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特許7349015非燃焼加熱式たばこ及び電気加熱式たばこ製品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-12
(45)【発行日】2023-09-21
(54)【発明の名称】非燃焼加熱式たばこ及び電気加熱式たばこ製品
(51)【国際特許分類】
   A24F 40/42 20200101AFI20230913BHJP
   A24F 40/20 20200101ALI20230913BHJP
【FI】
A24F40/42
A24F40/20
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022517084
(86)(22)【出願日】2021-04-22
(86)【国際出願番号】 JP2021016275
(87)【国際公開番号】W WO2021215491
(87)【国際公開日】2021-10-28
【審査請求日】2022-08-05
(31)【優先権主張番号】P 2020075783
(32)【優先日】2020-04-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004569
【氏名又は名称】日本たばこ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中園 崇之
(72)【発明者】
【氏名】山内 悠司
(72)【発明者】
【氏名】吉村 哲哉
(72)【発明者】
【氏名】中合 弘樹
【審査官】木村 麻乃
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2020-0026927(KR,A)
【文献】国際公開第2015/121414(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 40/00-47/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一フィルター部と、第二フィルター部と、前記第一フィルター部と前記第二フィルター部の間に空間部を形成するようにこれらのフィルター部を巻装する巻取紙とを有する筒状の非燃焼加熱式たばこであって、
前記空間部に粒子状のたばこ材料が移動可能に配置され、
前記たばこ材料の安息角が41.5°以下である、非燃焼加熱式たばこ。
【請求項2】
前記たばこ材料が、たばこ顆粒である、請求項1に記載の非燃焼加熱式たばこ。
【請求項3】
前記粒子状のたばこ材料は、710μmの篩目を有する篩を通過し、250μmの篩目を有する篩を通過しない、請求項1または2に記載の非燃焼加熱式たばこ。
【請求項4】
前記空間部の全体積に対するたばこ材料の体積の比率が、30体積%以上、70体積%以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の非燃焼加熱式たばこ。
【請求項5】
前記空間部の全体積に対するたばこ材料の体積の比率が、40体積%以上、60体積%以下である、請求項4に記載の非燃焼加熱式たばこ。
【請求項6】
前記たばこ材料の崩潰角が37.4°以下である、請求項1~5のいずれか1項に記載の非燃焼加熱式たばこ。
【請求項7】
前記たばこ材料の安息角から前記たばこ材料の崩潰角を引いた差角が4.0°以上である、請求項1~6のいずれか1項に記載の非燃焼加熱式たばこ。
【請求項8】
ヒーター部材と、該ヒーター部材の電力源となる電池ユニットと、該ヒーター部材を制御するための制御ユニットとを備える電気加熱型デバイスと、該ヒーター部材に接触するように挿入される、請求項1~7のいずれか1項に記載の非燃焼加熱式たばこと、から構成される、電気加熱式たばこ製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非燃焼加熱式たばこ及び電気加熱式たばこ製品に関する。
【0002】
通常のシガレット(紙巻きたばこ)は、たばこ乾燥葉を1mm程度の幅で刻んだものに香料、保湿剤、適度な水分を添加したものを、おもに紙でできたラッパーで円柱状に巻装したたばこロッドと、酢酸セルロース等からなる繊維、もしくは、ひだ付けした紙を、紙でできたラッパーで円柱状に巻装したマウスピースロッドとを、端と端で突き合わせてライニングペーパーで接続して作られている。
通常のシガレット使用時は、たばこロッドの端部に使用者がライター等で着火し、マウスピース端部から吸引することで喫煙が行われる。たばこロッド先端の火種部は800℃を超える温度で燃焼する。
このような通常シガレットの代替として、燃焼を伴わずに電気加熱を利用した非燃焼加熱型香味吸引物品、非燃焼加熱型のたばこ香味吸引システム及びこれに用いられる非燃焼加熱型香味吸引物品が開発されている(特許文献1~7)。
【0003】
一般的な非燃焼加熱型たばこ香味吸引システム(非燃焼加熱式たばこ製品)は、通常のシガレットと類似した円柱状の非燃焼加熱型たばこ香味吸引物品(非燃焼加熱式たばこ)と、電池、コントローラ、ヒーター等を含む加熱デバイスからなる。ヒーターは電気抵抗によるものとIHによるものがあり、電気抵抗によるヒーターについては、非燃焼加熱式たばことの接点は、円柱状の非燃焼加熱式たばこの外側から加熱するように構成されたもの、もしくは、針状、ブレードのものを非燃焼加熱式たばこの先端からたばこ充填層に挿入するものがある。加熱温度はさまざまであるが、燃焼型での800℃と比較して、低い温度(200~400℃)で加熱されるものが多い。
【0004】
非燃焼加熱式たばこ製品には様々な特性が要求されるが、特に重要となる特性の一つに香味強度が挙げられる。香味強度とは、該非燃焼加熱式たばこ製品の使用時に使用者に与える香味の強さの程度であり、使用者の口腔内にデリバリーされる揮発成分の量を変更することによって制御することができる。非燃焼加熱式たばこ製品では、一般的に、たばこ刻やエアロゾル生成基材、香味材等を含む組成物から構成されるたばこ材料を含むカートリッジ(非燃焼加熱式たばこ)が用いられ、該カートリッジに含まれるたばこ刻や香味材等の種類や使用量、また、フィルターの種類や厚みを変更することによって香味強度が制御されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第05292410号公報
【文献】特許第05771338号公報
【文献】特表2013-507906号公報
【文献】国際公開第2017/198838号
【文献】国際公開第2017/036951号
【文献】特許第05877618号公報
【文献】特表2016-506729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、香味強度を制御する方法としては、カートリッジ(非燃焼加熱式たばこ)に含まれるたばこ刻や香味材等の種類や使用量、また、フィルターの種類や厚みを変更する方法が一般的である。しかしながら、この方法では、各々の非燃焼加熱式たばこに一定の香味強度が設定されるため、製造された非燃焼加熱式たばこの香味強度を使用者が任意に変更することはできない。つまり、香味強度の異なる非燃焼加熱式たばこを使用したい場合、使用者は、複数種類の非燃焼加熱式たばこを入手することが必要となる。状況に応じて香味強度の異なる非燃焼加熱式たばこを使用することは一般的であり、上記の方法で対応する場合、使用者の立場からは、複数種類の非燃焼加熱式たばこを入手するために費用がかさんでしまう問題、また、製造者の立場からは、複数種類の非燃焼加熱式たばこを製造するため生産性が低下してしまう問題が生じる。
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明では、香味強度を制御することのできる非燃焼加熱式たばこ、該非燃焼加熱式たばこを用いた電気加熱式たばこ製品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、非燃焼加熱式たばこに用いられるたばこ材料を粒子状にし、該たばこ材料が非燃焼加熱式たばこ内で移動できるように配置される構造とし、さらに、たばこ材料の安息角を特定の値よりも小さくすることにより、香味強度を制御することのできることを見出し、本発明に到達した。
【0009】
すなわち、本発明の要旨は以下の通りである。
[1]第一フィルター部と、第二フィルター部と、前記第一フィルター部と前記第二フィルター部の間に空間部を形成するようにこれらのフィルター部を巻装する巻取紙とを有する筒状の非燃焼加熱式たばこであって、
前記空間部に粒子状のたばこ材料が移動可能に配置され、
前記たばこ材料の安息角が43°以下である、非燃焼加熱式たばこ。
[2]前記たばこ材料が、たばこ顆粒である、[1]に記載の非燃焼加熱式たばこ。
[3]前記粒子状のたばこ材料の粒度が、>250μm及び<840μmである、[1]または[2]に記載の非燃焼加熱式たばこ。
[4]前記空間部の全体積に対するたばこ材料の体積の比率が、25体積%以上、75体積%以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の非燃焼加熱式たばこ。
[5]前記空間部の全体積に対するたばこ材料の体積の比率が、40体積%以上、60体積%以下である、[4]に記載の非燃焼加熱式たばこ。
[6]前記たばこ材料の崩潰角が40°以下である、[1]~[5]のいずれかに記載の非燃焼加熱式たばこ。
[7]前記たばこ材料の安息角から前記たばこ材料の崩潰角を引いた差角が3°以上である、[1]~[6]のいずれかに記載の非燃焼加熱式たばこ。
[8]ヒーター部材と、該ヒーター部材の電力源となる電池ユニットと、該ヒーター部材を制御するための制御ユニットとを備える電気加熱型デバイスと、該ヒーター部材に接触するように挿入される、[1]~[7]のいずれかに記載の非燃焼加熱式たばこと、から構成される、電気加熱式たばこ製品。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、香味強度を制御することのできる非燃焼加熱式たばこ、該非燃焼加熱式たばこを用いた電気加熱式たばこ製品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係る非燃焼加熱式たばこの概略図である。
図2】本発明の実施形態に係る非燃焼加熱式たばこの傾きの変化に伴い、空間部内のたばこ材料の配置が変化する様子を示す概略図である。
図3A】本発明の実施形態に係る非燃焼加熱式たばこと付加セグメントとが付加セグメント接合紙とで巻装された形態の概略図である。
図3B】本発明の実施形態に係る非燃焼加熱式たばこと付加セグメントとが付加セグメント接合紙とで巻装された形態の概略図である。
図4】本発明の実施形態に係る非燃焼加熱式たばこ製品の斜視図である。
図5】本発明の実施形態に係る非燃焼加熱式たばこ製品からキャップを取り外した状態の斜視図である。
図6図5のIII-III線断面図である。
