(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-12
(45)【発行日】2023-09-21
(54)【発明の名称】ガスケット・シール・アセンブリからガスケット・シールを製造するための方法
(51)【国際特許分類】
F16J 15/10 20060101AFI20230913BHJP
F16J 15/12 20060101ALI20230913BHJP
G04B 37/08 20060101ALI20230913BHJP
G04B 39/02 20060101ALI20230913BHJP
【FI】
F16J15/10 Z
F16J15/12 A
G04B37/08 Z
G04B39/02 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022156072
(22)【出願日】2022-09-29
【審査請求日】2022-09-29
(32)【優先日】2021-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】506425538
【氏名又は名称】ザ・スウォッチ・グループ・リサーチ・アンド・ディベロップメント・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】エンツォ・アウグストーニ
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドル・ジラルダン
(72)【発明者】
【氏名】フランソワ・エルデムリ
【審査官】宮下 浩次
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-038828(JP,A)
【文献】特開2018-059933(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 15/10
F16J 15/12
G04B 37/08
G04B 39/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスケット・シールを製造するための方法であって、結合された少なくとも2つの全く同じ管(20)
からなるアセンブリ(10)
を機械加工操作
することによって複数の
前記ガスケット・シールを製造することにあり、個々の管(20)が2つの端部の間を縦方向の軸に沿って
伸長し、1つの管(20)の前記端部は「第1の端部」(21)と呼ばれ、「第2の端部」(22)と呼ばれる他の管(20)の前記端部の形に対して相補をなす形を有し、
前記少なくとも2つの管(20)は、前記第1の端部および第2の端部(21、22)
が形の相補性によって協同すること
で結合し、少なくとも1つの前記機械加工操作は、前記管(20)における前記第1の端部(21)と前記第2の端部(22)との間に対する前記軸に垂直な横方向への切削操作であることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記機械加工操作を実施する前に、前記アセンブリ(10)を製造する予備ステップを含み、前記アセンブリ(10)を得るために、モールド成形およびそれに引き続く一体結合によって前記管(20)が得られる、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記機械加工操作を実施する前に予備ステップを含み、押出しによって管(20)ごとに円筒ボディー(23)が製造され、また、モールド成形によって第1の端部(21)が製造され、次に前記第1の端部(21)が前記円筒ボディー(23)に固定され、最後に、前記アセンブリ(10)を得るために、このようにして形成された前記管(20)が一体に結合される、請求項1に記載の製造方法。
【請求項4】
前記予備ステップの間、前記第1の端部(21)が前記円筒ボディー(23)の上にオーバーモールドされる、請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
前記管(20)が結合される際に、それらがそれぞれの反対側のそれらの第1の端部および第2の端部(21、22)で一体にねじ止めされる、請求項2に記載の製造方法。
【請求項6】
前記管(20)が結合される際に、それらがそれぞれの反対側のそれらの第1の端部および第2の端部(21、22)で一体ににかわ付けされ、あるいは打ち込まれる、請求項2に記載の製造方法。
【請求項7】
請求項1に記載の方法を実施することによって得られたガスケット・シールを備え、また、ミドル、水晶およびバックによって形成されたケースを備えた腕時計であって、前記ガスケットが、バックと前記ミドルの間、前記水晶と前記ミドルの間、またはベゼルと前記ミドルの間に置かれるよう、前記ミドルに対して配置されることを特徴とする腕時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロエンジニアリングの分野に含まれ、とりわけ、時計学の分野に有利に適用される。
