(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-13
(45)【発行日】2023-09-22
(54)【発明の名称】有機単結晶半導体構造及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 29/786 20060101AFI20230914BHJP
H01L 21/336 20060101ALI20230914BHJP
H10K 10/40 20230101ALI20230914BHJP
【FI】
H01L29/78 618B
H01L29/78 618A
H01L29/78 620
H10K10/40
(21)【出願番号】P 2021521389
(86)(22)【出願日】2020-08-31
(86)【国際出願番号】 CN2020112727
(87)【国際公開番号】W WO2021037274
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2021-10-12
(31)【優先権主張番号】201910810780.9
(32)【優先日】2019-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201911062819.X
(32)【優先日】2019-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202010172053.7
(32)【優先日】2020-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505072650
【氏名又は名称】浙江大学
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100146374
【氏名又は名称】有馬 百子
(72)【発明者】
【氏名】李 寒塋
(72)【発明者】
【氏名】伍 瑞▲函▼
【審査官】川原 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-076570(JP,A)
【文献】特開2012-174805(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/336
H01L 29/786
H10K 10/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機単結晶半導体構造の製造方法であって、
1)基板上に補助成長層及び一対の電極を順次作製するステップであって、前記電極の下面を前記補助成長層の上面に接触させるか、または、前記電極の下部を前記補助成長層に半分埋め込ませるか、または、前記電極に前記補助成長層を貫通させて前記電極の下面を前記基板に到達させるか、により前記電極を前記補助成長層と接触させるステップと、
2)有機半導体材料を有機溶媒に溶解して有機半導体溶液を調製するステップと、
3)成長環境の温度及び湿度を制御して、成長環境を取得するステップであって、前記成長環境の温度は、偏差≦±2°Cであり、前記成長環境の湿度は、偏差≦±3%であり、前記成長環境の温度は、20℃~25℃であり、前記成長環境の湿度は、55%以下であるステップと、
4)せん断ツールとステップ1)で作製された基板との間の間隔を調整するステップであって、前記間隔は、50μm~300μmであり、且つせん断ツールの下面と基板との間の間隔は、偏差≦10μmであることを保証し、安定した溶液貯留空間を作り、前記溶液貯留空間がせん断ツールの下面と基板との間に形成された空間であるステップと、
5)ステップ2)で調製された有機半導体溶液をステップ4)で作られた空間に充填し、充填が完了した後に1~30秒間静置するステップと、
6)前記有機半導体溶液を、前記電極を横断する前の前記補助成長
層の上面から前記電極の上
面を横断し、横断後の前記補助成長
層まで一定の方向に沿って一定のせん断温度において、一定の線速度でせん断することにより、前記基板上に線形の単結晶である線形要素が複数並んだ有機半導体単結晶薄膜を作製し、前記有機半導体単結晶薄膜が有機半導体単結晶アレイを構成し、前記有機半導体単結晶アレイの形態が前記電極を横断する前の前記補助成長層
の上面、前記電極のエッジ
部、電極の中央部
上、及び前記電極を横断した後の前記補助成長層
の上面で、基本的に変化なく、前記一定のせん断温度は基板及び溶液貯留空間の所在する空間において、温度は、偏差≦±1°Cであり、前記一定の線速度とは、前記線速度が偏差≦±20μm/sであるステップと
を含むことを特徴とする有機単結晶半導体構造の製造方法。
【請求項2】
ステップ6)の後に前記有機半導体単結晶薄膜を処理するステップをさらに含み、前記処理するステップは、熱処理、真空処理、溶媒アニーリング処理及び表面処理のうちのいずれか1つ又は複数から選択され、前記表面処理は、紫外線オゾン処理、プラズマ衝撃、赤外線処理及びレーザーエッチングのうちのいずれか1つ又は複数から選択されることを特徴とする請求項
1に記載の有機単結晶半導体構造の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機半導体の分野に関し、特に、有機単結晶半導体構造及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機半導体デバイスは、軽量、低価格、柔軟性、大面積の製造を実現できるという特徴により、半導体デバイスの分野で広く注目されている。次々と現われる新しい技術は、有機太陽電池、有機発光ダイオード、有機電界効果トランジスタなどの有機光電半導体デバイスの発展を大きく促進する。ここで、デバイスの構造は、高効率の光電機能を実現する鍵の一つであり、有機電界効果トランジスタの構造を例とすると、有機電界効果トランジスタは、主に、(1)アクセス電圧によって、ソース電極、ドレイン、ゲート電極とゲート電極の3種類の電極に分けられる電極と、(2)重要な活性層としての有機半導体層と、(3)誘電体層、又は呼ばれる絶縁層とで構成される。
【0003】
そのソースドレイン電極、有機半導体層とゲート電極の間の相対位置に応じて、現在、一般的に使用される有機電界効果トランジスタのデバイス構成は、ボトムゲート-トップコンタクト型(Bottom Gate-Top Contact)(
図1(a))、ボトムゲート-ボトムコンタクト型(Bottom Gate-Bottom Contact)(
図1(b))、トップゲート-ボトムコンタクト型(Top Gate-Bottom Contact)(
図1(c))ががある(J.Zaumseil,and H.Sirringhaus,Chemical Reviews,107,4,1296(2007))。ソース電極、ドレイン電極は、通常、有機半導体層との相対的な位置関係が同じであり、即ち、有機半導体層の同じ側に位置し、したがって、ソースドレイン電極は、通常、ソース電極、ドレイン電極の総称として使用される。
【0004】
有機電界効果トランジスタデバイスのメカニズムによれば、ゲート電圧の影響を受けるため、キャリアは、ソース電極から注入され、有機半導体層と絶縁層の間の界面に蓄積され、伝送用の導電性チャネルを形成し、最終的にドレイン電極から流出する。
図2に示すように(A.Fischer,Karl.Leo,Physics Review Applied 8,054012(2017))、ソースドレイン電極と絶縁層が有機半導体層の同じ側に位置するコプレーナ(Coplanar)デバイス(例えば、ボトムゲート-ボトムコンタクト型)の場合、ソース電極と有機半導体層の間の接触のエッジ部にキャリアの注入が発生すると、電極の接触エッジ部と蓄積された電荷によって形成される導電性チャネルの間には空乏エリアが形成され、キャリアの有効伝送距離が短くなり、キャリアの注入及び抽出にボトルネックが発生する。
【0005】
ボトムゲート-トップコンタクト型とトップゲート-ボトムコンタクト型という2種類のスタガ型(Staggered)デバイスでは、ゲートの有効カバレッジエリアの下で、すべてのソースドレイン電極が有機半導体層と接触している範囲内で、電流が0ではない場合、キャリアの注入及び抽出を実現することができ、ソース電極からのキャリアの注入領域がより大きく、接触抵抗がより小さく、アクティブエリアがより大きく、より優れたデバイス性能を得ることができる。ここで、ボトムゲート-トップコンタクト型デバイス(
図1(a))の製造プロセスでは、ゲート絶縁層の上に有機半導体層を作製し、最後にソースドレイン電極を堆積し、この構造のデバイスは、有機半導体薄膜電界効果トランジスタに広く使用されているが、ソースドレイン電極を堆積するときに、必然的に有機半導体層の熱損失を引き起こし、前記熱損失とは、ソースドレイン電極の周囲に不均一に分布している半導体の表面のトラップ状態の密度が出力電流の低減につながり、かつ金属原子、特にAu、Agが半導体薄膜に拡散して接触障壁を変える可能性が高く、さらにキャリアの注入に大きな影響を与えることを意味し、また、このデバイスの有機半導体層は、空気に直接露出されるため、その耐用年数も周囲の環境の影響を受けやすく、デバイスに安定性の問題がある。
【0006】
トップゲート-ボトムコンタクト型デバイス(
図1(c))では、有機半導体層は、ソースドレイン電極の上に位置し、有機半導体層とソースドレイン電極との間の接触面積は、重力作用により、トップコンタクト型デバイスの場合よりも大きく、より良いキャリア注入を実現することに有利である。有機半導体デバイスの電気的性能も抵抗によって制限されるため、接触抵抗(Contactresistance)は、高周波有機電界効果トランジスタを実現する上での最大の障害であると考えられ、接触抵抗が大きいほど、必要な動作電圧は高くなり、デバイスの熱安定性が悪くなり、特に集積回路の短チャネルデバイスでは、チャネルが短いほど、チャネル全体に占めるソースドレイン電極の下の空乏エリアの割合が大きくなり、全抵抗に占める接触抵抗の割合が大きいほど、デバイスの性能への影響は大きくなる。ここで、接触抵抗の低減は、通常、界面抵抗(R
int)とアクセス抵抗(Raccess)を抑制することで実現されてもよく、ソースドレイン電極と有機半導体層の間に適切なドープ層を導入し、ボトムゲート-トップコンタクト型触構造の代わりにトップゲート-ボトムコンタクト型構造を使用することにより、接触抵抗を大幅に減少させることが報告された(P.Darmawan、T.Minari、and K.Tsukagoshi.AdvancedFunctionalMaterials、22、4577(2012))。
図3に示すように、ボトムゲート-トップコンタクト型デバイスの抵抗は、界面抵抗、アクセス抵抗及びチャネル抵抗(R
channel)の3つの部分で構成され、トップゲート-ボトムコンタクト型デバイスでは、有機半導体層がソースドレイン電極上に被覆され、アクセス領域を縮小させるため、全体的な抵抗は、界面抵抗とチャネル抵抗の2つの部分のみがあり、有機半導体層自体の厚さによるアクセス抵抗の制限を取り除き、接触抵抗を大幅に低減させる(接触抵抗はボトムゲート-トップコンタクトにおける200kΩcmからトップゲート-ボトムコンタクトにおける1.8kΩcmに低減される)。ボトムコンタクト型構造のデバイスの製造プロセスでは、ソースドレイン電極が基板(substrate)上に予め堆積されているため、ソースドレイン電極の堆積プロセスによる有機半導体層への破壊が回避され、一方で、元に無機マイクロエレクトロニクスの分野のみで適用できるフォトエッチング技術は、高精度のデバイスの作製に用いられてもよく、これにより、デバイスの集積度が向上する(M.Mas-Torrent and C.Rovira,Chemical Reviews,2011,111,4833(2011))。デバイスの性能を向上させるために、通常、有機半導体層とソースドレイン電極との接触位置を選択的に修飾する必要があり、ボトムコンタクト型構造のデバイスでは、有機半導体層を破壊することなく、電極への高精度の選択的なパターン化修飾を実現でき、かつ修飾方法の範囲は、トップコンタクト型デバイスの修飾方法の範囲よりも広く、溶液浸漬法、気相堆積法、蒸着法などを含む。また、有機半導体層がゲート絶縁層の下に位置するため、活性層はゲート絶縁層によって保護され、これにより、半導体デバイスの性能がより安定になり、水と酸素に対する耐性が向上し、実際の生活中の半導体デバイスの応用に有利である。
【0007】
有機半導体デバイスの性能が有機半導体材料の種類、有機半導体層の形態、有効被覆率、及びその上記の3つの要因とデバイス構造との包括的な相乗効果に依存するため、その中のいずれかの要因を変更すると、デバイスの性能に大きな影響を及ぼす(C.Reeseand Z.Bao、Materials Today、10、3(2007))。有機半導体層は、活性層として光電機能を実現するための重要な部分であり、材料構造の秩序性に応じて低から高に配列され、通常、無定形、多結晶、単結晶という3つの形態で存在する。有機半導体層の秩序化は、高性能の半導体デバイスを取得するための効果的で一般的な方法であることが証明され、キャリアの移動度(carrier mobility)と励起子の拡散長(excitons diffusion length)の両方は、分子配列の秩序性に強く依存する。キャリアの移動度は、移動度(mobility)と略称されてもよい。電界効果トランジスタデバイスの場合、その性能は主に、移動度、閾値電圧(threshold voltage)及びオン/オフ比(on/off ratio)の3つの性能パラメータに依存し、ここで、移動度は、半導体デバイスの性能に対して決定的な役割を果たすパラメータであり、移動度とは、単位電界強度下でのキャリアの移動速度であり、単位がcm2V-1s-1である。
【0008】
同じ材料の場合、有機単結晶は、その無定形、多結晶の形態に比べて、その分子が高度に秩序化して配列された構造を有し、粒界がなく、欠陥が少ないため、有機単結晶は、最も良いキャリア伝送性能を有し、薄膜半導体デバイスのキャリア伝送上に利点があり、高い電界移動度を備えた有機半導体デバイスを得ることに役立つ。ルブレンが半導体材料として使用されることを例とすると、無定形又は多結晶のルブレン半導体デバイスの移動度は10-3~10-4cm2V-1s-1であり、単結晶形態のルブレン半導体デバイスの移動度は、最大40cm2V-1s-1であり、5桁近く向上し、より高速な半導体デバイスの動作速度が得られる(J.Takeya、M。Yamagishi、Y。Tominari、R、Applied Physics Letters 90、102120(2007))。
【0009】
有機半導体層の形態は、成長プロセスに基本的に変化しないようにできるだけ維持し、その完全性を保証する必要があり、特に、有機単結晶半導体層を構成する有機半導体単結晶薄膜に対して、その形態が変化又は変形すると、欠陥が生じ、最終的にキャリア伝送プロセスで欠陥の深刻な影響を受け、それによって有機半導体デバイスの性能を阻害する。
【0010】
同様に、有機半導体層の有効被覆率(effective coverageratio)f
cは、高性能の有機半導体デバイスを実現する鍵であり、f
cとは、チャネルの総面積に占める有機半導体デバイスのチャネル内のチャネル方向に沿った連続有効面積の比率を指し、有機単結晶半導体デバイスを例とすると、有機単結晶半導体層は、有機半導体単結晶薄膜によって形成され、有機半導体単結晶薄膜は、複数の結晶で構成されており、銭結晶の形態は単結晶である。前記有効被覆率は、径方向(radialdirection、即ち結晶成長に沿う方向)と垂直方向(verticaldirection、即ち結晶成長に垂直な方向)の2つの次元に分けられてもよく、径方向の有効被覆率(radial directional effective coverage ratio)f
crとは、チャネル長に占める複数チャネル(channel)内の結晶の連続長さの割合を指し、前記結晶成長方向の基板に占める結晶成長方向の有機半導体単結晶薄膜の割合を反映し、垂直方向の有効被覆率(vertical directional effective coverage ratio)f
cpとは、全結晶幅に占める指定されたチャネル内の結晶の合計幅の割合を指し、前記結晶成長に垂直な方向の基板に占める前記結晶成長に垂直な方向の結晶の合計幅の割合を反映している。
図5に示すように、前記径方向の有効被覆率がf
crは、隣接しかつ連続しているm個のチャネル内の結晶の連続長さc
Lの和(c
L1、c
L2、…、c
Lm)を結晶で被覆されたm個のチャネル長さLの和(L
1、L
2...L
m)で割ることで得られることができ、mが5以上の正整数であり、即ちf
cr=(c
L1+c
L2+…+c
Lm)/(L
1+L
2+…+L
m)であり、c
L1+c
L2+…+c
Lmがそれぞれ隣接しかつ連続しているm個のチャネルのうちの1番目、2番目、...、m番目のチャネル内の結晶の連続長さc
Lであり、L
1、L
2、...、L
mがそれぞれ結晶で被覆された1番目、2番目、...、m番目のチャネルの長さLであり、mが5以上の正整数であり、前記垂直方向の有効被覆率がf
