対応付けられている。検出位置はxy座標値によって表され、x軸座標値およびy軸座標値によって「(x,y)」と表記されている。サイズは最小径をRaとし、最大径をRbとして「(Ra,Rb)」と表記されている。病変候補領域のサイズは、病変候補領域の面積によって表されてもよい。
【0037】
(3)病変候補検出部のフリーズモードでの動作
次に、超音波診断装置100がフリーズモードで動作している場合にフレーム解析部42によって実行される処理が、主に
図4を参照して、適宜
図6~
図8を参照しながら説明される。シネメモリ34には、超音波診断装置100の動作モードがフリーズモードに設定された時から過去に遡る期間に取得された複数のフレームが記憶されている。フレーム解析部42は、検出情報テーブルを参照し、シネメモリ34に記憶されている複数のフレームが構成するフレーム集合に対してグループ化処理を実行する。
【0038】
グループ化処理は、フレーム集合を構成する複数のフレームのうち、所定の注目条件を満たすフレームによって構成される注目グループを特定する処理である。注目条件は、病変候補領域が検出されているフレームであるという条件であってよい。また、注目条件は、病変候補領域が検出されており、かつ、フレーム識別番号が隣り合うフレーム同士において、病変候補領域が近接するフレームであるという条件であってもよい。以下では、後者の注目条件が採用された例が説明される。
【0039】
ここで、病変候補領域が近接する状態は、フレーム識別番号が隣り合う2つのフレーム(以下、隣接フレームという)のうちの一方が示す病変候補領域の位置と、他方が示す病変候補領域の位置との間の距離が所定の閾値以下である状態として定義されてよい。また、病変候補領域が近接する状態は、隣接フレームのうちの一方が示す病変候補領域と、他方が示す病変候補領域との重なり率が所定の閾値を超える状態として定義されてよい。ここで、重なり率は、隣接フレームが示す各病変候補領域の面積を併せた合計面積に対する、隣接フレームのうちの一方が示す病変候補領域のxy平面への投影像と、他方が示す病変候補領域のxy平面への投影像とが重なる面積の比率として定義される。また、病変候補領域が近接する状態は、隣接フレームのうちの一方が示す病変候補領域の位置と、他方が示す病変候補領域の位置との間の距離が所定の閾値以下であり、かつ、隣接フレームが示す各病変候補領域の重なり率が所定の閾値を超える状態として定義されてよい。
【0040】
このように、グループ化処理は、時間軸上で隣接するフレームについての病変候補領域(特異領域)の位置関係に基づいて、複数のフレームの中から注目グループを構成するフレームを特定する処理を含んでいる。
【0041】
フレーム解析部42は、フレーム集合に対して特定された注目グループを示す注目グループテーブルを生成し、解析メモリ54における注目グループテーブル領域48に記憶する。注目グループテーブルは、注目グループを特定するグループ識別番号に、その注目グループを構成する複数のフレームの各フレーム識別番号を対応付けたものである。
図6には注目グループテーブルの例が示されている。この例では、グループ識別番号「1」に対し、フレーム識別番号「50,51,52,53,・・・・・85」が対応付けられている。また、グループ識別番号「10」に対し、フレーム識別番号「150,151,152,153,・・・・・190」が対応付けられている。すなわち、フレーム識別番号50,51,52,53,・・・・・85によって特定されるフレーム群によって、グループ識別番号1で特定される注目グループが構成される。また、フレーム識別番号150,151,152,153,・・・・・190によって特定されるフレーム群によって、グループ識別番号10で特定される注目グループが構成される。
【0042】
フレーム解析部42は、注目グループを構成する複数のフレームに対して代表フレーム選出処理を実行する。代表フレーム選出処理は、病変候補領域の幾何学的性質に基づいて、注目グループを構成する複数のフレームから代表フレームを選出する処理を含む。すなわち、フレーム解析部42は、注目グループテーブル48および検出情報テーブル46を参照し、注目グループを構成する複数のフレームの中から、病変候補領域の幾何学的性質に基づいて代表フレームを選出する。
【0043】
例えば、フレーム解析部42は、注目グループを構成する複数のフレームが生成された時間範囲における時間軸上の中点に位置するフレームを代表フレームとして選出してよい。すなわち、フレーム解析部42は、注目グループを構成するM+1個のフレームのフレーム識別番号をK~K+Mとして、Mが偶数である場合には、フレーム識別番号がK+M/2であるフレームを代表フレームとして選出してよい。また、Mが奇数であるときは、フレーム解析部42は、識別番号がK+(M-1)/2またはK+(M+1)/2であるフレームを代表フレームとして選出してよい。ここでMは2以上の整数である。
