(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-13
(45)【発行日】2023-09-22
(54)【発明の名称】プラズマ照射システム
(51)【国際特許分類】
H05H 1/00 20060101AFI20230914BHJP
H05H 1/24 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
H05H1/00 A
H05H1/24
(21)【出願番号】P 2022088234
(22)【出願日】2022-05-31
(62)【分割の表示】P 2021110730の分割
【原出願日】2016-03-31
【審査請求日】2022-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】100191433
【氏名又は名称】片岡 友希
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 陽大
(72)【発明者】
【氏名】神藤 高広
(72)【発明者】
【氏名】岩城 範明
(72)【発明者】
【氏名】川角 哲徳
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-111154(JP,A)
【文献】特表2009-512597(JP,A)
【文献】特開2012-104508(JP,A)
【文献】特開2013-095765(JP,A)
【文献】特開2015-149263(JP,A)
【文献】特開2015-186913(JP,A)
【文献】国際公開第2015/025699(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/00
G01N 21/27
H05K 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理体にプラズマを照射するプラズマ照射システムであって、
前記プラズマ照射システムが、
プラズマの照射により
色が変化する
インジケータを供給するフィーダと、
前記フィーダにより供給された前記
インジケータを、被処理体に対して付与する付与装置と、
前記被処理体に付与された前記
インジケータと、前記被処理体とにプラズマを照射するプラズマ照射装置と、
前記プラズマ照射装置によりプラズマ照射された前記
インジケータの
色を測定する測定装置と
を備えることを特徴とするプラズマ照射システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理体にプラズマを照射するプラズマ照射システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、回路基板,組立製品等の工業用の被処理体、病院等で用いられる器具等の医療用の被処理体など、種々の分野の被処理体に対して、プラズマ処理が施されており、有用な技術として、プラズマ照射システムによるプラズマ処理が採用されている。一方で、プラズマは、目視にて確認できないため、被処理体に対するプラズマ処理が適切に行われているか否かを、被処理体の外観観察によって判定できない場合がある。このため、プラズマの照射により光学的特性が変化するインジケータの開発が進められており、そのようなインジケータを用いて、プラズマ照射システムよるプラズマ処理の適否が判断されている。下記特許文献には、そのようなプラズマ照射システムの一例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2015-149263号公報
【文献】特開2015-200531号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献に記載のインジケータを用いることで、ある程度、プラズマ処理の適否を判断することが可能である。しかしながら、インジケータ等のプラズマ処理により光学的特性が変化するものを用いて、プラズマ処理の適否を判断する手法については、改良の余地が残されており、種々の改良を施すことで、プラズマ処理の適否を判断可能なプラズマ照射システムの実用性が向上する。