(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-12
(45)【発行日】2023-09-21
(54)【発明の名称】セラミックヒータ及びその製法
(51)【国際特許分類】
H05B 3/74 20060101AFI20230913BHJP
H01L 21/02 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
H05B3/74
H01L21/02 Z
(21)【出願番号】P 2020074791
(22)【出願日】2020-04-20
【審査請求日】2022-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000017
【氏名又は名称】弁理士法人アイテック国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松下 諒平
【審査官】宮部 菜苗
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-109316(JP,A)
【文献】特開2009-009795(JP,A)
【文献】国際公開第2012/039453(WO,A1)
【文献】特開2006-005095(JP,A)
【文献】特開2012-080103(JP,A)
【文献】特開2018-073919(JP,A)
【文献】特開平11-000933(JP,A)
【文献】特開2013-178279(JP,A)
【文献】特開2012-283332(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/20、3/74
H01L 21/02、21/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面にウエハ載置面を有する円盤状のセラミック基体と、
前記セラミック基体に埋設された抵抗発熱体と、
前記セラミック基体を前記セラミック基体の下面から支持する筒状シャフトと、
前記抵抗発熱体と前記ウエハ載置面との間に設けられ、前記セラミック基体の内部の中心側の起点位置から外周側の終端位置に至る熱電対通路と、
前記セラミック基体の前記下面のうち前記筒状シャフトに囲まれたシャフト内領域に開口し、前記熱電対通路に連通する熱電対挿入穴と、
を備え、
前記セラミック基体は、上面側に前記ウエハ載置面を有する上側プレートと、前記抵抗発熱体が埋設され前記上側プレートの下面側に設けられた下側プレートとを有し、
前記熱電対通路は、前記上側プレートの下面に設けられた上側プレート溝と前記上側プレート溝を覆う前記下側プレートとで形成され、
前記熱電対挿入穴は、前記下側プレートを厚さ方向に貫通するように設けられ、
前記熱電対挿入穴の幅は、前記熱電対通路のうち前記熱電対挿入穴と連通する部分の幅よりも小さく、
前記熱電対通路のうち前記熱電対挿入穴と連通する部分より外周に位置する前記熱電対通路の幅は、外周に向かってテーパ状に細く形成されている、
セラミックヒータ。
【請求項2】
前記抵抗発熱体は、前記セラミック基体の中央部に設けられた一対の端子の一方から複数の折り返し部で折り返されつつ配線されたあと、前記一対の端子の他方に至る形状であり、
前記熱電対挿入穴は、前記折り返し部同士が向かい合っている発熱体不存在領域を利用
して設けられている、
請求項
1に記載のセラミックヒータ。
【請求項3】
前記抵抗発熱体は、前記セラミック基体の中央部に設けられた一対の端子の一方から前記セラミック基体の外周部に延び出し、前記外周部に配線されたあと、前記外周部から前記一対の端子の他方に至る形状であり、
前記熱電対挿入穴は、前記一対の端子のそれぞれから前記外周部に延び出した前記抵抗発熱体のジャンパ同士が向かい合っている発熱体不存在領域を利用して設けられている、
請求項
1に記載のセラミックヒータ。
【請求項4】
前記熱電対通路と前記抵抗発熱体との間隔及び前記熱電対挿入穴と前記抵抗発熱体との間隔は3mm以上離れている、
請求項1~
3のいずれか1項に記載のセラミックヒータ。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1項に記載のセラミックヒータであり、
前記熱電対通路に挿入された熱電対
を備えたセラミックヒータ。
【請求項6】
請求項
5に記載のセラミックヒータであって、