cp=(k
1+k
2+…+k
n)/Wであり、k
1、k
2、...、k
nがそれぞれ1番目、2番目、...、n番目の結晶とソースドレイン電極との接触幅kであり、Wがチャネル幅であり、nが8以上の正整数である。結晶の連続性が良いほど、径方向の有効被覆率が高くなり、同じ長さのチャネルでは、結晶とソースドレイン電極との接触幅kが大きいほど、ギャップ幅gが小さくなり、垂直方向の有効被覆率が高いほど、キャリアの有効伝送チャネルが広くなり、半導体デバイスの性能がより優れ、ギャップ幅g=0の場合、垂直方向の有効被覆率は、100%に達することができる。理想的な状況では、有機半導体単結晶薄膜の場合、
【0011】
径方向と垂直方向の両方で十分に高い有効被覆率を達成する必要があり、つまり、有機半導体単結晶薄膜は、任意の形状(arbitrary shape)及び任意のサイズ(arbitrarysize)の基板上で、フルカバレッジ(complete/fullcoverage)をできるだけ実現することができるように求められ、前記フルカバレッジは、有機半導体単結晶薄膜の径方向の有効被覆率がfcr≧80%になり、垂直方向の有効被覆率がfcp≧50%になることを指すことができる。しかし、従来技術によりフルカバレッジを実現することができない。
【0012】
上述したように、理想的な工業化有機半導体デバイスは、次の4つの条件を満たす必要がある:1)デバイスの構成は、ボトムコンタクト型(bottom contact)構造である。2)有機半導体層の材料形態は単結晶である。3)有機半導体層の形態は均一に成長した(uniformgrowth)有機半導体単結晶薄膜(single-crystalthin film)である。4)上記の有機半導体単結晶薄膜は、有効被覆率ができるだけ大きく、好ましくは、任意の形状及び任意のサイズの基板上にフルカバレッジを実現することができる。上記の4つの条件を満たすことで、より高い光電性能を実現することができ、さらに、同じ有機半導体単結晶薄膜上のマルチエレメントデバイスアレイの高度集積を実現することができる。しかしながら、有機半導体単結晶は、内部の分子が3次元空間において規則的かつ周期的に配列されることが要求され、したがって、有機半導体単結晶の成長は、その多結晶形態及び無定形形態の場合に比べて難しく、単結晶形態への調整を実現したいと、非常に細かい制御(extraordinary control)が必要となり、実現が非常に困難であり(Niazi、and A.Amassian、Advance duced funconal Maerial、26、2371(2016))、現在の技術により、ボトムコンタクト型構造デバイスへの有機半導体単結晶薄膜のフルカバレッジを実験室で又は工業的にいずれも実現することができない。研究者は形状を制御可能な大面積(large-size/large-area/large)有機単結晶薄膜を報告している
【0013】
従来、研究者は、数百ミクロンの有機半導体単結晶を、例えばキャスト法、スピンコーティング法、印刷法、メニスカスガイドコーティング法など(S.S.Lee,C.S.Kim,and E.D.Gomez,Advanced Materials,21,3605 (2009);H.Li,B.C.K.Tee,and G.Giri,Advanced Materials,24,2588(2012);H.Minemawari,T.Yamada,and H.Matsui,Nature,475,364(2011)))により、形態が調整可能な大面積(large-size/large-area/large-scale)有機半導体単結晶薄膜で製造することができることを報告した。成長界面の表面粗さが分子の秩序化した配列に影響を及ぼし、有機半導体結晶の形態の変化を引き起こし、結晶成長が不均一になる(W.Shao,H.Dong and W.Hu,Chemical Science,2,590(2011))がよく知られ、前記成長界面とは、有機半導体分子が成長する時の接触面を指し、デバイス構造によって、ボトムコンタクト型構造の半導体デバイスの成長界面は、基板との接触面であり、トップコンタクト型半導体デバイスの成長界面は、ゲート絶縁層との接触面である。粗さが高い成長界面は、結晶核の形成を引き起こしやすく、これにより、得られた結晶は、ランダムに配向及び配列される(H.Li、G。Giri、J。Tok、MRS Bulletin、1、38(2013))。二乗平均平方根粗さ値(RMS:root mean square)とは、サンプル長さ内の平均線からの輪郭偏差の二乗平均平方根値を指し、粗さを特徴付けるためのパラメータである。したがって、粗さが極めて低く(RMSが数ナノメートル以内である)、滑らか(smooth)又は平坦(flat)な成長界面は、有機単結晶の均一な成長を実現するために必要な前提条件である。さらに、有効被覆率が高く、さらには完全で被覆された有機半導体単結晶薄膜の均一な成長はさらに、滑らか又は平坦な成長界面上で実現される必要がある。
【0014】
しかしながら、ボトムコンタクト型構造の有機単結晶半導体デバイスでは、有機単結晶半導体層は、ボトムコンタクト型基板上に成長し、有機半導体層は、デバイスの重要な性能を実現する活性層であり、前記有機単結晶半導体層は、有機半導体単結晶薄膜で形成されており、有機半導体単結晶薄膜は、複数の結晶で構成されており、前記結晶の材料は半導体材料であり、前記結晶の結晶形態は単結晶である。キャリアの注入及び抽出の重要な役割を持つソースドレイン電極は、成長界面に位置し、結晶の成長方向に垂直であり、電極の導通を実現できるために、前記ソースドレイン電極は、一定の厚さを有し、一般的に10ナノメートルを超え、さらには一部でも数十ナノメートルに達することができ、成長界面の粗さが大幅に増加し、ボトムコンタクト型構造の半導体デバイスの成長界面は、いずれも滑らかではなく、その二乗平均平方根粗さ値が滑らかな成長界面の乗平均平方根粗さ値の数倍又は数十倍であると考えられてもよい。ソースドレイン電極は、そびえ立つ丘のような障害物を形成し、結晶の核形成とフロント成長が影響を受け、分子の配列の秩序性が低下するため、結晶が電極を交差する時に均一に成長することができず、つまり、結晶は、電極を交差する前(100)、電極のエッジ部(101及び103)、電極の中央部上(102)、及び電極を交差した後(104)に、形態が基本的に変化しなく、それによってキャリアの有効伝送を妨げ、かつその伝送の異方性を増大させ、最終的に半導体デバイスの電気的性能を大幅に低下させる。結晶形態の変化とは、観察しやすい変化を指し、具体的には、光学顕微鏡又は直交偏光を含む光学顕微鏡下で適切な倍数に拡大したときに観測できる変化を指し、
図9は、様々な結晶形態の変化の模式図であり、例えば、電極のエッジ部の近傍に、結晶は、蓄積の欠陥が現れ、結晶は、電極のエッジ部に亀裂、窪み、歪みなどの様々な変形(
図9(f))、結晶幅の変化(
図9(c-d))、形状の変化(
図9(g))又は曲げ(
図9(h))が現れる。また、結晶アレイの配向は、電極からの干渉を受けやすく、分岐、よろめき、配列の乱れが発生する(
図9(e))。
図10(a-b)で電極の中央部上の結晶の成長方向及び幅の両方が変化し、
図10(c、f)で電極のエッジ部に結晶の欠陥及び変形が現れ、
図10(d-e)で結晶の曲げ及び分岐が現れるに関わらず、直交偏光顕微鏡画像10では実際の結晶形態の変化を観察することができる。
【0015】
上記の問題について、従来技術の改善スキームは、基板のパターン化を利用して外部からの結晶の配向によって成形を達成することを含むが。この方法は、パターン化されたテンプレートに依存し、微細なフローチャネルを追加的に作製する必要があり、結晶成長は、制御されるとともに、フローチャネルに制限され、報告された有効被覆率は、垂直結晶成長方向の1つの次元の有効被覆率だけがあり、かつ垂直方向の有効被覆率はわずか15~30%であり、結晶の径方向及び垂直方向の2つの次元の十分に高い有効被覆率を同時に達成することができず、性能に優れたデバイスの要求を満たすにはほど遠い(W.Deng、W。Hu、and X.Zhang、Materials Today、24、17(2019))。有機半導体単結晶の形態を制御することが非常に困難であるため、大面積の成長を実現するために、材料の組成のみを変えることでこの問題を回避することができる。例えば、この問題を回避するために、有機半導体の単結晶の代わりに、有機半導体の小分子と絶縁高分子をブレンドする方法が採用され(M.Niazi,and A.Amassian,Nature Communications,6,8598 (2015))、ここでは、有機単結晶デバイスは、現在、キャリア移動度、スイッチング速度、ターンオン電圧、大面積均一性の点での有機薄膜トランジスタ(OTFT)に対する厳しい性能要求に達することができると明確に記載されているが、大規模化の挑戦を実現することができ、したがって、共役小分子と無定形絶縁ポリマーの混合物をブレードコーティングすることによりOTFTを製造するための方法(The stringent performance requirements for organic thin-film transistors (OTFTs) in terms of carrier mobility,switching speed,turn-on voltage and uniformity over large areas require performance currently achieved by organic single-crystal devices,but these suffer from scale-up challenges.Here we present a new method based on blade coating of a blend of conjugated small molecules and amorphous insulating polymers to produce OTFTs.)方法が提案され、この方法は、ボトムコンタクト型構造のデバイス上の薄膜の形態をある程度改善するが、材料の性能を犠牲にする。絶縁高分子のブレンドにより、有機半導体薄膜は、単結晶のカテゴリーに属せず、得られた薄膜の内部に相層別化現像が発生し、かつ異なる領域での相層別化も電極修飾層によって制約され、この絶縁高分子がブレンドフィルムの内部にあると、結晶自体の緻密性に影響を及ぼすが、ブレンドフィルムの外部にあると、半導体層と電極の間の接触抵抗を増大させて、デバイスの電気的性能が悪くなる。当然、気相法又は液相法によって得られた結晶を、例えば物理的転写法又は化学エッチング法などの転写法により、フレキシブル基板を使用し、電極が予め堆積された基板に転写することができるが、転写法は、以下のいくつかの問題がある:1)転写が困難であり、結晶の品質は転写中に一定の損傷を受ける。2)デバイスの接触問題が発生し、結晶は、元のフレキシブル基板から電極が予め堆積された基板上に貼り合わせられる時に、接触が緊密ではないという問題をもたらし、デバイスの安定性が低くなる。3)プロセスステップは複雑であり、正確な貼り合わせを実現することが困難であり、デバイスの集積度が低下し、大規模な製造に不利である。したがって、工業化の観点から、有機単結晶半導体層のその場での成長によりボトムコンタクト型構造デバイスを製造することは、最も理想的な方式である。
【0016】
上述したように、産業用アプリケーションを実現できる最も理想的な有機半導体デバイスは、ボトムコンタクト型構造を有する有機単結晶半導体デバイスであり、前記有機半導体単結晶薄膜は、均一に成長した形態を有し、かつ任意の形状及び任意のサイズの基板上で十分に高い有効被覆率、さらにはフルカバレッジの形態を達成することができる。前記均一に成長した形態とは、結晶の形態が電極を交差する前(100)、電極のエッジ部(101及び103)、電極の中央部上(102)、及び電極を交差した後(104)に、基本的に変化しないことを指し、これは、キャリアの有効伝送のための最高品質のチャネルを提供し、それによってデバイスの性能の最大化を保証する。しかしながら、従来技術は、均一に成長した形態を有するボトムコンタクト型構造の有機単結晶半導体デバイスを作製することができず、それが直面する挑戦は次のとおりである:1)粗さが極めて低く滑らか又は平坦な成長界面のみで、均一に成長した形態の有機半導体単結晶薄膜を取得することができ、ボトムコンタクト型構造上に予め堆積された電極は、成長界面の粗さを大幅に増加させ、これにより、この構造上に均一に成長した形態の有機半導体単結晶薄膜を取得することができない。2)有機単結晶半導体デバイスでは、有機半導体単結晶薄膜の有効被覆率が低く、有効被覆率の向上を実現することが難しく、径方向と垂直方向の2つの次元の十分に高い有効被覆率を同時に達成することができず、性能に優れたデバイスの要求を満たすにはほど遠い。3)できるだけ最大化された有効被覆率を達成するために、任意の形状と任意のサイズの基板上に、完全に被覆された有機半導体単結晶薄膜を作製する必要があり、理論的には、滑らか又は平坦な成長界面が必要であり、ボトムコンタクト型構造のデバイスの成長界面が非常に粗く、粗さが大きいため、この構造上に、完全に被覆された有機半導体単結晶薄膜を作製することができない。4)有機半導体単結晶は内部の分子が周期的に配列される必要があり、その形態の調整には非常に細かい制御が必要となり、成長条件の要求が非常に厳しく、均一に成長しかつ有効被覆率が高い形態と材料の単結晶状態を兼ねることができず、理想的なデバイスは上記の条件を同時に満たす必要があり、つまり、ボトムコンタクト型の成長界面上に均一に成長したフルカバレッジ形態の有機半導体単結晶薄膜を取得するが、従来技術により、この材料を取得することができない。5)形態が正確に制御された有機半導体単結晶薄膜に対して、その有機半導体単結晶の成長を制御する方法が非常に複雑であり、工業化された大規模な生産を実現することは困難である。6)工業化の場合、任意の形状及び任意のサイズのボトムコンタクト型基板上で、有機半導体単結晶薄膜のその場での無制限の成長を達成することができない。従来技術は上記のいずれかの技術的問題を解決せず、上記の6つの技術的問題を同時に解決することができない。したがって、ボトムコンタクト型構造デバイス上に均一に成長した有機半導体単結晶薄膜、さらには任意の形状及びサイズの基板上に完全に被覆された有機半導体単結晶薄膜をどのように取得するかは、大きな技術的難題であり、有機単結晶半導体デバイスの産業上の大規模な応用を実現する大きな障害でもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
従来技術の欠点について、本発明が解決しようとする技術的問題は、有機単結晶半導体構造及びその製造方法を提供することである。従来技術の問題に基づいて、発明者は、多くの研究及び絶え間ない努力を経てきた結果、従来技術の様々な障害と学術的考え方を克服し、ボトムコンタクト型構造の成長界面上に、均一な成長しかつ有効被覆率が高い形態の有機半導体単結晶薄膜を予期せず成功に作製し、さらには均一に成長したフルカバレッジ形態の有機半導体単結晶薄膜を取得し、かついずれかの形状及び任意のサイズのボトムコンタクト型基板上に有機半導体単結晶薄膜のその場での無制限の成長を実現することができ、従来技術のボトムコンタクト型構造の有機単結晶半導体デバイスで解決できない6つの技術的問題を同時に解決することができる。有機半導体デバイスの場合、この有機半導体単結晶薄膜は、形態と材料の理想的な状態を同時に満たし、これは、理想的な状態の工業化された有機半導体デバイスを実現する鍵である:この有機半導体単結晶薄膜は、キャリアの高効率伝送のための面積が最大化された高品質のチャネルを提供し、この有機半導体単結晶薄膜に基づいて作製された有機半導体デバイスは、キャリアの伝送性能が最も高く、集積度が最も高く、安定性が最も良く、製造方法が最も簡単であり、柔軟に組み合わせやすく、その場でのフルカバレッジを実現できるなどの利点がある。ほぼ理想的な状態を有する上記の有機半導体デバイスを大規模で工業的にその場で作製するための基礎を築き、従来技術のボトルネックを打ち破る。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の技術的問題を解決するために、本発明は、以下の技術的解決策を採用する。
【0019】
本発明の第1の目的に係る基板及び前記基板上に下から上に順次堆積された補助成長層(growth-assistantlayer)、電極、有機単結晶半導体層を含み、前記有機単結晶半導体層が補助成長層及び電極上に成長し、前記有機単結晶半導体層が補助成長層及び電極と接触し、前記有機単結晶半導体層が半導体単結晶薄膜で形成され、有機半導体単結晶薄膜が有機半導体単結晶アレイ(organic semiconductor singlecrystalarray)で構成され、前記有機半導体単結晶アレイの長手方向の形態が電極を交差する前(100)、電極のエッジ部(101及び103)、電極の中央部上(102)、及び電極を交差した後(104)に、基本的に変化せず、つまり、本発明の有機半導体単結晶薄膜は、均一に成長した形態を有する。
【0020】
