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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-12
(45)【発行日】2023-09-21
(54)【発明の名称】粘度指数向上剤及び潤滑油組成物
(51)【国際特許分類】
   C10M 169/04 20060101AFI20230913BHJP
   C10M 105/32 20060101ALN20230913BHJP
   C10M 107/02 20060101ALN20230913BHJP
   C10M 149/00 20060101ALN20230913BHJP
   C10M 145/14 20060101ALN20230913BHJP
   C10N 20/02 20060101ALN20230913BHJP
   C10N 20/04 20060101ALN20230913BHJP
   C10N 30/02 20060101ALN20230913BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20230913BHJP
【FI】
C10M169/04
C10M105/32
C10M107/02
C10M149/00
C10M145/14
C10N20:02
C10N20:04
C10N30:02
C10N40:25
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022548381
(86)(22)【出願日】2021-09-14
(86)【国際出願番号】 JP2021033640
(87)【国際公開番号】W WO2022054956
(87)【国際公開日】2022-03-17
【審査請求日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】P 2020154045
(32)【優先日】2020-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002288
【氏名又は名称】三洋化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】弁理士法人WisePlus
(72)【発明者】
【氏名】内藤 展洋
(72)【発明者】
【氏名】松本 聡
(72)【発明者】
【氏名】橋本 将大
(72)【発明者】
【氏名】吉田 賢佑
(72)【発明者】
【氏名】山下 弘記
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 亮太
【審査官】中田 光祐
(56)【参考文献】
【文献】特表2012-529550(JP,A)
【文献】特表2019-532134(JP,A)
【文献】特表2019-535858(JP,A)
【文献】特開2017-057378(JP,A)
【文献】特開2017-110196(JP,A)
【文献】特開2019-156953(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M 101/00-177/00
C09K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示されるポリオレフィン系単量体(a)下記一般式(2)で表される単量体であってRが炭素数4のアルキル基である単量体(b)、下記一般式(3)で示される単量体(c)及び炭素数9~36の直鎖又は分岐アルキル基を有する(メタ)アクリロイル単量体(e)を構成単量体として含共重合体(A)と、エステル油(Z)とを含有してなる粘度指数向上剤。
【化1】
[一般式(1)においてRは水素原子又はメチル基;-X-は-O-、-O(AO)-又は-NH-で表される基であって、Aは炭素数2~4のアルキレン基であり、mは1~10の整数であり、mが2以上の場合のAは同一でも異なっていてもよい;Rは1,2-ブチレン基を構成単位として含む炭化水素重合体から水素原子を1つ除いた残基;pは0である。]
【化2】
[一般式(2)においてRは水素原子又はメチル基;-X-は-O-又は-NH-で表される基;Rは炭素数2~4のアルキル基。]
【化3】
[一般式(3)においてRは水素原子又はメチル基;-X-は-O-又は-NH-で表される基;Rは炭素数2~4のアルキレン基;Rは炭素数1~8のアルキル基;rは1~20の整数であり、rが2以上の場合のRは同一でも異なっていてもよい。]
【請求項2】
前記共重合体(A)における構成単量体中の前記単量体(c)の重量と前記単量体(b)の重量との重量比率(c/b)が0.01~20である請求項1に記載の粘度指数向上剤。
【請求項3】
前記共重合体(A)が、構成単量体として(A)を構成する単量体の合計重量に基づいて前記単量体(a)を1~50重量%、前記単量体(b)を1~80重量%、前記単量体(c)を1~60重量%、前記(メタ)アクリロイル単量体(e)を1~60重量%含有する共重合体である請求項1又は2に記載の粘度指数向上剤。
【請求項4】
前記共重合体(A)が、下記一般式(2)で表される単量体であってR が炭素数2~3のアルキル基である単量体(d)を構成単量体として含む共重合体である請求項1に記載の粘度指数向上剤。
【化2】
[一般式(2)においてR は水素原子又はメチル基;-X -は-O-又は-NH-で表される基;R は炭素数2~4のアルキル基。]
【請求項5】
前記共重合体(A)における構成単量体中の前記単量体(c)及び前記単量体(d)の合計重量と前記単量体(b)の重量との重量比率{(c+d)/b}が0.01~20である請求項に記載の粘度指数向上剤。
【請求項6】
前記共重合体(A)が、構成単量体として(A)を構成する単量体の合計重量に基づいて前記単量体(a)を1~50重量%、前記単量体(b)を1~80重量%、前記単量体(c)及び前記単量体(d)を合計で1~60重量%、前記(メタ)アクリロイル単量体(e)を1~60重量%含有する共重合体である請求項4又は5に記載の粘度指数向上剤。
【請求項7】
粘度指数向上剤中に含まれる共重合体(A)とエステル油(Z)との重量比((A)/(Z))が10/90~70/30である請求項1~6のいずれか1項に記載の粘度指数向上剤。
【請求項8】
前記一般式(1)におけるRが、1,2-ブチレン基に加えて、更にイソブチレン基を構成単位として含む炭化水素重合体から水素原子を1つ除いた残基であって、該炭化水素重合体の構成単位の合計モル数に基づき、イソブチレン基と1,2-ブチレン基との合計比率が30モル%以上である炭化水素重合体から水素原子を1つ除いた残基である請求項1~7のいずれか1項に記載の粘度指数向上剤。
【請求項9】
前記共重合体(A)を構成する単量体の重量分率に基づいて計算する溶解性パラメータが8.0~10.0(cal/cm1/2である請求項1~のいずれか1項に記載の粘度指数向上剤。
【請求項10】
前記エステル油の100℃における動粘度が1~4mm/sであり、粘度指数が100以上である請求項1~のいずれか1項に記載の粘度指数向上剤。
【請求項11】
前記共重合体(A)の重量平均分子量が5,000~2,000,000である請求項1~10のいずれか1項に記載の粘度指数向上剤。
【請求項12】
前記共重合体(A)以外の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(共)重合体(B)を、前記共重合体(A)の重量に基づいて0.01~30重量%含有してなる請求項1~11のいずれか1項に記載の粘度指数向上剤。
【請求項13】
前記共重合体(A)の溶解性パラメータと前記エステル油(Z)の溶解性パラメータとの差の絶対値が0.1~2.0(cal/cm1/2である請求項1~12のいずれか1項に記載の粘度指数向上剤。
【請求項14】
さらに炭化水素油を含有してなる請求項1~13のいずれか1項に記載の粘度指数向上剤。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1項に記載の粘度指数向上剤と、清浄剤、分散剤、酸化防止剤、油性向上剤、流動点降下剤、摩擦摩耗調整剤、極圧剤、消泡剤、抗乳化剤、金属不活性剤及び腐食防止剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の添加剤とを含有してなる潤滑油組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は粘度指数向上剤及び潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CO排出量低減及び石油資源保護等の実現のために、自動車の省燃費化がより一層要求されている。省燃費化の一つとして、エンジン油の低粘度化による粘性抵抗の低減が挙げられる。しかし、低粘度化すると液漏れや焼付きといった問題が生じてくる。この問題に対しては、米国SAEのエンジン油用粘度規格(SAE J300)で最低保証粘度が定められており、0W-20グレードにおいては、高温高剪断下での粘度(HTHS粘度)として、150℃HTHS粘度(ASTM D4683又はD5481)が2.6mPa・s以上と規定されている。また、0W-16グレードでは150℃HTHS粘度が2.3mPa・s以上と規定されている。また、同グレードは寒冷地での始動性保証のために、ゲル化インデックスと呼ばれる低温での粘度特性が12以下と規定されている。ゲル化インデックスの値が高いと低温でエンジン油がゲル化しやすくなり、エンジンの始動性が悪化してしまう。省燃費化については、上記規格を満たした上で、100℃の実効温度域でのHTHS粘度および低温領域、特に40℃での動粘度がより低いエンジンオイルが求められるようになっており、そのような粘度指数向上剤としては、メタクリル酸エステル共重合体(特許文献1~4)、オレフィン共重合体(特許文献5)、櫛型共重合体(特許文献6~8)等が知られている。
しかしながら、上記の粘度指数向上剤は、エンジン油組成物に添加した場合に100℃でのHTHS粘度が未だ十分ではなく、また、40℃での動粘度が悪いという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6060311号公報
【文献】特許第2732187号公報
【文献】特許第2754343号公報
【文献】特許第3831203号公報
【文献】特許第3999307号公報
【文献】特許第3474918号公報
【文献】特表2008-546894号公報
【文献】特表2010-532805号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、粘度指数向上剤を添加した潤滑油組成物のゲル化インデックスが良好で、100℃でのHTHS粘度及び40℃での動粘度に優れた潤滑油組成物を得ることができる粘度指数向上剤及びこれを含有してなる潤滑油組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記の目的を達成するべく検討を行った結果、本発明に到達した。
すなわち、本発明は、下記一般式(1)で示されるポリオレフィン系単量体(a)及び下記一般式(2)で表される単量体であってRが炭素数4のアルキル基である単量体(b)を構成単量体として含み、さらに下記一般式(3)で示される単量体(c)及び/又は下記一般式(2)で表される単量体であってRが炭素数2~3のアルキル基である単量体(d)を構成単量体として含む共重合体(A)と、エステル油(Z)とを含有してなる粘度指数向上剤;該粘度指数向上剤と、清浄剤、分散剤、酸化防止剤、油性向上剤、流動点降下剤、摩擦摩耗調整剤、極圧剤、消泡剤、抗乳化剤、金属不活性剤及び腐食防止剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の添加剤とを含有してなる潤滑油組成物である。
【化1】
[一般式(1)においてRは水素原子又はメチル基;-X-は-O-、-O(AO)-又は-NH-で表される基であって、Aは炭素数2~4のアルキレン基であり、mは1~10の整数であり、mが2以上の場合のAは同一でも異なっていてもよい;Rは1,2-ブチレン基を構成単位として含む炭化水素重合体から水素原子を1つ除いた残基;pは0又は1の数である。]
【化2】
[一般式(2)においてRは水素原子又はメチル基;-X-は-O-又は-NH-で表される基;Rは炭素数2~4のアルキル基。]
【化3】
[一般式(3)においてRは水素原子又はメチル基;-X-は-O-又は-NH-で表される基;Rは炭素数2~4のアルキレン基;Rは炭素数1~8のアルキル基;rは1~20の整数であり、rが2以上の場合のRは同一でも異なっていてもよい。]
【発明の効果】
【0006】
本発明の粘度指数向上剤を含有してなる潤滑油組成物は、ゲル化インデックスが良好で、100℃でのHTHS粘度及び40℃での動粘度が低いという効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の粘度指数向上剤は、下記一般式(1)で示されるポリオレフィン系単量体(a)及び下記一般式(2)で表される単量体であってRが炭素数4のアルキル基である単量体(b)を構成単量体として含み、さらに下記一般式(3)で示される単量体(c)及び/又は下記一般式(2)で表される単量体であってRが炭素数2~3のアルキル基である単量体(d)を構成単量体として含む共重合体(A)と、エステル油(Z)とを含有する。
【化4】
