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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-13
(45)【発行日】2023-09-22
(54)【発明の名称】易損ボードに対応したパネルソー
(51)【国際特許分類】
   B28D 1/04 20060101AFI20230914BHJP
   B28D 7/04 20060101ALI20230914BHJP
   B27B 5/29 20060101ALN20230914BHJP
【FI】
B28D1/04 B
B28D7/04
B27B5/29 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021078846
(22)【出願日】2021-05-06
(65)【公開番号】P2022172723
(43)【公開日】2022-11-17
【審査請求日】2022-12-02
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 日刊木材新聞(Web版を含む) 令和3年3月23日号 第9面 に公開
(73)【特許権者】
【識別番号】000190725
【氏名又は名称】シンクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086438
【弁理士】
【氏名又は名称】東山 喬彦
(74)【代理人】
【識別番号】100217168
【弁理士】
【氏名又は名称】東山 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】秋山 守
(72)【発明者】
【氏名】甲賀 雄三
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 勝
(72)【発明者】
【氏名】神尾 重光
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 友孝
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】実開平03-066701(JP,U)
【文献】特開平06-343382(JP,A)
【文献】特開平03-156457(JP,A)
【文献】特開2003-127102(JP,A)
【文献】米国特許第06460533(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28D 1/04
B28D 7/04
B27B 5/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
テーブル装置、クランプ装置、定規装置、カッタ装置が、適宜のフレームに取り付けられ、前記テーブル装置により上方を後方に緩傾倒した状態にワークを支持すると共に、前記定規装置によって切り込み位置を設定されたワークに対し前記クランプ装置を作用させ、これにより上下方向に亘ってワークをテーブル装置に押し付けて保持し、クランプ装置の位置において、テーブル装置背面から、ワーク側に前記カッタ装置におけるカッタブレードを張り出すと共に、上下方向に移動させ、テーブル装置に保持されたワークを上下方向に切断するパネルソーであって、
前記クランプ装置は、フレームに対して、回動自在に支持される複数のパラレル作動のシフトリンクと、この各シフトリンクの作用ピボットに接続されて平行移動してワークをテーブル面に押し付ける押え板と、シフトリンクの入力ピボットに作用端を接続したアクチュエータとを具え、アクチュエータからシフトリンクを介して押え板に至る可動範囲には、押え板の作用方向に移動する動きを緩制動する緩衝体が設けられていることを特徴とする、易損ボードに対応したパネルソー。
【請求項2】
前記アクチュエータはエアシリンダであり、エアシリンダのシフトロッド先端が作用端としてシフトリンクに接続され、また前記緩衝体は、圧縮コイルスプリングであり、この圧縮コイルスプリングは、シフトロッドに対して外嵌め状態に取付けられていることを特徴とする請求項1記載の、易損ボードに対応したパネルソー。
【請求項3】
前記押え板は、中空チャンネル断面であることを特徴とする請求項1または2記載の、易損ボードに対応したパネルソー。
【請求項4】
