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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-13
(45)【発行日】2023-09-22
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/12 20060101AFI20230914BHJP
   B65C 9/46 20060101ALI20230914BHJP
   B41J 3/36 20060101ALI20230914BHJP
   B41J 29/00 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
G06F3/12 342
B65C9/46
G06F3/12 303
B41J3/36 T
B41J29/00 E
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019061396
(22)【出願日】2019-03-27
(65)【公開番号】P2020160953
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003096
【氏名又は名称】弁理士法人第一テクニカル国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮下 智基
【審査官】豊田 真弓
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-139840(JP,A)
【文献】特開2015-215664(JP,A)
【文献】特開2011-148140(JP,A)
【文献】特開2014-044507(JP,A)
【文献】特開2013-075437(JP,A)
【文献】特開2010-201861(JP,A)
【文献】特開2014-016674(JP,A)
【文献】特開2013-093814(JP,A)
【文献】特開2010-233879(JP,A)
【文献】特開平05-034135(JP,A)
【文献】実開昭54-025034(JP,U)
【文献】特表2004-536652(JP,A)
【文献】特開昭61-045731(JP,A)
【文献】特開2017-173005(JP,A)
【文献】特開2017-153607(JP,A)
【文献】特開2019-211283(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/12
B65C 9/46
B41J 3/36
B41J 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被印字媒体を搬送させる搬送手段と、
前記被印字媒体に対して印字を形成する印字手段と、
制御手段と、
を有する印刷装置であって、
前記制御手段は、
少なくとも1つのオブジェクトに状態量が関連づけられたテンプレートを取得するテンプレート取得処理;
取得した前記テンプレートの前記オブジェクトに対応する前記状態量を与える、少なくとも1つの外部計測機器を検索する検索処理;
前記検索により検知した前記外部計測機器から、対応する前記状態量の計測値を取得する計測値取得処理;
取得した前記状態量の計測値を前記テンプレートの前記オブジェクトに割り付けた、印刷データを生成するデータ生成処理;
前記搬送手段及び前記印字手段を制御し、生成した前記印刷データに対応した印字を前記被印字媒体に形成した印刷物を生成する印刷処理;
を実行する
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
請求項1記載の印刷装置において、
前記制御手段は、さらに
前記検索処理の検索により前記状態量を与える前記外部計測機器が検知できなかった場合に対応し、所定のエラー報知を行うエラー処理;
を実行することを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の印刷装置において、
前記テンプレート取得処理では、
計測必須に指定された第1状態量が関連づけられた第1オブジェクトを含む、前記少なくとも1つのオブジェクトを備えた前記テンプレートを取得し、
前記検索処理の検索により前記第1状態量を与える前記外部計測機器が検知できなかった場合には、前記計測値取得処理、前記データ生成処理、及び前記印刷処理を実行しない
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の印刷装置において、
前記テンプレート取得処理では、
計測必須に指定されない第2状態量が関連づけられた第2オブジェクトを含む、前記少なくとも1つのオブジェクトを備えた前記テンプレートを取得し、