本発明は、そのような実情に鑑みてなされたものであり、本発明の課題は、プラズマ照射システム、およびプラズマ照射方法の実用性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本願に記載のプラズマ照射システムは、被処理体にプラズマを照射するプラズマ照射システムであって、前記プラズマ照射システムが、プラズマの照射により色が変化するインジケータを供給するフィーダと、前記フィーダにより供給された前記インジケータを、被処理体に対して付与する付与装置と、前記被処理体に付与された前記インジケータと、前記被処理体とにプラズマを照射するプラズマ照射装置と、前記プラズマ照射装置によりプラズマ照射された前記インジケータの色を測定する測定装置とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本願に記載のプラズマ照射システムでは、プラズマの照射により光学的特性が変化する基材がフィーダにより供給され、その基材と、被処理体とにプラズマが照射される。そして、被処理体に対して付与された基材の光学的特性が、測定される。これにより、被処理体に対してプラズマ処理が実行される際に、リアルタイムで、被処理体に対するプラズマ処理が適切に実行されているか否かを自動で判定することが可能となり、プラズマ照射システム、およびプラズマ照射方法の実用性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための形態として、本発明の実施例を、図を参照しつつ詳しく説明する。
【0009】
<プラズマ照射システムの構成>
図1に、第1実施例のプラズマ照射システム10を示す。プラズマ照射システム10は、大気圧下で発生させたプラズマを被処理体に照射するシステムであり、さらに、照射したプラズマによるプラズマ処理の適否を自動で判断することが可能なシステムである。プラズマ照射システム10は、設置装置12と、プラズマ照射装置14と、測定装置16と、制御装置(
図6参照)18とを備えている。設置装置12とプラズマ照射装置14と測定装置16とは、隣接した状態で1列に配設されており、設置装置12の下流側に、プラズマ照射装置14が配設され、プラズマ照射装置14の下流側に、測定装置16が配設されている。なお、設置装置12とプラズマ照射装置14と測定装置16との配列方向を、X方向と称し、そのX方向に直行する水平方向をY方向と称する。
【0010】
設置装置12は、プラズマ処理対象の被処理体の上に、概して矩形のシート状のインジケータを設置する装置である。ちなみに、インジケータは、プラズマの照射により色が変化するものである。プラズマの照射により色が変化するインジケータは、特開2013-178922号公報、特開2013-95765号公報、特開2013-98196号公報、特開2013-95764号公報、特開2015-13982号公報、特開2015-205995号公報等に記載されており、公知のものであることから詳しい説明は省略する。具体的には、例えば、窒素酸化物によって得られる水素イオンと反応することにより変化する組成物を含む粘性流体、アゾ系等の染料と窒素含有高分子とカチオン系界面活性剤とにより構成される組成物を含む粘性流体等によって、シートの表面に薄膜層を形成する。これにより、プラズマの照射により変色する薄膜層を含むインジケータが形成される。なお、インジケータの裏面には、粘着剤が塗布されている。
【0011】
設置装置12は、
図2に示すように、搬送装置20と、インジケータフィーダ22と、移動装置24と、保持ヘッド26とを有している。搬送装置20は、1対のコンベアベルト30を有しており、1対のコンベアベルト30は、互いに平行、かつ、X方向に延びるようにベース32上に配設されている。1対のコンベアベルト30は、被処理体36を載置するための載置板38を支持しており、電磁モータ(
図6参照)40の駆動により、載置板38をX方向に搬送する。また、搬送装置20は、保持装置(
図6参照)46を有しており、コンベアベルト30によって支持された載置板38が、保持装置46によりベース32の概して中央部における作業位置で固定的に保持される。
【0012】
インジケータフィーダ22は、インジケータ50を供給する装置であり、ベース32のY方向における端部に配設されている。インジケータフィーダ22は、キャリアテープを巻回させた状態で収容しており、キャリアテープには、複数のインジケータ50が、長手方向に延びるように、所定の間隔で貼着されている。そして、インジケータフィーダ22は、送出装置(
図6参照)52によって、キャリアテープを送り出す。これにより、インジケータフィーダ22は、キャリアテープの送り出しによって、インジケータ50を供給位置において供給する。
【0013】
移動装置24は、梁部56と、スライダ58とを有している。梁部56は、ベース32に上架されており、1対のコンベアベルト30を跨ぐように、配設されている。そして、スライダ58が、梁部56の側面においてY方向にスライド可能に保持され、電磁モータ(
