(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-12
(45)【発行日】2023-09-21
(54)【発明の名称】バックル装置
(51)【国際特許分類】
B60R 22/28 20060101AFI20230913BHJP
B60R 22/26 20060101ALI20230913BHJP
A44B 11/25 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
B60R22/28 107
B60R22/26
A44B11/25
(21)【出願番号】P 2021138398
(22)【出願日】2021-08-26
【審査請求日】2022-08-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 隆二
(72)【発明者】
【氏名】水野 義雄
(72)【発明者】
【氏名】平子 豊
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-125010(JP,A)
【文献】特開2011-037325(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0225644(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0319361(US,A1)
【文献】特開2017-159738(JP,A)
【文献】特開2011-245950(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 22/28
B60R 22/26
A44B 11/25
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗員に装着されるウェビングに設けられるタングが係合されるバックル本体と、
前記バックル本体に先端側が連結される連結部材と、
前記連結部材が基端側から巻取られる巻取軸と、
前記連結部材の前記巻取軸からの引出しを制限可能にされ、変形されて前記連結部材の前記巻取軸からの引出しを許容することで前記バックル本体の延出が許容される制限部材と、
前記連結部材の前記巻取軸からの引出しを制限可能にされ、前記連結部材の前記巻取軸からの引出しの許容が開始される際に変形されて前記連結部材の前記巻取軸からの引出しを許容し、破断されて前記連結部材の前記巻取軸からの引出しを許可する破断部と、
を備えるバックル装置。
【請求項2】
回転が規制され、前記破断部が設けられる規制部材を備える請求項1記載のバックル装置。
【請求項3】
前記制限部材が係止され、前記破断部が設けられる係止体を備える
請求項1記載のバックル装置。
【請求項4】
前記巻取軸を支持し、前記破断部が設けられる支持体を備える
請求項1記載のバックル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バックル本体と巻取軸とが連結部材を介して連結されるバックル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載のバックル装置では、バックル本体にウェビングの先端側が連結されると共に、ウェビングが基端側からスプールに巻取られており、トーションシャフトが、スプールに連結されて、ウェビングのスプールからの引出しを制限する。さらに、トーションシャフトが、変形されて、ウェビングのスプールからの引出しを許容することで、バックル本体の延出が許容される。
【0003】
ここで、このようなバックル装置では、ウェビングのスプールからの引出しの許容が開始される際のウェビングの引出許容荷重を大きくできるのが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事実を考慮し、連結部材の巻取軸からの引出しの許容が開始される際の連結部材の引出許容荷重を大きくできるバックル装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様のバックル装置は、乗員に装着されるウェビングに設けられるタングが係合されるバックル本体と、前記バックル本体に先端側が連結される連結部材と、前記連結部材が基端側から巻取られる巻取軸と、前記連結部材の前記巻取軸からの引出しを制限可能にされ、変形されて前記連結部材の前記巻取軸からの引出しを許容することで前記バックル本体の延出が許容される制限部材と、前記連結部材の前記巻取軸からの引出しを制限可能にされ、前記連結部材の前記巻取軸からの引出しの許容が開始される際に変形されて前記連結部材の前記巻取軸からの引出しを許容し、破断されて前記連結部材の前記巻取軸からの引出しを許可する破断部と、を備える。
