(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-12
(45)【発行日】2023-09-21
(54)【発明の名称】変化するシステムパラメーターのリアルタイム補償を有する検査システム
(51)【国際特許分類】
G01N 3/32 20060101AFI20230913BHJP
G05B 13/02 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
G01N3/32 H
G05B13/02 A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022038967
(22)【出願日】2022-03-14
(62)【分割の表示】P 2018568386の分割
【原出願日】2017-06-08
【審査請求日】2022-04-13
(31)【優先権主張番号】201641022254
(32)【優先日】2016-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(73)【特許権者】
【識別番号】591203428
【氏名又は名称】イリノイ トゥール ワークス インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】サンダー ラマスッブ
(72)【発明者】
【氏名】ソマニャ アマナギ
【審査官】佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05511431(US,A)
【文献】特表2012-516446(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0070457(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0054354(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0020279(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0133448(US,A1)
【文献】特表2010-501846(JP,A)
【文献】国際公開第2014/036010(WO,A1)
【文献】特開2015-028804(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 3/00 - 3/62 、
G05B 1/00 - 7/04 、11/00 -13/04 、
17/00 -17/02 、21/00 -21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体を検査する検査システムであって、
制御された所望の荷重を被検体に印加するアクチュエーターと、
前記アクチュエーターに接続された駆動ユニットと、
前記駆動ユニットに接続されたコントローラーであって、前記被検体から受信されたフィードバックと、入力コマンドと前記フィードバックとの間で導出された誤差とに基づいて前記駆動ユニットの駆動信号を生成するコントローラーと、
を備え、
前記コントローラーは、
前記入力コマンドと、被検体から受信されたフィードバックとに基づいて誤差を求め、
前記誤差を用いることによって、比例利得、積分利得、フィードバック微分利得及びフィードフォワード利得
を計算し、
前記比例利得、前記積分利得、前記フィードバック微分利得及び前記フィードフォワード利得
に基づいて第1の出力を計算し、
前記第1の出力及び前記フィードバックに基づいて予測システム応答パラメーターを計算し、
前記予測システム応答パラメーター及び前記第1の出力に基づいて第2の出力を計算し、
前記第2の出力を処理して、処理された出力を取得し、
前記積分利得、ディザー成分及び前記処理された出力に基づいて前記駆動信号を生成するように構成されている検査システム。
【請求項2】
前記アクチュエーターは、
前記被検体に対して前記制御された所望の荷重を印加する上部アクチュエーターと、
前記被検体の変位を変化させることによって外乱を生み出す下部アクチュエーターと、
を含む、請求項1に記載の検査システム。
【請求項3】
前記上部アクチュエーターは、前記下部アクチュエーターに支持された前記被検体に対する荷重制御の有効性を確認するのに用いられる力センサー及び変位センサーの双方を搭載し、前記下部アクチュエーターは、ストローク制御下で独立に動作して、前記上部アクチュエーターによって感知されるランダムに可変のシステム剛性をシミュレーションする、請求項2に記載の検査システム。
【請求項4】
前記上部アクチュエーター及び前記下部アクチュエーターの自由端に接続された圧縮プレートを更に備え、前記被検体は、該圧縮プレートの間に配置される、請求項2に記載の検査システム。
