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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-12
(45)【発行日】2023-09-21
(54)【発明の名称】ヒポキサンチン化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 473/18 20060101AFI20230913BHJP
   A61K 31/522 20060101ALI20230913BHJP
   A61K 31/5375 20060101ALI20230913BHJP
   A61K 31/5377 20060101ALI20230913BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20230913BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
C07D473/18 CSP
A61K31/522
A61K31/5375
A61K31/5377
A61P1/04
A61P43/00 111
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020546209
(86)(22)【出願日】2019-09-13
(86)【国際出願番号】 JP2019035995
(87)【国際公開番号】W WO2020054825
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2022-09-06
(31)【優先権主張番号】P 2018172064
(32)【優先日】2018-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000104560
【氏名又は名称】キッセイ薬品工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100151231
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 伸子
(74)【代理人】
【識別番号】100196807
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 雅人
(72)【発明者】
【氏名】滝川 靖
(72)【発明者】
【氏名】河辺 佑介
(72)【発明者】
【氏名】大津寄 悠
(72)【発明者】
【氏名】中村 享資
【審査官】高森 ひとみ
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/030716(WO,A1)
【文献】特表2012-517473(JP,A)
【文献】特表2011-519857(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0315207(US,A1)
【文献】XIE, H. et al.,Rapid generation of a novel DPP-4 inhibitor with long-acting properties: SAR study and PK/PD evaluation,European Journal of Medicinal Chemistry,2017年,Vol.141,pp.519-529,DOI:10.1016/j.ejmech.2017.10.029
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の化合物からなる群から選択される化合物:
【化1】
及び
【化2】
又はその薬理学的に許容される塩。
【請求項2】
以下の式で表される、請求項1に記載の化合物:
【化3】
又はその薬理学的に許容される塩。
【請求項3】
以下の式で表される、請求項1に記載の化合物:
【化4】
又はその薬理学的に許容される塩。
【請求項4】
以下の式で表される、請求項1に記載の化合物:
【化5】
又はその薬理学的に許容される塩。
【請求項5】
以下の式で表される、請求項1に記載の化合物:
【化6】
又はその薬理学的に許容される塩。
【請求項6】
以下の式で表される、請求項1に記載の化合物:
【化7】
又はその薬理学的に許容される塩。
【請求項7】
以下の式で表される、請求項1に記載の化合物:
【化8】
又はその薬理学的に許容される塩。
【請求項8】
以下の式で表される、請求項1に記載の化合物:
【化9】
又はその薬理学的に許容される塩。
【請求項9】
以下の式で表される、請求項1に記載の化合物:
【化10】
又はその薬理学的に許容される塩。
【請求項10】
以下の式で表される、請求項1に記載の化合物:
【化11】
又はその薬理学的に許容される塩。
【請求項11】
請求項1~10の何れか一項に記載の化合物又はその薬理学的に許容される塩、及び医薬品添加物を含む医薬組成物。
【請求項12】
炎症性腸疾患の治療用医薬組成物である、請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
請求項12に記載の医薬組成物であって、炎症性腸疾患が潰瘍性大腸炎又はクローン病である医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品として有用なヒポキサンチン化合物に関する。さらに詳しく述べれば、本発明は、プロリル水酸化酵素の阻害作用を有し、潰瘍性大腸炎等の炎症性腸疾患の治療剤として有用なヒポキサンチン化合物又はその薬理学的に許容される塩に関する。
【背景技術】
【0002】
炎症性腸疾患(IBD)は、免疫の過剰応答により腸管粘膜に炎症及び潰瘍が生じる慢性疾患である。IBDには、例えば、潰瘍性大腸炎及びクローン病が含まれる。
潰瘍性大腸炎は、原因不明のびまん性非特異性炎症が生じる大腸の疾患である。大腸の粘膜が侵され、粘膜にびらん又は潰瘍を形成することがある。潰瘍性大腸炎は、血便、びらん、潰瘍等が認められる「活動期」と、活動期の所見が消失する「寛解期」に分けることができる。その経過中に再燃と寛解を繰り返すことが多いため、長期間の治療を要する。
潰瘍性大腸炎の治療には、まず5-アミノサリチル酸製剤(5-ASA)が標準薬として用いられる。しかしながら、5-ASAの有効性は50~65%程度であり、5-ASAの投与により寛解が認められる患者は、30~45%程度である。5-ASAの効果が認められない場合、ステロイド剤が用いられる。それらの薬剤に加えて免疫抑制剤、抗TNFα抗体等が潰瘍性大腸炎の治療に用いられることがある。しかしながら、いずれの薬剤にも副作用、慎重な投与が求められる等の課題があり、新たな作用メカニズムを有する潰瘍性大腸炎の治療剤が求められている。
【0003】
IBDの病態において、低酸素誘導因子1α(HIF-1α)が消化管上皮のバリア機能に関連した遺伝子の発現を誘導することが知られている。HIF-1αは、低酸素誘導因子α(HIF-α)のサブタイプの1つである。HIF-αは低酸素の環境下(Hypoxia)で安定化され、低酸素に応答した様々な遺伝子の転写を活性化する。一方、酸素が豊富に存在する環境下(Normoxia)では、HIF-αのプロリン残基がプロリル水酸化酵素(PHDs)によって水酸化され、そのHIF-αはプロテアソーム分解を受ける。
【0004】
