(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-12
(45)【発行日】2023-09-21
(54)【発明の名称】ミキサ車
(51)【国際特許分類】
B60P 3/16 20060101AFI20230913BHJP
【FI】
B60P3/16 A
(21)【出願番号】P 2020087569
(22)【出願日】2020-05-19
【審査請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小森 幸徳
(72)【発明者】
【氏名】木本 恵介
(72)【発明者】
【氏名】横山 貴史
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-172973(JP,A)
【文献】特開2020-50299(JP,A)
【文献】特開2008-55932(JP,A)
【文献】特開平5-322030(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60P 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミキサ車であって、
パーキングブレーキと、
車両上に回転自在に搭載されたミキサドラムと、
前記パーキングブレーキの作動及び非作動を示すパーキング信号を出力するパーキングブレーキセンサと、
車両の車速を検出する車速検出手段と、
前記ミキサドラムの駆動を制御するミキサドラム制御装置と、を備え、
前記ミキサドラム制御装置は、前記パーキング信号が前記パーキングブレーキの作動を示しかつ前記車速が0より大きい状態、または、前記パーキング信号が前記パーキングブレーキの非作動を示しかつ前記車速が所定時間継続して0である状態で、前記パーキング信号の異常を検知することを特徴とするミキサ車。
【請求項2】
請求項1に記載のミキサ車であって、
前記ミキサドラム制御装置は、前記パーキング信号が前記パーキングブレーキの作動を示しかつ前記車速が0より大きい状態が所定時間継続した際に、前記パーキング信号の異常を検知することを特徴とするミキサ車。
【請求項3】
請求項1または2に記載のミキサ車であって、
前記ミキサドラムを手動で操作するための操作盤をさらに備え、
前記ミキサドラム制御装置は、前記パーキング信号の異常を検知した際には、前記車速が0より大きい状態では前記操作盤による前記ミキサドラムの操作を不能にすることを特徴とするミキサ車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミキサ車に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、架台に搭載され、撹拌方向及び排出方向に回転可能なミキサドラムと、ミキサドラムを回転駆動するための駆動装置と、駆動装置の動作を制御するコントローラと、を備え、コントローラにてミキサドラムの回転方向及び回転速度が制御されることによって自動撹拌運転されるミキサ車が開示されている。コントローラには、パーキングブレーキのレバー位置を検出するためのパーキングブレーキセンサの信号が入力される。ミキサドラムの自動撹拌は、パーキングブレーキセンサの信号を参照し、パーキングブレーキのレバーが制動位置にない場合に行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のミキサ車では、例えばパーキングブレーキセンサの信号を伝達する配線の断線等によりパーキングブレーキのレバー位置が正確に伝達されない場合が考えられる。一方、ミキサドラムの自動撹拌は、パーキングブレーキが制動位置にあるか否かというミキサ車の状態に応じて切り換えられる。そのため、パーキングブレーキのレバー位置が正確に伝達されない場合には、ミキサドラムの自動撹拌の制御を適切に行えなくなるおそれがある。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、ミキサドラムの自動撹拌の制御を適切に行うことを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、ミキサ車であって、パーキングブレーキと、車両上に回転自在に搭載されたミキサドラムと、パーキングブレーキの作動及び非作動を示すパーキング信号を出力するパーキングブレーキセンサと、車両の車速を検出する車速検出手段と、ミキサドラムの駆動を制御するミキサドラム制御装置と、を備え、ミキサドラム制御装置は、パーキング信号がパーキングブレーキの作動を示しかつ車速が0より大きい状態、または、パーキング信号がパーキングブレーキの非作動を示しかつ車速が所定時間継続して0である状態で、パーキング信号の異常を検知することを特徴とする。
