IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社匠の特許一覧 ▶ 株式会社ケンコントロールズの特許一覧 ▶ 株式会社石井工作研究所の特許一覧

<>
  • 特許-無人搬送車 図1A
  • 特許-無人搬送車 図1B
  • 特許-無人搬送車 図1C
  • 特許-無人搬送車 図1D
  • 特許-無人搬送車 図2
  • 特許-無人搬送車 図3
  • 特許-無人搬送車 図4
  • 特許-無人搬送車 図5A
  • 特許-無人搬送車 図5B
  • 特許-無人搬送車 図6
  • 特許-無人搬送車 図7
  • 特許-無人搬送車 図8
  • 特許-無人搬送車 図9
  • 特許-無人搬送車 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-13
(45)【発行日】2023-09-22
(54)【発明の名称】無人搬送車
(51)【国際特許分類】
   B62D 61/10 20060101AFI20230914BHJP
   B62D 63/02 20060101ALI20230914BHJP
   B62D 57/02 20060101ALI20230914BHJP
   B60B 19/00 20060101ALI20230914BHJP
   B61B 13/00 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
B62D61/10
B62D63/02
B62D57/02 P
B60B19/00 D
B61B13/00 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2022188671
(22)【出願日】2022-11-25
【審査請求日】2022-12-05
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520037784
【氏名又は名称】株式会社匠
(73)【特許権者】
【識別番号】591191309
【氏名又は名称】株式会社ケンコントロールズ
(73)【特許権者】
【識別番号】595065323
【氏名又は名称】REALIZE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001601
【氏名又は名称】弁理士法人英和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小坂 裕
(72)【発明者】
【氏名】首藤 洋助
(72)【発明者】
【氏名】白土 高浩
(72)【発明者】
【氏名】吉山 寿人
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105730553(CN,A)
【文献】国際公開第2020/049960(WO,A1)
【文献】特表2022-536562(JP,A)
【文献】特開平08-207754(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 61/10
B61B 13/00
B62D 63/02-63/04
B62D 57/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースフレームと、このベースフレームの上側に配置された揺動フレームと、この揺動フレームの上側に支持機構を介して配置された荷台フレームとを含む無人搬送車であって、
前記ベースフレームの左右両側には一対の主動輪が同軸に取り付けられ、前記ベースフレームの前側には固定アームを介して従動前輪部が取り付けられ、前記ベースフレームの後側には揺動アームを介して従動後輪部が取り付けられ、
前記従動前輪部は複数の従動輪を含む従動前輪ユニットであり、この従動前輪ユニットは前記固定アームに対して左右方向に搖動可能に取り付けられ、
前記従動後輪部は複数の従動輪を含む従動後輪ユニットであり、この従動後輪ユニットは前記揺動アームに対して左右方向に搖動可能に取り付けられ、
前記揺動フレームは、前記一対の主動輪の前側に配置されたフレーム支軸を支点として上下方向に搖動可能に前記ベースフレームに取り付けられ、
前記揺動アームは、前記一対の主動輪の駆動軸と同軸に配置されたアーム支軸を支点として上下方向に搖動可能に前記ベースフレームに取り付けられると共に、前記一対の主動輪の後側において接続軸を介して前記揺動フレームに接続され、
前記支持機構は、前記揺動フレームの前後左右の4箇所に配置されると共に、前記荷台フレームを昇降させる昇降機構を含み、
前記昇降機構はカム機構を含み、
前記荷台フレームは、物品を積載するテーブルと、このテーブルを水平面内で回転させるテーブル回転機構とを含み、
