(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-12
(45)【発行日】2023-09-21
(54)【発明の名称】再利用可能なカートリッジ・ピストン
(51)【国際特許分類】
B05C 11/00 20060101AFI20230913BHJP
B05C 5/00 20060101ALI20230913BHJP
B05C 17/005 20060101ALI20230913BHJP
B65D 83/76 20060101ALN20230913BHJP
【FI】
B05C11/00
B05C5/00 101
B05C17/005
B65D83/76 300
(21)【出願番号】P 2021514051
(86)(22)【出願日】2019-08-13
(86)【国際出願番号】 EP2019071672
(87)【国際公開番号】W WO2020069790
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2022-02-24
(32)【優先日】2018-10-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】510199605
【氏名又は名称】メドミクス スウィッツァランド アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラヴェラネット、リカルド
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0272767(US,A1)
【文献】特表2018-501438(JP,A)
【文献】特開2014-202012(JP,A)
【文献】米国特許第4840293(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 5/00- 5/04
7/00-21/00
B65D83/00
83/08-83/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム・バッグ・カートリッジ(10)と共に使用するための再利用可能なカートリッジ・ピストン(12)であって、
前記ピストン(12)が、ピストン基部(30)、中間部分(34)及びピストン・ヘッド(32)を有し、延長軸(E)が、前記ピストン基部(30)から前記中間部分(34)を通って、且つ前記ピストン・ヘッド(32)を通って延び、前記ピストン(12)が、前記ピストン・ヘッド(32)の側壁(38)から前記延長軸(E)に対して半径方向外側へ延びる複数のリップ部分(36)をさらに有し、
前記ピストン基部(30)と前記ピストン・ヘッド(32)とが、前記中間部分(34)によって、前記延長軸(E)に沿って軸方向に互いに間隔を置いて離れており、前記ピストン基部(30)と前記複数のリップ部分(36)との間に隙間(44)が存在し、
前記隙間が、前記複数のリップ部分と前記ピストン基部とを前記延長軸の方向に軸方向に隔てており、前記複数のリップ部分(36)が、2つの隣り合うリップ部分(36)の間に形成されたスリット(40)によって、それぞれ互いに間隔を置いて離れており、前記複数のスリット(40)が、前記ピストン(12)の前記延長軸(E)に対して半径方向に延び、
前記ピストン・ヘッド(32)が、前記ピストン(12)の前記ピストン基部(30)と反対側を向いた、平らな面を形成する前面(52)を有し、前記前面(52)が、前記延長軸(E)と平行な方向に、前記リップ部分(36)よりも前記ピストン基部(30)からさらに間隔を置いて離れており、
前記ピストン基部(30)、前記中間部分(34)、前記ピストン・ヘッド(32)及び前記複数のリップ部分(36)が一体部品として形成されている、
再利用可能なカートリッジ・ピストン(12)。
【請求項2】
前記複数のリップ部分(36)と前記ピストン・ヘッド(32)の前記側壁(38)とが、それらの間に環状の溝(56)を画成している、請求項1に記載の再利用可能なカートリッジ・ピストン(12)。
【請求項3】
前記それぞれのリップ部分(36)が各々、前記ピストン・ヘッド(32)及び前記ピストン基部(30)に対して移動可能である、請求項1又は2に記載の再利用可能なカートリッジ・ピストン(12)。
【請求項4】
前記隙間(44)が、前記再利用可能なカートリッジ・ピストン(12)の前記延長軸(E)の方向に、0.8mmから1.2mmの幅である、請求項1から3までの少なくとも一項に記載の再利用可能なカートリッジ・ピストン(12)。
【請求項5】
前記複数のリップ部分(36)によって規定される直径が、前記ピストン基部(30)の直径より大きい、又は前記ピストン基部(30)の直径と等しい、請求項1から4までの少なくとも一項に記載の再利用可能なカートリッジ・ピストン(12)。
【請求項6】
前記前面(52)が前記リップ部分(36)の各々を越えて前記ピストン(12)の高さの5%から50%だけ突出し、前記高さとは、前記前面(52)と、前記前面(52)から離れた前記ピストン基部(30)の端部面(64)との間で測定されたものである、請求項
1に記載の再利用可能なカートリッジ・ピストン(12)。
【請求項7】
前記複数のリップ部分(36)を分離している前記複数のスリット(40)が、外側から半径方向内側に、前記ピストン・ヘッド(32)の前記側壁(38)へと延び
、前記複数のスリット(40)のうちの少なくとも1つが、前記ピストン・ヘッド(32)の前記側壁(38)にあるチャネル(42)内へと通じており、且つ/又は
