(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-13
(45)【発行日】2023-09-22
(54)【発明の名称】パッキン及びパッキン取り外し治具
(51)【国際特許分類】
H05K 5/06 20060101AFI20230914BHJP
F16J 15/00 20060101ALI20230914BHJP
F16J 15/10 20060101ALI20230914BHJP
B25B 27/28 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
H05K5/06 D
F16J15/00 D
F16J15/10 U
B25B27/28
(21)【出願番号】P 2020078989
(22)【出願日】2020-04-28
【審査請求日】2022-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000102500
【氏名又は名称】SMK株式会社
(72)【発明者】
【氏名】藤井 勝人
【審査官】鹿野 博司
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-203445(JP,A)
【文献】特開2008-002564(JP,A)
【文献】登録実用新案第3184691(JP,U)
【文献】特開2020-041634(JP,A)
【文献】実開昭62-192096(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 5/06
F16J 15/00
F16J 15/10
B25B 27/28
H05K 5/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
穴部(23)に嵌合するパッキン(10)において、
パッキン(10)の内部には大径空洞部(11)と小径空洞部(12)を設け、
大径空洞部(11)はパッキン(10)の取付挿入方向の先端側に位置し、
小径空洞部(12)はパッキン(10)の取付挿入方向の後端側に位置し、
大径空洞部(11)と小径空洞部(12)の接合部(13)には段差(14)がある
パッキンを取り外すためのパッキン取り外し治具であって、
大径空洞部(11)に適合する大径胴体部(31)と、
小径空洞部(12)に適合する小径胴体部(32)からなり、
大径胴体部(31)と小径胴体部(32)の接合部(33)には段部(34)があることを特徴とするパッキン取り外し治具。
【請求項2】
穴部(23)は、ネジを取り付けるために設けられた穴であることを特徴とする請求項1記載の
パッキン取り外し治具。
【請求項3】
パッキン(10)は、穴部(23)から水分の侵入を防止するための防水パッキンであることを特徴とする請求項1記載の
パッキン取り外し治具。
【請求項4】
大径胴体部(31)は、ネジの頭部であり、
小径胴体部(32)は、ネジの胴部であり、
段部(34)は、ネジの座面部であることを特徴とする請求項
1記載のパッキン取り外し治具。
【請求項5】
ネジは、なべ小ネジ又はトラス小ネジ又はバインド小ネジであることを特徴とする請求項
4記載のパッキン取り外し治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッキンに関するものであり、特に防水機能を必要とする電子機器のケースのネジ止め部に用いるパッキン及びパッキン取り外し治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通信モジュールなどの電子機器は、内蔵する電池を交換するために、取り外し可能なカバーを電池保持部に嵌合させる嵌合方式を用いることがあるが、防水性はあまり期待できない。
防水性が必要な場合には確実な密閉性を確保するためにネジ止め方式を採用することがある。
図4は、ネジ止め方式を採用した電子機器20の穴部23の断面図である。
この様なネジ止め方式であっても、ネジと穴部23の隙間から水が浸入する心配があるので、穴部23のネジ頭部の上部をパッキンで栓をしている。
【0003】
この場合、ネジを外す際にパッキンを外す必要があるが、穴部23の奥にあるパッキンは外しにくく、棒やドライバーを使用して外す場合、パッキンを破壊してしまうだけではなく、穴部23も破壊してしまうことがあり、パッキンやケース21をスペアパーツに交換する必要があるという問題が生じる。
【0004】
特許文献1には、先端に突起を複数個設けたパッキン取り外し用治具が記載されている。
この発明は、軸封部の孔内に治具本体を挿入し、治具本体に設けた突起の先端をパッキンに接触せしめてから突起がパッキン内に食込むように治具本体をパッキンに押しつけ、次いで治具本体を前後左右或は回動せしめてパッキンを軸封部の孔から遊離させ、しかる後に突起にパッキンが付着しているのを確かめてから治具本体を軸封部の孔から引出せばパッキンは突起及び案内杵に支持された状態で引出すことが可能なものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のパッキン取り外し用治具を使用した場合であっても、突起がパッキンに食込むため、パッキンの防水機能を損ねてしまうという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明のパッキン取り外し治具は、
パッキン10の内部に大径空洞部11と小径空洞部12を設け、
大径空洞部11はパッキン10の取付挿入方向の先端側に位置し、
小径空洞部12はパッキン10の取付挿入方向の後端側に位置し、
大径空洞部11と小径空洞部12の接合部13には段差14があるパッキンの10を取り外すためのものであって、
大径空洞部11に適合する大径胴体部31と、
小径空洞部12に適合する小径胴体部32からなり、