前記クランプ装置に添った部位におけるフレームには、定規装置により、押されて移動するワークの慣性移動を阻止する制御体を設けたことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載の、易損ボードに対応したパネルソー。
【請求項5】
前記制御体は、保持片と、この保持片に支持される制動フラップとによって構成されることを特徴とする請求項4記載の、易損ボードに対応したパネルソー。
【請求項6】
前記保持片は、磁性片を具えて、フレームの適宜の位置に取付自在に構成されていることを特徴とする請求項5記載の、易損ボードに対応したパネルソー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、建材の一つである断熱ボードなど、易損傾向のあるワークを切断する場合に適した易損ボード用パネルソーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、ベニヤ板、コンクリートパネル、断熱ボード等、平板状のワークを切断対象としたパネルソーが広く用いられている。このものの一般的形態は、
テーブル装置、クランプ装置、定規装置、カッタ装置が、適宜のフレームにより支持され、前記テーブル装置により上方を後方に緩傾倒した状態にワークが支持され、定規装置によってワークの切り込み位置がまず設定される。そしてパネルソーはワークをクランプ装置により、上下方向に亘ってテーブル装置に押し付けて保持し、テーブル装置背面から、ワーク側にカッタ装置におけるカッタブレードを張り出すと共に、上下方向に移動させ、テーブル装置に保持されたワークを上下方向に切断する形態を採る(例えば特許文献1参照)。
【0003】
このようなパネルソーにおける現行のクランプ装置についてみると、押え板を平行リンク機構によって支持し、このリンク部材をエアシリンダを適用したアクチュエータでシフトし、押え板を対向するテーブル装置に向けて接近させる構成を採っている。このとき平行リンク機構は、押え板の支持点を始発状態では、移動軌跡頂点よりやや手前側とし、クランプ作動するときには支持点を一旦頂点に至らせた後、下降方向のベクトル成分を伴った円軌跡上を移動させるようにしている。
【0004】
そして、この押え板は、例えばいわゆる2×4寸法のムク木材を直接の押え部材として用いており、その結果、押え板の重量も重く、押え板のテーブル板方向への平行移動にあたって、移動軌跡頂点を過ぎると、その重量に因み、一気に下方に落下する傾向を有していた。
このため押え板は、衝撃的にワークに当接することとなり、一般的なベニヤ板やコンクリートパネル等では問題は無いものの、例えば木質ボードに比べ表面乃至は全体が軟らかな断熱ボード等の場合には、押え板を受けとめた瞬間にその衝撃で表面が凹陥するなどの損傷が生じてしまうこともあった。
【0005】
更に断熱ボードを切断する場合においてその板厚が薄いものの場合、全体重量も軽く、これに起因して次のような問題もあった。即ちワークたる断熱ボードを切断するに当っては、定規装置により、ワークをカッタ装置の作用位置に移動させ、そこでクランプ装置によりワークを保持するが、板厚が薄く、軽量の断熱ボードでは、定規装置が指定された位置で押込みを停止しても慣性によりワークはそれに伴い停止せず、更に押し込まれていた方向に進んでしまう傾向がみられた。このため、この現象を予知して作業者は、ワークを押さえながら定規装置による切断寸法の割出しを行っているが、このような配慮を行わなかった場合には、指定した切断位置を外れてワークを切断してしまう恐れも生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2000-141302号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような背景を考慮してなされたものであって、ワークが傷つきやすい断熱ボード等を対象としてこれを切断する場合であっても、ワークに損傷を与えることがなく、且つ軽量なワークであっても、正確に切断位置を設定できる易損ボードに対応したパネルソーの開発を技術課題とした。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち請求項1記載の、易損ボードに対応したパネルソーは、