直接隣り合うリップ部分(40)の間に形成された隙間(70)が均等ではなく
、前記隙間(70)が第1及び第2のスリット部分(66、68)を有し、前記第1のスリット部分(66)の間の間隔が前記第2のスリット部分(68)の間の間隔よりも小さい、請求項1から
6までの少なくとも一項に記載の再利用可能なカートリッジ・ピストン(12)。
【請求項8】
前記ピストン・ヘッド(32)の前記側壁(38)に面する、前記複数のリップ部分(36)のうちの少なくとも1つの内側表面(48)が、少なくとも1つの凹所(46)を有する、請求項1から
7までの少なくとも一項に記載の再利用可能なカートリッジ・ピストン(12)。
【請求項9】
前記再利用可能なカートリッジ・ピストン(12)が、
ただ1つの高分子材料を有するただ1つの組成で作ら
れる、請求項1から
8までの少なくとも一項に記載の再利用可能なカートリッジ・ピストン(12)。
【請求項10】
前記ピストン(12)が、前記ピストン基部(30)の側壁(60)にある少なくとも1つの脱落防止具(62)を有し
、前記少なくとも1つの脱落防止具(62)が前記ピストン基部(30)の前記側壁(60)の切り欠きによって形成される、請求項1から
9までの少なくとも一項に記載の再利用可能なカートリッジ・ピストン(12)。
【請求項11】
請求項1に記載の1又は複数の再利用可能なカートリッジ・ピストン(12)用のスリーブ(16)であって、前記スリーブ(16)が、前記スリーブ(16)の前方端と後方端との間に延びる1、2又はそれより多い円筒形通路(14)を有し、少なくとも1つの突起(72)が前記スリーブ(16)の前記前方端及び/又は後方端にそれぞれ配置される、スリーブ(16)。
【請求項12】
2以上の円筒形通路(14)が設けられ、前記2以上の円筒形通路(14)が、互いに固定的に接合され、又は互いに一体に成形される、請求項
11に記載のスリーブ(16)。
【請求項13】
前記スリーブ(16)の前記前方端が再利用可能なフィルム・バッグ・カートリッジ(10)に連結されるように、及び/又は再利用可能なフィルム・バッグ・カートリッジ(10)の先頭部(22)に連結されるように構成されている、請求項
11又は
12に記載のスリーブ(16)。
【請求項14】
前記スリーブ(16)が、押し出し成形されたアルミニウムのスリーブ、又は射出成形プラスチック材料である、請求項
11から
13までの少なくとも一項に記載のスリーブ(16)。
【請求項15】
請求項
11から
14までの少なくとも一項に記載の少なくとも1つのスリーブ(16)内に挿入される請求項1から
10までの少なくとも一項に記載の少なくとも1つの再利用可能なピストン(12)と、材料で満たされたフィルム・バッグ・カートリッジ(18)とを有する再利用可能なカートリッジ(10)であって、
前記少なくとも1つの再利用可能なピストン(12)が、前記スリーブ(16)内で収納位置と吐出位置の間で前記再利用可能なカートリッジ(10)の吐出軸(D)に沿って移動可能であり、それにより前記カートリッジ(10)から、前記フィルム・バッグ・カートリッジ(18)内に収納された前記材料を吐出し、前記再利用可能なカートリッジ(10)の前記吐出軸(D)と前記ピストン(12)の前記延長軸(E)とが互いに平行に位置合わせされている、再利用可能なカートリッジ(10)。
【請求項16】
ディスペンサであって、請求項1から
10までの少なくとも一項に記載の再利用可能なカートリッジ・ピストン(12)を前記延長軸(E)に沿って前後に動かすように構成されたプッシュ・ロッドを有し、前記プッシュ・ロッドが、前記再利用可能なカートリッジ・ピストン(12)に連結可能であり、又は前記再利用可能なカートリッジ・ピストン(12)に固定的に接合され、ま
た前記ディスペンサが、請求項
15に記載の前記再利用可能なカートリッジ(10)及び請求項
11から
14までの一項に記載の前記スリーブ(16)のうちの少なくとも1つをさらに有する、ディスペンサ。
【請求項17】
前記ただ1つの高分子材料が、ポリオキシメチレン(POM)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアミド(PA)又はポリマー、或いは55Dから100Dの範囲に選択されたショアD硬度計での測定による硬度を有する熱硬化性材料である、請求項9に記載の再利用可能なカートリッジ・ピストン(12)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルム・バッグ・カートリッジと共に使用するための再利用可能なカートリッジ・ピストンに関し、ピストンは、ピストン基部、中間部分及びピストン・ヘッドを有し、延長軸がピストン基部から中間部分を通り且つピストン・ヘッドを通って延在し、ピストンはさらに、ピストン・ヘッドの側壁から延長軸に対して半径方向に外側へ延出する複数のリップ部分を有し、ピストン基部とピストン・ヘッドが、中間部分によって、ピストン基部と複数のリップ部分との間に隙間が存在する状態で互いに間隔を置いて離れており、複数のリップ部分は、2つの隣り合うリップ部分の間に形成されたスリットによって、複数のスリットがピストンの延長軸に対して半径方向に延在する状態で、それぞれ互いに間隔を置いて離れている。
【背景技術】
【0002】