図7】マウスピースが係合された本発明の実施形態に係る非燃焼加熱式たばこの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の実施形態を詳細に説明するが、これらの説明は本発明の実施形態の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を超えない限りこれらの内容に限定されない。
また、本明細書において、「~」を用いてその前後に数値又は物性値を挟んで表現する場合、その前後の値を含むものとして用いることとする。
なお、図1~7に示す概略図や概念図は、説明のために各種の部材を適宜大きく表したり、小さく表したりしており、本発明の実施形態の実際の大きさや比率を表したものではない。
本明細書において、「たばこベイパー」は、非燃焼加熱式たばこの使用時に使用者の口腔内にデリバリーされる全成分を意味する。また、たばこベイパーは、通常、揮発したたばこ内容成分やエアロゾル生成基材、香料成分等からなり、エアロゾル成分とそれ以外の気体成分の混合物となる。
【0013】
燃焼加熱式たばこ>
本発明の一実施形態である非燃焼加熱式たばこの(単に「非燃焼加熱式たばこ」とも称する。)は、第一フィルター部と、第二フィルター部と、前記第一フィルター部と前記第二フィルター部の間に空間部を形成するようにこれらのフィルター部を巻装する巻取紙とを有する筒状の非燃焼加熱式たばこであって、前記空間部に粒子状のたばこ材料が移動可能に配置され、前記たばこ材料の安息角が43°以下である、非燃焼加熱式たばこである。
【0014】
実施形態に係る非燃焼加熱式たばこの一例を図1に示す。以下、図面に基づいて実施形態に係る非燃焼加熱式たばこを説明する。なお、図1におけるhの方向が、実施形態に係る非燃焼加熱式たばこの長軸方向である。
【0015】
実施形態に係る非燃焼加熱式たばこ20の構成は、図1に示すように、第一フィルター部21、第二フィルター部22、これらのフィルター部の間に空間部23を形成するように巻装して筒状を構成するための巻取紙24、及び空間部に移動可能に配置されたたばこ材料Tを含む。各構成については後述する。第一フィルター部及び第二フィルター部について、本明細書及び図面では便宜的に区別しているが、特段の記載のない限り、これらは区別されず、いずれのフィルター部が第一フィルター部であっても、第二フィルター部であってもよい。
本明細書において、前記粒子状のたばこ材料が移動可能に配置されているとは、前記非燃焼加熱式たばこを上下左右に動かした際に、前記空間部内を前記たばこ材料が移動することを意味する。そのため、粒子状のたばこ材料は流動性を有している。
粒子状のたばこ材料が流動性を有していることで、使用者が非燃焼加熱式たばこの使用時に向きを変えることで、非燃焼加熱式たばこの空間部におけるたばこ材料の配置を自由に変えることができる。非燃焼加熱式たばこの空間部に存在するたばこ材料の配置を変えることで、使用時の通気具合を使用者の好みに応じて変えることができる。
【0016】
非燃焼加熱式たばこは、以下のように定義されるアスペクト比が1以上である形状を満たす柱状形状を有していることが好ましい。
アスペクト比=h/w
wは柱状体の底面の幅(本明細書においては、非燃焼加熱式たばこのいずれかの端部の底面の幅とする。)、hは高さであり、h≧wであることが好ましい。しかし、本実施形態においては、上述した通り、長軸方向はhで示された方向であると規定している。したがって、w≧hである場合においてもhで示された方向を便宜上長軸方向と呼ぶ。底面の形状は限定されず、多角、角丸多角、円、楕円等であってよく、幅wは当該底面が円形の場合は直径、楕円形である場合は長径、多角形または角丸多角である場合は外接円の直径または外接楕円の長径である。例えば、図1に示す態様においては、底面が円であるのでその直径を認定できる。当該直径が幅w、これに直交する長さが高さhとなる。また、幅wに対する高さhで表されるアスペクト比(h/w)は、1以上であることが好ましい。
非燃焼加熱式たばこの長軸方向の長さhは、特段制限されず、例えば、通常15mm以上であり、20mm以上であることが好ましい。また、通常85mm以下であり、60mm以下であることが好ましく、40mm以下であることがより好ましい。
非燃焼加熱式たばこの柱状体の底面の幅wは、特段制限されず、例えば、通常5mm以上であり、5.5mm以上であることが好ましい。また、通常10mm以下であり、9mm以下であることが好ましく、8mm以下であることがより好ましい。
【0017】
図1に示すように、空間部23とは、第一フィルター部21と、第二フィルター部22と、巻取紙24とで囲まれた空間である。
空間部の体積は特段制限されず、非燃焼加熱式たばこ以外の電気加熱式たばこ製品を構
成する他の部材との関係や、該空間部に配置されるたばこ材料の量との関係で適宜設定することができるが、例えば、500mm以上、3000mm以下や、500mm以上、800mm以下とすることができる。
非燃焼加熱式たばこの長軸方向を基準として、非燃焼加熱式たばこの長さhに対する空間部の長さの比率は、特段制限されないが、本発明の効果を発揮できる範囲でたばこ材料の量を確保する観点、また、吸い易い通気抵抗の達成の観点から、0.1以上、0.9以下であることが好ましく、0.4以上、0.7以下であることがより好ましい。
【0018】
第一フィルター部または第二フィルター部の一方が底面となるように前記非燃焼加熱式たばこを載置させたときの、前記第一フィルター部から第二フィルター部までの通気抵抗は、特段制限されないが、吸い易さの観点から、通常10mmHO以上であり、13mmHO以上であることが好ましく、20mmHO以上であることがより好ましく、また、通常70mmHO以下であり、32mmHO以下であることが好ましく、28mmHO以下であることがより好ましい。
本発明の実施形態にかかる非燃焼加熱式たばこの通気抵抗は、上記のように第一フィルター部または第二フィルター部の一方が底面になるように載置した状態で第一フィルター部または第二フィルター部から17.5cm/秒の流量で吸引したときの非燃焼加熱式たばこおける差圧PD(mmHO)のことである。
また、通気抵抗を調整する手段としては、例えば、空間部に配置されるたばこ材料の量や、空間部の高さ、フィルター部の高さを調整すること等が挙げられる。
また、第一フィルター又は第二フィルター部の高さ方向の通気抵抗は、特段制限されないが、吸い易さの観点から、通常6mmHO以下であり、5mmHO以下であることが好ましく、特段下限の好適範囲はないが、通常1mmHO以上である。
【0019】
<たばこ材料>
本実施形態に係るたばこ材料は、粒子状であり、空間部に移動可能に配置され、かつ、安息角が43°以下である。
安息角とは、粉粒体の粒子群が相互の摩擦によって、その表面層が静止状態を保つことができる水平面との間の最大角をいう。
なお、本明細書において、たばこ材料に係る「粒子状」とは、上記の実施形態におけるたばこ材料にはシート状のたばこ材料は含まれないという意味である。
【0020】
たばこ材料が粒子状であり、かつ、空間部に移動可能に配置されている場合、図2に示すように、非燃焼加熱式たばこ20の傾きによって、空間部内のたばこ材料Tの配置が変化する。非燃焼加熱式たばこ20の香味強度は、使用時の吸引により通気する空気によってデリバリーされるたばこ材料Tからの揮発成分の量によって変化する。したがって、使用時のたばこ材料Tの配置によって、香味強度が変化する。
使用時において、空間部内の通気方向に対する通気抵抗が均一でない場合、通気抵抗が小さい部分が主たる通気の経路となる。図2を用いて説明すると、図2(a)のように、たばこ材料Tの長軸方向、つまり、使用時の通気方向を水平にして使用した場合、下側のたばこ材料Tが密に詰まった部分でなく、矢印で示す上側の空気の部分が主たる通気の経路となり、たばこ材料Tと通気する空気との接触がほとんどないため、香味強度が小さくなる。図2(a)の非燃焼加熱式たばこ20を45°程度傾けた図2(b)の状態で使用した場合、通気抵抗が小さい側の矢印で示すような部分が主たる通気の経路となり、図2(a)の場合よりも香味強度が大きくなる。図2(a)の非燃焼加熱式たばこ20を90°傾けた図2(c)の状態で使用した場合、空間部内の通気方向に対する垂直面における通気抵抗が均一であるため、使用時の空気の経路に偏りは生じない。したがって、図2(c)の状態で使用した場合、空間部内のたばこ材料全体が通気する空気と接触するため、図2(a)及び(b)の場合よりも香味強度が大きくなる。
上記の効果を得るためには、非燃焼加熱式たばこの傾きに併せて、たばこ材料が空間部内で適度に移動することが重要である。本発明者らは、鋭意検討した結果、後述の実施例でも示すように、たばこ材料の安息角が43°以下である場合に上記の効果が得られることを見出した。
【0021】
たばこ材料の安息角は、43°以下であれば特段制限されないが、香味強度を制御し易くする観点から、41°以下であることが好ましく、40°以下であることがより好ましく、36°以下であることが更に好ましい。
安息角は、たばこ材料の形状やたばこ材料中の水分等の液状含有物の含有量を制御することにより調整することができ、また、たばこ材料の表面の粗さを増大させることにより、また、たばこ材料同士の摩擦抵抗を増大させることにより、また、液状含有物の含有量を多くすることにより、安息角を大きくすることができる。
安息角は、温度22℃、相対湿度60%の環境下で12時間~24時間蔵置後の試料を用いて、JIS 9301-2-2に記載の方法に準拠し、例えば、安息角測定器(例えば、ホソカワミクロン(株)社製のパウダテスタPT-X)を用いて測定する。
【0022】
非燃焼加熱式たばこを使用する際は、ある程度の衝撃がたばこ粒子に加わるため、実際の使用を想定する観点から、安息角の代わりに崩潰角を採用してもよい。崩潰角とは、安息角に一定の衝撃を与えて崩れたときの角度を示すものである。
たばこ材料の崩潰角は特段制限されないが、香味強度を制御し易くする観点から、43°以下であることが好ましく、40°以下であることがより好ましく、38°以下であることが更に好ましく、30°以下であることが特に好ましい。
崩潰角の調整は、上記の安息角の調整方法と同様の方法により行うことができ、さらに、安息角と崩潰角との差角を大きくする方法は後述する。
たばこ材料の崩潰角は、上記の安息角の測定方法において、安息角の測定後、前の粒子層がのっている台に対し、金属棒で3回振動を与えることを除き、安息角と同様の方法で測定することができる。
【0023】
たばこ材料の安息角から該たばこ材料の崩潰角を引いた差角が大きいことは、使用者が香味強度の制御を意図して非燃焼加熱式たばこを傾ける、必要な振動を与える等の操作する際に、より目的とする機能を発揮できることを意味する。差角が小さいと、使用者が香味強度の制御を意図した行動をとっても、目的とする機能が発揮されづらいことを意味する。たばこ材料の該差角は特段制限されないが、香味強度の調整を容易にすることができる観点から、通常1°以上であり、3°以上であることが好ましく、10°以上であることがより好ましく、通常20°以下である。