前記検索処理の検索により前記第2状態量を与える前記外部計測機器が検知できなかった場合には、前記印刷処理では、前記検知できなかったことに対応する表記を備えた前記印刷物を生成する
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の印刷装置において、
前記検索処理の検索により同一の前記状態量を与える前記外部計測機器が複数検知された場合、前記計測値取得処理では、取得する予め定めたルールに沿って決定される1つの前記外部計測機器から、前記状態量の計測値を取得する
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の印刷装置において、
前記検索処理の検索により同一の前記状態量を与える前記外部計測機器が複数検知された場合、前記計測値取得処理では、前記複数の外部計測機器それぞれから前記状態量の計測値を取得し、
前記制御手段は、さらに、
前記計測値取得処理で前記複数の外部計測機器から取得された複数の計測値に対応する、計測値の代表値を決定する、代表値決定処理;
を実行し、
前記データ生成処理では、
前記代表値決定処理で決定された前記計測値の代表値を前記テンプレートの前記オブジェクトに割り付けた、前記印刷データを生成する
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか1項記載の印刷装置において、
制御手段は、さらに、
前記計測値取得処理で前記状態量の計測値を取得した前記外部計測機器の識別情報を生成する識別情報生成処理;
を実行することを特徴とする印刷装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7のいずれか1項記載の印刷装置において、
前記制御手段は、さらに、
所定の印刷処理実行タイミングが到来したか否かを判定する判定処理;
を実行し、
前記判定処理において前記印刷処理実行タイミングが到来したと判定した場合に、前記データ生成処理及び前記印刷処理を実行する
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか1項記載の印刷装置において、
前記制御手段は、さらに、
前記検索処理の検索により、少なくとも1つの前記状態量に関し、当該状態量を与える前記外部計測機器の数が所定のしきい値以下となった場合、対応する所定の警告報知を行う報知処理;
を実行することを特徴とする印刷装置。
【請求項10】
請求項1乃至請求項9のいずれか1項記載の印刷装置において、
前記制御手段は、
前記テンプレート取得処理において、少なくとも1つのオブジェクトに第1種計測機器による測定値に対応する第1状態量が関連づけられた第1テンプレートと、少なくとも1つのオブジェクトに第1種計測機器とは異なる第2種計測機器による測定値に対応する第2状態量が関連づけられた第2テンプレートと、を取得可能であり、
前記検索処理において、取得したテンプレートが前記第1テンプレートの場合に、前記オブジェクトに対応する前記第1状態量を与える、少なくとも1つの前記第1種計測機器を検索し、取得した前記テンプレートが前記第2テンプレートの場合に、前記オブジェクトに対応する前記第2状態量を与える、少なくとも1つの前記第2種計測機器を検索し、
前記データ生成処理において、取得したテンプレートが前記第1テンプレートの場合に、前記第1種計測機器から取得した前記第1状態量の計測値を前記オブジェクトに割り付けた前記印刷データを生成し、取得したテンプレートが前記第2テンプレートの場合に、前記第2種計測機器から取得した前記第2状態量の計測値を前記オブジェクトに割り付けた前記印刷データを生成する
ことを特徴とする印刷装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に係わり、特に、テンプレートを利用した印刷を行う印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、計重器と通信ケーブルで接続され、キーボード、表示器、CPU、RAM及び記憶部等で構成されたプリンタが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平09-058644号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このようなプリンタにあっては、通信ケーブルによって一体的に接続される必要があるため、接続可能な機器の種類や数が限定されてしまい、ユーザにとっての利便性を向上することができないという問題が生じていた。
【0005】
