(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-12
(45)【発行日】2023-09-21
(54)【発明の名称】超音波診断装置及び三次元画像形成方法
(51)【国際特許分類】
A61B 8/14 20060101AFI20230913BHJP
【FI】
A61B8/14
(21)【出願番号】P 2020007213
(22)【出願日】2020-01-21
【審査請求日】2022-10-05
(73)【特許権者】
【識別番号】320011683
【氏名又は名称】富士フイルムヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】笠原 英司
【審査官】佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-064852(JP,A)
【文献】特開2008-245788(JP,A)
【文献】国際公開第2018/178220(WO,A1)
【文献】特開2015-167777(JP,A)
【文献】特開2013-000414(JP,A)
【文献】特表2013-526390(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0148874(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 8/00 - 8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
4Dモードにおいて空間的にずれた関係を有するN(但しNは2以上の整数)個の2D受信ビームアレイを循環的に形成することによりボリュームデータ列を取得する送受信手段と、
前記4Dモードにおいて前記ボリュームデータ列に基づいて4D画像を形成し、前記4Dモードにおいてフリーズ操作があった場合に前記ボリュームデータ列の中から選択された時間的に連なるn(但しnは2以上N以下の整数)個のボリュームデータに基づいて精細3D画像を形成する画像形成手段と、
を含
み、更に、
前記4Dモードの実行を開始する前に取得されたデータ列に基づいて、フリーズ操作前のプローブ静止期間を判定する判定手段と、
前記プローブ静止期間に基づいて前記Nに与える数値を設定する設定手段と、
を含むことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項2】
請求項1記載の超音波診断装置において、
前記nは前記Nであり、
前記画像形成手段は、フリーズ状態への移行時に、最新ボリュームデータを含むN個のボリュームデータに基づいて前記精細3D画像を形成する、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項3】
請求項2記載の超音波診断装置において、
前記画像形成手段は、
前記ボリュームデータ列を構成する複数のボリュームデータに基づく個別的なレンダリングにより前記4D画像として3D画像列を形成する4D画像形成手段と、
前記ボリュームデータ列の中から選択された前記N個のボリュームデータからなるボリュームデータ集合に基づくレンダリングにより前記精細3D画像を形成する精細3D画像形成手段と、
を含むことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項4】
請求項1記載の超音波診断装置において、
前記Nに与える数値を指定するための入力手段を含む、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項5】
請求項1記載の超音波診断装置において、
前記データ列は、前記4Dモードの実行を開始する前におけるBモード実行中に取得されたデータ列である、
を含むことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項6】
請求項1記載の超音波診断装置において、
前記N個の2D受信ビームアレイには、
第1の2D受信ビームアレイ、
前記第1の2D受信ビームアレイに対して第1走査方向にずれている第2の2D受信ビームアレイ、
前記第1の2D受信ビームアレイに対して前記第1走査方向に交差する第2走査方向にずれている第3の2D受信ビームアレイ、及び、
前記第1の2D受信ビームアレイに対して前記第1走査方向及び前記第2走査方向にずれている第4の2D受信ビームアレイ、
が含まれることを特徴とする超音波診断装置。
【請求項7】
請求項1記載の超音波診断装置において、
前記精細3D画像の表示に際して前記nに与えられた数値を表示する表示処理手段を含む、
ことを特徴とする超音波診断装置。
【請求項8】
4Dモードにおいて空間的にずれた関係にあるN(但しNは2以上の整数)個の2D受信ビームアレイを循環的に形成することにより得られたボリュームデータ列を処理する方法であって、
前記4Dモードにおいて前記ボリュームデータ列に基づいて時系列順で並ぶ複数の3D画像からなる4D画像を形成する工程と、
