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特許7348882運転支援装置、運転支援方法およびプログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-12
(45)【発行日】2023-09-21
(54)【発明の名称】運転支援装置、運転支援方法およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/172 20060101AFI20230913BHJP
   G08G 1/01 20060101ALI20230913BHJP
   G08G 1/13 20060101ALI20230913BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20230913BHJP
   B60T 8/1761 20060101ALI20230913BHJP
   G16Y 10/40 20200101ALI20230913BHJP
   B60W 40/068 20120101ALN20230913BHJP
【FI】
B60T8/172 B
G08G1/01 A
G08G1/13
G08G1/09 H
G08G1/09 F
B60T8/1761
G16Y10/40
B60W40/068
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020121589
(22)【出願日】2020-07-15
(65)【公開番号】P2022024312
(43)【公開日】2022-02-09
【審査請求日】2022-05-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】樋口 英嗣
(72)【発明者】
【氏名】刀根川 浩巳
(72)【発明者】
【氏名】津村 健二
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 英明
【審査官】大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-247220(JP,A)
【文献】特開2006-335111(JP,A)
【文献】特開平08-048230(JP,A)
【文献】国際公開第2016/093102(WO,A1)
【文献】特開2009-026157(JP,A)
【文献】特開2020-029231(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0262439(US,A1)
【文献】米国特許第05308153(US,A)
【文献】米国特許第08930114(US,B1)
【文献】特開2014-202498(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0378324(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2021/0241546(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102018214882(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60T 7/12-8/1769
B60T 8/32-8/96
G08G 1/00-99/00
G16Y 10/40
B60W 40/068
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハードウェアを有するプロセッサを備え、
前記プロセッサは、
車両のABSが起動する前の車速データと、車両のABSが停止した際の車速データと、車両のABSが起動する前の時刻と、車両のABSが停止した際の時刻と、を取得し、
前記ABSが起動する前の車速データと、前記ABSが停止した際の車速データと、車両のABSが起動する前の時刻と、車両のABSが停止した際の時刻と、重力加速度と、に基づいて、すべり摩擦係数を算出し、
前記すべり摩擦係数が閾値以下であるか否かを判定し、
前記すべり摩擦係数が前記閾値以下である場合、路面凍結によるスリップが発生していると検知する、
運転支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載の運転支援装置であって、
前記ABSが起動する前の車速データは、
前記ABSが起動する直前にサンプリングした車速データ前記ABSが起動する直前にサンプリングした車速データより1周期前にサンプリングした車速データ、前記前記ABSが起動する直前にサンプリングした車速データより2周期前にサンプリングした車速データのいずれかである、
運転支援装置。
【請求項3】
請求項1に記載の運転支援装置であって、
前記ABSが起動する前の車速データは、
前記ABSが起動した直前にサンプリングした1周期前の車速データである、
運転支援装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一つに記載の運転支援装置であって、
前記プロセッサは、
前記ABSの作動期間が所定時間以上であるか否かをさらに判定し、
前記すべり摩擦係数が前記閾値以下であると判定した場合において、前記ABSの作動期間が所定時間以上であると判定したとき、路面凍結によるスリップが発生していると検知する、
運転支援装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一つに記載の運転支援装置であって、
前記プロセッサは、