上記の差角は、たばこ材料中の水分等の液状含有物の含有量を低減させることにより大きくすることができるが、これに伴い、安息角自体および崩潰角自体も小さくなってしまうため、適度に調整することを要する。また、たばこ材料の表面の粗さを増大させることにより、また、たばこ材料同士の摩擦抵抗を増大させることにより、差角を小さくすることができる。
【0024】
たばこ材料の形態としては、粒子状であれば特段制限されず、例えば、(1)たばこ顆粒(「たばこ材料(A)」とも称する)、(2)たばこ刻み又はたばこ粉砕物を含む組成物から構成されるもの(「たばこ材料(B)」とも称する)、が挙げられるが、たばこ材料(A)(たばこ顆粒)であることが好ましい。
目的とするたばこ香味を実現するために、多品種のたばこ葉を配合して非燃焼加熱式たばこの空間部内に配置する必要があり、たばこ材料(B)は該空間部内にたばこ材料を高速で挿入する際に配合比のばらつきが生じやすい。たいして、たばこ材料(A)は所定の配合比でたばこ葉を配合して顆粒を製造するので、非燃焼加熱式たばこの空間部内に高速で挿入する際に配合比がばらつく可能性が低い。また、たばこ材料搬送時の破砕もたばこ材料(A)の方が少ないことから、通気抵抗のばらつきがたばこ材料(A)使用時の方が少ない。これらの理由から、たばこ材料(B)よりも、たばこ材料(A)の方が好ましい。
たばこ材料は、たばこ材料(A)又はたばこ材料(B)のみからなってもよいが、これらの混合物からなってもよく、また、他の粒子状のたばこ材料を含む混合物としてもよいが、上記と同様の観点から、たばこ材料(A)のみからなることが好ましい。混合物とする場合、その混合割合は任意に設計することができる。
なお、本明細書におけるたばこ顆粒とは、造粒されたたばこという意味である。
【0025】
空間部の全体積に対するたばこ材料の体積の比率は、特段制限されず、非燃焼加熱式たばこやたばこ材料の形態に応じて適宜設定し得るが、好適な通気抵抗を確保する観点から、体積基準で該空間部の体積に対して、通常25体積%以上であり、30体積%以上であることが好ましく、40体積%以上であることがより好ましく、50体積%以上であることが更に好ましい。30体積%以上であることで、たばこ材料に含まれる香味成分が使用者に対して十分に放出される。また、通常75体積%以下であり、70体積%以下であることが好ましく、65体積%以下であることがより好ましく、60体積%以下であることが更に好ましい。70体積%以下であることで、通気抵抗が大きくなりすぎず、良好な吸い応えを確保することができるとともに、たばこ材料の上記空間内での流動性を確保することができる。
空間部の全体積100体積%に対すするたばこ材料の重量の比は、特段制限されず、非燃焼加熱式たばこやたばこ材料の形態に応じて適宜設定し得るが、好適な通気抵抗を確保する観点から、通常0.1g/cm以上であり、0.3g/cm以上であることが好ましく、また、通常1.5g/cm以下であり、1.0g/cm以下であることが好ましく、0.6g/cm以下であることがより好ましい。
【0026】
本実施形態で用いる粒子状のたばこ材料は、以下の篩目を有する篩により分級されたものであることが好ましく、例えば、空間部における移動の容易性や高比表面積が達成され易くなり、ひいては通気抵抗の容易な制御や優れた香味の効果が得られ易い観点から、通常、149μmの篩目を有する篩を通過せず(>149μm(149μm超))、1680μmの篩目を有する篩を通過する(<1680μm(1680μm未満))ものであることが好ましい。より好ましくは、250μmの篩目を有する篩を通過せず(>250μm(250μm超))、840μmの篩目を有する篩を通過する(<840μm(840μm未満))ものである。
本明細書における粒子状たばこの平均粒度は、篩目850μm、710μm、600μm、500μm、425μm、300μm、212μm、106μmで分級して得たたばこ材料の重量を測定し、重量按分して求めることができる。当該測定は、ふるい振とう機(例えば、レッチェ社製のAS 200 CONTROL)を用いて行うことができる。
粒子状のたばこ材料の平均粒度は、用いるたばこ材料を分級することにより調整できる。また、上記の平均粒度の測定対象は、造粒後の顆粒であれば、香味材やエアロゾル生成基材が添加されている顆粒であっても、香味材やエアロゾル生成基材が添加されていない顆粒であってもよいが、より精確な平均粒度を測定できる観点から、香味材やエアロゾル生成基材が添加されていない顆粒を測定することが好ましい。顆粒の大きさは、香味材やエアロゾル生成基材の添加によっては、ほとんど変化しないと推測されるためである。
本発明の実施形態に係る粒子状のたばこ材料の平均粒度は、400μm以上、700μm以下であることが好ましい。
【0027】
また、たばこ材料は、非燃焼加熱式たばこを加熱するためのヒーター部材等との嵌合部を有していてもよい。
[香味発現助剤]
たばこ材料には、香味発現助剤を添加することができる。この香味発現助剤は、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の炭酸塩、炭酸水素塩、酸化物及び水酸化物のうちの少なくとも1つを含む。好ましくは、香味発現助剤は炭酸カリウムもしくは炭酸ナトリウムである。香味発現助剤を添加することで、多くがアミン類であるたばこ内容成分の揮発が確保され、比較的低い温度で加熱するタイプの非燃焼加熱式たばこにおいても、充分なたばこ香味を発現することができる。
香味発現助剤を添加することで、たばこ材料のpHが6.5~11.0になってもよい。
本明細書におけるpHは、pHメーター(例えば、IQ Scientific InstrumentsInc.製のIQ240)で測定し、例えば、たばこ材料2~10gに重量比で10倍の蒸留水を加え、22℃で水とたばこ材料との混合物を200rpmで10分間振盪し5分間静置した後、得られた抽出液のpHをpHメーターで測定する。
【0028】
測定温度22℃におけるたばこ材料のpHは、特段制限されないが、ニコチンをはじめ、多くはアミン類であるたばこ内容成分の揮発を確保する観点から、通常6.5以上であり、7.0以上であることが好ましく、7.5以上であることがより好ましく、また、通常11.0以下であり、10.0以下であることが好ましい。なお、pHは、上述の香味発現助剤の種類や量で主として決定し易いが、他の材料でも変化し得る。
通常のシガレットや非燃焼加熱式たばこに用いられるたばこ材料のpHは、使用するたばこの種類もしくは添加する香料成分の種類によって異なるものの、含まれる様々な有機酸の寄与によって4~6程度であるが、このような小さいpHの場合、つまり酸性環境である場合、多くはアミン類であるたばこ内容成分が揮発され難くい。この点について、通常のシガレットや非燃焼加熱式たばこでは、使用時の加熱温度が高いために、多くはアミン類であるたばこ内容成分の所望の揮発量が確保されている。しかしながら、使用時の加熱温度が高い場合、エアロゾル生成基材の揮発だけでなく、他の成分の分解も生じることにより、白色のたばこベイパーが生じやすくなる。
一方で、たばこ材料のpHを上記範囲にすることにより、使用時の加熱温度を低く保ったまま、つまり、白色のたばこベイパーの抑制を達成しつつ、所望の多くはアミン類であるたばこ内容成分の揮発量を確保することができる。
【0029】
以下、たばこ材料(A)および(B)についてそれぞれ具体的に説明するが、特段の記載がない場合には、各々のたばこ材料に記載された種々の条件や好適範囲は、他のたばこ材料にも適用され得る。
【0030】
<たばこ材料(A)>
たばこ材料(A)は、たばこ顆粒から構成される。
たばこ材料(A)の原料は、特に限定されないが、(a)粉砕されたたばこ材料、(b)水分、(c)炭酸カリウムおよび炭酸水素ナトリウムからなる群の中から選ばれる少なくとも1種の香味発現助剤、並びに(d)プルランおよびヒドロキシプロピルセルロースからなる群の中から選ばれる少なくとも1種のバインダーを挙げることができる。
【0031】
たばこ材料(A)の原料に含まれる、粉砕されたたばこ材料(成分(a))には、たばこ葉や粉砕されたたばこシート、後述するたばこ材料(B)等を粉砕したものが含まれる。たばこの種類には、バーレー種、黄色種、オリエンタル種が含まれる。粉砕されたたばこ材料は、30μm以上、300μm以下の平均粒径に粉砕されていることが好ましい。この平均粒径は、粒度分布測定装置(例えば、Spectris社製のマスターサイザー)を用いて測定することができる。
【0032】
たばこ材料(A)に含まれる、水分(成分(b))は、たばこ顆粒の一体性を維持するためのものである。
たばこ材料(A)の原料混合物は、水分を、通常、3重量%以上、13重量%以下の量で含有する。また、たばこ材料(A)は、水分を、通常、乾燥減量の値が5重量%以上、17重量%以下となるような量で含有し得る。乾燥減量とは、試料の一部を測定のために採取し、採取された試料中の全水分を蒸発させることにより試料を完全乾燥させたとき(例えば、一定の温度(105℃)で15分間乾燥させたとき)の乾燥前後での重量変化を指し、具体的には、試料に含まれている水分の量および上記乾燥条件で揮発する揮発性成分の量の合算値の、試料重量に対する割合(重量%)を指す。すなわち、乾燥減量(重量%)は、以下の式(1)で表すことができる。
乾燥減量(重量%)=
{(完全乾燥前の試料の重量)-(完全乾燥後の試料の重量)}×100/完全乾燥前の試料の重量 (1)
【0033】
たばこ材料(A)に含まれる香味発現助剤(成分(c))は、上述した種類を用いることができる。この香味発現助剤は、たばこ材料(A)のpHをアルカリ側に調整し、以ってたばこ材料(A)に含まれる香味成分をたばこ顆粒から放出させることを促進し、使用者に満足され得る香味をもたらす。
たばこ材料(A)の原料混合物は、香味発現助剤を、通常、5重量%以上、20重量%以下の量で含有し得る。
【0034】
たばこ材料(A)に含まれるバインダー(成分(d))は、たばこ顆粒成分を結着させてたばこ顆粒の一体性を保持するものである。バインダーは、プルラン、ジェランガム、カラギーナン、寒天、グアガム、ローストビーンガム、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)、澱でんぷん、修飾でんぷん、またはこれらの混合物から構成される。
たばこ材料(A)の原料混合物は、バインダーを、通常、0.5重量%以上、15重量%以下の量で含有し得る。
【0035】
たばこ材料(A)は、上記成分(a)、(b)、(c)および(d)からなることができるが、さらに追加の成分を包含することができる。
追加の成分としては、エアロゾル生成基材(成分(e))が挙げられるが、エアロゾル生成基材は含んでも含まなくてもよい。エアロゾル生成基材の種類は特段制限されず、用途に応じて種々の天然物からの抽出物質および/またはそれらの構成成分を選択することができる。エアロゾル生成基材としては、グリセリン、プロピレングリコール、トリアセチン、1,3-ブタンジオール、及びこれらの混合物を挙げることができる。
エアロゾル生成基材が含まれる場合の含有量は、たばこ材料100重量%に対して、10重量%以下を例示でき、別の態様では8重量%以下であり、さらに別の態様では5重量%以下であり、さらに別の態様では3重量%以下であり、さらに別の態様では1重量%以下であり、含有されていないこと(0重量%)を挙げることもできる。