【0007】
本発明の第2態様のバックル装置は、本発明の第1態様のバックル装置において、回転が規制され、前記破断部が設けられる規制部材を備える。
【0008】
本発明の第3態様のバックル装置は、本発明の第1態様又は第2態様のバックル装置において、前記制限部材が係止され、前記破断部が設けられる係止体を備える。
【0009】
本発明の第4態様のバックル装置は、本発明の第1態様~第3態様の何れか1つのバックル装置において、前記巻取軸を支持し、前記破断部が設けられる支持体を備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明の第1態様のバックル装置では、乗員に装着されるウェビングに設けられるタングがバックル本体に係合される。また、バックル本体に連結部材の先端側が連結されると共に、巻取軸に連結部材が基端側から巻取られており、制限部材が連結部材の巻取軸からの引出しを制限可能にされる。さらに、制限部材が、変形されて、連結部材の巻取軸からの引出しを許容することで、バックル本体の延出が許容される。
【0011】
ここで、破断部が連結部材の巻取軸からの引出しを制限可能にされており、連結部材の巻取軸からの引出しの許容が開始される際に、破断部が、変形されて、連結部材の巻取軸からの引出しを許容する。そして、破断部が、破断されて、連結部材の巻取軸からの引出しを許可する。このため、連結部材の巻取軸からの引出しの許容が開始される際の連結部材の引出許容荷重を破断部の変形荷重によって大きくできる。
【0012】
本発明の第2態様のバックル装置では、規制部材の回転が規制されており、規制部材に破断部が設けられる。このため、破断部を容易に設置できる。
【0013】
本発明の第3態様のバックル装置では、係止体に制限部材が係止される。ここで、係止体に破断部が設けられる。このため、部品点数を低減できる。
【0014】
本発明の第4態様のバックル装置では、支持体が巻取軸を支持する。ここで、支持体に破断部が設けられる。このため、部品点数を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るバックル装置を示す右斜め前方から見た分解斜視図である。
【
図2】(A)及び(B)は、本発明の第1実施形態に係るバックル装置を示す右斜め前方から見た斜視図であり、(A)は、バックル装置の全体を示し、(B)は、バックル装置の内側を示している。
【
図3】(A)及び(B)は、本発明の第1実施形態に係るバックル装置の主要部を示す図であり、(A)は、右方から見た側面図であり、(B)は、前方から見た断面図である。
【
図4】本発明の第1実施形態に係るバックル装置の主要部を示す右側から見た断面図(
図3(B)の4-4線断面図)である。
【
図5】(A)及び(B)は、本発明の第2実施形態に係るバックル装置の主要部を示す図であり、(A)は、右斜め後方から見た斜視図であり、(B)は、前方から見た断面図である。
【
図6】(A)及び(B)は、本発明の第3実施形態に係るバックル装置の主要部を示す図であり、(A)は、右斜め後方から見た斜視図であり、(B)は、前方から見た断面図である。
【
図7】(A)及び(B)は、本発明の第4実施形態に係るバックル装置の主要部を示す図であり、(A)は、右斜め後方から見た斜視図であり、(B)は、前方から見た断面図である。
【
図8】本発明の第5実施形態に係るバックル装置の主要部を示す左斜め後方から見た斜視図である。
【
図9】(A)及び(B)は、本発明の第6実施形態に係るバックル装置の主要部を示す図であり、(A)は、右方から見た側面図であり、(B)は、前方から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1実施形態]
図1には、本発明の第1実施形態に係るバックル装置10が右斜め前方から見た分解斜視図にて示されている。さらに、