前記路面凍結によるスリップが発生していると検知した箇所を示す路面凍結情報を他車または地図データを記録する外部サーバへ出力する、
運転支援装置。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか一つに記載の運転支援装置であって、
前記プロセッサは、
前記車両のCANデータを取得し、
前記CANデータには、
少なくとも、前記車両のABSが起動する前の車速データと、前記車両のABSが停止した際の車速データと、車両のABSが起動する前の時刻と、車両のABSが停止した際の時刻と、が含まれる、
運転支援装置。
【請求項7】
請求項6に記載の運転支援装置であって、
前記CANデータを所定時間毎に取得する、
運転支援装置。
【請求項8】
ハードウェアを有するプロセッサを備える運転支援装置が実行する運転支援方法であって、
車両のABSが起動する前の車速データと、車両のABSが停止した際の車速データと、車両のABSが起動する前の時刻と、車両のABSが停止した際の時刻と、を取得し、
前記ABSが起動する前の車速データと、前記ABSが停止した際の車速データと、車両のABSが起動する前の時刻と、車両のABSが停止した際の時刻と、重力加速度と、に基づいて、すべり摩擦係数を算出し、
前記すべり摩擦係数が閾値以下であるか否かを判定し、
前記すべり摩擦係数が前記閾値以下である場合、路面凍結によるスリップが発生していると検知する、
運転支援方法。
【請求項9】
請求項8に記載の運転支援方法であって、
前記ABSが起動する前の車速データは、
前記ABSが起動する直前にサンプリングした車速データ前記ABSが起動する直前にサンプリングした車速データより1周期前にサンプリングした車速データ、前記前記ABSが起動する直前にサンプリングした車速データより2周期前にサンプリングした車速データのいずれかである、
運転支援方法。
【請求項10】
請求項8に記載の運転支援方法であって、
前記ABSが起動する前の車速データは、
前記ABSが起動した直前にサンプリングした1周期前の車速データである、
運転支援方法。
【請求項11】
請求項8~10のいずれか一つに記載の運転支援方法であって、
前記ABSの作動期間が所定時間以上であるか否かをさらに判定し、
前記すべり摩擦係数が前記閾値以下であると判定した場合において、前記ABSの作動期間が所定時間以上であると判定したとき、路面凍結によるスリップが発生していると検知する、
運転支援方法。
【請求項12】
請求項8~11のいずれか一つに記載の運転支援方法であって、
前記路面凍結によるスリップが発生していると検知した箇所を示す路面凍結情報を他車または地図データを記録する外部サーバへ出力する、
運転支援方法。
【請求項13】
請求項8~12のいずれか一つに記載の運転支援方法であって、
前記車両のCANデータを取得し、
前記CANデータには、
少なくとも、前記車両のABSが起動する前の車速データと、前記車両のABSが停止した際の車速データと、車両のABSが起動する前の時刻と、車両のABSが停止した際の時刻と、が含まれる、
運転支援方法。
【請求項14】
請求項13に記載の運転支援方法であって、
前記CANデータを所定時間毎に取得する、
運転支援方法。
【請求項15】
ハードウェアを有するプロセッサに、
車両のABSが起動する前の車速データと、車両のABSが停止した際の車速データと、車両のABSが起動する前の時刻と、車両のABSが停止した際の時刻と、を取得し、
前記ABSが起動する前の車速データと、前記ABSが停止した際の車速データと、車両のABSが起動する前の時刻と、車両のABSが停止した際の時刻と、重力加速度と、に基づいて、すべり摩擦係数を算出し、
前記すべり摩擦係数が閾値以下であるか否かを判定し、
前記すべり摩擦係数が前記閾値以下である場合、路面凍結によるスリップが発生していると検知する、
ことを実行させるプログラム。
【請求項16】
請求項15に記載のプログラムであって、
前記ABSが起動する前の車速データは、
前記ABSが起動する直前にサンプリングした車速データ前記ABSが起動する直前にサンプリングした車速データより1周期前にサンプリングした車速データ、前記前記ABSが起動する直前にサンプリングした車速データより2周期前にサンプリングした車速データのいずれかである、
プログラム。
【請求項17】
請求項15に記載のプログラムであって、
前記ABSが起動する前の車速データは、
前記ABSが起動した直前にサンプリングした1周期前の車速データである、
プログラム。
【請求項18】
請求項15~17のいずれか一つに記載のプログラムであって、
前記プロセッサは、
前記ABSの作動期間が所定時間以上であるか否かをさらに判定し、
前記すべり摩擦係数が前記閾値以下であると判定した場合において、前記ABSの作動期間が所定時間以上であると判定したとき、路面凍結によるスリップが発生していると検知する、
ことを実行させるプログラム。
【請求項19】
請求項15~18のいずれか一つに記載のプログラムであって、
前記プロセッサは、
前記路面凍結によるスリップが発生していると検知した箇所を示す路面凍結情報を他車または地図データを記録する外部サーバへ出力する、
ことを実行させるプログラム。
【請求項20】
請求項15~19のいずれか一つに記載のプログラムであって、
前記車両のCANデータを取得する、
ことを実行させ、
前記CANデータには、
少なくとも、前記車両のABSが起動する前の車速データと、前記車両のABSが停止した際の車速データと、車両のABSが起動する前の時刻と、車両のABSが停止した際の時刻と、が含まれる、
プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、運転支援装置、運転支援方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両がスリップした状態を検知した場合、スリップが検知される直前の車両の加速度と、スイッチ検知中の車両の加速度と、に用いて、車両が走行する路面の摩擦係数を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平06-127405号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1では、車両のスリップ時における路面の摩擦係数しか検出してないため、路面凍結時によるスリップと他のスリップとを区別して検知することができなかった。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、路面凍結時によるスリップを検知することができる運転支援装置、運転支援方法およびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本開示に係る運転支援装置は、ハードウェアを有するプロセッサを備え、前記プロセッサは、車両のABS(Anti-lock Braking System)が起動する前の車速データと、車両のABSが停止した際の車速データと、を取得し、前記ABSが起動する前の車速データと、前記ABSが停止した際の車速データと、に基づいて、すべり摩擦係数を算出し、前記すべり摩擦係数が閾値以下であるか否かを判定し、前記すべり摩擦係数が前記閾値以下である場合、路面凍結によるスリップが発生していると検知する。
【0007】
また、本開示に係る運転支援方法は、ハードウェアを有するプロセッサを備える運転支援装置が実行する運転支援方法であって、車両のABSが起動する前の車速データと、車両のABSが停止した際の車速データと、を取得し、前記ABSが起動する前の車速データと、前記ABSが停止した際の車速データと、に基づいて、すべり摩擦係数を算出し、前記すべり摩擦係数が閾値以下であるか否かを判定し、前記すべり摩擦係数が前記閾値以下である場合、路面凍結によるスリップが発生していると検知する。
【0008】
また、本開示に係るプログラムは、ハードウェアを有するプロセッサに、車両のABSが起動する前の車速データと、車両のABSが停止した際の車速データと、を取得し、前記ABSが起動する前の車速データと、前記ABSが停止した際の車速データと、に基づいて、すべり摩擦係数を算出し、前記すべり摩擦係数が閾値以下であるか否かを判定し、前記すべり摩擦係数が前記閾値以下である場合、路面凍結によるスリップが発生していると検知する、ことを実行させる。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、路面凍結時によるスリップと他のスリップとを区別して検知することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施の形態1に係る運転支援システムの構成を概略的に示す図である。
図2図2は、実施の形態1に係る車両の機能構成を示すブロック図である。
図3図3は、実施の形態1に係る運転支援装置20の機能構成を示すブロック図である。
図4図4は、すべり摩擦の概略図である。
図5図5は、目視路面分類とすべり摩擦係数との関係を示す図である。
図6図6は、ABS立ち上がる直前の速度と時間との関係を示す図である。
図7図7は、加速度とすべり摩擦係数との相関性を示す図である。
図8図8は、ABSデータと車速データとのサンプリング周期を模式的に示す図である。
図9A図9Aは、方式1における加速度とすべり摩擦係数との相関性を示す図である。
図9B図9Bは、方式2における加速度とすべり摩擦係数との相関性を示す図である。
図9C図9Cは、方式3における加速度とすべり摩擦係数との相関性を示す図である。
図10図10は、各方式、決定係数Rおよび評価を示す図である。
図11図11は、加速度から算出したすべり摩擦係数とすべり摩擦係数の実測値との関係を示す図である。
図12図12は、各方式、分散および標準偏差の関係を示す図である。
図13図13は、各方式の正規分布グラフを示す図である。
図14図14は、各方式、決定係数R、分散、標準偏差および評価を示す図である。
図15図15は、実施の形態1に係る運転支援装置が実行する処理の概要を示すフローチャートである。
図16図16は、ABS作動時間とすべり摩擦係数との関係を示す図である。
図17図17は、図16のABS作動時間を所定時間で区切った状態を模式的に示す図である。
図18図18は、図16のABS作動期間によるフィルタリングによって抽出したスリップ誤検知除去率を模式的に示す図である。
図19図19は、実施の形態2に係る運転支援装置が実行する処理の概要を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態に係る運転支援システムについて、図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施の形態により本開示が限定されるものではない。また、以下において、同一の部分には同一の符号を付して説明する。
【0012】
(実施の形態1)
〔運転支援システムの概要〕