【0036】
追加の成分としては、(f)揮発性香料(「香料成分」または「香味材」とも称する、固体または液体)が挙げられる。揮発性香料は、100℃程度の低温で香料感を発現できる特徴のある香料として任意の香料を使用することができる。香料感とは、非燃焼加熱式たばこを使用した際に、その香料由来の香味を感じることができることをあらわす。香料成分としては、l-メントール、天然植物性香料(例えば、コニャック油、オレンジ油、ジャスミン油、スペアミント油、ペパーミント油、アニス油、コリアンダー油、レモン油、カモミール油、ラブダナム、ベチバー油、ローズ油、ロベージ油)、エステル類(例えば、酢酸メンチル、酢酸イソアミル、酢酸リナリル、プロピオン酸イソアミル、酪酸ブチル、サリチル酸メチル等)、ケトン類(例えば、メントン、イオノン、エチルマルトール等)、アルコール類(例えば、フェニルエチルアルコール、アネトール、シス-6-ノネン-1-オール、ユーカリプトール等)、アルデヒド類(例えば、ベンズアルデヒド等)、ラクトン類(例えば、ω-ペンタデカラクトン等)より選ばれる1種を用いることができる。たばこ材料に含まれる揮発性香料として特に好ましいのは、l-メントール、アネトール、メンチルアセテイト、ユーカリプトール、ω-ペンタデカラクトン、シス-6-ノネン-1-オールが挙げられる。或いは、たばこ材料に含まれる揮発性香料は、上記群より選ばれた2種以上を混合して用いてもよい。
【0037】
たばこ材料(A)に含まれる揮発性香料は、固体で使用されてもよいし、適切な溶媒、例えばプロピレングリコール、エチルアルコール、ベンジルアルコール、グリセリンに溶解または分散させて使用されてもよい。好ましくは、乳化剤の添加により溶媒中で分散状態が形成されやすい香料、たとえば疎水性香料や油溶性香料等を用いることができる。これらの香料成分は、単独で用いてもよいし、混合して用いてもよい。
【0038】
たばこ材料(A)の原料混合物は、上記香味材を、通常、0.5重量%以上、30重量%以下の量で含有し得る。上記香味材は、成分(a)、(b)、(c)、(d)および(e)と直接混練することにより上記成分に添加してもよいし、あるいは、サイクロデキストリンなどの公知の包接ホスト化合物に担持して包接化合物を調製してからそれを上記成分と混練することにより上記成分に添加してもよい。また、香味材を添加せずにたばこ材料(A)を作成した後に、溶剤に溶かした香味材をスプレー噴霧して添加することもできる
上記原料混合物から得られるたばこ材料(A)中の香料の含有量は、特に限定されず、良好な香味の付与の観点から、通常100ppm以上であり、好ましくは1000ppm以上であり、より好ましくは5000ppm以上であり、また、通常100000ppm以下であり、好ましくは40000ppm以下であり、より好ましくは25000ppm以下である。
【0039】
たばこ材料(A)は、上記成分(a)、(b)、(c)、(d)、(e)および(f)からなる場合、そのたばこ材料(A)の原料混合物は、成分(a)を、通常、約20重量%以上(約80重量%以下)の量で含有し得る。
【0040】
たばこ材料(A)は、例えば、成分(a)、(b)、(c)および(d)並びに所望により成分(e)、(f)を混合し、得られた混練物を湿式押出し造粒機で造粒(長柱状)した後、短柱状あるいは球状に整粒することによって得られる。
押出し造粒に際する押出圧力は、混練物の粘度等に応じて任意に設定することができる。例えば、混練物を周囲温度で、2kN以上の圧力で押出す態様を挙げることができる。このような比較的高圧で押出すことにより、押出し造粒機出口での混練物は温度が周囲温度から例えば90℃以上、100℃以下まで瞬間的に急激に上昇し、水分および揮発性成分が2重量%以上、4重量%以下で蒸発する。したがって、このような態様で押出し造粒を行う場合には、混練物を作るために配合する水を、得られるたばこ顆粒中の所望水分よりも上記蒸発量だけ多くすることが求められる。
【0041】
押出し造粒により得られたたばこ顆粒は、水分調整のために、必要に応じてさらに乾燥させてもよい。たとえば、押出し造粒により得られたたばこ顆粒の乾燥減量を測定し、それが、所望の乾燥減量(たとえば5重量%以上、17重量%以下)より高い場合、所望の乾燥減量を得るためにたばこ顆粒をさらに乾燥させてもよい。所望の乾燥減量を得るための乾燥条件(温度および時間)は、乾燥減量を所定の値だけ減少させるために必要な乾燥条件(温度および時間)を予め決定し、その条件に基づいて設定することができる。
【0042】
たばこ材料(A)は、上記のたばこ顆粒のみからなることができるが、その他に、追加のたばこ材料をさらに含むことができる。追加のたばこ材料は、通常、たばこ葉の刻もしくは細粉である。追加のたばこ材料は、たばこ顆粒と混合して使用することができる。
【0043】
<たばこ材料(B)>
たばこ材料(B)に含まれるたばこ刻みの材料は特に限定されず、ラミナや中骨等の公知のものを用いることができる。例えば、乾燥したたばこ葉を、幅0.5mm以上、2.0mm以下に刻んだものを用いてもよい。刻まれたたばこ葉の長さは0.5mm以上、10mm以下程度の範囲となる。また、乾燥したたばこ葉を平均粒径が20μm以上、200μm以下になるように粉砕してたばこ粉砕物とし、これを均一化したものをシート加工したもの(以下、単に均一化シートともいう)を幅0.5mm以上、2.0mm以下に刻んだものであってもよい。たばこ粉砕物の平均粒径は、粒度分布測定装置(例えば、Spectris社製のマスターサイザー)を用いて測定することができる。刻まれた均一化シートの長さは0.5mm以上、10mm以下程度の範囲となる。前記たばこ刻み及び均一化シートの作製に用いるたばこ葉について、使用するたばこの種類は、様々なものを用いることができる。例えば、黄色種、バーレー種、オリエント種、在来種、その他のニコチアナ-タバカム系品種、ニコチアナ-ルスチカ系品種、及びこれらの混合物を挙げることができる。混合物については、目的とする味となるように、前記の各品種を適宜ブレンドして用いることができる。前記たばこの品種の詳細は、「たばこの事典、たばこ総合研究センター、2009.3.31」に開示されている。前記均一化シートの製造方法、すなわち、たばこ葉を粉砕して均一化シートに加工する方法は従来の方法が複数存在している。1つ目は抄紙プロセスを用いて抄造シートを作製する方法である。2つ目は水等の適切な溶媒を、粉砕したたばこ葉に混ぜて均一化した後に金属製板もしくは金属製板ベルトの上に均一化物を薄くキャスティングし、乾燥させてキャストシートを作製する方法である。3つ目は水等の適切な溶媒を、粉砕したたばこ葉に混ぜて均一化したものをシート状に押し出し成型して圧延シートを作製する方法である。前記均一化シートの種類については、「たばこの事典、たばこ総合研究センター、2009.3.31」に詳細が開示されている。
【0044】
たばこ材料(B)の水分含有量は、たばこ材料の全量に対して10重量%以上、15重量%以下を挙げることができ、11重量%以上、13重量%以下であることが好ましい。このような水分含有量であると、製造時製造後の水分変化が少ないことから、製造時の工程管理や製造後の品質劣化が少ない。
【0045】
たばこ材料(B)は、上述したたばこ材料(A)における(a)~(f)の材料を含んでいてもよい。これらの材料の種類や含有量、その他の使用態様は、上述のたばこ材料(A)と同様にして設計することができる。
【0046】
<巻取紙>
巻取紙の構成は、特段制限されず、一般的な巻取紙、又は巻紙の態様とすることができる。
【0047】
巻取紙としては、パルプが主成分のものを挙げることができる。パルプとしては、針葉樹パルプや広葉樹パルプなどの木材パルプで抄造される以外にも、亜麻パルプ、大麻パルプ、サイザル麻パルプ、エスパルトなど一般的にたばこ物品用の巻紙に使用される非木材パルプを混抄して製造して得たものでもよい。
パルプの種類としては、クラフト蒸解法、酸性・中性・アルカリ亜硫酸塩蒸解法、ソーダ塩蒸解法等による化学パルプ、グランドパルプ、ケミグランドパルプ、サーモメカニカルパルプ等を使用できる。
パルプの繊維の長さ及び太さは、特段制限されず、通常0.1mm以上、5mm以下の長さ、10μm以上、60μm以下の太さを有する。
【0048】
上記パルプを用いて長網抄紙機、円網抄紙機、円短複合抄紙機等による抄紙工程の中で、地合いを整え均一化して巻取紙を製造する。なお、必要に応じて、湿潤紙力増強剤を添加して巻取紙に耐水性を付与したり、サイズ剤を添加して巻取紙の印刷具合の調整を行ったりすることができる。さらに、硫酸バンド、各種のアニオン性、カチオン性、ノニオン性或いは、両性の歩留まり向上剤、濾水性向上剤、及び紙力増強剤等の抄紙用内添助剤、並びに、染料、pH調整剤、消泡剤、ピッチコントロール剤、及びスライムコントロール剤等の製紙用添加剤を添加することができる。
【0049】
巻取紙の通気度は、特段制限されないが、たばこ材料中の成分が巻取紙から染み出すことを抑制し易くなる観点から、通常0コレスタ単位以上、50コレスタ単位以下であり、0コレスタ単位以上、30コレスタ単位以上であることが好ましい。
本明細書でいう通気度は、紙の片面(2cm)から1kPaの一定圧力下で空気を通過させた際の、1分・1cmあたりの通気(透過)した空気流量をいう。
【0050】
巻取紙は、上記の材料からなる紙層のみからなる単層でもよいが、樹脂からなる樹脂層や金属からなる金属箔層等の不透過層と積層させた態様であってもよい。積層させる場合、紙層及び不透過層からなる二層としてもよいが、1つの不透過層を2つの紙層で挟んで積層する三層や、これらの層間に接着層を設けた三層以上の積層であることが好ましい。巻取紙を構成する層数の上限は、特に限定されないが、巻き上げる際の加工容易性の観点から、七層以下であることが好ましい。
不透過層を設けることにより、たばこ材料中の成分が巻取紙から染み出すことを抑制し易くなり、紙層を表面層及び裏面層に設けることで、巻取紙を巻装する際の接着が強力になり、剥離を抑制することができる。
不透過層を樹脂層とする場合、その種類は、特段制限されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、PET、ポリ乳酸等が挙げられる。
樹脂層を設ける方法は特段制限されないが、シート状の樹脂をバインダーを用いて紙に接着させてもよく、シート状の樹脂をホットメルトを利用して紙に接着させてもよく、また、紙に溶融した樹脂を直接塗布してもよい。紙と樹脂とを接着させるバインダーとしては、例えば、PVA、PVAc、EVA、CMC、HPMC、HPC等を用いることができる。
最終的にシート状の巻取紙を巻き取る際には、通常、バインダーを用いて、紙と紙、または、紙と樹脂を接着させる。例えば、紙と紙とを接着させるバインダーとしては、酢酸ビニルやEVA等を用いることができる。
【0051】
非燃焼加熱式たばこにおける、巻取紙の坪量は、例えば、通常110gsm以上であり、好ましくは120gsm以上である。一方、坪量は通常180gsm以下、好ましくは160gsm以下、である。
