(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-12
(45)【発行日】2023-09-21
(54)【発明の名称】内燃エンジン
(51)【国際特許分類】
F02F 3/22 20060101AFI20230913BHJP
F01M 1/08 20060101ALI20230913BHJP
F01P 3/10 20060101ALI20230913BHJP
F02F 3/00 20060101ALI20230913BHJP
F16J 1/09 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
F02F3/22 A
F01M1/08 B
F01P3/10 A
F02F3/00 G
F16J1/09
(21)【出願番号】P 2022070749
(22)【出願日】2022-04-22
(62)【分割の表示】P 2017192351の分割
【原出願日】2017-10-02
【審査請求日】2022-05-12
(31)【優先権主張番号】10 2016 221 353.9
(32)【優先日】2016-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
【住所又は居所原語表記】Pragstrasse 26-46, D-70376 Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リヒト フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】シャルプ ライナー
【審査官】楠永 吉孝
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-124938(JP,A)
【文献】特表2005-521833(JP,A)
【文献】オーストリア国実用新案第001920(AT,U1)
【文献】特表2010-529357(JP,A)
【文献】特表2014-520990(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102014015946(DE,A1)
【文献】特開2009-215978(JP,A)
【文献】特開2015-175245(JP,A)
【文献】特開平03-194115(JP,A)
【文献】特開平08-035425(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第19634742(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02F 3/00~ 3/28
F01M 1/08
F01P 3/08~ 3/10
F16J 1/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストンヘッド(4)の領域に全周の少なくとも一部を延びるクーリングチャンネル(5)が形成されたピストン(3)と、
上記クーリングチャンネル(5)に連通する入口開口(6)と、
クランクケース(8)の領域に設けられ、対応する上記入口開口(6)内に冷却オイル(7)を噴射するための第1噴射ノズル(9)と、
上記入口開口(6)に設けられ、上記第1噴射ノズル(9)からの第1冷却オイルジェット(11)を集めて上記クーリングチャンネル(5)内に導入するためのじょうご状要素(10)とを備えた内燃エンジン(1)であって、
上記クランクケース(8)に設けられ、上記じょうご状要素(10)に向けられた第2噴射ノズル(12)をさらに備え、
上記じょうご状要素(10)は、上記第1噴射ノズル(9)からの上記第1冷却オイルジェット(11)および上記第2噴射ノズル(12)からの第2冷却オイルジェット(13)を集めて上記クーリングチャンネル(5)内に導入することができるように構成され、
上記第1噴射ノズル(9)の直径と上記第2噴射ノズル(12)の直径とが互いに
異なり、
上記じょうご状要素(10)は、上記第1噴射ノズル(9)からの上記第1冷却オイルジェット(11)と、上記第1噴射ノズル(9)とは直径が異なる上記第2噴射ノズル(12)からの上記第2冷却オイルジェット(13)とを集めるように非対称形状である
ことを特徴とする内燃エンジン。
【請求項2】
請求項1において、
上記第1および第2噴射ノズル(9,12)は、上記第1および第2冷却オイルジェット(11,13)が、対応する上記じょうご状要素(10)に互いに異なるピストン半径(R
1,R
2)において達するように構成されている
ことを特徴とする内燃エンジン。
【請求項3】
請求項1または2において、