図6参照)60の駆動により、任意の位置にスライドする。
【0014】
保持ヘッド26は、スライダ58の側面に装着されており、ベース32の上方において、Y方向に移動される。この際、保持ヘッド26は、インジケータフィーダ22によるインジケータ50の供給位置の上方と、搬送装置20の保持装置46により保持された載置板38の上方との間を移動する。保持ヘッド26は、下端面に設けられた吸着ノズル62を有している。吸着ノズル62は、負圧エア,正圧エア通路を介して、正負圧供給装置(
図6参照)64に通じている。吸着ノズル62は、負圧によってインジケータ50を吸着保持し、保持したインジケータ50を正圧によって離脱する。また、保持ヘッド26は、吸着ノズル62を昇降させるノズル昇降装置(
図6参照)66を有している。そのノズル昇降装置66によって、保持ヘッド26は、保持するインジケータ50の上下方向の位置を変更する。
【0015】
また、プラズマ照射装置14は、
図3に示すように、搬送装置70と、移動装置72と、照射ヘッド74とを有している。搬送装置70は、1対のコンベアベルト76を有しており、1対のコンベアベルト76は、互いに平行、かつ、X方向に延びるようにベース78上に配設されている。なお、1対のコンベアベルト76の端部は、設置装置12の1対のコンベアベルト30の端部と対向する位置に配設されている。これにより、設置装置12の1対のコンベアベルト30から搬出された載置板38が、1対のコンベアベルト76により支持され、電磁モータ(
図6参照)80の駆動により、載置板38がX方向に搬送される。また、搬送装置70は、保持装置(
図6参照)82を有しており、コンベアベルト76によって支持された載置板38が、保持装置82によりベース78の概して中央部における作業位置で固定的に保持される。
【0016】
移動装置72は、梁部86と、スライダ88とを有している。梁部86は、ベース78に上架されており、1対のコンベアベルト76を跨ぐように、配設されている。そして、スライダ88が、梁部86の側面においてY方向にスライド可能に保持され、電磁モータ(
図6参照)90の駆動により、任意の位置にスライドする。
【0017】
照射ヘッド74は、スライダ88の側面に装着されており、ベース78の上方において、Y方向に移動される。この際、照射ヘッド74は、搬送装置70の保持装置82により保持された載置板38の上方において、Y方向の任意の位置に移動する。また、照射ヘッド74は、
図4に示すように、躯体100を有しており、躯体100の内部には、反応室102が形成されている。反応室102の内部には、1対の電極104が配設されている。各電極104は、概してL字型をしており、各々の端部が互いに対向している。
【0018】
照射ヘッドの躯体100には、反応室102内に処理ガスを流入させるための流入路106が形成されている。流入路106の反応室102側の端部は、対向する1対の電極104の間に向かって開口している。一方、流入路106の反応室102と反対側の端部には、処理ガス供給装置(
図6参照)108が接続されている。処理ガス供給装置108は、希ガス,窒素ガス等の不活性ガスと、酸素等の活性ガスとを所定の割合で混合した処理ガスを供給する装置である。これにより、処理ガスが、流入路106を介して反応室102に供給される。また、照射ヘッド74の躯体100には、さらに、流入路106と向かい合うようにして、複数の吹出口110が形成されている。つまり、流入路106と複数の吹出口110とが、1対の電極104を挟むようにして、躯体100に形成されている。
【0019】
また、測定装置16は、
図5に示すように、搬送装置120と、移動装置122と、色差計124とを有している。搬送装置120は、1対のコンベアベルト126を有しており、1対のコンベアベルト126は、互いに平行、かつ、X方向に延びるようにベース128上に配設されている。なお、1対のコンベアベルト126の端部は、プラズマ照射装置14の1対のコンベアベルト76の端部と対向する位置に配設されている。これにより、プラズマ照射装置14の1対のコンベアベルト76から搬出された載置板38が、1対のコンベアベルト126により支持され、電磁モータ(
図6参照)129の駆動により、載置板38がX方向に搬送される。また、搬送装置120は、保持装置(
図6参照)130を有しており、コンベアベルト126によって支持された載置板38が、保持装置130によりベース128の概して中央部における作業位置で固定的に保持される。
【0020】