図2(A)には、バックル装置10が右斜め前方から見た斜視図にて示されており、
図2(B)には、バックル装置10の内側が右斜め前方から見た斜視図にて示されている。なお、図面では、バックル装置10の前方を矢印FRで示し、バックル装置10の右方(表側)を矢印RHで示し、バックル装置10の上方を矢印UPで示している。
【0017】
本実施形態に係るバックル装置10は、車両(自動車)のシートベルト装置12を構成しており、シートベルト装置12は、車室内のシート(図示省略)に適用されている。シートベルト装置12には、巻取装置(図示省略)が設けられており、巻取装置は、シート後部の車幅方向外側かつ下側に設置されている。巻取装置には、長尺帯状のウェビング14(
図1参照)が基端側から巻取られており、ウェビング14は、巻取装置への巻取側に付勢されると共に、巻取装置から上側に引出されている。巻取装置には、ロック機構が設けられており、車両の緊急時(衝突時等)には、ロック機構が巻取装置からのウェビング14の引出しをロックする。
【0018】
ウェビング14は、巻取装置よりも先端側において、スルーアンカ(図示省略)に移動可能に貫通されており、スルーアンカは、シート後部の車幅方向外側かつ上側に設置されている。ウェビング14の先端部には、アンカ(図示省略)が固定されており、アンカは、シート後部の車幅方向外側かつ下側に設置されている。ウェビング14は、スルーアンカとアンカとの間において、タング16(
図1参照)に移動可能に貫通されている。
【0019】
バックル装置10は、シート後部の車幅方向内側かつ下側に設置されており、バックル装置10の前方、右方及び上方は、それぞれ車両の前方又は後方、車幅方向内方及び上方に向けられている。
【0020】
図1、
図2の(A)及び(B)に示す如く、バックル装置10の上部には、略直方体状のバックル本体18が設けられている。バックル本体18には、上側からタング16が係合可能にされており、バックル本体18にタング16が係合されて、シートに着座した乗員にウェビング14が装着される。これにより、ウェビング14のスルーアンカとタング16との間の部分(ショルダウェビング)が乗員の肩部から腰部(胸部を含む)に斜め方向に掛渡されると共に、ウェビング14のタング16とアンカとの間の部分(ラップウェビング)が乗員の腰部に横方向に掛渡される。バックル本体18へのタング16の係合は、解除可能にされており、バックル本体18へのタング16の係合が解除されて、乗員へのウェビング14の装着が解除される。また、バックル本体18の下側部分は、左右方向において、下側へ向かうに従い徐々に小さくされている。
【0021】
バックル本体18の下部には、連結部材としての帯状のベルト20(ウェビング)の先端側部分(上側部)が連結されており、ベルト20は、例えばウェビング14と同一の材質にされている。ベルト20の基端部(下側端部)は、折返されて、ベルト20の基端部近傍に縫合されており、これにより、ベルト20の基端側部分(下側部)が環状にされている。
【0022】
バックル装置10の下部には、支持体としての金属製のフレーム22が設けられており、フレーム22は、断面U字形板状にされている。フレーム22の左部には、背板22Aが設けられており、フレーム22は、背板22Aの下端部において、車体側(例えばシート下部の後部)に固定されている。フレーム22の前部及び後部には、それぞれ脚板22B及び脚板22Cが設けられており、脚板22B及び脚板22Cは、背板22Aから右方に突出されている。脚板22B及び脚板22Cには、それぞれ略円状の支持孔22D及び円状の支持孔22Eが貫通形成されており、支持孔22Dと支持孔22Eとは、前後方向において互いに対向されている。
【0023】
フレーム22の支持孔22D及び支持孔22Eには、巻取軸としての金属製で略円筒状のスプール24が貫通されており、スプール24は、フレーム22に支持されている。スプール24の軸方向は、前後方向に平行にされており、スプール24は、中心軸線周りに回転可能にされている。スプール24の前部を除く部分には、長尺矩形状の挿通孔24A(
図8参照)が貫通形成されており、挿通孔24Aは、スプール24の軸方向に延伸されると共に、後側に開放されている。スプール24の前部には、被連結部としての矩形状の連結孔24Bが複数(本実施形態では3個)貫通形成されており、複数の連結孔24Bは、スプール24の周方向に等間隔に配置されると共に、それぞれ前側に開放されている。連結孔24Bのスプール24周方向寸法は、挿通孔24Aのスプール24周方向(幅方向)寸法に比し大きくされており、1個の連結孔24Bには、挿通孔24Aが連通されている。