上記クーリングチャンネル(5)は、クーリングチャンネルカバー(14)によって覆われている
ことを特徴とする内燃エンジン。
【請求項4】
請求項1または2において、
上記クーリングチャンネル(5)は、上側ピストン部分と下側ピストン部分とを組み立てることで形成されている
ことを特徴とする内燃エンジン。
【請求項5】
請求項4において、
上記じょうご状要素(10)は、上記クーリングチャンネル(5)の凹部にピストン軸方向において保持されている
ことを特徴とする内燃エンジン。
【請求項6】
請求項5において、
上記凹部は、ドリル加工、鍛造、または鋳造によって形成されている
ことを特徴とする内燃エンジン。
【請求項7】
請求項3において、
上記じょうご状要素(10)は、該じょうご状要素(10)を上記クーリングチャンネルカバー(14)に保持するための保持部(15)を有する
ことを特徴とする内燃エンジン。
【請求項8】
請求項7において、
上記保持部(15)は、上記クーリングチャンネルカバー(14)を挟んでクランプするクランプフィンガ(16)を有する
ことを特徴とする内燃エンジン。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項において、
上記第1および第2噴射ノズル(9,12)は、上記第1および第2冷却オイルジェット(11,13)が互いに対して斜めに延びるように向けられている
ことを特徴とする内燃エンジン。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれか1項において、
上記じょうご状要素(10)は、金属から構成され、
および/または、
上記ピストン(3)は、鋼製ピストンまたはアルミピストンとして構成されている
ことを特徴とする内燃エンジン。
【請求項11】
請求項1~
10のいずれか1項において、
それぞれに上記じょうご状要素(10)が設けられた2つの上記入口開口(6,6’)と、
対応する上記入口開口(6,6’)内に上記冷却オイル(7)を噴射するための全部で4つの上記噴射ノズル(9,12)、すなわち一方の上記入口開口(6)に向けられた2つの上記噴射ノズル(9,12)および他方の上記入口開口(6’)に向けられた2つの上記噴射ノズル(9,12)とを備える
ことを特徴とする内燃エンジン。
【請求項12】
請求項1~
11のいずれか1項に記載の内燃エンジン(1)を作動させる方法であって、
部分負荷運転時には、上記第1噴射ノズル(9)のみによって、対応する上記ピストン(3)の対応する上記じょうご状要素(10)内に冷却オイルジェット(11)を噴射させ、
全負荷運転時には、上記第1噴射ノズル(9)および上記第2噴射ノズル(12)によって、対応する上記ピストン(3)の同じ上記じょうご状要素(10)内に冷却オイルジェット(11,13)を噴射させる
ことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部に係る、ピストンヘッドに全周の少なくとも一部を延びるクーリングチャンネルが形成されたピストンを備えた内燃エンジンに関する。本発明は、また、そのような内燃エンジンを作動させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車製造業では、一般的なタイプの内燃エンジンが、広く知られると共に既に様々に利用されている。ここで、ピストンの、したがって内燃エンジンの出力を増大させることができるように、当該ピストンは、例えば燃焼ボウルやトップランドといった熱的負荷の高い領域において冷却される。この目的のために、一般的には、ピストンヘッドにクーリングチャンネルが設けられる。このクーリングチャンネル内には、燃焼ボウルまたはトップランドからピストン下側の低温領域への優れた熱輸送を生み出す冷却媒体が設けられる。クーリングチャンネルが閉じたものである場合には、冷却状態では固体となる一方、作動状態では液体になるナトリウム/カリウム合金が使用されることが多い。クーリングチャンネルが開いたものである場合には、一般にはその内部に冷却オイルが導入される。この場合、そのようなクーリングチャンネルは、少なくとも1つのオイル流入口および少なくとも1つのオイル流出口を有し、これらを介して冷却オイルが当該クーリングチャンネルに供給されまたは当該クーリングチャンネルから排出される。
【0003】