巻取紙の厚さは、巻き上げ機により製造した非燃焼加熱式たばこの巻取紙の接合部が剥離することを抑制する観点から、300μm以下であることが好ましく、250μm以下であることがより好ましい。一方で、該巻取紙の厚さは、非燃焼加熱式たばこ製品のマウスピースによる非燃焼加熱式たばこの保持性能の観点や、たばこ材料に含まれる香料による巻取紙への染みが視認されない観点から、100μm以上であることが好ましく、120μm以上であることがより好ましい。
【0052】
巻取紙が表面紙層、空気不透過性層の中間層、裏面紙層の順番に積層された構造を有する場合、例えば、巻取紙全体の特性を上述の特性の数値範囲内とするために次の条件とすることができる。
なお、中間層は、樹脂層や金属層等からなる空気不透過層を含んでいれば、2層以上で構成されていてもよい。
【0053】
巻取紙の表面紙層となる紙は、その坪量が30gsm以上、100gsm以下であることが好ましく、40gsm以上、80gsm以下であることがより好ましい。
巻取紙の表面紙層となる紙は、その厚さが30μm以上、100μm以下であることが好ましく、30μm以上、80μm以下であることがより好ましい。
【0054】
巻取紙の表面層となる紙は、上述したような数値範囲を満たせば特に限定されないが、例えば、日本製紙パピリア株式会社製の、OPN♯85(坪量:85gsm、通気度:40C.U.、厚さ:97μm)やOPN♯57(坪量:57gsm、通気度:40C.U.、厚さ:65μm)を挙げることができる。
【0055】
巻取紙の裏面紙層となる紙は、その坪量が20gsm以上、100gsm以下であることが好ましく、30gsm以上、60gsm以下であることがより好ましい。
巻取紙の裏面紙層となる紙は、その厚さが30μm以上、100μm以下であることが好ましく、40μm以上、70μm以下であることがより好ましい。
【0056】
空気不透過性層を含む中間層は、その坪量が15gsm以上、100gsm以下であることが好ましく、20gsm以上、60gsm以下であることがより好ましい。
空気不透過性層を含む中間層は、その厚さが10μm以上、100μm以下であることが好ましく、20μm以上、50μm以下であることがより好ましい。
【0057】
巻取紙の裏面層となる紙は、上述したような数値範囲を満たせば特に限定されないが、例えば、日本製紙パピリア株式会社製の、S52-7000(坪量:52gsm、通気度:7000C.U.、厚さ:110μm)、同社製のP-10000C(坪量:24gsm、通気度:10000C.U.、厚さ60μm)、P-20000C(坪量:26.5gsm、通気度:20000C.U.、厚さ75μm)及びP-30000C(坪量:21gsm、通気度:30000C.U.、厚さ77μm)が挙げられる。
【0058】
該非燃焼加熱式たばこの巻取紙として、その形状は正方形又は長方形を挙げることができる。
フィルター部及びたばこ材料を巻装するための巻取紙として利用する場合、その巻取紙のサイズは用途によって任意に変更し得る。たばこ材料を巻取紙で柱状に巻装する際は、例えば、図1のw方向の巻取紙の端部とその逆側の端部を2mm程度重ね合わせて糊付けすることで、柱状の紙管の形状となる。長方形形状の巻取紙のサイズは、出来上がった非燃焼加熱式たばこのサイズによって決めることができる。
【0059】
上記のパルプの他に、本実施形態にかかる巻取紙には填料が含まれてもよい。填料の含有量は、本発明の実施形態にかかる巻取紙の全重量に対して10重量%以上、60重量%未満を挙げることができ、15重量%以上、45重量%以下であることが好ましい。
填料としては、炭酸カルシウム、二酸化チタン、カオリン等を使用することができるが、香味や白色度を高める観点等から炭酸カルシウムを使用することが好ましい。
【0060】
また、巻取紙は、適宜コーティングされていてもよい。
巻取紙には、その表面及び裏面の2面のうち、少なくとも1面にコーティング剤が添加されてもよい。コーティング剤としては特に制限はないが、紙の表面に膜を形成し、液体の透過性を減少させることができるコーティング剤が好ましい。例えばアルギン酸及びその塩(例えばナトリウム塩)、ペクチンのような多糖類、エチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ニトロセルロースのようなセルロース誘導体、デンプンやその誘導体(例えばカルボキシメチルデンプン、ヒドロキシアルキルデンプン及びカチオンデンプンのようなエーテル誘導体、酢酸デンプン、リン酸デンプン及びオクテニルコハク酸デンプンのようなエステル誘導体)を挙げることができる。
【0061】
<フィルター部>
本実施形態の非燃焼加熱式たばこは第一フィルター部と第二フィルター部とを有しているが、これらに区別はなく、いずれのフィルター部を吸口側とするか、ヒーター側とするかは、使用時に用いられる電気加熱式たばこ製品の形態に応じて使用者が任意に決めることができる。以下のフィルター部の説明は、特段の記載がない限り、第一フィルター部又は第二フィルター部のいずれにも適用される。また、第一フィルター部の構成と第二フィルター部の構成とは、使用可能な範囲内で、異なっていてもよく、また、同一であってもよい。
フィルター部は、後述するフィルターを含む部分であり、一般的なフィルターとしての機能を有していれば特に制限されず、例えば、フィルターのみからなる、単一のセグメントから構成されてもよく、フィルターとその他の部材とを組合せてなる、複数のセグメントから構成されてもよい。
また、フィルター部として、後述する添加剤放出容器を含むフィルター部を用いる態様でもよい。
【0062】
第一フィルター部及び第二フィルター部の大きさは特段制限されず、使用時に用いられる非燃焼加熱式たばこの形態、また、使用時に用いる電気加熱式たばこ製品の形態に合わせて適宜設定できるが、例えば、以下のような態様をとることができる。フィルター部において、非燃焼加熱式たばこの長軸方向の長さを「高さ」とする。
フィルター部1つ当たりの高さは、良好な通気抵抗を確保する観点から、通常3mm以上であり、4mm以上であることが好ましく、また、通常15mm以下であり、10mm以下であることが好ましい。
非燃焼加熱式たばこが柱状体である場合、フィルター部も柱状体となるが、その直径(幅)は、理論的には、非燃焼加熱式たばこの柱状体の底面の幅wよりも小さく、上述した巻取紙の厚さの2倍の値に、柱状体のフィルター部の幅を加えた値が非燃焼加熱式たばこの柱状体の底面の幅wとなる。
【0063】
フィルターの材料としては、セルロースアセテートトウを円柱状に加工したものを挙げることができる。一般的な、燃焼式たばこと比較して、本発明の実施形態に係る非燃焼加熱式たばこは、フィルター部でのたばこベイパーの除去量が少ない方が好ましい。このような観点から、円周24.5mmの非燃焼加熱式たばこの場合、セルロースアセテートトウの単糸繊度は5g/9000m以上、20g/9000m以下、好ましくは5g/9000m以上、12g/9000m以下であり、総繊度は12000g/9000m以上、35000g/9000m以下、好ましくは12000g/9000m以上、28000g/9000m以下である。また、繊維充填密度は0.09g/cc以上、0.12g/cc以下であることが好ましい。セルロースアセテートトウの繊維の断面形状は、Y断面でもよいしR断面でもよい。セルロースアセテートトウを充填したフィルターの場合は、フィルター硬さを向上させるためにトリアセチンをセルロースアセテートトウ重量に対して、5重量%以上、10重量%以下添加してもよい。
また、セルロースアセテートトウを円柱状に加工する方法として、セルロースアセテートトウをフィルター用巻取紙で巻き上げる方法を用いることもできる。フィルター用巻取紙の物性は、特に限定されないが、例えば、通気度1000C.U.以上の高通気度紙や100C.U.未満の低通気度紙を用いる態様を挙げることができる。また、フィルター用巻取紙は通常のシガレット用フィルターで使用されている巻取紙を用いることができ、例えば、坪量が30~100g/m、厚さが30~100μmのものを用いることができる。このような高通気度紙としては、特に限定されないが、日本製紙パピリア製のLPWS-OLL(通気度1300C.U.、坪量26.5gsm、厚さ48μm)、P-10000C(通気度10000C.U.、坪量24.0gsm、厚さ60μm)、もしくは、普通紙(通気度0C.U.、坪量24gsm、厚さ32μm)を例示することができる。
また、上述のようなアセテートトウ等のトウからなるフィルターの他、パルプを主成分とする紙や不織布のシートを充填したフィルターを用いる態様でもよい。
フィルター材料の製造において、通気抵抗の調整や添加物(公知の吸着剤や香料、香料保持材等)の添加を適宜設計できる。
【0064】
上述のとおり、第一フィルター部及び第二フィルター部は、それぞれ単一のセグメントから構成されていてもよく、複数のセグメントから構成されていてもよい。第一フィルター部及び/又は第二フィルター部が複数のセグメントから構成されている場合であっても、前記巻取紙はこれらを巻装し、非燃焼加熱式たばこを構成する。
第一フィルター部及び/又は第二フィルター部が単一のセグメントから構成される場合、例えば、フィルター部がセルロースアセテートトウを充填したフィルターのみから構成される態様や、パルプを主成分とする紙や不織布のシートを充填したフィルターのみから構成される態様が挙げることができる。また、これらのフィルター中に後述する添加剤放出容器を含む態様を挙げることもできる。
第一フィルター部及び/又は第二フィルター部が複数のセグメントから構成される場合の一態様としては、該複数のセグメントが、複数の同一又は異なるフィルターから構成される態様を挙げることができる。この場合、前記フィルターは、上述したアセテートトウを充填したものでもよく、パルプを主成分とする紙や不織布のシートを充填したものでもよく、後述する添加剤放出容器を含むものであってもよい。
また、第一及び第二のフィルター部が複数のセグメントから構成される別の態様としては、フィルターとそれ以外の部材とから構成される態様を挙げることができる。前記「それ以外の部材」としては、特に限定されないが、例えば厚紙を円筒状に加工した紙管を挙げることができる。例えば、非燃焼加熱式たばこ長軸方向の長さを伸ばそうとしたときに、たばこ充填セクション(空間部)の長さを伸ばすと、必要以上にたばこ材料を配置しなければならず、フィルターの長さを伸ばすと、フィルター部の通気抵抗が増大し、吸い込みやすさに影響を与える。この場合に、紙管を用いると、上記影響を受けずに非燃焼加熱式たばこの長軸方向の長さを調整することができる。
【0065】
第一フィルター部及び第二フィルター部のいずれか一方は、ゼラチン等の破砕可能な外殻を含む破砕可能な添加剤放出容器(例えば、カプセル)を含んでもよい。この場合には、該添加剤放出容器を含むフィルター部が吸口側となる。このカプセルは、非燃焼加熱式たばこの使用者により使用前、使用中、または使用後に破壊されると、カプセル内に含まれる液体または物質(通常、香味材)を放出し、次に、該液体または物質は、非燃焼加熱式たばこを使用する間はたばこの煙に伝達され、使用後においては周囲の環境へと伝達される。
【0066】