【0044】
また、フレーム解析部42は、注目グループを構成する複数のフレームのうち、病変候補領域の最大径が最大となるフレームを代表フレームとして選出してもよいし、病変候補領域の面積が最大となるフレームを代表フレームとして選出してもよい。また、フレーム解析部42は、注目グループを構成する複数のフレームのうち、隣接するフレームの病変候補領域の面積の差の絶対値が最小となる隣接フレームのうちの一方を、代表フレームとして選出してもよい。
【0045】
また、フレーム解析部42は、3次元空間における病変候補領域の重心が含まれるフレームを代表フレームとして選出してよい。3次元空間における病変候補領域は、時間軸t、x軸およびy軸によって定義されるxyt3次元空間においてフレーム集合が示す立体的な病変候補領域である。
【0046】
フレーム解析部42は、グループ識別番号に対し、代表フレームを特定する代表フレーム識別番号を対応付けた代表フレームテーブルを生成し、解析メモリ54における代表フレームテーブル領域50に記憶する。
【0047】
図7には、代表フレームテーブルの例が示されている。
図8には、検出情報テーブルと代表フレームテーブルとの対応関係の例が示されている。
図7に示されているように、グループ識別番号「1」に対し、代表フレーム識別番号「70」が対応付けられ、グループ識別番号「10」に対し、代表フレーム識別番号「169」が対応付けられている。すなわち、グループ識別番号「1」によって特定される注目グループの代表フレームは、代表フレーム識別番号「70」によって特定されるフレームである。グループ識別番号「10」によって特定される注目グループの代表フレームは、代表フレーム識別番号「70」によって特定されるフレームである。
【0048】
図8には、フレーム識別番号50、51、52、・・・・85によって構成される注目グループに対して、代表フレーム識別番号「70」によって特定されるフレームが代表フレームとして選出されたことが示されている。また、フレーム識別番号150、151、152、・・・・190によって構成される注目グループに対して、代表フレーム識別番号「169」によって特定されるフレームが代表フレームとして選出されたことが示されている。
【0049】
フレーム解析部42は、代表フレームが示す病変候補領域に対し病変計測処理を実行してもよい。すなわち、フレーム解析部42は代表フレームを選出すると共に、代表フレームによって示される病変候補領域の面積、外周の長さ、最大径、最小径、病変候補領域内の画素値の平均値、最大値、最小値等の病変計測情報を求めてもよい。病変計測情報の一部には、先に求められた検出情報が援用されてもよい。フレーム解析部42は、代表フレーム識別番号と病変計測情報とを対応付けた計測情報テーブルを生成し、解析メモリ54の計測情報テーブル領域52に記憶する。
【0050】
(4)代表フレームに基づく超音波画像を表示する処理
超音波診断装置100がフリーズモードで動作しているときに、代表フレームに基づく超音波画像を表示部16に表示させる処理が、
図1、
図2、
図4および
図9を参照して以下に説明される。制御部20は、解析メモリ54における代表フレームテーブル領域50を参照し、ユーザが代表フレームを指定するための代表フレーム情報を表示部16に出力する。表示部16は、代表フレーム情報に応じた画像を表示する。
【0051】
代表フレーム情報は、代表フレーム識別番号を配列した一覧表を示す情報であってもよい。操作パネル22においてユーザが代表フレーム識別番号を指定する操作がなされると、制御部20は、超音波画像生成部14を制御し、代表フレーム識別番号に対応する代表フレームによって表される超音波画像を表示部16に表示させる。すなわち、
図2に示された超音波画像生成部14におけるフレーム出力部32は、シネメモリ34から代表フレームを読み出し、表示部16に表示させる。
【0052】
なお、制御部20は、代表フレームによって表される超音波画像を表示部16に表示させると共に、代表フレーム識別番号に基づいて計測情報テーブルを参照して病変計測情報を取得し、代表フレームに対する病変計測情報を表示部16に表示させてもよい。
【0053】
代表フレーム情報は、
図9に示されているように、シネメモリ34に記憶されている複数のフレームを模式的に表示する画像データであってもよい。
図9に示されている画像では、フレーム36Aが病変候補領域40-1に対応する代表フレームである。また、フレーム36Bは病変候補領域40-2に対応する代表フレームであり、フレーム36Cは病変候補領域40-3に対応する代表フレームである。代表フレームであるフレーム36A、36Bおよび36Cは、他のフレームを表す線よりも太い線によって描かれている。また、代表フレームであるフレーム36A、36Bおよび36Cのそれぞれの下には、フレーム36A、36Bおよび36Cを指定するためのボタン60が表示されている。
