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特許7348912付加製造にて物体を形成する方法、および物体を形成する装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-12
(45)【発行日】2023-09-21
(54)【発明の名称】付加製造にて物体を形成する方法、および物体を形成する装置
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/393 20170101AFI20230913BHJP
   B29C 64/205 20170101ALI20230913BHJP
   B29C 64/264 20170101ALI20230913BHJP
   B29C 64/106 20170101ALI20230913BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20230913BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20230913BHJP
   B33Y 70/10 20200101ALI20230913BHJP
   B22F 10/85 20210101ALI20230913BHJP
   B22F 12/44 20210101ALI20230913BHJP
   B28B 1/30 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
B29C64/393
B29C64/205
B29C64/264
B29C64/106
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y70/10
B22F10/85
B22F12/44
B28B1/30
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020553445
(86)(22)【出願日】2019-04-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-12
(86)【国際出願番号】 NL2019050209
(87)【国際公開番号】W WO2019199162
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2022-03-16
(31)【優先権主張番号】18166297.4
(32)【優先日】2018-04-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515124288
【氏名又は名称】ネーデルランツ オルガニサティー フォール トゥーゲパスト‐ナトゥールヴェテンシャッペリーク オンデルズーク テーエンオー
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブルーニング,ファビアン バーナード ジャック
(72)【発明者】
【氏名】マールデリンク,ハーマン ヘンドリクス
(72)【発明者】
【氏名】ゲルムス,ウィナンド クリスチャーン
【審査官】▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-075362(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02052693(EP,A1)
【文献】中国特許出願公開第105945280(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0189965(US,A1)
【文献】特開2017-185804(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B33Y 10/00-99/00
B22F 10/00-12/90
B28B 1/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構築材の複数の層を連続的に提供することと、前記層のそれぞれの1または複数のピクセルをそのプリント中に選択的に硬化させることと、を含む、付加製造にて物体を形成する方法であって、
支持面または先行する層上に第1構築材の第1層を提供することと、
層のデータに従って、前記第1層中の1または複数のピクセルを所定の線量の放射に選択的に曝露することと、を含む方法において、
前記層のデータに基づいて、後続の第2層の着目領域の輪郭と一致する、前記第1層中の1または複数の輪郭ピクセルを識別することであって、前記第2層の前記着目領域は、前記第1構築材とは異なる第2構築材を使用して提供される、識別することと、
前記選択的な曝露の前に、前記識別された輪郭ピクセルに対する放射線量を増加させることと、
を特徴とし、
前記選択的に曝露するステップは、前記増加させた放射線量を用いて前記1または複数の輪郭ピクセルを曝露することを含む、方法。
【請求項2】
前記第1層上に構築材の第2層を提供することであって、前記第2層は前記着目領域を含み、前記着目領域は前記層のデータに従って前記第2構築材をプリントすることで提供される、提供することと、
前記第2層中の1または複数のピクセルを硬化させることと、を更に含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記着目領域の前記輪郭は、