テーブル装置、クランプ装置、定規装置、カッタ装置が、適宜のフレームに取り付けられ、前記テーブル装置により上方を後方に緩傾倒した状態にワークを支持すると共に、前記定規装置によって切り込み位置を設定されたワークに対し前記クランプ装置を作用させ、これにより上下方向に亘ってワークをテーブル装置に押し付けて保持し、クランプ装置の位置において、テーブル装置背面から、ワーク側に前記カッタ装置におけるカッタブレードを張り出すと共に、上下方向に移動させ、テーブル装置に保持されたワークを上下方向に切断するパネルソーであって、
前記クランプ装置は、フレームに対して、回動自在に支持される複数のパラレル作動のシフトリンクと、この各シフトリンクの作用ピボットに接続されて平行移動してワークをテーブル面に押し付ける押え板と、シフトリンクの入力ピボットに作用端を接続したアクチュエータとを具え、アクチュエータからシフトリンクを介して押え板に至る可動範囲には、押え板の作用方向に移動する動きを緩制動する緩衝体が設けられていることを特徴として成るものである。
【0009】
また請求項2記載の、易損ボードに対応したパネルソーは、前記請求項1記載の要件に加え、
前記アクチュエータはエアシリンダであり、エアシリンダのシフトロッド先端が作用端としてシフトリンクに接続され、また前記緩衝体は、圧縮コイルスプリングであり、この圧縮コイルスプリングは、シフトロッドに対して外嵌め状態に取付けられていることを特徴として成るものである。
【0010】
また請求項3記載の、易損ボードに対応したパネルソーは、前記請求項1または2記載の要件に加え、
前記押え板は、中空チャンネル断面であることを特徴として成るものである。
【0011】
また請求項4記載の、易損ボードに対応したパネルソーは、前記請求項1から3のいずれか1項記載の要件に加え、
前記クランプ装置に添った部位におけるフレームには、定規装置により、押されて移動するワークの慣性移動を阻止する制御体を設けたことを特徴として成るものである。
【0012】
また請求項5記載の、易損ボードに対応したパネルソーは、前記請求項4記載の要件に加え、
前記制御体は、保持片と、この保持片に支持される制動フラップとによって構成されることを特徴として成るものである。
【0013】
また請求項6記載の、易損ボードに対応したパネルソーは、前記請求項5記載の要件に加え、
前記保持片は、磁性片を具えて、フレームの適宜の位置に取付自在に構成されていることを特徴として成るものである。
そしてこれら各請求項記載の発明の構成を手段として前記課題の解決が図られる。
【発明の効果】
【0014】
まず請求項1記載の発明によれば、クランプ装置は、押え板の移動における衝撃的なワークへの当接が緩衝体によって緩和されるため、比較的表面が軟らかく、損傷しやすい断熱用ボード等の易損ボードに対しても、衝撃を伴わずにこれを押さえることができ、易損ボードの凹陥変形などを防止することができる。
【0015】
また請求項2記載の発明によれば、アクチュエータはエアシリンダであり、且つそのシフトロッドの部位に圧縮コイルスプリングを外嵌め状態に設け、この圧縮コイルスプリングが緩衝体として作用させるため、従来構造をほぼ踏襲しながら、極めてシンプルな構成でワークへの押え板の衝突を防止することができる。
【0016】
また請求項3記載の発明によれば、押え板は、カッタブレードが入り込む部位を中空状としたいわば中空断面チャンネルの構成であり、押え板全体を軽量に構成することができる。
【0017】
また請求項4記載の発明によれば、例えば軽量なワークであっても定規装置により押されて移動する場合の慣性移動が制御され、正確な切断位置の設定が可能となる。
【0018】
また請求項5記載の発明によれば、制御体は保持片とこれに支持される制動フラップとであり、極めてシンプルな構成で目的を達成することができる。
【0019】
また請求項6記載の発明によれば、保持片には磁石片が具えられているから、制御体を適宜の位置に設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の易損ボードに対応したパネルソーの全体斜視図である。
図2】同上側面図である。
図3】同上正面図である。
図4】同上パネルソーにおけるクランプ装置部位を拡大して示す斜視図である。
図5】同上パネルソーにおけるカッタ装置を示す側面図である。
図6】同上パネルソーにおけるクランプ装置を示す説明図である。
図7】同上パネルソーにおける作動状態を順次示す説明図である。