【請求項5】
変化する前記予測システム応答パラメーターは、
幾何学的寸法及び材料特性の変化を受ける前記被検体に起因して導入される第1のパラメーターと、
荷重不足をもたらす制御要素間でのエネルギーの散逸に起因して導入される第2のパラメーターと、
過荷重又は制御不安定をもたらすシステムにエネルギーを加える前記アクチュエーターの構造の相互作用に起因して導入される第3のパラメーターと、
を含む、請求項1に記載の検査システム。
【請求項6】
前記コントローラーは、以下の式に基づいて第1の出力を計算するように適合され、
【数1】
K
SGは前記検査システムの利得であり、P(t)は比例利得であり、I
2(t)は積分利得であり、D(t)はフィードバック微分利得であり、F(t)はフィードフォワード利得である、請求項1に記載の検査システム。
【請求項7】
前記コントローラーは、前記第1の出力に基づいて以下の式を用いて予測システム応答パラメーターR(t)を計算するように適合され、
【数2】
T
Dは微分時間定数であり、y(t)は前記フィードバックである、請求項6に記載の検査システム。
【請求項8】
前記コントローラーは、前記予測システム応答パラメーターを用いて以下の式に基づいて第2の出力S
C(t)を計算するように適合され、
【数3】
K
Sは予測可撓性比に関する利得係数である、請求項7に記載の検査システム。
【請求項9】
前記コントローラーは、以下の式に基づいて前記駆動信号を生成するように適合され、
【数4】
A(t)は前記第2の出力S
C(t)の減衰された成分であり、I(t)は静的ヌル成分であり、D
I(t)はディザー成分である、請求項8に記載の検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体を検査する検査システムと、この検査システムを制御する方法とに関し、より詳細には、検査システムおよび被検体の非線形応答に起因して導入される変化するシステムパラメーターのリアルタイム補償を考慮する検査システムのコントローラーに関する。
【背景技術】
【0002】
サーボ制御プロセスは、通常、制御されているプロセスパラメーターの所望の(コマンド)読み取り値と実際の(フィードバック)読み取り値との間の差として与えられる誤差を除去するために、サーボ出力[C(t)]をサーボ駆動に供給するサーボループ上に比例[P(t)]利得、積分[I(t)]利得および微分[D(t)]利得を伴うよく知られたPID方式によって駆動される。線形システムは、通常、所与のサーボ出力の関数として一定レートのフィードバック変化
【数1】
を示すシステムである。この場合、このシステムは、一組のPID利得を用いて最良の性能を得るように最適に調節することができる。しかしながら、これは、システムが非線形応答又は不安定な応答を示す場合、すなわち、
【数2】
を[C(t)]の所与の値に一意のものとすることができない場合、十分ではない。これは、静的又は周期的な荷重を受ける試験片に対して荷重を印加するように設計されたサーボ制御される機械的な検査システムに当てはまる場合がある。そのようなシステムでは、非線形応答を考慮するためにいわゆる剛性補正が導入される。この剛性補正は、これを時間の関数として
【数3】
に比例して増減させることによって全体的なPID出力を連続的に補正するために、被検体が受ける変位[s(t)](アクチュエーター位置)および荷重[f(t)]の測定値に依拠する。
【0003】
単純な試験片から複雑な構造物又は部分構造物にまで及ぶ被検体の機械的な検査に用いられるサーボ制御検査システムは、単一又は複数の独立に動作するアクチュエーターの使用と、静的荷重および動的荷重の双方の印加とを要求する。そのような状況は、慣性力、散逸力又は復元力に起因して瞬時システム応答の深刻な歪みを誘発する可能性がある。そのような応答は、被検体の剛性の変化を考慮するPID利得の補正後であっても荷重の印加レートを制限する可能性があり、これは、荷重制御におけるマルチチャネル構造検査において遭遇することが多い問題である。広範囲の荷重レベルおよび周波数にわたって被検体に所望の荷重を正確に印加することは、幾つかの理由に起因して困難になる。それらの理由を幾つか挙げると以下のとおりである。
(R1)被検体は、幾何学的な非線形性および材料の非線形性をもたらす幾何学的寸法および材料特性の変化を受ける;
(R2)荷重不足をもたらす制御要素間でのエネルギーの散逸;
(R3)過荷重又は制御不安定をもたらすシステムにエネルギーを加えるアクチュエーター構造の相互作用。
このシナリオでは、制御要素が所望の荷重を正確に与えることができるように、検査システムおよび被検体のダイナミクスを考慮することが重要である。
【0004】