前記4Dモードにおいてフリーズ操作があった場合に、前記ボリュームデータ列の中から選択された時間的に連なるn(但しnは2以上N以下の整数)個のボリュームデータに基づいて前記各3D画像よりも精細な精細3D画像を形成する工程と、
を含
み、
前記4Dモードの実行を開始する前に取得されたデータ列に基づいて、フリーズ操作前のプローブ静止期間を判定する工程と、
前記プローブ静止期間に基づいて前記Nに与える数値を設定する工程と、
を含むことを特徴とする三次元画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波診断装置及び三次元画像形成方法に関し、特に、複数のボリュームデータに基づく三次元画像の形成に関する。
【背景技術】
【0002】
超音波診断装置は、生体に対して超音波を送受波することにより得られた受信情報に基づいて超音波画像を形成する装置である。超音波画像として、組織断面を表したBモード断層画像、組織を立体的に表現した三次元画像、等が知られている。例えば、三次元画像は、生体内の三次元空間から得られたボリュームデータに基づくボリュームレンダリングにより形成される。以下、動画像としての三次元画像を「4D画像」と称し、4D画像を形成及び表示する動作モードを「4Dモード」と称する。また、静止画像としての三次元画像を「3D画像」と称し、3D画像を形成及び表示する動作モードを「3Dモード」と称する。
【0003】
4Dモードにおいて、ボリュームレートが低い場合、プローブ移動時における4D画像の内容の追従性又は応答性が悪くなる。そこで、1ボリュームデータ当たりの受信ビーム本数(送受信回数といってもよい)が低減される。これによりボリュームレートが高められる。
【0004】
静止画像である3D画像の詳細な観察に際しては、4Dモードから3Dモードへ動作モードが切り替えられる。その際、送受信シーケンスが変更される。具体的には、1ボリュームデータ当たりの受信ビーム本数が増大される。3Dモードの実行により、4D画像を構成する各3D画像よりも精細な3D画像が表示される。しかし、4Dモードから3Dモードへの切り替え時に、送受信条件の変更に起因してタイムラグが不可避的に生じてしまう。通常、3Dモードは1スキャンにわたって実行され、その実行後、送受信が停止した状態となる。なお、4Dモードの実行中にフリーズボタンをオンした場合、4D画像を構成していた最後の3D画像が静止画像として表示される。その3D画像の解像度は低く、それは詳細な観察に適しないものである。
【0005】
特許文献1には、ボリュームレートを高める技術が開示されている。しかし、同文献には、フリーズ操作に連動したデータ処理については開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、送受信シーケンスを変更することなく、4Dモードの実行後に精細3D画像を表示できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示に係る超音波診断装置は、4Dモードにおいて空間的にずれた関係を有するN(但しNは2以上の整数)個の2D受信ビームアレイを循環的に形成することによりボリュームデータ列を取得する送受信手段と、前記4Dモードにおいて前記ボリュームデータ列に基づいて4D画像を形成し、前記4Dモードにおいてフリーズ操作があった場合に前記ボリュームデータ列の中から選択された時間的に連なるn個(但しnは2以上N以下の整数)個のボリュームデータに基づいて精細3D画像を形成する画像形成手段と、を含むことを特徴とするものである。
【0009】
本開示に係る三次元画像形成方法は、4Dモードにおいて空間的にずれた関係にあるN(但しNは2以上の整数)個の2D受信ビームアレイを循環的に形成することにより得られたボリュームデータ列を処理する方法であって、前記4Dモードにおいて前記ボリュームデータ列に基づいて時系列順で並ぶ複数の3D画像からなる4D画像を形成する工程と、前記4Dモードにおいてフリーズ操作があった場合に、前記ボリュームデータ列の中から選択された時間的に連なるn(但しnは2以上N以下の整数)個のボリュームデータに基づいて前記各3D画像よりも精細な精細3D画像を形成する工程と、を含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、送受信シーケンスを変更することなく、4Dモードの実行後に精細3D画像を表示できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係る超音波診断装置を示すブロック図である。
【
図2】N個の2D受信ビームアレイの循環的形成を示す図である。
【
図3】4D画像の形成及び精細3D画像の形成を説明するための図である。
【
図6】精細3D画像形成時の補間処理を示す図である。
【
図7】超音波診断装置の動作を示すフローチャートである。
【