図8】本発明の他の実施例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明たる易損ボードに対応したパネルソーの形態は、以下実施例に述べるとおりであるが、この実施例に対して本発明の技術思想の下に適宜の改変が可能である。
【実施例
【0022】
以下、本発明を図示の実施例に基づいて具体的に説明する。
符号1は、本発明の易損ボードに対応したパネルソー(以下、「パネルソー1」と記す)であって、このものは切断対象とするワークWを、建材の一つである断熱ボード等の比較的表面が傷つきやすい易損ボードとした場合であっても、ワークWを傷つけることなく切断し得るものである。
ここでワークWについて更に説明する。このものは、例えば長さ寸法が1800mm前後、幅寸法が900mm前後のいわゆる大判乃至はサブロク板の平面形状を採ることが多く、また厚さ寸法では数mmから数十mmの範囲で適宜の厚さのものが存在する。芯材としては、発泡樹脂あるいは発泡無機質材料等であり、その表面に、適宜の表層剤としてのライナーが設けられており、このワークWたる易損ボードは外部からの衝撃を受けた場合に、部分的に凹陥するなど損傷し易い。
【0023】
以下パネルソー1について説明する。このものは、テーブル装置2、クランプ装置3、定規装置4、カッタ装置5が、適宜のフレームFにより支持され、前記テーブル装置2により上方を後方に緩傾倒した状態にワークWを支持する。
この定規装置4によって切り込み位置が設定されたワークWは、クランプ装置3により、上下方向に亘ってテーブル装置2に押し付けられて保持される。その形状でクランプ装置3の位置において、テーブル装置2の背面から、ワークW側にカッタ装置5におけるカッタブレード55が張り出すと共に、上下方向に移動し、テーブル装置2に保持されたワークWを上下方向に切り込んで切断する。
【0024】
以下、これら各構成部材について更に説明する。
フレームFは適宜の鋼材を、目的に応じた形態に組み合わせたものであって、下部にベースとなるフレーム部材を配設し、その幾分か上方に定規装置4における水平定規41等を支持するフレーム部材を設ける。一方、前方から見てフレームほぼ中央後部に立ち上がるようにコラム状のフレーム部材を設けると共に、天部に水平方向に延びるフレーム部材を配設し、更にこの天部のフレーム部材の手前側端部とベースとなるフレーム部材との間に幾分か後継状態とした傾斜したフレーム部材を設ける。更にその傾斜したフレーム部材の後方にほぼ平行にカッタ装置5を案内するフレーム部材を設ける。また傾斜したフレーム部材の前面には、図6に示すようなサブフレーム状のクランプサブフレームfを設ける。
【0025】
このようなフレームFに対し、パネル状のテーブル装置2が立ち上げ状に設けられる。即ちこのテーブル装置2は、前記傾斜したフレームFにほぼ従った上方を後方に緩傾倒したパネル状部材であって、その表面には適宜滑性の良好な樹脂部材等を配設して形成されている。
そして、このテーブル装置2の主要部材であるテーブル本体21は、カッタ装置5におけるカッタブレード55が通過するカッタスリット22を、ほぼ中央を上下に分けるように具えると共に、その左右両側に補助テーブル23を面一状態に設けている。
【0026】
このテーブル装置2に対し、接近・離反してワークWを保持するためのクランプ装置3が設けられる。即ちクランプ装置3は、図1~4・6に示すように、クランプサブフレームfを支持部材として、シフトリンク31と、押え板32とを具え、シフトリンク31に対し押え板32が回動自在に支持されている。そして、アクチュエータたるエアシリンダ33によってシフトリンク31がシフトされ押え板32の移動がなされる。
【0027】
更に詳しく述べると、シフトリンク31は一例として平板状の部材であり、支点ピボット31aにおいて前記クランプサブフレームfにおけるリンクブラケットf1に対し回動自在に支持されている。またエアシリンダ33は、作用ピボット31bにおいて押え板32に、回動自在に接続されるものであり、具体的には押え板32に形成された受動ピン32Bに対し回動自在に接続される。なおこの実施例ではシフトリンク31は上下一対設けられているから、結果的に上下のシフトリンク31がパラレル作動するものであり、結果的に押え板32自体も立ち上がり姿勢を保ったまま平行移動しながらテーブル装置2側に幾分か下降しながら移動する。押え板32自体は、全体を軽量化することが好ましく、従って断面視では中空深チャンネル状と表現できるような「コ」字状断面としてカッタ逃げ部32Aを構成し、且つワークWとの当たり面には、図示を省略するが、発泡弾性材を貼設する。