【0007】
この発明では、ミキサドラム制御装置はパーキング信号の異常を検知することができるため、異常の検知により、ミキサ車の状態を正確に判定することができる。これにより、ミキサ車のミキサドラムの自動撹拌を適切に行うことができる。
【0008】
本発明は、ミキサドラム制御装置は、パーキング信号がパーキングブレーキの作動を示しかつ車速が0より大きい状態が所定時間継続した際に、パーキング信号の異常を検知することを特徴とする。
【0009】
この発明では、パーキング信号の異常を確実に検知することができる。
【0010】
本発明は、ミキサドラムを手動で操作するための操作盤をさらに備え、ミキサドラム制御装置は、パーキング信号の異常を検知した際には、車速が0より大きい状態では操作盤によるミキサドラムの操作を不能にすることを特徴とする。
【0011】
この発明では、パーキング信号の異常の際、ミキサ車の走行中に操作盤によりミキサドラムが手動で操作され搭載物が排出されることが防止される。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ミキサドラムの自動撹拌の制御を適切に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1A】本発明の実施形態に係るミキサ車を上方から見た平面図である。
【
図1B】本発明の実施形態に係るミキサ車を後方から見た背面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係るミキサ車のハードウェア構成を示すブロック図である。
【
図3】本発明の実施形態に係るミキサ車の状態及び状態の遷移を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係るミキサ車1について説明する。
【0015】
ミキサ車1は、ミキサドラム2内に投入されたモルタルやレディミクストコンクリート等のいわゆる生コンクリート(以下、「生コン」と称する。)を運搬する車両である。以下の説明では、ミキサ車1が積載物として生コンを積載する場合について説明する。
【0016】
図1A,Bに示すように、ミキサ車1は、運転室11と架台3とを備える車両である。ミキサ車1は、パーキングブレーキ12と、車両上に回転自在に搭載されたミキサドラム2と、パーキングブレーキ12の作動及び非作動を示すパーキング信号を出力するパーキングブレーキセンサ22と、車両の車速を検出する車速検出手段としての車速センサ21と、ミキサドラム2の駆動を制御するミキサドラム制御装置としてのコントローラ20と、を備える。
【0017】
ミキサドラム2は、架台3に回転可能に搭載される有底円筒形の容器であり、その後端には生コンの投入と排出とが行われる開口部2aが設けられる。ミキサドラム2は、その回転軸Oが車両の前部から後部に向かって徐々に高くなるように傾斜して搭載される。ミキサドラム2内には、図示しないドラムブレードがドラム内壁面に沿って螺旋状に配設されており、ミキサドラム2とともにドラムブレードが回転することによって、ミキサドラム2内に積載された生コンの攪拌等が行われる。
【0018】
ミキサドラム2の開口部2aの後方上部には、ホッパ16が設けられる。生コン工場においてミキサ車1に投入される生コンは、ホッパ16によって開口部2aへと導かれる。ミキサドラム2の開口部2aの後方下部には、フローガイド17及びシュート18が設けられる。開口部2aから排出される生コンは、フローガイド17によってシュート18に導かれ、シュート18によって所定の方向に排出される。
【0019】
ミキサドラム2は、ミキサ車1に搭載された走行用のエンジン10を駆動源として、駆動装置4を介して回転駆動される。駆動装置4は、エンジン10の回転によって駆動され、作動流体の流体圧によってミキサドラム2を回転駆動する流体圧装置である。
【0020】
図2に示すように、エンジン10は、エンジン10の出力及び回転数を調整するためのスロットル弁10aを有する。スロットル弁10aの開度は、エンジン10によって駆動装置4を駆動させる際に図示しないアクチュエータを介してコントローラ20により制御される。また、エンジン10には、エンジン10の回転速度を検出し、検出された回転速度に応じた信号をコントローラ20へ出力する回転センサ10bが設けられる。
【0021】