前記一対の主動輪の駆動軸と前記従動前輪部の上下方向中心軸との前後方向の間隔をL、前記一対の主動輪の駆動軸と前記従動後輪部の上下方向中心軸との前後方向の間隔をL、前記一対の主動輪の駆動軸と前記フレーム支軸との前後方向の間隔をL、前記一対の主動輪の駆動軸と前記接続軸との前後方向の間隔をLとしたときに、以下の式(1)及び式(2)を満足する、無人搬送車。
=L 式(1)
0.85L≦L≦1.15L 式(2)
【請求項2】
ベースフレームと、このベースフレームの上側に配置された揺動フレームと、この揺動フレームの上側に支持機構を介して配置された荷台フレームとを含む無人搬送車であって、
前記ベースフレームの左右両側には一対の主動輪が同軸に取り付けられ、前記ベースフレームの前側には揺動アームを介して従動前輪部が取り付けられ、前記ベースフレームの後側には固定アームを介して従動後輪部が取り付けられ、
前記従動前輪部は複数の従動輪を含む従動前輪ユニットであり、この従動前輪ユニットは前記揺動アームに対して左右方向に搖動可能に取り付けられ、
前記従動後輪部は複数の従動輪を含む従動後輪ユニットであり、この従動後輪ユニットは前記固定アームに対して左右方向に搖動可能に取り付けられ、
前記揺動フレームは、前記一対の主動輪の後側に配置されたフレーム支軸を支点として上下方向に搖動可能に前記ベースフレームに取り付けられ、
前記揺動アームは、前記一対の主動輪の駆動軸と同軸に配置されたアーム支軸を支点として上下方向に搖動可能に前記ベースフレームに取り付けられると共に、前記一対の主動輪の前側において接続軸を介して前記揺動フレームに接続され、
前記支持機構は、前記揺動フレームの前後左右の4箇所に配置されると共に、前記荷台フレームを昇降させる昇降機構を含み、
前記昇降機構はカム機構を含み、
前記荷台フレームは、物品を積載するテーブルと、このテーブルを水平面内で回転させるテーブル回転機構とを含み、
前記一対の主動輪の駆動軸と前記従動前輪部の上下方向中心軸との前後方向の間隔をL、前記一対の主動輪の駆動軸と前記従動後輪部の上下方向中心軸との前後方向の間隔をL、前記一対の主動輪の駆動軸と前記フレーム支軸との前後方向の間隔をL、前記一対の主動輪の駆動軸と前記接続軸との前後方向の間隔をLとしたときに、以下の式(1)及び式(2)を満足する、無人搬送車。
=L 式(1)
0.85L≦L≦1.15L 式(2)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人搬送車に関する。
【背景技術】
【0002】
無人搬送車は、英語ではAGV(Automatic Guided Vehicle)、AMR(Autonomous Mobile Robot)、AIV(Autonomous Intelligent Vehicle)などと表記され、これを直訳すると「自動的に誘導される車両」、「自律移動型ロボット」といった意味になる。AGVは一般的には、路面や床面等(以下、総称して単に「路面」という。)に磁気テープや磁気棒を敷設し、それらが発する磁気により誘導されて無人走行する無人搬送車のことである。AMRやAIVは、建物や構造を立体視し、ロボット自身でマップ及び経路情報を作成し、自律移動の実行ができる無人搬送車のことである。
【0003】
このような無人搬送車の一構造として、ベースフレームの左右両側に一対の主動輪を取り付けると共に、前側及び後側にそれぞれ従動輪として前輪及び後輪を取り付けた構造が知られている。すなわち、この従来構造は主動輪が路面に接触すると共に、前輪/後輪いずれかの従動輪が路面に接触し、主動輪が路面に対して、その軸荷重(積載された物品の重量による)圧力による摩擦力によりトルクを伝達する仕組みである。そして走行時には後傾することで、シーソー型(ロッキングチェア型)構造となり主動輪と前輪/後輪いずれかの従動輪の路面接触にて走行する。しかし、このような従来構造では、走行時に路面の凹凸や傾斜の影響を受けることで、以下のような問題が生じていた。
1)車体に物品を積載して搬送する場合、路面の変化状況による影響(振動や揺れ)が積載物である部品にまで伝えられることで、特に物品が精密部品などの場合に、その物品の損傷に繋がる恐れがあった。
2)路面の変化状況(凹凸や傾斜)に追従できず、主動輪と路面の接触圧力が著しく変化することで、動作を予定した目標搬送位置までの制御、Point to Point の搬送において、直進走行の安定性、搬送位置精度、停止精度にばらつきが生じやすく、運用上の問題が生じていた。
3)路面の変化状況による影響を受けることでの繰り返し搬送精度(再現性)の低下から、搬送物である物品のセット位置から再セット位置、それらのピッチ間を精度誤差分の安全を多く予定する必要があった。
4)主動輪の接触圧力が著しく変化することで、トルク伝達効率が悪くなり損失エネルギー量が多くなり、非効率になる。
【0004】