【0002】
より詳細には、本発明は、ガスケット・シール・アセンブリからガスケット・シールを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
腕時計ケースの中に配置されることが意図されたガスケット・シールは、一般的には切削工具を使用した機械加工による切削によって製造され、例えば共線方式で一体に結合された管のアセンブリをフライス削りすることによって、あるいは旋削することによって製造される。
【0004】
管は円筒状の形を有しており、機械加工後に得られるガスケットの形を画定している横方向の断面を含む。
【0005】
自由度がない状態で、互いに対する関係で固定するために、管は、それらの反対側の端部ではんだ付けすることができる。例えばそのために2つの管が、それらの端部のうちの一方によって、それらの融解温度に達するまでホットプレートに対して軸受配置され、また、前記端部は、引き続いて、冷却するまで互いに対して保持される。
【0006】
はんだ付けに対する代替として、2つの隣接する管をそれらの界面で、にかわ層をそれらのそれぞれの端部で広げ、また、にかわが乾くまでそれらをテンプレート上の所定の位置に保持することによってにかわ付けすることも同じく可能である。
【0007】
しかしながらこのような解決法は、共線性許容範囲に関する困難性をもたらす欠点を有していることに加えて、はんだ付けまたはにかわ付けのそれぞれにビードを生成し、アセンブリの内部表面および外部表面にバリを形成する。
【0008】
別法としては、当業者によく知られている、例えばねじ止めされる接続スリーブなどの専用分品によって管をまとめて接続することも可能である。
【0009】
このような解決法は、追加部品をアセンブリの中に加えることによって追加コストをもたらすことに加えて、実現するには一般的に長く、かつ、退屈である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、一体に結合された管の共線性を保証し、アセンブリの外部表面の外観を制御し、また、アセンブリ・テンプレートを不要にし、あるいはアセンブリを製造するための管以外の追加部品を不要にすることができる解決法を提案することにより、上で言及した欠点を解決する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そのために、本発明は、結合された少なくとも2つの全く同じ管によって製造されたアセンブリに機械加工操作によって複数の切り出し物を製造することにある、ガスケット・シールを製造するための方法に関しており、個々の管は、2つの端部の間を縦方向の軸に沿って展開し、1つの管の端部は「第1の端部」と呼ばれ、「第2の端部」と呼ばれる他の管の端部の形に対して相補をなす形を有し、したがって前記第1の端部および第2の端部は、形の相補性によって協同する。
【0012】
有利には、このアセンブリによれば、管の互いに対する共線性を保証することができ、したがって前記アセンブリを機械加工している間、不利であり得る不平衡のあらゆる危険を除去することができる。
【0013】
さらに、これらの特徴によれば、アセンブリの外部表面のあらゆるバリを回避することができる。
【0014】
本発明の別の利点は、管の寸法を制御することができ、したがってアセンブリの寸法を制御することができることにある。
【0015】
特定の実施態様では、本発明は、単独で、あるいは技術的に可能なあらゆる組合せに従って得られる以下の特徴のうちの1つまたは複数をさらに含むことができる。
【0016】
特定の実施態様では、製造方法は、機械加工操作を実施する前に、アセンブリを製造する予備ステップを含み、前記アセンブリを得るために、モールド成形およびそれに引き続く一体結合によって管が得られる。
【0017】
特定の実施態様では、製造方法は、機械加工操作を実施する前に予備ステップを含み、押出しによって管ごとに円筒ボディーが製造され、また、モールド成形によって第1の端部が製造され、次に前記第1の端部が前記円筒ボディーに固定され、最後に、前記アセンブリを得るために、このようにして形成された管が一体に結合される。
【0018】
特定の実施態様では、予備ステップの間、第1の端部が円筒ボディーの上にオーバーモールドされる。
【0019】
特定の実施態様では、管が結合される際に、それらは、それぞれの反対側のそれらの第1の端部および第2の端部で一体にねじ止めされる。
【0020】
特定の実施態様では、管が結合される際に、それらは、それぞれの反対側のそれらの第1の端部および第2の端部で一体ににかわ付けされ、あるいは打ち込まれる。