PHDsは、PHD1、PHD2及びPHD3の3つのサブタイプが知られている。PHD2阻害剤としてAKB-4924が知られており、AKB-4924は、大腸組織においてHIF-1αを安定化することが報告されている(非特許文献1)。さらに、AKB-4924はトリニトロベンゼンスルホン酸(TNBS)誘発大腸炎モデルにおいて、改善効果が認められている。
【0005】
一方、PHDs阻害剤、例えばRoxadustat及びDaprodustatは、造血作用を有し、貧血治療剤としても開発されている(非特許文献2)。そのため、PHDs阻害剤をIBDの治療剤として用いる場合、造血作用等の全身作用とのきり分けが重要になる。
【0006】
PHDs阻害剤として、例えば、キナゾリノン化合物が特許文献1に記載され、ピラゾロピリミジン化合物が特許文献2に記載されている。また、ヒポキサンチンを含む化合物が特許文献3から7及び非特許文献3に記載又は例示されている。しかしながら、上記文献には、本願発明のヒポキサンチン化合物は、記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2010/093727号
【文献】米国特許出願公開第2015/0239889号明細書
【文献】米国特許出願公開第2015/0368247号明細書
【文献】米国特許出願公開第2013/0165426号明細書
【文献】米国特許出願公開第2010/0029671号明細書
【文献】米国特許出願公開第2006/0258651号明細書
【文献】米国特許出願公開第2010/0120761号明細書
【非特許文献】
【0008】
【文献】Ellen Marksら、「Inflamm. Bowel. Dis.」、2015年、第21巻、第2号、p.267-275
【文献】Mun Chiang Chanら、「Molecular Aspects of Medicine」、2016年、第47-48巻、p.54-75
【文献】Takashi Goiら、「Synlett」、2018年、第29巻、第14号、p.1867-1870
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、PHD2阻害作用を有し、炎症性腸疾患の治療に有用な新規化合物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、下記本発明の化合物又はその薬理学的に許容される塩に関する。すなわち、本発明は、以下の〔1〕~〔13〕等に関する。
〔1〕以下の化合物からなる群から選択される化合物:
【化1】
及び
【化2】
又はその薬理学的に許容される塩。
〔2〕以下の式で表される、前記〔1〕に記載の化合物:
【化3】
又はその薬理学的に許容される塩。
〔3〕以下の式で表される、前記〔1〕に記載の化合物:
【化4】
又はその薬理学的に許容される塩。
〔4〕以下の式で表される、前記〔1〕に記載の化合物:
【化5】
又はその薬理学的に許容される塩。
〔5〕以下の式で表される、前記〔1〕に記載の化合物:
【化6】
又はその薬理学的に許容される塩。
〔6〕以下の式で表される、前記〔1〕に記載の化合物:
【化7】
又はその薬理学的に許容される塩。
〔7〕以下の式で表される、前記〔1〕に記載の化合物:
【化8】
又はその薬理学的に許容される塩。
〔8〕以下の式で表される、前記〔1〕に記載の化合物:
【化9】
又はその薬理学的に許容される塩。
〔9〕以下の式で表される、前記〔1〕に記載の化合物:
【化10】
又はその薬理学的に許容される塩。
〔10〕以下の式で表される、前記〔1〕に記載の化合物:
【化11】
〔11〕前記〔1〕~〔10〕の何れか一項に記載の化合物又はその薬理学的に許容される塩、及び医薬品添加物を含む医薬組成物。
〔12〕炎症性腸疾患の治療用医薬組成物である、前記〔11〕に記載の医薬組成物。
〔13〕前記〔12〕に記載の医薬組成物であって、炎症性腸疾患が潰瘍性大腸炎又はクローン病である医薬組成物。
【0011】
一つの実施態様として、本発明は、前記〔11〕に記載の医薬組成物を患者に必要量を投与することを含む、炎症性腸疾患の治療方法に関する。
【0012】
一つの実施態様として、本発明は、炎症性腸疾患の治療用医薬組成物を製造するための、前記〔1〕~〔10〕の何れかに記載の化合物又はその薬理学的に許容される塩の使用に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の化合物は、優れたPHD2阻害作用を有する。したがって、本発明の化合物又はその薬理学的に許容される塩は、炎症性腸疾患の治療剤として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態についてより詳細に説明する。
【0015】
本発明において、各用語は、特に断らない限り、以下の意味を有する。
【0016】
本文中、図表中及び表中の以下の略語は、それぞれ以下の意味である。
DIPEA:N,N-ジイソプロピルエチルアミン
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド
DMSO:ジメチルスルホキシド
NMP:1-メチル-2-ピロリジノン
TBAF:テトラブチルアンモニウムフルオリド
TFA:トリフルオロ酢酸
THF:テトラヒドロフラン
Pd2(dba)3:トリス(ジベンジリデンアセトン)ジパラジウム(0)
tBuXPhos:2-ジ-tert-ブチルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル
アミノシリカゲル:アミノプロピル化シリカゲル
ODSカラムクロマトグラフィー:オクタデシルシリル化シリカゲルカラムクロマトグラフィー
Ref.No.:参考例番号
Ac:アセチル
Bn:ベンジル
Et:エチル
Me:メチル
tBu:tert-ブチル
SEM:2-(トリメチルシリル)エトキシメチル
TIPS:トリイソプロピルシリル
Tr:トリフェニルメチル
Ex.No.:実施例番号
Physical data:物性値
IC50:50%阻害濃度
FITC:フルオロセインイソチオシアネート
1H-NMR:水素核磁気共鳴スペクトル
DMSO-d6:ジメチルスルホキシド-d6
CDCl3:クロロホルム-d1
MeOH-d4:メタノール-d4
MS:質量分析
(表中のMSの値は、エレクトロスプレーイオン化法-大気圧化学イオン化法のマルチイオン化法により測定した。)
【0017】
本発明の化合物において互変異性体が存在する場合、本発明は、その互変異性体の何れも含む。例えば、以下の互変異性体が挙げられる。
【化12】
【0018】
本発明の化合物は、必要に応じて常法に従い、その薬理学的に許容される塩にすることもできる。このような塩としては、酸付加塩又は塩基との塩を挙げることができる。
【0019】
酸付加塩としては、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸等の鉱酸との酸付加塩、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、プロピオン酸、クエン酸、コハク酸、酒石酸、フマル酸、酪酸、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、乳酸、リンゴ酸、炭酸、安息香酸、グルタミン酸、アスパラギン酸等の有機酸との酸付加塩を挙げることができる。
【0020】