前記有機半導体単結晶アレイは結晶で構成され、前記結晶の材料は半導体材料であり、前記結晶の結晶形態は単結晶である。前記有機半導体単結晶アレイが基本的に変化しないことは、結晶の形態が基本的に変化しなくかつ有機半導体単結晶アレイの配向が電極を交差する前に一致するように維持することを指すことができ、前記結晶形態が基本的に変化しないことは、容器半導体単結晶アレイを構成する各結晶の結晶成長方向、結晶幅、結晶形状及び結晶成長の連続性が基本的に変化しないことを指すことができる。前記有機半導体単結晶アレイの長手方向の形態が基本的に変化しないことは、それが均一に成長した形態を有していることを指す。
【0021】
前記有機半導体単結晶薄膜の形態は、有機半導体単結晶アレイの長手方向の形態、結晶の形態及び有機半導体単結晶アレイの配向を含み、前記形態及び配向の両方は光学顕微鏡法、走査型電子顕微鏡法、原子間力顕微鏡法などの方法で測定されてもよく、現在、光学顕微鏡法は、最も一般的に使用される、特徴付けることができる範囲が最も大きくかつ最も簡単で普及しやすい方法である。光学顕微鏡法を例とすると、具体的な検出方法は次のとおりである:上記の有機半導体構造を光学顕微鏡の下に置いて適切な倍数(例えば数十倍又は数百倍が可能であり、例えば
図8は100倍に拡大した場合の効果を示す)に拡大し、電極と交差する前、電極のエッジ部、電極の中央部上、電極を交差した後の領域にある光学顕微鏡画像と偏光による光学顕微鏡画像(偏光顕微鏡画像)を同時に含含む有機半導体単結晶薄膜を撮影し、前記2つの画像における有機半導体単結晶薄膜の形態を分析し、色が不均一になる場合又は色が変化する場合、取得された結晶が単結晶ではないことを示し(例えば、
図10(b-f)に示すように、異なるカラーブロックの出現と色の変化は、多結晶形態の有機半導体薄膜薄膜が取得されることを示す)、結晶の色が基本的に均一な状態になる場合、結晶が単結晶であることを示す(例えば
図11に示すように、各結晶自体が基本的に均一な色であり、異なる結晶が基本的に同じ色である場合、単結晶性の良い結晶が得られたことを示す)。取得された光学顕微鏡画像又は偏光顕微鏡画像を観察することにより、有機半導体単結晶アレイの長手方向の形態が基本的に変化していないか否か、つまり、有機半導体単結晶アレイが均一な成長形態を取得しているか否かを判断することができる。
【0022】
「有機半導体単結晶アレイの長手方向の形態が基本的に変化しない」に相対する概念は「有機半導体単結晶アレイの長手方向の形態が変化する」であり、結晶形態が変化すること及び/又は有機半導体単結晶アレイの配向が電極を交差する前後で一致しないことを指すことができ、結晶形態が変化すこと、又は有機半導体単結晶アレイの配向が電極を交差する前後に一致しないことは、いずれも「有機半導体単結晶アレイの長手方向の形態が変化する」と考えられてよい。
【0023】
「結晶形態が基本的に変化しない」に相対する概念は、「結晶形態が変化する」であり、前記結晶形態が変化することは、有機半導体単結晶アレイを構成する各結晶の結晶成長方向パラメー、結晶幅パラメー、結晶形状パラメー、結晶成長パラメータのいずれか1つが変化することであってもよく、例えば、光学顕微鏡で観測した光学顕微鏡画像又は偏光顕微鏡画像では、電極のエッジ部付近の結晶に蓄積欠陥が現れ、結晶は、電極のエッジ部に亀裂、窪み、歪みなどの様々な変形(
図9(f))、結晶幅の変化(
図9(c-d))、結晶の形状の変化(例えば
図9(g)で電極に球晶が現れる)又は結晶の曲げ(
図9(h))が現れる。
図9(d)に示すように、前記結晶幅の変化とは、電極のエッジ部(101及び103)にある結晶の幅の差と電極のエッジ部(103)にある結晶の幅との比の絶対値が|R|>20%であり、|R|=(|(k
1(101)-k
1(103))/k
1(103)|+|(k
2(101)-k
2(103))/k
2(103)|+…+|(k
n(101)-k
n(103))/k
n(103)|)/n*100%、ここで、k
1(101)、k
2(101)、...、k
n(101)は、それぞれ1番目、2番目、....、n番目の結晶と電極のエッジ部(101)との接触位置の幅であり、k
1(103)、k
2(103)、...、k
n(103)は、それぞれ1番目、2番目、...、n番目の結晶と電極のエッジ部(103)との接触位置の幅であり、nが8以上の正整数である。
図10は偏光顕微鏡画像であり、この図では結晶形態に関するいくつかの実際の現像を観察することができ、
図10(a-b)では電極の中央部上の結晶の成長方向及び幅の両方は、観察可能な変化が発生し、
図10(c、f)では電極のエッジ部に結晶の欠陥及び変形が現れ、
図10(d-e)では結晶が曲がっている。
【0024】
「有機半導体単結晶アレイの配向が電極を交差する前に一致に維持する」に相対する概念は、「有機半導体単結晶アレイの配向が電極を交差する前後に一致していない」であり、つまり、有機半導体単結晶アレイは、電極を交差する前(100)、電極のエッジ部(101及び103)、電極の中央部上(102)、及び電極を交差した後(104)に、配向が一致しない。また、光学顕微鏡で観測された光学顕微鏡画像又は偏光顕微鏡画像では、結晶アレイの配向は、電極からの干渉を受けやすく、分岐、よろめき、配列の乱れが発生する(
図9(e))。
図10(d-e)では分岐が現れる。
【0025】
形態が変化した薄膜に比べて、本発明は、均一な成長形態を有する高品質の有機半導体単結晶薄膜を提供し、キャリアの注入、伝送及び抽出などの性能を向上させ、電極の接触位置(電極のエッジ部及び電極の中央部上)にキャリアが高効率の抽出及び注入を実現することができ、有機半導体単結晶の固有の性能の実現に役立ち、この有機単結晶半導体構造に基づいて、高性能の有機半導体デバイスを作製することができ、従来技術のボトムコンタクト型構造の有機単結晶半導体が電極と接触しやすい位置に現れる伝送トラップ/欠陥の技術的難題を克服する。
【0026】
好ましくは、本発明で説明される有機半導体単結晶アレイは、電極を交差して均一に成長することで得られ、有機半導体単結晶アレイは、
図8、
図11及び
図9(a-b)に示すように、配向が一致している結晶で構成され、前記電極を交差して均一に成長することは、有機半導体単結晶アレイを構成する結晶が電極を交差する前(100)、電極のエッジ部(101及び103)、電極の中央部上(102)、及び電極を交差した後(104)に均一に成長することを意味し、その結果、有機半導体単結晶アレイの長手方向の形態は、電極を交差する前(100)、電極のエッジ部(101及び103)、電極の中央部上(102)、及び電極を交差した後(104)に、基本的に変化しない。電極を交差する前(100)、電極を交差した後(104)はそれぞれ、結晶成長に沿った方向に、電極と接触する前及び電極と接触した後の結晶の成長区間を指し、前記電極のエッジ部(101及び103)とは補助成長層と接触する電極のエッジ部を指す。
図5、
図8及び
図9(a-b)に示すように、最も完全な形態は、ほぼ直線のリボン結晶アレイである。
【0027】
補助成長層は、有機半導体単結晶薄膜が電極を交差して均一に成長することを実現する鍵であり、有機半導体分子の結晶核の形成及び成長プロセスに有機半導体分子の秩序化された配列、蓄積位置、蓄積程度、蓄積関係に対して重要な制御役割を果たし、電極と電極が堆積されていないブランク基板との間の高さの差による結晶成長の障害を改善することに役立つ。電極と電極が堆積されていないブランク基板との間に表面化学の違いが大きいため、通常、電極の接触位置に粒界密度の増加、粒子サイズの縮小などの形態変化が発生し、さらには分子は、電極の中央部上及び電極の近くに、電極が堆積されていないブランク基板上とは完全に異なる積み重ね方式が現れ、補助成長層は、この違いを小さくし、有機半導体結晶が電極を交差して、形態が基本的に変化しない成長を実現することができることを支援する。一方、補助成長層は、有機半導体の溶液延性を広げることを支援し、フルカバレッジの有機半導体単結晶薄膜を取得することに有利である。
【0028】
さらに、前記有機半導体単結晶薄膜は、任意の形状及び任意のサイズの基板上でフルカバレッジを実現することができ、つまり、基板上での有機半導体単結晶薄膜の成長は、基板の形状及びサイズに制限されず、前記フルカバレッジとは、有機半導体単結晶薄膜が径方向と垂直方向の両方で十分に高い有効被覆率を持っていることを指す。
【0029】
さらに、前記フルカバレッジは、結晶の径方向の有効被覆率がfcr≧80%であり、結晶の垂直方向の有効被覆率がfcp≧50%であり、好ましくは、fcr≧90%、fcp≧50%、より好ましくは、Fcr≧80%、fcp≧80%、最も好ましくは、fcr≧90%、fcp≧80%である。
【0030】
さらに前記径方向の有効被覆率がfcr=(cL1+cL2+…+cLm)/(L1+L2+…+Lm)であり、cL1、cL2、…、cLmがそれぞれ隣接しかつ連続しているm個のチャネルのうちの1番目、2番目、...、m番目のチャネルにおける結晶の連続長cLであり、L1、L2、...、Lmがそれぞれ結晶で被覆された1番目、2番目、...、m番目のチャネルの長さLであり、mが5以上の正整数であり、前記垂直方向の有効被覆率がfcp=(k1+k2+…+kn)/Wであり、k1、k2、...、knがそれぞれ1番目、2番目、...、n番目の結晶とソース電極及びドレイン電極との接触幅kであり、Wがチャネル幅であり、nが8以上の正整数である。
【0031】
有機半導体単結晶薄膜が連続チャネル内で径方向と垂直方向の2つの方向上の有効被覆率のできるだけ最大化を同時に実現することを満足するために、つまり、径方向と垂直方向の両方で十分に高い有効被覆率を持っていることを満たすために、任意のサイズ及び任意の形状の基板上の有機半導体単結晶薄膜のフルカバレッジにより実現する必要がある。フルカバレッジが達成されているか否かを評価するために、径方向の有効被覆率と垂直方向の有効被覆率の2つの指標に基づく必要があり、結晶の径方向の有効被覆率がfcr≧80%であり、結晶の垂直方向の有効被覆率がfcp≧50%である場合、キャリアに高効率の伝送チャネルを提供し、より高い電気的性能を得ることができ、したがって、上記の2つの指標が満たされれば、フルカバレッジ要求に達したと考えることができる。現在、本分野では、大面積の有機半導体単結晶薄膜を作製する技術は、実験室段階に限定されており、任意の形状及び任意のサイズの基板上にフルカバレッジを実現することができない。
【0032】
従来技術で報告された有機半導体単結晶の有効被覆率に関するデータが1つだけであり、このデータは、垂直方向の有効被覆率を表し、これは、従来技術が有機半導体単結晶薄膜の垂直方向の有効カバレッジのみを実現することができ、径方向の有効カバレッジを実現することができないことを示す。さらに、従来技術で報告された垂直方向の有効被覆率も一般的に低く、従来技術により、本発明で説明されるフルカバレッジを実現することができないことを示す。論文(W.Deng,W.Hu,and X.Zhang,Materials Today,24,17(2019))を例とすると、
図22に示すように、
図22(a)及び(b)はそれぞれFIGURE 2(d)及び 4(a)であり、図中の矢印方向は径方向を表し、前記矢印方向に垂直な方向は垂直方向を表し、この論文では一方向のDPA結晶の被覆率はわずか15-30%である(the surface coverage of DPA crystals on the substrate is estimated to be about 15-30%,FIGURE 2(d)及び 4(a))ことが分かり、
図22(a-b)の矢印方向から、本明細書に記載される表面被覆率(surfacecoverage)は、垂直方向の有効被覆率を表していると判断できる。また、当業者は、有機単結晶薄膜の形態を特徴付けるときに選択された領域の範囲を、形態特徴図のスケールバー(scalebar)に従って判断できることを知ることができ、
図22(a)のスケールバーは20mであり、これは基板全体(直径約100mmの4インチのシリコンウェーハ)から1つの小さい領域を、有機単結晶薄膜の形態を特徴づけるために選択された領域として選択されることを示し、さらに完全な2つの方向の有効被覆率を取得することができないことを示す。上述したように、従来技術により、径方向と垂直方向の2つの次元の十分に高い有効被覆率を同時に達成することができず、性能に優れたデバイスの要求を満たすにはほど遠く、これは、巨大な技術的障害である。完全に被覆された有機半導体単結晶薄膜は、この問題をより良く克服することができ、さらに、完全に被覆された有機半導体単結晶薄膜に基づいてより複雑な有機半導体ヘテロ構造を作製し、より多様な光電機能を実現することができる。また、有効被覆率の高い有機半導体単結晶薄膜は、高度に集積された電子デバイスアレイの作製に用いられてもよく、新世代の集積回路の発展の可能性を提供する。従来技術で言及された大面積(large-size/large-area/large-scale)の有機半導体単結晶薄膜は、mm又は数センチメートルレベルの規則的なサイズの滑らか又は平坦な基板のみに作製され、粗いボトムコンタクト型基板の場合、有機半導体単結晶薄膜は、フルカバレッジを実現することができず、さらにボトムコンタクト型の基板上にフルカバレッジを実現することができず、さらに任意の形状及び任意のサイズの基板上にフルカバレッジを実現することができない。本発明によって提供される大面積の有機半導体単結晶薄膜は、ボトムコンタクト型基板上で無制限の連続成長を実現することができ、数十センチメートルレベルの完全に被覆された有機半導体単結晶アレイを取得することができる。
【0033】
さらに、前記電極は、補助成長層と接触しており、かつ補助成長層の外側にある突起部を有し、前記電極は、上位型及び/又は埋め込み型の方式で前記補助成長層と接触し、前記上位型とは、前記補助成長層の上面が電極の下面と接触していることを指し、前記埋め込み型とは電極が前記補助成長層に半分埋め込まれ、又は前記補助成長層を貫通していることを指す。前記補助成長層は、電極の下に位置し、
図4に示すように、前記電極は、上位型及び/又は埋め込み型の方式で前記補助成長層と接触し、前記上位型(
図4(a))とは、前記補助成長層の上面が電極の下面と接触していることを指し、前記埋め込み型(
図4(b))とは電極が前記補助成長層に半分埋め込まれ又は又は前記補助成長層を貫通していることを指し、前記半分埋め込みとは、具体的には、補助成長層が電極の下面及び電極の側面の両方と接触していることを指し、前記貫通とは、具体的には、補助成長層が電極の側面のみと接触していることを指す。
【0034】
前記電極は、補助層上に上位型、嵌め込み型のいずれかの1つ又は2つの方式で配列される(
図4(c))。ここで、上位型の接触方式のみで配列することができ、嵌め込み型の接触方式のみで配列することもでき、また、上位型と嵌め込み型の両方で配列することがき、前記配列は、秩序化された配列であってもよいし、ランダムな配列であってもよい。
【0035】
ここで、補助成長層が電極の下に位置する位置関係は、まず補助成長層を堆積し、次に電極を堆積することにより実現されてもよく、補助成長層に電極が埋め込まれる位置関係は、補助成長層を堆積した後、まず紫外線オゾン/レーザー/プラズマ衝撃などの手段により補助成長層の一部をエッチングし、エッチングされた窪み内に対応して電極を堆積することにより実現されてもよい。
【0036】
前記補助成長層が電極の上に位置する場合、補助成長層は、有機半導体層と電極との分離を引き起こし、その結果、キャリアは補助成長層に妨げられ、電極から有機半導体層に直接注入することができず、それによってデバイスが故障する。したがって、補助成長層が電極の下に位置する位置関係又は補助成長層に電極が埋め込まれる位置関係は、有機半導体単結晶薄膜が、電極を交差して均一に成長することを実現することを保証すると同時に、有機半導体デバイスの機能の完全性を保証することができる。
【0037】
さらに、
図5に示すように、前記有機半導体単結晶薄膜は、配向した有機半導体単結晶アレイであり、分離しかつ独立した複数の線形要素(linear-typeelement)で構成され(
図5の左側の画像内の黒い実線縞)、前記複数の線形要素は、線形に配列され(linear-typearrangement)、前記線形配列とは、結晶成長方向に沿った各線形要素の配向が一致している(well-aligned orientation/arrangement)ことを指すrことができ、前記配向が一致していることは、各線形要素がほぼ平行(almost parallel)であることを指すことができる。前記線形要素は、電極を交差する前(100)、電極のエッジ部(101及び103)、電極の中央部上(102)、及び電極を交差した後(104)に、均一に成長し、つまり、線形要素の形態は、電極を交差する前(100)、電極のエッジ部(101及び103)、電極の中央部上(102)、及び電極を交差した後(104)に、基本的に変化しなく、前記線形要素は、単一の結晶であり、かつその形態が単結晶である。
【0038】