前記熱電対挿入穴に取り付けられ、前記熱電対が前記熱電対通路に挿入するのをガイドする熱電対ガイド
を備え、
前記熱電対は、前記熱電対ガイドにガイドされて前記熱電対通路に挿入されている、
セラミックヒータ。
【請求項7】
(a)上面側にウエハ載置面を有する上側プレートの下面の中心側の起点位置から外周側の終端位置まで上側プレート溝を設ける工程と、
(b)抵抗発熱体が埋設された下側プレートを厚さ方向に貫通する熱電対挿入穴を設ける工程と、
(c)前記上側プレート溝と前記熱電対挿入穴とが一致するように前記上側プレートと前記下側プレートとを一体化する工程と、
を含み、
前記熱電対挿入穴の幅は、前記上側プレート溝のうち前記熱電対挿入穴と連通する部分の幅よりも小さく、
前記上側プレート溝のうち前記熱電対挿入穴と連通する部分より外周に位置する前記上側プレート
溝の幅は、外周に向かってテーパ状に細く形成されている、
セラミックヒータの製法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミックヒータ及びその製法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セラミックヒータとしては、ウエハ載置面を有する円盤状のセラミック基体の内周側と外周側にそれぞれ独立に抵抗発熱体を埋め込んだ2ゾーンヒータと呼ばれるものが知られている。例えば特許文献1には、
図9に示すシャフト付きセラミックヒータ410が開示されている。このシャフト付きセラミックヒータ410は、セラミック基体420の外周側の温度を外周側熱電対450で測定する。熱電対ガイド432は、筒状部材であり、ストレートシャフト440の内部で下方から上方にまっすぐ延びたあと円弧状に曲げられて90°方向転換している。この熱電対ガイド432は、セラミック基体420の裏面のうちストレートシャフト440に囲まれた領域に設けられたスリット427aに取り付けられている。スリット427aは、熱電対通路427の入口部分をなす。外周側熱電対450は、熱電対ガイド432の筒内に挿入されて熱電対通路427の終端位置に達している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、セラミックヒータ410では、ウエハ載置面420aと外周側熱電対450とが乖離している。そのため、ウエハを載置した状態で測温したときに、ウエハの実際の温度と外周側熱電対450の測温結果とが異なっており、ウエハの温度を外周側熱電対450で正確に測定することができていなかった。
【0005】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、熱電対でウエハの温度の測定を正確に行うことを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のセラミックヒータは、
上面にウエハ載置面を有する円盤状のセラミック基体と、
前記セラミック基体に埋設された抵抗発熱体と、
前記セラミック基体を前記セラミック基体の下面から支持する筒状シャフトと、
前記抵抗発熱体と前記ウエハ載置面との間に設けられ、前記セラミック基体の内部の中心側の起点位置から外周側の終端位置に至る熱電対通路と、
前記セラミック基体の前記下面のうち前記筒状シャフトに囲まれたシャフト内領域に開口し、前記熱電対通路に連通する熱電対挿入穴と、
を備えたものである。
【0007】
本発明のセラミックヒータでは、熱電対を用いてウエハの温度を測定する際、熱電対を、熱電対挿入穴の開口から、抵抗発熱体とウエハ載置面との間に設けられた熱電対通路に挿入する。そして、熱電対の測温部(先端)をセラミック基体の外周側の終端位置に配置する。この終端位置は、抵抗発熱体とウエハ載置面との間にある。そのため、従来に比べて熱電対の測温部がウエハの近くに配置される。したがって、熱電対でウエハ温度を正確に測定することができる。
【0008】
本発明のセラミックヒータにおいて、前記セラミック基体は、上面側に前記ウエハ載置面を有する上側プレートと、前記抵抗発熱体が埋設され前記上側プレートの下面側に設けられた下側プレートとを有し、前記熱電対通路は、前記上側プレートの下面に設けられた上側プレート溝と前記上側プレート溝を覆う前記下側プレートとで形成され、前記熱電対挿入穴は、前記下側プレートを厚さ方向に貫通するように設けられていてもよい。こうすれば、上側プレート溝と熱電対挿入穴と位置を合わせて上側プレートの下面側に下側プレートを設けることで、抵抗発熱体とウエハ載置面との間に熱電対を挿入可能なセラミックヒータを得ることができる。この場合、前記熱電対挿入穴の幅は、前記熱電対通路のうち前記熱電対挿入穴と連通する部分の幅よりも小さくてもよい。こうすれば、上側プレートと下側プレートとを接合する際に、上側プレート溝と熱電対挿入穴との位置のずれを許容することができる。