塩基との塩としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等の無機塩基との塩、N-メチル-D-グルカミン、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、トリエチルアミン、ピペリジン、モルホリン、ピロリジン、アルギニン、リジン、コリン等の有機塩基との塩を挙げることができる。
【0021】
本発明の化合物又はその薬理学的に許容される塩が、例えば結晶として存在する場合、本発明は、何れの結晶形も含む。例えば、薬理学的に許容される塩には、水又はエタノール等の医薬品として許容される溶媒との溶媒和物、適当な共結晶形成剤(Coformer)との共結晶等も含まれる。
【0022】
本発明の化合物において、各原子の一部は、それぞれ対応する同位体で置き換わっていてもよい。本発明は、これら同位体で置き換わった化合物も含む。同位体の例としては、それぞれ2H、3H、11C、13C、14C、36Cl、18F、123I、125I、13N、15N、15O、17O、18O、32P、及び35Sで表される水素原子、炭素原子、塩素原子、フッ素原子、ヨウ素原子、窒素原子、酸素原子、リン原子、及び硫黄原子の同位体が挙げられる。一つの実施態様として、本発明の化合物の一部の水素原子が2H(D:重水素原子)で置き換わった化合物が挙げられる。
【0023】
本発明の化合物において、一部の原子が同位体で置き換わった化合物は、市販の同位体が導入されたビルディングブロックを用いて、後述の製造方法と同様な方法で製造することができる。例えば、本発明の化合物の一部の水素原子が重水素原子で置き換わった化合物は、前記方法、及び文献記載の方法(例えば、有機合成化学協会誌、第65巻、12号、1179-1190ページ、2007年参照)を用いて製造することもできる。また、例えば、本発明の化合物の一部の炭素原子が13Cで置き換わった化合物は、上記方法、及び文献記載の方法(例えば、RADIOISOTOPES、第56巻、11号、35-44ページ、2007年参照)を用いて製造することもできる。
【0024】
本発明の化合物及びその製造中間体は、必要に応じて、当該技術分野の当業者にとって周知の単離及び精製手段である、溶媒抽出、晶析、再結晶、クロマトグラフィー、分取高速液体クロマトグラフィー等により、単離及び精製することもできる。
シリカゲルカラムクロマトグラフィー及びアミノシリカゲルカラムクロマトグラフィーとしては、例えば、SNAP Ultra及びSNAP Isolute NH2(バイオタージ)、並びにHi-Flashカラム(山善)等を用いたフラッシュクロマトグラフィーが挙げられる。
ODSカラムクロマトグラフィーとしては、例えば、分取精製LCシステム(Gilson、流速:30 mL/min、検出:UV at 220 nm)及びカラム:SunFire C18 Prep OBD(5μm 19x50 mm)を用いた分取が挙げられる。
【0025】
本発明の化合物は、優れたPHD2阻害作用を有するので、IBDの治療剤として使用できる(Nature Reviews Drug Discovery, 2014, 13, p.852-869参照)。本発明において、IBDには、例えば、潰瘍性大腸炎、クローン病、腸管型ベーチェット、感染性腸炎、放射線性腸炎、薬剤性腸炎、虚血性腸炎、腸間膜静脈硬化症(静脈硬化性大腸炎)、閉塞性大腸炎、及び膠原病に伴う腸炎が含まれる。好ましくは、本発明の化合物は、潰瘍性大腸炎又はクローン病の治療剤として用いることができる(Inflamm. Bowel. Dis., 2015, 21 (2), p.267-275参照)。
【0026】
本発明において、「治療」には「予防」の意味が含まれる。例えば、潰瘍性大腸炎の治療には、「再燃予防」及び「寛解維持」の意味が含まれる。
【0027】
本発明の化合物の大腸炎に対する治療効果は、試験例2に記載した方法又は当該技術分野において周知の方法に従い確認することができる。例えば、Biol. Pharm. Bull 2004, 27 (10), p.1599-1603等に記載の方法又はそれに準じた方法が挙げられる。
【0028】
一つの実施態様として、HIF-αの安定化によるオフターゲット作用を限定するため、本発明の化合物は、大腸組織に特異的に作用するPHD2阻害剤である。「大腸組織に特異的に作用」とは、例えば、化合物が血中に対して大腸組織で高濃度を示し、全身性の作用(例えば、造血作用)が認められず大腸における治療効果を発揮することを意味する(試験例2及び3参照)。
【0029】
一つの実施態様として、本発明の好ましい化合物は鉄に対するキレート作用が弱い。例えば、Mol. Pharmacol., 2011, 79(6), p910-920等に記載の方法又はそれに準じた方法で測定した場合、本発明の好ましい化合物は、化合物濃度が100μMにおいて50%以下の阻害活性しか示さない。
【0030】
本発明の医薬組成物は、用法に応じ種々の剤型のものが使用される。このような剤型としては、例えば、散剤、顆粒剤、細粒剤、ドライシロップ剤、錠剤、カプセル剤、注射剤、液剤、軟膏剤、坐剤、貼付剤、及び注腸剤を挙げることができる。
【0031】
本発明の医薬組成物は、本発明の化合物又はその薬理学的に許容される塩を有効成分として含む。
【0032】
本発明の医薬組成物は、本発明の化合物又はその薬理学的に許容される塩、及び少なくとも1つの医薬品添加物を用いて調製される。これら医薬組成物は、その剤型に応じ製剤学的に公知の手法により、適切な賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、希釈剤、緩衝剤、等張化剤、防腐剤、湿潤剤、乳化剤、分散剤、安定化剤、溶解補助剤等の医薬品添加物と適宜混合、希釈又は溶解することにより調製することもできる。
【0033】
本発明の医薬組成物を治療に用いる場合、本発明の化合物又はその薬理学的に許容される塩の投与量は、患者の年齢、性別、体重、疾患及び治療の程度等により適宜決定される。1日投与量を1回、2回、3回又は4回に分けて投与してもよい。好ましくは、本発明の医薬組成物は、経口投与される。
経口投与の場合、成人に対する投与量は、例えば、0.1~1000mg/日の範囲で定めることができる。一つの実施態様として、経口投与量は、1~500mg/日の範囲で定めることもでき、好ましくは10~200mg/日の範囲である。
非経口投与の場合、成人に対する投与量は、例えば、0.1~1000mg/日で定めることができる。一つの実施態様として、非経口投与量は、0.5~200mg/日の範囲で定めることもでき、好ましくは1~20mg/日の範囲である。
【0034】
一つの実施態様として、本発明の医薬組成物は、PHDs阻害剤以外の他の薬剤と組み合わせて使用することもできる。炎症性腸疾患の治療において組み合わせて使用することができる他の薬剤としては、例えば、5-ASA、ステロイド剤、免疫抑制剤、及び抗TNFα抗体、ヤヌスキナーゼ阻害剤、及びα4β7インテグリン抗体が挙げられる。
【0035】
本発明の化合物又はその薬理学的に許容される塩と他の薬剤とを組み合わせて使用する場合、これらの有効成分を一緒に含有する製剤、又はこれらの有効成分の個々を別々に製剤化した製剤として投与することができる。別々に製剤化した場合、それらの製剤を別々に、又は同時に投与することができる。また、本発明の化合物又はその薬理学的に許容される塩の投与量は、組み合わせて使用する他の薬剤の投与量に応じて、適宜減量してもよい。
【0036】