図8】Nを自動的に設定する方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
(1)実施形態の概要
実施形態に係る超音波診断装置は、送受信手段、及び、画像形成手段を含む。送受信手段は、4Dモードにおいて、空間的にずれた関係を有するN(但しNは2以上の整数)個の2D受信ビームアレイを循環的に形成することによりボリュームデータ列を取得する。画像形成手段は、4Dモードにおいて、ボリュームデータ列に基づいて4D画像を形成し、4Dモードにおいてフリーズ操作があった場合に、ボリュームデータ列の中から選択された時間的に連なるn(但しnは2以上N以下の整数)個のボリュームデータに基づいて精細3D画像を形成する。
【0014】
精細3D画像は、時間的に連なる複数のボリュームデータに基づいて作成される。それらのボリュームデータは、空間的にずれた関係を有する複数の2D受信ビームアレイの形成により取得されたものである。換言すれば、精細3D画像は、空間的にずれた関係を有する複数のボリュームデータに基づいて作成される。よって、精細3D画像の解像度は、4D画像を構成する個々の3D画像の解像度よりも高い。上記構成によれば、フリーズ操作後に送受信シーケンスあるいは送受信条件を変更することなく、4D画像の形成で用いたボリュームデータ列を利用して、精細3D画像を速やかに形成及び表示できる。上記構成によれば、モード切替に伴う追加的な送受信が不要となるという利点も得られる。
【0015】
nをNに一致させるのが望ましいが、nが2以上であれば、上記作用効果を得られる。送受信手段には、実施形態において、プローブ、送信回路、及び、受信回路が含まれる。送受信手段に更に送受信制御部が含まれてもよい。画像形成手段は、実施形態において、プロセッサにより構成される。なお、2Dは二次元を意味し、3Dは三次元を意味し、4Dは時間を含む四次元を意味する。
【0016】
実施形態において、画像形成手段は、フリーズ状態への移行時に、最新ボリュームデータを含むN個のボリュームデータに基づいて精細3D画像を形成する。
【0017】
一般に、フリーズ操作の直前に、一定期間にわたって4D画像の内容が注視され、その際、プローブは静止状態となる。そのような静止状態において、最新ボリュームデータセット(最新ボリュームデータを含むN個のボリュームデータ)が取得される。それを基礎として作成される精細3D画像(最新の精細3D画像)に含まれる空間的な歪みや時間的な歪みは、通常、非常に小さい。上記構成は、フリーズ操作の直後に、検査者にとって最も関心のある且つ高品質を有する精細3D画像を表示するものである。
【0018】
実施形態において、画像形成手段は、4D画像形成手段、及び、精細3D画像形成手段を含む。4D画像形成手段は、ボリュームデータ列を構成する各ボリュームデータに基づく個別的なレンダリングにより、4D画像としての3D画像列を形成する。精細3D画像形成手段は、ボリュームデータ列の中から選択されたN個のボリュームデータからなるボリュームデータセットに基づくレンダリングにより精細3D画像を形成する。
【0019】
精細3D画像は、4D画像を構成する各3D画像よりも、精細な画像であり、すなわち、各3D画像よりも高い解像度を有する画像である。通常、ボリュームデータ列は、リングバッファ等に格納されている。フリーズ状態において、ボリュームデータ列の中から選択するボリュームデータセットが段階的に又は連続的に変更されてもよい。すなわち、フリーズ後に、時間軸に沿って複数の精細3D画像が順次形成されてもよい。その際において時間的な分解能が問題となる場合、従来同様に、複数の通常3D画像が順次形成されてもよい。
【0020】
実施形態においては、Nに与える数値を指定するための入力手段が設けられる。一般に、Nに与える数値を大きくした方が精細3D画像の解像度を高められるが、精細3D画像に含まれる空間的な歪みや時間的な歪みが大きくなる。そこで、フリーズ操作前のプローブ静止期間に応じてNに与える数値を決定するのが望ましい。上記nに与える数値が入力手段により指定されてもよい。フリーズ後にnに与える数値が変更されてもよい。
【0021】
実施形態においては、判定手段、及び、設定手段が設けられる。判定手段は、4Dモードの実行を開始する前に取得されたデータ列に基づいてプローブ静止期間を判定する。設定手段は、プローブ静止期間に基づいてNに与える数値を設定する。
【0022】
上記構成によれば、ユーザーに負担を生じさせずに、Nに与える数値を最適化し得る。例えば、胎児の超音波検査においては、一般に、4Dモードを用いた検査の前にBモードを用いた検査が行われる。Bモードの実行時に取得されたデータ列に基づいてプローブ静止期間を判定し得る。プローブ静止期間にボリュームレートを乗じることによりNに与える数値が設定されてもよい。
【0023】