面積の少なくとも50%超が前記着目領域の境界の外側に位置するピクセル、もしくは、それらと一続きでありかつ前記着目領域の外側に位置するピクセルを含む、外側輪郭、または、
面積の少なくとも50%超が前記着目領域の境界の内側に位置するピクセル、もしくは、それらと一続きでありかつ前記着目領域の内側に位置するピクセルを含む、内側輪郭、のうちの少なくとも一方である、
請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記1または複数の輪郭ピクセルに加え、前記第2層中の前記着目領域と一致する前記第1層中の1または複数の填充ピクセルを識別することをさらに含み、
前記選択的に曝露するステップは、前記増加させた放射線量を使用して前記1または複数の填充ピクセルを曝露することをさらに含む、
請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1層中の前記1または複数のピクセルのうちの少なくとも1つが前記所定の線量の放射に選択的に曝露された後、前記少なくとも1つのピクセルの場所における酸素阻害層の厚さを測定するステップをさらに含む、
請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記酸素阻害層の前記厚さの前記測定は、前記少なくとも1つのピクセルの前記場所に放射ビームを照射して、前記放射ビームの反射した部分がもたらす干渉パターンを分析することで行われる、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記酸素阻害層の前記厚さの前記測定は、前記少なくとも1つのピクセルの前記場所における前記第1層の表面の高さ位置を測定し、前記測定された高さ位置を基準高さ位置と比較することで行われる、
請求項5に記載の方法。
【請求項8】
付加製造にて物体を形成する装置であって、
前記形成される物体を支持する支持面を提供するキャリアと、
前記キャリア上に構築材の複数の層を連続的に提供する構成とされたアプリケータと、
前記層それぞれの1または複数のピクセルをその適用中に選択的に硬化させる放射源と、を備え、
前記アプリケータは、前記支持面上または形成中の前記物体の先行する層上に、第1構築材の第1層を提供する構成とされ、
前記放射源は、層のデータに従って、前記第1層中の1または複数のピクセルを所定の線量の放射に選択的に曝露する構成とされた装置において、
前記装置がさらに、
前記層のデータに基づいて後続の第2層の着目領域の輪郭と一致する前記第1層中の1または複数の輪郭ピクセルを識別する構成とされた制御装置を備え、前記第2層の前記着目領域は、前記第1構築材とは異なる第2構築材を用いて提供され、
前記制御装置は、前記選択的な曝露の前に、前記識別された輪郭ピクセルに対する増加させた放射線量を決定する構成とされ、
前記放射源は、前記選択的な曝露中に、前記増加させた放射線量を用いて前記1または複数の輪郭ピクセルを曝露する構成とされた、ことを特徴とする装置。
【請求項9】
前記アプリケータは、前記着目領域を含む構築材の第2層を前記第1層上に提供し、および前記層のデータに従って前記第2構築材を適用することによって前記着目領域を提供する構成とされた、
請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記1または複数の輪郭ピクセルを識別するために、前記制御装置は、前記着目領域の前記輪郭を、
面積の少なくとも50%超が前記着目領域の境界の外側に位置するピクセル、もしくは、それらと一続きでありかつ前記着目領域の外側に位置するピクセルを含む、外側輪郭、または、
面積の少なくとも50%超が前記着目領域の境界の内側に位置するピクセル、もしくは、それらと一続きでありかつ前記着目領域の内側に位置するピクセルを含む、内側輪郭、のうちの少なくとも一方として判定する構成とされた、
請求項8または9に記載の装置。
【請求項11】
前記制御装置は、前記1または複数の輪郭ピクセルに加え、前記第2層中の前記着目領域と一致する前記第1層中の1または複数の填充ピクセルを識別する構成とされ、
前記放射源は、前記増加させた放射線量を用いて前記1または複数の填充ピクセルを選択的に曝露する構成とされた、
請求項8~10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記第1層の前記1または複数のピクセルのうちの少なくとも1つの場所における酸素阻害層の厚さを、前記少なくとも1つのピクセルが前記所定の線量の放射に曝露された後で測定するセンサをさらに備える、
請求項8~11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記酸素阻害層の前記厚さを測定する前記センサは、検知ビームを前記少なくとも1つのピクセルの前記場所に照射する検知放射源と、前記検知ビームの1または複数の反射した部分を受ける受信部と、を含み、
前記制御装置は、前記検知ビームの前記反射した部分にて提供される干渉パターンを分析する構成とされた、
請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記酸素阻害層の前記厚さを測定する前記センサは、前記少なくとも1つのピクセルの前記場所における前記第1層の表面の高さ位置を測定するセンサを含み、
前記制御装置は、前記酸素阻害層の前記厚さを判定するために、前記測定された高さ位置を基準高さ位置と比較する構成とされた、