本発明の化合物は、適宜プロドラッグに変換して使用してもよい。例えば、本発明の化合物のプロドラッグは、相当するハロゲン化物等のプロドラッグ化試薬を用いて、プロドラッグを構成する基を導入し、精製することにより製造することもできる。プロドラッグを構成する基としては、例えば、「医薬品の開発」(廣川書店、1990年)第7巻 p.163-198に記載の基が挙げられる。
【実施例
【0037】
以下に、本発明を実施例にもとづいてさらに詳細に説明するが、本発明はその内容に限定されるものではない。
【0038】
下記の実施例に記載された化合物名は、市販の試薬を除き、ChemDraw Professional (PerkinElmer)、MarvinSketch (ChemAxon)等を用いて命名した。
【0039】
参考例1
7-([1,1'-ビフェニル]-4-イルメチル)-2,6-ジクロロ-7H-プリン
2,6-ジクロロプリン(1.89 g)および炭酸カリウム(2.76 g)の DMF(40 mL)懸濁液に、4-(ブロモメチル)-1,1'-ビフェニル(2.72 g)を加えた。反応混合物を室温で18時間撹拌した。反応混合物に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下、濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=44/56~65/35)で精製し、表題化合物(0.78 g)を得た。
【0040】
参考例2
7-([1,1'-ビフェニル]-4-イルメチル)-2-クロロ-1,7-ジヒドロ-6H-プリン-6-オン
参考例1(0.78 g)の THF(4.4 mL)溶液に、1mol/L 水酸化ナトリウム水溶液(11 mL)を加えた。反応混合物を80℃で2時間撹拌した。室温に放冷後、反応混合物に 1mol/L 塩酸(11 mL)および水(11 mL)を加え、析出した不溶物をろ取した。得られた固体を水で洗浄した後、減圧下、50℃で12時間乾燥し、表題化合物(0.90 g)を得た。
【0041】
参考例3
1-(7-([1,1'-ビフェニル]-4-イルメチル)-6-オキソ-6,7-ジヒドロ-1H-プリン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-カルボン酸エチル
参考例2(0.90 g)及びDIPEA(0.85 g)の THF(4 mL)溶液に、氷冷下で1-(クロロメトキシ)-2-メトキシエタン(0.41 g)を加えた。反応混合物を室温で12時間撹拌した。反応混合物に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下、濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=80/20~100/0)で精製した。
得られた化合物(0.56 g)の DMF(3 mL)溶液に、1H-ピラゾール-4-カルボン酸エチル(0.21 g)および炭酸セシウム(0.87 g)を加えた。反応混合物を50℃で3時間撹拌した。室温に放冷後、反応混合物に水を加えた。析出した不溶物をろ去し、ろ液を酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下、濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=70/30~91/9)で精製した。
得られた化合物(0.32 g)のエタノール(1.5 mL)溶液に、4mol/L 塩化水素/1,4-ジオキサン溶液(1.5 mL)を加えた。反応混合物を室温で18時間撹拌した。反応混合物にジエチルエーテルを加え、不溶物をろ取した。得られた固体をジエチルエーテルで洗浄し、表題化合物(0.23 g)を得た。
【0042】
参考例4
7-((ベンジルオキシ)メチル)-2,6-ジクロロ-7H-プリン
アルゴン雰囲気下、水素化ナトリウム(50~72%含有、1.2 g)の THF(100 mL)懸濁液に、2,6-ジクロロプリン(4.72 g)の THF(25 mL)溶液を氷冷下で加えた。反応混合物を30分間撹拌した後、ベンジルクロロメチルエーテル(5.87 g)を加えた。反応混合物を室温で3時間撹拌した。反応混合物に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下、濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=23/77~44/56~65/35)で精製し、表題化合物(2.55 g)を得た。
【0043】
参考例5
7-((ベンジルオキシ)メチル)-2-クロロ-1,7-ジヒドロ-6H-プリン-6-オン
参考例2と同様の方法により、参考例4(2.55 g)から、表題化合物(1.71 g)を得た。
【0044】
参考例6
1-(7-((ベンジルオキシ)メチル)-6-オキソ-6,7-ジヒドロ-1H-プリン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-カルボン酸エチル
参考例5(1.71 g)および DIPEA(1.90 g)の THF(29 mL)溶液に、2-(クロロメトキシ)エチルトリメチルシラン(1.18 g)を氷冷下で加えた。反応混合物を室温で12時間撹拌した。反応混合物に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下、濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=49/51~70/30)で精製した。
得られた化合物(1.25 g)の DMF(6.0 mL)溶液に、1H-ピラゾール-4-カルボン酸エチル(0.46 g)および炭酸セシウム(1.94 g)を加えた。反応混合物を50℃で1時間撹拌した。室温に放冷後,反応混合物に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下、濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=51/49~72/28)で精製した。
得られた化合物(0.67 g)のエタノール(3.2 mL)溶液に、4mol/L 塩化水素/1,4-ジオキサン溶液(3.2 mL)を加えた。反応混合物を室温で2時間撹拌した。反応混合物にジエチルエーテル(6.0 mL)を加え、析出した不溶物をろ取した。得られた固体をジエチルエーテルで洗浄した後、減圧下、乾燥し、表題化合物(0.33 g)を得た。
【0045】
参考例8a
2,6-ジクロロ-9-(4-((トリイソプロピルシリル)オキシ)ベンジル)-9H-プリン
参考例8b
2,6-ジクロロ-7-(4-((トリイソプロピルシリル)オキシ)ベンジル)-7H-プリン
2,6-ジクロロプリン(1.89 g)および炭酸カリウム(2.76 g)のDMF(40 mL)懸濁液に、(4-(ブロモメチル)フェノキシ)トリイソプロピルシラン(4.28 g)を加えた。反応混合物を室温で6時間撹拌した。反応混合物に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下、濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=30/70~60/40)で精製し、表題化合物 8a(2.40 g)および 8b(1.19 g)をそれぞれ得た。