この種の再利用可能なカートリッジ・ピストンは当技術分野でよく知られており、再利用可能なカートリッジの吐出軸に沿って収納位置から吐出位置へ移動可能なように構成され、それによって再利用可能なカートリッジのスリーブ内に収容された収縮可能なフィルム・バッグ・カートリッジの中に収納された材料(マテリアル)を吐出(排出)する。ここで、スリーブは、通常剛性が低いフィルム・バッグを支持するだけでなく、ピストンを、その収納位置から吐出位置への移動の間に案内もする。後者の目的のため、それぞれのリップ部分の少なくとも外側端部がスリーブの内壁に接触し、それによってピストンを、再利用可能なカートリッジの吐出軸に沿ったその移動の間、安定させる。フィルム・バッグから材料が吐出された後に、フィルム・バッグは再利用可能なカートリッジから取り外され、満杯の新しいフィルム・バッグに取り換え可能である。その後、再利用可能なカートリッジは再びいつでも使用できる。再利用可能なカートリッジが再び使用でき、フィルム・バッグのみ交換が必要なので、無駄が防止又は少なくとも最小化される。
【0003】
従来技術の再利用可能なカートリッジ・ピストンでは、ピストン基部とピストン・ヘッドが別々の部品であり、ピストン基部及びピストン・ヘッドのそれぞれを製作するために2つの異なる加工工具が必要となる。さらに、別々の部品は、次の製作工程で、再利用可能なカートリッジ・ピストンを形成するために組み立てる必要がある。その結果、再利用可能なカートリッジ・ピストンの製作、及び、したがって再利用可能なカートリッジの製作も、複雑且つ幾分高価となる。従来技術のピストンは、米国特許出願第2009/272767(A1)号、EP2998030A1、EP1845033A1、米国特許第4986444(A)号、特開平08-105197により知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許出願第2009/272767(A1)号
【文献】EP2998030A1
【文献】EP1845033A1
【文献】米国特許第4986444(A)号
【文献】特開平08-105197
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の目的は、生産することが容易で安価な再利用可能なカートリッジを考案することである。本発明のさらなる目的は、フィルム・バッグがカートリッジ・スリーブとピストンの間に挟まれることを防止し、したがってフィルム・バッグ・カートリッジ内に収納された要素の保管寿命を著しく縮めるフィルム・バッグの引き裂かれを回避するために、フィルム・バッグ・カートリッジのフィルム・バッグがそれによって確実に回収可能となる再利用可能なカートリッジを提供することである。本発明のさらなる目的は、フィルム・バッグ・カートリッジの中に収納された材料の可能な限り多くを、それによってフィルム・バッグ・カートリッジから供給できるピストンを利用可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、独立請求項の主題によって満足される。
【0007】
請求項1によれば、本発明は、フィルム・バッグ・カートリッジと共に使用するための、ピストン基部、中間部分及びピストン・ヘッドを有する再利用可能なカートリッジ・ピストンに関し、延長軸がピストン基部から中間部分を通り且つピストン・ヘッドを通って延在し、ピストンがさらに、ピストン・ヘッドの側壁から延長軸に対して半径方向に外側へ延出する複数のリップ部分を有し、ピストン基部とピストン・ヘッドが、中間部分によって、ピストン基部と複数のリップ部分との間に隙間が存在する状態で延長軸に沿って互いに軸方向に間隔を置いて離れており、複数のリップ部分が、2つの隣り合うリップ部分の間に形成されたスリットによって、複数のスリットがピストンの延長軸に対して半径方向に延在する状態で、それぞれ互いに間隔を置いて離れており、ピストン基部、中間部分、ピストン・ヘッド及び複数のリップ部分が一体部品(one piece)として形成される。
【0008】
本発明は、一体部品設計の、すなわちその設計ではピストン基部、ピストン・ヘッド及び中間部分が1つの同じ射出成形で1回の射出成形ステップで一体に(integrally)形成される、再利用可能なカートリッジ・ピストンを使用するとの全般的な概念に基づく。射出成形工具の数を減らすことによって、ピストンは一体部品へと容易な且つより再現性のある方法で生産可能であり、したがって、それによって、複数の加工工具を使用する必要がないので、ピストンのより費用効果の高い製造がもたらされる。
【0009】
本発明のさらなる利点と有利な実施例が、従属請求項から、記述から、また添付図面から明らかとなろう。
【0010】
フィルム・バッグの中に収納された材料を吐出するために、ピストンが再利用可能なカートリッジの吐出軸に沿って動かされるので、フィルム・バッグは空になったフィルム・バッグを残して収縮する。フィルム・バッグの空の部分を回収するために、再利用可能なカートリッジ・ピストンは、複数のリップ部分とピストン・ヘッドの側壁との間に画定された環状の溝を有してよい。つまり、複数のリップ部分とピストン・ヘッドの側壁との間に画定された環状の溝が、空になったフィルム・バッグを受け又は巻く。
【0011】