本発明の目的は、互いに専用機となる計測機器と印刷装置とを接続して一体的に用いる必要がなく、ユーザにとっての利便性を向上することができる印刷装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本願発明は、被印字媒体を搬送させる搬送手段と、前記被印字媒体に対して印字を形成する印字手段と、制御手段と、を有する印刷装置であって、前記制御手段は、少なくとも1つのオブジェクトに状態量が関連づけられたテンプレートを取得するテンプレート取得処理;取得した前記テンプレートの前記オブジェクトに対応する前記状態量を与える、少なくとも1つの外部計測機器を検索する検索処理;前記検索により検知した前記外部計測機器から、対応する前記状態量の計測値を取得する計測値取得処理;取得した前記状態量の計測値を前記テンプレートの前記オブジェクトに割り付けた、印刷データを生成するデータ生成処理;前記搬送手段及び前記印字手段を制御し、生成した前記印刷データに対応した印字を前記被印字媒体に形成した印刷物を生成する印刷処理;を実行する、ものである。
【0007】
本願発明の印刷装置は、テンプレートに含まれるオブジェクトに所望の内容を割り付けて印字データを生成し、その印字データに対応した印字を被印字媒体に形成し、印刷物を作成する。その際、当該印刷物に形成する印字の内容に、外部計測機器による計測結果を含ませることができる。
【0008】
すなわち、本願発明においては、予め、テンプレートに含まれる少なくとも1つのオブジェクトに、例えば温度、湿度、時刻等の状態量が関連づけられている。制御手段が実行するテンプレート処理では、上記のようにして状態量が関連づけられたテンプレートが取得される。その後、取得したテンプレートの上記オブジェクトに対応する状態量を与える(言い替えれば、当該状態量を計測可能な)外部計測機器が検索される(検索処理)。
【0009】
この検索処理により当該状態量を与える外部計測機器が検知されると、その外部計測機器から、当該状態量の計測値が取得される(計測値取得処理)。取得された計測値は、前述のようにして取得されたテンプレートの、対応するオブジェクトに割り付けられることで、印刷データが生成される(データ生成処理)。そして、その印刷データに対応した印字が被印字媒体に形成され、印刷物が生成される(印刷処理)。
【0010】
以上の結果、本願発明によれば、汎用の計測機器と汎用の印刷装置とを用いつつ、計測機器の計測結果を反映させた印刷物を容易に作成することができる。この結果、従来手法のように、互いに専用機となる計測機器と印刷装置とを接続して一体的に用いる必要がなく、ユーザにとっての利便性を向上することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、互いに専用機となる計測機器と印刷装置とを接続して一体的に用いる必要がなく、ユーザにとっての利便性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の印刷装置における一実施の形態に係る印刷装置の利用形態を示す説明図である。
図2】本発明の印刷装置における一実施の形態に係る印刷装置を示し(A)は印刷装置の内部構成例を示すブロック図、(B)は印刷装置と接続可能なコンピュータの表示画面に表示されるエディタ画面の表示例の説明図、である。
図3】本発明の印刷装置における一実施の形態に係る制御回路が実行するルーチンのフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の一実施形態に係る印刷装置について、図面を参照して説明する。なお、以下に示す実施形態は本発明の印刷装置における好適な具体例であり、技術的に好ましい種々の限定を付している場合もあるが、本発明の技術範囲は、特に本発明を限定する記載がない限り、これらの態様に限定されるものではない。なお、図示される実施形態の構成要素は、本発明の理解を助けるために縮尺が適宜変更されている。
【0014】
図1に示すように、印刷装置10は、相互無線通信方式を利用して、周辺に配置されている外部計測機器20,30,40,50とで相互通信可能となっている。また、印刷装置10は、インターネット回線NTを通じてクラウドCとの接続が可能となっている。
【0015】
外部計測機器20,30,40,50は、一例として、少なくとも時刻情報をデジタルデータで出力可能な時計等の外部計測機器20、少なくとも周辺の温度情報をデジタルデータで出力可能な温度計等の外部計測機器30、少なくとも周辺の湿度情報をデジタルデータで出力可能な湿度計等の外部計測機器40、温度情報及び湿度情報をデジタルデータで出力可能な温湿度計等の外部計測機器50、から各デジタルデータを取得することができるようになっている。
【0016】
なお、外部計測機器50は、以下の説明においては、印刷装置10との相互無線通信方式による通信可能エリアの外側に配置されていて、印刷装置10とは外部計測機器20,30,40とで相互無線通信が可能な状態にある場合と、印刷装置10との相互無線通信方式による通信可能エリアの内側に配置されていて、印刷装置10によるデジタルデータの取得が可能な場合、とで適宜説明する。