駆動装置4を駆動する際のエンジン10の回転数は、回転センサ10bによって検出された回転速度が所定の大きさとなるように、スロットル弁10aを介してコントローラ20により制御される。なお、回転センサ10bは、駆動装置4の入力軸である後述のPTO軸9やドライブシャフト8の回転速度を検出するものであってもよいし、後述の油圧ポンプ5の回転速度を検出するものであってもよい。
【0022】
エンジン10の回転は、エンジン10から常時動力を取り出すPTO軸9(PTO:Power take-off)と、PTO軸9と駆動装置4とを連結するドライブシャフト8と、を介して駆動装置4に伝達される。
【0023】
駆動装置4は、エンジン10によって駆動され作動流体としての作動油を吐出する油圧ポンプ5と、油圧ポンプ5から供給される作動油によって作動しミキサドラム2を回転駆動する油圧モータ6と、油圧ポンプ5から油圧モータ6に供給される作動油の流れを制御する電磁比例弁31と、を有する。なお、駆動装置4では、作動流体として作動油ではなく、他の非圧縮性流体が用いられてもよい。
【0024】
油圧ポンプ5は、PTO軸9を介してエンジン10から常時取り出される動力によって回転駆動される。なお、油圧ポンプ5を回転駆動させる駆動源としては、走行用のエンジン10に限定されず、走行に用いられない補機用のエンジンや電動モータであってもよい。
【0025】
油圧ポンプ5は、容量が可変な斜板型アキシャルピストンポンプである。油圧ポンプ5から吐出された作動油は油圧モータ6に供給され、油圧モータ6が回転する。油圧モータ6の回転は、減速機7を介してミキサドラム2に伝達される。油圧ポンプ5は、ポンプ吐出圧が導かれるアクチュエータ(図示省略)の作動により、アクチュエータに導かれるポンプ吐出圧が上昇するほど、斜板を付勢する傾転スプリングに抗してポンプ吐出量が小さくなるように制御される。アクチュエータに導かれるポンプ吐出圧は、ロードセンシング弁(図示省略)によって調整される。ロードセンシング弁は、油圧ポンプ5の吐出圧と油圧モータ6に供給される圧力(負荷圧)との差圧が所定値となるようにアクチュエータに導かれるポンプ吐出圧を調整する。
【0026】
油圧ポンプ5によってミキサドラム2が正転運転されるときには、ミキサドラム2内の生コンクリートが攪拌される。一方、油圧ポンプ5によってミキサドラム2が逆転運転されるときには、ミキサドラム2内の生コンクリートが後端の開口部からフローガイド17及びシュート18を介して外部へと排出される。
【0027】
油圧モータ6は、容量が可変な斜板型アキシャルピストンモータである。油圧モータ6は、油圧ポンプ5から吐出された作動油の供給を受けて回転駆動される。油圧モータ6は、コントローラ20からの二速切換信号を受信して斜板(図示省略)の傾転角を調整する電磁弁(図示省略)を備える。油圧モータ6の容量は、電磁弁が切り換えられることによって、高速回転用の小容量(2速)と通常回転用の大容量(1速)との二段階に切り換えられる。油圧モータ6は、容量が無段階で切り換えられるものであってもよい。
【0028】
油圧モータ6には、回転数検知器としての回転センサ6aが設けられる。回転センサ6aは、その出力軸(図示省略)の回転方向と出力軸の回転数を検知し、コントローラ20に回転方向信号と回転数信号とを出力する。
【0029】
油圧ポンプ5と油圧モータ6の間には、閉回路Lが設けられ、この閉回路Lを作動油が循環するようになっている。この閉回路L中に電磁比例弁31が設けられる。電磁比例弁31は、油圧ポンプ5が吐出した作動油をミキサドラム2を正回転させるように油圧モータ6に導く正転位置31Aと、油圧ポンプ5が吐出した作動油をミキサドラム2を逆回転させるように油圧モータ6に導く逆転位置31Bと、油圧ポンプ5から油圧モータ6への間の作動油の流れを遮断する中立位置31Cと、を備える。
【0030】
電磁比例弁31は、一対のソレノイド32a,32b及び一対のリターンスプリング33a,33bを有する。一対のソレノイド32a,32bは、コントローラ20から出力される制御信号によって作動する。制御信号とは、具体的には、電流値である。この電流値を調整することで、電磁比例弁31は、正転位置31A、中立位置31C、及び逆転位置31Bによりそのポジションが無段階に切り換えられる。
【0031】
電磁比例弁31は、一方のソレノイド32aへ通電されることで、その通電量に応じた開度で正転位置31Aに切り換えられる。これにより、油圧モータ6には、電磁比例弁31の開度に応じた流量の作動油が、ミキサドラム2を正転方向に回転させるように供給される。
【0032】