フィルム・バッグの回収の間、フィルム・バッグが破れることを避けるために、フィルム・バッグがピストンとスリーブの内壁の間に入らないことが重要である。そうした事象を避けるために、再利用可能なカートリッジ・ピストンがスリーブの中に挿入されるときに、複数のリップ部分のそれぞれがスリーブの内壁に接触してよい。この目的のために、複数のリップ部分によって画定される外径がスリーブの内径よりも大きい。さらに、複数のリップ部分のそれぞれが弾性を持ってよく、つまり個々のリップ部分のそれぞれがピストン・ヘッド及びピストン基部に対して動き得る。したがって、ピストンがスリーブの中に挿入されると、複数のリップ部分のそれぞれが、その個々のばね力でスリーブの内壁を押す。
【0012】
これに関し、複数のリップ部分によって画定されるピストンの外径が、スリーブの内径と等しいか、又はそれよりも小さくてもよいことに留意されたい。このようにすることで、スリーブとピストンの間の摩擦を減らすことができ、且つピストンと支持スリーブの製造公差への考慮が可能となる。
【0013】
しかし、ピストンが再利用可能なカートリッジの吐出軸に沿って動かされるときに、弾性を持つリップ部分が、折り曲げられも、ピストン・ヘッドから分離までもしないことを確実にするために、ピストン・ヘッドとピストン基部の隙間は、再利用可能なカートリッジ・ピストンの延長軸の方向に0.8mmから1.2mmの幅であることが好ましい。ピストン基部が、曲げられたリップ部分に対する支持体の役割を果たすことができ、支持体はしたがって、特にピストン・ヘッドの直径がピストン基部の直径よりも小さい場合に、リップ部分が過度に曲げられることを防止することができる。
【0014】
さらに、ピストン・ヘッドの直径がピストン基部の直径よりも小さい場合、回収された空のフィルム・バッグに対する十分な支持がもたらされる。
【0015】
ピストン基部の外径は、基本的に、フィルム・バッグ及びピストンがその中に挿入されるスリーブの内径に一致し、その結果、ピストン基部がスリーブの内壁に少なくとも部分的に接触することが好ましい。そうしたピストン基部の構成によって、ピストンが再利用可能なカートリッジの吐出軸に沿って移動する間、スリーブ内のピストンの確実な案内が可能となる。さらに、複数のリップ部分によって画定される直径がピストン基部の直径よりも大きい場合、ピストンがスリーブの中に挿入されたときに、複数のリップ部分がスリーブの内壁を押すことが確実となり、それによって空になったバッグがピストンとスリーブの内壁の間に入ることを防止する。
【0016】
フィルム・バッグをできる限り完全に、理想的には全て空にすることに関する最良の結果は、好ましくはピストン・ヘッドが、ピストンのピストン基部の反対側に面し、平らな面又は少なくとも実質的に平らな面を形成する、前面を有する場合に達成可能となる。このことがフィルム・バッグ・カートリッジ内に残される無駄になるものの量を減らす。
【0017】
吐出性は、ピストン・ヘッドの前面が、ピストン基部からリップ部分よりもさらに間隔を置いて離れている場合に、さらに向上可能である。つまり、ピストン・ヘッドの前面が、リップ部分のそれぞれの最も外側の先端を越えて突出する。数値によれば、前面がリップ部分のそれぞれを越えて、ピストンの高さの5%から50%だけ突出することが好ましい。さらにピストン・ヘッドが、ピストン基部からリップ部分よりもさらに間隔を置いて離れていると、空になったフィルム・バッグを回収するための十分なスペースがもたらされる。
【0018】
リップ部分のそれぞれの可撓性に関する最良の結果は、複数のリップ部分を分離している複数のスリットが、好ましくは外側からピストン・ヘッドの側壁へ半径方向に内側へ延在する場合に達成される。好ましくは、複数のスリットのうちの少なくとも1つが、ピストン・ヘッドの側壁にあるチャネル(通路)の中に通じてよい。複数のスリットのそれぞれが、ピストン・ヘッドの側壁にあるチャネルの中に通じていると、よりいっそう好ましい。チャネルは、基本的にピストンの延長軸に並行に位置合わせされてよい。そうしたチャネルの位置合わせにより、フィルム・バッグを十分に空にすることが促進される。
【0019】
これに関し、直接隣り合うリップ部分の間に形成される隙間が不均等であり、特に隙間が第1及び第2のスリット部分を有し、第1のスリット部分の間の間隔が第2のスリット部分の間の間隔よりも小さいことに留意されたい。隙間を不均等に形成することによって、射出成形用に使用される工具を単純化でき、一体部品ピストンの形成をより容易にできるようにし、したがってピストンの製造コストの低減を促進する。
【0020】
再利用可能なカートリッジ・ピストンの製作用の加工工具は、射出成形工具であることが好ましい。射出成形ピストンの、冷却の間の好ましくない収縮を避けるために、特にピストンの複数のリップ部分の好ましくない収縮を避けるために、複数のリップ部分の、ピストン・ヘッドの側壁に面する内側表面のうちの少なくとも1つが、少なくとも1つの凹所を有してよい。
【0021】
再利用可能なカートリッジ・ピストンの製作用に使用される好ましい材料は、特に、ショアD硬度計での測定による、55Dから100Dの範囲に選択された硬度を有する、POM、PTFE、PA又はポリマー、或いは熱硬化性材料であってよい。最も好ましくは、再利用可能なカートリッジ・ピストンは、ただ1つの組成(composition)で作られ、好ましくはただ1つの高分子材料を有する。
【0022】
高分子材料は、高分子ブレンドを含んでよく、すなわち添加物、プライマ及び/又は極性基も含んでよく、1つの単一の再生品ではないポリマーでなくてよい。
【0023】