【0024】
スプール24内には、係止部材としての金属製で略円柱状のバー26が同軸上に挿入されており、バー26の軸方向両端部は、同軸上に拡径されて、スプール24内に嵌合されている。ベルト20の基端側部分(環状部分)は、スプール24の挿通孔24Aに挿通されると共に、内部にバー26の軸方向中間部が挿通されており、これにより、ベルト20の基端側部分が、スプール24内にバー26によって係止されて、スプール24に連結されている。ベルト20は、スプール24に巻取られており、ベルト20は、スプール24の左側から上側に引出されている。
【0025】
フレーム22の上部内には、樹脂製で略断面U字形板状のプロテクタ28が嵌合されており、プロテクタ28の左壁、前壁及び後壁は、それぞれフレーム22の背板22A、脚板22B及び脚板22Cを被覆している。プロテクタ28の上端部は、プロテクタ28の外側に突出されており、プロテクタ28の上端部は、フレーム22の上側に載置されている。プロテクタ28の前壁及び後壁の下側部分には、略半円状の挿入孔28Aが貫通形成されており、挿入孔28Aは、下側に開放されて、スプール24の上側部分が挿入されている。プロテクタ28内には、ベルト20が挿通されており、プロテクタ28は、ベルト20のフレーム22への接触を制限している。
【0026】
フレーム22(脚板22B)の前側には、係止体としての金属製のケース30(
図4参照)が配置されている。ケース30には、規制部としての略矩形板状の規制板30Aが設けられており、規制板30Aが脚板22Bに固定されて、ケース30が脚板22Bに固定されている。規制板30Aの前側には、略有底円筒状の係止筒30Bが一体形成されており、係止筒30Bの軸方向は、前後方向に平行にされている。係止筒30B内は、略円柱状の内孔30Cにされて、規制板30Aを貫通すると共に、規制板30Aの後側に開放されており、内孔30Cには、スプール24の前部が同軸上に挿入されている。内孔30Cの周面には、前側部分において、係止部としての略台形柱状の係止柱30Dが複数(本実施形態では3個)一体形成されており、複数の係止柱30Dは、それぞれ軸方向が前後方向(内孔30Cの軸方向)に平行にされて係止筒30Bの前壁(底壁)と一体にされると共に、内孔30Cの周方向に等間隔に配置されている。係止柱30Dの後面は、スプール24の前側近傍に配置されており、係止柱30Dの後面は、スプール24の前端面に前後方向において対向されている。規制板30Aの後面には、略矩形状の規制凹部30E(
図3(B)参照)が複数(本実施形態では3個)形成されており、複数の規制凹部30Eは、係止筒30Bの周方向に等間隔に配置されると共に、それぞれ内孔30Cに開放されている。
【0027】
内孔30Cには、制限部材(エネルギー吸収部材)としての金属製で略円柱状のトーションシャフト32(
図3(A)及び
図4参照)が同軸上に配置されている。トーションシャフト32の前端部には、被係止部としての略台形柱状の係止突起32Aが複数(本実施形態では3個)一体形成されており、複数の係止突起32Aは、それぞれ軸方向が前後方向(トーションシャフト32の軸方向)に平行にされると共に、トーションシャフト32の周方向に等間隔に配置されている。係止突起32Aは、ケース30(内孔30C)の係止柱30D間に挿入されてトーションシャフト32の周方向において嵌合されており、トーションシャフト32は、ケース30(内孔30C)に相対回転不能に係止されている。トーションシャフト32の後端部には、連結部としての略台形柱状の連結突起32Bが複数(本実施形態では3個)一体形成されており、複数の連結突起32Bは、それぞれ軸方向が前後方向(トーションシャフト32の軸方向)に平行されると共に、トーションシャフト32の周方向に等間隔に配置されている。連結突起32Bは、スプール24の連結孔24Bに挿入されてトーションシャフト32の周方向において嵌合されており、トーションシャフト32は、スプール24に相対回転不能に連結されて、スプール24の回転を制限している。
【0028】