市販の入手可能な既製の材料又は構造の動的検査システムのほとんどは、比例積分微分(PID)制御アルゴリズムに基づく制御システムを有する。これらの制御システムが功を奏するのは、被検体の線形挙動に沿った小さな範囲の荷重レベルおよび周波数に限られる。なぜならば、これらのシステムは、上述のR1、R2、R3を考慮に入れていないからである。
図1に示す新たなシステムのクラスは、追加の剛性補正パラメーターを有する変更された比例積分微分(PID)制御方法を用いて材料又は構造の変化する特性を考慮に入れることによって、R1を考慮したものである。
図1に示す様々な変数は、次のとおりである。すなわち、r(t):コマンド;y(t):フィードバック;e(t)=r(t)-y(t):誤差;c(t):コントローラー出力;v(t):サーボ駆動出力;u(t):アクチュエーターによって与えられる力;y(t):被検体が受ける力である。
【0005】
このシステム100では、追加のパラメーターである動的剛性が、可撓性、すなわちフィードバックの変化に対する変位の変化の比に換算されて測定される。これには、システム100が荷重制御において変位も測定することが必要である。PIDコントローラーの出力にこの比(可撓性)を乗算することによって、検査中、被検体の可変の剛性が考慮に入れられる。検査中、被検体が非常に硬くなると、変位の小さな変化に対応する荷重フィードバックの変化は非常に大きく、したがって、サーボ出力を駆動する制御利得を低減する必要がある。硬い被検体の測定された可撓性、すなわち剛性の逆数は小さいので、サーボ出力とこの可撓性とを乗算することによって、アクチュエーター応答は、瞬時の被検体の剛性に適合するように適切に調整される。同様に、被検体が非常に大きな可撓性を有するとき、すなわち、荷重の小さな変化に対応する変位の変化が大きいとき、サーボ出力を制御する制御利得を増加させる必要がある。したがって、測定される可撓性、この可撓性とサーボ出力との乗算によって、アクチュエーターの運動に対する増大する要求が考慮に入れられる。このようにして、可変の剛性を有する被検体の動的検査の間、検査システム100の適応制御が実現され、
図1に示されている。測定される有効な可撓性は、測定されるフィードバックである変位および力の双方に依存するので、これは、サーボ駆動のタイプに応じて、少なくとも10ミリ秒~100ミリ秒の遅れを有している。これによって、適応制御において実現することができる最大周波数が制限され、適応制御の有効性も、微分を計算するプロセスにおいて非常に拡大されるストローク変位信号に不可避の雑音によって低下される。マルチチャネル構造検査(例えば、荷重制御において動作する幾つかのアクチュエーターを必要とする航空機構造検査)の場合、剛性補正パラメーターを用いて動作周波数を増加させる追加の応答(変位)測定チャネルのコストは、追加のセンサー、信号コンディショナーおよび高性能データ取得システムが必要となることに起因して受け入れられないほど高い場合がある。
【0006】
図2は、別の通常の検査システム200を示している。このシステムは、検査システムおよび被検体の全体の近似モデルを含めることによってR2およびR3さえも考慮するモデル参照ベースの制御方法を備える。
図2において参照される様々なパラメーターは次のとおりである。すなわち、r(t):コマンド;y(t):フィードバック;e(t)=r(t)-y(t):誤差;c(t):コントローラー出力;v(t):サーボ駆動出力;u(t):アクチュエーターによって与えられる力;y(t):被検体が受ける力;y
m(t):モデルの応答;e
m(t)=r(t)-y
m(t):誤差である。このシステム200では、所与の励起が参照モデルおよび実際のシステムの双方に印加され、次に、数値モデルからの推定された応答と、実際のシステムの測定された応答との比較に基づいて、数値モデルのシステムパラメーターが更新される。この参照モデルは、現在、システムの応答の予測に用いられ、
図2に示すようなコントローラーのパラメーターの変更にも用いられている。しかしながら、この参照モデルベースの制御アルゴリズムの実施には、非常に高性能な計算プロセッサが要求され、また、その成功は、更新されたモデルパラメーターの収束速度およびそれらの正確なモデル化に依存している。さらに、システムの複雑な数値モデルを用いたそのような制御アルゴリズムは、10ms~100msのサーボ応答のレイテンシーを前提としてR1、R2、R3を考慮することが必須であるシステムの高性能リアルタイム制御に対して実行可能でない。したがって、