これに関し、ピストンの材料はポリエチレン(PE:polyethylene)、高密度ポリエチレン(HD-PE:high density polyethylene)、ポリブチレンテレフタレート(PBT:polybutylene terephthalate)、ポリアミド(PA:polyamide)及びポリプロピレン(PP:polypropylene)のうちの1つであってよいことに、さらに留意すべきである。
【0024】
フィルム・バッグ内に収納された材料がフィルム・バッグから吐出された後に、ピストンが好ましくない形でスリーブから脱落する(外れる)ことを防止するために、ピストンがピストン基部の側壁にある少なくとも1つの脱落防止具を有してよく、少なくとも1つの脱落防止具が、ピストン基部の側壁の切り欠きによって形成されることが好ましい。この脱落防止具はスリーブ内に形成された、対応する構造物と協働するように構成される。
【0025】
ピストンは、例えばピストン又はその一部の破損のために交換する、又は例えばピストンにある汚れのために手入れをする必要があり得るので、脱落防止具は、ピストンがスリーブから取り外せるように形成されると有益である。
【0026】
ピストンと、ピストンがそれと協働するスリーブの間の密封を向上させるために、密封部品がピストンに、好ましくはピストン基部に配置されてよい。密封部品は、エチレンプロピレンジエンモノマー・ゴム(EPDM:ethylene propylene diene monomer rubber)Oリング又はシリコンOリングのようなOリングを有してよい。
【0027】
さらに、本明細書で説明するピストンは、複数の異なる種類のカートリッジ、例えば1つ又は複数の要素のカートリッジに使用可能であることに留意されたい。例えば2要素のカートリッジが使用される場合、このカートリッジは隣り合わせに並べられたカートリッジ、同軸のカートリッジ、又は2つの単一要素カートリッジを例えばスナップ嵌め接合などのようなカチッと合わせる方法によって接合することにより形成されたカートリッジとして形成されてよい。
【0028】
本発明は、1つ又は複数の再利用可能なカートリッジ・ピストン用のスリーブにも向けられており、スリーブは、スリーブの前方端と後方端との間に延在する少なくとも1つの円筒形通路を有してよく、少なくとも1つの突起がスリーブの前方端及び/又は後方端のそれぞれに配置される。そうした突起は、2つの機能を満たすようになされるのが好ましい。第1の機能は、ピストンのピストン基部の側壁にある脱落防止具を介して、ピストンをスリーブから取り外し可能にすることである。第2の機能は、ピストンをスリーブ内に保持することであり、それによってフィルム・バッグ・カートリッジが取り外されたときに、ピストンがスリーブから脱落するのを防止することである。
【0029】
この目的のため、脱落防止具は、ピストンのピストン基部の側壁にある切り欠きとして形成されてよい。脱落防止具は、スリーブの側壁内側に形成された切り欠きと相互に作用する、ピストンのピストン基部の側壁から突出する突起であってもよいことに留意すべきである。さらに、ピストンのピストン基部の側壁が、それらのうちの一方が突起であり他方が切り欠きである、少なくとも2つの脱落防止具を有してよい。したがって、スリーブは対応する切り欠き及び対応する挿入物を有する。そうした脱落防止具の配置により、ピストンの、カートリッジのスリーブの中へのあいまいでない挿入が可能となる。
【0030】
フィルム・バッグ・カートリッジが、2つ以上の材料の吐出しのために使用されるように構成されてよい。例えば、フィルム・バッグ・カートリッジが、2つ以上の要素の接着剤のそれぞれの要素を同時に吐出するために使用されてよい。それぞれの要素を別々に収納するために、スリーブが2つ以上の円筒形通路を有してよく、2つ以上の円筒形通路は互いに固定的に接合されるか、又は互いに一体に形成される。次いで、それぞれの通路がフィルム・バッグを収納でき、特に、異なる材料はフィルム・バッグのそれぞれに収納される。異なる材料は、2つ以上の要素の接着剤の要素であってよい。
【0031】
フィルム・バッグをスリーブ内に安全に収納するために、スリーブの前方端がフィルム・バッグ・カートリッジに、且つ/又はフィルム・バッグ・カートリッジの先頭部に連結されるように構成されてよい。
【0032】
再利用可能なカートリッジのピストンが射出成形によって形成可能であるだけでなく、スリーブもプラスチック材料を使用して射出成形されてよい。本発明の別の態様によれば、スリーブが押し出し成形されたアルミニウムであってもよい。
【0033】
本発明は、少なくとも1つのスリーブの中に挿入された少なくとも1つの再利用可能なピストン及び材料で満たされたフィルム・バッグ・カートリッジを有する再利用可能なカートリッジへも向けられており、少なくとも1つの再利用可能なピストンが、スリーブ内で収納位置と吐出位置の間で再利用可能なカートリッジの吐出軸に沿って移動可能であり、それによってフィルム・バッグ内に収納された材料をカートリッジから吐出し、ここで、再利用可能なカートリッジの吐出軸とピストンの延長軸は互いに平行に位置合わせされる。
【0034】
さらなる態様によれば、本発明は、再利用可能なカートリッジを延長軸に沿って前後に動かすように構成されたプッシュ・ロッドを有するディスペンサに関し、プッシュ・ロッドは再利用可能なカートリッジ・ピストンに連結されるか、又は再利用可能なカートリッジ・ピストンに固定的に接合されるように構成され、オプションとして、ディスペンサがさらに、再利用可能なカートリッジ及びスリーブの少なくとも1つを有する。ピストンをディスペンサにこの方法で形成することにより、ピストンがスリーブの中に常に正しく挿入されることを確実にできる。