さらに、前記配向が一致していることは、配向度(degree of orientation)がF≧0.625、好ましくはF≧0.95、より好ましくは、F=1(各線形要素が互いに平行である)であることを意味することができる。
【0039】
【0040】
さらに、前記線形要素の形態は、疑似一次元(p1D:pseudo 1D)又は疑似二次元(p2D:pseudo 2D)であり、結晶成長方向に沿った単結晶の長さcが結晶の幅a及び結晶の厚さbよりもはるかに大きい場合、つまり、c/a≧500、c/b≧500の場合、疑似一次元の形態であり、好ましくは、c/a≧1000、c/b≧1000、より好ましくは、c/a≧2000、c/b≧2000であり、結晶成長方向に沿った単結晶の長さc及び結晶の幅aが結晶の厚さbよりもはるかに大きい場合、つまりc/b≧500、a/b≧500の場合、疑似二次元の形態であり、好ましくは、c/b≧1000、a/b≧1000、より好ましくは、c/b≧2000、a/b≧2000であり、好ましくは、前記線形要素は、疑似一次元の形態であり、最も好ましくは、前記疑似一次元の線形要素は、規則的なストリップ状又はリボン状である。
【0041】
さらに、線形要素ボリュームビュー(
図5)では、平面視で観測された前記線形要素の形態は、線状又は面状であり、前記線形要素の厚さbは2~400nmであり、好ましくは、前記線形要素の厚さbは5~200nmである。
さらに、前記線形要素の厚さの高さが均一である(highly uniform thickness)。
【0042】
【0043】
線形に配列された有機半導体単結晶薄膜は、配向が一致しているため、高品質のキャリアの有効伝送チャネルを提供し、
図8及び
図9(a-b)に示すように、
図8は実際に取得された有機半導体単結晶薄膜の光学顕微鏡画像であり、
図9(a-b)は
図8の対応する模式図であり、
図9(a-b)の各黒い実線縞は1つの結晶であり、各結晶は1つの線形要素であり、ここで、
図9(b)は
図9(a)の点線枠の部分拡大図である。規則的で、厚さの高さが均一であり、配向が一致する有機半導体単結晶薄膜は、デバイスの均一性を保証し、半導体デバイスの抵抗の制御に有利であり、デバイスの電気的性能をさらに向上させる。完全な形態に近い有機半導体単結晶薄膜を工業的規模で真に得るために、上記の3つの性能を同時に満たすことだけでなく、任意の形状及びサイズの基板上にフルカバレッジを実現する必要がある。この有機半導体単結晶薄膜は、デバイスの利用面積を大幅に拡大し、電極の蒸着と高度に集積されたデバイスの作製をより便利にし、工業における有機単結晶半導体デバイスの集積が困難であるという技術的難題を克服する。
【0044】
現在の市販されている結晶化しやすい有機半導体小分子で成長した単結晶は、ドープされていない場合、単結晶アレイの厚さが2nm未満であると、得られた単結晶の表面又は内部にいくつかの欠陥がある可能性があり、これらの欠陥は電荷トラップとしてキャリアの伝送性能を低下させる。単結晶アレイの厚さが400nmを超える場合、材料の消費量が増加すると同時に、厚さの影響を受けるデバイスのアクセス抵抗が増加し、これにより、デバイスの動作電圧のニーズが増加し、閾値電圧が上昇し、性能が影響を受ける。さらに、ゲート絶縁層の柔軟性により、単結晶の表面にコーティングされたゲート絶縁層の上面の粗さとうねり度は、有機半導体単結晶薄膜の厚さの影響を受け、これにより、ゲート電極とゲート絶縁層の接触不良を引き起こす可能性がある。したがって、線形要素の適切な厚さは、原材料のコストを節約しながら、高性能のデバイスの作製を実現することを、保証することができる。
【0045】
さらに、前記補助成長層は、有機絶縁薄膜(organic insulating thinfilm)であり、好ましくは、前記有機絶縁薄膜と水との接触角(watercontactangle)CAwaterは30°~120°であり、より好ましくは、前記接触角CAwaterは60°~100°である。
さらに、前記有機絶縁膜の材料は、共役系を有する材料であり、前記共役系とは共役結合πを形成できる系である。
さらに、前記有機絶縁膜の材料の誘電率が≦20であり、好ましくは、前記誘電率が≦12である。
【0046】
さらに、前記有機絶縁膜の材料は、シリル基含有自己組織化小分子、リン酸基含有自己組織化小分子、チオール基含有自己組織化小分子、誘電特性を有するポリマーのいずれか1つ又は複数から選択される。
【0047】
さらに、前記有機絶縁膜の材料は、誘電特性を有するポリマー又はそれらの混合物であり、選択されたポリマーは、架橋又は非架橋の形態であり、好ましくは、前記ポリマーは、ポリスチレンブロック、ポリメチルメタクリレートブロック、ポリビニルアルコールブロック、ポリ塩化ビニルブロック、ポリビニルピロリドンブロック、ポリシロキサンブロック、ポリイミドブロック、ポリエチレンブロック、ポリオキシエチレンブロック、ポリビニルフェノールブロック、ポリエチレンナフタレートブロック、ポリエチレンテレフタレートブロック、ポリエーテルスルホンブロック、ベンゾシクロブテンブロック、パーフルオロアルキルビニルエーテルブロック、ポリフルオロエチレンブロックのいずれか1種類又は複数種類を含有する。
【0048】
基板上に補助成長層をコーティングすることで、結晶が電極を交差して均一に成長することを支援し、配向が一致している有機半導体単結晶薄膜を得ることができる。補助成長層は、有機半導体単結晶薄膜と電極の下に位置し、その性質が電極の注入及び抽出に影響を与えるため、有機絶縁材料を使用する必要があり、そうでない場合、デバイスが常開状態になる可能性があり、0V電圧でも電流が流れ、エネルギー消費量が大きく、スイッチング効果を達成することができない。補助成長層の表面が一定の疎水性を有し、適切な水接触角を有する材料を選択することにより、その界面が部分的な疎水性を有するが有機溶媒との親和性を低下させるほど疎水性が高すぎないことを保証することができ、成長界面と有機溶液の間の親和性を高めることに有利であり、これにより、結晶は、電極が予め堆積された基板の表面に一定の高さを有する電極を交差して、基本的に形態を変えずに連続的に成長することを実現し、成長した配向性有機半導体単結晶薄膜の結晶品質を向上させ、この構造に基づいて作製されたデバイスの安定性を高めることができる。具体的な補助成長層材料は、選択された半導体層分子及びそれに使用される有機溶媒のタイプに従って決定されてもよい。好ましくは、補助成長層は、一定の共役構造を有すると、一定の共役系を同様に有する有機半導体分子との一定の相互作用が生じ、分子の配列及び積み重ねに対してガイド効果を持っている。誘電率は、補助成長層材料の原子及び接続結合の極性及び密度を反映し、小さい誘電率を有する補助成長層は、極性が低く、一般的に使用される極性が低い有機溶媒の場合、その親和性を高めるとある程度役立ち、完全に被覆された有機半導体単結晶形態を得るための良好な成長環境を提供する。シリル基、リン酸基、チオール基を含む小分子自己組織化層は、緻密なバッファ層を形成することができ、その可変修飾基は、異なる構造の有機半導体材料の分子の配列及び蓄積に対するガイド効果を達成することができる。誘電特性を有する前記ポリマー補助成長層は、有機半導体との良好な適合性を有し、製造が非常に便利であり、表面品質の高い補助成長層を非常に容易に取得することができ、ポリマー側基を修飾することでその界面の化学的性質への制御を実現することができる。
【0049】
さらに、前記有機半導体単結晶薄膜の材料は、バンドギャップ幅が≦3.5eVであり、コアが共役構造を含んでいるという有機半導体材料であり、好ましくは、前記有機半導体材料は、有機半導体小分子であり、より好ましくは、前記有機半導体小分子は、線状アセン、線状ヘテロアセン、ベンゾチオフェン、ペリレン、ジフェニルアントラセン、フラーレン及びそれらの誘導体のいずれか1種類から選択される。
【0050】
ここで、有機半導体小分子とは、分子量が固定され、明確な分子構造を有する有機半導体材料を指す。バンドギャップ幅は、伝導帯底と価電子帯上端の間のエネルギー差であり、禁制帯幅とも呼ばれる。共役系とは、共役π結合を形成できる系である。適切なバンドギャップ幅は、有機半導体の固有の特性を保証し、電界効果制御を実現できる。線形アセン、線形ヘテロアセン、ベンゾチオフェン、ペリレン、ジフェニルアントラセン、フラーレン及びそれらのそれぞれの誘導体のコアは、一定の共役構造を含み、結晶性に優れ、高品質の有機半導体単結晶薄膜を容易に取得し、6,13-ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン(TIPS-pentacene)と2,7-ジオクチル[1]ベンゾチエノ[3,2-b]ベンゾチオフェン(C8-btbt)を例とすると、一定の長さのシラン鎖側基又はアルカン鎖側基を有し、有機溶媒への溶解性が高く、有機半導体単結晶薄膜のフルカバレッジ成長を実現することに有利である。
【0051】
さらに、前記有機半導体単結晶アレイは、その場で電極を交差して均一に成長することによって得られる。本発明によって提供される有機半導体単結晶アレイは、溶液法により、ソースドレイン電極が作製された基板上にその場で直接成長して得られる。前記その場で電極を交差して均一に成長することは、有機半導体単結晶アレイを構成する結晶が電極を交差する前(100)、電極のエッジ部(101及び103)、電極の中央部上(102)、及び電極を交差した後(104)に均一に成長することを意味し、有機半導体単結晶アレイの長手方向の形態は、電極を交差する前(100)、電極のエッジ部(101及び103)、電極の中央部上(102)、及び電極を交差した後(104)に、基本的に変化しない。その場で電極を交差して均一に成長することによって得られた有機半導体単結晶アレイは、従来技術で記載される、有機半導体単結晶を気相法で作製してから有機半導体単結晶を転写法でソースドレイン電極に転写する場合と比較して、転写プロセスにおける有機半導体単結晶の品質への破壊、及び転写後の電極と有機半導体単結晶の間の接触不良の問題を回避する。これにより、十分に高い有効被覆率、さらにはフルカバレッジを有する有機半導体単結晶アレイを作製する可能性が大幅に向上する。
【0052】
本発明の第2の目的は、電界効果トランジスタを提供することである。前記電界効果トランジスタは、上記のいずれかの形態の有機単結晶半導体構造を含み、前記電界効果トランジスタは、トップゲートデバイス及びボトムゲートデバイスを含み、前記トップゲートデバイスのゲート及びゲート絶縁層は、前記有機単結晶半導体構造の上に位置し、前記ボトムゲートデバイスのゲート及びゲート絶縁層は、有機単結晶半導体構造の下に位置している。
【0053】
電界効果トランジスタでは、電圧がアクセスすると、有機単結晶半導体構造の電極は、接地するか否かに応じてソース電極とドレイン電極に分けられてもよい。電界効果トランジスタ内のソースドレインゲート電極は、一般的に使用される半導体デバイスの電極であり、前記電極は、金属又は非金属から選択されてもよく、前記電極は、同じ種類又は異なる種類の金属/非金属から選択されて積み重ねられてもよく、好ましくは、前記金属電極は、白金(Pt)、金(Au)、銀(Ag)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、カルシウム(Ca)、クロム(Cr)から選択されてもよく、前記非金属電極は、シリコン、グラフェン及びそれらの誘導体から選択されてもよい。前記ソースドレインゲート電極は、同じ種類又は異なる種類の金属/非金属から選択されてもよい。
【0054】
前記ソースドレインゲート電極は、任意の1種類又は複数種類の電極で積み重ねられてもよい。好ましくは、p型半導体の場合、前記ソースドレイン電極は、仕事関数と対応する半導体層のHOMOエネルギーレベルとの差≦0.5eVの金属から選択され、これは、注入障壁を低減し、キャリアの伝送性能を向上させ、閾値電圧及びサブスレッショルドスロープを下げることに有利である。
【0055】
より好ましくは、前記ソースドレイン電極は、有機半導体層及び/又は有機溶媒への親和性が高い金属から選択され、有機半導体層を溶液法で作製するときに基板上での有機溶液の拡散を容易にし、気-液界面での有機分子の配列への制御がより容易であり、かつ金属電極への有機半導体分子の吸着に役立ち、配向した有機半導体単結晶アレイを形成する。
【0056】
前記ソースドレイン電極の厚さは0.1~100nmであり、好ましくは、前記ソースドレイン電極の厚さは10~50nmであり、ソースドレイン電極が薄すぎると、トップゲート-ボトムコンタクト型構造のデバイスは、接触問題が発生しやすく、その結果、キャリアの伝送性能が低下し、必要なターンオン電圧が増加するという問題を引き起こす。ソースドレイン電極が厚すぎると、ソースドレイン電極が予め堆積された基板上での結晶の成長が妨げられ、結晶アレイが連続しなくなり、結晶品質が低くなり、破損しやすくなる可能性があり、さらに、プロセスコストが増加する。
【0057】
前記ゲート電極の種類及び厚さは、実際の状況に応じて調整されてもよく、薄すぎることができず、そうでない場合、電極の表面が破壊されやすく、かつトップゲート-ボトムコンタクト型構造のデバイスの絶縁層に一定の粗さ及びとうねり度があり、その結果、電極が導通できなく、また、作製周期及び原材料を節約するために、ゲート層は、厚すぎることが好ましくない。前記ゲート層の厚さは10nm~100nmである。好ましくは、前記ゲート層の厚さは20nm~50nmである。
【0058】
前記ゲート絶縁層は、誘電特性を有する有機又は無機分子層であり、好ましくは、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリイミド、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン共重合体、ポリフッ化ビニリデン-トリフルオロエチレン-クロロフルオロエチレン、ポリスチレン、ポリ-α-メチルスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリビニルフェノール、パリレン(パリレン)、ベンゾシクロブテン、パーフルオロ(1-ブテニルビニルエーテル)ポリマー、シアノエチルプロパンのいずれかの1つ又は複数の混合/重ね合わせから選択されてもよい。プロセスステップを減少し、プロセス機器のコストを削減するというニーズに対して、選択されたゲート絶縁層は、溶液法によって作製されてもよく、かつ有機単結晶半導体層を溶解しない直交溶媒に良好な溶解性を有することができる。
【0059】
なお、有機単結晶半導体層を、ゲート絶縁層の作製プロセスに損傷されないように保護するために、重ね合わせたゲート絶縁層を使用し、有機単結晶半導体上に、まず結晶をカプセル化して保護するための薄い第1の絶縁層を作製し、次に有機電界効果トランジスタのスイッチング機能を実現するための厚い第2の絶縁層を作製することができる。前記第1の絶縁層及び第2の絶縁層は、誘電特性を有する異なる有機分子から選択されてもよい。好ましくは、前記第1の絶縁層の厚さは2nm~20nmである。
【0060】
前記電界効果トランジスタの基板は、シリコン基板、金属酸化物基板、ガラス基板、セラミック基板、又は一般的に使用される有機フレキシブル基板であり、好ましくは、前記有機フレキシブル基板は、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアリレートから選択されてもよい。
さらに、前記電界効果トランジスタは、バッファ層及び/又はカプセル化層をさらに含む。
【0061】
前記バッファ層は、電極から半導体層へのキャリアの注入効率を向上させる様々な有機又は無機薄膜を含み、電極表面の仕事関数又は表面エネルギーを修飾し、注入障壁と接触抵抗を効果的に低減し、デバイスのキャリアの伝送性能を向上させ、動作電圧を下げることができる。ソースドレイン電極の修飾により、電極表面の有機半導体単結晶アレイの長手方向の形態を改善することもできる。選択可能なバッファ層材料は、遷移金属酸化物、金属ハロゲン化物、金属フタロシアニン、芳香族硫黄含有化合物の自己組織化補助成長層、2,3,5,6-テトラフルオロ-7,7’、8,8’-テトラシアノジメチルP-ベンゾキノン、共役高分子電解質を含む。
【0062】
前記カプセル化層は、様々な有機及び無機薄膜を含み、環境中の酸素、水分又は他の不純物によるデバイスの活性層の阻害を実現し、デバイスの性能の劣化が速すぎることを回避し、複雑な雰囲気でのデバイスの正常動作に寄与し、選択可能なカプセル化層材料は、樹脂、高分子ポリマー、無機酸化物などを含む。
【0063】
本発明の第3の目的は、光電デバイスを提供することである。前記光電デバイスは、上記の電界効果トランジスタを含み、好ましくは、前記光電子デバイスは、発光ダイオード、相補回路、ディスプレイ、センサー、記憶メモリから選択される。
【0064】
本発明の第4の目的は、光電デバイス統合アレイを提供することである。前記光電デバイス統合アレイは、上記の1つ又は複数の光電デバイスをN次元で統合することによって得られ、Nが1以上の正整数である。前記光電デバイス統合アレイは、検出器、インバーター、発振器、発光ダイオードの制御回路バックプレーンなどに広く使用されてもよい。