請求項12に記載の装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、構築材の複数の層を連続的に提供することと、層それぞれの1または複数のピクセルをそのプリント中に選択的に硬化させることとを含む、付加製造にて物体を形成する方法であって、支持面または先行する層上に第1構築材の第1層を設けることと、層のデータに従って、第1層中の1または複数のピクセルを所定の線量の放射に選択的に曝露することとを含む、方法を対象とする。
【0002】
さらに、本明細書は、付加製造にて物体を形成する装置であって、形成される物体を支持する支持面を有するキャリアと、キャリア上に構築材の複数の層を連続的に提供する構成とされたアプリケータと、層それぞれの1または複数のピクセルをその適用中に選択的に硬化させる放射源と、を備え、アプリケータは、支持面上または形成中の物体の先行する層上に、第1構築材の第1層を設ける構成とされ、放射源は、層のデータに従って、第1層中の1または複数のピクセルを所定の線量の放射に選択的に曝露する構成とされた装置を対象とする。
【0003】
またさらに、本明細書は、上記で規定する装置の使用、上記で規定する方法を用いて形成された物体、およびコンピュータプログラム製品を対象とする。
【背景技術】
【0004】
3Dプリントなどの付加製造工程の普及がこの10年間で非常に急速に進んだ。この技術は多くの異なる産業用および家庭用の適用分野に活路を見い出しており、依然として絶えず発展し続けている。発展している分野のうちの1つは、単一の物体をプリントするために様々な材料が使用される多材料体の製造に関するものである。本明細書は、製品に第2材料の構造が埋め込まれている3Dプリントされた多材料部品の作製に関する。
【0005】
多材料体の製造中にしばしば直面する問題は、硬化の様々な段階または状態にある異なる材料間の相互作用に関するものである。この問題は、例えばステレオリソグラフィ(SLA)、デジタル光処理(DLP)、または類似の技術にて作製されるポリマ製品に導電トラックを埋め込む特定のケースを用いて説明されるが、同様のことが、樹脂で作製される製品に適用される他の材料にも当てはまる。
【0006】
導電性材料のトラック(押出成形、インクジェット、レーザ誘起前方転写(LIFT)、またはその他)が、SLAプリント製品に適用されるとき、下の表面の濡れによって、表面に沿って導電性材が提供されるべきでない場所まで拡散する場合がある。これにより、付加される材料の形状/外形の制御が基本的に困難となる結果、所望する外形にならなくなり、また導電性材の場合には、他の導電トラックとの短絡が生じる。これが生じる理由は、特に、硬化した表面の上に、酸素阻害に起因してポリマ樹脂の薄い「濡れ(wet)」層が残留するからである。この樹脂の「濡れ」層、すなわち酸素阻害層によって導電性ペーストの濡れが過度に良好になる。
【0007】
銀ペーストなどの懸濁液の場合は、濡れが大きいと未硬化の樹脂中の金属粒子の分散が大きくなり、上述した問題が悪化する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した欠点を回避すること、ならびに短時間で正確に多材料体の形成を可能にする付加製造の方法および装置を提供することが、本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的のために、本明細書では、構築材の複数の層を連続的に提供することと、層それぞれの1または複数のピクセルをそのプリント中に選択的に硬化させることとを含む、付加製造にて物体を形成する方法であって、支持面または先行する層上に第1構築材の第1層を提供することと、層のデータに従って、第1層中の1または複数のピクセルを所定の線量の放射に選択的に曝露することと、を含む方法において、層のデータに基づいて、後続の第2層の着目領域(featured region)の輪郭と一致する、第1層中の1または複数の輪郭ピクセルを識別することであって、第2層の着目領域は第1構築材とは異なる第2構築材を用いて設けることによる識別することと、上記選択的な曝露の前に、識別された輪郭ピクセルに対する放射線量を増加させることと、を特徴とし、選択的に曝露するステップは、増加させた放射線量を用いて1または複数の輪郭ピクセルを曝露することを含む、方法、が提供される。
【0010】
本発明は、増加させた放射線量を用いることによって、より完全に硬化した状態になるようにピクセルの硬化レベル(すなわちピクセルの硬化の良好程度)を上げることができる、という洞察に基づいている。この場合、ピクセル硬化の良好程度(すなわち硬化レベル)に応じて、酸素阻害層が減少または除去されることになる。表面の濡れに伴って経験される不具合を引き起こすものは酸素阻害層であるため、酸素阻害層の減少または不在によって、下にある層の表面に沿った第2構築材のさらなる拡散が防止される。よって、このことにより、第2構築材を用いて着目領域を正確にプリント可能になる。
【0011】
第1層の表面全体を完全に硬化させることによっても、酸素阻害層を完全に排除するための同じ効果を達成できる可能性がある。しかしながら、このことは他の欠点を生じさせるため、通常はやはり望まれていないことを、発明者らは認識している。連続する第2層中の、第1構築材料の次の層が適用される領域において、第1構築材の完全な硬化が行われると、接着がより不十分となる結果になる。このため、これら領域(すなわち着目領域の外部の領域)では接着が不十分となり、その結果、脆弱なスポットが生じることになる、すなわち層が剥離もしくは裂開する可能性、または衝撃耐性が低くなる可能性がある。したがって、第1層全体を完全に硬化させることによって、完全性の問題が生じる。また、完全な硬化は、さらに色の相異をもたらす場合があるが、これは通常望まれていない。