反対に、電磁比例弁31は、他方のソレノイド32bへ通電されることで、その通電量に応じた開度で逆転位置31Bに切り換えられる。これにより、油圧モータ6には、電磁比例弁31の開度に応じた流量の作動油が、ミキサドラム2を逆転方向に回転させるように供給される。なお、電磁比例弁31は、ソレノイド32a,32bへの通電量が大きいほど、開度が大きくなり多くの流量が油圧モータ6に導かれる。
【0033】
電磁比例弁31は、一対のソレノイド32a,32bへの通電が遮断されると、一対のリターンスプリング33a,33bの付勢力によって中立位置31Cに切り換えられる。中立位置31Cでは、油圧モータ6への作動油の供給が遮断されるため、油圧モータ6は回転駆動されない。
【0034】
上記構成の駆動装置4において、油圧ポンプ5から吐出された作動油が油圧モータ6に供給されることによって油圧モータ6が回転し、供給される作動油の流れ、油量や油圧モータ6の斜板の傾転角に応じて、油圧モータ6の回転速度が変更される。
【0035】
駆動装置4の出力軸、すなわち油圧モータ6の出力軸は、減速機7を介してミキサドラム2の回転軸Oに連結される。このため、油圧モータ6の回転速度を増減することによって、ミキサドラム2の回転速度を増減させることが可能であり、油圧モータ6の回転方向を切り換えることによって、ミキサドラム2の回転方向を正回転方向である撹拌方向と逆回転方向である排出方向とに切り換えることが可能である。
【0036】
このように、ミキサドラム2の回転数及び回転方向は、油圧モータ6の回転数及び回転方向に相関することから、油圧モータ6の回転センサ6aの検出値からミキサドラム2の回転数及び回転方向を把握することが可能である。なお、回転センサ6aは、油圧モータ6に代えて、ミキサドラム2の回転数及び回転方向を検出するものであってもよい。
【0037】
ミキサドラム2が撹拌方向に回転駆動されると、ミキサドラム2内の生コンはドラムブレードにより攪拌されながら前方へと移動する。一方、ミキサドラム2が排出方向に回転駆動されると、ミキサドラム2内の生コンはドラムブレードにより攪拌されながら後方へと移動する。
【0038】
このようにミキサドラム2を撹拌方向とは反対の方向である排出方向に回転させることで、ミキサドラム2の開口部2aから生コンを排出することができる。ミキサドラム2から排出された生コンは、フローガイド17及びシュート18を介して所定位置に誘導される。
【0039】
なお、ホッパ16を介して、ミキサドラム2内へ生コンを投入する場合には、攪拌時よりもミキサドラム2を高速で撹拌方向に回転させることで、投入された生コンを速やかにミキサドラム2の前方へと移動させる。
【0040】
コントローラ20は、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リードオンリメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、及びI/Oインターフェース(入出力インターフェース)等を備えたマイクロコンピュータで構成される。RAMはCPUの処理におけるデータを記憶し、ROMはCPUの制御プログラム等を予め記憶し、I/Oインターフェースは接続された機器との情報の入出力に使用される。CPUやRAM等をROMに格納されたプログラムに従って動作させることによって、駆動装置4の作動が制御される。
【0041】
コントローラ20には、上記のように、油圧モータ6の回転センサ6aと、エンジン10の回転センサ10bと、が接続される。また、コントローラ20には、パーキングブレーキセンサ22と、車速センサ21と、が接続され、これらのセンサ類で検出された検出値が入力される。さらに、コントローラ20には、上記のように、電磁比例弁31と、エンジン10のスロットル弁10aと、が接続され、これらを作動させる指令値がコントローラ20から出力される。
【0042】
また、ミキサ車1は、ミキサドラム2を手動で操作可能するための操作盤40をさらに備える。コントローラ20には操作盤40が接続され、操作盤40を介して、ミキサドラム2の回転方向及び回転速度が手動で操作される。操作盤40は、運転室11内に設けられる第1操作盤41と、ミキサ車1の右後方に設けられる第2操作盤42と、ミキサ車1の左後方に設けられる第3操作盤43と、ホッパ16付近に設けられる第4操作盤44と、を有する。
【0043】
第1操作盤41は、車両が走行中であってもミキサドラム2の操作を可能とするために運転室11内に設けられる。第1操作盤41には、ミキサドラム2の回転方向及び回転速度を変更するためのダイヤルつまみ型のポテンショメータ41aと、非常時にミキサドラム2の回転を停止させるための非常停止スイッチ41bと、が設けられる。