図1、2に示すような既存の制御アルゴリズムは、本質的に「後知恵(hindsight)」の制御システムである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、当該技術には、上記問題のうちの1つ以上に対する解決策を提供することが必要とされている。本発明は、独特で経済的な方法で上述の問題に対処する可能性を有することがわかっている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の目的は、上述の不利点を十分に克服するシステムを提供することである。
【0009】
本実施の形態の主な目的は、被検体のリアルタイム剛性補正を考慮することによって被検体を検査するシステムおよび方法を提示することである。
【0010】
本実施の形態は、連続的な予測システム応答計算に基づいている。これは、「後知恵」のシステム応答に基づいている従来技術の方法と対照的である。したがって、本実施の形態は、システムが現在のサーボ出力および適切に更新しているPID利得にどのように応答する可能性があるのかの連続的な評価を伴う。これは、コマンド信号に応じた高い忠実度だけでなく、コマンドとフィードバックとの間の位相遅れの0に向かう傾向がある大幅な削減も確実にすることが示されている。本実施の形態は、PID制御システムの基本的な測定値しか用いず、従来技術の方法では必要とされるのとは異なり、測定される追加の変数および/またはシステムの数値モデルに依拠しない。
【0011】
本実施の形態は、広範囲の荷重レベルおよび周波数にわたってシステムパラメーターおよび被検体パラメーターを変化させ、所望の入力荷重をシステムに印加する際に高い忠実度が維持されるような制御要素への変更された入力を推定することを考慮する、システム応答(剛性)を予測する方法を含む。本実施の形態は、歪み又はアクチュエーターストロークのフィードバックのいずれかから瞬時のシステム剛性を評価する必要性をなくす。実際に、本実施の形態は、サーボ制御される必要があるフィードバック以外のいずれのフィードバックも必要としない。本実施の形態は、「後知恵」のシステム応答評価ではなく予測的なシステム応答評価を伴い、したがって、サーボ応答のレイテンシーを実質的に解消する。さらに、本実施の形態は、現在の制御フィードバック以外のいずれのフィードバック測定も必要としない。具体的には、ストローク又は変形/歪みのフィードバックが、荷重制御の質とは無関係にレンダリングされる。本実施の形態は、単一チャネル制御システムからマルチチャネル制御システムに変更なしで容易に拡張可能である。なぜならば、個々のチャネル上において、そのチャネルの制御アルゴリズムを駆動するのに、現在のフィードバックおよびコマンド以外のパラメーターが必要とされないからである。
【0012】
本実施の形態は、PID利得の連続的な補正に基づいているが、
【数4】
を推定することには依拠していない。この実施の形態が機能するのに必要とされる唯一の測定値は、現在のフィードバック読み取り値であり、これは、力、歪み、又は位置である。必要とされるPID利得補正は、「ルックアヘッド」機能を用いた「予測」に基づいて実行され、それによって、サーボ制御の質を、従来の手段を用いて可能であるものよりも改善することが可能になる。
【0013】
本発明の利点および特徴は、非限定的な例として与えられているにすぎない添付図面を参照する以下の説明からより明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】可変の被検体剛性を考慮した通常の検査システムにおける制御方式のブロック図である。
【
図2】可変のシステムパラメーターを考慮した別の通常の検査システムにおける制御方式のブロック図である。
【
図3】本発明における一実施形態による検査システムにおける制御方式のブロック図である。
【
図4】本発明における一実施形態による
図3の駆動信号を生成するフロー図である。
【
図5】本発明における一実施形態によるサーボ液圧検査システムを示す図である。
【
図6A】表3に列挙した制御方式を用いた、外乱が存在しない場合の低速の周期的荷重制御についての時間に対する上部アクチュエーターの変位および荷重の時間履歴を示すグラフである。
【
図6B】表3に列挙した制御方式を用いた、外乱が存在しない場合の低速の周期的荷重制御についての時間に対する上部アクチュエーターの変位および荷重の時間履歴を示すグラフである。
【
図6C】表3に列挙した制御方式を用いた、外乱が存在しない場合の低速の周期的荷重制御についての時間に対する上部アクチュエーターの変位および荷重の時間履歴を示すグラフである。
【
図7】外乱荷重の場合SED1(表4)としての下部アクチュエーターの変位の時間履歴を示すグラフである。
【
図8A】表3に列挙した制御方式を用いた、
図6に示すような第1の外乱SED1が存在する場合の低速の周期的荷重制御についての上部アクチュエーターの変位および荷重の時間履歴を示すグラフである。
【
図8B】表3に列挙した制御方式を用いた、