【0046】
参考例9
6-(ベンジルオキシ)-2-クロロ-7-(4-((トリイソプロピルシリル)オキシ)ベンジル)-7H-プリン
アルゴン雰囲気下、参考例8b(1.19 g)の DMF(4.4 mL)および THF(4.4 mL)の混合物に、ベンジルアルコール(0.30 g)および水素化ナトリウム(50~72%含有、0.12 g)を氷冷下で加えた。反応混合物を0℃で15分間撹拌した。反応混合物に飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下、濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=30/70~60/40)で精製し、表題化合物(1.10 g)を得た。
【0047】
参考例10
1-(6-(ベンジルオキシ)-7-(4-((トリイソプロピルシリル)オキシ)ベンジル)-7H-プリン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-カルボン酸エチル
アルゴン雰囲気下、参考例9(0.47 g)および 1H-ピラゾール-4-カルボン酸エチル(0.19 g)のtert-ブチルアルコール(1.5 mL)および THF(1.5 mL)の懸濁液に、リン酸三カリウム(0.66 g)、tBuXPhos(0.08 g)およびPd2(dba)3(0.16 g)を加えた。反応混合物を90℃で90分間撹拌した。室温に放冷後、反応混合物に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下、濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:酢酸エチル/ヘキサン/メタノール=50/50/0~100/0/0~95/0/5)で精製し、表題化合物(0.29 g)を得た。
【0048】
参考例11
1-(6-(ベンジルオキシ)-7-(4-ヒドロキシベンジル)-7H-プリン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-カルボン酸エチル
参考例10(0.35 g)の THF(1.9 mL)溶液に、氷冷下で TBAF(約1mol/L THF 溶液、0.7 mL)を加えた。反応混合物を0℃で30分間撹拌した。反応混合物に飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、ジクロロメタン/メタノール(10/1)の混合溶媒で抽出した。有機層を減圧下、濃縮した後、得られた残渣を水およびジエチルエーテルで洗浄し、表題化合物(0.22 g)を得た。
【0049】
参考例12
1-(7-(4-アセトキシベンジル)-6-(ベンジルオキシ)-7H-プリン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-カルボン酸エチル
参考例11(0.15 g)のピリジン(1.2 mL)溶液に、無水酢酸(0.3 mL)を加えた。反応混合物を室温で12時間撹拌した。反応混合物を減圧下、濃縮した後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:酢酸エチル/ヘキサン/メタノール=70/30/0~100/0/0~95/0/5)で精製し、表題化合物(0.14 g)を得た。
【0050】
参考例13
1-(7-(4-アセトキシベンジル)-6-オキソ-6,7-ジヒドロ-1H-プリン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-カルボン酸エチル
参考例12(0.14 g)の TFA(0.9 mL)溶液を、50℃で90分間撹拌した。室温に放冷後、反応混合物を水に滴下し、析出した不溶物をろ取した。得られた固体を水およびジエチルエーテルで洗浄した後、減圧下、50℃で乾燥し、表題化合物(0.10 g)を得た。
【0051】
参考例14
6-(ベンジルオキシ)-2-クロロ-9-((2-(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)-9H-プリン
参考例9と同様の方法により、2,6-ジクロロ-9-((2-(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)-9H-プリン(2.79 g)から、表題化合物(3.14 g)を得た。
【0052】
参考例15
1-(6-(ベンジルオキシ)-9-((2-(トリメチルシリル)エトキシ)メチル)-9H-プリン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-カルボン酸エチル
参考例10と同様の方法により、参考例14(1.00 g)から、表題化合物(0.98 g)を得た。
【0053】
参考例16
1-(6-(ベンジルオキシ)-9H-プリン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-カルボン酸エチル
参考例15(0.96 g)のエタノール(6.5 mL)溶液に、4mol/L 塩化水素/1,4-ジオキサン溶液(4.8 mL)を加えた。反応混合物を室温で52時間撹拌した。反応混合物にジエチルエーテルを加え、生じた不溶物をろ取した。得られた固体をジエチルエーテルで洗浄した後、減圧下、50℃で乾燥し、表題化合物(0.65 g)を得た。
【0054】
参考例17a
1-(6-(ベンジルオキシ)-9-(4-(メチルスルホニル)ベンジル)-9H-プリン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-カルボン酸エチル
参考例17b
1-(6-(ベンジルオキシ)-7-(4-(メチルスルホニル)ベンジル)-7H-プリン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-カルボン酸エチル
参考例16(0.19 g)および炭酸カリウム(0.36 g)の DMF(3.5 mL)懸濁液に、1-(クロロメチル)-4-(メチルスルホニル)ベンゼン(0.16 g)を加えた。反応混合物を室温で14時間撹拌した。反応混合物に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下、濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:メタノール/酢酸エチル=0/100~10/90)で精製し、表題化合物 17a(0.05 g)および 17b (0.06 g)をそれぞれ得た。
【0055】
参考例18
1-(7-(4-(メチルスルホニル)ベンジル)-6-オキソ-6,7-ジヒドロ-1H-プリン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-カルボン酸エチル
参考例13と同様の方法により、参考例17b(0.06 g)から、表題化合物(0.04 g)を得た。
【0056】
参考例25a
2,6-ジクロロ-9-(4-メトキシベンジル)-9H-プリン
参考例25b
2,6-ジクロロ-7-(4-メトキシベンジル)-7H-プリン