本発明の第5の目的は有機単結晶半導体構造の製造方法を提供することである。前記方法は、
【0065】
1)基板上に補助成長層及び電極を順次作製するステップであって、好ましくは、前記電極が上位型(uppertype)及び/又は埋め込み型(embeddedtype)の方式で前記補助成長層と接触し、前記上位型とは前記補助成長層の上面が電極の下面と接触していることを指し、前記埋め込み型とは電極が前記補助成長層に半分埋め込まれ(half-embed)、又は前記補助成長層を貫通(penetrate)していることを指すステップと、
2)有機半導体材料を有機溶媒に溶解して有機半導体溶液を調製するステップと、
【0066】
3)成長環境の温度及び湿度を制御して、安定した成長環境を取得するステップであって、前記環境温度の偏差が≦±2°Cであり、前記環境湿度の偏差が≦±3%であり、好ましくは、前記環境温度が20℃~25℃であり、好ましくは、前記環境湿度が≦55%であり、より好ましくは、前記環境湿度が≦40%であるステップと、
【0067】
4)せん断ツールとステップ1で作製された基板との間の間隔を調整するステップであって、前記間隔が50μm~300μmであり、好ましくは、前記間隔が100μm~150μmであり、且つせん断ツールの下面と基板との間の間隔の偏差が10≦μmであることを保証し、安定した溶液貯留空間を作り、前記溶液貯留空間がせん断ツールの下面と基板との間に形成された空間であり、好ましくは、せん断ツールの下面と基板が基本的に平行であるステップと、
5)ステップ2)で調製された有機半導体溶液をステップ4)で作られた空間に充填し、充填が完了された後に1~30s秒間静置するステップと、
【0068】
6)前記有機半導体溶液を、電極を交差する前(100)から電極を交差した後(104)までの一定の方向に沿って一定のせん断温度で、一定の線速度でせん断し、基板上に有機半導体単結晶薄膜を作製し、前記有機半導体単結晶薄膜が有機半導体単結晶アレイで構成され、前記有機半導体単結晶アレイの長手方向の形態が電極を交差する前(100)、電極のエッジ部(101及び103)、電極の中央部上(102)、及び電極を交差した後(104)に、基本的に変化しなく、前記一定のせん断温度とは基板及び溶液貯留空間の所在する空間において、温度の偏差が≦±1°Cであることを指し、前記一定の線速度とは線速度の偏差が≦±20m/sであることを指すステップとを含む。
【0069】
さらに、前記線速度は1μm/s~1cm/sであり、好ましくは、前記線速度は10μm/s~2mm/sであり、より好ましくは、前記線速度は50μm/s~1mm/sである。
【0070】
さらに、前記せん断温度は0℃~200℃であり、好ましくは、前記せん断温度は20℃~150℃であり、より好ましくは、前記せん断温度は30℃~100℃である。
【0071】
有機単結晶の成長自体の制御が極めて難しく、電極を交差して均一に成長しかつ任意の形状及び任意のサイズの基板上にフルカバレッジを実現する形態を達成することはより難しく、環境温度、環境湿度、せん断ツールと基板の間の距離、静的核形成時間、完全に充填されているか否か、せん断の線形速度、せん断温度というこれらの条件は、全体的に細かな制御が必要となり、前記形態の有機半導体単結晶薄膜を作製するために、有機半導体分子に対する補助成長層の制御効果と合わせる必要がある。
【0072】
前記ステップ1)では、補助成長層を作製するための方法は、キャスト法、スピンコーティング法、溶液せん断法、浸漬法、気相自己組織化法などから選択されてもよい。補助成長層を溶液法で作製する場合、好ましくは、スピンコーティング法が使用され、適切な有機溶媒と調製温度を選択することで表面粗さを制御することができ、表面処理により親水性と疎水性を変化させることもできる。堆積されたソースドレイン電極の厚さ及び表面粗さは、蒸着速度と蒸発時間によって制御されてもよい。ここで、補助成長層と電極の間の上位型の接触方式は、まず補助成長層を堆積し、次に電極を堆積することにより実現されてもよく、埋め込み型の接触方式は、補助成長層を堆積した後、まず紫外線オゾン/レーザー/プラズマ衝撃などの手段により補助成長層の一部をエッチングし、エッチングされた窪み内に対応して電極を堆積することにより実現されてもよい。補助成長層上の電極の任意の配列方式は、上記の2つの方法の有機的な組み合わせによって実現されてもよい。前記補助成長層が電極の上に位置する場合、補助成長層は、有機半導体層と電極との分離を引き起こし、その結果、キャリアは、補助成長層に阻害され、電極から有機半導体層に直接注入することができず、デバイスが故障する。したがって、補助成長層と電極の間の上位型及び埋め込み型の接触方式は、有機半導体単結晶薄膜が、電極を交差して均一に成長することを実現するとともに、有機半導体デバイスの機能の完全性を保有することを、確保することができる。
【0073】
前記ステップ2)では、有機溶液を調製するときに、溶媒の揮発速度への影響を考慮する必要がある。好ましくは、沸点が高く、一定の共役系を有する有機溶媒を選択して有機溶液を調製し、最も好ましくは、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トリクロロベンゼン、デカヒドロナフタレン、テトラヒドロナフタレン、塩素化ナフタレンなどのベンゼン溶媒を選択することができ、有機単結晶半導体層の作製プロセスにおける溶液の揮発速度度を制御し、それによって結晶の形態を制御することができる。様々な溶媒を選択して溶液を混合及び調製することで、溶液の極性、揮発速度へのより細かい制御を実現することができる。有機半導体分子は、有機溶媒に十分に溶解される必要があり、例えば有機半導体分子は、50℃の高温ステージで一晩攪拌することにより、有機半導体溶液全体に十分に拡散し、均一に分布することができる。溶解が不十分であると、異質核形成ポイントが多すぎ、成長して得られた粒子のサイズが容易に小さすぎ、結晶は、電極を交差して均一に成長することができず、一方、溶質凝集固体の残骸は、結晶成長プロセスに結晶に包まれる可能性が高く、その結果、結晶の形態が凸凹して平らでなく、得られたデバイスの電気伝送性能が低下する。
【0074】
安定した成長環境を得るために、成長環境の環境湿度及び温度を正確に制御する必要がある。湿度が高すぎると、通常、水分子は、容易に補助成長層と電極の表面に吸着される。第1、有機半導体分子に対する補助成長層の調整効果を低減し、かつ、成長界面が補助成長層と電極の表面に位置するため、結晶成長が完了された後、成長界面が結晶で被覆されるため、水分を除去することが難しい。第2、水分は有機半導体の電子輸送に対して非常に大きなトラップであり、デバイスの電子輸送性能を大幅に低下させ、さらにはデバイスを非アクティブ化させる。第3、湿度が高くなると、有機半導体自体の安定性に影響を及ぼしやすい。成長環境の温度は、せん断プロセスにおける有機半導体溶媒の揮発速度、溶質濃度の勾配拡散に一定の影響を与え、かつ得られた有機半導体単結晶薄膜と基板の間の熱膨張係数の違いから、環境温度が高すぎたり低すぎたりすると、有機半導体薄膜は亀裂しやすい。
【0075】
せん断ツールと基板の間の距離は、前記間隔に残っている溶液の量に影響し、溶液の揮発に影響し、間隔が大きすぎると、溶液貯留空間と空気との接触面積が大きすぎ、溶媒の揮発が速すぎるため、結晶化速度が大幅に向上し、それによって結晶成長が無秩序に配向しやすくなり、一方、間隔が大きすぎると、せん断ツールによる溶液底部のせん断効果が低下する。間隔が小さすぎると、溶液貯留空間の体積が小さすぎ、十分な溶液を貯留することができず、有機半導体単結晶薄膜の連続性が破壊され、完全なカバレッジを達成することができず、かつ基板に垂直な方向の溶液の空間が狭すぎ、空間制限効果が生じ、結晶相には準安定状態から安定状態に変化するための十分な空間がなく、その結果、有機半導体単結晶薄膜には準安定状態があり、薄膜の全体的な品質が低下する。
【0076】
せん断ツールと基板の間の距離は、どこでも等しいことが好ましく、せん断ツールの下面が基板とほぼ平行であることを保証し、これは、間隔が大きいと、溶液貯留領域内の液滴が重力の作用により低い端に向かって傾斜しやすくなるためであり、その結果、基板の一部のみが有機半導体溶液でコーティングされてもよく、完全に被覆された有機半導体単結晶薄膜を得ることに不利である。したがって、適切かつ一定の間隔は、高品質の有機半導体単結晶薄膜を得る重要な条件である。
【0077】
有機半導体溶液がせん断ツールの十分なせん断を受けることができることを保証し、それによって取得された有機半導体単結晶薄膜の形態及び厚さの高さが均一になることを保証するために、有機半導体溶液は、溶液貯留空間全体をゆっくりと十分に満たす必要があり、充填速度が速すぎると、壁掛け現像が発生しやすく、これは、溶液貯留空間内の溶液に対して一定の乱れがあることに相当する。
【0078】
一定の時間静置すると、一部の溶媒をゆっくりと発揮させ、微量の結晶核を形成することができ、これにより、後でせん断の制御下で結晶は、容易に核形成ポイントから疑似一次元又は疑似二次元の形態で連続して成長する。静置する具体的な時間は、有機半導体分子の種類及び選択された有機溶媒の沸点に応じて選択されてもよい。
【0079】
せん断は、一定の方向に沿って一定の線速度と一定のせん断温度で実行される必要がある。溶液せん断のプロセスは、適切かつ一定のせん断温度範囲内で実行される必要があり、せん断温度の一定は、せん断温度の安定性を維持することであり、せん断温度が安定しないと、溶液の状態がせん断プロセスに乱れ、薄膜の不連続性又は形態変化が生じ、せん断温度の条件は、実際の状況に応じて調整されてもよく、せん断温度は、結晶の核形成及び成長速度と一致するように、せん断ツールの溶液せん断速度と合わせる必要がある。せん断温度が低すぎ、溶液をせん断するときに溶媒の揮発速度が遅すぎると、成長によって得られる単結晶の配向に不利であり、有機単結晶半導体層におけるキャリアの伝送効率が低下する。せん断温度が高すぎ、溶媒の揮発速度が速すぎると、有機半導体分子は、せん断ツールの下と基板の間に形成された溶液貯留領域で長時間停滞する可能性があり、取得された単結晶は、連続しなく、同時に、せん断温度が高すぎると、結晶薄膜の亀裂又は他の形態の破壊が発生し、デバイスの性能が低下する。一定の線速度及びせん断方向は、有機半導体単結晶の成長の配向及び薄膜の形態をより良く制御することに役立ち、溶液が一定の配向作用を受けるため、任意の形状及び任意のサイズの基板上の有機半導体単結晶薄膜のフルカバレッジを実現することができ、同時に、任意の形状及び任意のサイズの基板上の有機半導体単結晶薄膜のその場での無制限の連続成長を実現することができ、つまり、原材料が十分である条件下で、連続的かつ途切れなく成長して完全に被覆された有機半導体単結晶薄膜を取得することができる。結晶成長形態及び品質に対する線速度の不安定による変動の影響を回避するために、せん断と基板の間の相対移動の線速度は、溶液せん断中に一定に維持する必要がある。線速度が遅すぎると、溶液へのせん断効果がはっきりせず、結晶形態をより良く制御できず、配向の乱れが発生しやすく、線速度が速すぎると、溶液へのせん断効果が強すぎ、結晶の厚さが薄すぎ、結晶の表面粗さが増加し、結晶の品質が低下し、デバイスは正常に動作できない。
【0080】
上記の有機単結晶半導体構造の製造方法は、製造コストが低く、大規模化の生産が容易であり、柔軟に組み合わせやすい製造方法であり、この方法を使用して補助成長層と組み合わせると、予期しない結果が生じる。有機半導体溶液中の溶媒の揮発、溶質の析出に伴い、有機半導体分子は、せん断力の作用により、電極を交差する前(100)から電極を交差した後(104)までの一定の方向に沿った配向に配列して成長することができ、補助成長層の存在により、結晶は、有機半導体溶液と空気の接触界面で析出しやすくなり、有機半導体分子は、成長界面に垂直な方向の補助成長層と有機半導体分子及び溶媒分子との間の相互作用力、結晶成長方向に沿った有機半導体分子へのせん断力という両方向の助力を取得したと言え、これらの助力の有機的な組み合わせにより、有機半導体単結晶は、電極を交差した均一な成長を実現することができる。また、この製造方法により、有機半導体溶液の均一な貯留領域が提供され、非常に少量の溶液で、任意の形状及び任意のサイズの基板上に完全に被覆された有機半導体単結晶薄膜の作製を実現することができ、溶液を連続的に補充することにより、有機半導体単結晶薄膜のその場での無制限の成長を実現することができる。
【0081】
さらに、前記有機単結晶半導体構造の製造方法は、ステップ6)の後に有機半導体単結晶薄膜をさらに処理するステップをさらに含み、好ましくは、前記さらなる処理ステップは、熱処理、真空処理、溶媒アニーリング処理、表面処理のいずれか1つ又は複数から選択され、前記表面処理は、紫外線オゾン処理、プラズマ衝撃、赤外線処理、レーザーエッチングのいずれか1つ又は複数から選択される。
例えば、熱処理により、得られた有機半導体単結晶薄膜を高温ステージに置き、一定時間及び一定温度の熱処理により、残りの溶媒分子を除去する。
【0082】
前記さらなる処理により、結晶中の有機半導体分子の配列及び秩序度を変えることができ、それによって結晶の結晶形態を変え、又は得られた結晶の品質を向上させることができ、有機半導体単結晶薄膜のパターン化を実現することもできる。
前記電界効果トランジスタの製造方法は、前記有機単結晶半導体構造の製造方法において、ゲート及びゲート絶縁層の作製ステップをさらに含む。
【0083】
さらに、半導体デバイス、輸送・物流、鉱業・冶金、環境、医療機器、防爆検出、食品、水処理、製薬、生物学分野での上記の有機単結晶半導体構造、上記の有機単結晶効果トランジスタ、上記の光電デバイス及び上記の光電デバイス統合アレイ(それらの進化の概略図が
図23に示されている)の用途である。
【発明の効果】
【0084】
従来技術に比べて、本発明の有益な効果は以下のとおりである:
1)技術的偏見を克服して、電極を交差して均一に成長した形態の有機半導体単結晶薄膜を、ボトムコンタクト型構造の成長界面上で初めて取得する。
【0085】
2)有機半導体単結晶薄膜の有効被覆率を向上させると同時に、径方向と垂直方向の2つの次元の高有効被覆率を達成し、これにより、キャリアの伝送チャネルが最大化を達成し、性能に優れたデバイスの要求を満たす。
【0086】
3)できるだけ完全に被覆された有機半導体単結晶薄膜のその場での作製を、任意の形状及び任意のサイズのボトムコンタクト型基板上で実現し、完全に被覆された有機半導体単結晶薄膜を理論的にボトムコンタクト型構造上で作製できないという技術的偏見を克服する。
【0087】
4)均一に成長し、完全に被覆された有機半導体単結晶薄膜をボトムコンタクト型構造の成長界面上で得ると同時に、均一に成長し、完全に被覆された有機半導体単結晶薄膜の形態及び材料の単結晶状態の兼ねを満たし、理想的なデバイスの要求に達する。
【0088】
5)工業化の大規模生産を実現できる方法により、有機半導体単結晶の成長を制御し、形態が正確に制御された有機半導体単結晶薄膜を取得し、さらに、取得された有機半導体デバイスは、高性能のキャリア伝送を通常の動作電圧で実現することができる。
6)有機半導体単結晶薄膜のその場での無制限の成長は、任意の形状及び任意のサイズのボトムコンタクト型基板上で実現される。
【0089】
有機半導体デバイスの場合、ボトムコンタクト型構造上で最も理想的な材料を取得する(任意の形状、任意のサイズのボトムコンタクト型基板上で、できるだけ最大化された有効被覆率と均一な成長形態を有している有機半導体単結晶薄膜を実現する)ことができることは、現在の最大のボトルネックであり、本発明によって提供される製造方法は、技術的偏見を克服し、理想的な半導体デバイスの作製を実現し、先駆的な発明であり、本発明によって提供される方法に基づいて作製された有機半導体単結晶薄膜は、形態が規則的であり、厚さの高さが均一であり、配向が一致し、電極を交差して均一に成長することができ、任意の形状及び任意のサイズのボトムコンタクト型基板上でフルカバレッジを実現することができ、その場での無制限の成長を実現でき、大規模の作製が容易になり、作製された半導体デバイスは、容易に統合され、工業化の実現に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【
図1】一般的に使用される有機電界効果トランジスタデバイスの構造図であり、(a)はボトムゲート-トップコンタクト型であり、(b)はボトムゲート-ボトムコンタクト型、(c)はトップゲート-ボトムコンタクト型である。
【
図2】コプレーナ型及びスタッガード型デバイス構造のキャリア注入及び抽出原理の概略図であり、Coplanarがコプレーナ型であり、Staggeredがスタッガード型であり、Sourceがソース電極であり、Drainがドレイン電極であり、Gateがゲート電極であり、Gate dielectricがゲート絶縁層であり、Substrateが基板であり、CAZがキャリア蓄積領域である。
【
図3】ボトムゲート-トップコンタクト型デバイスとトップゲート-ボトムコンタクト型構造デバイスの抵抗の概略図である。
【