図6に示すような第1の外乱SED1が存在する場合の低速の周期的荷重制御についての上部アクチュエーターの変位および荷重の時間履歴を示すグラフである。
【
図8C】表3に列挙した制御方式を用いた、
図6に示すような第1の外乱SED1が存在する場合の低速の周期的荷重制御についての上部アクチュエーターの変位および荷重の時間履歴を示すグラフである。
【
図9A】表3に列挙した制御方式を用いた、外乱が存在しない場合の第1の動的荷重ケースDY1の上部アクチュエーターの変位および荷重の時間履歴を示すグラフである。
【
図9B】表3に列挙した制御方式を用いた、外乱が存在しない場合の第1の動的荷重ケースDY1の上部アクチュエーターの変位および荷重の時間履歴を示すグラフである。
【
図9C】表3に列挙した制御方式を用いた、外乱が存在しない場合の第1の動的荷重ケースDY1の上部アクチュエーターの変位および荷重の時間履歴を示すグラフである。
【
図10】荷重ケースDED1(表6)における外乱としての下部アクチュエーターの変位の時間履歴を示すグラフである。
【
図11A】表3に列挙した制御方式を用いた、荷重ケースDED1の上部アクチュエーターの変位および荷重の時間履歴を示すグラフである。
【
図11B】表3に列挙した制御方式を用いた、荷重ケースDED1の上部アクチュエーターの変位および荷重の時間履歴を示すグラフである。
【
図11C】表3に列挙した制御方式を用いた、荷重ケースDED1の上部アクチュエーターの変位および荷重の時間履歴を示すグラフである。
【
図12】提案した制御方式が、航空機翼型梯子構造物に対する荷重のシミュレーションを実証するために実施される検査リグを示す図であり、カンチレバー翼構造物上の分散した荷重は、同時に印加され、複数のアクチュエーターを用いて制御される。
【
図13】
図12に示すような翼構造物に対して全てのアクチュエーターによって同時に印加される分散した荷重の測定値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、本明細書に下記において添付図面に関して説明される。システムパラメーターを考慮することによって被検体を検査するシステムおよび方法が本明細書において説明される。
【0016】
以下の説明は、本発明の例示的な実施形態の説明にすぎず、本発明の範囲も、利用可能性も、構成も限定するものではない。逆に、以下の説明は、本発明の様々な実施形態を実施する便利な例示を提供することを意図している。後に明らかになるように、本明細書で述べるような本発明の範囲から逸脱することなく、これらの実施形態において説明される構造上/動作上の特徴の機能および構成に様々な変更を行うことができる。本明細書における説明は、異なる形状、構成要素等を有する代替的に構成されたデバイスとともに用いられるように適合させることができ、それでもなお本発明の範囲内に含まれることが理解されよう。したがって、本明細書における詳細な説明は、限定ではなく、専ら例示を目的として提示されている。
【0017】
図3は、本発明における一実施形態による被検体302を検査する検査システム300のブロック図を示している。検査システム300は、加算結合部304、コントローラー306、駆動ユニット308およびアクチュエーター310を備える。加算結合部は、入力コマンドr(t)と、被検体302からのフィードバックy(t)とを受信し、誤差[e(t)=r(t)-y(t)]を計算する。誤差e(t)は、コントローラー306に供給され、コントローラー306は、駆動信号c(t)を生成し、この駆動信号は、駆動ユニット308に供給される(例示および説明のために、駆動ユニットは、電気サーボ駆動弁若しくは液圧サーボ弁とすることができるサーボ駆動、又はアクチュエーターを駆動する何らかの物とみなされる。ただし、本明細書において提案する本方法は、被検体を検査する駆動ユニットを駆動する任意の検査システムにおいて実施することができる)。駆動ユニット308は、駆動出力v(t)をアクチュエーター310に放出し、アクチュエーターは、力u(t)を被検体302に与える。被検体302は、力y(t)を受ける。この力は測定され、フィードバックとしてコントローラー306および加算結合部302にフィードバックされる。コントローラー306は、(i)比例成分;(ii)積分成分;(iii)フィードバック微分成分;(iv)フィードフォワード成分;および(v)ディザー成分を伴う制御方法に基づいて駆動信号c(t)を生成する。表1は、これらの成分およびこれらの基本成分から導出された成分のそれぞれをアナログ形式およびデジタル形式で提供する。
図4は、本発明における一実施形態に従って
図3の駆動信号を生成するフロー図である。
【0018】
【0019】
