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  • 特許-合成樹脂製キャップ 図1
  • 特許-合成樹脂製キャップ 図2
  • 特許-合成樹脂製キャップ 図3
  • 特許-合成樹脂製キャップ 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-12
(45)【発行日】2023-09-21
(54)【発明の名称】合成樹脂製キャップ
(51)【国際特許分類】
   B65D 41/34 20060101AFI20230913BHJP
【FI】
B65D41/34 110
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020538258
(86)(22)【出願日】2019-07-29
(86)【国際出願番号】 JP2019029581
(87)【国際公開番号】W WO2020039851
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2022-04-07
(31)【優先権主張番号】P 2018153899
(32)【優先日】2018-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000178826
【氏名又は名称】日本山村硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100074273
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 英夫
(72)【発明者】
【氏名】黒岩 靖文
(72)【発明者】
【氏名】川村 伸生
(72)【発明者】
【氏名】小野 淳史
(72)【発明者】
【氏名】梅木 慎吾
【審査官】岡崎 克彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-064866(JP,A)
【文献】特開2003-200951(JP,A)
【文献】特開2016-016900(JP,A)
【文献】特開2013-203440(JP,A)
【文献】特開2009-057106(JP,A)
【文献】実開平04-100451(JP,U)
【文献】国際公開第2017/029707(WO,A1)
【文献】米国特許第05950850(US,A)
【文献】米国特許第04369889(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 41/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略筒状の側壁を有し、
該側壁は、容器口部の外周に形成された雄ねじに螺合する雌ねじが設けられたスカート壁と、該スカート壁の下部に環状弱化部を介して連結され、前記容器口部の外周に形成された被係合部に係合する係合部が設けられたタンパーエビデンスバンドとを含み、
前記側壁の内周面における前記環状弱化部から前記雌ねじ部の最下位置までの間の領域に、該側壁の周方向に連続又は断続し、該側壁を貫通しない溝が設けられ、
前記側壁の外周面において前記環状弱化部よりも上方であって前記雌ねじ部の最下位置から下方に離れた位置に環状突出部が設けられ、前記溝は前記環状突出部の下端の高さ位置あるいはそれより下方の位置から前記環状突出部の上端の高さ位置よりも上方にまで延びていることを特徴とする合成樹脂製キャップ。
【請求項2】
前記溝は上端から下端に向かって深くなるようにテーパ状に形成されている請求項1に記載の合成樹脂製キャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、飲料物等の内容物を収容する容器の口部に装着される合成樹脂製キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
飲料物等の内容物を収容する容器の口部に装着され、一目で開封の有無を確認可能に構成されたキャップは広く知られている。例えば特許文献1に開示されたキャップは、図4(A)及び(B)に示すように、容器口部Mの雄ねじM1に螺合する雌ねじ51が設けられたスカート壁52を有するキャップ本体53と、スカート壁52の下部に環状弱化部54を介して連結されたタンパーエビデンスバンド55とを具備する。
【0003】
上記キャップでは、容器口部Mに装着された状態からの開封操作(最初の開栓操作)に伴い、タンパーエビデンスバンド55の内周に設けられた係合部(フック)56が容器口部Mの外周に設けられた環状突起(被係合部)M2に係止した後、タンパーエビデンスバンド55とスカート壁52とを画する環状弱化部54が破断され、キャップ本体53とタンパーエビデンスバンド55とが互いに分離される。従って、環状弱化部54を構成するミシン目状のスリット間に形成されたブリッジ(橋絡部)の破断の有無を視認することにより、開封操作が行われたか否かを容易に確認することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5291175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記従来のキャップでは、開封操作の際に係合部56が容器口部Mの環状突起M2に係合せず、環状弱化部54が破断されないままキャップが容器口部Mから外れる所謂すっぽ抜けが生じないようにするために、係合部56の突出量をある程度確保する必要があるが、係合部56の突出量を大きくするほど、上記すっぽ抜けは生じ難くなる反面、容器口部Mにキャップを装着する際に、フック56が環状突起M2を乗り越えるのに伴って環状弱化部54が破断し易くなる、という問題がある。