移動装置122は、梁部132と、スライダ134とを有している。梁部132は、ベース128に上架されており、1対のコンベアベルト126を跨ぐように、配設されている。そして、スライダ134が、梁部132の側面においてY方向にスライド可能に保持され、電磁モータ(
図6参照)136の駆動により、任意の位置にスライドする。
【0021】
色差計124は、スライダ134の側面に装着されており、ベース128の上方において、Y方向に移動される。この際、色差計124は、搬送装置120の保持装置130により保持された載置板38の上方において、Y方向の任意の位置に移動する。また、色差計124は、インジケータ50の色に関する指標値として、色差ΔE*abを測定するものである。詳しくは、色差計124では、Lab色空間における明度L*、色相と彩度を示す色度a*、b*が検出される。そして、検出された明度L*及び色度a*、b*と、予め設定された色見本の明度L*及び色度a*、b*とに基づいて色差ΔE*abが演算される。なお、色見本として、充分にプラズマが照射されたインジケータ50が採用されている。
【0022】
また、制御装置18は、
図6に示すように、コントローラ150と複数の駆動回路152と制御回路154と記憶装置156とを備えている。複数の駆動回路152は、上記電磁モータ40、保持装置46、送出装置52、電磁モータ60、正負圧供給装置64、ノズル昇降装置66、電磁モータ80、保持装置82、電磁モータ90、電極104、処理ガス供給装置108、色差計124、電磁モータ129、保持装置130、電磁モータ136に接続されている。コントローラ150は、CPU,ROM,RAM等を備え、コンピュータを主体とするものであり、駆動回路152に接続されている。これにより、設置装置12、プラズマ照射装置14、測定装置16の作動が、コントローラ150によって制御される。また、制御回路154は、表示装置158に接続されており、コントローラ150は、制御回路154に接続されている。これにより、コントローラ150の制御により、表示装置158に任意の画像が表示される。さらに、コントローラ150は、記憶装置156に接続されている。これにより、記憶装置156に、種々のデータが記憶される。
【0023】
<プラズマ照射システムによるプラズマ処理>
プラズマ照射システム10では、上述した構成により、被処理体36にプラズマが照射され、被処理体36に対するプラズマ処理が実行される。プラズマ処理としては、例えば、被処理体36の表面改質が行われる。プラズマ処理による表面改質では、被処理体36の表面を化学的に改質し、被処理体36の表面に親水基を付与することで、濡れ性が向上する。また、例えば、被処理体36の表面を温度と強電圧によって物理的に改質することで、被処理体36の表面に凹凸が形成される。ただし、電極104に印加される電圧不足,反応室102に供給される処理ガスの流量不足等により、処理ガスが適切にプラズマ化されず、被処理体36に対するプラズマ処理を適切に行えない場合がある。このため、プラズマ照射システム10では、プラズマ照射によるプラズマ処理の適否が自動で行われる
。以下に、プラズマ照射システム10によるプラズマ処理および、プラズマ処理の適否自動判断について詳しく説明する。
【0024】
具体的には、コントローラ150の指令により、設置装置12において、載置板38が作業位置まで搬送され、作業位置において保持装置46により固定的に保持される。また、インジケータフィーダ22は、コントローラ150の指令により、送出装置52を作動させ、供給位置においてインジケータ50を供給する。そして、保持ヘッド26が、コントローラ150の指令により、インジケータフィーダ22の供給位置の上に移動し、吸着ノズル62により、インジケータ50を吸着保持する。
【0025】
続いて、保持ヘッド26は、保持装置46により保持された載置板38の上方に移動し、載置板38の上に載置された被処理体36の上にインジケータ50を設置する。この際、インジケータ50は、被処理体36の上面の設置部(
図2参照)160に設置され、インジケータ50の裏面に塗布された粘着剤により、設置部160に貼着される。なお、被処理体36では、表面全体がプラズマ処理の対象でなく、表面の一部の領域(以下、「プラズマ処理領域」と記載する)162が、プラズマ処理の対象領域であり、設置部160は、プラズマ処理領域162の近傍とされている。そして、被処理体36の設置部160にインジケータ50が貼着されると、コントローラ150の指令により、載置板38が下流に向かって搬送される。これにより、載置板38が、設置装置12から搬出され、プラズマ照射装置14に搬入される。
【0026】