一方、特許文献1には、ベースフレームに相当するシャーシを前フレームと後フレームとに2分割し、両フレームを相対的な折り曲がりが可能になるようにヒンジ接続で連結した構造が開示されている。この特許文献1の構造は、路面の変化状況による影響を軽減しようとするものではあるが、前フレームと後フレームとを相対的に折り曲がり可能とするだけでは、路面の変化状況による影響を十分には軽減できず、依然として上述の1)~4)のような問題が生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特表2022-517164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、路面の変化状況による影響を軽減し、上述の1)~4)のような問題の発生を抑制することのできる無人搬送車を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明者らが試験及び研究を重ねた結果、前輪/後輪いずれかの従動輪を路面の変化状況(凹凸や傾斜)に積極的に追従させ、かつ積載された部品の荷重を主動輪並びに従動輪(前輪及び後輪)に均等に分散させる構造とすることが有効であるとの知見すなわち技術的思想を得た。そして本発明者らは、この技術的思想に基づき無人搬送車の具体的な構造について更に試験及び研究を重ね、本発明に想到するに至った。
【0008】
本発明の一観点によれば次の無人搬送車が提供される。
ベースフレームと、このベースフレームの上側に配置された揺動フレームと、この揺動フレームの上側に支持機構を介して配置された荷台フレームとを含む無人搬送車であって、
前記ベースフレームの左右両側には一対の主動輪が同軸に取り付けられ、前記ベースフレームの前側には固定アームを介して従動前輪部が取り付けられ、前記ベースフレームの後側には揺動アームを介して従動後輪部が取り付けられ、
前記従動前輪部は複数の従動輪を含む従動前輪ユニットであり、この従動前輪ユニットは前記固定アームに対して左右方向に搖動可能に取り付けられ、
前記従動後輪部は複数の従動輪を含む従動後輪ユニットであり、この従動後輪ユニットは前記揺動アームに対して左右方向に搖動可能に取り付けられ
前記揺動フレームは、前記一対の主動輪の前側に配置されたフレーム支軸を支点として上下方向に搖動可能に前記ベースフレームに取り付けられ、
前記揺動アームは、前記一対の主動輪の駆動軸と同軸に配置されたアーム支軸を支点として上下方向に搖動可能に前記ベースフレームに取り付けられると共に、前記一対の主動輪の後側において接続軸を介して前記揺動フレームに接続され、
前記支持機構は、前記揺動フレームの前後左右の4箇所に配置されると共に、前記荷台フレームを昇降させる昇降機構を含み、
前記昇降機構はカム機構を含み、
前記荷台フレームは、物品を積載するテーブルと、このテーブルを水平面内で回転させるテーブル回転機構とを含み、
前記一対の主動輪の駆動軸と前記従動前輪部の上下方向中心軸との前後方向の間隔をL、前記一対の主動輪の駆動軸と前記従動後輪部の上下方向中心軸との前後方向の間隔をL、前記一対の主動輪の駆動軸と前記フレーム支軸との前後方向の間隔をL、前記一対の主動輪の駆動軸と前記接続軸との前後方向の間隔をLとしたときに、以下の式(1)及び式(2)を満足する、無人搬送車。
=L 式(1)
0.85L≦L≦1.15L 式(2)
【0009】
また、本発明の他の観点によれば次の無人搬送車が提供される。
ベースフレームと、このベースフレームの上側に配置された揺動フレームと、この揺動フレームの上側に支持機構を介して配置された荷台フレームとを含む無人搬送車であって、
前記ベースフレームの左右両側には一対の主動輪が同軸に取り付けられ、前記ベースフレームの前側には揺動アームを介して従動前輪部が取り付けられ、前記ベースフレームの後側には固定アームを介して従動後輪部が取り付けられ、
前記従動前輪部は複数の従動輪を含む従動前輪ユニットであり、この従動前輪ユニットは前記揺動アームに対して左右方向に搖動可能に取り付けられ、
前記従動後輪部は複数の従動輪を含む従動後輪ユニットであり、この従動後輪ユニットは前記固定アームに対して左右方向に搖動可能に取り付けられ、
前記揺動フレームは、前記一対の主動輪の後側に配置されたフレーム支軸を支点として上下方向に搖動可能に前記ベースフレームに取り付けられ、
前記揺動アームは、前記一対の主動輪の駆動軸と同軸に配置されたアーム支軸を支点として上下方向に搖動可能に前記ベースフレームに取り付けられると共に、前記一対の主動輪の前側において接続軸を介して前記揺動フレームに接続され、
前記支持機構は、前記揺動フレームの前後左右の4箇所に配置されると共に、前記荷台フレームを昇降させる昇降機構を含み、
前記昇降機構はカム機構を含み、
前記荷台フレームは、物品を積載するテーブルと、このテーブルを水平面内で回転させるテーブル回転機構とを含み、
前記一対の主動輪の駆動軸と前記従動前輪部の上下方向中心軸との前後方向の間隔をL、前記一対の主動輪の駆動軸と前記従動後輪部の上下方向中心軸との前後方向の間隔をL、前記一対の主動輪の駆動軸と前記フレーム支軸との前後方向の間隔をL、前記一対の主動輪の駆動軸と前記接続軸との前後方向の間隔をLとしたときに、以下の式(1)及び式(2)を満足する、無人搬送車。