添加剤放出容器の形態は、特段限定されず、例えば、易破壊性のカプセル等のカプセルであってよく、その形状は球であることが好ましい。添加剤放出容器に含まれる添加剤としては、上述した任意の添加剤を含んでいてもよいが、特に、香味材や活性炭素を含むことが好ましい。また、添加剤として、煙を濾過する一助となる1種類以上の材料を加えてもよい。添加剤の形態は、特段限定されないが、通常、液体又は固体である。なお、添加剤を含むカプセルの使用は、当技術分野において周知である。易破壊性のカプセルおよびその製造方法は、本技術分野において周知である。
【0067】
香味材としては、例えば、メントール、スペアミント、ペパーミント、フェヌグリーク、またはクローブ等であってよい。香味材は、これらを単独で用いることができ、又はこれらの組合せを用いることができる。
【0068】
<付加セグメント>
上述の非燃焼加熱式たばこ1は、図3A及び図3Bに示すように、第一フィルター部21及び/又は第二フィルター部22と隣接して設けられる付加セグメント25とともに、付加セグメント接合紙26で巻装されていてもよい。付加セグメント25を設けることにより、非燃焼加熱式たばこに更なる機能を付加することができる。
【0069】
付加セグメントの態様は特段制限されず、例えば、フィルターや紙管とすることができる。付加セグメントとしてフィルターを設けることにより、通気抵抗を増加させることができる。また、吸口側のフィルター部に、付加セグメントとして紙管を設けることにより、非燃焼加熱式たばこが挿入された電気加熱式たばこ製品と使用者の口との距離はある程度の長さを確保することが好ましいという観点から、咥え易さ等の使用時の扱い易さを向上させることができる。
また、吸口側のフィルター部に、付加セグメントとしてフィルターを設ける場合、該フィルターの内部に、添加剤放出容器を設けることもできる。
フィルターや紙管、添加剤放出容器の態様は、上述のフィルター部で説明した態様を同様に適用でき、また、その効果は、上述のフィルター部で説明した通りである。
【0070】
付加セグメント接合紙は、非燃焼加熱式たばこと付加セグメントとを接合できるものであれば特段制限されないが、例えば、チップペーパーを用いることができる。
チップペーパーの態様は特段制限されず、公知のチップペーパーを用いることができる。
巻装時のチップペーパーの態様は特段制限されず、例えば、図3Aに示すように、非燃焼加熱式たばこの一部及び付加セグメントの全面を覆うように巻装する態様であっても、図3Bに示すように、非燃焼加熱式たばこの一部及び付加セグメントの一部を覆うように巻装する態様であってもよい。
【0071】
<マウスピース>
非燃焼加熱式たばこは、マウスピースが係合されてもよい。マウスピースを使用しなくとも、非燃焼加熱式たばこを使用することは可能であるが、この場合、非燃焼加熱式たばこと使用者の口とが直接触れることになり、該たばこ、特に吸口端側のフィルターが濡れ易くなってしまう。これにより、通気抵抗が上がってしまうという問題、また、触感が悪化してしまうという問題が生じる。これらの問題を改善するため、マウスピースを使用することが好ましい。
また、咥え易さ等の使用時の扱い易さという点では、非燃焼加熱式たばこが挿入された電気加熱式たばこ製品と使用者の口との距離はある程度の長さを確保することが好ましいため、この点からもマウスピースを使用することが好ましい。
なお、マウスピースは、非燃焼加熱式たばこに直接的に係合されてよいが、上述の付加セグメントを介して間接的に係合されてもよい。
マウスピースの材料は、特段制限されず、樹脂やゴム等の高分子材料や金属材料、無機材料のいずれとしてもよいが、製造の容易性や軽量性の観点から、樹脂であることが好ましい。
【0072】
マウスピースの形状は、使用者が吸引するたばこベイパーが流通する流路s2が確保できるものであれば特段制限されず、円筒状や多角筒状の筒状としてもよいが、吸い易さを向上させる観点から、吸口側で細くなることが好ましいが、図5に示すように、均一に細
くなるのではなく、使用者の唇の形状に合わせるように、吸口端側の長軸方向に直交する断面の形状が扁平形状となるように細くなることが好ましい。これにより、使用者がマウスピースを咥えた際に、唇の上下方向の開きが小さくなるため、唇の左右方向の端部とマウスピースとの隙間から空気が口腔内に流入することを抑制することができる。
非燃焼加熱式たばことの係合部の長軸方向に直する穴の断面の形状は、特段制限されないが、円であると係合される非燃焼加熱式たばこが回転し易いために外れ易くなってしまうため、非燃焼加熱式たばこの係合される部分が撓むように圧をかける(引っかける)ような突起部を有するような形状であることが好ましい。また、マウスピースが非燃焼加熱式たばこに与える力を均一にするため、係合部の穴の形状や突起部の配置は対称的であることが好ましい。
また、図7のマウスピースの細くなっている部分に存在するような凸部(指かけ部311)を設けることは、マウスピースの取り外しが容易となるため好ましい。
長軸方向のマウスピースの長さは、特段制限されないが、吸い易さの確保の観点から、20mm以上、50mm以下であってよく、25mm以上、30mm以下であってもよい。
非燃焼加熱式たばこにおいて、マウスピースが係合される部分の長軸方向の長さは、特段制限されないが、非燃焼加熱式たばこの長さhに対して、通常10%以上であり、30%以下であり、20%程度であることが好ましい。
非燃焼加熱式たばこは繰り返しの使用ができないため、マウスピースは、非燃焼加熱式たばこの使用開始時に係合され、使用終了時に取り外すことができるものである、つまり、非燃焼加熱式たばこと着脱可能なものであることが好ましい。
【0073】
<電気加熱式たばこ製品>
本発明の実施形態にかかる非燃焼加熱式たばこは、以下で説明する通り、電気加熱式たばこ製品に収容されるカートリッジとして用いることができる。
本発明の別の実施形態である電気加熱式たばこ製品(単に「電気加熱式たばこ製品」とも称する)は、ヒーター部材と、該ヒーター部材の電力源となる電池ユニットと、該ヒーター部材を制御するための制御ユニットとを備える電気加熱型デバイスと、該ヒーター部材に接触するように挿入される、上述した非燃焼加熱式たばこと、から構成される、電気加熱式たばこ製品である。
電気加熱式たばこ製品は、上記の構成を満たしていれば特段制限されないが、その好適例を以下に示す。
【0074】
電気加熱式たばこ製品の実施形態の態様としては、図4に示すような、非燃焼加熱式たばこの外周面を加熱する態様を挙げることができる。以下、本発明の実施形態にかかる電気加熱式たばこ製品について説明する。
なお、以下では本発明の実施形態にかかる非燃焼加熱式たばこを「カートリッジ」と記載する。なお、一般的に「消費材」と称される場合もある。
本発明の電気加熱式たばこ製品の一実施形態は、ハウジングと、マウスピースと、を備える。ハウジングは、軸方向に延び該軸方向の第一端部に開口が形成されている。ハウジングは、前記開口と連通して内部に収容空間が形成されている。ハウジングの前記収容空間には、香味成分が含有された非燃焼加熱式たばこ(カートリッジ)が収容されている。前記マウスピースは、係合部と、保持部と、を有している。係合部は、前記開口に係合される。
保持部は、前記非燃焼加熱式たばこを保持するように構成されている。
本実施態様によれば、非燃焼加熱式たばこを交換する際には、マウスピースをハウジングから取り外すと、マウスピースの係合部とハウジングの開口との係合が解除され、マウスピースの保持部に保持された非燃焼加熱式たばこがマウスピースとともにハウジングから取り外される。よって、カートリッジをマウスピースと別に取り外す必要がないため、カートリッジの交換を容易に行うことができる。
また、本実施形態に係る電気加熱式たばこ製品では、前記マウスピースは、前記開口に係合された状態で、前記開口を挟んで前記軸方向の両側に延在するように構成されている。本態様によれば、マウスピースをハウジングから取り外す際には、マウスピースにおけるハウジングの開口よりも外方に突出している部分を掴めばよいため、マウスピースの取り外し作業がしやすい。
【0075】
図4は、本実施形態に係る電気加熱式たばこ製品(「香味吸引器」、または単に「吸引器」ともいう)の斜視図である。
図4に示ように、本実施形態に係る電気加熱式たばこ製品の一例である吸引器1は、たばこ葉を加熱して発生した蒸気を吸引することで、たばこ葉の香味を味わうものである。
【0076】
図5は、吸引器1からキャップ40を取り外した状態の斜視図である。なお、キャップ40は、図4に示すように、マウスピース30を覆うように配置されている。キャップ40は、外周キャップ部41と、端部キャップ部42と、を有している。
図5に示すように、吸引器1は、本体ユニット10と、カートリッジ20と、マウスピース30と、キャップ40(図4参照)と、を備えている。カートリッジ20は、巻取紙および2つのフィルター材料で形成されており、弾力性ないし可撓性を備えている。
【0077】
吸引器1の外形は、軸線Oを中心軸として、略四角柱状に形成されている。本体ユニット10、カートリッジ20、マウスピース30及びキャップ40は、軸線O上に並んで配置されている。以下の説明では、軸線O方向(軸線Oに沿う方向、軸方向)において、本体ユニット10からマウスピース30に向かう側を吸口側と称し、マウスピース30から本体ユニット10に向かう方向を反吸口側と称する。また、軸線O方向から見た平面視で軸線Oに交差する方向を径方向と称する。径方向のうち、軸線Oに近接する方向を内側と称し、軸線Oから離間する方向を外側と称する。軸線O周りに周回する方向を周方向と称する。本明細書において、「方向」とは2つの向きを意味し、「方向」のうち1つの向きを示す場合には「側」と記載する。
【0078】
図6は、図5のIII-III線断面図である。
また、図6に示すように、電気加熱式デバイス10(「本体ユニット」とも称する)は、ハウジング11と、電源ユニット15と、ヒーター部材16と、を有している。ハウジング11は、ハウジング本体110と、マウスピース支持部材120と、カートリッジ収容部材130と、を有している。
【0079】
ハウジング本体110は、外側ハウジング111と、底部キャップ116と、を有している。外側ハウジング111は、軸線Oを中心軸として略四角筒状に形成されている。外側ハウジング111は、吸引器1の外面を構成している。なお、外側ハウジング111の形状は、軸線O方向に延びていれば、適宜設定可能である。
【0080】
外側ハウジング111の吸口側の端部には、軸線O方向に貫通する吸口側開口111aが形成されている。外側ハウジング111の反吸口側の端部には、軸線O方向に貫通する反吸口側開口111bが形成されている。外側ハウジング111の周方向の一部には、径方向に貫通するスイッチ用開口111cが形成されている。スイッチ用開口111cには、スイッチ112が設けられている。
ここで、本実施形態では、径方向のうち、軸線Oとスイッチ用開口111cとを結ぶ方向を表裏面方向とする。この場合、軸線Oに対してスイッチ用開口111c側を表面側とし、軸線Oに対してスイッチ用開口111cと反対側を裏面側とする。
【0081】