【0044】
第2操作盤42は、車両の右側へシュート18を介して排出される生コンの量を見ながらミキサドラム2の操作を可能とするためにミキサ車1の右後方に設けられる。第2操作盤42には、ミキサドラム2の回転方向及び回転速度を変更するためのダイヤルつまみ型のポテンショメータ42aと、非常時にミキサドラム2の回転を停止させるための非常停止スイッチ42bと、が設けられる。
【0045】
第3操作盤43は、車両の左側へシュート18を介して排出される生コンの量を見ながらミキサドラム2の操作を可能とするためにミキサ車1の左後方に設けられる。例えば、ミキサ車1を2台並べた状態において生コンを排出する際に、一方の車両の右後方に設けられた第2操作盤42を操作しつつ、他方の車両の左後方に設けられた第3操作盤43を操作することによって、生コンを途切れることなく供給したり多量の生コンを供給したりすることができる。
【0046】
第3操作盤43には、第2操作盤42と同様に、ミキサドラム2の回転方向及び回転速度を変更するためのダイヤルつまみ型のポテンショメータ43aと、非常時にミキサドラム2の回転を停止させるための非常停止スイッチ43bと、が設けられる。
【0047】
第4操作盤44は、ミキサドラム2内の生コンの残量を確認しながらミキサドラム2の操作を可能とするためにホッパ16の周辺、すなわち車両の上方に設けられる。第4操作盤44には、第2操作盤42及び第3操作盤43と同様に、ミキサドラム2の回転方向及び回転速度を変更するためのダイヤルつまみ型のポテンショメータ44aと、非常時にミキサドラム2の回転を停止させるための非常停止スイッチ44bと、が設けられる。
【0048】
これらの操作盤41~44は、車両に固定された据付型であってもよいし、車両にケーブルを介して接続され取り外すことが可能な着脱型であってもよい。
【0049】
各操作盤41~44に設けられるポテンショメータ41a~44aは、回動操作量に応じて電気抵抗値が変化する可変抵抗器であり、作業者によりポテンショメータ41a~44aが回動操作されると、コントローラ20は、ミキサドラム2の回転状態が、ポテンショメータ41a~44aの電気抵抗値に応じた状態となるように、油圧ポンプ5の斜板の傾転角や油圧モータ6の斜板の傾転角といった駆動装置4を構成する各機構を制御する。
【0050】
具体的には、第1操作盤41において作業者によりポテンショメータ41aが時計回り方向に回動操作されると、コントローラ20は、ミキサドラム2を撹拌方向へとポテンショメータ41aの電気抵抗値に応じた回転速度で回転させる。反対に作業者によりポテンショメータ41aが反時計回り方向に回動操作されると、コントローラ20は、ミキサドラム2を排出方向へとポテンショメータ41aの電気抵抗値に応じた回転速度で回転させる。
【0051】
第1操作盤41、第2操作盤42、第3操作盤43、及び第4操作盤44(以下、これらを総称して単に「操作盤40」とする。)は、ミキサ車の走行状態に応じて、操作権利が付与される。つまり、操作盤40は、ミキサ車の走行状態によって、操作可能な状態と、操作不能な状態とで、切り換えられる。
【0052】
コントローラ20は、パーキング信号と、車速センサ21により入力されるミキサ車1の車速と、を参照し、ミキサ車1の走行状態を判定する。具体的には、コントローラ20は、ミキサ車1の走行状態が、停車状態、走行待機状態、走行状態、及び推定走行状態のいずれであるかを、パーキング信号及びミキサ車1の車速に基づいて判定する。このようにして判定されたミキサ車1の走行状態に応じて、ミキサドラム2の自動撹拌の開始を制御する。自動撹拌は、ミキサ車1の走行中における生コンの固化を防止するものである。自動撹拌が開始されると、ミキサドラム2が撹拌方向に回転駆動され、ミキサドラム2内の生コンはドラムブレードにより攪拌されながら前方へと移動し、以後、自動撹拌が継続される。また、コントローラ20は、ミキサ車1の走行状態に応じて、操作盤40へ操作権利を付与する。以下では、コントローラ20によるミキサ車1の走行状態の判定、ミキサドラム2の自動撹拌の開始の制御、及び操作盤40の操作権利の付与について具体的に説明する。
【0053】