【0021】
別の態様によれば、本発明は、上で説明した方法を実施することによって得られたガスケット・シールを備え、また、ミドル、水晶およびバックによって形成されたケースを備えた腕時計に関している。ガスケットは、バックとミドルの間、水晶とミドルの間、またはベゼルとミドルの間に置かれるよう、ミドルに対して配置される。
【0022】
本発明の他の特徴および利点は、添付の図面を参照した非制限の例として与えられる以下の詳細な説明を読めば明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】ガスケット・シールを製造するために機械加工されることが意図されたアセンブリの断面図であり、前記アセンブリは、結合された4つの管を備えている。
【
図3】本発明の別の代替実施形態による管の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図はスケール通りではないことに留意されたい。
【0025】
図1は、本発明によるガスケット・シールを製造するために機械加工されることが意図されたアセンブリ10を示したものである。
【0026】
アセンブリ10は、全く同じであることが好ましい複数の管20を含み、これらの管20は、個々の管20の縦方向の軸を結合した縦方向の軸に沿って展開するバーを形成するように結合されている。
【0027】
図2乃至
図3に示されているように、管20の様々な代替実施形態では、個々の管20は、相補形状を有する第1の端部21と第2の端部22の間を展開しており、したがって1つの管20の第1の端部21は、形の相補性により、別の管20の第2の端部22と協同している。
【0028】
したがってアセンブリ10は、アセンブリ10の端部に配置された管20を除き、それらの第1の端部21および第2の端部22の各々によって連続的に一体に結合された複数の管20からなっている。
【0029】
管20は、例えばそれらの界面で打ち込むことによって、および/またはにかわ付けすることによって、自由度がない状態で一体に固定されている。
【0030】
個々の管20の第1の端部21は、有利には、半径方向の表面211から管20の縦方向の軸に沿って展開しているポスト210を含み、第1の端部21はこのポスト210と環状ショルダーを形成している。
【0031】
第2の端部22は、端部表面221で開いている軸方向の開口220によって形成されており、
図1に示されているように隣接する管20のポスト210が係合し、したがって前記ポスト210が展開している半径方向の表面211は、前記端部表面221に対して軸受で配置されており、この接触は互いに隣接する2つの管20の軸方向の位置決めを画定している。
【0032】
2つの隣接する管20の半径方向の位置決めは、開口220内におけるポスト210の係合によって画定されている。
【0033】
より詳細には、
図1乃至
図3に示されている本発明の実施形態では、個々の管20は、その第1の端部21と第2の端部22の間に、外部表面230と内部表面231の間に画定された中空円筒ボディー23を含み、開口220は第2の端部22の内部表面231によって物質化されている。
【0034】
第2の端部22の内部表面231は、有利には、2つの管20の間の固定を強化するために、このテキストにおいて上で言及した可能なにかわ層を受け取ることができ、したがってにかわが外部表面230を越えて突出することはない。
【0035】
別法としては、にかわ層はポスト210の外部表面に加えることも可能である。
【0036】
図に示されている本発明の好ましい実施形態では、個々の管20は、一片で形成されている点で一体鋳造である。
【0037】
円筒ボディー23は、回転の形を有していても、あるいは有していなくてもよい。
【0038】
図1乃至
図2では、管20は、開口220のみがそれらの第2の端部22で開いている限りはブラインドであり、一方、
図3に示されている代替実施形態では、管20は、第1の端部21で同じく開いている貫通開口220を有している。
【0039】
有利には、第2の端部22は、別の管20の開口220中への管20のポスト210の係合を容易にし、したがってアセンブリ10の製造を容易にするために、端部表面221と内部表面231の間に画定された面取りすなわちネックモールド成形222を含むことができる。
【0040】
第1の端部21と第2の端部22の間の形の協同を完全なものにするために、第1の端部21は、半径方向の表面211とポスト210の間に画定された面取りすなわちネックモールド成形212を含むことができる。この場合、個々の管20の第1の端部21のネックモールド成形212は、管20がアセンブリ10の1つの端部、例えば