底部キャップ116は、外側ハウジング111の反吸口側開口111bに設けられている。底部キャップ116は、軸線O方向から見た平面視で略矩形状に形成されている。底部キャップ116は、外側ハウジング111の反吸口側開口111bを閉塞している。なお、底部キャップ116の形状は、外側ハウジング111の反吸口側開口111bを閉塞していれば、適宜設定可能である。
【0082】
ハウジング本体110の内部には、内側筒部材117が設けられている。内側筒部材117は、軸線O方向に延び、略四角筒状に形成されている。内側筒部材117は、軸線O方向に沿って分割された一対の半割り部材が連結されて構成されている。内側筒部材117の全長(軸線O方向の沿う長さ)は、外側ハウジング111の全長よりも短い。なお、内側筒部材117の形状は、適宜設定可能である。
【0083】
内側筒部材117の内部には、バッテリ151が収容される空間とヒーター部材16が収容される空間とを分離するように隔壁118が設けられている。
【0084】
隔壁118は、吸口側隔壁部118aと、側部隔壁部118bとを有している。これにより、ヒーター部材16により加熱された空気が、バッテリ151を収容する空間内に流入することが抑制される。よって、バッテリ151の温度上昇が抑制される。
【0085】
吸口側隔壁部118aは、バッテリ151よりも吸口側に配置されている。側部隔壁部118bは、バッテリ151の周方向の外側を覆うように配置されている。
マウスピース支持部材120は、外側ハウジング111における吸口側開口111aに設けられている。
【0086】
外側ハウジング111の表面には、表裏面方向に貫通する通気口111dが形成されている。底部材136における反吸口側の端部の底部137bの表面側には、通気口111dと連通するように、流入側開口138aが形成されている。底部137の収容凹部137aの底部(軸線O方向と直交する面)には、流出側開口138bが形成されている。流入側開口138aと流出側開口138bを連通するように通気路138が形成されている。
【0087】
カートリッジ収容部材130の内部には、カートリッジ支持部材140が配置されている。
カートリッジ20がカートリッジ支持部材140のカートリッジ収容空間に配置された状態で、第一フィルター部21の少なくとも一部は、カートリッジ支持部材140から吸口側に突出し、マウスピース開口125よりも反吸口側に配置されている(第一フィルター部21は、マウスピース開口125から吸口側に突出していない)。
【0088】
また、図6に示すように、電源ユニット15は、バッテリ151、制御ユニット152及びヒーター部材16等が内側筒部材117に搭載されて構成されている。
バッテリ151は、内側筒部材117の内部において、吸口側隔壁部118aよりも反吸口側に配置されている。バッテリ151は、軸線Oに平行な軸を中心軸として円柱状に形成されている。バッテリ151は、充放電可能な二次電池である。バッテリ151は、例えばリチウムイオン電池であってもよい。バッテリ151の形状は、適宜設定可能である。
【0089】
制御ユニット152は、内側筒部材117の内部において、側部隔壁部118bよりも表面側に配置されている。制御ユニット152は、側部隔壁部118bと外側ハウジング111の表面側との間に配置されている。バッテリ151とヒーター部材16とは、制御ユニット152を介して不図示の配線で電気的に接続されている。
【0090】
制御ユニット152には、外側ハウジング111の表面側に配置されたスイッチ112と対応する位置にスイッチ素子152aが設けられている。スイッチ112の操作に応じて、制御ユニット152は、バッテリ151及びヒーター部材16を制御する。
【0091】
制御ユニット152は、バッテリ151からヒーター部材16に流す電流を制御するように構成されている。これにより、カートリッジ20の空間部23の加熱温度を制御することができる。
【0092】
図7は、マウスピース30とカートリッジ20部分の幅方向に沿う断面図である。
図7に示すように、係合周壁部33では、反吸口側の部分331が吸口側の部分332よりも肉厚が薄くなっている。これにより、反吸口側の部分331と吸口側の部分332との境界部には、段部333が形成されている。段部333は、O方向から見た平面視で略環状に形成されている。図に示すように、カートリッジ20の吸口側の端部20aは、マウスピース30の係合周壁部33の段部333に当接している。吸口部31と基部32との接続部分では、吸口側から反吸口側に向かうにしたがって、開口幅が広くなっている。カートリッジ20の吸口側の端部20aとマウスピース30の吸口部31の反吸口側の面との間には、空間が形成されていてもよい。これにより、カートリッジ20の吸口側の端部20aの閉塞領域が小さくなり、通気抵抗が抑えられている。
【0093】
ートリッジ20は、第一フィルター部21と、第二フィルター部22と、空間部23と、巻取紙24と、を有している。
吸口部31の外周面には、指かけ部311が設けられている。指かけ部311は、吸口部31の外周面から径方向の外側に向かって突出している。指かけ部311は、吸口部31の外周面の周方向全周にわたって設けられている。
マウスピース30には、軸線O方向に貫通する流路s2が形成されている。流路s2には、カートリッジ20から発生した蒸気が流通可能である。
【0094】
電気加熱式デバイス10のヒーター部材16は、例えばシート状ヒーター、平板状ヒーター、筒状ヒーターであってよい。シート状ヒーターとは柔軟なシート形のヒーターであり、例えばポリイミド等の耐熱性ポリマーのフィルム(厚み20μm以上、225μm以下程度)を含むヒーターが挙げられる。平板状ヒーターとは剛直な平板形のヒーター(厚み200μm以上、500μm以下程度)であり、例えば、平板基材上に抵抗回路を有し当該部分を発熱部とするヒーターが挙げられる。筒状ヒーターとは中空または中実の筒形のヒーターであり、例えば金属製等の筒の外周面に抵抗回路を有し、当該部分を発熱部とするヒーター(厚み200μm以上、500μm以下程度)が挙げられる。
該ヒーター部材の長軸方向の長さは、非燃焼加熱式たばこの長軸方向の長さをLmmとしたときに、L±5.0mmの範囲内とすることができる。
【0095】
ヒーター部材16による非燃焼加熱式たばこ20の加熱時間や加熱温度といった加熱強度は、電気加熱式たばこ製品1ごとにあらかじめ設定することができる。例えば、電気加熱式デバイス10に非燃焼加熱式たばこ20を挿入した後に、一定時間の予備加熱を行うことで、非燃焼加熱式たばこ20における、たばこ材料の少なくとも一部の温度がX(℃)になるまで加熱し、その後、該温度がX(℃)以下の一定温度を保つように、あらかじめ設定することができる。
上記X(℃)は、たばこの揮発成分のデリバリーの観点から80℃以上、200℃以下であることが好ましい。具体的には、上記X(℃)は、80℃、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃、140℃、150℃、160℃、170℃、180℃、190℃、200℃とすることができる。
電気加熱式たばこ製品1において、ヒーター部材16の加熱により、空間部に配置されたたばこ材料から生じる香味成分等を含む蒸気は、吸口側のフィルター部を通して使用者の口腔内に到達する。
【0096】
使用時のマウスピースと電気加熱式デバイスとの関係は特段制限されないが、電気加熱式デバイスの外側で接触するような態様でもよく、また、電気加熱式デバイスにマウスピース用の篏合部を設けてそこに篏合するような態様でもよいが、使用時のマウスピースの落下を防止する観点から、篏合する態様であることが好ましい。
また、上述したように、マウスピースに突起部を設ける等により、非燃焼加熱式たばことマウスピースとの係合を強くする態様は、非燃焼加熱式たばこを電気加熱式デバイスから外す際に、非燃焼加熱式たばことマウスピースとを一度に電気加熱式デバイスから取り出せるために好ましい。具体的には、マウスピースと非燃焼加熱式たばことの間に作用する静止摩擦力が、電気加熱式デバイスの内壁と非燃焼加熱式たばことの間に作用する静止摩擦力よりも大きいことが好ましい。
【0097】
電気加熱式たばこ製品は、上記の構成以外の他の構成を有していてよく、該他の構成については、例えば、温度センサやガス成分濃度センサ(化学センサ)等が挙げられる。
【0098】
<たばこベイパーの成分分析>
本発明において、非燃焼加熱式たばこの使用により発生するたばこベイパーの成分は、以下に示す方法に従い分析される。香味吸引システム(電気加熱式たばこ製品)に上記のカートリッジを挿入し、たばこロッド吸口端をBorgwaldt社製自動喫煙器に挿入した後、ヒータースイッチを入れた時点(加熱開始時点)から30秒間経過後に、吸煙を開始した。カナダ保健省(Health Canada)喫煙方法(吸煙量55cc/2sec、吸煙時間2secおよび吸煙間隔30秒、喫煙回数13回の吸煙)の条件下で測定を行なった。予め設置したガラス繊維フィルター(捕集用ケンブリッジフィルター(Borgwaldt社製、400 Filter 44mm))に、13回のパフのうち、1~3回目のパフにおける主流煙成分の合計、及び4~13回目のパフにおける主流煙成分の合計を捕集し、ニコチン、メントール分析用にはこれをイソプロパノール10mL(内部標準オクタデカン)で20分間振盪抽出し、水分析用にはこれをエタノール10mLで20分間振盪抽出し、ガスクロマトグラフ(GC-FID/TCD(6890N、Agilent社製))によりニコチン、メントールおよび水量を測定した。
【実施例
【0099】
本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はその要旨から逸脱しない限り、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
【0100】
<実験I;たばこベイパーの視認性評価>
<非燃焼加熱式たばこの準備>
[たばこ材料の原料]
・粉砕されたたばこ材料1;黄色種、平均粒径70μm(粒度分布測定装置(Spectris社製のマスターサイザー)で測定)
・粉砕されたたばこ材料2;バーレー種、平均粒径70μm(粒度分布測定装置(Spectris社製のマスターサイザー)で測定)
・水
・香味発現助剤;炭酸カリウム
・バインダー;ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)
・1次香味材;l-メントール
・2次香味材;エタノール
・エアロゾル生成基材;グリセリン
【0101】
[巻取紙]
巻取紙の最外面側の2層のうち、非燃焼加熱式たばこの外周面側となる層(巻取紙の表面層)として、紙であるOPN♯85(日本製紙パピリア株式会社製、通気度:40C.U.、坪量:85gsm、厚さ:97μm)を、これとは反対側となる層(巻取紙の裏面層)として、紙であるP-10000C(日本製紙パピリア株式会社製、通気度10000C.U.、坪量24.0gsm、厚さ:60μm)を準備した。また、巻取紙の中間層(空気不透過性層)として、ポリエチレン樹脂からなるフィルムであるラミネート層(日本製紙パピリア株式会社製、厚さ:20μm)を準備した。これらを、非燃焼加熱式たばこの長軸方向となる1辺の長さが20mm、これと直交する1辺の長さが29.5mmの長方形となるように切断加工した。