図1は、実施の形態1に係る運転支援システムの構成を概略的に示す図である。図1に示す運転支援システム1は、車両10と、運転支援装置20と、を備える。この運転支援システム1は、ネットワークNWを通じて相互に通信可能に構成されている。このネットワークNWは、例えばインターネット回線網および携帯電話回線網等から構成されている。また、運転支援システム1は、ネットワークNWを通じて複数の車両10の各々が所定の間隔(例えば10msec間隔)で送信する車両10の走行に関する走行状態データを含むCAN(Controller Area Network)データを運転支援装置20へ送信する。そして、運転支援システム1は、複数の車両10の各々が所定の間隔で送信したCANデータに含まれる、車両10のABS(Anti-lock Braking System)が起動する前の車速データと、車両10のABSが停止した際の車速データと、に基づいて、車両10が走行する路面のすべり摩擦係数を算出する。そして、運転支援システム1は、運転支援装置20によって車両10が走行する路面のすべり摩擦係数が閾値以下であるか否かを判定し、車両10が走行する路面のすべり摩擦係数が閾値以下であると判定された場合、車両10が走行する路面に、路面凍結によるスリップが発生したと検知する。
【0013】
〔車両の構成〕
まず、車両10の機能構成について説明する。図2は、車両10の機能構成を示すブロック図である。
【0014】
図2に示す車両10は、車速センサ11と、加速度センサ12と、アクセルペダルセンサ13と、ブレーキペダルセンサ14と、勾配センサ15、カーナビゲーションシステム16と、記録部17と、通信部18と、ECC(Electronic Control Unit)19と、を備える。なお、以下の説明では、車両10を自動車として説明するが、これに限定されることなく、例えばバス、トラックであってもよい。
【0015】
車速センサ11は、車両10の走行時における走行速度(実測速度)を検出し、この検出結果をECU19へ出力する。
【0016】
加速度センサ12は、車両10に加わる加速度を検出し、この検出結果をECU19へ出力する。
【0017】
アクセルペダルセンサ13は、ユーザによるアクセルペダルの踏み込み量を検出し、この検出結果をECU19へ出力する。
【0018】
ブレーキペダルセンサ14は、ユーザによるブレーキペダルの踏み込み量を検出し、この検出結果をECU19へ出力する。
【0019】
勾配センサ15は、水平を基準とした場合における車両10の傾き(車両10が走行する道の勾配)を検出し、この検出結果をECU19へ出力する。
【0020】
カーナビゲーションシステム16は、GPS(Global Positioning System)センサ161と、地図データベース162と、報知装置163と、操作部164と、を有する。
【0021】
GPSセンサ161は、複数のGPS衛星または送信アンテナからの信号を受信し、受信した信号に基づいて、車両10の位置(経度および緯度)を算出する。GPSセンサ161は、GPS受信センサ等を用いて構成される。なお、実施の形態1では、GPSセンサ161を複数個搭載することによって車両10の向き精度向上を図ってもよい。
【0022】
地図データベース162は、各種の地図データを記録する。地図データベース162は、HDD(Hard Disk Drive)またはSSD(Solid State Drive)等の記録媒体を用いて構成される。
【0023】
報知装置163は、画像、地図、映像および文字情報を表示する表示部163aと、音声や警報音等の音を発生する音声出力部163bと、を有する。表示部163aは、液晶や有機EL(Electro Luminescence)等の表示ディスプレイを用いて構成される。音声出力部163bは、スピーカ等を用いて構成される。
【0024】
操作部164は、ユーザの操作の入力を受け付け、受け付けた各種の操作内容に応じた信号をECU19へ出力する。操作部164は、タッチパネル、ボタン、スイッチおよびジョグダイヤル等を用いて実現される。
【0025】
このように構成されたカーナビゲーションシステム16は、GPSセンサ161によって取得した現在の車両10の位置を、地図データベース162が記録する地図データに対応する地図上に重ねることによって、車両10の現在走行している道路および目的値までの経路等を含む情報を、表示部163aと音声出力部163bとによってユーザに対して報知する。
【0026】
記録部17は、車両10に関する各種情報を記録する。記録部17は、ECU19から入力された車両10のCANデータ等やECU19が実行する各種のプログラム等を記録する。記録部17は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、Flashメモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等を用いて実現される。
【0027】
通信部18は、ECU19の制御のもと、ネットワークNWを通じて運転支援装置20へCANデータ等を送信する。また、通信部18は、ネットワークNWを通じて他車と通信を行い、各種情報を受信する。通信部18は、各種情報を送受信可能な通信モジュール等を用いて構成される。
【0028】
ECU19は、メモリと、CPU(Central Processing Unit)等のハードウェアを有するプロセッサを用いて構成される。ECU19は、車両10の各部を制御する。ECU19は、車両10のCANデータを通信部18に送信させる。CANデータには、走行速度(実測速度)、加速度、アクセルペダルの踏み込み量、ブレーキペダルの踏み込み量、車両10の傾き、車両10のABSが駆動した時刻、車両10のABSが停止した時刻、車両10のABSの作動時間、車両10のABSが起動する前の車速データ、車両10のABSが停止した際の車速データ等の走行状態データ、この走行状態データを検出した時刻情報、車両10の位置情報(経度緯度情報)、車両10のABSが起動した際の位置情報、車両10の車種情報および車両10を識別する識別情報(車両ID)等が含まれる。なお、CANデータに、車両10に設けられた撮像装置によって生成された画像データ等を含めてもよい。ここで、車両10のABSが起動する前の車速データは、車両10のABSが起動した直前の車速データ、車両10のABSが起動した直前にサンプリングした1周期前の車速データ、車両10のABSが起動する前の最後の車速データのいずれかである。なお、車両10のABSが起動する前の車速データの詳細な内容については後述する。