載置板38がプラズマ照射装置14に搬入されると、コントローラ150の指令により、プラズマ照射装置14において、載置板38が作業位置まで搬送され、作業位置において保持装置82により固定的に保持される。次に、コントローラ150の指令により、照射ヘッド74において、処理ガス供給装置108が、処理ガスを流入路106に供給する。これにより、処理ガスが反応室102内に流入する。反応室102では、コントローラ150の指令により、所定のタイミングで1対の電極104に電圧が印加され、1対の電極104の間に電流が流れる。これにより、1対の電極104の間に放電が生じ、その放電により、処理ガスがプラズマ化される。そして、プラズマが、吹出口110から吹き出さる。これにより、載置板38に載置された被処理体36のプラズマ処理領域162にプラズマが照射され、プラズマ処理領域162に対してプラズマ処理が施される。なお、プラズマ処理領域162の近傍には、インジケータ50が貼着されているため、プラズマ処理領域162に対するプラズマ処理時に、インジケータ50にも、プラズマ処理領域162と同様に、プラズマが照射される。
【0027】
また、制御装置18では、被処理体36を識別するための識別ID、例えば、被処理体36のロットナンバー,製品ID等と、プラズマ処理におけるプラズマ条件とが、記憶装置156に関連付けて記憶される。ちなみに、プラズマ条件として、処理ガスの濃度,処理ガスの供給量,処理ガスの種類,印加される電圧値,プラズマの照射時間,被処理体36と照射ヘッド74との相対的な移動速度,被処理体36と照射ヘッド74との間の距離,プラズマの照射量等が挙げられる。
【0028】
そして、プラズマ照射装置14において、被処理体36へのプラズマ照射が完了すると、コントローラ150の指令により、載置板38が下流に向かって搬送される。これにより、載置板38が、プラズマ照射装置14から搬出され、測定装置16に搬入される。載置板38が測定装置16に搬入されると、コントローラ150の指令により、測定装置16において、載置板38が作業位置まで搬送され、作業位置において保持装置130により固定的に保持される。次に、コントローラ150の指令により、色差計124が被処理体36に貼着されたインジケータ50の上方に移動する。そして、色差計124によって、インジケータ50の明度L*及び色度a*、b*が検出され、色見本との色差ΔE*a
bが演算される。この際、制御装置18では、被処理体36を識別するための識別IDと、検出されたインジケータ50の明度L*及び色度a*、b*及び、演算された色差ΔE*abとが、記憶装置156に関連付けて記憶される。
【0029】
また、制御装置18では、コントローラ150が、演算された色差ΔE*abに基づいて、プラズマ処理の適否を判断する。具体的には、コントローラ150には、閾値αが設定されている。閾値αは、インジケータ50にプラズマが照射された場合に、適切なプラズマ処理として、最低限のプラズマが照射された際の色差に設定されている。このため、演算された色差ΔE*abが閾値α以下であれば、インジケータ50に適切にプラズマが照射されており、演算された色差ΔE*abが閾値αより大きければ、インジケータ50に適切にプラズマが照射されていないと考えられる。そこで、コントローラ150は、演算された色差ΔE*abが閾値α以下である場合に、被処理体36に対するプラズマ処理が適切に行われ、演算された色差ΔE*abが閾値αより大きい場合に、被処理体36に対するプラズマ処理が適切に行われていないと判断する。
【0030】
そして、コントローラ150は、判断結果を表示装置158に表示させる。また、制御装置18では、被処理体36を識別するための識別IDと、コントローラ150による判断結果、つまり、被処理体36に対するプラズマ処理の適否とが、記憶装置156に関連付けて記憶される。そして、測定装置16において、色差計124による色差ΔE*abの測定および、コントローラ150によるプラズマ処理の適否判断が完了すると、コントローラ150の指令により、載置板38が下流に向かって搬送される。これにより、載置板38が被処理体36とともに、プラズマ照射システム10から搬出され、プラズマ照射システム10によるプラズマ処理、および、プラズマ処理の適否自動判断が終了する。
【0031】