図4】本発明の有機単結晶半導体構造及び補助成長層と電極の接触方式の概略図であり、(a)は上位型接触方式であり、(b)は埋め込み型における埋め込み及び貫通の接触方式であり、(c)は有機単結晶半導体構造である。
【
図5】本発明の線形配列アレイの概略図及び有機単結晶線形要素のボディビューであり、aは線形要素の幅であり、bは線形要素の厚さであり、cは線形要素の長さであり、gは線形要素間のギャップの幅であり、c
L1、c
L2...c
Lmは、それぞれチャネル内の結晶の連続長さを表し、k
1、k
2...k
nは、それぞれ結晶とソースドレイン電極の間の接触の幅を表し、Lはチャネル長であり、Wはチャネル幅であり、Aは配向角である。
【
図6】本発明の有機単結晶電界効果トランジスタの構造図である。
【
図7】本発明の光電デバイスの統合アレイの効果の概略図である。
【
図8】実施例1の有機単結晶半導体構造の光学顕微鏡画像である。
【
図9】(a)は
図8に対応する光学顕微鏡画像の概略図であり、図(b)は図(a)の点線枠内の部分拡大図であり、電極を交差して均一に成長する概略図であり、(c-h)は不均一な成長の概略図であり、ここで、有機単結晶半導体構造は結晶の成長方向に沿って電極を交差して成長し、(100)は電極を交差する前の領域を表し、(101)及び(103)は電極のエッジ部の領域を表し、(102)は電極の中央部上の領域を表し、(104)は電極を交差した後の領域を表し、前記電極の中央部上の領域は有機半導体単結晶薄膜が電極の中央部上に被覆される領域を指す。
【
図10】電極を交差するときに形態が変化する有機半導体単結晶薄膜の直交偏光顕微鏡画像である。
【
図11】実施例1の有機単結晶半導体構造の直交偏光顕微鏡画像である。
【
図12】実施例1の有機単結晶半導体構造の原子間力顕微鏡画像及び高さデータグラフである。
【
図13】実施例7の有機単結晶半導体構造の光学顕微鏡画像である。
【
図14】比較例1の有機単結晶半導体構造の光学顕微鏡画像である。
【
図15】実施例4の有機単結晶電界効果トランジスタであり、V
DS=-60V、V
G=-60Vの動作電圧で得られたいくつかの典型的なデバイスの伝送特性曲線であり、V
DSがソースドレイン電圧であり、V
Gがゲート電圧である。
【
図16】実施例7の有機単結晶電界効果トランジスタであり、V
DS=-60V、V
G=-60Vの動作電圧で得られたいくつかの典型的なデバイスの伝送特性曲線である。
【
図17】比較例2の有機単結晶半導体構造の光学顕微鏡画像である。
【
図18】比較例3の有機単結晶電界効果トランジスタの構造図である。
【
図19】比較例3の有機単結晶電界効果トランジスタであり、V
DS=-60V、V
G=-60Vの動作電圧で得られた1つの典型的なデバイスの伝送特性曲線である。
【
図20】比較例4の有機単結晶半導体構造の光学顕微鏡画像である。
【
図21】比較例5の有機単結晶半導体構造の光学顕微鏡画像である。
【
図22】(a)及び(b)はそれぞれ文献で報告された概略図(W.Deng,W.Hu,and X.Zhang,Materials Today,24,17(2019))におけるFIGURE2(d)及びFIGURE4(a)である。
【発明を実施するための形態】
【0091】
以下に実施例及び図面を参照しながら本発明を詳しく説明する。なな、以下の実施例は、本発明を説明するためのものだけであるが、本発明の範囲を限定するものではない。また、本発明の教示を読んだ後、当業者は本発明に対して様々な変更又は修正を行うことができ、これらの同等の形態も本出願の添付の特許請求の範囲によって定義される範囲内にあることを理解すべきである。
【0092】
本発明の説明では、用語「上」、「下」、「左」、「右」、「垂直」、「平行」、「内」、「外」、「前」、「後」などに示される方位又は位置関係は、図面に基づいて示される方位又は位置関係であり、本出願を容易に説明及び簡略化するためのものだけであり、言及された装置又は素子が必ず特定の方位を有し、特定の方位で構築及び操作することを示し又は暗示するためのものではなく、したがって、本発明を制限するためのものと理解されるべきではない。
【0093】
図1に示すように、本発明に係る有機単結晶半導体デバイスは、基板、基板上に下から上に堆積された補助成長層、電極、有機単結晶半導体層を含み、前記有機単結晶半導体層が補助成長層上と電極の中央部上に成長し、前記有機単結晶半導体層は補助成長層及び電極と接触し、前記有機単結晶半導体層はその場で電極を交差して均一に成長した有機半導体単結晶薄膜である。
図8及び
図9(a-b)に示すように、上記の領域の光学顕微鏡写真では肉眼で区別できる明らかな違いがない。
図5、
図8、
図9(a-b)及び
図11に示すように、前記有機単結晶半導体層は、電極を交差して均一に成長することができる、線形に配列された有機小分子単結晶アレイである。
図4に示すように、前記補助成長層は、電極の下に位置し、前記電極は、上位型及び/又は埋め込み型の方式で前記補助成長層と接触する。前記上位型とは前記補助成長層の上面が電極の下面と接触していることを指し、前記埋め(嵌め)込み型とは電極が前記補助成長層に半分埋め込まれ、又は前記補助成長層を貫通していることを指し、前記電極は、補助成長層上に上位型、嵌め込み型のいずれか1つ又は2つの方式で配列されている。
【0094】
様々な実施例では、前記有機半導体単結晶薄膜は、有機半導体単結晶アレイであり、複数の結晶で構成される。本明細書で説明される目的から、有機半導体単結晶薄膜のうちの分離しかつ独立した各結晶が次の2つの特徴に合致する。1)電極を交差して、形態が基本的に変化しないように均一に成長することができる。
図5、
図8及び
図9(a-b)に示すように、黒い実線縞は結晶であり、電極と交差する前(100)、電極のエッジ部(101及び103)、電極の中央部上(102)及び電極の後(104)の結晶の形態が変化しない。2)各結晶は単結晶である。上記の2つの特徴を満たす結晶は線形要素と呼ばれる。好ましくは、前記線形要素は形態が疑似一次元(p1D:pseudo 1D)又は疑似二次元(p2D:pseudo 2D)であり、かつ厚さが均一である。
図5に示すように、複数の線形要素が結晶の成長方向に沿って同じ方向に配列している場合、それは線形配列と呼ばれる。
【0095】
当業者であれば、本明細書で使用される「線」という用語は、有機半導体単結晶薄膜のうち、上記の3つの特徴を満たす、分離しかつ独立した結晶を指すために便宜的に使用される用語に過ぎないことを理解し得る。
【0096】
図6に示すように、本発明は、上記の有機単結晶半導体構造に基づいて、上記の有機単結晶半導体構造及び上面に順次堆積されたゲート絶縁層とゲート電極を含むボトムコンタクト―トップゲート構造の有機単結晶電界効果トランジスタをさらに提供する。
図7に示すように、本発明によって提供される光電デバイスは、さらに1次元又は複数の次元で統合して光電デバイス統合アレイを得ることができ、前記光電デバイス統合アレイは、検出器、インバーター、発振器、発光ダイオードの制御回路バックプレーンなどに広く使用されてもよい。
【0097】
直交偏光子を備えた光学顕微鏡、原子間力顕微鏡、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡、レーザー共焦点ラマン分光計、単結晶回折計などの微細構造を分析するための器械によって有機単結晶薄膜を検出することができ、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡、レーザー共焦点ラマン分光計、X線回折計、赤外分光計などの要素構成を分析できる器械によって補助成長層を検出することができ、光学顕微鏡、原子間力顕微鏡、走査型電子顕微鏡、透過型電子顕微鏡などによって半導体デバイスの構造を検出することができ、半導体パラメータアナライザ、ホール効果テスター、走査型プローブ顕微鏡、強誘電体テスター、量子効率テスター、過渡分光計、太陽電池テスター、光電検出システム、マイクロ蛍光分光計、スペクトルテスター、導電率測定システムなどの光電性能を分析できる機器によって半導体デバイスの関連機能を検出することができる。
有機半導体単結晶薄膜の形態を特徴づけるために、光学顕微鏡を使用して管観測する。本発明によって提供される有機半導体単結晶薄膜の品質を特徴づけるために、本発明によって提供される有機半導体構造に基づいて、ボトムコンタクト型構造の電界効果トランジスタを作製し、半導体パラメータアナライザでその電界効果の電気的性能をテストする。
【0098】
実施例1:6,13-ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン(TIPS-pentacene)に基づくボトムコンタクト型有機単結晶半導体構造及びそれに基づくトップゲートボトムコンタクト型構造の電界効果トランジスタデバイスの製造方法は、以下のステップを含む。
【0099】
(1)厚さ575mのP型<100>シリコンウェーハを取り、シリコンウェーハ上に300nmの厚さの二酸化ケイ素絶縁層があり、シリコン基板上に架橋ポリスチレンをスピンコーティングして補助成長層を作製する。
【0100】
(2)ステップ(1)で作製された初期膜上に、厚さ約30nmのAuの長いストリップAuをソースドレイン電極として高真空下で熱蒸着法により堆積させ、補助成長層の上面を電極の下面に接触させ、接触方式が上位型である。
(3)成長環境の温度を20±1℃に、湿度を40±2%に制御する。
【0101】
(4)せん断ツールとステップ1)で作製された基板の間の間隔を150μmに調整し、かつせん断ツールの下面と基板の間の間隔がどこでも等しいことを保証する。
【0102】
(5)質量分率1wt%のTIPS-ペンタセン(TIPS-pentacene)溶液を調製し、加熱及び攪拌して完全に溶解した後、ピペットチップを使用して溶液を十分にゆっくりと溶液貯留空間に充填して、完全に充填されてから10s静置することを保証する。
【0103】
(6)400±5m/sの線速度でせん断ツールを使用して、溶液を、60℃の温度で、電極を交差する前(100)から電極を交差した後(104)までの一定の方向にゆっくりと均一にせん断する。続いて、有機単結晶半導体層を100℃で8h熱処理して、余分な溶媒を除去する。
【0104】
(7)有機単結晶半導体層上にゲート絶縁層をスピンコーティングし、厚さ約50nmのAuゲート電極を高真空で熱蒸着により堆積させて、有機単結晶電界効果トランジスタを作製する。
【0105】
基板は、一般的に使用される有機半導体デバイス基板から選択されてもよく、前記基板は、例えばシリコン基板(Si/SiO2)、金属酸化物基板(AlOx)などの硬質基板であってもよいし、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド(PI)ポリエチレンテレフタレートなどの柔軟なポリマー基板であってもよい。
【0106】
微細構造及び形態情報を抽出する光学顕微鏡及び原子間力顕微鏡を用いて、得られた有機半導体単結晶薄膜の構造及び形態を特徴付け、様々な半導体デバイス及び材料の総合的な電気的性能を検出する半導体パラメータアナライザを使用して電界効果トランジスタの電気的性能を特徴づける。特徴付け結果に応じて、本実施例で作製された有機半導体単結晶薄膜は、補助成長層と電極に成長し、有機半導体単結晶薄膜は、有機半導体単結晶アレイで構成され、前記有機半導体単結晶アレイの長手方向の形態は、電極を交差する前(100)、電極のエッジ部(101及び103)、電極の中央部上(102)、及び電極を交差した後(104)に、基本的に変化しない。対応する有機単結晶半導体構造は、補助成長層、電極、有機単結晶半導体層が基板上に下から上に順次堆積される順序を満たしている。
【0107】
実施例2:6,13-ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン(TIPS-pentacene)に基づくボトムコンタクト型有機単結晶半導体構造及びそれに基づくトップゲートボトムコンタクト型構造の電界効果トランジスタデバイスの製造方法。
【0108】
実施例2の電界効果トランジスタデバイスの製造方法について、実施例1を参照し、配合物及びプロセスパラメータは表1及び表2に示される。構造及び性能特徴付け方法は実施例1の方法と同じである。得られたデバイス性能は表4に示される。
【0109】
実施例3:6,13-ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン(TIPS-pentacene)に基づくボトムコンタクト型有機単結晶半導体構造及びそれに基づくトップゲートボトムコンタクト型構造の電界効果トランジスタデバイスの製造方法。
【0110】
実施例3の電界効果トランジスタデバイスの製造方法について、実施例1を参照し、配合物及びプロセスパラメータは表1及び表2に示される。構造及び性能特徴付け方法は実施例1の方法と同じである。得られたデバイス性能は表4に示される。
【0111】
実施例4:6,13-ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン(TIPS-pentacene)に基づくボトムコンタクト型有機単結晶半導体構造及びそれに基づくトップゲートボトムコンタクト型構造の電界効果トランジスタデバイスの製造方法。
【0112】
実施例4の電界効果トランジスタデバイスの製造方法について、実施例1を参照し、配合物及びプロセスパラメータは表1及び表2に示される。構造及び性能特徴付け方法は実施例1の方法と同じである。得られたデバイス性能は表4に示される。
【0113】
実施例5:6,13-ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン(TIPS-pentacene)に基づくボトムコンタクト型有機単結晶半導体構造及びそれに基づくトップゲートボトムコンタクト型構造の電界効果トランジスタデバイスの製造方法。
【0114】
実施例5の電界効果トランジスタデバイスの製造方法について、実施例1を参照し、配合物及びプロセスパラメータは表1及び表2に示される。構造及び性能特徴付け方法は実施例1の方法と同じである。得られたデバイス性能は表4に示される。
【0115】
実施例6:6,13-ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン(TIPS-pentacene)に基づくボトムコンタクト型有機単結晶半導体構造及びそれに基づくトップゲートボトムコンタクト型構造の電界効果トランジスタデバイスの製造方法。
【0116】
実施例6の電界効果トランジスタデバイスの製造方法について、実施例1を参照し、配合物及びプロセスパラメータは表1及び表2に示される。構造及び性能特徴付け方法は実施例1の方法と同じである。得られたデバイス性能は表4に示される。
【0117】
実施例7:6,13-ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン(TIPS-pentacene)に基づくボトムコンタクト型有機単結晶半導体構造及びそれに基づくトップゲートボトムコンタクト型構造の電界効果トランジスタデバイスの製造方法。
【0118】
実施例7の電界効果トランジスタデバイスの製造方法について、実施例1を参照し、配合物及びプロセスパラメータは表1及び表2に示される。構造及び性能特徴付け方法は実施例1の方法と同じである。得られたデバイス性能は表4に示される。
実施例8:ルブレン(Rubrene)に基づくボトムコンタクト型有機単結晶半導体構造及び製造方法。
【0119】
実施例8の有機単結晶半導体構造製造方法について、実施例1のステップ(1-6)を参照し、配合物及びプロセスパラメータは表1及び表2に示される。構造特徴付け方法は実施例1の方法と同じである。
【0120】
実施例9:6,13-ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン(TIPS-pentacene)に基づくボトムコンタクト型有機単結晶半導体構造及びその製造方法。
【0121】
実施例9の有機単結晶半導体構造製造方法について、実施例1のステップ(1-6)を参照し、配合物及びプロセスパラメータは表1及び表2に示される。構造特徴付け方法は実施例1の方法と同じである。
【0122】
実施例10:2,7-ジオクチル[1]ベンゾチエノ[3,2-b]ベンゾチオフェン(C8-btbt)に基づくボトムコンタクト型有機単結晶半導体構造及びそれに基づくトップゲートボトムコンタクト型構造の電界効果トランジスタデバイスの製造方法。
【0123】
実施例10の有機単結晶半導体構造製造方法について、実施例1のステップ(1-6)を参照し、配合物及びプロセスパラメータは表1及び表2に示される。構造及びデバイス性能特徴付け方法は実施例1の方法と同じである。
【0124】
実施例11:6,13-ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン(TIPS-pentacene)に基づくボトムコンタクト型有機単結晶半導体構造及びその製造方法。
【0125】