特許文献1には、冷却オイルをピストンのクーリングチャンネルに供給するためのじょうご状要素を備えた一般的なタイプの内燃エンジンが開示されている。当該クーリングチャンネルは、カバープレートによって閉じられている。また、当該じょうご状要素は、クーリングチャンネルに対向する上側筒状パイプ部分と、その下方に隣接する下側開口じょうご状部分と、当該パイプ部分の上側に設けられ、じょうご状要素の縦軸の両側に配置されかつ径方向外側を向いた2つのチャンネルを有するディフューザとを備える。このディフューザは、径方向外側を向いた2つのチャンネルの間に、軸方向中央チャンネルを有する。当該中央チャンネルは、パイプ部分を流通する冷却オイルの一部を、じょうご状要素と逆側のクーリングチャンネルの上側境界部に案内し、それによりピストンの当該領域を冷却する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】独国特許出願公開第102009056922号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、閉じたクーリングチャンネルを有するピストンの欠点は、当該閉じたクーリングチャンネル内に集められる冷却媒体の結果として、冷却性能の調節可能性が限られることである。これに対し、開いたクーリングチャンネルを有するピストンの欠点は、冷却オイルの熱容量が小さいために冷却性能が弱くなることである。
【0006】
したがって、本発明の目的は、一般的なタイプの内燃エンジンに対して、特に従来技術から知られている欠点を克服することのできる改善されたまたは少なくとも従来のものに代わる実施形態を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によると、この目的は、独立請求項1の主題によって達成される。従属請求項は
、有利な実施形態に関する。
【0008】
本発明は、内燃エンジンのピストンを必要に応じて冷却することを可能とすること、つまり生じる負荷に応じてピストンをより強くまたはより弱く冷却することを可能とすることによって、内燃エンジンの出力を増大させるという基本思想に基づく。ここで、本発明に係る内燃エンジンは、ピストンヘッドの領域に全周の少なくとも一部を延びるクーリングチャンネルが形成された少なくとも1つのピストンを備える。当該クーリングチャンネルは、少なくとも1つの入口開口および少なくとも1つの出口開口を有しており、内燃エンジンのクランクケースの領域には、クーリングチャンネルの対応する入口開口に冷却オイルを噴射するための第1噴射ノズルが設けられている。内燃エンジンのピストンは、対応する入口開口に設けられ、第1噴射ノズルからの冷却オイルジェットを集めてクーリングチャンネル内に導入するための少なくとも1つのじょうご状要素を有する。本発明によると、クランクケースに、第1噴射ノズルと同じじょうご状要素に向けられた少なくとも1つの第2噴射ノズルが設けられる。ここで、じょうご状要素は、本発明によると、少なくとも対応する第1および第2噴射ノズルからの冷却オイルジェットを集めてクーリングチャンネル内に導入することができるように構成される。したがって、本発明に係る内燃エンジンによると、クランクケース内の複数の噴射ノズルによる冷却オイルを対応するピストンに作用させることが初めて可能になる。そして、それにより、特に第2または追加噴射ノズルを接続することで、対応するピストンのクーリングチャンネルに第2または追加冷却オイルジェットを供給することによって、より強力にピストンを冷却することができる。そのため、例えば、第2または追加噴射ノズルは、内燃エンジンの全負荷運転時に接続されてもよく、それによりピストンのクーリングチャンネルにより多くの冷却オイルが供給されて当該ピストンが良好に冷却され得る。また、部分負荷運転時には、第2噴射ノズルを介した第2冷却オイルジェットが遮断されてもよい。したがって、比較的小さな冷却力が必要とされる部分負荷運転時には、対応するピストンのクーリングチャンネルへの冷却オイルの噴射量が少なくなり、当該ピストンの冷却が比較的弱くなる。一方、ピストンの強力な冷却が必要とされる全負荷運転時には、ピストンは、第2噴射ノズルの冷却オイルジェットによってさらに冷却され得る。以上のように、ピストンは必要に応じて冷却され得る。したがって、本発明に係る内燃エンジンによると、改善されかつ必要に応じた、よって出力に応じた冷却、特に内燃エンジンの高出力化を可能とする冷却を実現することができる。純粋に理論的には、部分負荷運転時に両噴射ノズルからの冷却オイルをクーリングチャンネルに作用させることも当然に考えられ、ここで当該2つの冷却オイルジェットは、内燃エンジンの全負荷運転時における冷却オイルジェットのジェット出力またはジェット量の一部のみを有する。そして、内燃エンジンのピストンは、全負荷運転時にも両噴射ノズルからの冷却オイルの作用を受けるが、全負荷運転時における第1および第2噴射ノズルの各冷却オイルジェットは部分負荷運転時におけるそれよりも多量または強力である。また、少なくとも1つの第2噴射ノズルを設けることによると、例えば、第1噴射ノズルを従来よりも小さくすること、およびそれにより例えば大きな噴射ノズルのためにクランクケース内でこれまでアクセス不能であった箇所に当該ノズルを設けることが可能となり、それにより従来はアクセス不能であった構造的空間をより小さな噴射ノズルを配置するために利用することができる。