4-メトキシベンジルクロリド(9.40 g)の THF(100 mL)溶液に、室温でヨウ化ナトリウム(9.74 g)を加えた。反応混合物を1時間撹拌した後、2,6-ジクロロプリン(9.45 g)および炭酸カリウム(10.37 g)を加えた。反応混合物を室温で20時間撹拌した。反応混合物に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下、濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=37/63~58/42~70/30)で精製し、表題化合物 25a(2.48 g)および 25b(2.22 g)をそれぞれ得た。
【0057】
参考例26
2-クロロ-6-メトキシ-7-(4-メトキシベンジル)-7H-プリン
アルゴン雰囲気下、参考例25b(4.35 g)の THF(70 mL)溶液に、氷冷下で 28%ナトリウムメトキシド/メタノール溶液(2.85 g)を滴下した。反応混合物を室温で30分間撹拌した。反応混合物に水を加え、不溶物をろ取した。得られた固体を水で洗浄した後、減圧下、50℃で6時間乾燥し、表題化合物(3.47 g)を得た。
【0058】
参考例27
1-(6-メトキシ-7-(4-メトキシベンジル)-7H-プリン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-カルボン酸エチル
アルゴン雰囲気下、参考例26(3.21 g)、1H-ピラゾール-4-カルボン酸エチル(1.77 g)および tBuXPhos(0.90 g)のNMP(21 mL)溶液に、リン酸三カリウム(3.35 g)およびPd2(dba)3 (0.48 g)を加えた。反応混合物を60℃で3時間撹拌した。室温に放冷後、反応混合物に水および酢酸エチルを加え、不溶物をハイフロスーパーセルに通して濾去した。ろ液を酢酸エチルで抽出した後、有機層を水および飽和食塩水で洗浄した。有機層をアミノシリカゲルに通した後、減圧下、濃縮した。得られた残渣にエタノールを加え、不溶物をろ取した。得られた固体をエタノールおよびジイソプロピルエーテルで洗浄した後、アミノシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=81/19~100/0)で精製し、表題化合物(2.02 g)を得た。
【0059】
参考例28
4-((2,6-ジクロロ-9-トリチル-8,9-ジヒドロ-7H-プリン-7-イル)メチル)安息香酸メチル
アルゴン雰囲気下、水素化ナトリウム(50~72%含有、0.91 g)の DMF(20 mL)懸濁液に、氷冷下で2,6-ジクロロ-9-トリチル-8、9-ジヒドロ-7H-プリン(8.25 g)の DMF(20 mL)溶液を加えた。反応混合物を30分間撹拌した。反応混合物に4-(ブロモメチル)安息香酸メチル(4.80 g)のDMF(20 mL)溶液を加え、室温で3時間撹拌した。反応混合物に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下、濃縮した。得られた残渣にジエチルエーテルを加え、不溶物をろ取した。得られた固体をジエチルエーテルで洗浄し、表題化合物(4.11 g)を得た。
【0060】
参考例29
4-((2,6-ジクロロ-7H-プリン-7-イル)メチル)安息香酸メチル
参考例28(6.20 g)の ジクロロメタン(110 mL)溶液に、氷冷下で TFA(12.16 g)を加えた。反応混合物を室温で2時間撹拌した。反応混合物に飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(110 mL)を加え、ジクロロメタンで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下、濃縮した。得られた残渣にジエチルエーテルを加え、不溶物をろ取した。得られた固体をジエチルエーテルで洗浄し、表題化合物(2.79 g)を得た。
【0061】
参考例30
4-((2-クロロ-6-メトキシ-7H-プリン-7-イル)メチル)安息香酸メチル
参考例26と同様の方法により、参考例29(0.67 g)から、表題化合物(0.62 g)を得た。
【0062】
参考例31
1-(6-メトキシ-7-(4-(メトキシカルボニル)ベンジル)-7H-プリン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-カルボン酸tert-ブチル
アルゴン雰囲気下、参考例30(0.62 g)、1H-ピラゾール-4-カルボン酸tert-ブチル(0.34 g)、tBuXPhos(0.06 g)およびリン酸三カリウム(0.59 g)の tert-ブタノール(5 mL)懸濁液に、Pd2(dba)3(0.04 g)を加えた。反応混合物を100℃で10時間撹拌した。室温に放冷後、反応混合物に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、減圧下、濃縮した。得られた残渣にジエチルエーテルを加え、不溶物をろ取した。得られた固体をジエチルエーテルで洗浄し、表題化合物(0.52 g)を得た。
【0063】
参考例47
6-(ベンジルオキシ)-2-クロロ-9-(4-((トリイソプロピルシリル)オキシ)ベンジル)-9H-プリン
参考例9と同様の方法により、参考例8a(2.40 g)から、表題化合物(1.69 g)を得た。
【0064】
参考例48
1-(6-(ベンジルオキシ)-9-(4-((トリイソプロピルシリル)オキシ)ベンジル)-9H-プリン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-カルボン酸エチル
参考例10と同様の方法により、参考例47(0.81 g)から、表題化合物(0.78 g)を得た。
【0065】
参考例49
1-(6-(ベンジルオキシ)-9-(4-ヒドロキシベンジル)-9H-プリン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-カルボン酸エチル
参考例11と同様の方法により、参考例48(0.78 g)から、表題化合物(0.51 g)を得た。
【0066】
参考例50
1-(9-(4-アセトキシベンジル)-6-(ベンジルオキシ)-9H-プリン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-カルボン酸エチル
参考例12と同様の方法により、参考例49(0.51 g)から、表題化合物(0.23 g)を得た。
【0067】
参考例51
1-(9-(4-アセトキシベンジル)-6-オキソ-6,9-ジヒドロ-1H-プリン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-カルボン酸エチル
参考例13と同様の方法により、参考例50(0.23 g)から、表題化合物(0.20 g)を得た。
【0068】
参考例52
2-クロロ-6-メトキシ-9-(4-メトキシベンジル)-9H-プリン
参考例26と同様の方法により、参考例25a(2.48 g)から、表題化合物(2.27 g)を得た。
【0069】
参考例53
1-(6-メトキシ-9-(4-メトキシベンジル)-9H-プリン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-カルボン酸エチル