[一般式(1)においてRは水素原子又はメチル基;-X-は-O-、-O(AO)-又は-NH-で表される基であって、Aは炭素数2~4のアルキレン基であり、mは1~10の整数であり、mが2以上の場合のAは同一でも異なっていてもよい;Rは1,2-ブチレン基を構成単位として含む炭化水素重合体から水素原子を1つ除いた残基;pは0又は1の数である。]
【化5】
[一般式(2)においてRは水素原子又はメチル基;-X-は-O-又は-NH-で表される基;Rは炭素数2~4のアルキル基。]
【化6】
[一般式(3)においてRは水素原子又はメチル基;-X-は-O-又は-NH-で表される基;Rは炭素数2~4のアルキレン基;Rは炭素数1~8のアルキル基;rは1~20の整数であり、rが2以上の場合のRは同一でも異なっていてもよい。]
【0008】
<共重合体(A)>
本発明の粘度指数向上剤は、上記一般式(1)で示されるポリオレフィン系単量体(a)及び下記一般式(2)で表される単量体であってRが炭素数4のアルキル基である単量体(b)を構成単量体として含み、さらに下記一般式(3)で示される単量体(c)及び/又は下記一般式(2)で表される単量体であってRが炭素数2~3のアルキル基である単量体(d)を構成単量体として含む共重合体(A)を含有する。単量体(a)~(d)はそれぞれ1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0009】
上記一般式(1)で示されるポリオレフィン系単量体(a)について説明する。
一般式(1)におけるRは、水素原子又はメチル基である。これらのうち、粘度指数向上効果の観点から好ましいのは、メチル基である。
【0010】
一般式(1)における-X-は、-O-、-O(AO)-又は-NH-で表される基である。
Aは炭素数2~4のアルキレン基であり、エチレン基、1,2-又は1,3-プロピレン基、イソブチレン基及び1,2-、1,3-又は1,4-ブチレン基等が挙げられる。
AOは炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、エチレンオキシ基、1,2-又は1,3-プロピレンオキシ基、イソブチレンオキシ基及び1,2-、1,3-又は1,4-ブチレンオキシ基等が挙げられる。
mはアルキレンオキサイドの付加モル数であり、1~10の整数であり、粘度指数向上効果の観点から好ましくは1~4の整数、更に好ましくは1~2の整数である。
mが2以上の場合のAは同一でも異なっていてもよく、(AO)部分の結合形式はランダム状でもブロック状でもよい。
-X-のうち、粘度指数向上効果の観点から好ましいのは、-O-及び-O(AO)-で表される基であり、更に好ましくは-O-及び-O(CHCHO)-で表される基である。
pは0又は1の数である。
【0011】
一般式(1)におけるRは1,2-ブチレン基(-CHCH(CHCH)-又は-CH(CHCH)CH-)を構成単位として含む炭化水素重合体から水素原子を1つ除いた残基である。
1,2-ブチレン基を構成単位として含む炭化水素重合体において、全構成単位中の1,2-ブチレン基の比率は、100℃でのHTHS粘度の観点から、10~90モル%が好ましく、更に好ましくは20~80モル%である。
1,2-ブチレン基を構成単位として含む炭化水素重合体において、1,2-ブチレン基の比率が異なるものを2種類併用する場合、2種の1,2-ブチレン基の比率の差の絶対値は、低温粘度の観点から、10~80モル%が好ましく、更に好ましくは20~70モル%である。
【0012】
1,2-ブチレン基を構成単位として含む炭化水素重合体としては、炭素数37以上のものが好ましく、構成単量体(不飽和炭化水素(x))として1-ブテンを用いた重合体及び1,3-ブタジエンを用いた重合体の1,2-付加物の炭素-炭素二重結合を水素化した重合体等が挙げられる。
【0013】
一般式(1)における炭化水素重合体の1-ブテン及び/又は1,3-ブタジエン由来の構造について、全構成単位中の1,2-ブチレン基の比率は、13C-NMRによって測定することができる。具体的には、例えば、単量体として炭素数4のもののみを用いた場合、炭化水素重合体を13C-NMRにより分析し、下記数式(1)を用いて計算し決定することができる。13C-NMRにおいて、1,2-ブチレン基の分岐メチレン基の3級炭素原子(-CHCH(CHCH)-)に由来するピークが26~27ppmの積分値(積分値B)に現れる。上記ピークの積分値と、炭化水素重合体の全炭素のピークに関する積分値(積分値C)から1,2-ブチレン基の比率を求めることができる。
1,2-ブチレン基の比率(モル%)={(積分値B)×4}/(積分値C)×100 (1)
なお、1,2-ブチレン基の比率を大きくするには、例えば1,3-ブタジエンを用いたアニオン重合においては、反応温度を1,3-ブタジエンの沸点(-4.4℃)以下の温度で低くし、且つ、重合開始剤の投入量を1,3-ブタジエンに対して少なくすればよく、1,2-ブチレンの比率を小さくするには、反応温度を1,3-ブタジエンの沸点以上の温度で高くし、重合開始剤の投入量を1,3-ブタジエンに対して多くすればよい。
【0014】
一般式(1)中のRを構成する全単量体のうち1,3-ブタジエンの比率(1,2-ブチレン基を構成単位として含む炭化水素重合体において、全構成単量体中の1,3-ブタジエンの重量割合)は、粘度指数向上効果の観点から、50重量%以上が好ましく、更に好ましくは75重量%以上、特に好ましくは85重量%以上、最も好ましくは90重量%以上である。
【0015】
一般式(1)中のRの一部又は全量を構成する1,3-ブタジエン由来の構造において、1,2-ブチレン基(1,2-付加体)と1,4-ブチレン基(1,4-付加体)のモル比(1,2-付加体/1,4-付加体)は、粘度指数向上効果及び低温粘度の観点から、好ましくは1/99~99/1、更に好ましくは10/90~90/10、特に好ましくは20/80~80/20である。
また、単量体(a)としては、モル比(1,2-付加体/1,4-付加体)が1/99~50/50のものと51/49~99/1のものとを併用することが好ましく、さらに好ましくは10/90~50/50のものと55/45~90/10のものとを併用することである。
一般式(1)中のRの一部または全量を構成する1,3-ブタジエン由来の構造における1,2-付加体/1,4-付加体のモル比率はH-NMRや13C-NMR、ラマン分光法などで測定することができる。
【0016】
一般式(1)におけるRは、低温粘度の観点から、1,2-ブチレン基に加えて、更にイソブチレン基を構成単位として含む炭化水素重合体から水素原子を1つ除いた残基であることが好ましい。イソブチレン基を構成単位として含む炭化水素重合体とする方法としては、構成単量体(不飽和炭化水素(x))としてイソブテンを用いる等の方法が挙げられる。
炭化水素重合体におけるイソブチレン基と1,2-ブチレン基との合計比率は、炭化水素重合体の構成単位の合計モル数に基づいて、低温粘度の観点から、30モル%以上が好ましく、更に好ましくは40モル%以上、特に好ましくは50モル%以上、最も好ましくは60モル%以上である。
【0017】
炭化水素重合体の合計構成単位数に基づき、イソブチレン基と1,2-ブチレン基との合計比率は、炭化水素重合体を13C-核磁気共鳴スペクトルにより分析し、下記数式(2)を用いて計算し決定することができる。具体的には、例えば、単量体として炭素数4のもののみを用いた場合、13C-核磁気共鳴スペクトルにおいて、イソブチレン基のメチル基に由来するピークが30-32ppmの積分値(積分値A)、1,2-ブチレン基の分岐メチレン基の3級炭素原子に由来するピークが26-27ppmの積分値(積分値B)に現れる。上記ピークの積分値と、炭化水素重合体の全炭素のピークに関する積分値(積分値C)から求めることができる。
イソブチレン基と1,2-ブチレン基との合計比率(モル%)={(積分値A)×2+(積分値B)×4}/(積分値C)×100 (2)
【0018】
1,2-ブチレンを構成単位として含む炭化水素重合体は、1-ブテン及び1,3-ブタジエンに加え、不飽和炭化水素(x)として以下の(1)~(3)を構成単量体としてもよい。
(1)脂肪族不飽和炭化水素[炭素数2~36のオレフィン(例えばエチレン、プロピレン、2-ブテン、イソブテン、ペンテン、ヘプテン、ジイソブチレン、オクテン、ドデセン、オクタデセン、トリアコセン及びヘキサトリアコセン等)及び炭素数4~36のジエン(例えば、イソプレン、1,4-ペンタジエン、1,5-ヘキサジエン及び1,7-オクタジエン等)等]
(2)脂環式不飽和炭化水素[例えばシクロヘキセン、(ジ)シクロペンタジエン、ピネン、リモネン、インデン、ビニルシクロヘキセン及びエチリデンビシクロヘプテン等]
(3)芳香族基含有不飽和炭化水素(例えばスチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4-ジメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、フェニルスチレン、シクロヘキシルスチレン、ベンジルスチレン、クロチルベンゼン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン及びトリビニルベンゼン等)等が挙げられる。
これらによって構成される炭化水素重合体は、ブロック重合体でもランダム重合体であってもよい。また炭化水素重合体が、炭素-炭素二重結合を有する場合には、水素添加により、二重結合の一部又は全部を水素化したものであってもよい。一態様において、Rにおける炭化水素重合体は、構成単量体として炭素数4の単量体のみを用いた炭化水素重合体であってよく、炭素数4の単量体は、1-ブテン及び/又は1,3-ブタジエンであってよく、必要によりイソブテンを含んでいてもよい。
単量体(a)における1-ブテン、1,3-ブタジエン及びイソブテン以外の不飽和炭化水素の重量割合は、50重量%以下が好ましく、さらに好ましくは25重量%以下、次にさらに好ましくは15重量%以下、特に好ましくは10重量%以下である。
【0019】
単量体(a)の重量平均分子量(以下Mwと略記する)及び数平均分子量(以下Mnと略記する)は以下の条件でゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下GPCと略記する)によって測定することができる。
<単量体(a)のMw及びMnの測定条件>
装置 :「HLC-8320GPC」[東ソー(株)製]
カラム :「TSKgel GMHXL」[東ソー(株)製]2本
「TSKgel Multipore H XL-M」
[東ソー(株)製] 1本
測定温度 :40℃
試料溶液 :0.25重量%のテトラヒドロフラン溶液
溶液注入量:10.0μl
検出装置 :屈折率検出器
基準物質 :標準ポリスチレン(TS 基準物質 :標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE))
12点(分子量:589、1,050、2,630、9,100、19,500、37,900、96,400、190,000、355,000、1,090,000、2,110,000、4,480,000)[東ソー(株)製]
【0020】
単量体(a)のMnは、好ましくは800~10,000であり、更に好ましくは1,000~9,000、特に好ましくは1,200~8,500である。
単量体(a)のMnが800以上であると粘度指数向上効果が良好である傾向があり、10,000以下であると長期間使用時の剪断安定性が良好である傾向がある。
単量体(a)のMwは、低温粘度の観点から、好ましくは900~13,000であり、更に好ましくは1,200~12,000、特に好ましくは1,500~11,000である。
【0021】
単量体(a)は、炭化水素重合体の片末端に水酸基を導入して得られた片末端に水酸基を含有する重合体(Y)と(メタ)アクリル酸とのエステル化反応、または重合体(Y)と(メタ)アクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸アルキル(好ましくはアルキル基の炭素数が1~4)エステルとのエステル交換反応等により得ることができる。
なお、「(メタ)アクリル」は、「アクリル及び/又はメタクリル」を意味する。
【0022】
単量体(a)に由来する構成単位(単量体(a)のビニル基部分が反応して単結合になった構造)の溶解性パラメータ(以下、SP値と略記する)は、潤滑油への溶解性の観点から、好ましくは7.0~9.0(cal/cm1/2であり、更に好ましくは7.3~8.5(cal/cm1/2である。
なお、本発明におけるSP値は、Fedors法(Polymer Engineering and Science,February,1974,Vol.14、No.2 P.147~154)の152頁(Table.5)に記載の数値(原子又は官能基の25℃における蒸発熱及びモル体積)を用いて、同153頁の数式(28)に記載の方法で算出される値である。具体的には、Fedors法のパラメータである下記表1に記載のΔe及びΔviの数値から、分子構造内の原子及び原子団の種類に対応した数値を用いて、下記数式に当てはめることで算出することができる。
SP値=(ΣΔe/ΣΔv1/2
【表1】
単量体(a)に由来する構成単位のSP値は、単量体(a)に由来する構成単位の分子構造に基づいて、前記パラメータを用いて算出することができ、使用する単量体(不飽和炭化水素(x))、重量分率を適宜調整することにより所望の範囲にすることができる。
【0023】
片末端に水酸基を含有する重合体(Y)の具体例としては、以下の(Y1)~(Y4)が挙げられる。