【0009】
本発明に係る解決策の有利な実施形態では、第1および第2噴射ノズルは、それぞれの冷却オイルジェットが、対応するじょうご状要素に互いに異なるピストン半径において達するように構成されている。したがって、この場合、じょうご状要素は、2つの対応する噴射ノズルからの冷却オイルジェットを互いに異なるピストン半径において集められるように構成され、それにより当該2つの噴射ノズルは、2つの冷却オイルジェットが互いに平行であるときには互いに異なるピストン半径に設けられてもよく、または2つの冷却オイルジェットが互いに斜めに延びるときにはクランクケース内の全く異なる箇所に設けられてもよい。ここで、第1噴射ノズルは、その第1冷却オイルジェットが、クーリングチャンネルの実質的に径方向中央部において当該クーリングチャンネルに達するように向けられている。第2噴射ノズルからの第2冷却オイルジェットは、クーリングチャンネルの径方向範囲内には実際には達しないが、じょうご状要素によって集められて当該クーリングチャンネル内に導かれる。
【0010】
有利には、クーリングチャンネルは、以下から知られる態様で、クーリングチャンネルカバー、例えばクーリングチャンネルプレートによって覆われており、ここで、じょうご状要素は、当該じょうご状要素をクーリングチャンネルカバーに保持する保持部を有する。最も好ましい場合には、少なくとも1つのじょうご状要素を、例えば当該じょうご状要素の対応する保持部にクーリングチャンネルカバーを単に押し付けまたはクランプすることによって、クーリングチャンネルのクーリングチャンネルカバーに比較的シンプルに固定することが可能であり、それによりまた、比較的シンプルに、かつよって廉価にピストンを組み立てることが可能となる。
【0011】
有利には、保持部は、クーリングチャンネルカバーを挟んでクランプするための複数のクランプフィンガを有しており、当該クランプフィンガの間でクーリングチャンネルカバーがクランプされる。そのようなクランプフィンガは、したがって、ピストンにじょうご状要素が固定された状態で互いに対してプレストレスを与えられ、よってその間にクーリングチャンネルカバーをクランプする。2つの対向する保持部がそれぞれ2つのクランプフィンガを有するように設けられることによって、ここでは当該2つの保持部が例えば互いに対して180°未満の角度を隔てて配置されることによって、じょうご状要素を、1つのクーリングチャンネルカバーまたは当該領域において互いに隣り合う複数のクーリングチャンネルカバーの対応する入口開口に回転しないように設けることが可能となる。対応する入口開口の領域にじょうご状要素を回転しないように設けることは、少なくとも2つの噴射ノズルの冷却オイルジェットを特に確実に集められるようにするために、およびしたがって特に効果的かつ確実なピストン冷却を実現できるようにするために特に重要である。
【0012】
本発明に係る解決策の別の有利な実施形態では、第1および第2噴射ノズルは、第1および第2冷却オイルジェットが互いに対して斜めに延びるように向けられる。これにより、特に、クランクケース内で2つの噴射ノズルを特に自由に配置することが可能となり、そのことが特に構造的自由度の向上につながる。
【0013】
本発明に係る解決策の有利な展開では、じょうご状要素は、非対称じょうごボウルを有する。例えば、そのような非対称じょうごボウルのようなじょうごボウルの配置は、ピストンシャフトまたはピストンスカートに対して比較的細くなるように選択されてもよく、そのことはまた、じょうご状要素の構成に関する利点や、じょうご状要素のじょうごボウルのサイズおよび捕集範囲に関する利点をもたらす。
【0014】
本発明に係る解決策の別の有利な実施形態では、内燃エンジンは、それぞれにじょうご状要素が設けられた2つの入口開口を有する少なくとも1つのピストンを備えており、ここで、クランクケース内の当該ピストンの領域には、対応する入口開口内に冷却オイルを噴射するための少なくとも4つの噴射ノズルが設けられており、そのうち2つの噴射ノズルは一方の入口開口に向けられ、他の2つの噴射ノズルは他方の入口開口に向けられる。それにより、例えば全負荷運転時に必要とされるピストンの特に効率的かつ強力な冷却を実現することができ、これにより内燃エンジンの出力を増大させることもできる。
【0015】