Sc(t):剛性補正されたPIDFサーボ出力、すなわち、それぞれ比例成分、積分成分、微分成分およびフィードフォワード成分を伴うS(t)=P(t)+I2(t)+D(t)+F(t);R(t):見掛けの可撓性(apparent flexibility);TD:微分時間定数;A(t):サーボ出力の減衰された成分;I(t):静的ヌル成分(static null component:静的ゼロ成分);DI(t):ディザー成分。
【0020】
【表2】
注釈:利得定数の値は、サンプル線形被検体の基本手動調節から取得される。
【0021】
表1において、フィードフォワード成分が、制御方式(本発明)の完全性のために表され、それ以外は、KF=0に設定することによって0に維持される。表2は、表1、3において用いられる変数の定義を記載している。PID方式の従来の実施態様は、通常、4つの構成式1~4を含む。従来の方式におけるフィードフォワード成分は、通常、コマンドとフィードバックとの間の位相遅れを低減するのに用いられる。この成分は、任意の予測方式に固有のフィードフォワード傾向のために本発明によって冗長にされる。しかしながら、本実施形態の説明のために、この成分は、0に設定されるが保持される。式6において取得される本実施形態のパラメーターR(t)は、フィードバック微分およびサーボ出力S(t)から計算される。パラメーターR(t)は、表1の式7に示すように、予測システム応答に関する利得係数によって調整される予測システム応答成分を加算することによってコントローラー306の出力S(t)を変更する。表1における式6の予測(ルックアヘッド)特性は、フィードバック測定およびサーボ出力計算に関連したレイテンシーを除いて、サーボ駆動応答、アクチュエーター応答およびシステム機械応答のレイテンシーの和として与えられる時間フレームにまで及ぶ。これは、表1の式5によって計算されるサーボ出力成分の結果が、上記レイテンシーの加算の後にのみ効果的に見られるからである。したがって、この成分と直近に測定された微分フィードバックとの2変数関数として計算されたシステム応答は、瞬時のシステム剛性だけでなく、サーボ液圧機械における非線形性、ヒステリシス、油圧縮率等に関連したサーボ駆動自体の応答の潜在的な変動も考慮するので、本質的に予測的である。式6によって与えられる予測システム応答パラメーターは、式7に利得補正として導入されると、システム応答の予想される変化を考慮するようにシステムのサーボ応答を効果的に補正する。この出力は、次に、表1の式8に示すような不等部分(unequal section)およびシングルエンドサーボ液圧アクチュエーターの場合のようにサーボアクチュエーター応答の潜在的なバイアスを補正され、表1の式9のように事前設定されたユーザー定義のシステム利得定数によって減衰され、サーボヌル成分およびディザー成分と加算されて[表1の式10]、駆動ユニット308への入力として最終的に供給される。
【0022】
図5は、本発明における一実施形態によるサーボ液圧検査システムを示している。この検査システム500は、2つの同軸アクチュエーター、すなわち、上部アクチュエーター504および下部アクチュエーター506を有する。上部アクチュエーター504は、力センサーおよび変位センサー512の双方を搭載している。上部アクチュエーター504は、下部アクチュエーター506に支持された被検体502に対する荷重制御の有効性を確認するのに用いられる。下部アクチュエーター506は、システム剛性の符号が極端に変化する場合を含めて、上部アクチュエーター504によって感知されるランダムに変動するシステム剛性をシミュレーションするようにストローク制御の下で独立に動作する。圧縮プレート508、510は、それぞれアクチュエーター504、406に固定されている。サンプル被検体502(図では圧縮ばねとして示されている)は、これらの圧縮プレート508、510の間に配置される。上部アクチュエーター504は、制御された所望の荷重を被検体502に対して印加するように利用される。下部アクチュエーター506は、変位に関する外乱を生み出すように利用される。それによって、上部アクチュエーターは、様々な制御方式(表3に列挙)の下で、下部アクチュエーターからの周期的又はランダムな変位の擾乱が存在する場合に所望の静的荷重又は動的荷重を制御することができるかどうかを検査され、本実施形態を有する制御方式が従来技術よりも優れていることを示すために比較される(表3参照)。以下で説明する全ての場合において、フィードフォワード成分は、予測システム応答方式を用いているときは0に設定されていたことに留意されたい。
【0023】
下部アクチュエーター506によって導入される動的な変位擾乱が存在しない場合および存在する場合において上部アクチュエーター504によって擬似静的荷重を制御する際の本実施形態の有効性を検討した。以下で
図6~
図11に提供する記録およびその対応する説明は、本実施形態が、所望の荷重波形の再現時の反転中のスティックスリップおよび摩擦の影響を克服することができることを示している。