アルキレンオキサイド付加物(Y1);不飽和炭化水素(x)をイオン重合触媒(リチウム触媒及びナトリウム触媒等)存在下に重合して得られた重合体に、アルキレンオキサイド(エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等)を付加して得られたもの等(一般式(1)において、-X-が-(AO)-であり、p=0であるもの)。
ヒドロホウ素化物(Y2);片末端に二重結合を有する不飽和炭化水素(x)の重合体のヒドロホウ素化反応物(例えば米国特許第4,316,973号明細書に記載のもの)等(一般式(1)において、-X-が-O-であり、p=0であるもの)。
無水マレイン酸-エン-アミノアルコール付加物(Y3);片末端に二重結合を有する不飽和炭化水素(x)の重合体と無水マレイン酸とのエン反応で得られた反応物を、アミノアルコールでイミド化して得られたもの等(一般式(1)において、-X-が-O-であり、p=1であるもの)。
ヒドロホルミル-水素化物(Y4);片末端に二重結合を有する不飽和炭化水素(x)の重合体をヒドロホルミル化し、次いで水素化反応して得られたもの(例えば特開昭63-175096号公報に記載のもの)等(一般式(1)において、-X-が-O-であり、p=0であるもの)。
これらの片末端に水酸基を含有する重合体(Y)のうち、HTHS粘度及び粘度指数向上効果の観点から、好ましいのはアルキレンオキサイド付加物(Y1)、ヒドロホウ素化物(Y2)及び無水マレイン酸-エン-アミノアルコール付加物(Y3)であり、更に好ましいのはアルキレンオキサイド付加物(Y1)である。
【0024】
上記一般式(2)で示される単量体(b)について説明する。
単量体(b)において、一般式(2)中のRは水素原子又はメチル基である。これらのうち、粘度指数向上効果の観点から、好ましいのはメチル基である。
単量体(b)は、一般式(2)においてRが炭素数4のアルキル基であるものである。
炭素数4のアルキル基としては、例えば、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基及びt-ブチル基等が挙げられる。
単量体(b)として、具体的には、(メタ)アクリル酸ブチル(例えば、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル等)及びN-ブチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
単量体(b)としては、粘度指数向上効果の観点から、(メタ)アクリル酸ブチルが好ましく、さらに好ましくは(メタ)アクリル酸n-ブチルである。
【0025】
上記一般式(3)で示される単量体(c)について説明する。
一般式(3)におけるRは、水素原子又はメチル基である。これらのうち、粘度指数向上効果の観点から、好ましいのはメチル基である。
【0026】
一般式(3)における-X3-は、-O-又は-NH-で表される基である。これらのうち、粘度指数向上効果の観点から、好ましいのは-O-で表される基である。
【0027】
一般式(3)におけるR6は、炭素数2~4のアルキレン基である。
炭素数2~4のアルキレン基としては、エチレン基、1,2-又は1,3-プロピレン基、イソブチレン基、及び1,2-、1,3-又は1,4-ブチレン基等が挙げられる。
6Oは炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、エチレンオキシ基、1,2-又は1,3-プロピレンオキシ基、イソブチレンオキシ基及び1,2-、1,3-又は1,4-ブチレンオキシ基等が挙げられる。
一般式(3)におけるrは1~20の整数であり、粘度指数向上効果及び低温粘度の観点から、好ましくは1~5の整数であり、更に好ましくは1~2の整数である。
rが2以上の場合のR6Oは同一でも異なっていてもよく、(R6O)部分の結合形式はランダム状でもブロック状でもよい。
【0028】
一般式(3)におけるR7は、炭素数1~8のアルキル基である。直鎖又は分岐アルキル基が含まれ、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ヘプチル基、イソヘプチル基、n-ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、n-ペンチル基及びn-オクチル基等が挙げられる。
炭素数1~8のアルキル基のうち、粘度指数向上効果の観点から好ましいのは、炭素数1~7のアルキル基であり、更に好ましいのは炭素数1~6のアルキル基、特に好ましいのは炭素数1~5のアルキル基、最も好ましいのは炭素数2又は4のアルキル基である。
【0029】
単量体(c)として具体的には、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、プロポキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ペンチルオキシエチル(メタ)アクリレート、ヘキシルオキシエチル(メタ)アクリレート、ヘプチルオキシエチル(メタ)アクリレート、オクチルオキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシプロピル(メタ)アクリレート、プロポキシプロピル(メタ)アクリレート、ブトキシプロピル(メタ)アクリレート、ペンチルオキシプロピル(メタ)アクリレート、ヘキシルオキシプロピル(メタ)アクリレート、ヘプチルオキシプロピル(メタ)アクリレート、オクチルオキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシブチル(メタ)アクリレート、エトキシブチル(メタ)アクリレート、プロポキシブチル(メタ)アクリレート、ブトキシブチル(メタ)アクリレート、ペンチルオキシブチル(メタ)アクリレート、ヘキシルオキシブチル(メタ)アクリレート、ヘプチルオキシブチル(メタ)アクリレート及びオクチルオキシブチル(メタ)アクリレート並びに炭素数1~8のアルコールに炭素数2~4のアルキレンオキサイド(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド及びブチレンオキサイドからなる群より選ばれる少なくとも1種)を2~20モル付加したものと(メタ)アクリル酸とのエステル化物等が挙げられる。
単量体(c)のうち、粘度指数向上効果の観点から好ましいのは、エトキシエチル(メタ)アクリレート及びブトキシエチル(メタ)アクリレートである。
【0030】
上記一般式(2)で示される単量体(d)について説明する。
単量体(d)において、一般式(2)中のRは水素原子又はメチル基である。これらのうち、粘度指数向上効果の観点から、好ましいのはメチル基である。
単量体(d)は、一般式(2)においてRが炭素数2~3のアルキル基であるものである。
炭素数2~3のアルキル基としては、例えばエチル基、n-プロピル基及びイソプロピル基等が挙げられる。
単量体(d)として、具体的には、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、N-エチル(メタ)アクリルアミド及びN-プロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
単量体(d)としては、粘度指数向上効果の観点から、(メタ)アクリル酸エチルが好ましい。
【0031】
共重合体(A)において、共重合体(A)の構成単量体のうち単量体(a)の重量割合は、100℃でのHTHS粘度、40℃での動粘度、剪断安定性及び粘度指数向上効果の観点から、共重合体(A)を構成する単量体の合計重量に基づいて、1~50重量%が好ましく、更に好ましくは2~30重量%である。
【0032】
共重合体(A)において、共重合体(A)の構成単量体のうち単量体(b)の重量割合は、100℃でのHTHS粘度、40℃での動粘度、剪断安定性及び粘度指数向上効果の観点から、共重合体(A)を構成する単量体の合計重量に基づいて、1~80重量%が好ましく、更に好ましくは3~70重量%である。
【0033】
共重合体(A)において、共重合体(A)の構成単量体のうち単量体(c)の重量割合は、100℃でのHTHS粘度、40℃での動粘度、剪断安定性及び粘度指数向上効果の観点から、共重合体(A)を構成する単量体の合計重量に基づいて、1~60重量%が好ましく、更に好ましくは2~40重量%である。
【0034】
共重合体(A)において、共重合体(A)の構成単量体のうち単量体(c)及び単量体(d)の合計重量割合は、剪断安定性及び粘度指数向上効果の観点から、共重合体(A)を構成する単量体の合計重量に基づいて、1~60重量%が好ましく、更に好ましくは2~40重量%である。
【0035】
共重合体(A)において、共重合体(A)の構成単量体のうち単量体(d)の重量割合は、100℃でのHTHS粘度、40℃での動粘度、剪断安定性及び粘度指数向上効果の観点から、共重合体(A)を構成する単量体の合計重量に基づいて、1~60重量%が好ましく、更に好ましくは2~40重量%である。
【0036】
共重合体(A)において、共重合体(A)の構成単量体のうち単量体(c)及び単量体(d)の合計重量と単量体(b)の重量との重量比率{(c+d)/b}は、0.01~20が好ましく、より好ましくは0.03~5であり、更に好ましくは0.05~2である。重量比率{(c+d)/b}が0.01以上であるとゲル化インデックス及び粘度指数が良好である傾向があり、20以下であるとゲル化インデックスが良好である傾向がある。
共重合体(A)において、共重合体(A)の構成単量体のうち単量体(c)の重量と単量体(b)の重量との重量比率(c/b)は、0.01~20が好ましく、より好ましくは0.03~5であり、更に好ましくは0.05~2である。重量比率(c/b)が0.01以上であるとゲル化インデックス及び粘度指数が良好である傾向があり、20以下であるとゲル化インデックスが良好である傾向がある。
【0037】
本発明において、共重合体(A)は、炭素数9~36の直鎖又は分岐アルキル基を有する(メタ)アクリロイル単量体(e)を構成単量体として含む共重合体であることが、基油への溶解性の観点から好ましい。
単量体(e)としては、炭素数9~36の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリロイル単量体(e1)及び下記一般式(4)で表される炭素数9~36の分岐アルキル基を有する(メタ)アクリロイル単量体(e2)等が含まれる。
なお、単量体(e)は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【化7】
[一般式(4)においてR8は水素原子又はメチル基;-X4-は-O-又は-NH-で表される基;R9Oは炭素数2~4のアルキレンオキシ基;R10及びR11はそれぞれ独立に炭素数1~24の直鎖アルキル基であり、R10及びR11の合計炭素数は7~34;sは0~20の整数であり、sが2以上の場合のROは同一でも異なっていてもよい。]
【0038】
炭素数9~36の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリロイル単量体(e1)(以下、単量体(e1)と略記することがある)としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル{炭素数9~36の直鎖アルキルアルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル化物であり、例えば、(メタ)アクリル酸n-ノニル、(メタ)アクリル酸n-デシル、(メタ)アクリル酸n-ウンデシル、(メタ)アクリル酸n-ドデシル、(メタ)アクリル酸n-トリデシル、(メタ)アクリル酸n-テトラデシル、(メタ)アクリル酸n-ペンタデシル、(メタ)アクリル酸n-ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸n-オクタデシル、(メタ)アクリル酸n-イコシル、(メタ)アクリル酸n-テトラコシル、(メタ)アクリル酸n-トリアコンチル及び(メタ)アクリル酸n-ヘキサトリアコンチル等}、炭素数9~36の直鎖アルキルアルコールのアルキレンオキサイド(炭素数2~4)1~20モル付加物と(メタ)アクリル酸とのエステル化物、及び(メタ)アクリル酸アルキルアミド{炭素数9~36の直鎖アルキルアミンとアクリル酸とのアミド化物等}等が挙げられる。
単量体(e1)のうち、粘度指数向上効果の観点から、好ましいのは炭素数12~28の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルであり、更に好ましいのは炭素数12~24の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルであり、特に好ましいのは炭素数12~20の直鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルである。
単量体(e1)は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0039】
単量体(e2)において、一般式(4)におけるR8は、水素原子又はメチル基である。これらのうち、粘度指数向上効果の観点から、好ましいのはメチル基である。
一般式(4)における-X4-は、-O-又は-NH-で表される基である。これらのうち、粘度指数向上効果の観点から、好ましいのは-O-で表される基である。