【0017】
<印刷装置10の機能的構成>
図2(A)において、印刷装置10は、制御回路11と、RAMやROM等からなる記憶部12と、所望の表示を行うタッチパネル方式の表示部13と、表示部13のタッチパネルによる場合及び複数のキー操作の場合の各種操作を受け付ける操作部14と、外部計測機器20,30,40,50と相互無線通信方式で通信する通信部15と、カートリッジ16から引き出された被印字媒体としての被印字テープTに所望の印刷を行う印字手段としての印字ヘッド17と、搬送手段としてのプラテンローラ18と、印刷済みの被印字テープTから印刷物としての印字ラベルLを切り離すカッタユニット19と、を有している。なお、制御回路11は請求項記載の制御手段に相当している。また、印刷装置10は、例えば、通信部15の無線通信機能又は有線通信接続機能により、パーソナルコンピュータ1と接続可能となっている。
【0018】
記憶部12には、例えば、Wi-Fiルータ等の適宜中継機器(図示せず)等を経由したインターネット回線NTを通じてクラウドCに仮想配置されたサーバ(図示せず)からダウンロードしたアプリケーションなどにより、被印字テープTに印字を実行して印字ラベルLを生成(作製)するためのプログラム、並びに、本実施形態に係る外部計測機器20,30,40,50の探索に係るプログラムを格納している。
【0019】
制御回路11は、記憶部12に記憶したこれらのプログラムに基づいて、カートリッジ16、印字ヘッド17、プラテンローラ18、カッタユニット19、の駆動を制御して印刷処理を実行する。
【0020】
制御回路11は、図2(B)に示すように、パーソナルコンピュータ1の表示画面2に表示したエディタ画面Eを利用して生成したテンプレート(データ)を取得して記憶部12に記憶する。制御回路11は、記憶部12に記憶したテンプレート(データ)を呼び出すとともに、エディタ画面Eのスケール付作業画面Sに外部計測機器20,30,40,50の検索結果に伴う状態量を被印字テープTに印字するためのテンプレートPを表示させる。
【0021】
制御回路11は、通信部15の相互無線通信方式を利用して外部計測機器20,30,40,50を検索し、必要に応じた外部計測機器20,30,40,50から状態量を取得してテンプレートPの対応部分(オブジェクト)に印字情報として展開(割り付け)する。
【0022】
サーバに格納されたアプリケーションに含まれるテンプレート(データ)には、複数のオブジェクトが「属性」(例:「温度」「湿度」「時間」)として割り付け可能に設定されている。
【0023】
これにより、印刷装置10の制御回路11は、印刷時にその「属性」に対応した状態量(以下、「計測情報」とも称する)を、外部計測機器20,30,40,50から取得して割り付けた状態で印刷を実行する。
【0024】
この際、印刷装置10の周辺に、テンプレートPの各オブジェクトに割り付けるために必要な「属性」の計測情報を取得できる外部計測機器20,30,40,50が存在しない場合や、同じ「属性」を有する外部計測機器20,30,40,50が複数存在する場合も想定される。そこで、制御回路11は、そのようなイレギュラー的な場合にも対応可能となっている(詳細は後述する)。
【0025】
テンプレート(データ)は印刷装置10の記憶部12に記憶しており、それを使って印刷することができる。この際、印刷装置10の周辺に存在する外部計測機器20,30,40,50から、各オブジェクトの「属性」に一致する計測情報を取得して印刷を行う。
【0026】
印刷装置10の周辺に、外部計測機器20,30,40,50が存在しているのかは、Bluetooth(登録商標:以下、「相互無線通信方式」と称する)の「サービス検索」機能を利用して検索することにより、周辺機器がどのような機能を持っているかを判定することができる。
【0027】
この「サービス検索」によるサービス仕様は決められており、同じサービス仕様を持つ外部計測機器20,30,40,50であれば、同じ方法でアクセス(状態量の取得)が可能となっている。したがって、本実施の形態では、そのサービス仕様として、温度サービス、湿度サービス、時間サービス、の各状態量を「属性」として利用する。
【0028】
テンプレートPの各オブジェクトに展開(割り付け)するサービス仕様の「属性」としては、例えば、図2(B)に一例として示すように、「温度」「湿度」「時間」に加え、例えば、「なし」「位置」等を含ませることができる。
【0029】
また、制御回路11は、印刷装置10の周辺に、必要な「属性」の計測情報に対応した外部計測機器20,30,40,50が存在せず、必要な「属性」の計測情報が入手できない場合、すなわち、状態量が取得できない場合には、