【0035】
本発明を、実施例によって、また図面を参照して、次に詳細に説明する。ここで
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】再利用可能なフィルム・バッグ・カートリッジの分解立体図である。
【
図2】
図1の再利用可能なフィルム・バッグ・カートリッジと共に使用するためのピストンの第1の設計の斜視図である。
【
図4】
図1の再利用可能なフィルム・バッグ・カートリッジと共に使用するためのピストンの第2の設計の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下において、同じ又は同等の機能を有する部品に対し、同じ参照番号を使用する。構成要素の方向に関連するどの言明も、図面に示された位置に対応してなされ、使用での実際の位置で当然変化し得る。
【0038】
図1は再利用可能なフィルム・バッグ・カートリッジ10の分解立体図を示す。
図1に示す再利用可能なフィルム・バッグ・カートリッジ10は、結合剤と硬化剤を有する複数要素接着剤のような2つの材料を吐出するように構成されている。再利用可能なフィルム・バッグ・カートリッジ10は2つのピストン12を有し、これらのピストンは
図2から
図6に関して以下に詳細に説明することになる。
【0039】
それぞれのピストン12がスリーブ16の円筒形通路14の中に、通路14のそれぞれがフィルム・バッグ・カートリッジ18の先頭部22に固定的に接合されるフィルム20を有するフィルム・バッグ・カートリッジ18を収納した状態で、挿入される。
【0040】
2つの通路14は互いに固定的に接合されている。しかし、2つの通路14が互いに一体に形成されてもよい。再利用可能なカートリッジ10が、ただ1つの通路14又は2つより多い通路14を、それぞれただ1つの材料又は2つより多い材料を収納するために有してもよいことが理解されるべきである。
【0041】
スリーブ16は、フィルム・バッグ・カートリッジ18の先頭部22に、先頭部22が吐出口24を有した状態で、連結されるように構成される。吐出口24は、使用に際し混合要素(図示せず)に連結可能である。収納状態では、吐出口24はプランジャ26を用いて密封可能である。
図1に示す再利用可能なフィルム・バッグ・カートリッジ10の設計によれば、先頭部22はキャップ・ナット28によりプランジャ26で密封される。スリーブ16も、スリーブ16をその中に受けるように構成された対応する座の中にスリーブ16を挿入することによって、フィルム・バッグ・カートリッジ10に連結されてもよいことが理解されるべきである。示した実例では、先頭部22がフィルム18’と共に一体に形成され、フィルム・バッグ・カートリッジ18を形成する。
【0042】
スリーブ16は、押し出し成形されたアルミニウムのスリーブであることが好ましい。或いはスリーブ16は、射出成形プラスチック材料から形成されてよい。
【0043】
それぞれのスリーブ16は、スリーブ16の前方端の通路14の内側表面に配置された突起72を有する。
【0044】
次に
図2から
図6に詳細に示すピストン12の説明に転じ、
図2及び
図3は第1の設計によるピストン12を示し、
図3から
図6は第2の設計によるピストン12を示す。第1の設計によるピストン12は、寸法及びその結果としての関連する部品の数の減少において、第2の設計によるピストン12と基本的に異なる。特に説明がない限り、第1及び第2の設計によるピストン12は、機能において基本的に同一である。
【0045】
それぞれのピストン12はピストン基部30及びピストン・ヘッド32を有し、それらが中間部分34(
図3及び
図6)によって互いに接合されている。ピストン12の延長軸Eが、ピストン基部30から中間部分34を通り且つピストン・ヘッド32を通って延在する。ピストン12がスリーブ16の通路14の中に挿入されると、ピストン12の延長軸E及び再利用可能なフィルム・バッグ・カートリッジ10の吐出軸Dが互いに平行に位置合わせされる。
【0046】
ピストン12はさらに、ピストン・ヘッド32の側壁38から延長軸Eに対して半径方向に外側へ延出する複数のリップ部分36を有する。複数のリップ部分36は、2つの隣り合うリップ部分36の間に形成されたスリット40によって、それぞれ互いに間隔を置いて離れている。複数のリップ部分36を分離している複数のスリット40は、外側からピストン・ヘッド32の側壁38へ向かって半径方向に内側へ延在する。第1の設計によるピストン12が第2の設計によるピストン12よりも大きいので、第1の設計によるピストン12は第2の設計によるピストン12よりも多くのリップ部分36を有する。さらに、第1の設計によるピストン12のスリット40のそれぞれが、ピストン12の延長軸Eに基本的に平行に位置合わせされたチャネル42の中に通じる。
【0047】
図3、
図5及び
図6から最もよくわかる通り、ピストン基部30とピストン・ヘッド32は、中間部分34により、延長軸Eに沿って互いに間隔を置いて離れており、このことによってピストン12の複数のリップ部分36とピストン基部30の間に隙間44が形成される。したがって隙間44が、ピストン基部30とピストン・ヘッド32を延長軸Eで軸方向に隔てている。それにもかかわらず、ピストン基部30、ピストン・ヘッド32、中間部分34及び複数のリップ部分36は一体部品として形成され、すなわちピストン12の全ての構成要素が一体に形成される。