一般式(4)におけるR9は、炭素数2~4のアルキレン基である。炭素数2~4のアルキレン基としては、エチレン基、1,2-又は1,3-プロピレン基、イソブチレン基及び1,2-、1,3-又は1,4-ブチレン基が挙げられる。
9Oは炭素数2~4のアルキレンオキシ基であり、エチレンオキシ基、1,2-又は1,3-プロピレンオキシ基、イソブチレンオキシ基及び1,2-、1,3-又は1,4-ブチレンオキシ基等が挙げられる。
一般式(4)におけるsは0~20の整数であり、粘度指数向上効果の観点から、0~5の整数が好ましく、更に好ましくは0~2の整数である。
sが2以上である場合のR9Oは同一でも異なっていてもよく、(R9O)部分はランダム結合でもブロック結合でもよい。
一般式(4)におけるR10及びR11は、それぞれ独立に、炭素数1~24の直鎖アルキル基である。具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ヘプチル基、n-ヘキシル基、n-ペンチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-テトラデシル基、n-ヘキサデシル基、n-オクタデシル基、n-エイコシル基及びn-テトラコシル基等が挙げられる。炭素数1~24の直鎖アルキル基のうち、粘度指数向上効果の観点から好ましいのは、R10又はR11のうち少なくとも一方が炭素数6~24の直鎖アルキル基であることであり、更に好ましいのはR10又はR11のうち少なくとも一方が炭素数6~20の直鎖アルキル基であることであり、特に好ましいのはR10又はR11のうち少なくとも一方が炭素数8~16の直鎖アルキル基であることである。
10及びR11の合計炭素数は、7~34であり、粘度指数向上効果の観点から、12~30が好ましく、更に好ましくは14~26である。
10及びR11を含む炭素鎖は、R10及びR11の一方を分岐鎖とする炭素数9~36の分岐アルキル基となる。分岐アルキル基の炭素数は、9~36であり、粘度指数向上効果の観点から、14~32が好ましく、更に好ましくは16~28である。
【0040】
単量体(e2)として具体的には、(メタ)アクリル酸2-オクチルデシル、エチレングリコールモノ-2-オクチルペンタデシルエーテルと(メタ)アクリル酸とのエステル化物、(メタ)アクリル酸2-n-オクチルドデシル、(メタ)アクリル酸2-n-デシルテトラデシル、(メタ)アクリル酸2-n-ドデシルヘキサデシル、(メタ)アクリル酸2-n-テトラデシルオクタデシル、(メタ)アクリル酸2-n-ドデシルペンタデシル、(メタ)アクリル酸2-n-テトラデシルヘプタデシル、(メタ)アクリル酸2-n-ヘキサデシルヘプタデシル、(メタ)アクリル酸2-n-ヘプタデシルイコシル、(メタ)アクリル酸2-n-ヘキサデシルドコシル、(メタ)アクリル酸2-n-エイコシルドコシル、(メタ)アクリル酸2-n-テトラコシルヘキサコシル及びN-2-オクチルデシル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
単量体(e2)は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0041】
単量体(e)のうち、基油への溶解性及び低温粘度の観点から好ましいのは、上記一般式(4)で表される炭素数9~36の分岐アルキル基を有する(メタ)アクリロイル単量体(e2)であり、更に好ましいのは単量体(e2)のうち炭素数14~32の分岐アルキル基を有する(メタ)アクリロイル単量体であり、特に好ましいのは単量体(e2)のうち炭素数16~28の分岐アルキル基を有する(メタ)アクリロイル単量体である。
【0042】
共重合体(A)において、共重合体(A)の構成単量体のうち単量体(e)の重量割合は、粘度指数向上効果及び共重合体(A)を好ましいSP値にする観点から、共重合体(A)を構成する単量体の合計重量に基づいて、1~60重量%が好ましく、更に好ましくは5~35重量%である。
【0043】
本発明における共重合体(A)は、上記単量体(a)~(e)に加え、更に窒素原子含有単量体(f)、水酸基含有単量体(g)、リン原子含有単量体(h)、芳香環含有ビニル単量体(i)及び単量体(j)~単量体(n)を構成単量体として含んでもよい。
単量体(f)~(n)はそれぞれ1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
窒素原子含有単量体(f)としては、単量体(a)~(e)を除く、以下の単量体(f1)~(f4)が挙げられる。
【0045】
アミド基含有単量体(f1):
(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-(N’-モノアルキルアミノアルキル)(メタ)アクリルアミド[窒素原子に炭素数1~4のアルキル基が1つ結合したアミノアルキル基(炭素数2~6)を有するもの;例えばN-(N’-メチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(N’-エチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(N’-イソプロピルアミノ-n-ブチル)(メタ)アクリルアミド及びN-(N’-n-又はイソブチルアミノ-n-ブチル)(メタ)アクリルアミド等]、ジアルキル(メタ)アクリルアミド[窒素原子に炭素数1~4のアルキル基が2つ結合したもの;例えばN,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド及びN,N-ジ-n-ブチル(メタ)アクリルアミド等]、N-(N’,N’-ジアルキルアミノアルキル)(メタ)アクリルアミド[アミノアルキル基の窒素原子に炭素数1~4のアルキル基が2つ結合したアミノアルキル基(炭素数2~6)を有するもの;例えばN-(N’,N’-ジメチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(N’,N’-ジエチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(N’,N’-ジメチルアミノプロピル)(メタ)アクリルアミド及びN-(N’,N’-ジ-n-ブチルアミノブチル)(メタ)アクリルアミド等];N-ビニルカルボン酸アミド[N-ビニルホルムアミド、N-ビニルアセトアミド、N-ビニル-プロピオン酸アミド及びN-ビニルヒドロキシアセトアミド等]等が挙げられる。
【0046】
ニトロ基含有単量体(f2):
4-ニトロスチレン等が挙げられる。
【0047】
1~3級アミノ基含有単量体(f3):
1級アミノ基含有単量体{炭素数3~6のアルケニルアミン[(メタ)アリルアミン及びクロチルアミン等]、アミノアルキル(炭素数2~6)(メタ)アクリレート[アミノエチル(メタ)アクリレート等]};2級アミノ基含有単量体{モノアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート[窒素原子に炭素数1~6のアルキル基が1つ結合したアミノアルキル基(炭素数2~6)を有するもの;例えばN-t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びN-メチルアミノエチル(メタ)アクリレート等]、炭素数6~12のジアルケニルアミン[ジ(メタ)アリルアミン等]};3級アミノ基含有単量体{ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート[窒素原子に炭素数1~6のアルキル基が2つ結合したアミノアルキル基(炭素数2~6)を有するもの;例えばN,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びN,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等]、窒素原子を有する脂環式(メタ)アクリレート[モルホリノエチル(メタ)アクリレート等]、芳香族系単量体[N-(N’,N’-ジフェニルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノスチレン、4-ビニルピリジン、2-ビニルピリジン、N-ビニルピロール、N-ビニルピロリドン及びN-ビニルチオピロリドン等]}、及びこれらの塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩又は低級アルキル(炭素数1~8)モノカルボン酸(酢酸及びプロピオン酸等)塩等が挙げられる。
【0048】
ニトリル基含有単量体(f4):
(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
【0049】
単量体(f)のうち好ましいのは、アミド基含有単量体(f1)及び1~3級アミノ基含有単量体(f3)であり、更に好ましいのは、N-(N’,N’-ジフェニルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(N’,N’-ジメチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(N’,N’-ジエチルアミノエチル)(メタ)アクリルアミド、N-(N’,N’-ジメチルアミノプロピル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート及びN,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレートである。
【0050】
水酸基含有単量体(g):
水酸基含有芳香族単量体(p-ヒドロキシスチレン等)、ヒドロキシアルキル(炭素数2~6)(メタ)アクリレート[2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、及び2-又は3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等]、モノ-又はビス-ヒドロキシアルキル(炭素数1~4)置換(メタ)アクリルアミド[N,N-ビス(ヒドロキシメチル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ビス(ヒドロキシプロピル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ビス(2-ヒドロキシブチル)(メタ)アクリルアミド等]、ビニルアルコール、炭素数3~12のアルケノール[(メタ)アリルアルコール、クロチルアルコール、イソクロチルアルコール、1-オクテノール及び1-ウンデセノール等]、炭素数4~12のアルケンモノオール又はアルケンジオール[1-ブテン-3-オール、2-ブテン-1-オール及び2-ブテン-1,4-ジオール等]、ヒドロキシアルキル(炭素数1~6)アルケニル(炭素数3~10)エーテル(2-ヒドロキシエチルプロペニルエーテル等)、多価(3~8価)アルコール(グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ソルビタン、ジグリセリン、糖類及び蔗糖等)のアルケニル(炭素数3~10)エーテル又は(メタ)アクリレート[蔗糖(メタ)アリルエーテル等]等;
ポリオキシアルキレングリコール(アルキレン基の炭素数2~4、重合度2~50)、ポリオキシアルキレンポリオール[上記3~8価のアルコールのポリオキシアルキレンエーテル(アルキレン基の炭素数2~4、重合度2~100)等]、ポリオキシアルキレングリコール又はポリオキシアルキレンポリオールのアルキル(炭素数1~4)エーテルのモノ(メタ)アクリレート[ポリエチレングリコール(Mn:100~300)モノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(Mn:130~500)モノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(Mn:110~310)(メタ)アクリレート、ラウリルアルコールエチレンオキサイド付加物(2~30モル)(メタ)アクリレート及びモノ(メタ)アクリル酸ポリオキシエチレン(Mn:150~230)ソルビタン等]等;が挙げられる。
【0051】
リン原子含有単量体(h)としては、以下の単量体(h1)~(h2)が挙げられる。
【0052】
リン酸エステル基含有単量体(h1):
(メタ)アクリロイロキシアルキル(炭素数2~4)リン酸エステル[(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート及び(メタ)アクリロイロキシイソプロピルホスフェート]及びリン酸アルケニルエステル[リン酸ビニル、リン酸アリル、リン酸プロペニル、リン酸イソプロペニル、リン酸ブテニル、リン酸ペンテニル、リン酸オクテニル、リン酸デセニル及びリン酸ドデセニル等]等が挙げられる。なお、「(メタ)アクリロイロキシ」は、アクリロイロキシ又はメタクリロイロキシを意味する。
【0053】
ホスホノ基含有単量体(h2):
(メタ)アクリロイロキシアルキル(炭素数2~4)ホスホン酸[(メタ)アクリロイロキシエチルホスホン酸等]及びアルケニル(炭素数2~12)ホスホン酸[ビニルホスホン酸、アリルホスホン酸及びオクテニルホスホン酸等]等が挙げられる。
【0054】
単量体(h)のうち好ましいのはリン酸エステル基含有単量体(h1)であり、更に好ましいのは(メタ)アクリロイロキシアルキル(炭素数2~4)リン酸エステルであり、特に好ましいのは(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェートである。
【0055】
芳香環含有ビニル単量体(i):
スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、2,4-ジメチルスチレン、4-エチルスチレン、4-イソプロピルスチレン、4-ブチルスチレン、4-フェニルスチレン、4-シクロヘキシルスチレン、4-ベンジルスチレン、4-クロチルベンゼン、インデン及び2-ビニルナフタレン等が挙げられる。
【0056】
単量体(i)のうち好ましいのは、スチレン及びα-メチルスチレンであり、更に好ましいのはスチレンである。
【0057】
不飽和基を2つ以上有する単量体(j)としては、例えば、ジビニルベンゼン、炭素数4~12のアルカジエン(ブタジエン、イソプレン、1,4-ペンタジエン、1,6-ヘプタジエン及び1,7-オクタジエン等)、(ジ)シクロペンタジエン、ビニルシクロヘキセン及びエチリデンビシクロヘプテン、リモネン、エチレンジ(メタ)アクリレート、ポリアルキレンオキサイドグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、国際公開WO01/009242号公報に記載の、Mnが500以上の不飽和カルボン酸とグリコールとのエステル及び不飽和アルコールとカルボン酸のエステルなどが挙げられる。
【0058】
ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルケトン類(k)(単量体(k)と略記することがある):
炭素数2~12の飽和脂肪酸のビニルエステル(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル及びオクタン酸ビニル等)、炭素数1~12のアルキル、アリール又はアルコキシアルキルビニルエーテル(メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、フェニルビニルエーテル、ビニル-2-メトキシエチルエーテル及びビニル-2-ブトキシエチルエーテル等)及び炭素数1~8のアルキル又はアリールビニルケトン(メチルビニルケトン、エチルビニルケトン及びフェニルビニルケトン等)等が挙げられる。
【0059】
エポキシ基含有単量体(l)(単量体(l)と略記することがある):
グリシジル(メタ)アクリレート及びグリシジル(メタ)アリルエーテル等が挙げられる。
【0060】
ハロゲン元素含有単量体(m)(単量体(m)と略記することがある):
塩化ビニル、臭化ビニル、塩化ビニリデン、塩化(メタ)アリル及びハロゲン化スチレン(ジクロロスチレン等)等が挙げられる。
【0061】
不飽和ポリカルボン酸のエステル(n)(単量体(n)と略記することがある):
不飽和ポリカルボン酸のアルキル、シクロアルキル又はアラルキルエステル[不飽和ジカルボン酸(マレイン酸、フマール酸及びイタコン酸等)の炭素数1~8のアルキルジエステル(ジメチルマレエート、ジメチルフマレート、ジエチルマレエート及びジオクチルマレエート等)]等が挙げられる。
【0062】
共重合体(A)において、共重合体(A)の構成単量体のうち単量体(f)の重量割合は、実効温度でのHTHS粘度及び粘度指数向上効果の観点から、共重合体(A)を構成する単量体の合計重量に基づいて、50重量%以下が好ましく、更に好ましくは1~40重量%である。
共重合体(A)において、共重合体(A)の構成単量体のうち単量体(g)の重量割合は、実効温度でのHTHS粘度及び粘度指数向上効果の観点から、共重合体(A)を構成する単量体の合計重量に基づいて、40重量%以下が好ましく、更に好ましくは1~30重量%である。
共重合体(A)において、共重合体(A)の構成単量体のうち単量体(h)の重量割合は、実効温度でのHTHS粘度及び粘度指数向上効果の観点から、共重合体(A)を構成する単量体の合計重量に基づいて、30重量%以下が好ましく、更に好ましくは1~20重量%である。
共重合体(A)において、共重合体(A)の構成単量体のうち単量体(i)の重量割合は、実効温度でのHTHS粘度及び粘度指数向上効果の観点から、共重合体(A)を構成する単量体の合計重量に基づいて、20重量%以下が好ましく、更に好ましくは1~15重量%である。
共重合体(A)において、共重合体(A)の構成単量体のうち単量体(j)の重量割合は、実効温度でのHTHS粘度の観点から、共重合体(A)を構成する単量体の合計重量に基づいて、10重量%以下が好ましく、更に好ましくは1~5重量%である。
共重合体(A)において、共重合体(A)の構成単量体のうち単量体(k)の重量割合は、粘度指数向上効果の観点から、共重合体(A)を構成する単量体の合計重量に基づいて、5重量%以下が好ましく、更に好ましくは0.5~2重量%である。
共重合体(A)において、共重合体(A)の構成単量体のうち単量体(l)の重量割合は、粘度指数向上効果の観点から、共重合体(A)を構成する単量体の合計重量に基づいて、20重量%以下が好ましく、更に好ましくは1~10重量%である。
共重合体(A)において、共重合体(A)の構成単量体のうち単量体(m)の重量割合は、粘度指数向上効果の観点から、共重合体(A)を構成する単量体の合計重量に基づいて、5重量%以下が好ましく、更に好ましくは0.1~2重量%である。
共重合体(A)において、共重合体(A)の構成単量体のうち単量体(n)の重量割合は、粘度指数向上効果の観点から、共重合体(A)を構成する単量体の合計重量に基づいて、1重量%以下が好ましく、更に好ましくは0.01~0.5重量%である。
【0063】
共重合体(A)のMwは、好ましくは5,000~2,000,000であり、更に好ましくは5,000~1,000,000、特に好ましくは10,000~800,000、最も好ましくは15,000~700,000であり、最も好ましくは30,000~600,000である。共重合体(A)のMwが5,000以上であると粘度温度特性の向上効果や粘度指数向上効果が良好である傾向がある。また粘度指数向上剤の添加量が多すぎず、コスト面でも有利である。2,000,000以下であると剪断安定性が良好である傾向がある。
【0064】
なお、共重合体(A)のMwのより好ましい範囲は、粘度指数向上剤及び潤滑油組成物の用途によって異なり、表2に記載の範囲である。
【0065】
【表2】
【0066】
共重合体(A)のMnは、好ましくは2,500以上であり、更に好ましくは5,000以上であり、特に好ましくは7,500以上であり、最も好ましくは15,000以上である。また、好ましくは300,000以下であり、更に好ましくは150,000以下であり、特に好ましくは100,000以下である。
Mnが2,500以上であると粘度温度特性の向上効果や粘度指数向上効果が良好である傾向がある。また粘度指数向上剤の添加量が多すぎず、コスト面でも有利である。Mnが300,000以下であると剪断安定性が良好である傾向がある。
共重合体(A)の分子量分布(Mw/Mn)は、剪断安定性の観点から、1.0~4.0が好ましく、更に好ましくは1.5~3.5である。
なお、共重合体(A)のMw、Mn及び分子量分布の測定条件は上記単量体(a)のMw及びMnの測定条件と同様である。
【0067】
共重合体(A)は、公知の製造方法によって得ることができ、具体的には前記の単量体を溶剤中で重合触媒存在下に溶液重合することにより得る方法が挙げられる。
溶剤としては、トルエン、キシレン、炭素数9~10のアルキルベンゼン、メチルエチルケトン、鉱物油、合成油等及びこれらの混合物が挙げられる。
重合触媒としては、アゾ系触媒(2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)及び2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)等)、過酸化物系触媒(ベンゾイルパーオキサイド、クミルパーオキサイド及びラウリルパーオキサイド等)及びレドックス系触媒(ベンゾイルパーオキサイドと3級アミンの混合物等)等が挙げられる。
更に分子量調整のために必要により、公知の連鎖移動剤(炭素数2~20のアルキルメルカプタン等)を使用することもできる。
重合温度は、好ましくは25~140℃であり、更に好ましくは50~120℃である。また、上記の溶液重合の他に、塊状重合、乳化重合又は懸濁重合により共重合体(A)を得ることができる。
共重合体(A)の重合形態としては、ランダム付加重合体又は交互共重合体のいずれでもよく、また、グラフト共重合体又はブロック共重合体のいずれでもよい。
【0068】
共重合体(A)を構成する単量体の重量分率に基づいて計算するSP値は、基油への溶解性の観点から、8.0~10.0(cal/cm1/2が好ましく、更に好ましくは8.5~9.5(cal/cm1/2である。
共重合体(A)を構成する単量体の重量分率に基づいて計算するSP値(共重合体(A)のSP値と略記することがある)は、前記SP値の算出方法を用いて共重合体(A)を構成する各単量体に由来する構成単位(ビニル基が重合反応により単結合となった構造)のSP値を算出し、仕込み時の各構成単量体の重量分率に基づいて相加平均した値を意味する。例えば、単量体がメタクリル酸メチルの場合、メタクリル酸メチルに由来する構成単位は、原子団として、CHが2個、CHが1個、Cが1個、COが1個なので、下記数式により、メタクリル酸メチルに由来する構成単位のSP値は9.933(cal/cm1/2であることが分かる。同様に計算して、メタクリル酸エチルに由来する構成単位のSP値は9.721(cal/cm1/2であることがわかる。
ΣΔe=1125×2+1180+350+4300=8080
ΣΔv=33.5×2+16.1-19.2+18.0=81.9
δ=(8080/81.9)1/2=9.933(cal/cm1/2
共重合体がメタクリル酸メチル50重量%とメタクリル酸エチル50重量%との重合物である場合、共重合体のSP値は、下記の通り各単量体に由来する構成単位のSP値の重量分率に基づいて相加平均することにより算出される。
共重合体のSP値=(9.933×50+9.721×50)/100=9.827
共重合体(A)を構成する単量体の重量分率に基づいて計算するSP値は、使用する単量体、使用する各単量体の重量分率を適宜調整することにより所望の範囲にすることができる。具体的には、アルキル基の炭素数の大きい単量体を多く使用することでSP値を小さくすることができ、アルキル基の炭素数の小さい単量体を多く使用することでSP値を大きくすることができる。
【0069】
共重合体(A)の剪断安定性指数(SSI)は、潤滑油組成物の使用寿命の観点から、70以下が好ましく、更に好ましくは60以下である。
なお、本発明において、共重合体(A)のSSIとは、共重合体(A)の剪断による粘度低下をパーセンテージで示すものであり、ASTM D6278に準拠して測定された値である。より具体的には、下記数式(3)により算出された値である。
SSI=(Κν-Κν)/(Κν-Κνoil) (3)
上記数式(3)中、Κνは、共重合体(A)を含む粘度指数向上剤を鉱油に希釈した試料油の100℃における動粘度の値であり、Κνは、当該の共重合体(A)を含む粘度指数向上剤を鉱油に希釈した試料油をASTM D6278の手順にしたがって、30サイクル高剪断ボッシュ・ディーゼルインジェクターに通過させた後の100℃における動粘度の値である。また、Κνoilは、当該粘度指数向上剤を希釈する際に用いた鉱油の100℃における動粘度の値である。
【0070】
本発明の粘度指数向上剤は、上記共重合体(A)に加えて、更に共重合体(A)以外の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(共)重合体(B)を含有してもよく、(共)重合体(B)を含有することが低温粘度の観点から好ましい。
(共)重合体(B)としては、単量体(a)を含まない(共)重合体が含まれ、例えば炭素数9~36の直鎖又は分岐アルキル基を有する(メタ)アクリロイル単量体(e)を構成単量体として含む(共)重合体等が挙げられる。具体的には、(メタ)アクリル酸n-ドデシル、(メタ)アクリル酸n-テトラデシル、(メタ)アクリル酸n-ヘキサデシル及び(メタ)アクリル酸n-オクタデシル共重合体、(メタ)アクリル酸n-オクタデシル/(メタ)アクリル酸n-ドデシル(モル比10~30/90~70)共重合体、(メタ)アクリル酸n-テトラデシル/(メタ)アクリル酸n-ドデシル(モル比10~30/90~70)共重合体、(メタ)アクリル酸n-ヘキサデシル/(メタ)アクリル酸n-ドデシル/(メタ)アクリル酸メチル(モル比20~40/55~75/0~10)共重合体及びアクリル酸n-ドデシル/メタクリル酸n-ドデシル(モル比10~40/90~60)共重合体等が挙げられ、これらは単独でも2種以上を併用してもよい。
【0071】
本発明の粘度指数向上剤における、(共)重合体(B)の含有量は、低温粘度の観点から、共重合体(A)の重量に基づいて、0.01~30重量%が好ましく、更に好ましくは0.01~10重量%である。
【0072】
(共)重合体(B)のMwは、流動点温度低下の観点から、5,000~100,000が好ましく、更に好ましくは10,000~80,000である。
(共)重合体(B)を構成する単量体の重量分率に基づいて計算するSP値は、基油への溶解性の観点から、7.0~10が好ましく、更に好ましくは8.0~9.5である。
なお、(共)重合体(B)のMwの測定条件は上記単量体(a)のMwの測定条件と同様であり、SP値の計算方法は共重合体(A)と同様である。
【0073】
本発明の粘度指数向上剤は、粘度指数向上効果及び低温粘度の観点から、共重合体(A)を粘度指数向上剤の重量に基づいて10重量%以上、40重量%以下含有することが好ましい。