【0012】
したがって、本発明によれば、システムが利用可能な(例えば、メモリからまたはメモリが受信するデータ信号から)層のデータに基づいて、第1層中の1または複数の輪郭ピクセルが判定される。これらの輪郭ピクセルは、後続の第2層の着目領域の輪郭と一致するように識別される。(適用される第2層の下にある)第1層中のこれらの輪郭ピクセルは、増加させた放射線量に曝露され、この結果、それらの硬化レベルが向上、または輪郭ピクセルが完全に硬化される。このことに起因して、酸素阻害層が著しく削減、またはこれらのピクセル上から無くなる。続いて、第2層がプリントされるときは、硬化した輪郭ピクセルにて第2構築材の拡散が止められる。このことにより、第1層を完全に硬化させることの欠点も克服される。
【0013】
いくつかの実施形態によれば、方法は、第1層上に構築材の第2層を提供することであって、第2層は着目領域を含み、着目領域は層のデータに従って第2構築材をプリントすることで提供されることによる提供することと、第2層中の1または複数のピクセルを硬化させることと、を更に含む。材料は、材料を単に乾燥させることによって(例えば、空気中または空気ブロワもしくはガスブロワを用いて、オーブン中またはヒータを用いて、あるいは別の好適な手法で)硬化できる。また好ましくは、材料は、好適な線量の放射に選択的に曝露させることで硬化できる。所望のレベルの硬化を達成するために必要な放射の線量は、材料によって異なることに留意すべきである。そのため、第2構築材が必要とする放射線量は、第1層のピクセル用の標準的な放射線量とは異なる。また、波長または適用様式(例えば、パルス状もしくは連続的)などの他の放射特性も異なる。しかしながら、当業者は、所望の硬化レベルを達成するために必要な各構築材の放射線量および放射特性を判定できると考えられる。
【0014】
着目領域の輪郭、および第2層の下にある第1層中の輪郭ピクセルとして選択されるべきピクセルの識別は、付加製造装置の制御装置によって判定される。1または複数の輪郭ピクセルを判定するために、様々な異なる方法を適用できる。例えば、いくつかの実施形態によれば、着目領域の輪郭は、以下のうちの少なくとも1つである:自体の表面積の少なくとも50%超が着目領域の境界の外側に位置するピクセル、もしくは、それらと一続きでありかつ着目領域の外側に位置するピクセルを含む、外側輪郭、または、自体の表面積の少なくとも50%超が着目領域の境界の内側に位置するピクセル、もしくは、それらと一続きでありかつ着目領域の内側に位置するピクセルを含む、内側輪郭。着目領域の境界、および、どのピクセルがそれらと一致または部分的にまたは完全にその内側または外側に位置するかは、付加製造システムが利用可能な層のデータに基づいて判定される。
【0015】
本発明のさらなる実施形態によれば、方法は、1または複数の輪郭ピクセルに加え、第2層中の着目領域と一致する第1層中の1または複数の填充ピクセル(fill-in pixel)を識別することをさらに含み、選択的に曝露するステップは、増加させた放射線量を用いて1または複数の填充ピクセルを曝露することを更に含む方法、が提供される。填充ピクセルは、輪郭内に位置、すなわち輪郭にて囲まれるピクセルである。これらの実施形態では、着目領域の下にある全ピクセルを増加させた放射線量に曝露して、酸素阻害層を削減または除去することによって、それらの濡れ性を改善する。第2構築材は、第1層が提供する支持表面上へのプリント中に、プリント中のピクセルを越えて拡散することがない。実際、このことにより、第1層上にプリント中の第2構築材のプリント正確度の改善という、同じ効果が達成される。この結果、着目領域の形状がより正確にプリントされる。
【0016】
いくつかの実施形態によれば、第1層中の1または複数のピクセルのうちの少なくとも1つが所定の線量の放射に選択的に曝露された後、方法は、少なくとも1つのピクセルの場所における酸素阻害層の厚さを測定するステップを更に含む。システムの制御装置は、酸素阻害層の測定された厚さを用いて、第2構築材を第1層の上に正確にプリント可能にする所望の硬化レベルを達成するために放射線量をどの程度増加させるべきかを、より正確に判定できる。そのような測定は、ピクセルごとに、または第1層の全部もしくは一部に対して平均として行うことができる。
【0017】
これらの実施形態のうちのいくつかによれば、酸素阻害層の上記厚さの測定は、少なくとも1つのピクセルの場所に放射ビームを当て、放射ビームの反射した部分がもたらす干渉パターンを分析することで行われる。例えば、レーザビームを照射し、酸素阻害層と周囲空気との間の界面で一度および酸素阻害層と第1層の硬化した第1構築材との間の界面で一度の複屈折にて引き起こされる干渉パターンを得ることができる。各界面が放射ビームの所定の部分を反射することになり、これらの屈折した部分を光センサで受けて干渉パターンを取得でき、この干渉パターンから酸素阻害層の厚さを正確に判定できる。測定は、構築材をそれ以上硬化させることなく瞬間的に行うことができる。追加または別の方法として、構築材の反応がより小さく硬化しないような放射波長を適用できる。分かるように、ある実施形態では、この方式での厚さの測定は、選択的曝露のステップ中に、第1構築材を硬化させるための放射を用いて行うこともできる。
【0018】