アルゴン雰囲気下、参考例52(2.27 g)のtert-ブチルアルコール(18.6 mL)および THF(18.6 mL)の混合物に、1H-ピラゾール-4-カルボン酸エチル(1.25 g)、ナトリウム tert-ブトキシド(0.79 g)、tBuXPhos(0.63 g)およびPd2(dba)3 (0.34 g)を加えた。反応混合物を80℃で90分間撹拌した。室温に放冷後、反応混合物に水および酢酸エチルを加え、不溶物をハイフロスーパーセルに通してろ去した。ろ液を有機層と水層に分離した。有機層をアミノシリカゲルに通した後、ろ液を減圧下、濃縮した。得られた残渣にエタノールを加え、不溶物をろ取した。得られた固体をエタノールおよびジイソプロピルエーテルで洗浄し、表題化合物(2.04 g)を得た。
【0070】
参考例54a
1-(6-(ベンジルオキシ)-9-(4-(2-モルホリノエトキシ)ベンジル)-9H-プリン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-カルボン酸エチル
参考例54b
1-(6-(ベンジルオキシ)-7-(4-(2-モルホリノエトキシ)ベンジル)-7H-プリン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-カルボン酸エチル
(4-(2-モルホリノエトキシ)フェニル)メタノール(0.25 g)のジクロロメタン(3.5 mL)溶液に、氷冷下、トリエチルアミン(0.14 g)およびメタンスルホニルクロリド(0.15 g)を加えた。反応混合物を室温で30分間撹拌した。反応混合物に水を加えた。有機層を分離し、減圧下、濃縮した。
得られた化合物(0.27 g)のDMF(2.3 mL)溶液に、参考例16(0.25 g)および炭酸カリウム(0.47 g)を加えた。反応混合物を室温で18時間撹拌した。反応混合物に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下、濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶出溶媒:酢酸エチル/ヘキサン/メタノール=80/20/0~100/0/0~90/0/10)で精製し、表題化合物54a(0.07 g)および表題化合物54b(0.10 g)をそれぞれ得た。
【0071】
参考例の化学構造式を以下の表に示す。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
【表3】
【0075】
【表4】
【0076】
【表5】
【0077】
【表6】
【0078】
【表7】
【0079】
実施例1
1-(7-([1,1'-ビフェニル]-4-イルメチル)-6-オキソ-6,7-ジヒドロ-1H-プリン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-カルボン酸
参考例3(0.23 g)の THF(5.2 mL)溶液に、1mol/L 水酸化リチウム水溶液(2.6 mL)を加えた。反応混合物を室温で18時間撹拌した。反応混合物に 1mol/L 塩酸(6.3 mL)および水(12 mL)を加えた。生じた不溶物をろ取した。得られた固体を水で洗浄した後、減圧下、50℃で乾燥し、表題化合物(0.18 g)を得た。
【0080】
実施例2
1-(7-((ベンジルオキシ)メチル)-6-オキソ-6,7-ジヒドロ-1H-プリン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-カルボン酸
参考例6(0.33 g)の THF(8 mL)溶液に、1mol/L 水酸化リチウム水溶液(4 mL)を加えた。反応混合物を室温で12時間撹拌した。反応混合物に 1mol/L 塩酸(4 mL)を加えた。生じた不溶物をろ取した。得られた固体を水で洗浄した後、減圧下、50℃で乾燥し、表題化合物(0.28 g)を得た。
【0081】
実施例3
1-(7-(4-ヒドロキシベンジル)-6-オキソ-6,7-ジヒドロ-1H-プリン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-カルボン酸
参考例13(0.10 g)の THF(1.2 mL)および水(1.2 mL)懸濁液に、水酸化リチウム一水和物(0.05 g)を加えた。反応混合物を室温で18時間撹拌した。反応混合物に 1mol/L 塩酸(1.2 mL)を加えた。生じた不溶物をろ取した。得られた固体を水で洗浄した後、減圧下、50℃で乾燥し、表題化合物(0.09 g)を得た。
【0082】
実施例4
1-(7-(4-(メチルスルホニル)ベンジル)-6-オキソ-6,7-ジヒドロ-1H-プリン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-カルボン酸
参考例18(0.04 g)の THF(0.4 mL)および水(0.4 mL)懸濁液に、水酸化リチウム一水和物(0.02 g)を加えた。反応混合物を室温で18時間撹拌した。反応混合物に 1mol/L 塩酸(0.4 mL)を加えた。生じた不溶物をろ取した。得られた固体を水で洗浄した後、減圧下、50℃で乾燥し、表題化合物(0.03 g)を得た。
【0083】
実施例11
1-(7-(4-メトキシベンジル)-6-オキソ-6,7-ジヒドロ-1H-プリン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-カルボン酸
参考例27(4.48 g)の THF(55 mL)溶液に、水(27 mL)および 4mol/L 水酸化リチウム水溶液(27 mL)を加えた。反応混合物を50℃で18時間撹拌した。室温に放冷後、反応混合物に 2mol/L 塩酸(66 mL)を加え、室温で1時間撹拌した。生じた不溶物をろ取した。得られた固体を水で洗浄した後、減圧下、50℃で8時間乾燥し、表題化合物(3.87 g)を得た。
【0084】
実施例12
1-(7-(4-カルボキシベンジル)-6-オキソ-6,7-ジヒドロ-1H-プリン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-カルボン酸
参考例31(0.52 g)の THF(4.5 mL)溶液に、1mol/L 水酸化リチウム水溶液(2.2 mL)を加えた。反応混合物を室温で3時間撹拌した。反応混合物に水を加え、ジエチルエーテルで洗浄した。水層に1mol/L 塩酸(4.5 mL)を加え、生じた不溶物をろ取した。得られた固体を、減圧下、50℃で乾燥した。
得られた化合物(0.37 g)の THF(4.2 mL)溶液に、1mol/L 水酸化リチウム水溶液(4.2 mL)を加えた。反応混合物を室温で24時間撹拌した。反応混合物に水を加え、ジエチルエーテルで洗浄した。水層に1mol/L 塩酸(4.5 mL)を加え、生じた不溶物をろ取した。得られた固体を、減圧下、50℃で乾燥した。
得られた化合物(0.25 g)の THF(3.0 mL)溶液に、TFA(1.51 g)を加えた。反応混合物を室温で1時間撹拌した。生じた不溶物をろ取した。得られた固体を THF(20 mL)で洗浄した後、減圧下、乾燥し、表題化合物(0.21 g)を得た。
【0085】
実施例29
1-(9-(4-ヒドロキシベンジル)-6-オキソ-6,9-ジヒドロ-1H-プリン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-カルボン酸
参考例51(0.20 g)の THF(2.4 mL)および水(2.4 mL)懸濁液に、水酸化リチウム一水和物(0.10 g)を加えた。反応混合物を室温で18時間撹拌した。反応混合物に 1mol/L 塩酸(2.4 mL)を加えた。生じた不溶物をろ取した。得られた固体を水で洗浄した後、減圧下、50℃で乾燥し、表題化合物(0.14 g)を得た。