実施形態においては、N個の2D受信ビームアレイには、第1の2D受信ビームアレイ、第2の2D受信ビームアレイ、第3の2D受信ビームアレイ、及び、第4の2D受信ビームアレイ、を含む。第2の2D受信ビームアレイは、第1の2D受信ビームアレイに対して第1走査方向にずれている。第3の2D受信ビームアレイは、第1の2D受信ビームアレイに対して第1走査方向に交差する第2走査方向にずれている。第4の2D受信ビームアレイは、第1の2D受信ビームアレイに対して第1走査方向及び第2走査方向にずれている。第1走査方向の受信ビームピッチの方が第2走査方向の受信ビームピッチよりも大きい場合、2D受信ビームアレイをシフトさせる方向として、第1走査方向が優先的に選択されてもよい。
【0024】
実施形態においては、精細3D画像の表示に際してnに与えられた数値を表示する表示処理手段が設けられる。この構成によれば、精細3D画像の観察時に、精細3D画像の形成条件を確認できる。nがNとは異なる場合、Nに与えられた数値が更に表示されてもよい。
【0025】
実施形態に係る三次元画像形成方法は、4Dモードにおいて空間的にずれた関係にあるN(但しNは2以上の整数)個の2D受信ビームアレイを循環的に形成することにより得られたボリュームデータ列を処理する方法である。当該方法は、第1工程、及び、第2工程を含む。第1工程では、4Dモードにおいてボリュームデータ列に基づいて時系列順で並ぶ複数の3D画像からなる4D画像が形成される。第2工程では、4Dモードにおいてフリーズ操作があった場合に、ボリュームデータ列の中から選択された時間的に連なるn(但しnは2以上且つN以下の整数)個のボリュームデータに基づいて各3D画像よりも精細な精細3D画像が形成される。
【0026】
上記方法は、ハードウエアの機能として又はソフトウエアの機能として実現され得る。後者の場合、上記方法を実行するためのプログラムが、ネットワークを介して又は可搬型記憶媒体を介して、情報処理装置へインストールされる。情報処理装置の概念には、コンピュータ、超音波診断装置、画像処理装置、等が含まれる。
【0027】
(2)実施形態の詳細
図1には、実施形態に係る超音波診断装置がブロック図として示されている。この超音波診断装置は、病院等の医療機関に設置され、生体に対して超音波を送受波することにより、超音波画像を形成する装置である。診断対象となる臓器は、例えば、母体内の胎児である。他の診断対象として、肝臓、腎臓、乳房、等があげられる。超音波診断装置は、多数の動作モードを備えている。
図1には、その中で、Bモード及び4Dモードに関連する構成が示されている。
【0028】
Bモードは、組織断面を表す断層画像を形成及び表示するモードである。動画像としてのリアルタイム断層画像は、時間軸上に並ぶ複数の断層画像により構成される。それらの断層画像を形成するために、超音波ビームの一次元走査が繰り返し実行される。1回の超音波ビーム一次元走査で1つのビーム走査面が形成される。ビーム走査面は二次元データ取込み領域である。Bモードの実行過程において、送受信を停止させるフリーズ操作が行われると、静止画像としての断層画像が表示される。
【0029】
4Dモードは、動画像としての三次元画像(4D画像)を形成及び表示するモードである。4D画像は、時間軸上に並ぶ複数の3D画像により構成される。それらの3D画像を形成するために、超音波ビームの二次元走査が繰り返し実行される。1回の超音波ビーム二次元走査で1つの三次元データ取込み領域が形成される。4Dモードにおいては、通常、ボリュームレートが高められる。換言すれば、1つのボリュームデータの取得に際して形成される受信ビームの本数が削減される。
【0030】
後に詳述するように、実施形態においては、4Dモードの実行過程において、フリーズ操作が行われると、それまでに得られたボリュームデータ列に基づいて、静止画像としての精細3D画像が形成及び表示される。精細3D画像は、4D画像を構成する個々の通常3D画像よりも、相対的に見て、高い解像度を有する画像である。
【0031】
図1において、3Dプローブ10は、二次元振動素子アレイを有している。二次元振動素子アレイにより超音波ビームが二次元走査される。
図1においては、第1走査方向がθ方向であり、第2走査方向がφ方向である。深さ方向がr方向である。3Dプローブ10は、検査者により保持され、3Dプローブ10の送受波面が生体表面に当接される。
【0032】
超音波ビームの走査に際しては、各種の電子走査方式を採用し得る。電子走査方式として、電子セクタ走査方式、電子リニア走査方式、等が知られている。例えば、第1走査方向及び第2走査方向に両方に電子セクタ走査方式を適用した場合、
図1に示されるように、角錐状の三次元データ取込み領域12が形成される。超音波ビームの二次元電子走査を繰り返し行うことにより、三次元データ取込み領域12から複数のボリュームデータが順次取得される。それらはボリュームデータ列を構成する。
【0033】
ボリュームデータの取得に際してはパラレル受信技術が利用される。それは、1つの送信ビーム14当たり、複数の受信ビームからなる受信ビーム群16を同時に形成するものである。例えば、4つの受信ビーム又は16個の受信ビームが同時に形成される。これにより、ボリュームレートを上げることが可能となる。