スプール24とトーションシャフト32との間には、規制部材としての金属製のシェアプレート34(
図3の(A)及び(B)、
図4参照)が配置されている。シェアプレート34の中心部分には、円板状の基部34Aが同軸上に設けられており、基部34Aは、トーションシャフト32の後側において、スプール24内に同軸上に挿入されている。基部34Aの外周には、略長尺矩形板状の破断部36が複数(本実施形態では3個)一体形成されており、複数の破断部36は、それぞれ基部34Aの径方向外側に延出されると共に、基部34Aの周方向に等間隔に配置されている。破断部36は、スプール24の連結孔24Bに貫通されて、先端部がケース30(規制板30A)の規制凹部30Eに挿入されており、破断部36の先端部が規制凹部30Eの側面に当接されて、シェアプレート34の回転が規制される。
【0029】
バックル本体18からフレーム22までの範囲には、被覆部材としての略矩形筒状のブーツ38(カバー)が設けられており、ブーツ38は、軟質樹脂製にされて、可撓性を有している。ブーツ38の上部は、左右方向において、下側へ向かうに従い徐々に小さくされており、ブーツ38は、上部内にバックル本体18の下側部分が嵌入されて、バックル本体18の下側へ移動を制限している。ブーツ38の上下方向中間部内には、ベルト20が挿通されており、ブーツ38の下部内は、前側に開放されて、フレーム22(プロテクタ28、スプール24及びバー26を含む)が嵌入されている。ブーツ38には、下部の直上において、矩形枠板状の当接枠38Aが一体形成されており、当接枠38A内には、ベルト20が挿通されている。当接枠38Aの下側には、プロテクタ28の上端部が当接されており、これにより、ブーツ38の下側への移動が制限されている。上述の如く、ベルト20がスプール24に巻取られることで、ベルト20に張力が作用された状態で、ブーツ38がバックル本体18とフレーム22との間で弾性収縮力を作用されており、ブーツ38は、フレーム22を下側に付勢してフレーム22に対し自立されると共に、バックル本体18を上側に付勢して自立させている。ブーツ38の下部の左壁及びフレーム22の背板22Aには、軟質樹脂製のクリップ40が貫通されており、クリップ40は、ブーツ38の左壁及び背板22Aを挟持して、ブーツ38をフレーム22に固定している。
【0030】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0031】
以上の構成のシートベルト装置12では、バックル装置10において、スプール24の回転をトーションシャフト32が制限して、ベルト20のスプール24からの引出し及びバックル本体18の上側への延出が制限されており、バックル本体18にウェビング14のタング16が係合されることで、乗員にウェビング14が装着される。
【0032】
車両の緊急時(衝突時等)には、巻取装置のロック機構が巻取装置からのウェビング14の引出しをロックすることで、ウェビング14によって乗員が拘束される。そして、例えば乗員に慣性力が作用されて、乗員によってウェビング14が引張られた際には、ウェビング14からタング16及びバックル本体18を介してベルト20にスプール24からの引出力が作用されることで、スプール24に回転力が作用される。さらに、スプール24に作用される回転力によって、トーションシャフト32が前端部と後端部との間において捩れ変形された際には、スプール24の回転が許容されて、ベルト20のスプール24からの引出しが許容されることで、バックル本体18(タング16を含む)の上側への延出が許容される。このため、ウェビング14から乗員(特に胸部)に作用される荷重が低減される(トーションシャフト32が捩れ変形されるための荷重に制限される)と共に、乗員の運動エネルギーがトーションシャフト32の捩れ変形によって吸収される。また、ベルト20の引出しが許容されるための荷重であるベルト20の引出許容荷重(バックル本体18の延出が許容されるための荷重であるバックル本体18の延出許容荷重、フォースリミッタ荷重)は、トーションシャフト32が捩れ変形されるための荷重にされる。
【0033】