【0009】
本発明のセラミックヒータにおいて、前記セラミック基体は、上面側に前記ウエハ載置面を有する上側プレートと、前記抵抗発熱体が埋設され前記上側プレートの下面側に設けられた下側プレートとを有し、前記熱電対通路は、前記下側プレートの上面に設けられた下側プレート溝と前記下側プレート溝を覆う前記上側プレートとで形成され、前記熱電対挿入穴は、前記熱電対通路に連通するように前記下側プレートを厚さ方向に貫通するように設けられていてもよい。こうすれば、上側プレートの下面側に下側プレートを設けることで抵抗発熱体とウエハ載置面との間に熱電対を挿入可能なセラミックヒータを容易に得ることができる。
【0010】
本発明のセラミックヒータにおいて、前記抵抗発熱体は、前記セラミック基体の中央部に設けられた一対の端子の一方から複数の折り返し部で折り返されつつ配線されたあと、前記一対の端子の他方に至る形状であり、前記熱電対挿入穴は、前記折り返し部同士が向かい合っている発熱体不存在領域を利用して設けられていてもよい。こうすれば、熱電対挿入穴を設ける際の加工代(しろ)を確保することができる。
【0011】
本発明のセラミックヒータにおいて、前記抵抗発熱体は、前記セラミック基体の中央部に設けられた一対の端子の一方から前記セラミック基体の外周部に延び出し、前記外周部に配線されたあと、前記外周部から前記一対の端子の他方に至る形状であり、前記熱電対挿入穴は、前記一対の端子のそれぞれから前記外周部に延び出した前記抵抗発熱体のジャンパ同士が向かい合っている発熱体不存在領域を利用して設けられていてもよい。こうすれば、熱電対挿入穴を設ける際の加工代(しろ)を確保することができる。
【0012】
本発明のセラミックヒータにおいて、前記熱電対通路と前記抵抗発熱体との間隔及び前記熱電対挿入穴と前記抵抗発熱体との間隔は3mm以上離れていることが好ましい。こうすれば、熱電対通路と抵抗発熱体との間の絶縁性や熱電対挿入穴と抵抗発熱体との間の絶縁性を維持しやすくなる。
【0013】
本発明のセラミックヒータにおいて、前記熱電対通路に挿入された熱電対を備えていてもよい。こうすれば、熱電対の測温部は、抵抗発熱体とウエハ載置面との間に配置されるため、熱電対でウエハ温度を正確に測定することができる。この場合、前記熱電対挿入穴に取り付けられ、前記熱電対が前記熱電対通路に挿入するのをガイドする熱電対ガイドを備え、前記熱電対は、前記熱電対ガイドにガイドされて前記熱電対通路に挿入されていてもよい。
【0014】
本発明の第1セラミックヒータの製法は、
(a)上面側にウエハ載置面を有する上側プレートの下面の中心側の起点位置から外周側の終端位置まで上側プレート溝を設ける工程と、
(b)抵抗発熱体が埋設された下側プレートを厚さ方向に貫通する熱電対挿入穴を設ける工程と、
(c)前記上側プレート溝と前記熱電対挿入穴とが一致するように前記上側プレートと前記下側プレートとを一体化する工程と、
を含むものである。
【0015】
第1のセラミックヒータの製法では、上側プレート溝と熱電対挿入穴との位置を合わせて上側プレートと下側プレートを一体化することで、抵抗発熱体とウエハ載置面との間に熱電対を挿入可能なセラミックヒータを製造することができる。なお、「一体化」は、例えば接合、接着、圧着などにより行われる。
【0016】
本発明の第1のセラミックヒータの製法において、前記工程(b)では、前記熱電対挿入穴の幅は、前記上側プレート溝の幅よりも小さく設けてもよい。こうすれば、上側プレートと下側プレートとを一体化する際に、上側プレート溝と熱電対挿入穴との位置のずれを許容することができる。
【0017】
本発明の第2のセラミックヒータの製法は、
(a)抵抗発熱体が埋設された下側プレートの上面の中心側の起点位置から外周部の終端位置まで下側プレート溝を設ける工程と、
(b)前記下側プレート溝に連通するように、前記下側プレートを厚さ方向に貫通する熱電対挿入穴を設ける工程と、
(c)前記下側プレートの上面と、上面にウエハ載置面を有する上側プレートの下面とを一体化する工程と、
を含むものである。
【0018】