【0028】
更にシフトリンク31には入力ピボット31cに対しアクチュエータたるエアシリンダ33のシフトロッド33aが接続される。なおエアシリンダ33自体はそのシリンダ部の上端部をクランプサブフレームにfおけるシリンダブラケットf2に回動自在に支持されている。そして前記シフトリンク31は上下に一対設けられていることにより、それぞれの入力ピボット31cは、連接棒33bにより連結されている。
【0029】
そしてこのクランプ装置3は、特徴的構成として緩衝体34を具える。この緩衝体34は、要は押え板32の押え作用時における急激な下方への移動に伴うテーブル本体21への衝撃的な当接がなされないようにするものであり、アクチュエータたるエアシリンダ33から、シフトリンク31、押え板32に至る可動経路内において適宜の構成がとり得る。この実施例では緩衝体34として圧縮コイルスプリング34Aを用いるものであって、具体的には圧縮コイルスプリング34Aは前記エアシリンダ33のシフトロッド33aに外嵌め状態に設けられる。この構成によりエアシリンダ33のシフトロッド33aを待機状態である伸長状態からクランプ作用状態となる収縮状態にすると、押え板32を押え作用方向に移動させることとなるが、シフトロッド33aの収縮は圧縮コイルスプリング34Aの圧縮を伴ってなされる。結果的にエアシリンダ33のクランプ作用に抗していち早く落下傾向を見せていた押え板32は、その動きを圧縮コイルスプリング34Aで緩衝され、緩やかなクランプ作用方向へ移動する状態を得る。
【0030】
更にクランプ装置3は、補機的部材として、安全カバー35を具える。このものはすでに公知のものであり、詳細な説明は省略するが、上下に側面視短冊状のスラット要素35aを重ね合わせて、上下に移動するカッタ装置5におけるカッタブレード55が露出しないようにしたものである。各スラット要素35aは、ワークWに当接した範囲では、その位置に留まり、ワークWが無い上方範囲では、テーブル装置2に当接するまで張り出して、カッタブレード55が露見しないように構成されている。
もちろん安全カバー35は、ワークWがクランプ装置3の位置に押し込まれるように移動してくる際には、シフトシリンダ35bにより全体として退却し、挿入間口を充分確保するように構成されている。尚図1~4中の符号36は、クランプ装置3の側部範囲を囲むカバー板である。また図2中符号37は、操作盤である。因みに、この操作盤37については、他の図面では図示を省略した。
【0031】
次に定規装置4について説明する。
定規装置4は、図1、3、4に示すように、水平定規41と移動定規42とからなるものであり、水平定規41は一例としてワークWを下支えする、実質的に基台状の部材である。一方、移動定規42は水平定規41の後背部近くに水平配置したリニアガイドレール42Aに対して、リニアベアリング(図示略)を介して移動するものであり、その移動は、一例としてボールネジ状の駆動スクリュー42Cによってなされる。この移動定規42は図1、3、4の実施例において図中右方向からクランプ装置3側の範囲まで移動自在に設定され、この間にワークWを例えば縦置きした状態においてこれを押し込んで、ワークWに対する切断位置を設定するものである。
【0032】
一方、この定規装置4の補機的な部材としてワークWの過剰な動きを制御するワーク制御体43がクランプ装置3の出口側、即ち図1、3における図中左側に設けられる。このワーク制御体43は、既に〔背景技術〕で述べたように、比較的薄く軽量なワークWを移動定規42で移動させてきた場合、所定寸法で移動定規42が停止したとしても、ワークWがただちに停止せずに慣性で自ら移動し過ぎる傾向を有していることから、その動きを制動するためのものである。具体的には、保持片43Aと、それに設けられた制動フラップ43Bと、付勢片43Sとにより構成され、保持片43Aはクランプサブフレームfに固定取付してもよいが、更に図示を省略するが、磁石片を具えて例えばクランプサブフレームfの1 箇所又は適宜の複数箇所にこれを設けることができるようにすることも好ましい。
【0033】