【0086】
実施例35
1-(9-(4-メトキシベンジル)-6-オキソ-6,9-ジヒドロ-1H-プリン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-カルボン酸
参考例53(1.00 g)の THF(8 mL)溶液に、水(6 mL)および 4mol/L 水酸化リチウム水溶液(6 mL)を加えた。反応混合物を50℃で17時間撹拌した。室温に放冷後、反応混合物に 2mol/L 塩酸(15 mL)を加え、生じた不溶物をろ取した。得られた固体を水で洗浄した後、減圧下、50℃で乾燥し、表題化合物(0.90 g)を得た。
【0087】
実施例75
1-(7-(4-(2-モルホリノエトキシ)ベンジル)-6-オキソ-6,7-ジヒドロ-1H-プリン-2-イル)-1H-ピラゾール-4-カルボン酸塩酸塩
参考例54b(0.10 g)の THF(0.9 mL)および水(0.6 mL)懸濁液に、水酸化リチウム(0.04 g)を加えた。反応混合物を60℃で72時間撹拌した。反応混合物に 1mol/L 塩酸(2.1 mL)および水を加えた。生じた不溶物をろ取した。得られた固体を水およびジエチルエーテルで洗浄した後、減圧下、50℃で乾燥し、表題化合物(0.07 g)を得た。
【0088】
実施例の化学構造式、物性値、及びPHD2阻害活性(試験例1参照)を以下の表に示す。
【0089】
【表8】
【0090】
【表9】
【0091】
【表10】
【0092】
試験例1 PHD2阻害試験
(1)ヒトPHD2184-418の発現・調製
GenBankアクセッションID:CAC42509で表されるタンパク質の184~418番のアミノ酸残基を含むヒトPHD2184-418を以下の方法で発現・調製した。
ヒトPHD2184-418の発現コンストラクトにN-末端ヒスチジンタグを組み込んだものをpET-30a(+)ベクターに導入し、配列を確認した。このベクターをBL21(DE3)株に導入し、抗生物質を含んだLB培地にて37℃で培養した。培養後、細胞溶解溶液を細胞に加え、超音波破砕により破砕懸濁した。破砕懸濁液を遠心し、上清をNiカラムを用いて精製し、ヒトPHD2184-418を得た。
(2)試験方法
ヒトHIF-1αの556~574番のアミノ酸残基(部分ペプチド)を含むHIF-1α556-574のN-末端にFITC-Ahxが組み込まれたヒトHIF-1α556-574(FITCラベル化HIF-1α556-574)を基質とした。FITCラベル化HIF-1α556-574を用いて、2-oxoglutarateと試験化合物(PHD阻害剤)との競合阻害をFITCラベル化HIF-1α556-574の蛍光偏光の変化により以下の方法で評価した。
酵素(ヒトPHD2184-418)及び基質を10 mM HEPES、150 mM NaCl、10μM MnCl2・4H2O、2 μM 2-oxoglutarate及び0.05% Tween-20を含んだアッセイ緩衝液(pH 7.4)で希釈した。試験化合物をDMSOで希釈した。試験化合物、ヒトPHD2184-418を384ウェルプレート(Corning、黒色、不透明底)にあらかじめ添加し、FITCラベル化HIF-1α556-574を添加することにより反応を開始した。37℃で60分間インキュベーションした後に、PHERAstar FSX(BMG Labtech)にて蛍光偏光(励起波長470 nm、蛍光波長530 nm)を測定した。各ウェルの蛍光偏光を測定し、試験化合物のヒトPHD2結合阻害活性を試験物質無添加群の値に基づいて計算した。
(2)結果
上述の表に示したように、本発明の化合物は、PHD2とHIF-1αとの結合を阻害した。したがって、本発明の化合物は、PHD2阻害剤として有用であることが明らかとなった。
【0093】
試験例2 大腸炎モデルにおける治療効果
(1)TNBS誘発大腸炎モデルラット
TNBSをラットの大腸内に投与することにより大腸局所的に炎症が惹起され、腸管内のバリア機能が破綻し、腸間膜の透過性が亢進することが知られている。そこで、試験化合物の経口投与による腸間膜の透過性抑制作用を薬効の指標として評価した。
(2)試験方法
8週齢のSLC:SD雄性ラット(日本エスエルシー)を用いた。ペントバルビタール麻酔下にて50%エタノールで調整した28 mg/mL TNBSを大腸内の肛門から8 cmの部位に300μL投与し、炎症を惹起させた。溶媒処置群には50%エタノールを300μL投与した。TNBSを投与する前に48時間絶食を行った。翌日から、0.05%メチルセルロース溶液で調製した試験化合物(3 mg/kg又は10 mg/kg)を1日1回経口投与し、計3日間投与した。投与3日後、試験化合物投与4時間後に50 mg/kg FITCを経口投与し、4時間後にイソフルラン麻酔下にて頸静脈から採血を行った。血清を遠心分離し、PHERAstar FSX(BMG Labtech)にて蛍光強度を検出することにより、腸間膜を介して循環血に透過したFITC濃度を測定した。試験化合物の腸間膜の透過性抑制率を試験物質無添加群の値を0、TNBS未処置群の値を100として計算した。
(3)結果
各試験化合物の投与量(Dose)及び腸間膜の透過性抑制率(%,平均値)(Inhibition)を以下に示す。
【表11】
TNBSの投与により亢進したFITCの腸管膜透過性は、本発明の化合物の投与により抑制された。したがって、本発明の化合物は、炎症性腸疾患の治療剤として有用であることが明らかとなった。
【0094】
試験例3 大腸組織における化合物濃度
(1)ラットPK試験
0.05%メチルセルロースで調製した試験化合物(3mg/kg/5mL)を非絶食下ラット(SD、8週齢、雄性、日本エスエルシー)に経口投与した。投与0.25、0.5、1、2、4、6及び8時間後に頸部静脈より採血し、イソフルラン麻酔下で開腹し、大腸を摘出した。遠位大腸5cm程度を採取して切り開き、摘出した大腸をディッシュ上で生理食塩水を用いて洗浄した。洗浄後、大腸を小ばさみでミンスし、その150mg程度をチューブに移した。チューブに100μL生理食塩水を添加し、混合物をシェイクマスター(1000rpm x 30分間)にてホモジナイズした。最終ボリュームとして、4倍量の生理食塩水を添加し、検体を調製した。大腸組織中と血漿中の試験化合物濃度を液体クロマトグラフィー質量分析(LC/MS)を用いた定量分析により測定した。
比較例として、US2015/0239889 (WO2014/030716)に実施例55として記載された化合物(Compound A)を用いた。
(2)大腸組織と血漿中における化合物濃度
下記表に示すように、本発明の化合物は血漿中濃度に比して、大腸組織における濃度が高いことが明らかとなった。したがって、本発明の好ましい化合物は、大腸組織に特異的に作用するPHD2阻害剤である。
【表12】
表中の記号は、以下の意味である。
Compound A:比較例
Cmax:試験化合物の経口投与における最高血漿中濃度(ng/mL)
AUC:血漿中試験化合物濃度‐時間曲線下面積(ng*min/mL)
Plasma:8時間後の血漿中試験化合物の濃度(ng/mL)
Colon:8時間後の大腸組織における試験化合物の濃度(ng/g)
C / P:上記ColonとPlasmaの比
【産業上の利用可能性】
【0095】
本発明の化合物又はその薬理学的に許容される塩は、炎症性腸疾患の治療剤として有用である。