【0006】
本発明は上述の事柄に留意してなされたもので、その目的は、容器口部への装着時における環状弱化部の破断防止機能を高めることができ、さらには使用樹脂量の低減を図ることも可能な合成樹脂製キャップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る合成樹脂製キャップは、略筒状の側壁を有し、該側壁は、容器口部の外周に形成された雄ねじに螺合する雌ねじが設けられたスカート壁と、該スカート壁の下部に環状弱化部を介して連結され、前記容器口部の外周に形成された被係合部に係合する係合部が設けられたタンパーエビデンスバンドとを含み、前記側壁の内周面における前記環状弱化部から前記雌ねじ部の最下位置までの間の領域に、該側壁の周方向に連続又は断続し、該側壁を貫通しない溝が設けられ、前記側壁の外周面において前記環状弱化部よりも上方であって前記雌ねじ部の最下位置から下方に離れた位置に環状突出部が設けられ、前記溝は前記環状突出部の下端の高さ位置あるいはそれより下方の位置から前記環状突出部の上端の高さ位置よりも上方にまで延びている(請求項1)。
【0008】
上記合成樹脂製キャップにおいて、前記溝は上端から下端に向かって深くなるようにテーパ状に形成されていてもよい(請求項2)。
【発明の効果】
【0009】
本願発明では、容器口部への装着時における環状弱化部の破断防止機能を高めることができ、さらには使用樹脂量の低減を図ることも可能な合成樹脂製キャップが得られる。
【0010】
すなわち、本願の各請求項に係る発明の合成樹脂製キャップでは、側壁における環状弱化部の上側の部位が肉薄になって変形(拡径)し易くなり、容器口部へのキャップの装着時に容器口部から環状弱化部に加わる力の少なくとも一部が前記変形に変換されるので、環状弱化部の破断防止機能が高まる上、側壁の肉薄化に伴って使用樹脂量の低減を図ることも可能となる。
【0011】
請求項1に係る発明の合成樹脂製キャップでは、側壁において肉厚となる環状突出部よりも上方にまで溝が延びているので、側壁における環状突出部よりも上方の部位に変形し易い肉薄部が必ず形成されることになり、上記の破断防止機能が確実に高まることになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施の形態に係る合成樹脂製キャップの構成を概略的に示す底面図である。
図2】(A)は図1におけるA-A線断面図、(B)は図1におけるB部拡大図である。
図3図1におけるC-C線断面図である。
図4】(A)は従来の合成樹脂製キャップ、(B)はその容器口部への装着状態をそれぞれ示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら以下に説明する。
【0014】
図1図2(A)に示す合成樹脂製キャップ(以下、キャップという)1は、図4(B)に示すような雄ねじM1及び環状突起(被係合部)M2を有する容器口部M(例えばペットボトル等の容器の口部)に装着されて使用されるものであり、コンプレッション成形又はインジェクション成形によって、ポリエチレンで一体的に成形されている。なお、キャップ1を形成する素材は、特に限定されるものではなく、本実施形態で用いたポリエチレンの他、ポリプロピレン等が好適に用いられる。
【0015】
キャップ1は、平面視において略円形状の天壁2と、この天壁2の外周部から下向きに延びる略円筒状のスカート壁3を有する(図2(A)参照)。ここで、スカート壁3の外周面にはローレット溝4を、内周面には雌ねじ5を設けてあり、この雌ねじ5は容器口部Mの外周に形成された雄ねじM1に結合可能である。
【0016】
そして、容器口部Mの雄ねじM1にスカート壁3の雌ねじ5が結合するようにキャップ1を回転させて容器口部Mに装着すると、天壁2の内面(下面)に連設された環状の中足(インナーリング)6、環状リブ7及び環状の外足(アウターリング)8が容器口部Mに密着し、これにより、容器口部Mが密封された状態となる。すなわち、キャップ1が容器口部Mに装着された状態では、中足6は容器口部M内に差し込まれて容器口部Mの内周面に密着し、環状リブ7は容器口部Mの環状の上端面に密着し、外足8は容器口部Mの外周面に密着するように構成されている。
【0017】
また、キャップ1は、未開封(開栓が一度もされていないこと)を証明する機能を有するピルファープルーフキャップであり、容器口部Mに装着された未開封のキャップ1の開封時(最初の開栓時)に、雄ねじM1と雌ねじ5の結合が解除されるようにキャップ1を回転させると、キャップ1は容器口部Mから離脱するが、スカート壁3の下部に連結されたタンパーエビデンスバンド(以下、単に「バンド」という)9は容器口部Mに残留するように構成されている。
【0018】
すなわち、スカート壁3の下部には、スカート壁3の全周にわたって延びる環状弱化部10を介してバンド9を連結してあり(図2(A)参照)、環状弱化部10は、スカート壁3とバンド9とを上下に画するように、スカート壁3及びバンド9の周方向に断続して延びる(ミシン目状の)スリットと、隣り合うスリットの間に存在するブリッジとで構成され、ブリッジは所定の力で引っ張られると破断する。
【0019】
ここで、本例では、バンド9の外径を上下にわたって均一にしてある一方、バンド9の内周側には、内向きに突出し、内側への突出量が上側ほど増大するように構成されたフック(係合部の一例)11を、周方向に間隔をおいて5個(複数の一例)設けてある。各フック11は、キャップ1が容器口部Mに装着された状態で、容器口部Mの外周において雄ねじM1よりも下方に形成された環状突起M2(図4参照)の略下側へ位置し、開封操作によって環状突起M2に係止する。すなわち、フック11は、環状突起M2に下方から係止可能に構成されている。なお、図3の2点鎖線は、フック11が設けられていない部分の断面形状を示している。