(1)エラーにする
(2)各オブジェクトに必須/オプションの属性を設定する
(3)利用者による直接手入力を要求する
(4)旧計測情報を利用する
(5)必要な「属性」の計測情報を取得できるまで印刷を保留し、通信機能の確立により最後の計測情報が取得できた時点で印刷を行う
(6)印刷装置10に内蔵したセンサに代用機能がある場合には、その計測情報を使う
といった対応が可能である。なお、外部計測機器20,30,40,50が存在しない場合には、周辺に実在しない場合のほか、電波状況等の通信機能の不具合(例えば、図1に示す外部計測機器50)や電池切れ等の要因により必要な「属性」の計測情報の取得が不能又は不調の場合が想定される。
【0030】
この際、(2)については、各オブジェクトに必須/オプションの属性を設定することにより、必須のオブジェクトに割り当てられる計測情報が取得できない場合にはエラーにして印刷しない、オプションのオブジェクトに割り当てられる計測情報が取得できない場合にはエラーにして計測情報なしでも印刷する、といった対応が可能となる。
【0031】
また、(4)については、取得できなかったオブジェクトに対応する計測情報が、今回以前に取得できていた場合、その取得できた計測情報(機器固有の番号、機器名称の計測情報)を表示し、どの外部計測機器20,30,40,50からの状態量が取得できなかったのかを報知してその計測機器に何か問題が起きたことを認識させる。
【0032】
これにより、例えば、(3)の手入力を容易に行うことが可能となる、或いは、(5)の最後の計測情報の取得までの時間を短縮することができる、といった対応も可能となる。
【0033】
さらに、(6)については、例えば、温度に関しては印刷装置10の内部の温度上昇を検出するための温度センサ(図示せず)が内蔵されているため、その温度センサの検出値を利用することができる。ただし、印刷装置10の内部の温度と周辺温度とでは、特に、使用に伴って乖離してしまうため、初期値を利用するなどで対応する。
【0034】
また、制御回路11は、1つの「属性」の計測情報に対して、複数の対象機器が見つかった場合(例えば、図1に示す外部計測機器50の計測情報が取得できた場合)には、
(7)最初に見つかった外部計測機器20,30,40,50から計測情報を取得する
(8)外部計測機器20,30,40,50から取得した重複計測情報の平均値を採用する
(9)外部計測機器20,30,40,50から取得した重複計測情報の中間値を採用する
(10)外部計測機器20,30,40,50から取得した重複計測情報の、最も一致するものが多かった値を採用する
(11)外部計測機器20,30,40,50から取得した重複計測情報の位置が最も近い外部計測機器から取得した重複計測情報のものを採用する
(12)外部計測機器20,30,40,50から取得した重複計測情報の値を表示部13に表示して、利用者にどの計測情報を採用するのかを選択させる
といった対応が可能である。
【0035】
この際、(7)については、最初に見つかった外部計測機器20,30,40,50から計測情報を取得する場合、一度対象の外部計測機器20,30,40,50を決めたら、その後は同じその外部計測機器20,30,40,50の計測情報を優先することにより、印刷実行までの時間を短縮することができる。
【0036】
また、(8)(9)(10)については、外部計測機器20,30,40,50から取得した重複計測情報は、例えば、印刷装置10から外部計測機器20,30,40,50までの距離や配置場所等によって取得した状態量が異なる可能性があるため、複数の重複計測情報のうち、それぞれ、平均値、中間値、重複値、の何れかを採用することで値の信頼性を担保することができる。
【0037】
また、(11)については、計測情報の種類(例えば、温度や湿度)、並びに、作成する印字ラベルLを貼り付ける対象によって、例えば、生鮮加工食品等の場合には、加工場所の環境に近い場所、或いは、環境条件が近い場所に配置した外部計測機器20,30,40,50からの計測情報を採用するようにしてもよい。
【0038】
さらに、制御回路11は、どの外部計測機器20,30,40,50から取得した計測情報なのかが分かるように計測情報を残すことも可能である。この場合、その形態としては、
(13)記憶部12にログとして残す
(14)サーバに保存する
(15)印字ラベルLの中に計測情報を含める
といった対応が可能である。
【0039】
また、制御回路11は、印刷を開始するトリガとして、
(16)指令があったとき(ボタン、通信)
(17)一定時間毎
(18)外部計測機器20,30,40,50からの取得値に閾値以上の変化があったとき
といった対応が可能である。
【0040】
なお、(18)については、印刷内容を変更するトリガとして利用することもでき、複数枚の印字ラベルLを作製する場合、その都度計測情報を取得する必要がなくなるという効果を奏する。