本発明の第2セラミックヒータの製造方法では、上側プレートと下側プレートとを一体化することで、抵抗発熱体とウエハ載置面との間に熱電対を挿入可能なセラミックヒータを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図5】セラミックヒータ10の製造方法の一例を示す図。
【
図6】セラミックヒータ110の製造方法の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の好適な実施形態を、図面を参照しながら以下に説明する。
図1はセラミックヒータ10の斜視図、
図2は
図1のA-A断面図、
図3は
図1のB-B断面図である。なお、本明細書において、「上」「下」は、絶対的な位置関係を表すものではなく、相対的な位置関係を表すものである。そのため、セラミックヒータの向きによって「上」「下」は「左」「右」になったり「前」「後」になったりする。
【0021】
セラミックヒータ10は、エッチングやCVDなどの処理が施されるウエハWを加熱するために用いられるものであり、図示しない真空チャンバ内に設置される。このセラミックヒータ10は、ウエハ載置面20aを有する円盤状のセラミック基体20と、セラミック基体20のウエハ載置面20aとは反対側の面(下面)20bに接合された筒状シャフト40とを備えている。
【0022】
セラミック基体20は、窒化アルミニウムやアルミナなどに代表されるセラミック材料からなる円盤状のプレートである。セラミック基体20の直径は特に限定されるものではないが、例えば300mm程度である。セラミック基体20は、セラミック基体20と同心円状の仮想境界20c(
図3参照)によって小円形の内周側ゾーンZ1と円環状の外周側ゾーンZ2とに分けられている。セラミック基体20の内周側ゾーンZ1には内周側抵抗発熱体22が埋設され、外周側ゾーンZ2には外周側抵抗発熱体24が埋設されている。抵抗発熱体22,24は、例えばモリブデン、タングステン又は炭化タングステンを主成分とするコイルで構成されている。セラミック基体20は、
図2に示すように、上側プレートP1と下側プレートP2とを面接合することにより作製されている。この点は後で詳述する。
【0023】
筒状シャフト40は、セラミック基体20と同じく窒化アルミニウム、アルミナなどのセラミックスで形成されている。筒状シャフト40は、上端のフランジ部40aがセラミック基体20に拡散接合されている。
【0024】
内周側抵抗発熱体22は、
図3に示すように、一対の端子22a,22bの一方から端を発し、一筆書きの要領で複数の折り返し部で折り返されつつ内周側ゾーンZ1のほぼ全域に配線されたあと、一対の端子22a,22bの他方に至るように形成されている。一対の端子22a,22bは、シャフト内領域20d(セラミック基体20の下面20bのうち筒状シャフト40の内側領域)に設けられている。一対の端子22a,22bには、それぞれ金属製(例えばNi製)の給電棒42a,42bが接合されている。
【0025】
外周側抵抗発熱体24は、
図3に示すように、一対の端子24a,24bの一方からセラミック基体20の外周側ゾーンZ2に延び出し、一筆書きの要領で複数の折り返し部で折り返されつつ外周側ゾーンZ2のほぼ全域に配線されたあと、外周側ゾーンZ2から一対の端子24a,24bの他方に至るように形成されている。一対の端子24a,24bは、セラミック基体20の下面20bのシャフト内領域20dに設けられている。一対の端子24a,24bには、それぞれ金属製(例えばNi製)の給電棒44a,44bが接合されている。なお、外周側抵抗発熱体24のうち一対の端子24a,24bのそれぞれから外周側ゾーンZ2に延び出す部分を、ジャンパ24c,24dと称することとする。
【0026】
セラミック基体20の内部には、
図2に示すように、外周側熱電対50を挿入するための長穴形状の熱電対通路27が、ウエハ載置面20aと抵抗発熱体22,24との間にウエハ載置面20aと平行に設けられている。また、熱電対通路27は、セラミック基体20内部の中心側の起点位置Sからセラミック基体20の外周部の終端位置Eに向かって直線的に延びている。セラミック基体20のうち、シャフト内領域20dから熱電対通路27に至る部分は、熱電対ガイド32の湾曲部34の先端を嵌め込むための長溝形状の熱電対挿入穴26になっている。熱電対挿入穴26は、シャフト内領域20dに開口している。熱電対挿入穴26は、