【0024】
図6A~
図6Cは、表3に列挙した制御方式を用いた、外乱が存在しない場合の低速の周期的荷重制御についての上部アクチュエーターの変位および荷重の時間履歴を有するグラフを示している。
【0025】
【0026】
図6A-6Cは、それぞれ制御方式1(
図6A)、制御方式2(
図6B)および制御方式3(
図6C)を用いた上部アクチュエーター504による定速度の低速周期的荷重(平均2.0kN、振幅0.5kNおよび周波数0.25Hz)の制御を示している。これらの
図6A(a)、
図6B(a)、6C(a)において、破線(--)および点線(・・・)を用いたプロットは、それぞれ荷重コマンドおよび荷重フィードバックを表し、
図6A(b)、
図6B(b)、6C(b)は、上部アクチュエーター504の変位フィードバックを表すことに留意することができる。反転中において
図6A(a)に見られる制御の課題は、
図6B(a)では低減しており、高い忠実度のコマンド波形追従とともにより良好な位相制御が見て取れる
図6C(a)では更に低減していることがわかる。
【0027】
擾乱が存在する場合の静的荷重
次に、この節では、下部アクチュエーター506によって被検体502に印加される様々な動的擾乱が存在する場合に上部アクチュエーター504によって被検体502に所望の荷重を印加する表3に列挙した制御方式の性能を示す。表4は、擾乱荷重ケース(上部アクチュエーター504が、平均2.0kN、振幅0.5kNおよび周波数0.25Hzを有する定速度の低速の周期的荷重を印加することが必要とされている間、下部アクチュエーターによって印加されるSED1)のパラメーターを示している。各検査ケースの結果は、2つのグラフの組に要約されている(例えば、
図7は、下部アクチュエーター506によって印加される外乱SED1の時間履歴を表し、
図8A~
図8Cは、それぞれ、外乱SED1が存在する場合の所望の静的な周期的荷重を制御する際の上部アクチュエーター504に関する制御方式1(
図8A)、制御方式2(
図8B)、および制御方式3(
図8C)の性能を示している)。ここでも、破線および点線を用いた
図8A(a)、
図8B(a)、8C(a)におけるプロットは、それぞれ荷重コマンドおよび荷重フィードバックを表し、
図8A(b)、
図8B(b)、8C(b)は、上部アクチュエーター504の変位フィードバックを表している。様々な動的擾乱が存在する場合に所望の静的荷重を印加する際の提案した実施形態の有効性は、従来技術よりも優れていることがわかる。以下に示す表4は、下部アクチュエーターに課される擾乱荷重ケースを提供する。
【0028】
【0029】
動的荷重
次に、この節では、本質的に動的な外乱が存在しない場合および存在する場合における被検体502に対する上部アクチュエーター504による動的な周期的荷重を制御する際の提案した制御方式の有効性の実証を検討する。ここでの目的は、被検体の幾何特性および材料特性が外乱に起因して変化するときであっても、高い忠実度で所望の荷重を制御する際の慣性および散逸に起因した荷重の影響を克服する本実施形態の有効性を示すことである。
【0030】
擾乱が存在しない場合の動的荷重
繰り返しになるが、この節では、外乱が存在しない場合における動的な周期的荷重を制御する際の制御方式1~3の性能を検討する。プロットの詳細およびそれらの差異は同じままである。以下の表5は、制御方式1~3の有効性が検討される動的荷重ケース(DY1)を示している。
図9A~
図9Cは、それぞれ周波数3.0Hzを用いた動的荷重ケースDY1の制御方式1~3から取得された結果に対応する。レンジ1Hz~25Hzにわたって動的荷重を制御する際にも、制御方式3を有する本発明が他の2つの制御方式よりも利点を有する。
【0031】
表5は、外乱が存在しない場合の上部アクチュエーターに課される動的荷重ケースを示している。
【0032】
【0033】
擾乱が存在する場合の動的荷重
この節では、擾乱荷重(下部アクチュエーター506による)が存在する場合の被検体502に対する所望の荷重(上部アクチュエーター504による)を制御する際の制御方法1~3の性能を比較する。荷重ケース(DED1)は、表6(以下に示す)に要約されている。この荷重ケースに対応する結果は、2つの図の組に表示されている。例えば、荷重ケースDED1の場合、最初の図(
図10)は、下部アクチュエーター506からの擾乱の時間履歴に対応し、残りの3つの図(
図11A~
図11C)は、それぞれ制御方法1~3によって制御された所望の荷重の時間履歴に対応する。
図11D~
図11Fは、
図11A~
図11Cのウィンドウ内のズームに対応する。これらの図から、動的な状況下では、制御の質および所望の荷重制御波形をレンダリングする忠実度の利点が本発明の使用によって得られることを結論付けることができる。以下の表6は、外乱が存在する場合の上部アクチュエーター504に課される動的荷重ケースを提供する。