このように、プラズマ照射システム10では、プラズマの照射により色が変化するインジケータ50が、設置装置12によって、被処理体36に対して設置され、そのインジケータ50の設置された被処理体36に、プラズマ照射装置14によってプラズマが照射される。そして、被処理体36の上に設置されたインジケータ50が、被処理体36へのプラズマ照射により、被処理体36とともに、プラズマが照射された後に、測定装置16によって、インジケータ50と色見本との色差ΔE*abが測定される。なお、色見本は、充分にプラズマが照射されたインジケータ50の変色後の色に設定されている。これにより、プラズマ処理が実行される際に、リアルタイムで、被処理体36に対するプラズマ処理が適切に実行されているか否かを自動で判定することが可能となり、プラズマ照射システム10の実用性が向上する。
【0032】
また、プラズマ処理の適否の判断結果が、表示装置158に表示されるため、作業者は、例えば、プラズマ処理が適切に実行されていないと判断された被処理体36に対して、再度、プラズマ処理を実行させることで、全ての被処理体36に対して、適切なプラズマ処理を実行することが可能となる。
【0033】
また、被処理体36の色差ΔE*abが測定される毎に、被処理体36の識別IDと、インジケータ50の明度L*及び色度a*、b*及び、演算された色差ΔE*abとが、記憶装置156に関連付けて記憶される。また、プラズマ処理の適否の判断結果も、被処理体36の識別IDと関連付けて、記憶装置156に記憶される。これにより、被処理体36毎に、プラズマ処理の履歴を残すことが可能となり、適切な製品管理を行うことが可能となる。
【0034】
さらに、被処理体36毎に、プラズマ処理時における処理条件と、インジケータ50の明度L*及び色度a*、b*及び、演算された色差ΔE*abと、プラズマ処理の適否の判断結果とが、関連付けて記憶装置156に記憶される。これにより、例えば、プラズマ
処理の適否において、プラズマ処理が適切に実行されていないと判断された場合,演算された色差ΔE*abが大きい場合等に、その判断結果若しくは、色差ΔE*abと関連付けられている処理条件に基づいて、新たな処理条件を設定することが可能となる。具体的には、例えば、プラズマ処理が適切に実行されていないとの判断結果と関連付けられた処理条件において、処理ガスの濃度が低い場合,プラズマの照射時間が短い場合等には、新たな処理条件として、記憶されている処理ガスの濃度より高くする,記憶されているプラズマの照射時間より長くする等の処理条件を設定することが可能となる。これにより、プラズマ処理の適否の判断結果を利用して、適切なプラズマ処理時の処理条件を設定することが可能となる。なお、この処理は、作業者が行ってもよく、コントローラ150において自動で行われてもよい。
【0035】
<第2実施例>
第1実施例のプラズマ照射システム10では、被処理体36に対して、シート状のインジケータ50が設置されているが、被処理体36に対して、プラズマの照射により色が変化する粘性流体を吐出してもよい。具体的には、第1実施例のプラズマ照射システム10において、設置装置12の代わりに、
図7に示す吐出装置170を採用してもよい。
【0036】
吐出装置170は、ディスペンサヘッド172を除いて、設置装置12と略同じ構造であるため、ディスペンサヘッド172について説明し、設置装置12と同じ構成要素については、設置装置12で用いられた符号を用いて、簡略に説明、若しくは、説明を省略する。吐出装置170は、搬送装置20と、移動装置24と、ディスペンサヘッド172とを有している。なお、吐出装置170は、インジケータフィーダ22を有していない。
【0037】
ディスペンサヘッド172は、設置装置12の保持ヘッド26の代わりに、移動装置24のスライダ58に装着されている。ディスペンサヘッド172は、インクジェット方式の作業ヘッドであり、ディスペンサヘッド172の下面に開口する吐出口176から、プラズマの照射により色が変化する粘性流体を吐出する。なお、この粘性流体は、インジケータ50の薄膜層を形成する際に用いられる粘性流体である。
【0038】
このような構造の吐出装置170では、コントローラ150の指令により、吐出装置170において、載置板38が作業位置まで搬送され、作業位置において保持装置46により固定的に保持される。そして、ディスペンサヘッド172が、コントローラ150の指令により、保持装置46に保持された載置板38の上方に移動し、載置板38の上に載置された被処理体36の上に粘性流体を吐出する。この際、ディスペンサヘッド172は、被処理体36の上面の設置部160に薄膜状に粘性流体を吐出する。そして、被処理体36の設置部160に粘性流体が吐出されると、コントローラ150の指令により、載置板38が下流に向かって搬送される。これにより、載置板38が、吐出装置170から搬出され、プラズマ照射装置14に搬入される。