図3に示すように、コントローラ20は、パーキング信号がパーキングブレーキ12の作動を示し、かつ、車速が0である状態では、ミキサ車1が停車している停車状態であると判定する。車速が0である状態とは、ミキサ車1が停車している状態のことである。ミキサドラム2からの生コンの排出作業は、例えば、停車状態で行われる。よって、停車状態では、ミキサドラム2の自動撹拌は開始せず、操作盤40にミキサドラム2の操作権を与え操作可能とする。このように、停車状態では、ミキサ車1は操作盤40の操作により生コンを排出可能である。また、停車状態では、操作盤40の操作により、生コンの排出だけでなく、生コンの投入前にミキサドラム2内にある洗浄水や雨水等の異物の排出、生コンの追加投入前及び排出前の生コンの自動混錬、及び、ミキサドラム2内の自動洗浄が可能である。コントローラ20は、停車状態であっても自動混錬及び自動撹拌が行われている状態では、操作盤40のミキサドラム2の操作権をリセットし操作不能とし、自動混錬及び自動撹拌が終わると、操作盤40にミキサドラム2の操作権を与え操作可能とする。
【0054】
コントローラ20は、パーキング信号がパーキングブレーキ12の非作動を示し、かつ、車速が0である状態では、ミキサ車1が走行の待機をしている走行待機状態であると判定する。例えば、停車状態からパーキング信号がパーキングブレーキ12の非作動を示すものに変わると、走行待機状態へ移行する。また、後述の走行状態から一時的に停止して車速が0となった場合にも、走行待機状態へと移行する。
【0055】
コントローラ20は、パーキング信号がパーキングブレーキ12の非作動を示し、かつ、車速が0より大きい状態では、ミキサ車1が走行している走行状態であると判定する。車速が0より大きい状態とは、ミキサ車1が移動している状態のことである。例えば、走行待機状態から車速が0より大きい状態に変わると、走行状態へ移行する。
【0056】
走行状態では、生コンの固化を防止するために、ミキサドラム2の自動撹拌が継続される。また、走行中に意図せず操作盤40が操作され生コンが排出されることを防止するために、走行状態では、操作盤40のミキサドラム2の操作権をリセットし操作不能とする。このように、走行状態では、自動撹拌が実行されてミキサ車1は生コンの固化が防止されるとともに、操作盤40の誤操作による生コンの排出が防止される。
【0057】
また、ミキサ車1による生コンの運搬中は、ミキサ車1は走行状態と走行待機状態とを繰り返しながら生コンを運搬するものであり、走行待機状態は、走行状態に準じた状態である。よって、走行待機状態では、走行状態と同様に、ミキサドラム2の自動撹拌を開始し、操作盤40にミキサドラム2の操作権を与え操作可能とする。このように、走行待機状態では、ミキサ車1は生コンの固化が防止され、操作盤40の操作により生コンを排出可能である。
【0058】
ここで、例えばパーキング信号を伝達する配線の断線等により、パーキングブレーキ12の状態がコントローラ20に正確に伝達されない場合が考えられる。この場合には、パーキング信号がコントローラ20に入力されなくなるのではなく、実際のパーキングブレーキ12の状態に関わらず、パーキングブレーキ12の作動または非作動を示す信号がコントローラ20に入力される。そのため、パーキング信号がパーキングブレーキ12の作動を示し、かつ、車速が0より大きいという通常では生じない状態や、走行待機状態においてパーキング信号がパーキングブレーキ12の非作動を示し車速が長時間継続して0である状態が生じる。特に、パーキング信号がパーキングブレーキ12の作動を示し、かつ、車速が0より大きい状態では、ミキサドラムの自動撹拌を行うか否かの制御が適切に行えず、ミキサドラムの制御を適切に行えなくなるおそれがある。
【0059】
そこで、本実施形態に係るミキサ車1のコントローラ20は、パーキング信号と、車速センサ21により入力されるミキサ車1の車速と、を参照し、パーキング信号の異常を検知するパーキング信号異常検知方法を実行する。
【0060】
具体的には、コントローラ20は、パーキング信号がパーキングブレーキ12の作動を示し、かつ、車速が0より大きいという通常では生じえない状態、言い換えれば、車速が示す状態(ミキサ車1は走行中)とパーキング信号が示す状態(ミキサ車1は停車中)とに矛盾が生じるような状態では、パーキング信号の異常を検知する。この状態では、車速が0より大きいという情報に基づいて、ミキサ車1の走行状態を、ミキサ車1が走行していると推定される推定走行状態であると判定する。
【0061】