実施例11の有機単結晶半導体構造製造方法について、実施例1のステップ(1-6)を参照し、配合物及びプロセスパラメータは表1及び表2に示される。構造特徴付け方法は実施例1の方法と同じである。
【0126】
実施例12:2,7-ジオクチル[1]ベンゾチエノ[3,2-b]ベンゾチオフェン(C8-btbt)に基づくボトムコンタクト型有機単結晶半導体構造及びその製造方法。
【0127】
実施例12の有機単結晶半導体構造製造方法について、実施例1のステップ(1-6)を参照し、配合物及びプロセスパラメータは表1及び表2に示される。構造特徴付け方法は実施例1の方法と同じである。
【0128】
実施例13:2,7-ジオクチル[1]ベンゾチエノ[3,2-b]ベンゾチオフェン(C8-btbt)に基づくボトムコンタクト型有機単結晶半導体構造及びその製造方法。
【0129】
実施例13の有機単結晶半導体構造製造方法について、実施例1のステップ(1-6)を参照し、配合物及びプロセスパラメータは表1及び表2に示される。構造特徴付け方法は実施例1の方法と同じである。
【0130】
実施例14:2,7-ジオクチル[1]ベンゾチエノ[3,2-b]ベンゾチオフェン(C8-btbt)に基づくボトムコンタクト型有機単結晶半導体構造及びその製造方法。
【0131】
実施例14の有機単結晶半導体構造製造方法について、実施例1のステップ(1-6)を参照し、配合物及びプロセスパラメータは表1及び表2に示される。構造特徴付け方法は実施例1の方法と同じである。
【0132】
実施例15:2,7-ジオクチル[1]ベンゾチエノ[3,2-b]ベンゾチオフェン(C8-btbt)に基づくボトムコンタクト型有機単結晶半導体構造及びその製造方法。
【0133】
実施例15の有機単結晶半導体構造製造方法について、実施例1のステップ(1-6)を参照し、配合物及びプロセスパラメータは表1及び表2に示される。構造特徴付け方法は実施例1の方法と同じである。
【0134】
実施例16:2,7-ジオクチル[1]ベンゾチエノ[3,2-b]ベンゾチオフェン(C8-btbt)に基づくボトムコンタクト型有機単結晶半導体構造及びその製造方法。
【0135】
実施例16の有機単結晶半導体構造製造方法について、実施例1のステップ(1-6)を参照し、配合物及びプロセスパラメータは表1及び表2に示される。構造特徴付け方法は実施例1の方法と同じである。
【0136】
実施例17:6,13-ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン(TIPS-pentacene)に基づくボトムコンタクト型有機単結晶半導体構造及びその製造方法。
【0137】
実施例17の有機単結晶半導体構造製造方法について、実施例1のステップ(1-6)を参照し、配合物及びプロセスパラメータは表1及び表2に示される。構造特徴付け方法は実施例1の方法と同じである。
【0138】
実施例18:6,13-ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン(TIPS-pentacene)に基づくボトムコンタクト型有機単結晶半導体構造及びその製造方法。
【0139】
実施例18の有機単結晶半導体構造製造方法について、実施例1のステップ(1-6)を参照し、配合物及びプロセスパラメータは表1及び表2に示される。構造特徴付け方法は実施例1の方法と同じである。
【0140】
実施例19:2,8-ジフルオロ-5,11-ビス[2-(トリエチルシリル)エチニル]-アントラジチオフェン(Dif-tes-adt)に基づくボトムコンタクト型有機単結晶半導体構造及びそれに基づくトップゲートボトムコンタクト型構造の電界効果トランジスタデバイスの製造方法。
【0141】
実施例19の有機単結晶半導体構造製造方法について、実施例1のステップ(1-6)を参照し、配合物及びプロセスパラメータは表1及び表2に示される。構造及びデバイス性能特徴付け方法は実施例1の方法と同じである。
【0142】
実施例20:2,8-ジフルオロ-5,11-ビス[2-(トリエチルシリル)エチニル]-アントラジチオフェン(Dif-tes-adt)に基づくボトムコンタクト型有機単結晶半導体構造及びその製造方法。
【0143】
実施例20の有機単結晶半導体構造製造方法について、実施例1のステップ(1-6)を参照し、配合物及びプロセスパラメータは表1及び表2に示される。構造特徴付け方法は実施例1の方法と同じである。
【0144】
実施例21:2,8-ジフルオロ-5,11-ビス[2-(トリエチルシリル)エチニル]-アントラジチオフェン(Dif-tes-adt)に基づくボトムコンタクト型有機単結晶半導体構造及びその製造方法。
【0145】
実施例21の有機単結晶半導体構造製造方法について、実施例1のステップ(1-6)を参照し、配合物及びプロセスパラメータは表1及び表2に示される。構造特徴付け方法は実施例1の方法と同じである。
実施例22:ペリレン(Perylene)に基づくボトムコンタクト型有機単結晶半導体構造及びその製造方法。
【0146】
実施例22の有機単結晶半導体構造製造方法について、実施例1のステップ(1-6)を参照し、配合物及びプロセスパラメータは表1及び表2に示される。構造特徴付け方法は実施例1の方法と同じである。
実施例23:9,10-ジフェニルアントラセン(9,10-DPA)に基づくボトムコンタクト型有機単結晶半導体構造及びその製造方法。
【0147】
実施例23の有機単結晶半導体構造製造方法について、実施例1のステップ(1-6)を参照し、配合物及びプロセスパラメータは表1及び表2に示される。構造特徴付け方法は実施例1の方法と同じである。
【0148】
実施例24:6,13-ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン(TIPS-pentacene)に基づくボトムコンタクト型有機単結晶半導体構造及びその製造方法。
【0149】
実施例24の有機単結晶半導体構造製造方法について、実施例1のステップ(1-6)を参照し、配合物及びプロセスパラメータは表1及び表2に示される。構造特徴付け方法は実施例1の方法と同じである。
【0150】
比較例1:6,13-ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン(TIPS-pentacene)に基づくボトムコンタクト型有機単結晶半導体構造及びそれに基づくトップゲートボトムコンタクト型構造の有機単結晶電界効果トランジスタデバイスの製造方法は、以下のステップを含む。
(1)厚さ200μmのPEN基板を取り、高真空下で熱蒸着法により、厚さ約30nmの長いストリップのAuを堆積させてソースドレイン電極とする。
(2)成長環境の温度を25±1℃に、湿度を50±2%に制御する。
【0151】
(3)せん断ツールとステップ1)で作製された基板の間の間隔を300μmに調整し、かつせん断ツールの下面と基板の間の間隔がどこでも等しいことを保証する。
【0152】
(4)質量分率1wt%のTIPS-ペンタセン(TIPS-pentacene)溶液を調製し、加熱及び攪拌して完全に溶解した後、ピペットチップを使用して溶液を十分にゆっくりと溶液貯留空間に充填して、完全に充填されてから10s間静置することを保証する。
【0153】
(5)400±10m/sの線速度でせん断ツールを使用して、溶液を、60℃の温度で、電極を交差する前(100)から電極を交差した後(104)までの一定の方向にゆっくりと均一にせん断する。続いて、有機単結晶半導体層を100℃で8h熱処理して、余分な溶媒を除去する。
【0154】
(6)有機単結晶半導体層上にゲート絶縁層をスピンコーティングし、厚さ約50nmのAuゲート電極を高真空で熱蒸着により堆積させて、有機単結晶電界効果トランジスタを作製する。
比較例1の構造及びデバイス性能特徴付け方法は実施例1の方法と同じである。
【0155】
実施例2:6,13-ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン(TIPS-pentacene)に基づくボトムコンタクト型有機単結晶半導体構造及びそれに基づくトップゲートボトムコンタクト型構造の有機単結晶電界効果トランジスタデバイスの製造方法は、以下のステップを含む。
【0156】
(1)厚さ575μmのP型<100>シリコンウェーハを取り、シリコンウェーハ上に300nmの厚さの二酸化ケイ素絶縁層があり、シリコン基板上に架橋ポリスチレンをスピンコーティングして補助成長層を作製する。
【0157】
(2)ステップ(1)で作製された初期膜上に、厚さ約30nmの長いストリップ状のAuを高真空下で熱蒸着法により堆積させてソースドレイン電極とし、補助成長層と電極の接触方式が上位型である。
(3)成長環境の温度を25±1℃に、湿度を50±2%に制御する。
【0158】
(4)質量分率0.1wt%のTIPS-ペンタセンメシチレン溶液を調製し、十分に溶解した後、ステップ(2)で調製された基板上に、60℃の温度で液滴固定結晶化法(DPC)により半導体単結晶層を作製する。続いて、有機単結晶半導体層を100℃で8h熱処理して、余分な溶媒を除去する。
【0159】
(5)有機単結晶半導体層上にゲート絶縁層をスピンコーティングし、厚さ約50nmのAuゲート電極を高真空で熱蒸着により堆積させて、有機単結晶電界効果トランジスタを作製する。
比較例2の構造及びデバイス性能特徴付け方法は実施例1の方法と同じである。
【0160】
比較例3:6,13-ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン(TIPS-pentacene)に基づくボトムゲート-トップコンタクト型の有機単結晶電界効果トランジスタデバイスの製造方法は、以下のステップを含む。
【0161】
(1)厚さ575mのP型<100>シリコンウェーハを取り、シリコンウェーハ上に300nmの厚さの二酸化ケイ素絶縁層があり、シリコン基板上に架橋ポリスチレンをスピンコーティングして補助成長層を作製する。
(2)成長環境の温度を20±1℃に、湿度を50±2%に制御する。
【0162】
(3)せん断ツールとステップ1)で作製された基板の間の間隔を150μmに調整し、かつせん断ツールの下面と基板の間の間隔がどこでも等しいことを保証する。
【0163】
(4)質量分率0.1wt%のTIPS-ペンタセンメシチレン溶液を調製し、十分に溶解した後、ステップ(1)で作製された基板上に、400±10mμ/sの線速度でせん断ツールを使用して、溶液を、60℃の温度で、電極を交差する前(100)から電極を交差した後(104)までの一定の方向にゆっくりと均一にせん断する。続いて、有機単結晶半導体層を100℃で8h熱処理して、余分な溶媒を除去する。
【0164】
(5)有機単結晶半導体層上にゲート絶縁層をスピンコーティングし、厚さ約50nmのAuソースドレイン電極を高真空で熱蒸着により堆積させて、有機単結晶電界効果トランジスタを作製する。
比較例3の構造及びデバイス性能特徴付け方法は実施例1の方法と同じである。
【0165】
比較例4:26,13-ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン(TIPS-pentacene)に基づくボトムコンタクト型有機単結晶半導体構造及びその製造方法。
【0166】
比較例4の有機単結晶半導体構造製造方法について、実施例1のステップ(1-6)を参照し、配合物及びプロセスパラメータは表1及び表2に示される。構造及びデバイス性能特徴付け方法は実施例1の方法と同じである。
【0167】
比較例5:6,13-ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン(TIPS-pentacene)に基づくボトムコンタクト型有機単結晶半導体構造及びその製造方法。
比較例5の有機単結晶半導体構造製造方法について、実施例1のステップ(1-6)を参照し、配合物及びプロセスパラメータを表1及び表2に示す。
構造特徴付け方法は実施例1の方法と同じである。
【0168】
比較例6:6,13-ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン(TIPS-pentacene)に基づくボトムコンタクト型有機単結晶半導体構造及びその製造方法。
【0169】
比較例6の有機単結晶半導体構造製造方法について、実施例1のステップ(1-6)を参照し、配合物及びプロセスパラメータは表1及び表2に示される。構造特徴付け方法は実施例1の方法と同じである。
【0170】
比較例7:6,13-ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン(TIPS-pentacene)に基づくボトムコンタクト型有機単結晶半導体構造及びその製造方法。
【0171】
比較例7の有機単結晶半導体構造製造方法について、実施例1のステップ(1-6)を参照し、配合物及びプロセスパラメータは表1及び表2に示される。構造特徴付け方法は実施例1の方法と同じである。
【0172】
比較例8:6,13-ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン(TIPS-pentacene)に基づくボトムコンタクト型有機単結晶半導体構造及びその製造方法。
【0173】
比較例8の有機単結晶半導体構造製造方法について、実施例1のステップ(1-6)を参照し、配合物及びプロセスパラメータは表1及び表2に示される。構造特徴付け方法は実施例1の方法と同じである。
【0174】
比較例9:6,13-ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン(TIPS-pentacene)に基づくボトムコンタクト型有機単結晶半導体構造及びその製造方法。
【0175】
比較例9の有機単結晶半導体構造製造方法について、実施例1のステップ(1-6)を参照し、配合物及びプロセスパラメータは表1及び表2に示される。構造特徴付け方法は実施例1の方法と同じである。
【0176】
比較例10:6,13-ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン(TIPS-pentacene)及びポリスチレン(PS)に基づくボトムコンタクト型有機半導体構造及びその製造方法。
(1)厚さ575mのP型の高ドープされた<100>シリコンウェーハを取り、シリコンウェーハ上に300nmの厚さの二酸化ケイ素絶縁層がある。
【0177】
(2)ステップ(1)で作製された初期膜上に、厚さ約30nmの長いストリップ状のAuを高真空下で熱蒸着法により堆積させてソースドレイン電極とし、補助成長層と電極の接触方式が上位型である。
(3)成長環境の温度を25±1℃に、湿度を40±2%に制御する。
【0178】
(4)せん断ツールとステップ1)で作製された基板の間の間隔を250μmに調整し、かつせん断ツールの下面と基板の間の間隔がどこでも等しいことを保証する。
【0179】
(5)質量分率5wt%のTIPS-ペンタセンメシチレン:PS=1:1のメシチレン溶液を調製し、十分に溶解した後、ステップ(1)で作製された基板上に、400±10μm/sの線速度でせん断ツールを使用して、溶液を、60℃の温度で、電極を交差する前(100)から電極を交差した後(104)までの一定の方向にゆっくりと均一にせん断する。続いて、有機半導体層を100℃で8h熱処理して、余分な溶媒を除去する。
比較例10の構造及びデバイス性能特徴付け方法は実施例1の方法と同じである。
【0180】
比較例11:6,13-ビス(トリイソプロピルシリルエチニル)ペンタセン(TIPS-pentacene)に基づくボトムコンタクト型有機単結晶半導体構造及びその製造方法。
【0181】
(1)質量分率1wt%のTIPS-ペンタセンメシチレン溶液を調製し、十分に溶解した後、キャスト法により、シリコンウェーハ上に有機半導体単結晶薄膜を作製する。
(2)ステップ(1)で作製された有機半導体単結晶薄膜にPDMS薄膜を注ぎ、60℃で2h焼き、12h静置する
【0182】
(3)PDMS薄膜を剥がし、薄膜上の有機半導体単結晶を、厚さ30nmのストリップ状のAuを高真空で、熱蒸着により予め堆積してソースドレイン電極とするシリコン基板上に転写する。
比較例11の構造及びデバイス性能特徴付け方法は実施例1の方法と同じである。
【0183】
実施例1~24及び比較例1~11で得られた有機単結晶半導体層の形態を偏光顕微鏡及び原子間力顕微鏡で特徴付けて、デバイスの性能を半導体パラメータ分析器でテストする。光学顕微鏡法は、有機半導体単結晶薄膜の形態を観測するための簡単で効果的な方法である。有機単結晶は、その内部分子が高度に秩序化して周期的に配列しているため、異方性がある。光学顕微鏡の直交直線偏光下では、異方性物体は、複屈折の性質を示し、結晶成長の方向が偏光角に垂直又は平行である場合、均一な色と明暗の変化が発生するか否かを観察することで、結晶軸が視野内で高度に配向されているか否かを判断し、それによってその単結晶性を判断する(A. Yamamura、T。Okamoto、J。Takeya、Science Advancas、4、eaao5758、(2018))。偏光顕微鏡写真では、色又はグレースケールが不均一(non-uniform)であり、又は色が変化すると、得られた結晶が単結晶ではないことを示し、例えば、