図2~4に示すように、セラミック基体20のうち内周側抵抗発熱体22の折り返し部同士が向かい合っている発熱体不存在領域25を利用して、シャフト内領域20dの中心側から外周側及びウエハ載置面20aに向かって延び、内周側抵抗発熱体22とウエハ載置面20aとの間にある熱電対通路27に連通している。熱電対挿入穴26の幅αは、熱電対通路27のうち熱電対挿入穴26と連通する部分の幅β(
図4参照)よりも小さく形成されている。熱電対挿入穴26と抵抗発熱体22,24との間隔や熱電対通路27と抵抗発熱体22,24との間隔は、絶縁性を維持するために3mm以上離れていることが好ましい。
【0027】
熱電対ガイド32は、
図2に示すように、ガイド穴32aを備えた金属製(例えばステンレス製)の筒状部材である。熱電対ガイド32は、ウエハ載置面20aに対して垂直方向に延びる垂直部33と、垂直方向から水平方向に転換する湾曲部34とを備えている。湾曲部34の曲率半径は特に限定するものではないが、例えば20~40mm程度である。熱電対ガイド32のガイド穴32aには、外周側熱電対50が挿通されている。湾曲部34の先端は、熱電対挿入穴26に単に嵌め込まれているだけでもよいし、熱電対挿入穴26内に接合又は接着されていてもよい。
【0028】
筒状シャフト40の内部には、
図2~4に示すように、熱電対ガイド32のほか、内周側抵抗発熱体22の一対の端子22a,22bのそれぞれに接続される給電棒42a,42bや外周側抵抗発熱体24の一対の端子24a,24bのそれぞれに接続される給電棒44a,44bが配置されている。筒状シャフト40の内部には、セラミック基体20の中央付近の温度を測定するための内周側熱電対48やセラミック基体20の外周付近の温度を測定するための外周側熱電対50も配置されている。内周側熱電対48は、セラミック基体20のシャフト内領域20dに設けられた凹部49に差し込まれ、先端の測温部48aがセラミック基体20に接触している。凹部49は、下面20bのうち各端子22a,22b,24a,24bや熱電対挿入穴26がない位置に設けられている。外周側熱電対50は、シース熱電対であり、熱電対ガイド32のガイド穴32a及び熱電対通路27を通過するように配置されている。
【0029】
次に、セラミックヒータ10の製造方法の一例を説明する。
図5は、セラミックヒータ10の製造方法の一例を示す図である。
【0030】
まず、上面にウエハ載置面20aを有する上側プレートP1と、複数の折り返し部で折り返されつつ配線された抵抗発熱体22,24が埋設された下側プレートP2とを作製する。上側プレートP1と下側プレートP2とは、例えば、モールドキャスト法によりセラミック成形体を作製し、セラミック成形体を焼成することで得られる。ここで、「モールドキャスト法」とは、セラミック原料粉末とモールド化剤とを含むセラミックスラリーを成形型内に注入し、その成形型内でモールド化剤を化学反応させてセラミックスラリーをモールド化させることにより成形体を得る方法をいう。モールド化剤としては、例えば、イソシアネート及びポリオールを含み、ウレタン反応によりモールド化するものとしてもよい。続いて、
図5(a)に示すように、上側プレートP1の下面に、上側プレート溝27aを形成する。具体的には、上側プレートP1の下面の中心側の起点位置Sから、外周部の終端位置Eまで直線状に延びる溝を切削加工やブラスト加工により形成する。
【0031】
続いて、
図5(b)に示すように、下側プレートP2の発熱体不存在領域25に熱電対挿入穴26を形成する。具体的には、下側プレートP2を厚さ方向に貫通する貫通穴を切削加工やブラスト加工により形成する。熱電対挿入穴26の短手方向の幅αは、上側プレート溝27aのうち熱電対挿入穴26と連通する部分の幅βより小さくする。
【0032】
続いて、
図5(c)に示すように、上側プレートP1と下側プレートP2とを接合してセラミック基体20を得る。具体的には、ウエハ載置面20a側からみたとき、熱電対挿入穴26が上側プレート溝27aの内側にくるように上側プレートP1と下側プレートP2とを重ね合わせたあと、両者を接合する。こうすることで、上側プレート溝27aと上側プレート溝27aを覆う下側プレートP2とによって、抵抗発熱体22,24とウエハ載置面20aとの間に熱電対通路27が形成される。
【0033】