【0039】
なお、プラズマ照射装置14に載置板38が搬入されてから以降の処理、つまり、プラズマ照射装置14による処理および、測定装置16による処理は、第1実施例における処理と同じであるため、説明を省略する。ただし、第2実施例の測定装置16では、設置部160に吐出された粘性流体の明度L*及び色度a*、b*が検出され、色差ΔE*abが演算される。また、色差ΔE*abの演算に用いられる色見本の明度L*及び色度a*、b*は、充分にプラズマが照射された粘性流体の変色後の色に設定されている。
【0040】
このように、設置装置12の代わりに吐出装置170を用いて、吐出装置170により吐出された粘性流体の色差ΔE*abを測定することでも、第1実施例と同様の効果を奏することが可能となる。
【0041】
ちなみに、上記実施例において、プラズマ照射システム10は、プラズマ照射システムの一例である。設置装置12は、付与装置の一例である。プラズマ照射装置14は、プラズマ照射装置の一例である。測定装置16は、測定装置の一例である。インジケータ50は、基材の一例である。コントローラ150は、判定装置の一例である。記憶装置156は、第1記憶装置、第2記憶装置、第3記憶装置の一例である。表示装置158は、報知装置の一例である。吐出装置170は、付与装置の一例である。
【0042】
なお、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を施した種々の態様で実施することが可能である。具体的には、例えば、上記実施例では、プラズマの照射により色が変化するインジケータ50若しくは、粘性流体が採用されているが、プラズマの照射により光学的特性が変化するものを採用することが可能である。ここで、光学的特性として、色相,彩度,明度,色度,輝度,色調,光の透過率,光の反射率,光の波長,エネルギー等が挙げられる。
【0043】
また、上記実施例では、インジケータ50若しくは、粘性流体の明度L*及び色度a*、b*が検出され、色差ΔE*abが演算されている。つまり、プラズマの照射により変化する光学的特性を指標する指標値として、L*a*b*色差が採用されているが、種々の手法を利用して、プラズマの照射により変化する光学的特性の指標値を測定・演算することが可能である。具体的には、例えば、XYZ表色系,X10Y10Z10表色系,色度座標,色度図,UCS色度図,L*C*h*表色系,L*u*v*表色系,マンセル表色系,等色関数等を利用して、光学的特性の指標値を測定・演算することが可能である。
【0044】
また、上記実施例では、被処理体36の上に、インジケータ50が設置若しくは、粘性流体が吐出されているが、被処理体36の隣に、インジケータ50が設置若しくは、粘性流体が吐出されてもよい。これにより、被処理体36の表面全体にプラズマを照射することが可能となる。なお、本明細書での被処理体36の上に、インジケータ50が設置若しくは、粘性流体が吐出されること、及び、被処理体36の隣に、インジケータ50が設置若しくは、粘性流体が吐出されることは、被処理体36に対してインジケータ50が設置若しくは、粘性流体が吐出されるという概念に含まれる。つまり、被処理体36に対してインジケータ50若しくは、粘性流体が付与されるという概念に含まれる。
【0045】
また、上記実施例では、プラズマ処理が適切でないと判断された場合に、作業者が手動で、被処理体36を設置装置12等に戻し、再度、プラズマ処理が実行されるが、自動で被処理体36が設置装置12等に戻す構成としてもよい。つまり、測定装置16から設置装置12に被処理体36を自動で戻す機構を採用し、プラズマ処理が適切でないと判断された場合に、その機構によって、被処理体36を自動で設置装置12等に戻してもよい。これにより、作業者による作業を減らすことが可能となり、生産性が向上する。
【0046】
また、上記実施例では、プラズマ処理の適否の判断結果が表示装置158に表示されるが、音声,ランプ等により作業者に報知されてもよい。
【0047】
また、プラズマ照射システム10のプラズマ処理の対象となる被処理体36は、特に限定されず、回路基板,組立製品等の工業用の被処理体、病院等で用いられる器具等の医療用の被処理体など、種々の分野の部材を採用することが可能である。
【符号の説明】
【0048】
10:プラズマ照射システム 12:設置装置(付与装置) 14:プラズマ照射装置 16:測定装置 50:インジケータ(基材) 150:コントローラ(判定装置) 156:記憶装置(第1記憶装置)(第2記憶装置)(第3記憶装置) 158:表示装置(報知装置) 170:吐出装置(付与装置)