【0048】
ピストン12はただ1つの材料、特に、ショアD硬度計での測定による、55Dから100Dの範囲に選択された硬度を有する、POM、PTFE、PA又はポリマー、或いは熱硬化性材料から射出成形されることが好ましい。
【0049】
当技術分野でよく知られている通り、熱間射出成形材料は、その冷却の間に収縮する恐れがある。しかし、この欠点を克服するために、且つ特に複数のリップ部分36の寸法を維持するために、それぞれのリップ部分36が、ピストン・ヘッド32の側壁38に面する内側表面48上に少なくとも1つの凹所46を有する。
図2及び
図5で最も良くわかる通り、それぞれのリップ部分36につき2つの凹所46が内側表面48上に形成されている。それぞれのリップ部分36が2つより多い又は少ない凹所46を有してよいことが理解されるべきである。さらに凹所46は、ピストン12の延長軸Eに対して前面52へ向かって外側へ傾斜したリップ部分36の外側部分50の上に形成される。リップの外側部分50は凹所46なしで形成されてもよいことが理解されるべきである。
【0050】
リップ部分36のそれぞれは、ピストン12の延長軸Eに対して前面52へ向かって外側へ傾斜した外側部分50を有するだけでなく、ピストン・ヘッド32の側壁38から、ピストン12の延長軸Eに対して半径方向に外側へ延在する半径方向部分54も有する。
【0051】
さらに、個々のリップ部分36のそれぞれは、ピストン・ヘッド32及びピストン基部30に対して移動可能である。加えて、
図3及び
図5に示すピストン12の側面図からわかる通り、複数のリップ部分36によって画定される直径はピストン基部30の直径よりも大きく、したがって、ピストン12がスリーブ16の対応する通路14の中に挿入されると、弾性を持つリップ部分36がスリーブ16の通路14の内壁を押す。しかし、ピストン12がカートリッジ10の吐出軸Dに沿って移動する間に、複数のリップ部分36のいずれのリップ部分36も、過度に折り曲げられ最後にはピストン・ヘッド32から分離することがないことを確実にするために、ピストン基部30が、ピストン基部30へ向かって曲げられた複数のリップ部分36に対する支持体としての役割を果たすように、複数のリップ部分36とピストン基部30の間に形成された隙間44は、再利用可能なカートリッジ・ピストン12の延長軸Eの方向に0.8mmから1.2mmの幅である。
【0052】
リップ部分36は、弾性を持ち又は可撓性があり、破損することなくピストン12及びピストン基部30に対して移動可能であり、且つリップ部分36をスリーブ16の中に手で、ことによると補助のために圧縮空気(例えば690kPa(6.9バール))が使用される可能性があるとしても、機械的に挿入する力に基づいて、移動可能に具現される。
【0053】
フィルム・バッグ・カートリッジ18の中に収納された材料を供給するときに、1000kPa(10バール)から5000kPa(50バール)の範囲の圧力が、ディスペンサを介してピストン基部30上に、且つフィルム・バッグ・カートリッジ18の中に収納された供給材料に加えられる。これらの圧力は、ピストン12及び複数のリップ部分36を介してフィルム・バッグ・カートリッジ18に伝達される。リップ部分36は、ピストン12と同様に、ディスペンサからフィルム・バッグ・カートリッジ18へのこの圧力の伝達にリップ部分36が対処可能なように構成されなければならない。
【0054】
ピストン12がスリーブ16の通路14の中に挿入された場合、ピストン12は、収納位置から吐出位置へ、再利用可能なフィルム・バッグ・カートリッジ10の吐出軸Dに沿って動かされるように構成され、このことによってフィルム・バッグ・カートリッジ18の内部に収納された材料を吐出する。空になったフィルム・バッグ・カートリッジ18の部分を回収するために、複数のリップ部分36及びピストン・ヘッド32の側壁38が、それらの間に、フィルム・バッグ・カートリッジ18の空になった部分を受け回収する環状の溝56を画定する。
【0055】
さらに、カートリッジ10の吐出軸Dに沿った移動の間にピストン12を案内するために、ピストン基部30が、ピストン基部30の側壁60にある複数の案内構造物58を有してよい。案内構造物58は、スリーブ16の中にある対応するチャネルと係合可能な、ピストン基部30の側壁60から突出する軸方向に位置合わせされた突起として形成される。
【0056】
或いは、ピストン12の案内構造物58は、スリーブ16の通路14が対応する突起を有する場合、チャネルとして形成されてもよい。
【0057】
これに関し、スリーブ16及び/又はピストン12がそうした案内構造物58なしで形成され、単に、それらに形成された凹所又は突起がない内側表面を有してよいことに留意されたい。
【0058】
ピストン12が再利用可能なフィルム・バッグ・カートリッジ10の吐出軸Dに沿って移動するので、ピストン基部30から反対に面し、ピストン・ヘッド32に形成された前面52が、フィルム・バッグ・カートリッジ18に押し付けられ、そのことによってフィルム・バッグ・カートリッジ18の内部に収納された材料を、フィルム・バッグ・カートリッジ18の外へ押し出す。
【0059】