【0041】
また、制御回路11は、上記に加えて、検索された各属性の外部計測機器20,30,40,50が所定の閾値以下の数値になったらワーニングを出すことにより、外部計測機器20,30,40,50が故障して1つもなくなってしまい、システムが止まってしまうのを防ぐことができる。
【0042】
このような基本構成において、印刷装置10は、被印字テープTを搬送させるプラテンローラ18と、被印字テープTに対して印字を形成する印字ヘッド17と、制御回路11と、を有し、制御回路11は、少なくとも1つのオブジェクトに状態量(温度,湿度,時刻等)が関連づけられたテンプレートを取得するテンプレート取得処理;取得したテンプレートのオブジェクトに対応する状態量を与える、少なくとも1つの外部計測機器20,30,40,50を検索する検索処理;検索により検知した外部計測機器20,30,40,50から、対応する状態量の状態量を取得する状態量取得処理;取得した状態量の状態量をテンプレートのオブジェクトに割り付けた、印刷データを生成するデータ生成処理;プラテンローラ18及び印字ヘッド17を制御し、生成した印刷データに対応した印字を被印字テープTに形成した印字ラベルLを生成する印刷処理;を実行する。
【0043】
すなわち、本実施の形態に係る印刷装置10は、記憶部12に予め記憶されたテンプレートに含まれるオブジェクトに所望の内容を割り付けて印字データを生成し、その印字データに対応した印字を被印字テープTに形成し、印字ラベルLを作成する。その際、当該印字ラベルLに形成する印字の内容に、外部計測機器20,30,40,50による計測結果を含ませることができる。
【0044】
本実施の形態においては、予め、テンプレートに含まれる少なくとも1つのオブジェクトに、例えば、必要な「属性」の計測情報(属性値)としての「温度」、「湿度」、「時刻」等が関連付けられている。
【0045】
制御回路11が実行するテンプレート処理では、上記のようにして状態量が関連付けられたテンプレートが取得される。その後、取得したテンプレートの上記オブジェクトに対応する状態量を与える(言い替えれば、当該状態量を計測可能な)外部計測機器20,30,40,50が検索される(検索処理)。検索により当該状態量を与える外部計測機器20,30,40,50が検知されると、その外部計測機器20,30,40,50から、当該状態量の状態量が取得される(状態量取得処理)。取得された状態量は、前述のようにして取得されたテンプレートの、対応するオブジェクトに割り付けられることで、印刷データが生成される(データ生成処理)。そして、その印刷データに対応した印字が被印字テープTに形成され、印字ラベルLが生成される(印刷処理)。
【0046】
以上の結果、汎用の外部計測機器20,30,40,50と汎用の印刷装置10とを用いつつ、外部計測機器20,30,40,50の計測結果を反映させた印字ラベルLを容易に作成することができる。したがって、従来手法のように、互いに専用機となる計測機器と印刷装置10とを接続して一体的に用いる必要がなく、ユーザにとっての利便性を向上することができる。
【0047】
また、制御回路11は、さらに検索処理の検索により状態量を与える外部計測機器20,30,40,50が検知できなかった場合に対応し、所定のエラー報知を行うエラー処理(印刷せず);を実行する。
【0048】
この際、エラー報知としては、その旨のメッセージ(例えば、「温度の情報が取得できませんでした」など)を表示部13に表示する、或いは、図示を略すスピーカからブザー音を鳴動させる、等を含ませることができる。
【0049】
また、制御回路11は、テンプレート取得処理では、計測必須に指定された第1状態量(=必須属性)が関連づけられた第1オブジェクトを含む、少なくとも1つのオブジェクトを備えたテンプレートを取得し、検索処理の検索により第1状態量を与える外部計測機器20,30,40,50が検知できなかった場合には、状態量取得処理、データ生成処理、及び印刷処理を実行しない(=印字ラベルLを生成しない)ようにすることも可能である。
【0050】
なお、類似する機能として、制御回路11は、テンプレート取得処理では、計測必須に指定されない第2状態量(=オプション属性)が関連づけられた第2オブジェクトを含む、少なくとも1つのオブジェクトを備えたテンプレートを取得し、検索処理の検索により第2状態量を与える外部計測機器20,30,40,50が検知できなかった場合には、印刷処理では、検知できなかったことに対応する表記(状態量部分が空白/「計測できませんでした」メッセージ)を備えた印字ラベルLを生成するようにすることも可能である。
【0051】