別の実施形態では、酸素阻害層の上記厚さの測定は、少なくとも1つのピクセルの場所における第1層の表面の高さ位置を測定すること、および、測定された高さ位置を基準高さ位置と比較することで行われる。そのような予想される高さ位置は、メモリから取得、または、計算によって「オンザフライ」、もしくはシステムが受信したデータ信号から、システムに提供される。
【0019】
本発明の第2態様では、付加製造にて物体を形成する装置であって、形成される物体を支持する支持面を提供するキャリアと、キャリア上に構築材の複数の層を連続的に提供する構成とされたアプリケータと、層それぞれの1または複数のピクセルをその適用中に選択的に硬化させる放射源と、を備え、アプリケータは、支持面上または形成中の物体の先行する層上に、第1構築材の第1層を提供する構成とされ、放射源は、層のデータに従って、第1層中の1または複数のピクセルを所定の線量の放射に選択的に曝露する構成とされた装置において、さらに、装置は、層のデータに基づいて後続の第2層の着目領域の輪郭と一致する第1層中の1または複数の輪郭ピクセルを識別する構成とされた制御装置を備え、第2層の着目領域は、第1構築材とは異なる第2構築材を用いて提供され、制御装置は、上記選択的な曝露の前に、識別された輪郭ピクセルに対する増加させた放射線量を決定するように更に構成され、放射源は、上記選択的な曝露中に、増加させた放射線量を使用して1または複数の輪郭ピクセルを曝露する構成とされたことを特徴とする装置、が提供される。
【0020】
本発明の第3態様では、第1態様に係る方法、または第2態様に係る装置を用いて製造される物体であって、物体は硬化した第1構築材の1または複数のピクセルを備える第1層を少なくとも含み、後続の第2層の着目領域の外側輪郭または内側輪郭と一致する、第1層中の少なくとも1または複数の輪郭ピクセルは、増加させた放射線量を用いて硬化され、さらに物体は第2層を含み、第2層は着目領域を含み、着目領域は第2構築材を含む物体、が提供される。
【0021】
本発明の第4態様では、付加製造装置の制御装置システムのメモリの搭載に適したコンピュータプログラム製品であって、付加製造にて第3態様に係る物体を製造するために第2態様に係る方法を用いるように適合されたコンピュータプログラム製品が提供される。
【0022】
本発明は、添付の図面を参照して、いくつかのその具体的な実施形態の説明にてさらに明らかになる。詳細な説明は、本発明の可能な実装形態の例を提供するが、範囲に含まれる実施形態のみを説明するものと見なされるべきではない。本発明の範囲は特許請求の範囲にて規定され、明細書は本発明を制約することのない例示的なものと見なされるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の実施形態に係る装置を概略的に示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る代替の装置を概略的に示す図である。
図3】酸素阻害層を含む硬化した第1構築材上に第2構築材をプリントするときに直面する問題、および本発明が提供する様々な解決方法を概略的に示す図である(A~C)。
図4A】第1実施形態に係る様々な方法ステップを示す図である。
図4B】第1実施形態に係る様々な方法ステップを示す図である。
図4C】第1実施形態に係る様々な方法ステップを示す図である。
図5A】第2実施形態に係る様々な方法ステップを示す図である。
図5B】第2実施形態に係る様々な方法ステップを示す図である。
図5C】第2実施形態に係る様々な方法ステップを示す図である。
図6】阻害層の厚さを検知するセンサを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、多材料の有形物8を層状に製造するための本発明の実施形態に係る装置1を概略的に示す。装置1は、回転可能な軸10を駆動するアクチュエータ12にて垂直(z)方向に上下に移動できる並進可能なキャリアプラットフォーム4からなる。分かるように、上下の動きは異なる方式でも、例えば液圧式でもまたは異なるタイプのアクチュエータでも達成される。キャリアプラットフォーム4を並進できる方向(z)は、両方向矢印11で示されている。
【0025】
使用時に、有形物8は、キャリアプラットフォーム4上に一層ずつ作り出される。この目的のため、第1アプリケータ36-1を介して第1構築材5を適用できる。第2構築材6を適用するための追加のアプリケータ36-2が任意選択的に存在する。またさらに、所望であれば、追加の構築材を提供するアプリケータ36-1および36-2と同じまたは類似のタイプの追加のアプリケータ(図1の実施形態には存在しない)が存在してもよい。本説明では、適用可能な異なる構築材は特定の数に限定されない。
【0026】
第1構築材5および第2構築材6は、十分な量のエネルギを適用することで硬化する液体または粉体でもよい。例えば、構築材5,6は、光放射を照射することで硬化する樹脂を含んでもよい。そのような樹脂を硬化させるためには、樹脂のボクセルを硬化させるために十分な量の光エネルギを局所的に適用しなければならない。これは、例えば好適な波長、強度、および/または持続時間の光放射のレーザビームなどの光ビームにて適用される。構築材5,6のボクセルを硬化させるために必要なエネルギの総量または放射線量は、構築材の種類および各ボクセルの体積(すなわち各ピクセルの表面積層の厚さ×各ピクセルの表面積)に依存する。分かるように、構築材5,6のボクセルを硬化させるために十分な放射線量を適用するために、通常は、光パルスの持続時間、レーザビームの強度、および/または放射の波長を変えることができる。
【0027】