本発明の粘度指数向上剤において、低温粘度の観点から、(共)重合体(B)を粘度指数向上剤の重量に基づいて0.01~5重量%含有することが好ましい。
【0074】
<エステル油(Z)>
本発明の粘度指数向上剤は、上記共重合体(A)とエステル油(Z)とを含有する。エステル油は1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。本発明の粘度指数向上剤は、前記単量体(a)及び単量体(b)を構成単量体として含み、さらに単量体(c)及び/又は単量体(d)を構成単量体として含む共重合体(A)と、エステル油(Z)とを含有することにより、分子量の高い共重合体(A)を高濃度で含む場合でも、粘度が低く、粘度指数向上剤の取り扱い性が良好である傾向があり、粘度指数向上剤を製造した後、反応槽から取り出すことが容易である。さらに、本発明の粘度指数向上剤を希釈して潤滑油組成物とした場合は、粘度指数向上剤がエステル油(Z)を含有することで、潤滑油組成物が含む油成分が炭化水素油だけの場合よりも、高温では分子が広がりやすく、温度を下げた場合に分子が凝集しやすく、共重合体(A)の分子挙動が良好となり、100℃でのHTHS粘度及び40℃での動粘度に優れたものとなり、ゲル化インデックスが良好となるものと推察される。
エステル油(Z)としては、従来から潤滑油として使用されている潤滑機能のあるエステル化合物であれば特に限定されない。例えば、特開平11-172267号公報記載の二価カルボン酸とアルコールからなるエステル、特開2003-321691号公報記載の一価カルボン酸とジオールからなるエステル、特開平10-77494号公報記載のフォスフェートエステルなどが挙げられる。
これらのうち、低温粘度の観点から、好ましいのは、炭素数4~16の脂肪族飽和二価カルボン酸と炭素数6~24の脂肪族飽和一価アルコールとのエステル化物であるエステル油(z1)、及び炭素数6~24の脂肪族飽和一価カルボン酸と炭素数4~16の脂肪族飽和二価アルコールとのエステル化物であるエステル油(z2)である。
エステル油(Z)としては、40℃での動粘度の観点から、合計炭素数が10~40のエステル化物が好ましく、更に好ましくは合計炭素数が15~35のエステル化物である。
【0075】
炭素数4~16の脂肪族飽和二価カルボン酸と炭素数6~24の脂肪族飽和一価アルコールとのエステル化物であるエステル油(z1)において、炭素数4~16の脂肪族飽和二価カルボン酸としては、例えば、直鎖飽和アルキル二価カルボン酸{例えば、n-ブタン二酸(コハク酸)、n-ヘプタン二酸(グルタル酸)、n-ヘキサン二酸(アジピン酸)、n-ヘプタン二酸、n-オクタン二酸、n-ノナン二酸、n-デカン二酸(セバシン酸)、n-ウンデカン二酸、n-ドデカン二酸、n-トリデカン二酸、n-テトラデカン二酸、n-ペンタデカン二酸及びn-ヘキサデカン二酸等}、分岐飽和アルキル二価カルボン酸{例えば、3-メチルアジピン酸等}、脂環式飽和二価カルボン酸{例えば、1,2-又は1,3-シクロペンタンジカルボン酸、1,2-、1,3-又は1,4-シクロヘキサンジカルボン酸等}等が挙げられる。
【0076】
エステル油(z1)において、炭素数6~24の脂肪族飽和一価アルコールとしては、例えば、直鎖飽和アルキルモノアルコール{例えば、n-ヘキサノール、n-ヘプタノール、n-オクタノール、n-ノナノール、n-デカノール、n-ウンデシルアルコール、n-ドデシルアルコール、n-トリデシルアルコール、n-テトラデシルアルコール、n-ペンタデシルアルコール、n-ヘキサデシルアルコール、n-ヘプタデシルアルコール、n-オクタデシルアルコール、n-ノナデシルアルコール、n-イコサノール、n-ヘンエイコサノール、n-ドコサノール及びn-テトラコサノール等}、分岐飽和アルキルモノアルコール{例えば、2-エチルヘキサノール、イソノニルアルコール、イソデシルアルコール、イソウンデシルアルコール、イソドデシルアルコール、イソトリデシルアルコール、イソテトラデシルアルコール、イソペンタデシルアルコール、イソヘキサデシルアルコール、イソヘプタデシルアルコール、イソオクタデシルアルコール及びイソノナデシルアルコール等}、脂環式モノアルコール{例えば、シクロヘキサノール、2-、3-又は4-t-ブチルシクロヘキサノール、メントール、シクロヘキサンエタノール、2-、3-又は4-イソプロピルシクロヘキサノール等}等が挙げられる。
【0077】
エステル油(z1)として、具体的には、ヘキサン二酸ジ(2-エチルヘキシル){アジピン酸ビス(2-エチルヘキシル)と記載することがある}、ヘキサン二酸ジイソデシル{アジピン酸ジイソデシルと記載することがある}、ヘプタン二酸ジデシル、ヘプタン二酸ジウンデシル、ヘプタン二酸ジドデシル、ヘプタン二酸ジイソデシル、ヘプタン二酸ジイソウンデシル、ヘプタン二酸ジイソドデシル、ヘプタン二酸ジ(2-エチルヘキシル)、オクタン二酸ジノニル、オクタン二酸ジデシル、オクタン二酸ジウンデシル、オクタン二酸ジイソノニル、オクタン二酸ジイソデシル、オクタン二酸ジ(2-エチルヘキシル)、デカン二酸ジイソウンデシル、ノナン二酸ジオクチル、ノナン二酸ジノニル、ノナン二酸ジデシル、ノナン二酸ジイソオクチル、ノナン二酸ジイソノニル、ノナン二酸ジイソデシル、ノナン二酸ジ(2-エチルヘキシル)、デカン二酸ジオクチル、デカン二酸ジ(2-エチルヘキシル){セバシン酸ビス(2-エチルヘキシル)と記載することがある}、デカン二酸ジノニル及びデカン二酸ジデシル等が挙げられる。
エステル油(z1)のうち、低温粘度の観点から、炭素数4~16の直鎖飽和アルキル二価カルボン酸と炭素数6~24の脂肪族飽和一価アルコールとのエステル化物が好ましく、更に好ましくは炭素数4~16の直鎖飽和アルキル二価カルボン酸と炭素数6~24の分岐飽和アルキルモノアルコールとのエステル化物であり、特に好ましくは炭素数4~10の直鎖飽和アルキル二価カルボン酸と炭素数6~20の分岐飽和アルキルモノアルコールとのエステル化物である。
【0078】
エステル油(z2)において、炭素数6~24の脂肪族飽和一価カルボン酸としては、例えば、直鎖飽和アルキルモノカルボン酸{例えば、n-ヘキサン酸、n-ヘプタン酸、n-オクタン酸、n-ノナン酸、n-デカン酸、n-ウンデカン酸、n-ドデカン酸、n-トリデカン酸、n-テトラデカン酸、n-ペンタデカン酸、n-ヘキサデカン酸、n-ヘプタデカン酸、n-オクタデカン酸、n-ノナデカン酸、n-エイコサン酸、n-ドコサン酸及びn-テトラコサン酸等}、分岐飽和アルキルモノカルボン酸{例えば、2-エチルヘキサン酸、イソノナン酸、イソデカン酸、イソウンデカン酸、イソドデカン酸、イソトリデカン酸、イソテトラデカン酸、イソペンタデカン酸、イソヘキサデカン酸、イソヘプタデカン酸、イソオクタデカン酸及びイソノナデカン酸等}、脂環式モノカルボン酸{例えば、シクロヘキサンカルボン酸等}等が挙げられる。
【0079】
エステル油(z2)において、炭素数4~16の脂肪族飽和二価アルコールとしては、例えば、直鎖飽和アルキルジオール{例えば、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,15-ペンタデカンジオール及び1,16-ヘキサデカンジオール等}、分岐飽和アルキルジオール{例えば、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,4-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-ヘプタンジオール、1,2-オクタンジオール、1,2-ノナンジオール、1,2-デカンジオール、1,2-ウンデカンジオール、1,2-ドデカンジオール、1,2-トリデカンジオール、1,2-テトラデカンジオール、1,2-ペンタデカンジオール及び1,2-ヘキサデカンジオール等}、脂環式ジオール{例えば、1,2-、1,3-又は1,4-シクロヘキサンジオール等}等が挙げられる。
エステル油(z2)のうち、低温粘度の観点から、炭素数6~24の脂肪族飽和一価カルボン酸と炭素数4~16の直鎖飽和アルキルジオールとのエステル化物が好ましく、更に好ましくは炭素数6~24の分岐飽和アルキルモノカルボン酸と炭素数4~16の直鎖飽和アルキルジオールとのエステル化物であり、特に好ましくは炭素数6~20の分岐飽和アルキルモノカルボン酸と炭素数4~12の直鎖飽和アルキルジオールとのエステル化物である。
【0080】
エステル油(Z)の100℃における動粘度(JIS-K2283で測定したもの)は、低温での動粘度の観点から、1~4mm/sが好ましく、更に好ましくは1.5~3.6mm/sである。
エステル油(Z)の100℃における動粘度は、エステル油(Z)を合成する際のカルボン酸とアルキルアルコールの炭素数を変えることによって調整することができる。具体的には、炭素数が大きいものを用いると、100℃における動粘度は高くなる。
エステル油(Z)の粘度指数(JIS-K2283で測定したもの)は、潤滑油組成物の粘度指数の観点から、100以上が好ましく、更に好ましくは105~180である。
エステル油(Z)の粘度指数は、エステル油を合成する際のカルボン酸とアルキルアルコールの炭素数を変えることによって調整することができる。具体的には、炭素数が大きいものを用いると、粘度指数は高くなる。
エステル油(Z)のSP値は、各種添加剤の溶解性の観点から、8.0~10.0(cal/cm1/2が好ましく、更に好ましくは8.5~9.5(cal/cm1/2である。
共重合体(A)を構成する単量体の重量分率に基づいて計算するSP値とエステル油(Z)のSP値との差の絶対値は、相溶性の観点から、0.1~2.0(cal/cm1/2が好ましく、更に好ましくは0.1~1.5(cal/cm1/2、特に好ましくは0.1~1.0(cal/cm1/2である。
【0081】
本発明の粘度指数向上剤中に含まれる共重合体(A)とエステル油(Z)との重量比((A)/(Z))は、粘度指数向上剤の取り扱い性、潤滑油組成物のゲル化インデックス及び250℃での蒸発性の観点から、10/90~70/30が好ましく、更に好ましくは10/90~60/40であり、特に好ましくは25/75~45/55である。この範囲であると、粘度指数向上剤の粘度(例えば90℃における粘度)が低く、取り扱い性が良好となる傾向がある。また、基油として炭化水素油を用いて潤滑油組成物を製造した場合、潤滑油組成物中の重量比率((A)/(Z))が上記比率となり、潤滑油組成物のゲル化インデックス及び250℃での蒸発性が良好となる傾向がある。
本発明の粘度指数向上剤は、粘度指数向上剤の取り扱い性、得られる潤滑油組成物のHTHS粘度の低減及び低温粘度の観点から、エステル油(Z)を粘度指数向上剤の重量を基準として、30~90重量%含有することが好ましく、さらに好ましくは40~89重量%であり、特に好ましくは50~87重量%である。この範囲であると、基油として炭化水素油を用いて潤滑油組成物を製造した場合、潤滑油組成物中のエステル油の含有量が適度となり、HTHS粘度が低く低温粘度に優れた潤滑油組成物を得られる傾向がある。
本発明の粘度指数向上剤は、粘度指数向上剤の取り扱い性、潤滑油組成物のゲル化インデックス及び250℃での蒸発性の観点から、共重合体(A)を粘度指数向上剤の重量を基準として、10~70重量%含有することが好ましく、更に好ましくは10~40重量%であり、特に好ましくは12~40重量%である。
【0082】
粘度指数向上剤の90℃における動粘度(JIS-K2283に準じて測定)は、粘度指数向上剤の取扱性の観点から、100~20000mm/sが好ましく、更に好ましくは300~12000mm/sである。
【0083】
本発明の粘度指数向上剤は、更にエステル油(Z)以外の基油を含有してもよい。粘度指数向上剤の酸化安定性、並びに潤滑油組成物の酸化安定性及び250℃での蒸発性の観点から、エステル油(Z)以外の基油を含有することが好ましい。
エステル油(Z)以外の基油としては、炭化水素油が含まれ、具体的には、API分類のグループI~IVの炭化水素油等が挙げられる。
【0084】
炭化水素油のSP値は、各種添加剤の溶解性の観点から、7.8~9.5(cal/cm1/2が好ましく、更に好ましくは8.0~9.0(cal/cm1/2である。
なお、炭化水素油として鉱物油のように複数の炭化水素化合物の混合物を用いる場合、GPCによる分子量の測定、H-NMR及び13C-NMR等による分子構造の解析で、おおよその構成成分及びその分子構造がわかり、モル分率に基づく相加平均により炭化水素油のSP値を算出することができる。
【0085】
本発明の粘度指数向上剤において、エステル油(Z)と炭化水素油とのSP値の差の絶対値は、相溶性の観点から、0.1~2.0(cal/cm1/2が好ましく、更に好ましくは0.2~1.5(cal/cm1/2、特に好ましくは0.3~1.0(cal/cm1/2である。
【0086】
本発明の粘度指数向上剤において、共重合体(A)を構成する単量体の重量分率に基づいて計算するSP値と炭化水素油のSP値との差の絶対値は、相溶性の観点から、0.8~2.0(cal/cm1/2が好ましく、更に好ましくは0.8~1.3(cal/cm1/2、特に好ましくは0.9~1.2(cal/cm1/2である。
共重合体(A)を構成する単量体の重量分率に基づいて計算するSP値と炭化水素油のSP値との差の絶対値は、基油に対して、共重合体(A)を製造するために使用する単量体の種類、重量分率を適宜調整することにより所望の範囲にすることができる。
【0087】
炭化水素油の100℃における動粘度(JIS-K2283で測定したもの)は、粘度指数及び低温流動性の観点から好ましくは1~15mm/sであり、更に好ましくは2~5mm/sである。