次にワークWを直接切断する作用を担うカッタ装置5について、図1、2、4、5等を用いて説明する。カッタ装置5は、既に公知の構成を採ることから、詳細な説明は省略するが、カッタユニット51が昇降してここに設けられたカッタブレード55がワークWをテーブル装置2の背面から切断するようにしたものである。このカッタユニット51はユニットフレームに対しカッタモータ53を搭載し、さらにカッタ軸受54に対しカッタモータ53からの回転を伝達し、カッタ軸受54に取り付けられたカッタブレード55を回転駆動するものである。このカッタ軸受54は、カッタモータ53の出力軸と同芯状に回転自在に設けられた軸受アーム54Aの自由端側に配置されるものであり、軸受アーム54Aの回動シフトに従いカッタブレード55がテーブル装置2の背面からワークW側に突き出るように構成されている。
【0034】
なお、カッタブレード55は、図5に示すように、ブレードカバー56によって覆われるものであり、図示を省略するが、それに設けられた点検パネルに対して、その近傍に接近センサー等を適用したパネルセンサーを具えておき、ブレード支持時等における作業安全を図ることが好ましい。このようなカッタユニット51は、詳細な説明は省略するが、カッタユニット昇降ガイドに対し、上下方向に昇降自在に取り付けられている。
【0035】
本発明は以上述べたような構成を具えるものであり、これによりワークWを適宜、所望の位置で切断する。
以下、切断作用について図7を参照しながら説明する。
1.始発状態とワークの設置(図7.i)a、i)b)
まずワークWは自動供給又は手動供給により、パネルソー1におけるテーブル装置2に立てかけられるようにして設定される。即ちテーブル装置2の上方の幾分かの傾斜により、上方をやや斜め後ろに倒したような状態でテーブル装置2にもたれかかるようにワークWが設定される。このワークWを設置する始発状態では、例えば図7.i)a、i)bに示すように、定規装置4はワークWの幅に応じて、本図中、充分、右側に待機した位置に設定される。
【0036】
一方、このときクランプ装置3 を見ると、クランプ装置3はいわばクランプ待機状態であり、図7に示すようにアクチュエータたるエアシリンダ33はシフトロッド33aを充分に伸長させた状態で待機している。即ちシフトロッド33aの伸長した状態はシフトリンク31における入力ピボット31cを下死点とし、支点ピボット31aを中心に図中反時計方向に回動した位置にシフトリンク31を設定した状態を出現させている。結果的にシフトリンク31の作用ピボット31bはその移動軌跡頂部から幾分かテーブル装置2から離反した方向にずれた状態で待機している。
【0037】
2.切断位置の設定(図7ii))
このような状態で定規装置4を作動させクランプ装置3に向って移動させると、所定の位置まで定規装置4がワークWを移動させて停止する。このとき充分な重量のあるワークWの場合には定規装置4における移動定規42の移動停止に伴い、直ちに所定の位置で停止する。一方、比較的軽量なワークWの場合には移動定規42が停止してもワークWがそれに従って停止せず、幾分か行き過ぎ状態で停止することがある。
【0038】
しかしながら、本発明ではワーク制御体43が設けられているから、クランプ装置3を通過して移動してきたワークWをその制動フラップ43Bが軽く押さえるようになり(図4拡大図参照)、ワークWの自らの慣性移動を生じないように規制する。この結果軽量なワークWの場合であっても正確な切断位置の設定が可能となっている。このような切断位置の設定が移動定規42によってなされた後に、クランプ装置3によるワークWの保持がなされる。
【0039】
3.クランプ装置の作用(図7.iii)(a)、(b)、(c))
クランプ装置3による保持作用は、エアシリンダ33のシフトロッド33aを収縮させて、シフトリンク31の入力ピボット31cを図中(c)に示すように上方に引き上げるようにしてなされる。この時シフトリンク31は作用ピボット31bが移動軌跡頂点に至るまでエアシリンダ33によりシフトされて移動するが、頂点を過ぎると、押え板32の重量に因んで押え板32には押え方向への移動と共に下方への移動分力も生じてくる。このため何ら緩衝部材が無いときには押え板32は自重によりあたかも落下するようにワークWに一挙に接近する傾向をみせる。
【0040】