【0054】
操作パネル22においてユーザが代表フレームを指定する操作は、表示部16が表示する画像上で、代表フレームであるフレーム36A、36Bおよび36Cのそれぞれの下にあるボタン60をカーソルによってクリックすること等によって行われてよい。また、操作パネル22が備えるキーボードの操作によって、フレーム36A、36Bおよび36Cのうちいずれかが指定されてもよい。
【0055】
このような処理によって、1つの代表フレームに基づく超音波画像を表示する状態から、別の1つの代表フレームに基づく超音波画像を表示する状態となるようなジャンプ表示操作が超音波診断装置100に対して行われる。これによって、シネメモリ34に記憶された複数のフレームから病変候補領域を示すものを指定し、その指定したフレームに基づく超音波画像を表示する操作および処理が容易となる。
【0056】
(5)バックグラウンド処理
上記では、超音波診断装置100の動作モードがフリーズモードであるときに、フレーム解析部42がグループ化処理、代表フレーム選出処理および病変計測処理を実行する動作が説明された。フレーム解析部42は、超音波診断装置100の動作モードがリアルタイム測定モードであるときに、グループ化処理、代表フレーム選出処理および病変計測処理を実行するバックグラウンド処理を実行してもよい。以下では、主に
図1および
図4を参照してバックグラウンド処理が説明される。
【0057】
フレーム解析部42は、シネメモリ34に新たに1つのフレームが記憶されるごとに、シネメモリ34に記憶されているフレームに対してグループ化処理、代表フレーム選出処理および病変計測処理を実行する。ここで、シネメモリ34に記憶されているフレームの個数が最大数Nに満たないときは、シネメモリ34に記憶されているフレームの限りにおいて、これらの処理が実行される。これによって、新たに1つのフレームが生成され、シネメモリ34に新たに1つのフレームが記憶されるごとに、注目グループテーブル、代表フレームテーブルおよび計測情報テーブルが最新の内容となる。
【0058】
ユーザは、超音波診断装置100がリアルタイム測定モードで動作しているときに、超音波プローブ10を被検体90上で一定の速度で直線状に移動させる。ユーザは、表示部16に表示された超音波画像に病変が疑われる領域が認められたときは、操作パネル22を操作し、超音波診断装置100の動作モードをリアルタイム測定モードからフリーズモードに切り換える。動作モードがフリーズモードに切り換えられた超音波診断装置100は、操作パネル22におけるユーザの操作に従って指定された代表フレームに基づく超音波画像を表示部16に表示する。
【0059】
このようにプロセッサ24は、複数の超音波フレームがシネメモリ34に記憶されると共に、複数のフレームに基づく超音波画像を時間経過と共に順次、表示部16に表示させる表示処理を実行する。プロセッサ24は、シネメモリ34に記憶されている複数のフレームに対し、グループ化処理および代表フレーム選出処理を表示処理と共に並行して実行する。また、プロセッサ24は、代表フレーム選出処理によって選出された代表フレームに基づいて、病変候補領域(特異領域)に対する病変計測処理(計測処理)を、表示処理と共に並行して実行する。
【0060】
このような処理によれば、フレーム生成部30によって順次生成されたフレームに基づく超音波画像が表示部16によって順次表示されると共に、注目グループテーブル、代表フレームテーブルおよび計測情報テーブルが更新される。これによって、リアルモード測定モードからフリーズモードに動作モードが切り換えられたときに、改めてグループ化処理、代表フレーム選出処理および病変計測処理が実行されなくてもよい。したがって、動作モードがフリーズモードに切り換えられた後において、代表フレームに基づく超音波画像を表示部16に表示する処理が迅速に行われる。さらに、代表フレームに基づく超音波画像と共に病変計測情報を表示部16に表示する処理が迅速に行われる。
【0061】
(6)第2実施形態
図10には、超音波プローブ10に位置センサ70が取り付けられた超音波診断装置102の構成が示されている。位置センサ70は、超音波プローブ10のz軸座標値を検出しプロセッサ24に出力する。ここで、z軸は、xy平面に対して垂直な方向の座標軸(空間軸)である。フレーム生成部30は、自らが生成したフレームに対し、そのフレームが生成された際に位置センサ70が取得したz軸座標値を対応付けて、フレームとそのフレームに対応付けられたz軸座標値をシネメモリ34に記憶させる。
【0062】
フレーム生成部30は、シネメモリ34に記憶されているフレームのうち、最新のフレームとz軸座標値が一致しているか、あるいはz軸座標値の相違が所定範囲内であるフレームがあるときは、その記憶されていたフレームを削除した上で、最新のフレームをシネメモリ34に記憶する。また、シネメモリ34に記憶されているフレームのうち、最新のフレームとz軸座標値が一致しているか、あるいはz軸座標値の相違が所定範囲内であるフレームがあるときは、フレーム生成部30は、先にシネメモリ34に記憶されていたフレームをそのまま記憶された状態とし、最新のフレームの記憶を行わなくてもよい。