【0034】
【0035】
検討された全てのケースにおいて、リアルタイム剛性補正が、従来のPID制御方法を用いて可能なものよりも大幅な改善をもたらすことは明らかである。さらに、本実施形態は、サーボ制御の質において、あまり重要ではないが、リアルタイム剛性補正を上回る顕著な改善を与えることは明らかである。一方、これは、アクチュエーターストロークフィードバックの関連要件とともにリアルタイム剛性計算を必要とすることなく達成される。これは、システム応答の計算および予測方法でのその計算におけるサーボ出力計算からの成分の使用の重要性を強調している。
【0036】
航空機翼の動的荷重検査
図12は、提案した制御方式が、航空機翼型梯子構造物に対する荷重のシミュレーションを実証するために実施される検査リグを示し、カンチレバー翼構造物上の分散した荷重は、同時に印加され、複数のアクチュエーターを用いて制御される。検査リグは、アクチュエーター1~8と、Tスロットベッド9と、翼構造物が堅固に接続された支持柱10と、長手方向の3つのI型ビームおよび横手方向の9つのC型ビームから組み立てられた翼構造物11とを備える。
図13は、分散した荷重を制御された方法で同時に印加することによる翼構造物に対する所望の荷重のシミュレーションにおける提案した制御方式の有効性を示している。印加される分散した荷重の詳細は、表7に示されている。
【0037】
【0038】
被検体を検査する検査システムおよび方法の本実施形態は、以下のことを容易にする。
a.計算されたサーボ出力の主要な成分を用いて、予想システム応答を連続的に予測すること。
b.制御対象以外のフィードバックの測定を必要としない。例えば、荷重制御の場合、位置フィードバックの測定は必要とされない。
c.予測システム応答の計算は、システムの複雑な数値モデルを必要としない。
d.サーボ制御に必要とされる全ての計算は、問題になっているチャネルに限定される。これによって、(i)各アクチュエーターの変位を測定することのないマルチチャネル荷重制御検査(例えば、飛行荷重のマルチアクチュエーター航空機翼検査)と、(ii)力の測定も圧力の測定も必要としない多軸加振台検査(例えば、剛性のようなシステムパラメーターを測定する、地震荷重を受けた土木構造物の検査)とが可能になる。
e.予測システム応答関数は、追加の測定パラメーター(制御フィードバック以外)も、その微分も含まないので、サーボ制御のレンダリング品質は、そのようなフィードバックチャネルの信号雑音の影響を受けない。これは、特に検査周波数が高いほど重要である。
f.サーボ出力補正は、予測応答特性に基づいているので、制御とフィードバックとの間の位相遅れを、従来のPIDF方式のようにフィードフォワード方式に依拠することなく除去することができる。
g.予測システム応答計算は、これに限定されるものではないが瞬時のシステム剛性を含むパラメーターを考慮するので、本方式は、位置波形忠実度を改善し位相遅れを除去することによって、位置制御の下でもサーボ応答を改善することができる。
h.これは、本質的に、システム応答の連続的な変化を考慮し、それによって、手動の調節を冗長とすることが可能な自動調節システムである。
i.予測システム応答追従を通じてサーボ応答のレイテンシーを実質上除去することによって、航空機構造物のフルスケール検査の場合のように、マルチチャネルサーボ制御システムにおける最大検査周波数のかなりの増加が可能になる。
【0039】
上記説明は限定ではなく例示であることを意図したものであることが理解されよう。上記説明を読んで理解することで、他の多くの実施形態が当業者に明らかになる。本発明は、特定の例示的な実施形態に関して説明されているが、本発明は、説明した実施形態に限定されるものではなく、添付の特許請求の範囲の趣旨および範囲内において変更および変形を行うことができることが認識されるであろう。したがって、明細書および図面は、限定の意味ではなく例示の意味にみなされるべきである。したがって、本発明の範囲は、特許請求の範囲が権利を有する均等物の全範囲とともに添付の特許請求の範囲に関して画定されるべきである。
【符号の説明】
【0040】
1~8 アクチュエーター
9 Tスロットベッド
10 支持柱
11 翼構造物
100 検査システム
200 検査システム
300 検査システム
302 被検体
304 加算結合部
306 コントローラー
308 駆動ユニット
310 アクチュエーター
406 アクチュエーター
500 検査システム
502 被検体
504 上部アクチュエーター
506 下部アクチュエーター
508 圧縮プレート
510 圧縮プレート
512 力センサーおよび変位センサー