有利な供給結果は、ピストン12の前面52が、平らな表面を形成し、且つピストン基部30からピストン12の延長軸Eの方向へリップ部分36よりもさらに間隔を置いて離れている場合に達成される。前面52がリップ部分36のそれぞれを越えて、ピストン12の高さの5%から50%だけ突出することが好ましい。ピストンの高さは一般に、延長軸Eに平行に測定された、前面52と前面52から遠く離れたピストン基部30の端部面64の間の最大の距離として測定される。
【0060】
図4及び
図5から最も良くわかる通り、第2の設計によるピストン12は、空のフィルム・バッグ・カートリッジ18を満杯の新しいフィルム・バッグ・カートリッジ18と交換する間に、ピストン12がスリーブから脱落しないことを確実にするために、スリーブ16にある対応する機構と共に使用される脱落防止具62を有する。
【0061】
脱落防止具62は、基本的にピストン12の延長軸Eと平行に位置合わせされた切り欠きとして形成され、ピストン12のピストン基部30の円周方向のオフセットを有する。脱落防止具62は、スリーブ16の通路14の前方端に配置された突起72と相互に作用するように構成される。第1の設計によるピストン12が少なくとも1つの脱落防止具62を有してもよいことが理解されるべきである。2つ以上の突起72が前方端に配置可能であること、また加えて又は代わりに1つ又は複数の突起72がスリーブ16の後方端に配置されてもよいことに留意されたい。
【0062】
再利用可能なフィルム・バッグ・カートリッジ10からの材料の吐出しは、以下のように機能する。第1にフィルム・バッグ・カートリッジ18がスリーブ16の通路14の内部に設置され、次にピストン12に力が加えられ、力がフィルム・バッグ・カートリッジ18に伝達され、フィルム・バッグ・カートリッジ18がそれによって圧搾されて、続いてフィルム・バッグ・カートリッジ18内に収納された材料を、先頭部22を介して供給する。結果として、材料はフィルム20を乗り越えることになり、吐出口24を通り最終的に混合要素を通ってカートリッジ10から出されることになる。
【0063】
材料がフィルム・バッグ・カートリッジ18から吐出された後、例えばピストンの保守のため又は損傷したピストンを交換するために、ピストン12はスリーブ16の通路14から取り外し可能である。典型的に、これはフィルム・バッグ・カートリッジ18がスリーブ168から取り外されるときに行われる。次いでピストン12又は新しいピストン12がスリーブ16の通路14の中に再び挿入されてよく、その後再利用可能なフィルム・バッグ・カートリッジ10は、再度使用する準備が整う。
【0064】
さらに、それぞれのリップ部分36の厚さが重要であることに留意されたい。厚さが薄すぎるとリップ部分36が過度に脆く又は壊れやすくなる恐れがあり、厚さが厚すぎると容易に移動可能ではなくなることになる。したがって、リップ部分36の典型的な厚さは数mm程度、例えば2mm以下又は0.8mmから1.5mmの厚さになる。
【0065】
さらに、それぞれのリップ部分36の幾何学的な形状は特に限定されず、多角形、長方形、五角形、正方形、六角形、八角形又は三角形などであってよいことに留意されたい。
【0066】
リップ部分36の数も特に限定されず、典型的に4から30まで、特に6から20に変化してよい。リップ部分36の数が多いと、これらはより曲げられやすくなり、したがってより数の多いリップ部分36は、より直径の大きいピストン12に、より適している。トレードオフは、そうしたピストンを製作するために必要な金型及び射出成形設備が、より少ない数のリップ部分36を持つピストン12に比べ、より複雑になることである。
【0067】
図2と
図4の両方に示すように、リップ部分36の間にあるスリット40が均等に間隔を置いて離れておらず、というよりは第1及び第2のスリット部分66、68を有し、その結果、直接隣り合うリップ部分36の間に形成された隙間70が不均等となる。第1のスリット部分66の間の隙間70の間隔は、第2のスリット部分68の間の隙間70の間隔より小さい。第2のスリット部分68の間の隙間70の間隔は、第1のスリット部分66の間の隙間70の間隔の約1.2から1.8倍大きい。
【0068】
これに関し、第1のスリット部分66が好ましくはピストン12の外周へ向かって第2のスリット部分70よりも遠くに配置された状態で、第1のスリット部分66が第2のスリット部分68よりも小さいと好ましいことに留意されたい。
【0069】
さらに、スリット40及び/又は環状の溝56は、形状に関して特に限定されず、これらが多角形、長方形、三角形、U字形、V字形などであってよいことに留意されたい。
【0070】
さらに、スリット40の数は特に限定されず、しばしば4から30、典型的には6から20であってよいことに留意されたい。リップ部分36のいずれかが、互いに延長軸Eに関して垂直にずれて置かれる場合、平均隙間44と、直接隣り合うリップ部分36の間の幅との間で、それらが同一平面内に配置されていると仮定することにより比較を行う。
【符号の説明】
【0071】
10 再利用可能なカートリッジ
12 ピストン
14 通路
16 スリーブ
18 フィルム・バッグ
20 フィルム
22 先頭部
24 吐出口
26 プランジャ
28 キャップ・ナット
30 ピストン基部
32 ピストン・ヘッド
34 中間部分
36 リップ部分
38 側壁
40 スリット
42 チャネル
44 隙間
46 凹所
48 内側表面
50 外側部分
52 前面
54 半径方向部分
56 環状の溝
58 案内構造物
60 側壁
62 脱落防止具
64 端部面
66 第1のスリット部分
68 第2のスリット部分
70 隙間
72 突起
E 延長軸
D 吐出軸