【0034】
一次元振動素子アレイを機械的に走査することにより三次元データ取込み領域12が形成されてもよい。例えば、円筒形状の送受波面を有する3Dプローブにおいて、第1走査方向(長軸方向、円弧方向)において電子コンベックス走査を適用し、第2走査方向(短軸方向)において電子リニア走査を適用してもよい。体腔内挿入型3Dプローブが利用されてもよい。
【0035】
送信回路17は、送信ビームフォーマーとして機能する電子回路である。送信回路17は、送信時において、二次元振動素子アレイに対して複数の送信信号を供給する。これにより二次元振動素子アレイから生体内へ超音波が放射され、送信ビームが形成される。受信回路18は、受信ビームフォーマーとして機能する電子回路である。受信時において、生体内からの反射が二次元振動素子アレイにて受波されると、そこから受信回路18へ複数の受信信号が出力される。受信回路18において、複数の受信信号が遅延加算され、これによりビームデータが生成される。パラレル受信技術を利用する場合、1回の送受信当たり複数のビームデータが生成される。
【0036】
一般に、1つのボリュームデータは複数のフレームデータにより構成され、1つのフレームデータは複数のビームデータにより構成される。1つのビームデータは深さ方向に並ぶ複数のエコーデータにより構成される。3Dプローブ内に送信ビームフォーマー及び複数の受信サブビームフォーマーを設けてもよい。その場合には、受信回路18はメインビームフォーマーとして機能する。Bモードにおいても3Dプローブ10を使用し得る。その場合、3Dプローブ10において、超音波ビームの一次元走査が繰り返し実行される。これにより、ビーム走査面が繰り返し形成される。
【0037】
送信回路17及び受信回路18の動作は送受信制御部20により制御される。送受信制御部20の動作は主制御部22により制御される。実施形態においては、4Dモードにおいて、送受信制御部20の制御の下、特定のサブシーケンスが繰り返し実行される。サブシーケンスの1回の実行当たり、空間的にずれた関係を有するN個の2D受信ビームアレイが形成される。これについては後に詳述する。Nは2以上の整数であり、実施形態において、Nは4である。なお、空間的にずれた関係は、受信ビームの重なり合いが生じない関係を意味する。
【0038】
図1に示されている構成例では、受信回路18の後段に、シネメモリ24が設けられている。シネメモリ24は、4Dモードにおいて、各時刻において取得されたボリュームデータを一時的に格納するリングバッファである。シネメモリ24には、一定時間にわたるボリュームデータ列が格納される。シネメモリ24における書き込み単位は、エコーデータ、ビームデータ、フレームデータ又はボリュームデータである。シネメモリ24からの読み出し過程で又は読み出し後に、各エコーデータに対して座標変換が適用される。例えば、rθφ座標系からxyz座標系への変換が実行される。シネメモリ24への書き込み過程で座標変換が実行されてもよい。
【0039】
なお、Bモードにおいて、シネメモリ24には、一定時間にわたる複数のフレームデータが格納される。4Dモード用のシネメモリとBモード用のシネメモリとが別々に設けられてもよい。実施形態においては、受信回路18と複数の画像形成部28,30,34との間にシネメモリ24が設けられているが、複数の画像形成部28,30,34に対して並列的にシネメモリ24が設けられてもよい。
【0040】
断層画像形成部28は、Bモードにおいて、シネメモリ24から読み出された時系列順の複数のフレームデータ(複数の受信フレームデータ)に基づいて、複数の断層画像データ(複数の表示フレームデータ)を生成するものである。それらの断層画像データが表示処理部36へ送られる。断層画像形成部28として、デジタルスキャンコンバータ(DSC)を設けてもよい。断層画像形成部28において、ボリュームデータから切り出された面データに基づいて、断層画像データが形成されてもよい。後述するように、N個のボリュームデータからなるボリュームデータセットから切り出された面データに基づいて、断層画像データが形成されてもよい。時系列順の複数の断層画像データは表示処理部36を介して表示器37に送られる。Bモードにおいて、表示器37には、複数の断層画像データに基づいて、リアルタイム断層画像が動画像として表示される。
【0041】
4D画像形成部30は、4Dモードにおいて、シネメモリ24から順次読み出される複数のボリュームデータに基づいて、複数の3D画像データを形成するものである。具体的には、個々のボリュームデータに基づくボリュームレンダリングにより3D画像データが形成される。時系列順で並ぶ複数の3D画像データにより、4D画像データが構成される。ボリュームレンダリングに代えてサーフェイスレンダリング等の他の三次元画像処理方法が適用されてもよい。4D画像形成部30において生成された複数の3D画像データが、表示処理部36を介して、表示器37に送られる。表示器37には、時系列順の複数の3D画像データに基づいて、4D画像が動画像として表示される。