ここで、スプール24の連結孔24B側面がシェアプレート34の破断部36に当接されることで、破断部36が、スプール24の回転を制限して、ベルト20の引出しを制限可能にされており、ベルト20の引出しの許容が開始される際には、破断部36が連結孔24Bの側面(特にスプール24外周位置の部分)によって変形(部分的な破断を含む)されることで、破断部36が、スプール24の回転を許容して、ベルト20の引出しを許容する。そして、破断部36が連結孔24Bの側面によって破断されることで、破断部36が、スプール24の回転を許可して、ベルト20の引出しを許可する。
【0034】
このため、ベルト20の引出しの許容が開始される際には、ベルト20の引出許容荷重を破断部36が変形されるための荷重によって大きくできる。これにより、例えば車両の軽衝突時に、乗員からウェビング14、タング16、バックル本体18及びベルト20を介してスプール24に作用される回転力が小さい場合に、トーションシャフト32が捩れ変形されることを抑制できる。したがって、トーションシャフト32が不要に捩れ変形されることを抑制できて、バックル本体18が不要に延出されることを抑制できる。
【0035】
さらに、シェアプレート34に破断部36が設けられている。このため、他の部材と独立したシェアプレート34に破断部36を設けることができ、破断部36を容易に設置できる。
【0036】
[第2実施形態]
図5(A)には、本発明の第2実施形態に係るバックル装置50の主要部が右斜め後方から見た斜視図にて示されており、
図5(B)には、バックル装置50の主要部が前方から見た断面図にて示されている。
【0037】
本実施形態に係るバックル装置50は、上記第1実施形態と、ほぼ同様の構成であるが、以下の点で異なる。
【0038】
本実施形態に係るバックル装置50では、ケース30(規制板30A)に規制凹部30Eが設けられていないと共に、シェアプレート34が設けられていない。
【0039】
図5(A)に示す如く、ケース30の内孔30Cの周面には、係止柱30Dが6個一体形成されており、トーションシャフト32の前端部には、係止突起32Aが6個一体形成されている。
【0040】
図5の(A)及び(B)に示す如く、3個の係止柱30Dの前面には、略矩形柱状の破断部36が一体形成されており、3個の破断部36は、係止筒30Bの周方向に等間隔に配置されている。破断部36は、係止筒30Bの周方向に長尺にされると共に、軸方向が前後方向(係止筒30Bの軸方向)に平行にされており、破断部36は、スプール24の連結孔24Bに挿入されている。
【0041】
ここで、スプール24の連結孔24B側面がケース30(内孔30C)の破断部36に当接されることで、破断部36が、スプール24の回転を制限して、ベルト20の引出しを制限可能にされており、ベルト20の引出しの許容が開始される際には、破断部36が連結孔24Bの側面(特にスプール24前端面位置の部分)によって変形(部分的な破断を含む)されることで、破断部36が、スプール24の回転を許容して、ベルト20の引出しを許容する。そして、破断部36が連結孔24Bの側面によって破断されることで、破断部36が、スプール24の回転を許可して、ベルト20の引出しを許可する。
【0042】
このため、本実施形態でも、シェアプレート34が設けられることによる作用及び効果を除き、上記第1実施形態と同様の作用及び効果を奏することができる。
【0043】
さらに、破断部36がケース30に設けられている。このため、部品点数を低減できる。
【0044】
[第3実施形態]
図6(A)には、本発明の第3実施形態に係るバックル装置60の主要部が右斜め後方から見た斜視図にて示されており、
図6(B)には、バックル装置60の主要部が前方から見た断面図にて示されている。
【0045】
本実施形態に係るバックル装置60は、上記第2実施形態と、ほぼ同様の構成であるが、以下の点で異なる。
【0046】
図6の(A)及び(B)に示す如く、本実施形態に係るバックル装置60では、ケース30(内孔30C)の破断部36が係止筒30Bの径方向に長尺にされており、破断部36は、内孔30Cの周面と一体にされている。破断部36の両側面(内孔30C周方向両側の面)には、断面略三角形状の凹部36Aが形成されており、凹部36Aは、破断部36の前後方向全体に配置されている。凹部36Aは、破断部36の係止筒30B外周側の部分に配置されており、凹部36Aは、スプール24外周の回転軌跡上に配置されている。
【0047】