構築材5,6は、粉末状の金属材もしくはセラミック材、または機能剤(例えば着色剤)などのさらなる構築材を含むことができる。例えば、構築材5,6は、樹脂の懸濁液または溶剤、および粉末状のさらなる構築材でもよい。例えば、金属粉末を樹脂と均一、かつ樹脂中の金属粉末の濃度が十分となるように混合してもよい。これにより、樹脂中に金属粉末を融着、焼結、または溶融し、樹脂の残渣を除去することで金属物を層状に製造可能となる。
【0028】
図1は、キャリッジ20上にアプリケータ36-1,36-2と、センサ22と、曝露システム(組み合わされた要素18,21,25)とを含む、有形物8を構成する層が上に適用されるキャリアプラットフォーム4を示すに過ぎない。任意選択的に、図1のプラットフォーム4は、構築材5を含む容器(図示せず)の内側に位置してもよく、この場合、物体8は液中に置かれる。物体8を一層ずつ作り出すため、キャリアプラットフォーム4は、物体8の連続した層が生成されるごとに下方に移動する。
【0029】
プラットフォーム4を1つの層の高さに沿って下方に移動させた後、アプリケータ36-1,36-2は、新しい未硬化の構築材5,6の次の層を、先に構築された物体8の層の上に選択的に適用し、これにより、均一な厚さを有する構築材の液体層が提供される。アプリケータ36-1、36-2のそれぞれは、構築材リザーバ39-1,39-2から、ダクト37-1,37-2を介して構築材5,6を受け取る。各材料5,6を適用するために、メモリ16から制御装置15によって各層9の層のデータが取得される。層のデータは、各層9についてどこに第1構築材5を提供すべきか、およびどこに第2構築材6を提供すべきかを指定するピクセルアレイとして構築される。例えば、層のデータは、そのピクセルごとに、層9の各ボクセルを形成するために、第1構築材5を適用すべきか、または第2構築材6(もしくは任意選択的に、更なる構築材料)を適用すべきかを指定する。制御装置は、この層のデータに応じて、構築材5,6のいずれかを提供するようにアプリケータ36-1,36-2を制御する。
【0030】
図1に示すように、装置1は、光放射源18と光学要素21,25とをさらに有し、構築材5,6を選択的に曝露して物体8の層の形成を可能にする曝露システムをさらに備える。図1の装置1の光放射源18は、キャリッジ20上の曝露ヘッドにレーザビーム19を提供するレーザユニット18である。曝露ヘッドは、レーザビーム19を回転可能な角柱プリズム25上へ反射するミラー21を備える。回転可能な角柱プリズム25は、例えば矢印26が示す方向に回転できる。別の方法として、ビーム19を制御可能に反射するために、角柱プリズム25の代わりに角柱ミラーや異なるスキャナ要素を適用できる。
【0031】
キャリッジ20は、プラットフォーム4(および/またはその上の有形物8)に対して、両矢印28が示す方向に移動する。これにより、第1構築材5および第2構築材6を、有形物8の先行する層9上に、選択的に適用可能となる。角柱プリズム25を、例えば矢印26が示す方向に回転させることで、光ビーム19を物体8の表面の端から端へ所望の方向に走査できる。制御装置15は、第1構築材5または第2構築材6が選択的に適用されるように、キャリッジ20の動きならびにアプリケータ36-1,36-2の動作を制御する。さらに、制御装置15は、光放射線19への未硬化の樹脂(5または6)の選択的な曝露を、構築材が選択的に硬化するように制御する。その選択的な曝露を制御するために、制御装置15は、メモリ16から取得した層のデータを用いて、その硬化のためにどのピクセルを光放射に曝露すべきか識別する。
【0032】
構築材を硬化させるために必要な放射線量は、構築材の種類、ボクセルの体積(すなわち、層9の各ピクセルのサイズおよび厚さ)、ならびに所望の硬化レベルに依存する。通常は、付加製造工程にて構築材を硬化させるために用いられる放射線量は、異なる層が後で層間剥離することを防止、および色の相異を防止するように最適化される。したがって、各ボクセルは、完全に硬化されるのではなく、構築材の次の層と十分に結合できるレベルまで硬化される。ピクセル当たりの適正な放射線量を計算するために必要なデータは、システムのメモリ16から取得される。別の方法として、制御装置15は、提供されたアルゴリズムを用いて、放射線量をオンザフライで計算してもよい。
【0033】
上述のように、例えば、構築材5の各ボクセルが不完全に硬化する結果、硬化した構築材5の上に酸素阻害層7が存在する(図1では見えない)。この酸素阻害層7に起因して、構築材5の最上層の表面の濡れ特性が過度に良好になる。阻害層7上に第2構築材6を適用すれば、物体8の表面の残りの部分に沿って構築材5の望まれない拡散が生じる。これを防止するため、本発明によれば、適用中の現在の層の下にある層中のピクセルのうちのいくつかが、酸素阻害層7を排除するために、より高い硬化レベルまで選択的に硬化される。より詳しくは、以下にさらに説明するように、制御装置15は、現在の層の硬化中に、現在の層中のどのピクセルが次の層中の着目領域と一致するかを判定する。次の層中の着目領域は、次の層において第2構築材6(または更なる構築材)が適用される領域である。次いで、少なくとも着目領域の輪郭と一致するピクセルが、より高レベルの硬化まで硬化させるものと識別される。この後、これらの識別されたピクセルの放射線量を例えば完全な硬化が得られるように増加させ、この増加させた放射線量をこれらのピクセルに選択的に適用して、酸素阻害層7が局所的に減少または除去されるようにする。次の層が適用されるときに、完全に硬化したピクセル上に酸素阻害層が局所的に存在しないことに起因して、第2構築材6の拡散は、これらの輪郭を越えて生じない。