本発明は、また、内燃エンジンを作動させる方法であって、部分負荷運転時には、第1噴射ノズルのみによって対応するじょうご状要素に冷却オイルジェットを噴射させる一方、全負荷運転時には、第1噴射ノズルおよび少なくとも1つの第2噴射ノズルの両方によって同じじょうご状要素に冷却オイルジェットを噴射させる方法を提示するという基本思想に基づく。それによると、したがって、特に必要に応じて内燃エンジンを冷却すること、およびしたがって内燃エンジンの出力を増大させることを可能とする作動方法を実現することができる。ここで、もちろん、内燃エンジンは、1つのシリンダのみでなく、例えば4つまたは8つのシリンダを備えていてもよく、ここで少なくとも1つの上記じょうご状要素を有するピストンは、本発明によると、これらのシリンダの少なくとも1つに設けられ、また内燃エンジンのクランクケースは、少なくとも1つのピストンの領域に、好ましくは複数または全てのピストンの領域に、共通のじょうご状要素に向けられた少なくとも2つの噴射ノズルを有しており、それにより特に必要に応じて当該ピストンを冷却することが可能となる。ここで、特に有利には、例えば第2噴射ノズルは、そのような態様で向けられかつ接続されまたは作動されている場合に、特定の領域、例えばピストンの上死点または下死点においてのみ当該ピストンのクーリングチャンネル内に冷却オイルを噴射し、それにより位置および回転角度の両方に応じてピストンを冷却するように構成されている。
【0016】
本発明の他の重要な特徴および利点は、従属請求項から、図面から、および図面を参照した対応する図の説明から明らかになるだろう。
【0017】
上述したまたは後述する特徴は、それぞれに示す組合せにおいてのみでなく、本発明の範囲を逸脱することなく、他の組合せにおいてまたは単独でも利用可能であることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、シリンダの領域における本発明に係る内燃エンジンの
図2のZ-Z線における断面図である。
【
図3】
図3は、本発明に係るじょうご状要素を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいはその用途を制限することを意図するものでは全くない。また、同一の参照符号は、同一のもしくは類似のまたは機能的に同一の構成要素を示す。
【0020】
図1に示すように、詳しくは図示しない自動車2の本発明に係る内燃エンジン1は、ピストン3を備える。このピストン3は、ピストンヘッド4の領域に、全周の少なくとも一部を延びるクーリングチャンネル5が形成されている。クーリングチャンネル5は、その中に冷却オイル7を導入するための少なくとも1つの入口開口6、好ましくは
図2に示すように2つの入口開口6,6’と、クーリングチャンネル5から冷却オイル7を排出するための図示しない少なくとも1つの出口開口とを有する。内燃エンジン1のクランクケース8の領域には、冷却オイル7を対応する入口開口6に噴射するための第1噴射ノズル9が設けられている。また、少なくとも1つの入口開口6には、第1噴射ノズル9からの冷却オイルジェット11を集めてクーリングチャンネル5内へ導入するためのじょうご状要素10(
図2および
図3も参照)が設けられている。本発明によると、クランクケース8に、第1噴射ノズル9と同じじょうご状要素10に向けられた少なくとも1つの第2噴射ノズル12(
図1を参照)が設けられる。ここで、じょうご状要素10は、少なくとも対応する第1および第2噴射ノズル9,12からの冷却オイルジェット11,13を集めてそれらを対応するピストン3のクーリングチャンネル5内に導入できるように構成されている。
【0021】
ここで、
図2に示すように、第1および第2噴射ノズル9,12は、それぞれの冷却オイルジェット11,13が互いに異なるピストン半径R
1,R
2において対応するじょうご状要素10に達するように向けられている。ここで、少なくとも1つの第2噴射ノズル12を設けることによって、内燃エンジン1の全く新しい冷却コンセプトが可能となる。とりわけ、例えば全負荷運転時には第2噴射ノズル12を接続する一方、部分負荷運転時には第2噴射ノズル12を遮断することで、内燃エンジン1を必要に応じて冷却することが可能となる。それにより、特に内燃エンジン1の出力容量を実質的に増大させることができる。
【0022】
図1および
図2に示すように、クーリングチャンネル5は、クーリングチャンネルカバー14、例えばクーリングチャンネルプレートによって覆われている。じょうご状要素10は、クランプフィンガ16を有する保持部15を備える。クランプフィンガ16は、じょうご状要素10がピストン3に適合した状態で、クーリングチャンネルカバー14が当該クランプフィンガ16の間にクランプされ得るように向けられかつ構成されている。もちろん、じょうご状要素10は、溶接によって製造されて閉じたクーリングチャンネル5を有するピストン1にも適合可能である。この場合には、したがって、クーリングチャンネル5は、上側ピストン部分と下側ピストン部分とを組み立てることによって形成される。そして、じょうご状要素10は、クーリングチャンネル5の凹部(ドリル加工、鍛造、または鋳造によって作られる)にピストン軸方向において保持されてもよい。