図1に見ることができるアセンブリ10の右側に端部管20を構成することを除き、前記第1の端部21が協同する隣接する管20の第2の端部22の面取りすなわちネックモールド成形222の反対側である。
【0041】
ポスト210は、この同じ目的で、
図3に示されているようにその自由端に面取りすなわちネックモールド成形213を備えることができる。
【0042】
有利には、第1の端部21および第2の端部22の相補形状は、管20同士の間のあらゆる可能回転を禁止するために回転の形ではない。したがってアセンブリ10は、ねじり力に対してより抵抗力があり、とりわけアセンブリ10を機械加工している間、持ちこたえる。この特徴により、アセンブリ10が破壊する危険を著しく低減することができ、すなわちガスケットを機械加工している間、2つの隣接する管20を分離することができる。
【0043】
より詳細には、ポスト210および開口220の横方向の断面は、多角形の形、例えば正方形、三角形、等々の断面であってもよく、あるいは湾曲した形、例えば楕円形、ポリローブ、等々の断面であってもよい。
【0044】
別法としては、2つの隣接する管20のそれぞれの第1の端部21および第2の端部22は、らせん状の接続によって互いに協同することができる。より詳細には、次にタップされる開口220にねじ込むことによって係合させるために、ポスト210にねじを切ることができる。
【0045】
図には示されていない本発明の別の実施形態では、円筒ボディー23およびポスト210を固着することによって管20が得られるよう、管20ごとに円筒ボディー23およびポスト210を互いに独立して形成することができる。
【0046】
この場合、円筒ボディー23およびポスト210は、異なる材料の円筒ボディー23およびポスト210であってもよく、また、打ち込み、および/またはにかわ付けすることができる。
【0047】
機械加工によるアセンブリ10の連続する横方向の切削操作の後にガスケット・シールを形成することが管20に意図されている限り、使用することができるのは、アセンブリ10の管20のうちの、第1の端部21と第2の端部22の間の界面の外側の部分のみである。言い換えると、アセンブリ10のうちの、管20の第1の端部21と第2の端部22の間の界面からなる部分は使用されず、廃棄物を構成している。
【0048】
一例として、個々の管20は、20センチメートルと80センチメートルの間の、好ましくは30センチメートルの長さを有することができる。
【0049】
管20のこれらの長さの値は、それらが、モールド成形操作によって製造するには困難すぎる管20の長さと、個々の管20のうちの使用可能な部分を最小化するには短すぎる長さとの間の良好な妥協を構成しているため、有利である。
【0050】
上で言及したように、ガスケット・シールを製造するための方法は、切削工具を使用した機械加工操作、とりわけ旋削、詳細には輪郭旋削によって、アセンブリ10中に複数の横方向の切り出し物を製造することにある。この切り出し物として得られたガスケットの断面をそろえるために、引き続いてフライス削り操作などの相補機械加工操作を施すことができる。
【0051】
アセンブリ10の長さは数メートルの長さにすることができ、実際には機械加工機械制約によってのみ制限される。
【0052】
製造方法は、機械加工操作を実施する前に、アセンブリを製造する予備ステップを含み、モールド成形およびそれに引き続く一体結合によって管20が得られる。
【0053】
別法としては、予備ステップの間、押出しによって管20ごとに円筒ボディー23が製造され、また、モールド成形によって第1の端部21が製造され、次に個々の第1の端部21が円筒ボディー23に固定され、最後に、このようにして形成された管20が一体に結合される。
【0054】
より詳細には、予備ステップの間、第1の端部21を円筒ボディーの上にオーバーモールドすることができる。
【0055】
本発明は、腕時計ケースのミドルに対して配置され、例えばバックとミドルの間、水晶とミドルの間、またはベゼルとミドルの間に置かれることが意図されたガスケット・シールを得るようにとりわけ適合される。
【0056】
一例として、管20の材料は重合体、とりわけポリウレタンであり、好ましくは「Asutane」の商標名で当業者に知られているタイプのポリウレタンである。
【0057】
より一般的には、上で考慮した実施態様および実施形態は、非制限の例として説明されていること、また、したがって他の変形態様が可能であることに留意されたい。
【符号の説明】
【0058】
10 アセンブリ
20 管(端部管)
21 管の第1の端部
22 管の第2の端部
23 中空円筒ボディー
210 ポスト
211 半径方向の表面
212 ネックモールド成形
213 ネックモールド成形
220 軸方向の開口(貫通開口)
221 端部表面
222 ネックモールド成形
230 外部表面
231 内部表面