炭化水素油の粘度指数(JIS-K2283で測定したもの)は、潤滑油組成物の粘度指数及び低温流動性の観点から、好ましくは100以上である。
【0088】
粘度指数向上剤中のエステル油(Z)と炭化水素油との重量比((Z)/炭化水素油)は、粘度指数向上剤の酸化安定性、並びに基油として炭化水素油を用いて潤滑油組成物を製造した場合の酸化安定性、250℃での蒸発性及び低温粘度の観点から、40/60~100/0が好ましく、更に好ましくは50/50~95/5である。
粘度指数向上剤中の共重合体(A)と炭化水素油との重量比((A)/炭化水素油)は、HTHS粘度の観点から、10/90~100/0が好ましく、更に好ましくは20/80~90/10である。
本発明の粘度指数向上剤は、粘度指数向上剤の酸化安定性、並びに潤滑油組成物の酸化安定性及び250℃での蒸発性の観点から、炭化水素油を粘度指数向上剤の重量を基準として、1~35重量%含有することが好ましい。
【0089】
炭化水素油の曇り点(JIS-K2269で測定したもの)は、好ましくは-5℃以下であり、更に好ましくは-15℃以下である。炭化水素油の曇り点がこの範囲内であると潤滑油組成物の低温粘度が良好となる傾向がある。
【0090】
<潤滑油組成物>
本発明の潤滑油組成物は、本発明の粘度指数向上剤と、清浄剤、分散剤、酸化防止剤、油性向上剤、流動点降下剤、摩擦摩耗調整剤、極圧剤、消泡剤、抗乳化剤、金属不活性剤及び腐食防止剤からなる群より選ばれる少なくとも1種の添加剤とを含有してなる。
本発明の潤滑油組成物は、省燃費性の観点から、共重合体(A)を潤滑油組成物の重量に基づいて0.1重量%以上、10重量%未満となるように含有することが好ましく、更に好ましくは0.5重量%以上、10重量%未満である。
本発明の潤滑油組成物において、低温粘度の観点から、(共)重合体(B)を潤滑油組成物の重量に基づいて0.01~2重量%となるように含有することが好ましい。
本発明の潤滑油組成物は、ゲル化インデックス、低温粘度、100℃でのHTHS粘度及び40℃での動粘度の観点から、エステル油(Z)を潤滑油組成物の重量に基づいて1~99.9重量%となるように含有することが好ましく、さらに好ましくは1~30重量%である。
本発明の潤滑油組成物において、酸化安定性の観点から、炭化水素油を潤滑油組成物の重量に基づいて98.89重量%以下となるように含有することが好ましく、さらに好ましくは50~90重量%である。
【0091】
潤滑油組成物がエンジン油として使用される場合には、100℃における動粘度が2~10mm/sの基油(エステル油(Z)又はエステル油(Z)と炭化水素油との混合物)に、共重合体(A)を1重量%以上10重量%未満含有しているものが好ましい。
潤滑油組成物がギヤ油として使用される場合には、100℃における動粘度が2~10mm/sの基油(エステル油(Z)又はエステル油(Z)と炭化水素油との混合物)に、共重合体(A)を3~20重量%含有しているものが好ましい。
潤滑油組成物が自動変速機油(ATF及びbelt-CVTF等)として使用される場合には、100℃における動粘度が2~6mm/sの基油(エステル油(Z)又はエステル油(Z)と炭化水素油との混合物)に、共重合体(A)を3~20重量%含有しているものが好ましい。
潤滑油組成物がトラクション油として使用される場合には、100℃における動粘度が1~5mm/sの基油(エステル油(Z)又はエステル油(Z)と炭化水素油との混合物)に、共重合体(A)を0.5~10重量%含有しているものが好ましい。
【0092】
本発明の潤滑油組成物中に含まれる共重合体(A)とエステル油(Z)との重量比((A)/(Z))は、ゲル化インデックス、低温粘度、100℃でのHTHS粘度及び40℃での動粘度の観点から、10/90~70/30が好ましく、更に好ましくは10/90~60/40であり、特に好ましくは25/75~45/55である。
潤滑油組成物中に含まれるエステル油(Z)と炭化水素油との重量比((Z)/炭化水素油)は、ゲル化インデックス、低温粘度、100℃でのHTHS粘度、40℃での動粘度、酸化安定性及び250℃での蒸発性の観点から、1/99~20/80が好ましく、更に好ましくは2/98~9/91である。この範囲であると、潤滑油組成物の酸化安定性及び250℃での蒸発性を低下させることなく、ゲル化インデックス、低温粘度、100℃でのHTHS粘度及び40℃での動粘度を良好にすることができる傾向にある。
潤滑油組成物中に含まれる共重合体(A)と炭化水素油との重量比((A)/炭化水素油)は、HTHS粘度の観点から、99.9/0.1~1/99が好ましく、更に好ましくは99/1~10/90である。
【0093】
本発明の潤滑油組成物は、各種添加剤を含有する。添加剤としては、以下のものが挙げられる。
(1)清浄剤:
塩基性、過塩基性又は中性の金属塩[スルフォネート(石油スルフォネート、アルキルベンゼンスルフォネート及びアルキルナフタレンスルフォネート等)の過塩基性又はアルカリ土類金属塩等]、サリシレート類、フェネート類、ナフテネート類、カーボネート類、フォスフォネート類及びこれらの混合物;
(2)分散剤:
コハク酸イミド類(ビス-又はモノ-ポリブテニルコハク酸イミド類)、マンニッヒ縮合物及びボレート類等;
(3)酸化防止剤:
ヒンダードフェノール類及び芳香族2級アミン類等;
(4)油性向上剤:
長鎖脂肪酸及びそれらのエステル(オレイン酸及びオレイン酸エステル等)、長鎖アミン及びそれらのアミド(オレイルアミン及びオレイルアミド等)等;
(5)流動点降下剤
ポリアルキルメタクリレート、エチレン-酢酸ビニル共重合体等;
(6)摩擦摩耗調整剤:
モリブデン系及び亜鉛系化合物(モリブデンジチオフォスフェート、モリブデンジチオカーバメート及びジンクジアルキルジチオフォスフェート等)等;
(7)極圧剤:
硫黄系化合物(モノ又はジスルフィド、スルフォキシド及び硫黄フォスファイド化合物)、フォスファイド化合物及び塩素系化合物(塩素化パラフィン等)等;
(8)消泡剤:
シリコン油、金属石けん、脂肪酸エステル及びフォスフェート化合物等;
(9)抗乳化剤:
4級アンモニウム塩(テトラアルキルアンモニウム塩等)、硫酸化油及びフォスフェート(ポリオキシエチレン含有非イオン性界面活性剤のフォスフェート等)、炭化水素系溶剤(トルエン、キシレン、エチルベンゼン)等;
(10)金属不活性剤
窒素原子含有化合物(ベンゾトリアゾール等)、窒素原子含有キレート化合物(N,N’-ジサリチデン-1,2-ジアミノプロパン等)、窒素・硫黄原子含有化合物(2-(n-ドデシルチオ)ベンズイミダゾール等)等;
(11)腐食防止剤:
窒素原子含有化合物(ベンゾトリアゾール及び1,3,4-チオジアゾリル-2,5-ビスジアルキルジチオカーバメート等)等。
【0094】
これらの添加剤は1種だけ添加してもよいし、必要に応じて2つ以上の添加剤を添加することもできる。またこれらの添加剤を配合したものを性能添加剤、またはパッケージ添加剤と呼ぶこともあり、それを添加してもよい。
これらの添加剤のそれぞれの含有量は潤滑油組成物全量を基準として0.1~15重量%であることが好ましい。また各添加剤を合計した含有量は潤滑油組成物全量を基準として0.1~30重量%が好ましく、更に好ましくは0.3~20重量%である。
【0095】
本発明の潤滑油組成物は、ギヤ油(デファレンシャル油及び工業用ギヤ油等)、MTF、変速機油[ATF、DCTF及びbelt-CVTF等]、トラクション油(トロイダル-CVTF等)、ショックアブソーバー油、パワーステアリング油、作動油(建設機械用作動油及び工業用作動油等)及びエンジン油(ガソリン用及びディーゼル用)に好適に用いられる。
【実施例
【0096】
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0097】
炭化水素重合体の構成単位中の1,2-ブチレン基の比率は、重合体を13C-NMRにより分析し、上記の方法で上記数式(1)を用いて求めた。
炭化水素重合体中の1,2-付加体/1,4-付加体のモル比(ブタジエン由来の構造におけるモル比)は、重合体を13C-NMRにより分析し、上記数式(1)に使用した積分値Bの値及び積分値Cの値から、下記数式(3)により求めた。
1,2-付加体/1,4-付加体のモル比={100×積分値B×4/積分値C}/{100-(100×積分値B×4/積分値C)} (3)
【0098】
<製造例1>
温度調節装置及び撹拌機を備えた1LのSUS製耐圧反応容器に、脱気及び脱水したヘキサンを400重量部、テトラヒドロフラン0.5重量部、1,3-ブタジエン90重量部、n-ブチルリチウム0.9重量部を仕込んだ後、重合温度を50℃とし重合させた。
重合率がほぼ100%となった後、エチレンオキサイド2重量部を加え、50℃でさらに3時間反応させた。反応を停止させるために水50重量部と1N-塩酸水溶液25重量部を加えて80℃で1時間撹拌した。反応溶液の有機相を分液ロートにて回収し、70℃に昇温後、0.027~0.040MPaの減圧下で溶媒を2時間かけて除去した。
得られた片末端水酸基含有のポリブタジエンを、温度調節装置、攪拌機、水素導入管を備えた反応容器に移し入れ、テトラヒドロフラン150重量部を加えて均一に溶解させた。そこにパラジウム炭素10重量部とテトラヒドロフラン50重量部をあらかじめ混合した懸濁液を注ぎ入れた後、水素導入管より30mL/分の流量で液中に水素を供給しながら、室温で8時間反応させた。その後ろ過にてパラジウム炭素を取り除き、得られたろ液を70℃に昇温して0.027~0.040MPaの減圧下でテトラヒドロフランを除去して水素化ポリブタジエンの片末端水酸基含有重合体(Y-1)を得た。
得られた(Y-1)の分子量をGPCで測定し、1,2-ブチレン基の比率を13C-NMRにて測定した。結果はMw=7,000、Mn=6,500、1,2-ブチレン基の比率=45モル%、モル比(1,2-付加体/1,4-付加体)=45/55であった。
【0099】
<製造例2>
温度調節装置及び撹拌機を備えた1LのSUS製耐圧反応容器に、脱気及び脱水したヘキサンを400重量部、テトラヒドロフラン2重量部、1,3-ブタジエン90重量部、n-ブチルリチウム0.9重量部を仕込んだ後、重合温度をマイナス0℃とし重合させた。
重合率がほぼ100%となった後、エチレンオキサイド2重量部を加え、50℃で3時間反応させた。反応を停止させるために水50重量部と1N-塩酸水溶液25重量部を加えて80℃で1時間撹拌した。反応溶液の有機相を分液ロートにて回収し、70℃に昇温後、0.027~0.040MPaの減圧下で溶媒を2時間かけて除去した。
得られた片末端水酸基含有のポリブタジエンを、温度調節装置、攪拌機、水素導入管を備えた反応容器に移し入れ、テトラヒドロフラン150重量部を加えて均一に溶解させた。そこにパラジウム炭素10重量部とテトラヒドロフラン50重量部をあらかじめ混合した懸濁液を注ぎ入れた後、水素導入管より30mL/分の流量で液中に水素を供給しながら、室温で8時間反応させた。その後ろ過にてパラジウム炭素を取り除き、得られたろ液を70℃に昇温して0.027~0.040MPaの減圧下でテトラヒドロフランを除去して水素化ポリブタジエンの片末端水酸基含有重合体(Y-2)を得た。
得られた(Y-2)の分子量をGPCで測定し、1,2-ブチレン基の比率を13C-NMRにて測定した。結果はMw=7,000、Mn=6,500、1,2-ブチレン基の比率=65モル%、モル比(1,2-付加体/1,4-付加体)=65/35であった。
【0100】
<製造例3:共重合体組成物(B-1)の製造>
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、滴下ロート、窒素吹き込み管及び減圧装置を備えた反応容器に、炭化水素油1(100℃の動粘度:4.2mm/s、粘度指数:122)75重量部を投入し、別のガラス製ビーカーに、メタクリル酸n-ドデシル244重量部、メタクリル酸n-テトラデシル24重量部、メタクリル酸n-ヘキサデシル41重量部、メタクリル酸n-オクタデシル16重量部、連鎖移動剤としてのドデシルメルカプタン0.6重量部、2,2-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.5重量部及び2,2-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.2重量部を投入し、20℃で撹拌、混合して単量体溶液を調製し、滴下ロートに投入した。
反応容器の気相部の窒素置換(気相酸素濃度:100ppm以下)を行った後、密閉下系内温度を70~85℃に保ちながら、2時間かけて単量体溶液を滴下し、滴下終了から2時間、85℃で熟成した後、120~130℃に昇温後、同温度で減圧下(0.027~0.040MPa)にて未反応の単量体を2時間かけて除去し、炭化水素油中に65重量%の共重合体(B)を含有する共重合体組成物(B-1)を得た。得られた共重合体(B)のMwは53,000、SP値は9.0であった。
【0101】
<製造例4:共重合体組成物(B-2)の製造>
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計、滴下ロート、窒素吹き込み管及び減圧装置を備えた反応容器に、エステル油(Z-1)(アジピン酸ビス(2-エチルヘキシル)、100℃の動粘度:2.3mm/s、粘度指数:118)75重量部を投入し、別のガラス製ビーカーに、メタクリル酸n-ドデシル244重量部、メタクリル酸n-テトラデシル24重量部、メタクリル酸n-ヘキサデシル41重量部、メタクリル酸n-オクタデシル16重量部、連鎖移動剤としてのドデシルメルカプタン0.6重量部、2,2-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.5重量部及び2,2-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)0.2重量部を投入し、20℃で撹拌、混合して単量体溶液を調製し、滴下ロートに投入した。