【0042】
精細3D画像形成部は、4Dモードにおいてフリーズ操作があった場合に、精細3D画像データを形成するものである。具体的には、精細3D画像形成部は、シネメモリに格納された時間的に連なるN個のボリュームデータに対するボリュームレンダリングにより精細3D画像データを形成する。N個のボリュームデータは、空間的にずれた関係を有するN個の2D受信ビームアレイの形成により取得されたものであり、端的に言えば、N個のボリュームデータは、時間的にずれた関係にあると同時に、空間的にずれた関係にある。それらの全体をボリュームレンダリングの対象とすることにより、通常の3D画像データよりも高い解像度をもった精細3D画像データを生成することが可能となる。精細3D画像データは、表示処理部36を介して、表示器37へ送られる。表示器37には、精細3D画像が静止画像として表示される。
【0043】
フリーズ操作の時点で、送受信が停止し、シネメモリ24への新たなデータの書き込みが停止する。フリーズ操作後に、最初に、最新ボリュームデータセットに基づく最新の精細3D画像が表示される。最新ボリュームデータセットは、最後に取得された最新ボリュームデータを含む、時間的に連なるN個のボリュームデータにより構成される。その後、シネメモリ上のボリュームデータ列からのボリュームデータセット読み出し時相を過去に遡らせることにより、時間軸上に沿って精細3D画像を順次表示させることも可能である。プローブ移動過程で取得されたボリュームデータセットには、通常、多くの時間的な歪み及び空間的な歪みが含まれる。よって、そのような場合には、精細3D画像に代えて、4D画像を構成していた通常の3D画像を表示するようにしてもよい。
【0044】
シネメモリ24と精細3D画像との間に合成部32を設けてもよい。合成部32は、N個のボリュームデータを空間的に合成し、合成ボリュームデータを生成するものである。シネメモリ24上のN個のボリュームデータを並列的に参照し得る場合には、合成部32を設ける必要はない。
【0045】
主制御部22は、
図1に示されている各要素を制御するものである。主制御部22には操作パネル38が接続されている。操作パネル38は入力デバイスであり、それにはスイッチ、ボタン、トラックボール、キーボード等が含まれる。操作パネル38には、フリーズスイッチも設けられている。操作パネル38を利用して、上記N(及び後述するn)に与える数値がユーザーにより指定される。なお、表示器37は、液晶表示器、有機EL表示器等により構成される。
【0046】
符号40で示される部分は、プロセッサにより構成される。プロセッサは、例えば、プログラムを実行するCPUである。プロセッサが複数のデバイスにより構成されてもよい。シネメモリ24は、例えば、半導体メモリにより構成される。
【0047】
図2には、4Dモードにおけるサブシーケンス39が示されている。送受信シーケンスは、サブシーケンス39の繰り返しに相当する。実施形態においては、1回のサブシーケンス39の実行により、4つの2D受信ビームアレイ40,42,44,46が順次形成される。それらは空間的にずれた関係を有する。
【0048】
具体的に説明する。第1の2D受信ビームアレイ40は、θ方向及びφ方向に並ぶ複数の受信ビーム48により構成される。θ方向のピッチがΔθであり、φ方向のピッチがΔφである。グリッド54は、第1の2D受信ビームアレイ40を構成する複数の受信ビームの配列を示している。第1の2D受信ビームアレイ40は、複数回の送受信により生成される。その過程で、1つの送信ビーム50A当たり、例えば、16個の受信ビーム52Aが同時に形成される。図示の例では、二次元配列された16個の受信ビーム52Aが同時に形成される。一次元配列された複数の受信ビームが同時に形成されてもよい。1個の送信ビーム50Aに対して4個の受信ビームが形成されてもよい。
【0049】
第2の2D受信ビームアレイ42は、θ方向及びφ方向に並ぶ複数の受信ビーム56により構成される。第2の2D受信ビームアレイ42における受信ビーム配列は、第1の2D受信ビームアレイ40の配列(グリッド54を参照)と同じであるが、互いにθ方向にΔθ1だけずれている。2つの配列は、φ方向において一致している。Δθ1は例えばΔθ/2である。第2の2D受信ビームアレイ42の生成過程においても、1個の送信ビーム50B当たり16個の受信ビーム52Bが同時に形成される。
【0050】
第3の2D受信ビームアレイ44は、θ方向及びφ方向に並ぶ複数の受信ビーム58により構成される。第3の2D受信ビームアレイ44における受信ビーム配列は、第1の2D受信ビームアレイ40の配列(グリッド54を参照)と同じであるが、互いにφ方向にΔφ1だけずれている。2つの配列は、θ方向において一致している。Δφ1は例えばΔφ/2である。第3の2D受信ビームアレイ44の生成過程においても、1個の送信ビーム50C当たり16個の受信ビーム52Cが同時に形成される。