【0034】
各ピクセルに適用させる必要な放射線量を決定するため、制御装置15は、センサ22からセンサ読取値を受信する。センサ22は、酸素阻害層7の厚さを測定する。酸素阻害層の厚さは構築材の硬化レベルを示し、所定のピクセルの完全な硬化が得られるように増加させる放射線量の正確な決定を可能にする(または、硬化レベルまで、もしくは阻害層における硬化は問題にならない)。センサ22は、例えば酸素阻害層17の厚さを示す干渉パターンを取得できる、さらなるレーザビームにて構成されてもよい。
【0035】
図2は、有形物8を層状に製造する代替の装置29を示す。図2に示す装置では、有形物8の層9が可動キャリアプラットフォーム30に取り付けられ、製造される物体8は、製造中にそこから懸架される。キャリアプラットフォーム30は、アクチュエータ33にて上下に移動できる。アプリケータ36-1,36-2,36-3は、様々な構築材(例えば第1構築材5)を含む層を、ローラ40-1,40-2にて有形物8の下に移動できる可撓性シート35に適用される。プラットフォーム30は、物体8の下にある層の移動中に、この層が移動している間、この層と有形物8の先行する層とが接触することを防止するために、上方に少しだけ移動できる。可撓性シート35は、例えば透明でもよく、または、レーザユニット18が提供するレーザビーム19の放射波長に対して少なくとも透過性でもよい。ここで、構築材(例えば第1構築材5,第2構築材6,第3構築材)の選択的な曝露中、レーザビーム19は、ミラー21で反射され、回転可能な角柱プリズム25またはミラーもしくはまたは他の偏向手段を用いる類似の対処手段に通過される。曝露ヘッドを含むキャリッジ20を、矢印28が示す方向に移動させることで、生成される表面層を端から端へ走査する動作によって、所望の曝露パターンに従った選択的な曝露が可能になる。
【0036】
図2に示す3つのアプリケータ36-1,36-2,36-3は、それぞれダクト37-1,37-2,および37-3を介して、3つのリザーバ39-1,39-2,39-3と接続される。構築材リザーバ39-1には、第1構築材5が収容される。構築材リザーバ39-2には、第2構築材6が収容される。構築材リザーバ39-3には、第3構築材が収容される。アプリケータ36-1~36-3は、制御装置15によって、メモリ16から取得された層のデータに基づいて、所望の構築材を選択的に適用するように制御される。また、制御装置15は、キャリッジ20、ならびに曝露ヘッドの要素、例えば光源18および角柱プリズム25の動作も制御する。
【0037】
図3A図3Cは、酸素阻害層を含む硬化した第1の構築材の上に第2構築材をプリントするときに直面する問題、および、本発明が提供する様々な解決法を、概略的に示す。図3Aでは、ステップ1において、先に硬化した第1層は、第1構築材5(材料A)を含んで示され、この上には硬化後に酸素阻害層7が残っている。続くステップ2において、第2構築材6(材料B)が第1層の上に適用される。酸素阻害層7が存在することに起因し、ステップ3に示すように、第2構築材6は、第1層の表面に沿って拡散する。よって、ステップ4において、第2構築材6の形状は、意図したよりも遥かに大きい。
【0038】
図3Bに示す解決方法は、本発明によれば、次の(プリントされることになる)第2層中の着目領域と一致する第1層の表面58上の領域60を判定することを提案する。実際に、図3Bの解決方法よれば、第2層中のこの着目領域と一致するピクセルは全て、領域60の一部であるとして識別される。ピクセルを構成する領域60は、構築材料5を完全に硬化させように増加させた放射線量を用いて硬化される。したがって、酸素阻害層7は、領域60の硬化後は存在しない。酸素阻害層7は、構築材5を硬化するように計算された通常の放射線量を使用して硬化される、表面58の残り部分上にのみ存在する。次いで、ステップ2において、構築材5の追加の硬化に起因して、濡れが局所的に酸素阻害層7よりも小さくなり、第2構築材6を拡散させることなくプリント可能になる。よって、第2構築材6は、図3Bのステップ2に示すように、それがプリントされる場所に留まる。
【0039】
実際に、図3Cに示すように、本発明の解決方法は僅かに異なり、後続の第2層中の着目領域と一致する領域60の輪郭61のみを判定することで適用されてもよい。このため、図3Cに示すように、制御装置は、まず最初に、後続の第2層の着目領域と一致する領域60の輪郭61を判定する。制御装置は、輪郭61を構成するピクセルを識別する。これは(図3Cに示す)領域60の外側輪郭でも、領域60の内側輪郭でも、または着目領域の境界がピクセルのエリアを横切るときに通る任意のピクセルでもよい。これらのピクセルが判定されると、輪郭を構成するピクセル61は、酸素阻害層7がこれらの輪郭61内に発生しないように、増加させた放射線量を用いて硬化される。第2構築材6が第1構築材5の上に適用されるとき、図3Cのステップ2に示すように、輪郭の濡れが低減したことに起因して、第2構築材6は、着目領域(第1層中の領域60上の領域)内に留まる。
【0040】