反応容器の気相部の窒素置換(気相酸素濃度:100ppm以下)を行った後、密閉下系内温度を70~85℃に保ちながら、2時間かけて単量体溶液を滴下し、滴下終了から2時間、85℃で熟成した後、120~130℃に昇温後、同温度で減圧下(0.027~0.040MPa)にて未反応の単量体を2時間かけて除去し、エステル油中に65重量%の共重合体(B)を含有する共重合体組成物(B-2)を得た。得られた共重合体(B)のMwは53,000、SP値は9.0であった。
【0102】
<実施例1~28、比較例1~4>
撹拌装置、加熱冷却装置、温度計及び窒素導入管を備えた反応容器に、表3-1、表3-2又は表4に記載の基油、単量体配合物、及び触媒を表3-1、表3-2又は表4に記載の量投入し、窒素置換(気相酸素濃度100ppm)を行った後、密閉下、撹拌しながら76℃に昇温し、同温度で4時間重合反応を行った。120~130℃に昇温後、同温度で減圧下(0.027~0.040MPa)未反応の単量体を2時間かけて除去した。さらに、製造例3で得た共重合体組成物(B-1)又は製造例4で得た共重合体組成物(B-2)を表3-1、表3-2又は表4に記載の量加えて、粘度指数向上剤(R-1)~(R-28)及び(S-1)~(S-4)を得た。共重合体(A-1)~(A-18)及び(A’-1)~(A’-3)のSP値を上記の方法で計算し、Mw及びMnを上記の方法で測定した。また、共重合体(A)の基油溶解性を以下の方法で評価した。さらに、粘度指数向上剤の酸化安定性を以下の方法で評価した。さらに、粘度指数向上剤の90℃の動粘度を以下の方法で測定した。結果を表3-1、表3-2又は表4に示す。
【0103】
<共重合体(A)の基油溶解性の評価方法>
25℃で1日間温調した粘度指数向上剤(R-1)~(R-28)及び(S-1)~(S-4)の外観を、25℃の室温下で、蛍光白色灯下で目視にて観察し、以下の評価基準で共重合体(A)の基油への溶解性を評価した。
[評価基準]
○:外観が均一であり、共重合体の不溶解物がない
×:外観が不均一であり、共重合体の不溶解物が認められる
【0104】
<酸化安定性の測定方法>
JIS-K2514に準拠し、165.5℃±0.5℃で120時間、酸化安定性試験を実施し、試験前後での粘度指数向上剤並びに潤滑油組成物の全酸価の増加量(mgKOH/g)を測定した。数値が小さいほど、酸化安定性に優れることを表す。
[評価基準:粘度指数向上剤]
◎:試験前後での潤滑油組成物の全酸価の増加量が30mgKOH/g以下
○:試験前後での潤滑油組成物の全酸価の増加量が30mgKOH/gを超え、50mgKOH/g以下
△:試験前後での潤滑油組成物の全酸価の増加量が50mgKOH/gを超え、70mgKOH/g以下
【0105】
<粘度指数向上剤の動粘度の測定方法>
JIS-K2283の方法で90℃の動粘度を測定した。数値が低いほど、粘度が低く、取扱性に優れることを意味する。
【0106】
【表3-1】
【0107】
【表3-2】
【0108】
【表4】
【0109】
表3-1、表3-2又は表4に記載の基油及び単量体(a)~(f)及び基油の組成は、以下に記載した通りである。
(a-1):製造例1で得た水素化ポリブタジエンの片末端水酸基含有重合体(1,2-ブチレン基の比率=45モル%)(Y-1)のメタクリル酸エステル化物[Mn:6,600]
(a-2):製造例2で得た水素化ポリブタジエンの片末端水酸基含有重合体(1,2-ブチレン基の比率=65モル%)(Y-2)のメタクリル酸エステル化物[Mn:6,600]
(b-1):メタクリル酸n-ブチル
(b-2):メタクリル酸イソブチル
(c-1):エトキシエチルメタクリレート
(c-2):ブトキシエチルメタクリレート
(d-1):メタクリル酸エチル
(d-2):メタクリル酸イソプロピル
(e-1):メタクリル酸n-ドデシル(Neodol25(シェルケミカルズ社製)とメタクリル酸とのエステル化物)
(e-2):炭素数12~13の直鎖及び分岐アルキルメタクリレート混合物(Neodol23(シェルケミカルズ社製)とメタクリル酸とのエステル化物)
(e-3):炭素数14~15の直鎖及び分岐アルキルメタクリレート混合物(Neodol45(シェルケミカルズ社製)とメタクリル酸とのエステル化物)
(e-4):メタクリル酸n-ヘキサデシル
(e-5):メタクリル酸n-オクタデシル
(e-6):メタクリル酸2-n-デシルテトラデシル
(e-7):メタクリル酸2-n-ドデシルヘキサデシル
(e-8):メタクリル酸2-n-テトラデシルオクタデシル
(f-1):N,N-ジメチルアミノエチルメタクリレート
エステル油(Z-1):アジピン酸ビス(2-エチルヘキシル)(SP値=8.93(cal/cm1/2、100℃の動粘度=2.3mm/s、粘度指数=118)
エステル油(Z-2):セバシン酸ビス(2-エチルヘキシル)(SP値:8.87(cal/cm1/2、100℃の動粘度:3.2mm/s、粘度指数:151)
エステル油(Z-3):アジピン酸ジイソデシル(SP値:8.97(cal/cm1/2、100℃の動粘度:3.6mm/s、粘度指数:141)
炭化水素油1:SP値=8.3~8.4(cal/cm1/2、100℃の動粘度=4.2mm/s、粘度指数=122
炭化水素油2:SP値=8.2~8.3(cal/cm1/2、100℃の動粘度=3.1mm/s、粘度指数=106
【0110】
表3-1、表3-2及び表4の結果から、本発明の粘度指数向上剤は、90℃における動粘度が低く、取扱性に優れることが分かる。特に、構成単量体として単量体(a)を含まない以外はMw、基油の種類及び量等がほぼ同じ比較例1と実施例1との比較、構成単量体として単量体(b)を含まない以外はMw、基油の種類及び量等がほぼ同じ比較例2と実施例26との比較、及び、構成単量体として単量体(c)及び単量体(d)を含まない以外はMw、基油の種類及び量等がほぼ同じ比較例3と実施例25との比較、並びにエステル油を含まないが同じ共重合体(A)を含有する比較例4と実施例1の比較から、本発明の粘度指数向上剤は、単量体(a)及び単量体(b)を構成単量体として含み、さらに単量体(c)及び/又は単量体(d)を構成単量体として含む共重合体(A)と、エステル油とを含むことで、粘度指数向上剤の粘度がより低くなり、取扱性に優れることが分かる。
【0111】
<実施例29~56及び比較例5~8:0W-20評価>
撹拌装置を備えたステンレス製容器に、炭化水素油(SP値:8.3~8.4、100℃の動粘度:4.2mm/s、粘度指数:128)90重量部とパッケージ添加剤「Infineum P5741」(塩基価=84mgKOH/g、カルシウム含量=2.49%、窒素含量=0.68%、リン含量=0.78%、硫酸灰分=9.76%、亜鉛含量=0.86%)10重量部を投入し、得られる潤滑油組成物の150℃のHTHS粘度が2.60±0.05(mPa・s)になるように、それぞれ粘度指数向上剤(R-1)~(R-28)又は(S-1)~(S-4)を添加し、潤滑油組成物(V-1)~(V-28)及び(W-1)~(W-4)を得た。
潤滑油組成物(V-1)~(V-28)及び(W-1)~(W-4)の剪断安定性(BOSCH SSI、Sonic SSI)、HTHS粘度(150℃、100℃、80℃)、動粘度(100℃、40℃)、粘度指数、ゲル化インデックス、低温粘度(-40℃)、250℃での蒸発性、酸化安定性を以下の方法で測定した。結果を表5又は6に示す。
【0112】
【表5】
【0113】
【表6】
【0114】
<実施例57~84及び比較例9~12:0W-16評価>
撹拌装置を備えたステンレス製容器に、炭化水素油(SP値:8.3~8.4、100℃の動粘度:4.2mm/s、粘度指数:128)90重量部とパッケージ添加剤(Infineum P5741)10重量部を投入し、得られる潤滑油組成物の150℃のHTHS粘度が2.30±0.05(mPa・s)になるように、それぞれ粘度指数向上剤(R-1)~(R-28)又は(S-1)~(S-4)を添加し、潤滑油組成物(V-29)~(V-56)及び(W-5)~(W-8)を得た。潤滑油組成物(V-29)~(V-56)及び(W-5)~(W-8)の剪断安定性(BOSCH SSI、Sonic SSI)、HTHS粘度(150℃、100℃、80℃)、動粘度(100℃、40℃)、粘度指数、ゲル化インデックス、低温粘度(-40℃)、250℃での蒸発性、酸化安定性を以下の方法で測定した。結果を表7又は表8に示す。
【0115】
【表7】
【0116】
【表8】
【0117】
<潤滑油組成物のHTHS粘度の測定方法>
ASTM D 4683の方法により、80℃、100℃及び150℃で測定した。80℃及び100℃のHTHS粘度が低いほど、良好であることを意味する。
【0118】
<潤滑油組成物の動粘度の測定方法及び粘度指数の計算方法>
JIS-K2283の方法で40℃と100℃の動粘度を測定し、JIS-K2283の方法で粘度指数を計算した。粘度指数の値が大きいほど粘度指数向上効果が高いことを意味する。
【0119】
<潤滑油組成物の剪断安定性(BOSCH SSI)の測定方法及び計算方法>
ASTM D 6278の方法で測定し、ASTM D 6022の方法で計算した。値が小さいほど、剪断安定性が高いことを意味する。
【0120】
<潤滑油組成物の剪断安定性(Sonic SSI)の測定方法及び計算方法>
超音波剪断装置を用いて、JPI-5S-29-2006の方法で測定し、ASTM D 6022の方法で計算した。値が小さいほど、剪断安定性が高いことを意味する。
【0121】
<潤滑油組成物の低温粘度の測定方法>
JPI-5S-42-2004の方法で-40℃での粘度を測定した。値が小さいほど、低温粘度が低いことを意味する。
【0122】
<ゲル化インデックスの測定方法>
走査型ブルックフィールド粘度計をASTM D 5133の方法で操作してゲル化インデックスを測定した。具体的には、約20mlの潤滑油組成物をガラス固定子中にフィルラインまで注ぎ、90℃で1.5時間予熱した後、温度勾配プログラムを設定して、1℃/時間の走査速度で-5℃~-40℃に冷却し、ゲル化インデックスを測定した。なお、値が小さいほど、低温での粘度特性が良く、エンジン油として良好であることを意味する。
【0123】
<蒸発性の測定方法>
ASTM D 5800の方法で250℃での蒸発率を測定した。値が小さいほど、潤滑油の蒸発率が低く、エンジン油として良好である。
【0124】
<酸化安定性の測定方法>
JIS-K2514に準拠し、165.5℃±0.5℃で120時間、酸化安定性試験を実施し、試験前後での粘度指数向上剤並びに潤滑油組成物の全酸価の増加量(mgKOH/g)を測定した。数値が小さいほど、酸化安定性に優れることを表す。
[評価基準:潤滑油組成物]
◎:試験前後での潤滑油組成物の全酸価の増加量が3.0mgKOH/g以下
○:試験前後での潤滑油組成物の全酸価の増加量が3.0mgKOH/gを超え、5.0mgKOH/g以下
△:試験前後での潤滑油組成物の全酸価の増加量が5.0mgKOH/gを超え、7.0mgKOH/g以下
【0125】
表5~表8の結果から、本発明の粘度指数向上剤を含有する潤滑油組成物は、ゲル化インデックスが良好で、100℃でのHTHS粘度及び40℃での動粘度に優れており、さらに、粘度指数、剪断安定性及び低温粘度も優れていることがわかる。
比較例5~7及び9~11の潤滑油組成物は、単量体(a)を構成単量体としていない共重合体(A’)を含む比較例1、単量体(b)を構成単量体としていない共重合体(A’)を含む比較例2、又は、単量体(c)及び単量体(d)を構成単量体としていない共重合体(A’)を含む比較例3の粘度指数向上剤を用いている。
これらの比較例の潤滑油組成物と、SP値及びMwをほぼ同じとし、単量体(a)及び単量体(b)を構成単量体として含み、さらに単量体(c)及び/又は単量体(d)を構成単量体として含む共重合体(A)を含有する実施例1、26又は25の粘度指数向上剤を用いた実施例29、54、53、57、82及び81の潤滑油組成物と比較すると、ゲル化インデックス、100℃でのHTHS粘度及び40℃での動粘度が劣っていることがわかる。さらに、粘度指数、剪断安定性、低温粘度、酸化安定性及び250℃での蒸発性も劣ることがわかる。また、エステル油を含有していない比較例4の粘度指数向上剤を用いた比較例8及び12の潤滑油組成物は、同じ共重合体(A)を含有する実施例29及び57と比較して、ゲル化インデックス、100℃でのHTHS粘度及び40℃での動粘度が劣っていることがわかる。さらに、粘度指数及び低温粘度も劣ることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明の粘度指数向上剤を含有する潤滑油組成物は、ゲル化インデックスが良好で、100℃でのHTHS粘度及び40℃での動粘度に優れているので、ギヤ油(デファレンシャル油及び工業用ギヤ油等)、MTF、変速機油[ATF、DCTF及びbelt-CVTF等]、トラクション油(トロイダル-CVTF等)、ショックアブソーバー油、パワーステアリング油、作動油(建設機械用作動油及び工業用作動油等)及びエンジン油(ガソリン用及びディーゼル用)に好適に用いられる。