大径胴体部31と小径胴体部32の接合部33には段部34があることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、
大径空洞部11に適合する大径胴体部31と、
小径空洞部12に適合する小径胴体部32からなり、
大径胴体部31と小径胴体部32の接合部33に段部34があるパッキン取り外し治具30を使用することにより、パッキン10の段差14と段部34が係合するので、パッキン10や穴部23を破損することなく、パッキン10を取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図7】ケースに対するパッキン取り外し治具のイメージ図
【
図9】パッキンにパッキン取り外し治具(ネジ)を挿入した状態図
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明のパッキン及びパッキン取り外し治具について実施例に基づいて説明する。
【実施例】
【0012】
本発明のパッキン10は、ケース20に設けた穴部23(
図4参照)に挿入して、穴部23を介して水分やほこり等がケース20の内部に侵入することを防止するものである。
また、ケース20の美観を損なわないように穴部23を塞ぐホールプラグの役目も果たしている。
例えば、ケース20を構成する上ケース21と下ケース22を結合するためのネジ止め用として穴部23が設けられている場合、穴部23は円筒状であり、パッキン10は
図1に示す様な円筒状の形状である。
穴部23がその他の形状の場合などは、パッキン10の外形は穴部23の形状に合わせて適宜応用される。
なお、パッキン10は一般的なパッキンと同じように弾性を有するゴム又は樹脂で成形されている。
【0013】
パッキン10の内部は
図2に示す通り、大径空洞部11と小径空洞部12が設けられている。
大径空洞部11は、円筒状の空洞であり、ケース20に設けた穴部23に対してパッキン10を取付挿入する方向(取付挿入方向)の先端側に位置している。
また、小径空洞部12は大径空洞部11より小径の円筒状の空洞であり、挿入方向の後端側に位置している。
大径空洞部11と小径空洞部12は接合しており、その接合部13には、それぞれの径の差によって段差14が生じている。
この段差14は後述するパッキン取り外し治具30の段部34と係合する寸法に設定される。
【0014】
図3は電子機器のケース20の外観である。
このケース20は箱状であり、樹脂製の上ケース21と下ケース22が結合されたものである。
この電子機器はIoT(Internet of Things)に使用される通信モジュールであり、内部に電子部品が内蔵されているため、防水機能が必要である。
また、内蔵している電池には寿命があるため、電池交換が必要とされる。
そのために、上ケース21と下ケース22は、接着や溶着ではなく、ネジ40を使用してケース20の四隅を結合している。
【0015】
図4はケース20の部分断面図である。
上ケース21には、穴部23と、ネジ穴24が形成されている。
なお、穴部23は、円筒状であり、ネジの頭部が収まる寸法に設定されている。
下ケース22には、ネジ穴25が形成されている。
上ケース21と下ケース22は、
図8(a)のようにネジ止めされ、その後、パッキン10が挿入される。
【0016】
図5はパッキン取り外し治具30の先端部の図面である。
図5に示したパッキン取り外し治具30は、金属又は樹脂で成形されたものであり、パッキン10専用の取り外し治具である。
パッキン取り外し治具30は、棒状であり、その先端はパッキン10の大径空洞部11に適合する円筒状の大径胴体部31が形成され、パッキン10の小径空洞部12に挿入しやすいように先端に向かって傾斜面が設けられている。
次に、小径空洞部12に適合する円筒状の小径胴体部32が大径胴体部31に接合されている。
なお、小径胴体部32は大径胴体部31より小径であるため、その接合部33には、それぞれの径の差によって段部34が形成される。
この段部34が、パッキン10の段差14に係合することで、パッキン10や穴部23を破損することなく、パッキン10を取り外すことができる。
【0017】
図6は、ネジの図面であるが、本発明においては、パッキン取り外し治具30として使用することが可能である。
つまり、ネジの頭部は大径胴体部31であり、 ネジの胴部は小径胴体部32であり、ネジの座面部が段部34として利用できる。
ネジをパッキン取り外し治具30として使用する場合、ネジの頭部の形状がパッキン10の小径空洞部12に挿入しやすいように、なべ小ネジ、トラス小ネジ、バインド小ネジが適当である。
また、ネジの胴部に施されたネジ山は、指でつまんだ際の滑り止めの役割を果たすことができる。
このように、ネジをパッキン取り外し治具30として使用できるので、専用のパッキン取り外し治具を用意する必要がないというメリットがある。
【0018】
図7は、ケース20に対するパッキン取り外し治具30のイメージ図である。
図8は、パッキン取り外し工程図である。
図8(a)は、ケース20に挿入されたパッキン10をパッキン取り外し治具30で取り外す直前の状態である。
図8(b)は、パッキン10にパッキン取り外し治具30を挿入した状態である。
図8(c)は、ケース20からパッキン10をパッキン取り外し治具30で取り外した状態である。
【0019】
図9は、ネジをパッキン取り外し治具30として使用し、パッキン10にパッキン取り外し治具30(ネジ)を挿入した状態である。
【0020】
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は、ホールプラグ(穴をふさぐための栓)にも利用することができる。
【符号の説明】
【0022】
10 パッキン
20 ケース
30 パッキン取り外し治具
40 ネジ