例えば、停車状態からパーキング信号がパーキングブレーキ12が作動を示す信号のまま車速が0より大きい状態に変わる、または、走行状態からパーキング信号がパーキングブレーキ12の作動を示すものに変わると、推定走行状態へ移行する。推定走行状態では、ミキサドラム2の自動撹拌がされていない際は自動撹拌を開始する。また、操作盤40のミキサドラム2の操作権をリセットし操作不能とする。この状態では、ミキサ車1は生コンの固化が防止され、操作盤40の誤操作による生コンの排出が防止される。つまり、推定走行状態は、走行状態の場合と同様に操作盤40の操作権の制御及び自動撹拌の制御が行われる。
【0062】
また、コントローラ20は、走行待機状態において車速が長時間(所定時間)継続して0である場合にも、パーキング信号の異常を検知する。ミキサ車1の車速が0である状態となるのは、走行中に信号待ちや渋滞等で一時的に停車する場合や、生コンの排出作業等で長時間停車する場合が考えられる。通常、前者では、パーキングブレーキ12は非作動であるためミキサ車1は走行待機状態となり、走行待機状態が数秒から数分継続する。後者では、パーキングブレーキ12は作動しているためミキサ車1は停車状態となり、停車状態が10分以上継続することが多い。後者のように生コンの排出作業等で長時間停車する場合にパーキング信号に異常が生じると、パーキング信号がパーキングブレーキ12の非作動を示しかつ車速が長時間継続して0である状態が生じる。したがって、パーキング信号の異常を正確に検知するためには、前者のように一時的に停車する場合はパーキング信号の異常を検知せず、後者のように長時間停車する場合におけるパーキング信号の異常を検出するようにする。よって、このパーキング信号の異常を検知する所定時間は、パーキング信号の異常を正確に検知するために、長時間停車する場合における停車時間を基に、例えば10分に設定される。
【0063】
このように、コントローラ20は、パーキング信号がパーキングブレーキ12の作動を示しかつ車速が0より大きい状態、または、パーキング信号がパーキングブレーキ12の非作動を示しかつ車速が所定時間継続して0である状態で、パーキング信号の異常を検知する。より具体的には、コントローラ20は、パーキング信号が示す状態と、車速が示す状態とを比較して両者に矛盾が生じると、パーキング信号が異常であることを検知する。このようにして、コントローラ20はパーキング信号の異常を検知することができるため、異常の検知によりミキサ車1の走行状態を適切に判定することができ、ミキサドラム2の自動撹拌を行うか否かの制御や、操作盤40に操作権利を与えるか否かの制御を変更することができる。これにより、ミキサ車1のミキサドラム2の自動撹拌を適切に行うことができる。また、ミキサドラム2を手動で操作するための操作盤40に操作権利を適切に付与することができる。なお、前述の「パーキング信号がパーキングブレーキ12の作動を示しかつ車速が0より大きい状態で、パーキング信号の異常を検出する」とは、当該状態になると直ちに異常を検出するものと、当該状態が所定時間経過すると異常を検出するものと、を含む意味である。
【0064】
また、コントローラ20は、上記のように、推定走行状態であると判定すると、操作盤40のミキサドラム2の操作権をリセットし操作不能とする。つまり、コントローラ20は、パーキング信号がパーキングブレーキ12の作動を示す状態(停車状態)では操作盤40によるミキサドラム2の操作を可能にし、パーキング信号の異常を検知した際には、車速が0より大きい状態(推定走行状態)では操作盤40によるミキサドラム2の操作を不能にする。これにより、パーキング信号の異常の際、ミキサ車1の走行中に操作盤40によりミキサドラム2が手動で操作され生コン等の搭載物が排出されることが防止される。
【0065】
なお、コントローラ20は、パーキング信号がパーキングブレーキ12の作動を示しかつ車速が0より大きい状態が所定時間継続した際に、パーキング信号の異常を検知し、推定走行状態へ移行するようにしてもよい。この所定時間は、前述の走行待機状態においてパーキング信号の異常を検知する「車速が長時間(所定時間)継続して0である場合」の所定時間とは異なる。
【0066】
ミキサ車1は、パーキング信号に異常が生じていない状態でも、走行状態である際に一時的に外部ノイズなどの影響でパーキング信号がパーキングブレーキ12の作動を示す状態に切り換わることがある。この場合、一時的にパーキング信号がパーキングブレーキ12の作動を示しかつ車速が0より大きい状態となるため、コントローラ20は、パーキング信号に異常が生じていないにも関わらず、パーキング信号が異常であると検知してしまう。よって、コントローラ20は、パーキング信号がパーキングブレーキ12の作動を示しかつ車速が0より大きい状態が所定時間継続した際にパーキング信号が異常であると検知するようにすることで、外部ノイズなどの影響を無くし、パーキング信号の異常を確実に検知することができる。