しかしながら、本発明では、シフトロッド33aには緩衝体34の一例である圧縮コイルスプリング34Aが設けられているから、このものがシフトロッド33aの収縮方向への移動を阻み、押え板32の自重による急激な落下を伴う前進移動を制動する。このようにして押え板32の動きが緩衝され、いわば緩やかにワークWの表面に押え板32が接するような移動状態が得られる。なおこのような緩やかな移動状態は、押え板32自体も断面中央にカッタ逃げ部32Aを具えたいわば中空のチャンネル状の形態を採り、全体として軽量な構成とされていることも相乗的に作用して得られている。このようにしてワークWは、所定の位置においてテーブル装置2に対し保持された状態を維持する。
【0041】
4.カッタ装置による切断(図7.iv))
このようなワークWを所定位置に保持状態にしたのち、切断が開始される。一般的にはカッタユニット51を一旦上方に引き上げたのちカッタブレード55を軸受アーム54Aを回動させることによってカッタブレード55をテーブル装置2におけるカッタスリット22からさらに張り出すようにして、ワークWに作用できるような位置とする。そしてカッタユニット昇降モータを起動して昇降シフトチェンによりカッタブレード55を具えたカッタユニット51を適宜の速度で降下させながら、ワークWの上方から下方に至る範囲に亘って切断する。
【0042】
5.ワークWの取り外し(図7.v ))
このような切断作業が完了したのち、クランプ装置3におけるエアシリンダ33を再度伸長させ、押え板32よるワークWの保持を解除して、テーブル装置2にもたれかかっているワークWの取り外しを行う。もちろん一枚のワークWに何回かの切断(カット)を行う場合には、更に移動定規42を作動させて再び所定の切断寸法を設定し、先の作動を繰り返して、ワークWの切断を行う。
〔他の実施例〕
【0043】
本発明は以上述べた実施の形態を好ましい実施例の一つとするものであるが、要はクランプ装置3によるワークWの保持を極めて緩やかに行うために緩衝体34を作用させたものであり、更に種々の緩衝体34の形態がとり得る。まず図8(a)に示すものは、前記コイルスプリングタイプのいわばクッションスプリングに変えて、吊持スプリング34Bを用いたものであり、前記押え板32をクランプサブフレームfとの間に設置し、いわば押え板32の自重を見かけ上軽量化するような手法である。
【0044】
また同様な作用は、例えば図示を省略するが、シフトリンクの31の支点ピボット31aにねじりコイルスプリングを設けて、シフトリンク31の移動を緩衝的に行うようにしてもよい。
さらに、金属スプリング等を用いずに図8(b)に示すようないわゆるガススプリング34Cを押え板32とクランプサブフレームfとの間に介在させて緩衝させることも可能である。
さらにこのようなスプリングあるいはダンパータイプのものに限らず例えば、図8(c)に示すように、シフトリンク31等に対してカウンターウエイト34Dを取り付け、シフトリンク31の作用ピボット31b側の急激な下方傾向を阻むような作用をさせてもよい。
【0045】
また、ワーク制御体43についても先に述べた実施例は、保持片43Aに対し制動フラップ43Bを取り付けたものであるが、このような形態に限らず、例えば図1、4に示すように、保持片43Aをいわばアーム状の部材としてその先端に制動が掛かった状態の制動ローラ43Cを設けておき、このものがワークWの移動を押さえるような作用を行ってもよい。
【符号の説明】
【0046】
F フレーム
f クランプサブフレーム
f1 リンクブラケット
f2 シリンダブラケット

W ワーク
1 パネルソー
2 テーブル装置
3 クランプ装置
4 定規装置
5 カッタ装置

21 テーブル本体
22 カッタスリット
23 補助テーブル

31 シフトリンク
31a 支点ピボット
31b 作用ピボット
31c 入力ピボット
32 押え板
32A カッタ逃げ部
32B 受動ピン
33 エアシリンダ(アクチュエータ)
33a シフトロッド
33b 連接棒
34 緩衝体
34A 圧縮コイルスプリング
34B 吊持スプリング
34C ガススプリング
34D カウンターウエイト
35 安全カバー
35a スラット要素
35b シフトシリンダ
36 カバー板
37 操作盤

41 水平定規
42 移動定規
42A リニアガイドレール
42C 駆動スクリュー
43 ワーク制御体
43A 保持片
43B 制動フラップ
43C 制動ローラ
43S 付勢片

51 カッタユニット
53 カッタモータ
54 カッタ軸受
54A 軸受アーム
55 カッタブレード
56 ブレードカバー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8