【0051】
第4の2D受信ビームアレイ46は、θ方向及びφ方向に並ぶ複数の受信ビーム60により構成される。第4の2D受信ビームアレイ46における受信ビーム配列は、第1の2D受信ビームアレイ40の配列(グリッド54を参照)と同じであるが、互いにθ方向にΔθ1だけずれており、且つ、互いにφ方向においてΔφ1だけずれている。第4の2D受信ビームアレイ46の生成過程においても、1個の送信ビーム50D当たり16個の受信ビーム52Dが同時に形成される。
【0052】
4つの2D受信ビームアレイ40,42,44,46を空間的に合成することにより、合成ビームアレイ62が構成される。合成ビームアレイ62は、個々の2D受信ビームアレイ40,42,44,46に対して、4倍のビーム密度を有する。合成ビームアレイ62は、上記ボリュームデータセットに相当するものである。
【0053】
図3には、4Dモードにおけるシネメモリ24の記憶内容が示されている。tは時間軸を示している。ボリュームデータ列67は、最新ボリュームデータCmを先頭とする複数のボリュームデータにより構成される。ここで、ボリュームデータAmは、m番目の第1の2D受信ビームアレイの形成により取得されたものである。ボリュームデータBmは、m番目の第2の2D受信ビームアレイの形成により取得されたものである。ボリュームデータCmは、m番目の第3の2D受信ビームアレイの形成により取得されたものである。ボリュームデータDm-1は、m-1番目の第4の2D受信ビームアレイの形成により取得されたものである。
【0054】
4Dモードにおいては、個々のボリュームデータごとに1つの3D画像66が形成され、それらの連続的な表示により動画像としての4D画像が構成される。4Dモードにおいてフリーズ操作がなされると、その時点で送受信が停止し、シネメモリ24への新たなボリュームデータの書き込みが行われなくなる。フリーズ操作の時点で、4つのボリュームデータDm-1,Am,Bm,Cmつまり最新ボリュームデータセット68が読み出され、それらに基づくボリュームレンダリングにより精細3D画像70が形成される。それが静止画像として表示される。通常、フリーズ操作の直前において4D画像が検査者によって注視され、その状態では3Dプローブが静止状態又はそれに近い状態となる。例えば、符号71で示す期間においては、3Dプローブが静止しているとみなせる。精細3D画像は、そのような期間において取得された時間的に連なる複数のボリュームデータに基づいて作成される。
【0055】
フリーズ操作の直後においては、最新ボリュームデータセットに基づいて精細4D画像が作成され、それが表示される。その後、必要に応じて、読み出し対象となるボリュームデータセットが変更される。例えば、1単位前のボリュームデータセット68Aに基づいて精細3D画像が形成され、2単位前のボリュームデータセット68Bに基づいて精細3D画像が形成される。ユーザーの選択により、精細3D画像に代えて通常の3D画像が再生されてもよい。
【0056】
図4には、ボリュームレンダリングが模式的に示されている。ボリュームデータ72に対して複数の視線が設定され、個々の視線ごとに画素値が演算される。各画素値がスクリーン78上に投影される。
図4においては、視点74から出る1つの視線R1が示されている。ボリュームデータ72内において視線R1上に複数のサンプル点が設定される。個々のサンプル点ごとに、周囲の複数のエコー値を参照することにより、補間値が演算される。視線R1ごとに、先頭の補間値Q1から最終の補間値Qiまでの複数の補間値の全部又は一部を用いて、視線R1に対応する画素P1の画素値が演算される。ボリュームデータ72内に三次元関心領域が設定される場合にはその三次元関心領域の内部に対してボリュームレンダリングが適用される。
【0057】
図5及び
図6には、補間値の演算が模式的に示されている。実際には、三次元空間において補間値が演算されるが、
図5及び
図6には二次元空間における補間値の演算が示されている。
図5には、通常の3D画像を形成する場合における補間値の演算が示されている。符号48aは、エコー値を示している。
図6には、精細3D画像を形成する場合における補間値の演算が示されている。符号48a,56a,58a,60aは、4つの2D受信ビームアレイの形成により生成された4つのエコー値を示している。
【0058】
図5において、補間値Q3は、その周囲にあるエコー値A1,B1,C1,D1に基づく線形補間演算により求められる。
図6において、補間値Q3は、その周囲にあるエコー値A2,B2,C2,D2に基づく線形補間演算により求められる。
図6に示したボリュームデータにおけるデータ密度は、
図5に示したボリュームデータにおけるデータ密度よりも高い。よって、実施形態によれば、高い解像度をもった精細3D画像を形成できる。
【0059】
図7には、4Dモードにおける動作例が示されている。