続いて、セラミック基体20と筒状シャフト40とを接合する。筒状シャフト40は、例えば、モールドキャスト法によりセラミック成形体を作製し、セラミック成形体を焼成することで得られる。最後に、シャフト内領域20dのうち端子22a,22b,24a,24bに対応する位置に貫通穴を設け、端子22a,22b,24a,24bをシャフト内領域20dに露出させる。そして、端子22a,22b,24a,24bと給電棒42a,42b,44a,44bとを、ろう材で接合する。
【0034】
次に、セラミックヒータ10の使用例について説明する。まず、図示しない真空チャンバ内にセラミックヒータ10を設置し、そのセラミックヒータ10のウエハ載置面20aにウエハWを載置する。そして、内周側熱電対48によって検出された温度が予め定められた内周側目標温度となるように内周側抵抗発熱体22に供給する電力を調整すると共に、外周側熱電対50によって検出された温度が予め定められた外周側目標温度となるように外周側抵抗発熱体24に供給する電力を調整する。これにより、ウエハWの温度が所望の温度になるように制御される。そして、真空チャンバ内を真空雰囲気もしくは減圧雰囲気になるように設定し、真空チャンバ内にプラズマを発生させ、そのプラズマを利用してウエハWにCVD成膜を施したりエッチングを施したりする。
【0035】
以上説明した本実施形態のセラミックヒータ10では、外周側熱電対50を用いてウエハWの温度を測定する際、外周側熱電対50を、熱電対挿入穴26の開口から、抵抗発熱体22,24とウエハ載置面20aとの間に設けられた熱電対通路27に挿入する。そして、外周側熱電対50の測温部50a(先端)をセラミック基体20の外周側の終端位置Eに配置する。この終端位置Eは、抵抗発熱体22,24とウエハ載置面20aとの間にある。そのため、従来に比べて外周側熱電対50の測温部50aがウエハWの近くに配置される。したがって、外周側熱電対50でウエハWの温度を正確に測定することができる。
【0036】
また、セラミックヒータ10では、上側プレート溝27aと熱電対挿入穴26との位置を合わせて上側プレートP1の下面側に下側プレートP2を設けることで、抵抗発熱体22,24とウエハ載置面20aとの間に外周側熱電対50を挿入可能なセラミックヒータを得ることができる。また、熱電対挿入穴26の幅αは、熱電対通路27のうち熱電対挿入穴26と連通する部分の幅βよりも小さいため、上側プレートP1と下側プレートP2とを接合する際に、上側プレート溝27aと熱電対挿入穴26との位置のずれを許容することができる。なお、熱電対通路27のうち熱電対挿入穴26と連通する部分より外周に位置する熱電対通路27の幅を外周に向けてテーパ状に細くしてもよい。これにより、外周側熱電対50の蛇行を抑制することができる。
【0037】
更に、セラミックヒータ10では、セラミック基体20のうち内周側抵抗発熱体22の折り返し部同士が向かい合っている発熱体不存在領域25を利用して設けられているため、熱電対挿入穴26を設けるための加工代(しろ)を確保することができる。
【0038】
そして、セラミックヒータ10では、熱電対挿入穴26と抵抗発熱体22,24との間隔及び熱電対通路27と抵抗発熱体22,24との間隔は3mm以上離れているため熱電対通路27と抵抗発熱体22,24との間の絶縁性や熱電対挿入穴26と抵抗発熱体22,24との間の絶縁性を維持しやすくなる。
【0039】
そしてまた、セラミックヒータ10は、熱電対通路27に挿入された外周側熱電対50を備えている。そのため、外周側熱電対50の測温部50aは、外周側抵抗発熱体24とウエハ載置面20aとの間にあり、外周側熱電対50でウエハWの外周の温度を正確に測定することができる。
【0040】
そして更に、本実施形態のセラミックヒータ10の製法では、上側プレート溝27aと熱電対挿入穴26との位置を合わせて上側プレートP1と下側プレートP2とを接合するため、抵抗発熱体22,24とウエハ載置面20aとの間に外周側熱電対50を挿入可能なセラミックヒータを製造することができる。
【0041】
そしてまた更に、工程(b)では、熱電対挿入穴26の幅は、上側プレート溝27aのうち熱電対挿入穴26と連通する部分の幅よりも小さく設けているため、上側プレートP1と下側プレートP2とを接合する際に、上側プレート溝27aと熱電対挿入穴26との位置のずれを許容することができる。
【0042】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0043】
例えば、上述した実施形態では、上側プレート溝27aが設けられた上側プレートP1と、熱電対挿入穴26を設けた