【0063】
このように、フレーム生成部30は、フレームと、そのフレームが生成されたときの超音波プローブ10のz軸座標値(超音波プローブ10の位置)とを対応付けてシネメモリ34に記憶する。フレーム生成部30は、新たに生成されたフレームに対応付けられたz軸座標値が、先にシネメモリ34に記憶されたフレームに対応付けられたz軸座標値と一致し、あるいは各z軸座標値の相違が所定範囲内であるときは、次のような記憶処理を実行する。すなわち、フレーム生成部30は、新たに生成されたフレームまたは先にシネメモリ34に記憶されたフレームのうちの一方のみをシネメモリ34に記憶する。
【0064】
上記では時間軸上に配列された複数のフレームに対してグループ化処理、代表フレーム選出処理および病変計測処理を施す実施形態が示された。本実施形態のようにz軸上に複数のフレームが配列された場合についても、時間軸上に配列された複数のフレームに対する処理と同様の各処理が施されてよい。すなわち、グループ化処理、代表フレーム選出処理および病変計測処理では、時空間軸としてのz軸および時間軸が、時間的または空間的な概念のない数値軸として扱われる。したがって、z軸上に複数のフレームが配列された本実施形態では、時間軸上に複数のフレームが配列された先の実施形態と同様のグループ化処理、代表フレーム選出処理および病変計測処理が実行されてよい。
【0065】
本実施形態におけるフレーム生成部30によれば、z軸座標値が同一のまたは近似したフレームが重ねてシネメモリ34に記憶されることが回避され、シネメモリ34への無駄なデータの記憶が行われなくなる。
【0066】
図11(b)には、シネメモリ34に記憶されるフレーム36が平面状の超音波画像によって概念的に示されている。横方向に伸びる軸はz軸であり、z軸に垂直にxy平面が定義されている。各フレーム36が示す超音波画像はxy平面に対して平行に広がっており、z軸上に複数のフレームが連なっている。最も左側のフレーム36-minは、z軸座標値が最小値であるフレームであり、最も右側のフレーム36-maxは、z軸座標値が最大値であるフレームである。
図11(a)には、代表フレーム36a、36bおよび36cによって示される超音波画像38a、38bおよび38cが概念的に示されている。
【0067】
操作パネル22の操作によって代表フレーム36aが指定されると、表示部16には超音波画像38aが表示される。同様に、代表フレーム36bまたは36cが指定されると、表示部16には、超音波画像38bまたは38cが表示される。
【0068】
図11(b)には、各フレームに併せて病変候補領域40-1~40-3が示されている。超音波画像38aには病変候補領域40-1が現れている。超音波画像38bには病変候補領域40-2が現れている。超音波画像38cには病変候補領域40-3が現れている。このように、シネメモリ34に記憶されている代表フレームのうちいずれかをユーザが指定し、指定された代表フレームによって超音波画像が表示されることで、病変候補領域に対する診断が行われる。
【0069】
(7)ドプラ画像、弾性画像等の表示
上記では、フレーム生成部30が、被検体90の断層面の超音波画像を示すフレームを生成する実施形態が示された。フレーム生成部30は、ドプラ画像や弾性画像を示すフレームを生成してもよい。ドプラ画像は、被検体90の断層画像に血流の様子を矢印や色彩等によって重ねて表した画像である。弾性画像は、被検体90の断層画像に組織の硬さを色彩等によって重ねて表した画像である。この場合、超音波送受信部12は、ドプラ画像や弾性画像を表すフレームを生成するための送信信号を超音波プローブ10に出力し、それに応じた受信信号を超音波プローブ10から取得する。超音波送受信部12は、さらに、ドプラ画像や弾性画像を表すフレームを生成するための信号を生成し、フレーム生成部30に出力する。
【符号の説明】
【0070】
10 超音波プローブ、12 超音波送受信部、14 超音波画像生成部、16 表示部、18 病変候補検出部、20 制御部、22 操作パネル、24 プロセッサ、30 フレーム生成部、32 フレーム出力部、34 シネメモリ、36,36-1~36-3,36-S,36-E フレーム、36A,36B,36C,36a,36b,36c 代表フレーム、38-1~38-3 超音波画像、40-1~40-3 病変候補領域、42 フレーム解析部、44 基準データ生成部、46 検出情報テーブル領域、48 注目グループテーブル領域、50 代表フレームテーブル領域、52 計測情報テーブル領域、54 解析メモリ、60 ボタン、70 位置センサ、90 被検体、100,102 超音波診断装置。