【0029】
〔運転支援装置の構成〕
次に、運転支援装置20の機能構成について説明する。図3は、運転支援装置20の機能構成を示すブロック図である。
【0030】
図3に示す運転支援装置20は、通信部21と、CANデータベース22と、記録部23と、制御部24と、を備える。
【0031】
通信部21は、制御部24の制御のもと、ネットワークNWを通じて複数の車両10の各々から送信されたCANデータを受信し、受信したCANデータを制御部24へ出力する。また、通信部21は、制御部24の制御のもと、ネットワークNWを通じて車両10の路面凍結によるスリップが発生している箇所を示す路面凍結情報を車両10または地図データを記録する外部サーバへ送信する。通信部21は、各種情報を受信する通信モジュール等を用いて実現される。なお、路面凍結情報の詳細については、後述する。
【0032】
CANデータベース22は、制御部24から入力された複数の車両10の各々のCANデータを記録する。CANデータベース22は、HDD(Hard Disk Drive)およびSSD(Solid State Drive)等を用いて実現される。
【0033】
記録部23は、運転支援装置20の各種情報および処理中のデータ等を記録する。記録部23は、運転支援装置20が実行する各種のプログラムを記録するプログラム記録部231を有する。記録部23は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、フラッシュメモリ、HDDおよびSSD等を用いて構成される。
【0034】
制御部24は、運転支援装置20の各部を制御する。制御部24は、メモリと、GPU(Graphics Processing Unit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)およびCPU等のハードウェアを有するプロセッサを用いて構成される。制御部24は、取得部241と、算出部242と、判定部243と、検知部244と、通信制御部245と、を有する。
【0035】
取得部241は、通信部21を通じて車両10からCANデータを取得し、取得したCANデータをCANデータベース22に記録する。
【0036】
算出部242は、CANデータベース22が記録するCANデータに含まれるABSが起動する前の車速データと、ABSが停止した際の車速データと、に基づいて、すべり摩擦係数を算出する。
【0037】
判定部243は、算出部242が算出したすべり摩擦係数が閾値以下であるか否かを判定する。具体的には、判定部243は、算出部242が算出したすべり摩擦係数(路面μ)が閾値以下(例えば0.3以下)であるか否かを判定する。
【0038】
検知部244は、判定部243が算出部242によって算出されたすべり摩擦係数が閾値以下であると判定した場合、路面凍結によるスリップが発生していると検知する。
【0039】
通信制御部245は、検知部244が路面凍結によるスリップが発生していると検知した箇所を示す路面凍結情報を他車または地図データを記録する外部サーバへ出力する。
【0040】
〔すべり摩擦係数〕
次に、すべり摩擦係数について説明する。図4は、すべり摩擦の概略図である。図5は、目視路面分類とすべり摩擦係数との関係を示す図である。図5における測定条件は、使用タイヤが冬期路面調査用標準タイヤ、タイヤサイズが165/80 R13、タイヤ空気圧が1.9kgf/cmおよび設定荷重が400kgfである。なお、図5においては、一定の速度で走行している車両10に急制動を掛け、車輪がロックして路面を滑っているときの負の加速度(減速度)を測定して求めた値である。
【0041】
図4に示すように、すべり摩擦係数μは、物質と物質との間に働く抵抗力(摩擦力F)を荷重Wで除算した値(すべり摩擦係数μ=摩擦力F/荷重W)であり、すべり易さを表す指標である。すべり摩擦係数μは、「0」に近づくほどすべり易くなり、「1」に近づくほどすべりにくくなる。すべり摩擦係数μは、タイヤ条件、路面条件および制動条件等によって変化する。
【0042】
具体的には、道路構造令に用いられるすべり摩擦係数μは、走行速度40~60km/hにおいて、湿潤状態の指標が0.33~0.38、雪氷路面が一律0.15とされている。このため、図5の表T1に示すように、冬期における雪氷路面のすべりやすさは、すべり摩擦係数μが0.10~0.30程度の範囲である。さらに、すべり易い路面では、急制動直後の加速度(減速度)が小さくなり、すべりにくい路面では、急制動直後の加速度(減速度)が大きくなる。また、すべり摩擦係数μは、ABSが停止した際の車速データをV、ABSが起動する前の車速データVを、ABSが停止した際の時刻をT、ABSが起動する前の時刻をTとした場合、式(1)に示すように、測定した加速度(減速度)を重力加速度gで除算した値と等しい関係が成り立つ。
【数1】
【0043】
このため、車両10のABS作動時(急制動直後)に、すべり摩擦係数μが閾値以下(例えば0.30以下)であれば、路面凍結によるスリップが発生していると考えられる。即ち、発明者は、路面凍結による車両10のスリップ挙動を検知するため、加速度と同値であるすべり摩擦係数μ(加速度≒すべり摩擦係数)に着目し、加速度(すべり摩擦係数μ)を算出することによって、車両10が路面凍結によるスリップを検知できることを見いだした。