ここで、スプール24の連結孔24B側面がケース30(内孔30C)の破断部36に当接されることで、破断部36が、スプール24の回転を制限して、ベルト20の引出しを制限可能にされており、ベルト20の引出しの許容が開始される際には、破断部36(特に凹部36A形成部分)が連結孔24Bの側面(特にスプール24前端面位置の部分及びスプール24外周位置の部分)によって変形(部分的な破断を含む)されることで、破断部36が、スプール24の回転を許容して、ベルト20の引出しを許容する。そして、破断部36が連結孔24Bの側面によって破断されることで、破断部36が、スプール24の回転を許可して、ベルト20の引出しを許可する。
【0048】
このため、本実施形態でも、上記第2実施形態と同様の作用及び効果を奏することができる。
【0049】
なお、上記第2実施形態及び第3実施形態では、破断部36が3個設けられる。しかしながら、破断部36が1個、2個又は4個以上設けられてもよい。
【0050】
[第4実施形態]
図7(A)には、本発明の第3実施形態に係るバックル装置70の主要部が右斜め後方から見た斜視図にて示されており、
図7(B)には、バックル装置70の主要部が前方から見た断面図にて示されている。
【0051】
本実施形態に係るバックル装置70は、上記第3実施形態と、ほぼ同様の構成であるが、以下の点で異なる。
【0052】
図7の(A)及び(B)に示す如く、本実施形態に係るバックル装置70では、ケース30(内孔30C)に、破断部36が1個設けられており、破断部36は、係止筒30Bの軸方向に延長されると共に、スプール24の連結孔24B及び挿通孔24Aに挿入されている。
【0053】
ここで、スプール24の挿通孔24A側面がケース30(内孔30C)の破断部36に当接されることで、破断部36が、スプール24の回転を制限して、ベルト20の引出しを制限可能にされており、ベルト20の引出しの許容が開始される際には、破断部36(特に凹部36A形成部分)が連結孔24B及び挿通孔24Aの側面(特にスプール24前端面位置の部分及びスプール24外周位置の部分)によって変形(部分的な破断を含む)されることで、破断部36が、スプール24の回転を許容して、ベルト20の引出しを許容する。そして、破断部36が連結孔24B及び挿通孔24Aの側面によって破断されることで、破断部36が、スプール24の回転を許可して、ベルト20の引出しを許可する。
【0054】
このため、本実施形態でも、上記第3実施形態と同様の作用及び効果を奏することができる。
【0055】
なお、上記第2実施形態~第4実施形態では、ケース30の係止柱30D及びトーションシャフト32の係止突起32Aがそれぞれ6個設けられる。しかしながら、ケース30の係止柱30D及びトーションシャフト32の係止突起32Aがそれぞれ6個以外の個数(例えば3個)設けられてもよい。
【0056】
[第5実施形態]
図8には、本発明の第5実施形態に係るバックル装置80の主要部が左斜め後方から見た斜視図にて示されている。
【0057】
本実施形態に係るバックル装置80は、上記第1実施形態と、ほぼ同様の構成であるが、以下の点で異なる。
【0058】
本実施形態に係るバックル装置80では、ケース30(規制板30A)に規制凹部30Eが設けられていないと共に、シェアプレート34が設けられていない。
【0059】
図8に示す如く、フレーム22(脚板22C)の支持孔22Eの内周面(下端面)には、略矩形板状の破断部36が一体形成されており、破断部36は、支持孔22Eの径方向内側に突出されている。また、支持孔22Eは、破断部36の支持孔22E周方向両側において、径方向外側に拡大されている。
【0060】
スプール24の後端部には、矩形状の破断孔24Cが所定数(本実施形態では2個)貫通形成されており、スプール24の挿通孔24A及び所定数の破断孔24Cは、スプール24の周方向に等間隔に配置されている。破断孔24Cは、後側に開放されており、破断孔24Cには、フレーム22の破断部36が挿入されている。
【0061】
ここで、スプール24の破断孔24C側面がフレーム22(脚板22C)の破断部36に当接されることで、破断部36が、スプール24の回転を制限して、ベルト20の引出しを制限可能にされており、ベルト20の引出しの許容が開始される際には、破断部36が破断孔24Cの側面(特にスプール24外周位置の部分)によって変形(部分的な破断を含む)されることで、破断部36が、スプール24の回転を許容して、ベルト20の引出しを許容する。そして、破断部36が破断孔24Cの側面によって破断されることで、破断部36が、スプール24の回転を許可して、ベルト20の引出しを許可する。