図7は、実施形態に係る三次元画像形成方法を示すものでもある。S10では、Nが設定される。例えば、検査者によりNに与える数値が指定される。Nは2以上の整数である。フリーズ操作直前のプローブ静止期間に応じてNに与える数値を選択するのが望ましい。
【0060】
S12ではカウンタkが初期化される。S14では、第k受信ビームアレイが形成される。これにより1つのボリュームデータが取得される。S16では、フリーズ操作があったか否かが判定される。フリーズ操作がなかったと判定された場合、S18において、現在のボリュームデータつまり最新ボリュームデータに基づくボリュームレンダリングが実行される。これにより3D画像が生成され、それがS20で表示される。複数の3D画像の連続表示により4D画像が表示される。
【0061】
S22では、kがNに到達したか否かが判定される。kがNに到達していない場合、S24において、kに1が加算されて、新たなkが設定される。その後、S14以降の工程が再び実行される。S22において、kがNに到達したと判定された場合、S12においてkが初期化され、その後、S14以降の工程が再び実行される。
【0062】
S16において、フリーズ操作があったと判定された場合、S26において、最新のボリュームデータを含むN個のボリュームデータからなる最新ボリュームデータセットに基づいてボリュームレンダリングが実行され、これにより精細3D画像が形成される。S28で、その精細3D画像が静止画像として表示される。S30では、フリーズが解除されたか否かが判定され、解除されていないと判定された場合には精細3D画像の表示が維持される。S30において、フリーズが解除されたと判定された場合、S32で4Dモードを続行させるか否かが判定され、続行させる場合には、S12以降の工程が実行される。
【0063】
図8には、Nを自動的に設定する方法の一例が示されている。S40において、Bモードで超音波検査が実行される。Bモードにおいてフリーズ操作が行われた場合、S44において、フリーズ操作前のプローブ静止期間が判定される。S42において、4Dモードで超音波検査を行う場合、それに先立って、又は、その初期段階で、S46において、S44で判定されたプローブ静止期間に基づいてNが設定される。設定されたNに基づいて4Dモードを用いた超音波検査が実施される。
【0064】
S44において、フレーム間相関演算を用いてプローブ静止期間が判定されてもよい。具体的には、フリーズ後において、最新フレームを基準フレームとし、時間軸上において逆順で過去のフレームを順次選択し、基準フレームと過去のフレームとの間で相関値を演算し、基準フレームから相関値が閾値を超えるまでの期間をプローブ静止期間として判定してもよい。また、S46において、プローブ静止期間に対してボリュームレートを乗算することによりNを演算してもよい。
【0065】
図9には表示例が示されている。表示像84には精細3D画像86が含まれる。その近傍には情報88が表示される。その情報88はNに与えた数値を示している。なお、Nに与えた数値と共に又はそれに代えて、以下に示すnに与えた数値が表示されてもよい。
【0066】
図10には変形例が示されている。
図7に示した工程と同じ工程には同じステップ番号を付し、その説明を省略する。
図10に示す変形例では、S25において、プローブ静止期間が判定され、プローブ静止期間に基づいてnが決定される。nは2以上でN以下の整数である。S26では、最新ボリュームデータを含むn個のボリュームデータ(最新ボリュームデータセット)に基づいてボリュームレンダリングが実行され、これにより精細3D画像が形成される。
【0067】
S26において、最新ボリュームデータを基準ボリュームデータとし、時間軸上において逆順で過去のボリュームデータが順次選択される。基準ボリュームデータと過去のボリュームデータとの間で相関値が演算される。相関値の変化から静止状態とみなせる期間が判定される。例えば、基準ボリュームデータを取得したタイミングから、相関値が閾値を超えるまでの期間がプローブ静止期間として判定される。
【0068】
上記変形例によれば、プローブ静止期間にわたるn個のボリュームデータをボリュームレンダリングの対象にできるので、精細3D画像に含まれる空間的な歪みや時間的な歪みを非常に小さくできる。ビーム密度あるいは解像度の空間的な均一性を優先させる場合にはnにNを与えればよい。n及びNを自動的に決定する構成を採用することにより、ユーザーの負担を軽減できる。
【0069】
上記実施形態によれば、4Dモードにおいてフリーズ操作を行った場合に従来においては得られなかった高画質の3D画像を表示できる。その際において、モード変更つまり送受信シーケンスの変更は不要であるので、タイムラグは生じない。なお、4Dモードにおいて、ドプラ情報に基づく4D画像及び精細3D画像が形成及び表示されてもよい。
【符号の説明】
【0070】
10 3Dプローブ、12 三次元空間(三次元データ取込領域)、14 送信ビーム、16 受信ビーム群、24 シネメモリ、28 断層画像形成部、30 4D画像形成部、32 合成部、34 精細3D画像形成部、36 表示処理部。