【0044】
〔ABS作動開始前後における車速とスリップ挙動との相関性〕
次に、車両10のABS作動開始(終了)前後における車速とスリップ挙動との相関性について説明する。図6は、ABS立ち上がる直前の速度と時間との関係を示す図である。図7は、加速度とすべり摩擦係数との相関性を示す図である。図6において、横軸が時間(s)を示し、縦軸が車速(km/h)を示す。さらに、図6において、折れ線L1は、各サンプリング時における車速の変化を示し、直線L2は、各サンプリング時における車速を直線で近似した際の変化を示す。また、図7において、横軸がすべり摩擦係数の実測値を示し、縦軸が加速度を示す。直線L3が加速度とすべり摩擦係数との回帰直線を示す。
【0045】
図6および図7に示すように、決定係数Rは、図6の近似によって算出したモデル(y=1.0784x-0.043)を用いた場合、0.7933と算出される(R=0.7933)。一般的に、決定係数Rは、0.7以上であれば、相関が高いと判断することができる(<*>0≦R≦1)。
【0046】
このように、運転支援装置20は、車両10のABSが起動する前の車速データと、車両10のABSが停止した際の車速データと、に基づいて、すべり摩擦係数μとして加速度を算出し、このすべり摩擦係数μが閾値以下、例えば0.3以下(図5の表T1を参照)であるか否かを判定する。そして、運転支援装置20は、すべり摩擦係数μが閾値以下である場合、車両10が走行した路面に対して、路面凍結によるスリップが発生していると検知する。
【0047】
〔車速データの取得タイミングの検証〕
次に、車速データの取得タイミングについて説明する。車両10のブレーキ操作直後は、タイヤロックが発生するため、信頼できる車速データを取得しづらい。さらに、従来では、ABSデータ(ABSの作動開始終了前後のデータ)および車速データのサンプリング周期にばらつきが生じる。このため、実施の形態1では、ABSが起動する前の車速データとして、ABSが起動した直前の車速データ、ABSが起動した直前にサンプリングした1周期前の車速データ、およびABSが起動する前の最後の車速データのいずれかを用いることが最善であるか否かを各車速データの決定係数Rを算出することによって検証する。
【0048】
図8は、ABSデータと車速データとのサンプリング周期を模式的に示す図である。図8の(a)が車速を示し、図8の(b)がABS作動タイミングを示す。図8の(a)および(b)において、横軸が時間(s)を示す。さらに、図8の(a)において、縦軸が車速(km/h)を示す。なお、図8の(a)におけるサンプリング周期(msec)は、最大値が140、最小値が90および平均値が114である。さらに、図8の(b)におけるサンプリング周期(msec)は、最大値が21、最小値が90および平均値150である。また、図8において、点A1が車両10のABSが起動した直前の車速データ、点A2が車両10のABSが起動した直前にサンプリングした1周期前の車速データ、点A3が車両10のABSが起動する前の最後の車速データを示す。
【0049】
図8の(a)および(b)に示すように、ABSデータ(ABSの作動開始終了前後のデータ)および車速データの各々は、サンプリング周期にばらつきが生じている。このため、以下においては、ABSが起動した直前(ABSがオン状態になった直前)の車速データを用いてすべり摩擦係数μを算出する方式を方式1、ABSが起動した直前にサンプリングした1周期前の車速データを用いてすべり摩擦係数μを算出する方式を方式2、およびABSが起動する前の最後(ABSがオフ状態の最後)の車速データを用いてすべり摩擦係数μを算出する方式を方式3として説明し、各方式の決定係数Rを算出することによって検証する。
【0050】
図9Aは、方式1における加速度とすべり摩擦係数との相関性を示す図である。図9Bは、方式2における加速度とすべり摩擦係数との相関性を示す図である。図9Cは、方式3における加速度とすべり摩擦係数との相関性を示す図である。図10は、各方式、決定係数Rおよび評価を示す図である。図9A図9Cにおいて、横軸がすべり摩擦係数の実測値を示し、縦軸が加速度を示す。図9A図9Cにおいて、直線L21~直線L23が加速度とすべり摩擦係数との回帰直線を示す。
【0051】
図9A図9Cおよび図10に示す表T2に示すように、最適な車速データは、方式1~方式3の各加速度(推定加速度)に基づいて、決定係数Rを参照した場合、方式2が最も決定係数Rが高く、方式A1が最も決定係数Rが低くなる。しかしながら、いずれの方式であっても、決定係数Rが0.7以上であり、相関が高いと判断することができる。
【0052】
〔各方式の推定精度の比較〕
次に、各方式の推定精度について説明する。図11は、加速度から算出したすべり摩擦係数とすべり摩擦係数の実測値との関係を示す図である。図12は、各方式、分散および標準偏差の関係を示す図である。なお、図11では、一例として方式1の車速データを用いている。
【0053】
実施の形態1では、図11に示すように、すべり摩擦係数μ(路面μ)が0.3以下の実験データ(例えば図11では、サンプル数が14個)に対して、方式1の分散および標準偏差を算出した。同様に、実施の形態1では、方式2および方式3でも、分散および標準偏差を算出した。このため、実施の形態1では、図12の表T3に示すように、方法2が実測値に近い推定値の算出が可能であることが推測することができる。
【0054】
図13は、各方式の正規分布グラフを示す図である。図14は、各方式、決定係数R、分散、標準偏差および評価を示す図である。なお、図13において、曲線LA2が方式2の正規分布を示し、曲線LA1が方式1の正規分布を示し、曲線LA3が方式3の正規分布を示す。