切断加工した3層を積層し熱をかけながら加圧(ラミネート加工)することで、巻取紙(坪量:124.7gsm、厚さ:157μm)を得た。なお、ラミネート加工時に紙層が圧縮されること、及び、紙層の一部が熱可塑性樹脂層(ここでは、ラミネート層)に埋め込まれることにより、得られる巻取紙は積層前の各層の厚さを合計した厚さよりも薄くなる。
【0102】
[フィルター]
単糸繊度12g/9000m、総糸繊度28000g/9000mのセルロースアセテートトウを原料に、三條機械製作所製フィルター製造装置(FRA3SE)を用いて、円柱状のフィルター素材を作製した。次いで、該フィルター素材をフィルター用巻取紙(日本製紙パピリア製、名称:LPWS-OLL、通気度1300C.U.、坪量26.5gsm、厚さ48μm)で巻取り、円周24.5mm、高さ80mmのフィルター用巻取紙付フィルター素材を作製した。次いで、これを高さ4mmとなるように切断加工し、高さ方向の通気抵抗が3.7mmHOである円柱状のフィルターを作製した。
【0103】
[実施例1]
原料として、粉砕されたたばこ材料1、たばこ材料2、香味発現助剤、およびバインダーを準備し、これらを混合した後、水を加えて混練し、得られた混練物を湿式押出し造粒機(ダルトン社製;メッシュサイズφ0.9mm、押出し出口での混練物の温度50~60℃)で造粒した。
上記原料中の各成分の含有量は、たばこ材料1 50.00重量%、たばこ材料2 12.50重量%、水 25.00重量%、香味発現助剤 7.50重量%、バインダー 5.00重量%とした。そして、混練物を乾燥機で水12.50重量%になるまで乾燥後、粉砕分級機(フロイント・ターボ社製;メッシュサイズ上段φ710mm、下段φ250mm)で分級した。上述の粒子状のたばこ材料の粒度の測定方法に記載の条件に従い、得られた顆粒の平均粒度は530μmであった。
その後、1次香味材を、たばこ顆粒中の含有量が9.09重量%となるように、ピペットで添加し、22℃環境下、バイアル瓶内で24時間以上回転撹拌して均一分散させた。得られたたばこ顆粒のpHは9.5(測定温度 22℃)であり、アスペクト比は1.0~1.5であった。
得られたたばこ顆粒中の各成分の含有量は、たばこ材料1 53.03重量%、たばこ
材料2 13.26重量%、水 11.36重量%、香味発現助剤 7.95重量%、バインダー 5.30重量%、1次香味材 9.09重量%であった。
また、ガスクロマトグラフ(GC-FID/TCD(6890N、Agilent社製))によりを用いて原料中のニコチン及びメントールの含有量を測定した結果、ニコチン 22.7mg/g、メントール 65.1mg/gであった。
上記たばこ顆粒155mgを2つのフィルターの間に配置し、これらを巻取紙で巻取り、円柱状の非燃焼加熱式たばこを得た。巻取紙の1層目の紙層と3層目の紙層を接着して円筒状にする際のバインダーとしては、酢酸ビニルを用いた。非燃焼加熱式たばこにおいて、底面の直径は7.8mm、長軸方向の高さは20mmであり、空間部の全体積に対するたばこ材料の体積比率(充填率)は45体積%であった。また、非燃焼加熱式たばこの長軸方向の通気抵抗は18mmHO(流量;17.5cc/秒)であった。
【0104】
[実施例2]
原料として、実施例1の1次香味材を、該1次香味材と、最終的なたばこ顆粒中の含有量が2.5重量%となるように用意した2次香味材との混合物に変更したこと、及びフィルターの間に配置するたばこ顆粒の量を145mgとしたこと以外は、実施例1と同様にして非燃焼加熱式たばこを得た。なお、2次香味材は、安息角および崩潰角を調整することを目的に加えた。得られたたばこ顆粒のpHは9.5(測定温度 22℃)であり、アスペクト比は1.0~1.5であった。
また、ガスクロマトグラフ(GC-FID/TCD(6890N、Agilent社製))を用いて原料中のニコチン及びメントールの含有量を測定した結果、ニコチン 22.5mg/g、メントール 64.4mg/gであった。また、空間部中のたばこ材料の体積比率(充填率)は46.2体積%であった。
【0105】
[実施例3]
原料として、実施例1の1次香味材を、該1次香味材と、最終的なたばこ材料中の含有量が5重量%となるように用意した2次香味材との混合物に変更したこと、及びフィルターの間に配置するたばこ顆粒の量を124mgとしたこと以外は、実施例1と同様にして非燃焼加熱式たばこを得た。得られたたばこ顆粒のpHは9.5(測定温度 22℃)であり、アスペクト比は1.0~1.5であった。
また、ガスクロマトグラフ(GC-FID/TCD(6890N、Agilent社製))を用いて原料中のニコチン及びメントールの含有量を測定した結果、ニコチン 21.6mg/g、メントール 62.3mg/gであった。また、空間部中のたばこ材料の体積比率(充填率)は46.2体積%であった。
【0106】
[比較例1]
原料として、実施例1の1次香味材を、該1次香味材と、最終的なたばこ材料中の含有量が10重量%となるように用意した2次香味材との混合物に変更したこと、及びフィルターの間に配置するたばこ顆粒の量を118mgとしたこと以外は、実施例1と同様にして非燃焼加熱式たばこを得た。得られたたばこ顆粒のpHは9.5(測定温度 22℃)であり、アスペクト比は1.0~1.5であった。
また、ガスクロマトグラフ(GC-FID/TCD(6890N、Agilent社製))を用いて原料中のニコチン及びメントールの含有量を測定した結果、ニコチン 21.2mg/g、メントール 60.3mg/gであった。また、空間部中のたばこ材料の体積比率(充填率)は46.4体積%であった。
【0107】
[比較例2]
原料として、実施例1の1次香味材を、該1次香味材と、最終的なたばこ材料中の含有量が20重量%となるように用意した2次香味材との混合物に変更したこと、及びフィルターの間に配置するたばこ顆粒の量を118mgとしたこと以外は、実施例1と同様にして非燃焼加熱式たばこを得た。得られたたばこ顆粒のpHは9.5(測定温度 22℃)であり、アスペクト比は1.0~1.5であった。
また、ガスクロマトグラフ(GC-FID/TCD(6890N、Agilent社製))を用いて原料中のニコチン及びメントールの含有量を測定した結果、ニコチン 18.8mg/g、メントール 55.1mg/gであった。また、空間部中のたばこ材料の体積比率(充填率)は46.3体積%であった。
【0108】
<安息角および崩潰角>
たばこ材料の安息角は、JIS 9301-2-2に記載の方法に準拠し、ホソカワミクロン(株)社製の安息角測定器であるパウダテスタPT-Xを用いて測定した。
崩潰角は、上記の安息角の測定方法において、安息角の測定後、粒子層がのっている台に対し、金属棒で3回の振動を与えることを除き、安息角と同様の方法で測定した。
各実施例および比較例におけるたばこ材料を用いて測定した安息角および崩潰角、並びに安息角から崩潰角を引いた差角を下記の表1に示す。
【0109】
<たばこベイパーの成分分析>
香味吸引システム(電気加熱式たばこ製品)に上記のカートリッジを挿入し、たばこロッド吸口端をBorgwaldt社製自動喫煙器に挿入した後、ヒータースイッチを入れた時点(加熱開始時点)から30秒間経過後に、吸煙を開始した。カナダ保健省(Health Canada)喫煙方法(吸煙量55cc/2sec、吸煙時間2secおよび吸煙間隔30秒、喫煙回数13回の吸煙)の条件下で測定を行なった。予め設置したガラス繊維フィルター(捕集用ケンブリッジフィルター(Borgwaldt社製、400 Filter 44mm))に、13回のパフのうち、1~3回目のパフにおける主流煙成分の合計、及び4~13回目のパフにおける主流成分の合計を捕集し、ニコチン、メントール分析用にはこれをイソプロパノール10mL(内部標準オクタデカン)で20分間振盪抽出し、水分析用にはこれをエタノール10mLで20分間振盪抽出し、ガスクロマトグラフ(GC-FID/TCD(6890N、Agilent社製))によりニコチン、メントールおよび水量を測定した。
【0110】
下記の表1における使用時保持角度「0°」とは、非燃焼加熱式たばこの長軸方向を水平にした場合の状態を示し、使用時保持角度「45°」とは、0°から45°傾けた場合の状態(上側にある端部が吸口側)を示し、使用時保持角度「90°」とは、0°から90°傾けた場合の状態(上側にある端部が吸口側)を示す。
また、表1における「対0°(対45°)」とは、使用時保持角度0°(45°)におけるニコチン又はメントールの含有量に対する各角度におけるニコチン又はメントールの含有量の比率を示す。
また、表1における「合計」とは、1~3回のパフにおける各香料成分の含有量と、4~13回のパフにおける各香料成分の含有量の合計値を示す。
【0111】
【表1】
【0112】
表1から、安息角が43°以下である実施例1~3では、ニコチン及びメントールともに、使用時保持角度の増加に伴い、1~13回のパフにおけるそれぞれの合計値が増加した、つまり、香味強度が増加したことが分かる。一方で、安息角が43°を超える比較例1および2では、その全てにおいて、使用時保持角度45°の合計値が0°の合計値よりも小さくなり(実質的には、ほとんど変化せず)、実施例1~3のような傾向は示さなかった。この結果について、比較例1および2の非燃焼加熱式たばこでは、ある程度の非燃焼加熱式たばこの傾きまではたばこ材料の移動がほとんど生じなかったため、ニコチン及びメントールのデリバリー量が変化しなかった、つまり香味強度が変化しなかったと考えられる。
また、実施例1~3で比較した場合、実施例3、2、1の順番、つまり、安息角及び崩潰角が小さく、また、差角が大きい順番で、使用時保持角度の増加に伴うメントールの合計値の増加の効果が大きくなる、つまり、香味強度の調整が容易となることが分かった。これは、安息角および崩潰角が小さいほどたばこ顆粒の移動が容易となったためであると考えられる。
【0113】
以上の実験から、本実施形態に係る非燃焼加熱式たばこを用いることにより、香味強度を制御することのできる非燃焼加熱式たばこを製造できることが分かった。
【符号の説明】
【0114】
1 非燃焼加熱式たばこ(吸引器)
10 電気加熱式デバイス(本体ユニット)
11 ハウジング
15 電源ユニット
16 ヒーター部材
20 カートリッジ
21 第一フィルター部
22 第二フィルター部
23 空間部
24 巻取紙
25 付加セグメント
26 付加セグメント接合紙
T たばこ材料
30 マウスピース(引出し治具)
31 吸口部
32 基部
33 係合周壁部
40 キャップ
110 ハウジング本体
111 外側ハウジング
111a 吸口側開口
117 内側筒部材
120 マウスピース支持部材
125 マウスピース開口(開口)
130 カートリッジ収容部材
140 カートリッジ支持部材
151 バッテリ
152 制御ユニット
311 指かけ
2 流路
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7