図10(b-f)に示すように、得られた有機半導体層には、色合いが異なる色パッチを観察でき、色又はグレースケールが均一ではなく、得られた有機半導体層の結晶形態が多結晶であることを示している。結晶の色又はグレースケールが基本的に均一(uniform)である場合、結晶は単結晶である(例えば、
図11に示すように、各結晶の色又はグレースケールが基本的に均一であり、異なる結晶間の色又はグレースケールも基本的に同じであり、これは典型的な有機単結晶薄膜が得られることを示している)。表3は実施例1~24と比較例2~4で得られた有機単結晶半導体構造の形態パラメータである。
【0184】
図8及び
図11は、それぞれ、実施例1で作製された有機単結晶電界効果トランジスタの50倍光学顕微鏡画像及び直交偏光光学顕微鏡画像であり、
図8の矢印は結晶の成長方向を表し、中央部分の横ストリップ状のものは蒸着された電極であり、電極の上下の部分はチャネルであり、結晶の成長方向に沿った垂直ストリップ状のものは成長した結晶であり、TIPS-ペンタセン(Tips-pentacene)のリボン状の単結晶は、チャネルと電極に秩序化した配向配列を示すことがわかり、各結晶は、平面視で観測すると線形である。
図8の50倍光学顕微鏡画像及びそれに対応する
図11の直交偏光光学顕微鏡画像において、電極とチャネル上で成長する結晶の形態に明らかな違いがなく、即ち結晶は、その場での成長プロセスにおいて、電極を交差する前(100)、電極のエッジ部(101及び103)、電極の中央部上(102)、及び電極を交差した後(104)の形態が基本的に変化せず、その概略図が
図9(a)に示され、これは、その場で電極を交差して均一に成長する有機半導体単結晶薄膜が作製されたことを示している。
図11に示すように、実施例1で得られた有機半導体単結晶薄膜は、偏光モードで単結晶において均一な色と明暗を呈し、これは、得られた配向結晶が単結晶であることを示している。得られた個々の分離している結晶は、線形要素の2つの条件を満足しており、これは、線形要素が得られたことを示す。各実施例の補助成長層と水の接触角のデータは表4に示される。実施例1では、架橋ポリスチレンは、一定の共役構造を有する補助成長層として選択され、その水接触角がCA
water>90°であり、コアに5つのベンゼン環が含まれるTips-ペンタセン(Tips-pentacene)との一定の相互作用を持ち、その結果、成長プロセスにおけるTips-ペンタセン結晶への電極の高さの影響は、大幅に軽減され、結晶がチャネルと電極の接合位置に断裂しなく、前記電極を交差して均一に成長することにより、結晶は、電極と接触する位置に粒界が現れなく、キャリアの効果的な輸送機能を実現することが保証される。
【0185】
図8に示すように、得られた有機半導体単結晶薄膜の配向が一致しており、画像画素点を分析できるソフトウェア(例えば、Image Jソフトウェア、Matlab、Photoshop、Adobe Illustratorなど、本発明ではImage Jソフトウェアを例とする)を使用して分析して、各結晶と結晶成長方向との間に形成された配向角A(ランダムで抽出された1.336°、3.547°、1.119°、2.770°、2.406°、2.392°、2.915°、2.840°、3.925°、3.195°という10個の結晶を例とする)を計算することができ、得られた平均配向角`Aが2.645°であり、配向度がF=0.997であり、配向度が良い。また、結晶の色は基本的に均一であり、これは、作製した有機半導体単結晶薄膜の厚さが基本的に均一であり、結晶の幅及び結晶間の隙間の大きさが基本的に均一であることを示し、さらに、結晶の形態がせん断ツールのせん断作用により、正確に制御されることを示し、ボトムコンタクト型電極上の線形配列が実現される。
【0186】
図12は、画像処理機能を備えたソフトウェア(例えばNano Scope Analysis、Matlabなど、本発明ではNano Scope Analysisソフトウェアを例とする)によって処理された後の原子間力顕微鏡によって特徴付けられた実施例1の結晶薄膜の形態の画像であり、さらに結晶の水平方向の幅及び垂直方向の厚さの均一性が高い(結晶の厚さbがそれぞれ12.8nm、12.2nm、12.1nm、12.7nm、12.7nm、12.3nm、12.4nm、12.4nmであり、平均厚さ`bが12.45nmであり、標準偏差が0.24nmであり、変動係数が0.24/12.45*100%=1.92%である)ことを示しており、これにより、線形要素間の配向が一致していることがわかり、これは、線形に配列された有機半導体単結晶薄膜が得られたことを示す。
【0187】
また、実施例2~6及び実施例8~24で得られた有機半導体単結晶薄膜の形態は、
図8と類似し、結晶の厚さb及び幅aがわずかに変化し、ここでは説明を省略する。
図13は実施例7で作製された有機単結晶電界効果トランジスタの50倍偏光顕微鏡画像であり、灰色の部分が基板であり、結晶が基板と電極上で途切れなく連続的に成長していることもわかり、結晶形態は疑似一次元で、リボン状であり、結晶ギャップは、チャネルに非常に小さく、肉眼で区別されることが困難である。
図8、
図9(a-b)及び
図11-13では、チャネルでの結晶の被覆面積が大きく、結晶間のギャップが小さいことがわかり、Image Jソフトウェアにより分析及び計算された実施例1の有機半導体単結晶薄膜の径方向の有効被覆率f
crは
【0188】
100%(f
cr= (c
L1+c
L2+…+c
L5)/(L
1+L
2+…+L
5) = (101.2μm+98.7μm+99.5μm+104.1μm+108.7μm)/(101.2μm+98.7μm+99.5μm+104.1μm+108.7μm)=100%)であり、垂直方向の有効被覆率f
cpは79.88%(f
cp=(k
1+k
2+…+k
46)/W= (3.8μm+3.3μm+3.6μm+4.1μm+4.4μm+4.6μm+3.8μm+4.1μm+3.8μm+3.6μm+3.6μm+3.3μm+3.6μm+2.8μm+3.3μm+3.8μm+4.1μm+4.9μm+4.1μm+3.8μm+4.1μm+3.8μm+3.6μm+2.6μm+4.4μm+4.4μm+4.6μm+3.6μm+3.3μm+4.6μm+3.6μm+4.4μm+3.1μm+4.4μm+4.9μm+4.1μm+4.9μm+4.6μm+6.4μm+5.4μm+4.6μm+3.6μm+4.6μm+4.4μm+3.8μm+4.6μm)/234.2=79.88%)、ギャップgは約0.72μmであり、フルカバレッジが実現される。電極を交差する前後の結晶の幅の変化が|R|<5%である。結晶の長さcは十数ミリメートルレベルであり、結晶の幅aは数ミクロンであり、
図11の原子間力顕微鏡で測定した結晶の厚さのデータと組み合わせると、結晶の厚さbは十数nmであり、明らかに、c/a>500、c/b>500であり、典型的には、疑似一次元の形態である。
【0189】
実施例1~5、実施例7、実施例10、実施例19及び比較例3~4、比較例10~11で作製された有機電界効果トランジスタのゲート電極を負電圧に接続させ、ソース電極を接地させ、ドレイン電極を負電圧に接続させ、V
DS=-60V、V
G=-60Vの動作電圧下でのデバイスの伝送特性曲線をテストし、計算された飽和領域の移動度及び閾値電圧の結果を表5に示し、正孔移動度パラメータは、キャリア移動度の一つに属し、正孔移動度の値が高いほど、電荷伝送が速くなり、デバイスの効率が高いほど、閾値電圧の絶対値が小さくなり、通常、これは、接触抵抗がより小さく、動作電圧の損失が少なく、デバイスの動作モードが理想的な状態により近くなることを示す。表5から、実施例7で作製された可撓性有機単結晶電界効果トランジスタの移動度が最も高いことがわかる。せん断ツールを使用して溶液をせん断するときのせん断線速度とせん断温度は、デバイスの性能に大きな影響を与え、実施例4で選択されたせん断温度と線速度で作製された有機単結晶電界効果トランジスタは、無機基板上での性能が最も良い。
図15は実施例4で作製された有機単結晶電界効果トランジスタにおけるいくつかの典型的な特性移動グラフであり、性能が比較的均一であることがわかる。
図16は実施例7で作製された有機単結晶電界効果トランジスタのいくつかの特性移動グラフである。
図15及び
図16の両方は、本発明の方法によって調製された有機単結晶電界効果トランジスタが優れた伝送性能を有することを示している。
【0190】
トップゲートボトムコンタクト型構造の有機単結晶電界効果トランジスタの結晶形態に対する補助成長層の影響を説明するために、比較例1では、実施例7と同様の操作工程に従って、補助成長層を欠く装置を作製した。
図14は、比較例1で得られた結晶の形態を示している。結晶は修飾されない基板上で連続的に成長することができず、かつ結晶自体の形態は不規則であり、多くの分岐を呈し、結晶の幅は均一ではない。得られた電界効果トランジスタは、性能が測定できない。トップゲート-ボトムコンタクト型構造デバイスにおける有機半導体単結晶薄膜の成長に対する補助成長層の必要性について説明する。
【0191】
本発明によって提供される製造方法の利点を説明するために、比較例2で従来技術を採用して文献(H.Li、BCK Tee、およびG.Giri、Advanced Materials、24、2588(2012))における液滴固定結晶化法(DPC)によって作製されたデバイスは、その結晶形態が
図17に示され、外力による剪断作用を受けずに結晶の配向度を低下させることができ、結晶が呈している色合いが均一ではなく、これは、DPC法で作製された有機単結晶半導体層が厚さに対する正確な制御を実現することができないことを示す。また、結晶の幅がより大きいが、チャネル内の有効被覆率が大幅に(~50%)低下し、結晶の配向度も大幅に低下し、結晶の形状が不規則になり、分岐及び幅の変化が|R|=28%と顕著な場合があり、この有機半導体単結晶薄膜に基づいて作製されたデバイスの性能は、表5に示され、実施例1とよりも低く、正孔移動度は0.34cm
2V
-1s
-1だけであり、閾値電圧が大きくなり、これは、不規則な結晶形態と低い有効被覆率がデバイスの性能を低下させることを示している。
【0192】
デバイス構造の影響を説明するために、比較例3では、実施例2と同じ溶液せん断線速度及びせん断温度で、ボトムゲートトップコンタクト型の有機単結晶電界効果トランジスタを作製し、比較例3のデバイス構造は、
図18に示され、
図19は比較例3で作製された有機単結晶電界効果トランジスタの典型的な移動特性グラフであり、表5の結果から、実施例2と比較して、その閾値電圧が大幅に上昇し、デバイスの実際の動作状況に不利であり、ソースドレイン電極が蒸着されるときの結晶表面への熱損失が原因である可能性が非常に高い。
トップゲート-ボトムコンタクト型有機単結晶半導体デバイスの利点と実用性について説明する。
【0193】
製造方法における各条件の正確な制御の必要性を説明するために、比較例4~8では実施例1と同じ有機半導体小分子、溶媒、溶液のせん断線速度及びせん断温度を使用するが、得られた薄膜の形態は、
図20及び
図21に示され、均一に成長した有機半導体単結晶薄膜が得られていないことがわかり、これは、線速度の安定性(比較例4の線速度が一定ではない)、環境湿度(比較例6の環境湿度が高すぎる)、環境温度(比較例7の環境温度が高すぎかつ温度が一定ではない)、せん断ツールと基板の間の間隔(比較例8でせん断ツールと基板の間の間隔が大きすぎる)、静的核形成時間(比較例4~5で静的核形成時間が長すぎ又は短すぎる)への制御が要求に達しないため、結晶の成長環境が様々な干渉を受け、溶液の揮発速度及び溶質の堆積速度が正確に制御されておらず、望ましくない薄膜形態が得られ、結晶が凸凹して平らでなく、厚さが大きく異なり、配向が乱雑であり、多くの粒界とブレークポイントが現れるためである。比較例4の薄膜に基づいて作製された半導体デバイスの性能を表5に示す。性能は、形態が良い有機単結晶薄膜半導体デバイスよりもはるかに低い。
比較例5~8では、薄膜が全く得られないが、溶質の蓄積点が少ないため、半導体デバイスを製造することができない。
【0194】
補助成長層が適切な水接触角CA
water範囲を選択する必要があることを説明するために、比較例9では超疎水性材料は、補助成長層として使用され、その水接触角CAwaterが表4に示すように、120°を超え、溶液がこの補助成長層上に拡散することができないため、結晶が成長しにくく、有機半導体単結晶薄膜を取得することができず、その形態が
図21と類似し、デバイスを作製することができない。
【0195】
比較例10では有機半導体小分子と絶縁高分子をブレンドすることで有機半導体デバイスを取得し、このような有機半導体薄膜は、単結晶カテゴリに属しなく、偏光現象が観測できず、これに基づいて製造されたデバイスの性能は表5に示されるが、相互分離の作用により、絶縁高分子が接触抵抗を増大させ、得られた有機半導体デバイスは接触不良であり、性能も優れず、これは、本発明によって提供された有機半導体単結晶薄膜に基づいて作製された有機半導体単結晶デバイスの性能の優位性を示す。
【0196】
比較例11では、転写法における一般的な物理的転写法を使用して、シリコンウェーハ上にプレキャストされた有機半導体単結晶薄膜を、ソースドレイン電極が堆積された基板に転写することによって得られた結晶は、不完全であり、多くの結晶は、完全性を保証する場合で転写することができず、かつ転写方法のステップが多いため、基板に転写された結晶も容易に破壊及び汚染され、引き裂きプロセスに、結晶の表面に多くの亀裂が現れ、電極を交差して均一に成長した有機半導体単結晶薄膜を取得することができず、取得された有機半導体単結晶薄膜の面積は小さすぎて、性能に優れたデバイスを作製することができない。表5に示すように、比較例11で作製されたデバイスの性能は、実施例1と比較して、正孔移動度がわずか0.02cm2V-1s-1だけであり、少なくとも1桁低下する。その閾値電圧は-39Vと高く、高絶対値の閾値電圧は、得られた結晶薄膜と電極との接触が非常に悪く、キャリアの注入及び抽出に深刻な影響を与えることを証明しており、かつテストプロセスにおいて、多くのデバイスの電極が完全に導通できないという現像が観察され、一部のデバイスの電気的性能を取得することができない。上記の比較により、本発明によって提供される有機半導体単結晶アレイのその場での成長の利点をさらに説明する。
【0197】
比較例1~11から、理想的な有機半導体単結晶デバイスの作製を実現するために、ボトムコンタクト型構造のデバイスにその場で電極を交差して均一に成長する有機半導体単結晶薄膜を実現する必要があり、つまり、デバイスは、以下の4つの条件を同時に満たす必要がある:1)基板上に補助成長層、電極、有機単結晶半導体層が下から上に堆積される。2)前記有機単結晶半導体層は、補助成長層及び電極上にその場で成長し、前記有機単結晶半導体層は、補助成長層及び電極と接触している。3)有機単結晶半導体層は、その場で電極を交差して均一に成長した有機半導体単結晶薄膜である。4)前記電極は補助成長層と接触しており、かつ補助成長層の外側にある突起部を有し、前記電極は、上位型及び/又は嵌め込み型で前記補助成長層と接触し、前記上位型とは前記補助成長層の上面が電極の下面と接触していることを指し、前記埋め込み型とは電極が前記補助成長層に半分埋め込まれ、又は前記補助成長層を貫通していることを指す。上述した4つの条件は、全体的に相乗し、共同で作用し、それによって本発明の目的を達成する。
【0198】
表1 実施例1~24及び比較例1~11の配合物及びプロセスパラメータA(基地局、補助成長層、有機半導体材料、せん断温度及びせん断線速度)
**実際に使用されるプロセスパラメータ(せん断温度及びせん断線速度を含む)と表に示されているパラメータは±2%の偏差が許容される。
【0199】
表2 実施例1~24及び比較例1~11の配合物及びプロセスパラメータB(静置時間、環境温度、環境湿度、間隔及び電極と補助成長層の接触方式)
**実際に使用されるプロセスパラメータ(静置時間、環境温度、環境湿度、間隔を含む)と表に示されているパラメータは±2%の偏差が許容される。
【0200】
表3 実施例1~24と比較例2~4の有機単結晶半導体構造の形態パラメータ
【0201】
**実際に得られた結晶形態パラメータ(径方向の有効被覆率fcr、垂直方向の有効被覆率fcp、線形要素の形態におけるc/a、c/b、a/b、配向度F、厚さb、ギャップgを含む)と表に示されている検出により得られたパラメータは、±3%の偏差が許容される。
【0202】
表4 実施例1~24及び比較例1~10における補助成長層と水の間の接触角のCA
waterパラメータ
**実際に得られた接触角CA
waterパラメータと表1に示されている検出により得られたパラメータは、±3%の偏差が許容される。
【0203】
表5 実施例1~5、実施例7、実施例10、実施例19及び比較例3~4、比較例10~11のV
DS=-60V、V
G=-60Vの動作電圧での有機単結晶電界効果トランジスタの飽和領域移動度と閾値電圧の性能統計