また、制御回路11は、検索処理の検索により同一の状態量を与える外部計測機器20,30,40,50が複数検知された場合、状態量取得処理では、取得する予め定めたルールに沿って決定される1つの外部計測機器20,30,40,50から、状態量の状態量を取得する、ことも可能である。
【0052】
この際のルールには、例えば、最初に見つかった外部計測機器20,30,40,50を優先する場合、印刷装置10から位置が最も近い外部計測機器20,30,40,50を優先場合、等がある。
【0053】
また、制御回路11は、検索処理の検索により同一の状態量を与える外部計測機器20,30,40,50が複数検知された場合、状態量取得処理では、複数の外部計測機器20,30,40,50それぞれから状態量の状態量を取得し、さらに、状態量取得処理で複数の外部計測機器20,30,40,50から取得された複数の状態量に対応する、状態量の代表値を決定する、代表値決定処理を実行してもよい。
【0054】
この際、代表値としては、平均値を算出するばあい、中間値を選択する場合、最も一致個数が多い値を選択する場合、利用者の選択結果による値を採用する場合、等の対応が可能である。
【0055】
これにより、制御回路11は、データ生成処理では、代表値決定処理で決定された状態量の代表値をテンプレートのオブジェクトに割り付けた、印刷データを生成して印字ラベルLを作製することができる。
【0056】
制御回路11は、さらに、状態量取得処理で状態量の状態量を取得した外部計測機器20,30,40,50の識別計測情報を生成する識別計測情報生成処理を実行してもよい。
【0057】
ここで、制御回路11は、その識別計測情報を、記憶部12にログで残す、サーバ等へ送信して記憶する、印字ラベルLに印字形成する、といった対応が可能となる。
【0058】
そして、制御回路11は、さらに、所定の印刷処理実行タイミングが到来したか否かを判定する判定処理を実行し、判定処理において印刷処理実行タイミングが到来したと判定した場合に、データ生成処理及び印刷処理を実行する、ことができる。
【0059】
ここで、制御回路11は、印刷指令を受信したか、所定の周期が経過したか、取得した状態量にしきい値以上の変化があったか、等を条件とすることができる。
【0060】
また、制御回路11は、さらに、検索処理の検索により、少なくとも1つの状態量に関し、当該状態量を与える外部計測機器20,30,40,50の数が所定のしきい値以下となった場合、対応する所定の警告報知を行う報知処理を実行してもよい。
【0061】
次に、上述した制御回路11が実行する印刷処理ルーチンの一例を図3を参照しつつ説明する。
【0062】
(ステップS1)
ステップS1において、制御回路11は、エディタ画面Eを表示部13に表示させるとともに、記憶部12に記憶した複数のテンプレート(データ)から、利用者の操作によって選択されたテンプレートPをスケール付作業画面Sに表示するテンプレート取得処理を実行し、作業をステップS2に処理を移す。
【0063】
(ステップS2)
ステップS2において、制御回路11は、例えば、全ての「属性」についての状態量が決定したか否か等、所定の印刷処理実行タイミングが到来したか否かを判定する判定処理を実行する。制御回路11は、所定の印刷処理実行タイミングが到来したと判定した場合(Yes)には、ステップS3に処理を移す。一方、制御回路11は、所定の印刷処理実行タイミングが到来したと判定しなかった場合(No)には、このルーチンを継続して実行する。なお、処理したタイミングや条件等によって、制御回路11は、このステップS2のルーチンからステップS3に処理を移す。
【0064】
(ステップS3)
ステップS3において、制御回路11は、相互無線通信方式のサービス検索機能を利用して、外部計測機器20,30,40,50の検索を開始する検索処理を実行し、作業をステップS4に処理を移す。
【0065】
(ステップS4)
ステップS4において、制御回路11は、検索した外部機器のうち、サービスが一致する外部計測機器20,30,40,50がある(存在する)か否かを判定する。制御回路11は、サービスが一致する外部計測機器20,30,40,50があると判定した場合(Yes)には、処理をステップS5へと移す。一方、制御回路11は、サービスが一致する外部計測機器20,30,40,50があると判定しなかった場合(No)には、処理をステップS6のエラー処理へと移してエラー報知を行ったうえで、このルーチンを終了する。
【0066】
(ステップS5)
ステップS5において、制御回路11は、検索した外部計測機器20,30,40,50のそれぞれから、外部計測機器20,30,40,50の「属性」に対応した状態量の計測値を取得する計測値取得処理を実行し、作業をステップS7に移す。
【0067】
(ステップS7)