【0055】
図13に示すように、方式2は、方式1および方式3と比して有意差D1(例えば15%)が有る。このため、図14の表T4に示すように、実施の形態1では、方式2、即ち、ABSが起動する前の車速データとして、ABSが起動した直前にサンプリングした1周期前の車速データを用いて、すべり摩擦係数μ(路面μ)を算出する(図14を参照)。
【0056】
〔運転支援装置の処理〕
次に、運転支援装置20が実行する処理について説明する。図15は、運転支援装置20が実行する処理の概要を示すフローチャートである。
【0057】
図15に示すように、まず、取得部241は、通信部21を通じて車両10からCANデータを取得する(ステップS1)。
【0058】
続いて、算出部242は、CANデータに含まれる車両10のABSが起動する前の車速データと、車両10のABSが停止した際の車速データと、に基づいて、すべり摩擦係数μを算出する(ステップS2)。
【0059】
その後、判定部243は、算出部242が算出したすべり摩擦係数μが閾値以下であるか否かを判定する(ステップS3)。判定部243によって算出部242が算出したすべり摩擦係数μが閾値(例えば0.3)以下であると判定された場合(ステップS3:Yes)、運転支援装置20は、後述するステップS4へ移行する。これに対して、判定部243によって算出部242が算出したすべり摩擦係数μが閾値以下でないと判定された場合(ステップS3:No)、運転支援装置20は、後述するステップS6へ移行する。
【0060】
ステップS4において、検知部244は、判定部243が算出部242によって算出されたすべり摩擦係数μが閾値(例えば0.3)以下であると判定された場合、路面凍結によるスリップが発生していると検知する。この場合、検知部244は、判定部243が算出部242によって算出されたすべり摩擦係数μが閾値(例えば0.3)以下であると判定した位置に関する位置情報をCANデータから抽出する。
【0061】
続いて、通信制御部245は、検知部244が検知した路面凍結によるスリップが発生している箇所を示す路面凍結情報を車両10のカーナビゲーションシステム16または地図データを記録する外部サーバへ出力する(ステップS5)。これにより、車両10のカーナビゲーションシステム16は、運転支援装置20から入力された路面凍結によるスリップが発生している箇所を地図データベース162が記録する地図データに対応する位置に重畳して表示することができる。この結果、他車のユーザは、路面凍結によるスリップが発生している箇所を把握することができる。さらに、外部サーバは、運転支援装置20から入力された路面凍結によるスリップが発生している箇所を地図データベース162が記憶する地図データに対応する位置に表示することができる。この結果、外部サーバに携帯電話等でアクセスしたユーザは、路面凍結によるスリップが発生している箇所を把握することができる。
【0062】
その後、運転支援装置20は、CANデータの取得タイミングであるか否かを判定し(ステップS6)、CANデータの取得タイミングである場合(ステップS6:Yes)、ステップS1へ戻り、CANデータの取得タイミングでない場合(ステップS6:No)、ステップS7へ移行する。
【0063】
ステップS7において、運転支援装置20は、CANデータに基づいて、車両10の駆動部、例えばエンジンやモータが停止してか否かを判定し(ステップS7)、車両10の駆動部が停止している場合(ステップS7:Yes)、本処理を終了し、車両10の駆動部が停止していない場合(ステップS7:No)、ステップS6へ戻る。
【0064】
以上説明した実施の形態1によれば、制御部24が車両10のABSが起動する前の車速データと、車両10のABSが停止した際の車速データと、を取得し、ABSが起動する前の車速データと、ABSが停止した際の車速データと、に基づいて、すべり摩擦係数μを算出する。そして、制御部24がすべり摩擦係数μが閾値以下であるか否かを判定し、すべり摩擦係数μが閾値以下である場合、路面凍結によるスリップが発生していると検知する。このため、路面凍結時によるスリップを検知することができる。
【0065】
また、実施の形態1によれば、ABSが起動する前の車速データとして、ABSが起動した直前の車速データ、ABSが起動した直前にサンプリングした1周期前の車速データ、ABSが起動する前の最後の車速データのいずれかを用いるため、路面凍結時によるスリップを精度よく検知することができる。
【0066】
また、実施の形態1によれば、ABSが起動する前の車速データとして、ABSが起動した直前にサンプリングした1周期前の車速データを用いることにより、路面凍結時によるスリップを確実に検知することができる。
【0067】
また、実施の形態1によれば、制御部24が路面凍結によるスリップが発生していると検知した箇所を示す路面凍結情報を他車または地図データを記録する外部サーバへ出力する。このため、他車のユーザまたは外部サーバにアクセスしたユーザは、路面凍結によるスリップが発生している箇所を把握することができる。
【0068】
また、実施の形態1によれば、制御部24がCANデータを所定時間毎に取得するため、最新のデータを用いて路面凍結によるスリップが発生している箇所を検知することができる。
【0069】
なお、実施の形態1では、BSが起動する前の車速データとして、ABSが起動した直前にサンプリングした1周期前の車速データを用いていたが、これに限定されることなく、ABSが起動した直前の車速データ、ABSが起動する前の最後の車速データのいずれかを用いて、路面凍結によるスリップが発生している箇所を検知するようにしてもよい。
【0070】
(実施の形態2)