【0020】
また、図3に示すように、バンド9の内周側において、フック11の上方には、バンド9の内側に突出し、その突出量はフック11よりも小さい(内径がフック11の内径よりも大きい)嵌合部12が設けられ、さらに、嵌合部12の上方には上側ほど内径が大きくなる傾斜部13が連なっている。
【0021】
而して、容器口部Mに装着され未開封の状態では、環状突起M2が傾斜部13の内側またはそれより上方に位置し、この状態からキャップ1を開封方向に回転させると、容器口部Mに対してキャップ1が相対的に上昇し、嵌合部12が環状突起M2に嵌合し、フック11が環状突起M2に下方から係止する状態となる。さらにキャップ1を開封方向に回転させ続けると、やがて環状弱化部10は破断し、バンド9は容器口部Mに残留する一方、それより上側の天壁2及びスカート壁3からなるキャップ本体は容器口部Mから離脱することになる。
【0022】
従って、フック11が環状突起M2に下方から係止する状態になるまでの間に、傾斜部13が環状突起M2に当接し、これにより、バンド9が斜めに持ち上がることが防止され、環状弱化部10が偏らずに略均一に破断するので、タンパーエビデンス性は良好となる。
【0023】
また、本例では、図2(B)及び図3に示すように、嵌合部12を、各フック11の上方に位置する部分のみに設けるのではなく、バンド9の全周にわたって設けてある。これにより、脱型時等にバンド9に加わる圧力がより分散されるので、バンド9の白化防止や割れ防止を図ることができる。
【0024】
ところで、上記のように嵌合部12をバンド9の全周にわたって設けると、キャップ1を容器口部Mに装着する際、両者1、Mの間に生じる抵抗が大きくなり、環状弱化部10がそれだけ破断し易くなる。そこで、本例では、容器口部Mへのキャップ1の装着時における環状弱化部10の破断防止機能を高めるために、スカート壁3とバンド9とを含む略筒状の側壁14(図2(A)参照)の内周面における環状弱化部10から雌ねじ5の最下位置までの間の領域に、該側壁14の周方向に連続する溝15を設け、側壁14を変形(拡径)し易くした。
【0025】
この溝15は、具体的には、図3に示すように、上端から下端に向かって深くなるようにテーパ状に形成されている。また、本例では、側壁14の外周面において環状弱化部10よりも上方であって雌ねじ5の最下位置から下方に離れた位置(図示例では雌ねじ5の最下位置より環状弱化部10に近い位置)に肉厚となる環状突出部16が設けられ、溝15はこの環状突出部16よりも上方にまで延び、溝15の下端は、環状弱化部10の下方にある傾斜部13に連続している。
【0026】
上記のような溝15を設けたことにより、側壁14における環状弱化部10の上側の部位(本例ではスカート壁3の下部からバンド9の上部にかけての部位)が肉薄になって変形(拡径)し易くなり、容器口部Mへのキャップ1の装着時に容器口部Mから環状弱化部10に加わる力の少なくとも一部が前記変形に変換されるので、環状弱化部10の破断防止機能が高まる上、側壁14の肉薄化に伴って使用樹脂量の低減を図ることも可能となる。
【0027】
特に本例では、上述のように、肉厚の環状突出部16よりも上方にまで溝15を延ばしたことにより、側壁14における環状突出部16よりも上方の部位に変形し易い肉薄部が必ず形成されることになるので、上記の破断防止機能が確実に高まることになる。そして、斯かる効果をより確実に得るという観点からは、溝15の上端を環状弱化部10よりも雌ねじ5の最下位置に近くするのが好適であり、この場合、より上方から側壁14(バンド9)が拡径するので、それだけ環状弱化部10の破断を生じ難くすることができる。一方、溝15の下端は、環状弱化部10の下方にまで延ばす必要はなく、例えば環状突出部16の下端の高さ位置まで延ばすようにしてもよい。
【0028】
なお、本発明は、上記の実施の形態に何ら限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々に変形して実施し得ることは勿論である。例えば、以下のような変形例を挙げることができる。
【0029】
図3の例では、溝15は下側ほど深くなるテーパ状としてあるが、溝15の形状はこれに限らず、例えば、上側ほど深いテーパ状としたり、上下にわたって深さが一定としたりしてもよいし、溝15の深さを上下にわたって規則的又は不規則に変化させてもよい。
【0030】
また、図3の例では溝15を側壁の周方向に連続させているが、これに限らず、溝15を側壁14の周方向に断続させてもよい。この場合、側壁14を変形(拡径)させ易くして環状弱化部10の破断防止機能を高めることのできる範囲で、溝15の数や幅等の構成を種々に設定可能である。
【0031】
溝15を上下方向に複数設けてもよく、特に、溝15を側壁14の周方向に断続させる場合は、複数の溝15を側壁14の内周面の周方向に沿って行列状や千鳥状に設けてもよい。
【0032】
なお、上記変形例どうしを適宜組み合わせてもよいことはいうまでもない。
【符号の説明】
【0033】
1 キャップ
2 天壁
3 スカート壁
4 ローレット溝
5 雌ねじ
6 中足
7 環状リブ
8 外足
9 タンパーエビデンスバンド
10 環状弱化部
11 フック
12 嵌合部
13 傾斜部
14 側壁
15 溝
16 環状突出部
51 雌ねじ
52 スカート壁
53 キャップ本体
54 環状弱化部
55 タンパーエビデンスバンド
56 係合部
M 容器口部
M1 雄ねじ
M2 環状突起(被係合部)
図1
図2
図3
図4