【0062】
このため、本実施形態でも、シェアプレート34が設けられることによる作用及び効果を除き、上記第1実施形態と同様の作用及び効果を奏することができる。
【0063】
さらに、破断部36がフレーム22に設けられている。このため、部品点数を低減できる。
【0064】
なお、上記第4実施形態及び第5実施形態では、破断部36が1個設けられる。しかしながら、破断部36が複数設けられてもよい。この場合、上記第4実施形態では、例えば、スプール24の挿通孔24Aに連通されない連結孔24Bに上記第3実施形態の破断部36が挿入される。また、上記第5実施形態では、スプール24の挿通孔24Aに破断部36が挿入されてもよい。
【0065】
[第6実施形態]
図9(A)には、本発明の第6実施形態に係るバックル装置90の主要部が右方から見た側面図にて示されており、
図9(B)には、バックル装置90の主要部が前方から見た断面図にて示されている。
【0066】
本実施形態に係るバックル装置90は、上記第1実施形態と、ほぼ同様の構成であるが、以下の点で異なる。
【0067】
本実施形態に係るバックル装置90では、ケース30(規制板30A)に規制凹部30Eが設けられていないと共に、シェアプレート34が設けられていない。
【0068】
図9の(A)及び(B)に示す如く、スプール24の連結孔24Bの後側近傍部分には、左端部及び右端部において、円状の破断孔24Dが一対貫通形成されており、一対の破断孔24Dは、前後方向において互いに対向されている。
【0069】
ケース30の規制板30Aには、規制部材としての金属製で略円柱状のシェアスクリュウ92が配置されており、シェアスクリュウ92の軸方向は、左右方向に平行にされている。シェアスクリュウ92の左端部は、ネジ状にされており、シェアスクリュウ92の右端部は、拡径されている。シェアスクリュウ92は、規制板30Aに貫通されており、シェアスクリュウ92の中心軸線は、ケース30の内孔30Cの径方向に沿って配置されている。シェアスクリュウ92の左端部は、規制板30Aの内孔30Cより左側部分に螺合されると共に、シェアスクリュウ92の右端部は、規制板30Aの右側面に当接されており、これにより、シェアスクリュウ92の内孔30C周方向への回転が規制板30Aによって規制されている。シェアスクリュウ92の左端部と右端部との間の部分は、円柱状の破断部36にされており、破断部36は、スプール24の一対の破断孔24Dに貫通されている。
【0070】
ここで、スプール24の破断孔24D周面がシェアスクリュウ92の破断部36に当接されることで、破断部36が、スプール24の回転を制限して、ベルト20の引出しを制限可能にされており、ベルト20の引出しの許容が開始される際には、破断部36が破断孔24Dの周面(特にスプール24外周位置の部分)によって変形(部分的な破断を含む)されることで、破断部36が、スプール24の回転を許容して、ベルト20の引出しを許容する。そして、ベルト20の引出しが許容されて、破断部36が破断孔24Dの周面によって破断されることで、破断部36が、スプール24の回転を許可して、ベルト20の引出しを許可する。
【0071】
このため、本実施形態でも、上記第1実施形態と同様の作用及び効果を奏することができる。
【0072】
特に、シェアスクリュウ92に破断部36が設けられている。このため、他の部材と独立したシェアスクリュウ92に破断部36を設けることができ、破断部36を容易に設置できる。
【0073】
なお、上記第1実施形態~第6実施形態において、トーションシャフト32が捩れ変形される前に破断部36が変形されてもよい。
【符号の説明】
【0074】
10・・・バックル装置、14・・・ウェビング、16・・・タング、18・・・バックル本体、20・・・ベルト(連結部材)、22・・・フレーム(支持体)、24・・・スプール(巻取軸)、30・・・ケース(係止体)、32・・・トーションシャフト(制限部材)、34・・・シェアプレート(規制部材)、36・・・破断部、50・・・バックル装置、60・・・バックル装置、70・・・バックル装置、80・・・バックル装置、90・・・バックル装置、92・・・シェアスクリュウ(規制部材)