次に、実施の形態1について説明する。実施の形態2では、ABSの作動時間をさらに用いて路面凍結によるスリップと他のスリップとを区別して判定する。なお、実施の形態1に係る運転支援システム1と同一の構成には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0071】
〔ABS作動期間とすべり摩擦係数との相関性〕
図16は、ABS作動時間とすべり摩擦係数との関係を示す図である。図17は、図16のABS作動時間を所定時間で区切った状態を模式的に示す図である。図18は、図16のABS作動期間によるフィルタリングによって抽出したスリップ誤検知除去率を模式的に示す図である。図16および図17において、横軸がABS作動期間(s)を示し、縦軸がすべり摩擦係数μ(路面μ)を示す。また、図18において、横軸がABS作動時間(s)を示し、縦軸がスリップ検知件数を示す。さらに、図18において、棒グラフB1(白抜きの各棒グラフ)が路面凍結によるスリップ数を示し、棒グラフB2(黒塗りの各棒グラフ)が路面凍結によるスリップ以外のスリップ数を示す。
【0072】
図16図18に示すように、ABS作動期間は、1.6秒以上である場合(図17の領域R1を参照)、スリップ誤検知除去率が95%以上であり、1.8秒以上である場合、スリップ誤検知除去率が99%以上である。このため、実施の形態2では、運転支援装置20は、すべり摩擦係数μが閾値以下である場合、ABS作動期間が所定時間以上、例えば1.6秒以上であるか否かをさらに判定し、1.6秒以上であるとき、路面凍結によるスリップが発生していると検知する。
【0073】
〔運転支援装置の処理〕
図19は、運転支援装置20が実行する処理の概要を示すフローチャートである。図19において、ステップS11~ステップS13は、図15のステップS1~ステップS3それぞれに対応する。
【0074】
ステップS14において、判定部243は、CANデータに含まれるABS作動時間が所定時間以上、例えば1.6秒以上であるか否かを判定する。判定部243によってCANデータに含まれるABS作動時間が所定時間以上であると判定された場合(ステップS14:Yes)、運転支援装置20は、後述するステップS15へ移行する。これに対して、判定部243によってCANデータに含まれるABS作動時間が所定時間以上でないと判定された場合(ステップS14:No)、運転支援装置20は、ステップS17へ移行する。
【0075】
ステップS17およびステップS18は、図15のステップS6およびステップS7それぞれに対応する。
【0076】
以上説明した実施の形態2によれば、制御部24がABSの作動期間が所定時間以上であるか否かを判定し、ABSの作動期間が所定時間以上である場合、路面凍結によるスリップが発生していると検知する。この結果、路面凍結時によるスリップと他のスリップとを区別して検知することができる。
【0077】
(その他の実施の形態)
また、実施の形態1,2では、運転支援装置20の制御部24の機能、取得部241、算出部242、判定部243、検知部244および通信制御部245をECU19に設けてもよい。この場合、ECU19は、車車間通信によって周辺を走行する他車に路面凍結によるスリップを検知した箇所を送信してもよい。もちろん、ECU19が地図データを記録する外部サーバへ路面凍結によるスリップを検知した箇所を送信してもよい。
【0078】
また、実施の形態1,2に係る運転支援システム1では、「部」を、「回路」などに読み替えることができる。例えば、制御部は、制御回路に読み替えることができる。
【0079】
また、実施の形態1,2に係る運転支援システム1に実行させるプログラムは、インストール可能な形式または実行可能な形式のファイルデータでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)、USB媒体、フラッシュメモリ等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。
【0080】
また、実施の形態1,2に係る運転支援システム1に実行させるプログラムは、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。
【0081】
なお、本明細書におけるフローチャートの説明では、「まず」、「その後」、「続いて」等の表現を用いてステップ間の処理の前後関係を明示していたが、本実施の形態を実施するために必要な処理の順序は、それらの表現によって一意的に定められるわけではない。即ち、本明細書で記載したフローチャートにおける処理の順序は、矛盾のない範囲で変更することができる。
【0082】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施の形態に限定されるものではない。したがって、添付のクレームおよびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0083】
1 運転支援システム
10 車両
11 車速センサ
12 加速度センサ
13 アクセルペダルセンサ
14 ブレーキペダルセンサ
15 勾配センサ
16 カーナビゲーションシステム
17,23 記録部
18,21 通信部
19 ECU
20 運転支援装置
22 CANデータベース
24 制御部
161 GPSセンサ
162 地図データベース
163 報知装置
163a 表示部
163b 音声出力部
164 操作部
231 プログラム記録部
241 取得部
242 算出部
243 判定部
244 検知部
245 通信制御部
NW ネットワーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19