【0023】
特に
図2に示すように、じょうご状要素10の2つの保持部15は、互いに180°を隔てて対向して設けられてはおらず、180°未満の角度を隔てて設けられている。それにより、クーリングチャンネルカバー14に対してじょうご状要素10を所定の位置に明確に取り付けることが可能となり、そのため、当該じょうご状要素10のじょうごボウル17を所定の向きに固定することが可能となりまたは実現される。このことは特に、冷却オイルジェット11,13を高い信頼性をもって集めるために必須である。ここで、2つの噴射ノズル9,12は、少なくとも1つの追加的な噴射ノズル、この例では第2噴射ノズル12を設けることを純粋に例示的に説明するためのものである。したがって、さらなる噴射ノズル、例えば図示しない第3または第4噴射ノズルを設けることも当然に考えられる。
【0024】
図1に示すように、2つの冷却オイルジェット11,13は、対応する噴射ノズル9,12から互いに実質的に平行に延びている。しかしながら、もちろん、第1および第2噴射ノズル9,12は、第1および第2冷却オイルジェット11,13が互いに対して斜めに延びるように向けられていてもよい。後者の例は、
図1において、冷却オイルジェット13’を伴う第2噴射ノズル12によって表されている。
【0025】
図1~
図3に示すように、じょうご状要素10は、冷却オイルジェット11,13または図示しない追加的な冷却オイルジェットを確実に集めるための非対称じょうごボウル17を備える。ここで、じょうご状要素10は、金属、例えばアルミニウムから、または樹脂材料から構成されていてもよく、一方でピストン3は、例えば、鋼製ピストンとしてまたはアルミピストンとして構成されていてもよい。また、例えば
図2のピストン3におけるように、ピストン3毎に2つの入口開口6,6’が設けられていてもよい。この場合、じょうご状要素10は、各入口開口6,6’に設けられてもよく、この例では冷却オイル7を対応する入口開口6,6’内に噴射するために全部で4つの噴射ノズル9,12が設けられる。ここで、2つの噴射ノズル9,12は、一方の入口開口6に向けられ、残る2つの噴射ノズル9,12は、他方の入口開口6’に向けられる。この場合、したがって、内燃エンジン1は、ピストン3毎に、全部で4つの噴射ノズル9,12、すなわち2つの第1噴射ノズル9および2つの第2噴射ノズル12を有する。
【0026】
入口開口6,6’毎に少なくとも2つの噴射ノズル9,12を設けることにより、特にピストン3を必要に応じて冷却すること、よって内燃エンジン1を必要に応じて冷却することが可能となり、それにより内燃エンジン1の冷却を改善することができると共に、内燃エンジン1の出力を増大させることができる。
【0027】
クーリングチャンネル5内での冷却オイル7の流れを最適化するために、じょうご壁の勾配は当然に重要である。この勾配は、じょうごボウル17の高さHおよび/または冷却オイルジェット11,13の直径によって操作できるが、それらは通常予め規定される。ここで、じょうご高さHは、自由に選択可能であるが、その軸方向の広がりにおいて下側シャフト端部18を超えてはならない(
図1を参照)。また、高さHの変更によって、じょうご状要素10の配置に関する自由度が向上し得る。もちろん、じょうご状要素10がクーリングチャンネル5に係合する係合高さhは、特に衝突する冷却オイルジェット11,13の方向転換、よってクーリングチャンネル5内における冷却オイル7の流れ方向が予め規定されるように、個別に設定されてもよい(
図3を参照)。
【0028】
したがって、本発明に係る内燃エンジン1および本発明に係るじょうご状要素10によると、必要に応じて出力に対応した内燃エンジン1の冷却を実現し、それにより内燃エンジン1の出力容量を増大させることができる。
【符号の説明】
【0029】
1 内燃エンジン
3 ピストン
4 ピストンヘッド
5 クーリングチャンネル
6 入口開口
6’ 入口開口
7 冷却オイル
8 クランクケース
9 第1噴射ノズル
10 じょうご状要素
11 冷却オイルジェット
12 第2噴射ノズル
13 冷却オイルジェット
14 クーリングチャンネルカバー
15 保持部
16 クランプフィンガ
17 非対称じょうごボウル
R1 ピストン半径
R2 ピストン半径