【0067】
なお、この所定時間が長いと、ミキサ車1が停車状態で生コンが投入されたのち、パーキング信号に異常が生じた状態で発車して、パーキング信号がパーキングブレーキ12の作動を示しかつ車速が0より大きい状態となった際に、停車状態から長時間推定走行状態へと移行しない。この場合、ミキサドラム2の自動撹拌が長時間開始されず、生コンが固化してしまうおそれがある。よって、この所定時間は、生コンが撹拌されなくても品質に影響が出ない時間、例えば30秒に設定される。
【0068】
また、コントローラ20は、操作盤40のいずれかのみにミキサドラム2の操作権利を与えてもよく、操作盤40の間で操作権利が受け渡されてもよい。例えば、ミキサ車1の停車状態においては、運転室11内に設けられる第1操作盤41のみにミキサドラム2の操作権利を与え操作可能とし、第1操作盤41の操作により生コンの排出前の自動混錬がされたのちに、ミキサ車1の後方に設けられる第2操作盤42及び第3操作盤43に操作権を受け渡し、生コンを排出可能な構成であってもよい。
【0069】
また、コントローラ20は、パーキング信号の異常を検知した際に、例えば、運転者への報知や異常発生の情報の転送等を行ってもよい。運転者への報知や異常発生の情報の転送等は、パーキング信号の異常の検知と同時に行われなくてもよい。
【0070】
また、コントローラ20は、推定走行状態に移行したのち、推定走行状態が例えば5秒以上継続した際にミキサドラム2の自動撹拌を開始してもよい。つまり、推定走行状態に移行した際のコントローラ20の制御の変更は、推定走行状態の移行と同時でなくてもよい。
【0071】
次に、上記実施形態の変形例について説明する。
【0072】
上記実施形態では、コントローラ20は、パーキングブレーキセンサ22により入力されるパーキング信号と、車速センサ21により入力される車速と、からミキサ車1の走行状態の判定やパーキング信号の異常を検知する。車速は、車速センサ21により入力されるものに限定されず、GPSの位置情報、加速度センサ、ドライブレコーダー等が撮影した画像等に基づいて演算し、コントローラ20に入力されてもよい。
【0073】
上記実施形態では、操作盤40は操作盤41~44の4箇所に設けられている。操作盤の数はこれに限定されず、1箇所のみに設けられていても、4箇所以上に設けられていてもよい。
【0074】
以上のように構成された本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0075】
ミキサ車1は、パーキングブレーキ12と、車両上に回転自在に搭載されたミキサドラム2と、パーキングブレーキ12の作動及び非作動を示すパーキング信号を出力するパーキングブレーキセンサ22と、車両の車速を検出する車速センサ21と、ミキサドラム2の駆動を制御するコントローラ20と、を備え、コントローラ20は、パーキング信号がパーキングブレーキ12の作動を示しかつ車速が0より大きい状態、または、パーキング信号がパーキングブレーキ12の非作動を示しかつ車速が所定時間継続して0である状態で、パーキング信号の異常を検知する。
【0076】
この構成では、コントローラ20はパーキング信号の異常を検知することができるため、異常の検知により、ミキサ車の状態を正確に判定することができる。これにより、ミキサ車1のミキサドラム2の自動撹拌を適切に行うことができる。
【0077】
コントローラ20は、パーキング信号がパーキングブレーキ12の作動を示しかつ車速が0より大きい状態が所定時間継続した際に、パーキング信号の異常を検知する。
【0078】
この構成では、パーキング信号の異常を確実に検知することができる。
【0079】
ミキサ車1は、ミキサドラム2を手動で操作するための操作盤40をさらに備え、コントローラ20は、パーキング信号の異常を検知した際には、車速が0より大きい状態では操作盤40によるミキサドラム2の操作を不能にする。
【0080】
この構成では、パーキング信号の異常の際、ミキサ車1の走行中に操作盤40によりミキサドラム2が手動で操作され搭載物が排出されることが防止される。
【0081】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0082】
1・・・ミキサ車、2・・・ミキサドラム、12・・・パーキングブレーキ、20・・・コントローラ(ミキサドラム制御装置)、21・・・車速センサ(車速検出手段)、22・・・パーキングブレーキセンサ、40・・・操作盤