ステップS7において、制御回路11は、サービス検索で取得可能な情報から各外部計測機器20,30,40,50の識別計測情報を取得し、各外部計測機器20,30,40,50の状態量と対応付けして記憶部12にログとして残す識別情報生成処理を実行し、ステップS8へと処理を移す。
【0068】
なお、制御回路11は、このステップS4からステップS7までのルーチンは、全ての外部計測機器20,30,40,50の各々に対して個別に実行し、検出する外部計測機器20,30,40,50がなくなるまで、或いは、対象となる外部計測機器20,30,40,50の検索が完了するまで、繰り返しておこなう。
【0069】
(ステップS8)
ステップS8において、制御回路11は、1つの「属性」の状態量に対して複数の状態量があるか否かの検索処理を実行する。制御回路11は、外部計測機器20,30,40,50から取得した1つの「属性」の状態量に対して複数の状態量があると判定した場合(Yes)には、ステップS9へと処理を移す。一方、制御回路11は、外部計測機器20,30,40,50から取得した1つの「属性」の状態量に対して複数の状態量があると判定しなかった場合(No)には、ステップS10へと処理を移す。
【0070】
なお、制御回路11は、このステップS4からステップS8までのルーチンは、全ての外部計測機器20,30,40,50の各々に対して個別に実行し、検出する外部計測機器20,30,40,50がなくなるまで、或いは、対象となる外部計測機器20,30,40,50の検索が完了するまで、繰り返して行う一連の検索ルーチンとしての処理に含ませることができる。
【0071】
(ステップS9)
ステップS9において、制御回路11は、複数の外部計測機器20,30,40,50から取得された複数の状態量について、1つの「属性」の状態量に対して複数の状態量がある場合に、その状態量の代表値を決定する代表値決定処理を実行し、ステップS10に処理を移す。
【0072】
(ステップS10)
ステップS10において、制御回路11は、取得した状態量をテンプレートPの各オブジェクトに割り付けた印刷データを生成するデータ生成処理を実行し、ステップS11に処理を移す。
【0073】
(ステップS11)
ステップS11において、制御回路11は、生成した印刷データに基づいて被印字テープTに印刷を行って印字ラベルLを作製する印刷処理を実行し、このルーチンを終了する。
【0074】
以上、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について詳細に説明した。しかしながら、本発明の技術的思想の範囲は、ここで説明した実施の形態に限定されないことは言うまでもない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想の範囲内において、様々な変更や修正、組み合わせなどを行うことに想到できることは明らかである。したがって、これらの変更や修正、組み合わせなどの後の技術も、当然に本発明の技術的思想の範囲に属するものである。
【0075】
また、以上において、印刷装置10は。印刷を終了した印字済みの被印字ラベルLをカッタユニット19で切断して印字ラベルLを作成したラベル作成用の印刷装置に適用した場合を例にとって説明したが、これに限られない。すなわち、印字ラベルLに対応した所定の大きさに予め分離されたラベル台紙(いわゆるダイカットラベル)がロールから繰り出されるテープ上に連続配置されているような場合には、カッタユニット19で切断しなくても、テープ排出後にラベル台紙(対応する印字がなされたもの)のみをテープから剥がして印字ラベルとしても良く、本発明はこのようなものに対しても適用できる。
【0076】
また、以上においては、ラベル作成用の印刷装置に適用したが、被印字テープTとは異なる枚葉の被印字シート(所謂「コピー用紙」等)用の印刷装置にも適用可能である。
【0077】
なお、以上において、図2(A)に示す矢印は信号の流れの一例を示すものであり、信号の流れ方向を限定するものではない。
【0078】
また、図3に示す制御回路11が実行するルーチンのフロー図は本発明を上記フローに示す手順に限定するものではなく、他の機能の割り込み処理等を含め、発明の趣旨及び技術的思想を逸脱しない範囲内で手順の追加・削除又は順番の変更等をしてもよい。
【0079】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0080】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0081】
10 印刷装置
11 制御回路(制御手段)
17 印字ヘッド(印字手段)
18 プラテンローラ(搬送手段)
20 外部計測機器(時計)
30 外部計測機器(温度計)
40 外部計測機器(室温系)
50 外部計測機器(温湿度計)
L 印字ラベル(印刷物)
T 被印字テープ(被印字媒体)
P テンプレート
図1
図2
図3