図4A図4Cに従いステップごとの説明を行う。図4Aには、有形物8の最後に硬化した層9が示されている。層9の上に、第1構築材5の新しい層nが適用されている。新しい層nは、ボクセル45に大まかに分割され、その上側表面は、付加製造システムのメモリ中の指定された層のデータのピクセルと一致するピクセルを形成している。制御装置15は、ピクセル47ごとに、ピクセル47をその対応するピクセルの所望の硬化レベルまで硬化させるために必要な放射線量を決定する。例えば、そのような放射線量は、制御装置のメモリ16中のその層のデータで指定される。別の方法として、放射線量は、制御装置15にてオンザフライで決定される。更なる代替として、システムは、層の厚さに関して最適化された構築材当たりの標準的な放射線量を適用してもよく、またより高い硬化レベルを達成するために、この標準的な放射線量を、増加させた放射線量を必要とするピクセル47について計算または取得された量だけ増加させてもよい。図4Aでは、ピクセル47のそれぞれについて、放射線量45,45’が、層nの上方にあるバーによって概略的に示されている。ピクセル47が存在するものは、より低い放射線量45を受け、ピクセル47がまた存在するものは、増加させた放射線量45’を受ける。
【0041】
実際に、より高い放射線量45を受けるピクセルは、第2構築材6が適用される後続の第2層(層n+1)中の着目領域を形成するピクセルと一致するピクセルである。これが図4Bに示されている。図4Bでは、より高い線量の放射45’を受けたピクセル47がより高いレベルまで硬化されて参照符号5’で示されている。これらのピクセル上には酸素阻害層7は存在しない。この結果、図4Cに示すように、層n+1が適用されるとき、完全に硬化した領域5’の上に適用された第2構築材6は、表面に沿って拡散することがない。
【0042】
輪郭ピクセルを増加させた線量45’に曝露するだけで、同じ効果を達成できる。図5A図5Cは、この代替の実施形態を示す。この場合、着目領域の内側輪郭と一致するピクセルが、増加させた放射線量45’に曝露される(図5Aを参照)。図5Bに示すように、着目領域の輪郭を構成する特定のピクセルだけが完全に硬化し、完全に硬化した構築材料5’を含んでいる。酸素阻害層7は、層nの表面上のそれ以外の場所に存在する。図5Cは、層n+1における新しい第1構築材5および新しい第2構築材6の適用を示す。図5Cに示すように、第2構築材6は、着目領域の輪郭を横切って拡散することがない。
【0043】
図6は、阻害層の厚さを検知するセンサ22を概略的に示す。硬化した材料5上の酸素阻害層の厚さを測定することにより、材料を過剰に硬化させずに酸素阻害層を排除するために必要な増加させた放射線量の、より正確な決定が可能になる。酸素阻害層7を測定するために、センサ22は、硬化した材料5に照射するレーザビーム54を提供するレーザ50を備える。レーザビーム54の第1部分55は、酸素阻害層7と周囲の空気との間の界面で反射される。この第1部分55は、光センサ51に向けて反射される。第2部分56は、酸素阻害層と硬化した材料5との間の界面で反射される。この部分56もまた、光受信部51に向けて反射される。反射した部分55,56の大部分は、光受信部51の表面上に干渉パターンを生成する。この干渉パターンを分析することで、酸素阻害層7の厚さの正確な判定が可能になる。この情報は、第1構築材5を完全に硬化させるためにこれに適用されるべき絶対放射線量、または、第1構築材5を完全に硬化させて酸素阻害層を排除するために、標準的な放射線量に加えて必要な、追加の放射線量、のいずれかを決定するために使用される。
【0044】
本発明について、そのいくつかの具体的な実施形態に着目して記載した。図示するおよび本明細書に記載する実施形態は、例示の目的のみが意図されており、本発明を制約することは決して意図していないが分かるであろう。本発明の動作および構造は、前述の記載およびそこに添付された図面から明らかになると考えられる。本発明が本明細書に記載したどの実施形態にも限定されず、および、添付の特許請求の範囲の範囲内と当然見なされる修正が可能であることは当業者に明らかであろう。また、運動学的置き換えが本来的に開示されていると見なされ、それらは本発明の範囲内にあるものとする。またさらに、必要、所望、または好ましいと見なされる場合には、開示される様々な実施形態の構成要素および要素のうちの任意のものを、特許請求の範囲にて規定されている本発明の範囲から逸脱することなく、組合せできるか、または他の実施形態に組込みできる。
【0045】
特許請求の範囲において、どの参照記号も特許請求の範囲を限定すると解釈されるべきではない。用語「備える」および「含む」は、本明細書または付属の特許請求の範囲にて使用される場合、排他的または網羅的な意味ではなく、むしろ包括的な意味として解釈されるべきである。よって、「備える」という表現は本明細書で使用される場合、いずれかの請求項に列挙されるもの以外の他の要素またはステップの存在を除外しない。さらに、単語「a」および「an」は、「ただ1つ」に限定されると解釈すべきではなく、代わりに「少なくとも1つ」を意味するために使用され、複数を除外しない。具体的または明示的に記載または特許請求されていない特徴が、本発明の範囲内でその構造中に追加的に含まれてもよい。「・・・手段」のような表現は、「...のように構成された要素」または「・・・ように構築された部材」として読むべきであり、開示する構造の等価物を含むと解釈するべきである。「非常に重要」、「好ましい」、「特に好ましい」等の表現の使用は、本発明を限定することを意図していない。一般に、特許請求の範囲にて判定される本発明の精神および範囲から逸脱することなく、当業者の裁量において追加、削除、および修正を行うことができる。本発明は、その他の点では本明細書に具体的に記載したように実施でき、付属の特許請求の範囲にてのみ限定される。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図5C
図6