下側プレートP
2と、を接合して得られたセラミック基体20を用いてセラミックヒータ10を作製したが、これに限られない。例えば、
図7に示すセラミックヒータ110を製造する方法を、
図6を用いて以下に説明する。セラミックヒータ110は、上側プレートP1に上側プレート溝27aを設ける代わりに、下側プレートP2に下側プレート溝27bを設けた以外は、セラミックヒータ10と同様の構成である。まず、上面にウエハ載置面20aを有する上側プレートP1と、複数の折り返し部で折り返されつつ配線された抵抗発熱体22,24が埋設された下側プレートP2とを作製する。続いて、
図6(a)に示すように、下側プレートP2の上面に下側プレート溝27bを形成する。具体的には、下側プレートP2の上面の中心側の起点位置Sから外周側の終端位置Eまで直線状に延びる溝を切削加工やブラスト加工により形成する。続いて、
図6(b)に示すように、発熱体不存在領域25に熱電対挿入穴26を形成する。具体的には、下側プレート溝27bに連通するように、下側プレートP2を厚さ方向に貫通する貫通穴を切削加工やブラスト加工により形成する。続いて、
図6(c)に示すように、上側プレートP1と下側プレートP2とを接合してセラミック基体120を得る。このようにして得られたセラミック基体120を用いて、
図7に示すセラミックヒータ110を作製してもよい。こうすることで、下側プレート溝27bと下側プレート溝27bを覆う上側プレートP1とによって、抵抗発熱体22,24とウエハ載置面20aとの間に熱電対通路27が形成される。なお、
図6,7では、上述した実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付した。
【0044】
上述した実施形態では、熱電対挿入穴26は、内周側抵抗発熱体22の折り返し部同士が向かい合っている発熱体不存在領域25を利用して設けられているが、これに限られない。例えば、
図8に示すセラミックヒータ210のように、熱電対挿入穴26は、発熱体不存在領域225を利用して設けられていてもよい。発熱体不存在領域225は、
図8に示すように、端子24aから外周側ゾーンZ2に延び出すジャンパ24cと端子24bから外周側ゾーンZ2に延び出すジャンパ24dとが向かい合っている領域である。このようにしても、熱電対挿入穴26を設けるための加工代(しろ)を確保することができる。なお、
図8では、上述した実施形態と同じ構成要素には同じ符号を付した。
【0045】
上述した実施形態では、上側プレートP1と下側プレートP2とを接合してセラミックヒータ10を作製したがこれに限られない。例えば、未焼成の上側プレート成形体及び下側プレート成形体を作製し、加工したあと最後に一体化して焼成してもよい。
【0046】
上述した実施形態では、抵抗発熱体22,24はコイル形状としたがこれに限られない。例えば、抵抗発熱体22,24の形状は、リボン形状やメッシュ形状などであってもよい。
【0047】
上述した実施形態において、セラミック基体20に抵抗発熱体22,24に加えて静電電極及びRF電極の少なくとも一方を内蔵してもよい。静電電極が内蔵されている場合、静電電極に電圧を印加することでウエハWを吸着保持できる。また、RF電極が内蔵されている場合、ウエハ載置面20aの上方に配置される平行平板電極(図示せず)とRF電極との間に高周波電圧を印加することで、プラズマを発生させることができる。
【符号の説明】
【0048】
10,110,210 セラミックヒータ、20,120 セラミック基体、20a ウエハ載置面、20b 下面、20c 仮想境界、20d シャフト内領域、22 内周側抵抗発熱体、22a,22b 端子、24 外周側抵抗発熱体、24a,24b 端子、24c,24d ジャンパ、25,225 発熱体不存在領域、26 熱電対挿入穴、27 熱電対通路、27a 上側プレート溝、27b 下側プレート溝、32 熱電対ガイド、32a ガイド穴、33 直線部、34 湾曲部、40 筒状シャフト、40a フランジ部、42a,42b,44a,44b 給電棒、48 内周側熱電対、48a 測温部、49 凹部、50 外周側熱電対、50a 測温部、410 セラミックヒータ、420 セラミック基体、427 熱電対通路、427a スリット、432 熱電対ガイド、440 筒状シャフト、450 外周側熱電対、P1 上側プレート、P2 下側プレート、E 終端位置、S 起点位置、W ウエハ、Z1 内周側ゾーン、Z2 外周側ゾーン。