=L 式(1)
0.85L≦L≦1.15L 式(2)
【0010】
なお、上記一観点による無人搬送車は従動後輪部が搖動する場合、上記他の観点による無人搬送車は従動前輪部が搖動する場合であり、両者は実質的に同一の発明である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、路面の変化状況による影響を軽減し、上述の1)~4)のような問題の発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1A】本発明の一実施形態である無人搬送車を左斜め前側から見た斜視図。
図1B】本発明の一実施形態である無人搬送車を左斜め前上側から見た斜視図。
図1C】本発明の一実施形態である無人搬送車を左斜め後上側から見た斜視図。
図1D】本発明の一実施形態である無人搬送車を下側から見た斜視図。
図2】本発明の一実施形態である無人搬送車を前側から見た正面図。
図3】本発明の一実施形態である無人搬送車を後側から見た背面図。
図4】本発明の一実施形態である無人搬送車を左側から見た左側面図。
図5A】本発明の一実施形態である無人搬送車を上側から見た平面図。
図5B】本発明の一実施形態である無人搬送車を上側から一部透視して見た平面透視図。
図6】本発明の一実施形態である無人搬送車を下側から見た底面図。
図7】本発明の一実施形態である無人搬送車を前側から見た正面図であり、(a)は荷台フレームが上昇限まで上昇した状態、(b)は荷台フレームが下降限まで下降した状態。
図8】本発明の一実施形態である無人搬送車を後側から見た背面図であり、(a)は荷台フレームが上昇限まで上昇した状態、(b)は荷台フレームが下降限まで下降した状態。
図9】本発明の一実施形態である無人搬送車における物品の荷重の伝達経路を概念的に示し、(a)は左側面図、(b)平面図。
図10】本発明の一実施形態である無人搬送車の走行時の無人搬送車Vを左側から見た左側面図であり、(a)は路面Rが水平である状態、(b)は一対の主動輪が凹部に位置する状態、(c)は一対の主動輪が凸部に位置する状態。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1A~Dに、本発明の一実施形態である無人搬送車Vを斜視図で示している。具体的には、図1Aに無人搬送車Vを左斜め前側から見た斜視図、図1Bに無人搬送車Vを左斜め前上側から見た斜視図、図1Cに無人搬送車Vを左斜め後上側から見た斜視図、図1Dに無人搬送車Vを下側から見た斜視図を示している。また、図2には無人搬送車Vを前側から見た正面図、図3には無人搬送車Vを後側から見た背面図、図4には無人搬送車Vを左側から見た左側面図、図5Aには無人搬送車Vを上側から見た平面図、図5Bには無人搬送車Vを上側から一部透視して見た平面透視図、図6には無人搬送車Vを下側から見た底面図を示している。
ここで本発明において方向を表す、「前(前側)」、「後(後側)」、「左(左側)」及び「右(右側)」とは、無人搬送車の走行方向を基準とするもので、本実施形態の無人搬送車Vにおいては図1Aに例示した通りである。
【0014】
無人搬送車Vは、ベースフレーム1と、ベースフレーム1の上側に配置された揺動フレーム2と、揺動フレーム2の上側に支持機構4を介して配置された荷台フレーム3とを備えている。
ベースフレームの左右両側には一対の主動輪5A,5Bが同軸に取り付けられている。そして図面には表れていないが、一対の主動輪5A,5Bの内側には、一対の主動輪5A,5Bをそれぞれ個別に駆動するための一対のモータが、各モータのモータ軸が同軸になるように配置されている。
またベースフレーム1の前側には、固定アーム6を介して従動前輪部7が取り付けられている。更にベースフレーム1の後側には、揺動アーム8を介して従動後輪部9が取り付けられている。
【0015】
無人搬送車Vにおいて従動前輪部7は、一対の従動輪72A,72Bを含む従動前輪ユニットであり、この従動前輪ユニット7は固定アーム6に対して左右方向に搖動可能に取り付けられている。具体的に説明すると従動前輪ユニット7は図1Bに表れているように、ベースプレート71とベースプレート71の下側に取り付けられた一対の従動輪72A,72Bとを含む。そしてこの従動前輪ユニット7は、固定アーム6に固定されかつ前後方向に伸びる支軸61を支点として左右方向に搖動可能に固定アーム6に取り付けられている。また、一対の従動輪72A,72Bはそれぞれ、図面には表れていない上下方向の回転軸を回転中心として回転可能にベースプレート71に取り付けられている。
ここで、無人搬送車Vにおいて固定アーム6は一対のアーム部62,62を含み、一対のアーム部62,62の各後端部がベースフレーム1の上面に固定されている。また一対のアーム部62,62の各前端部には、従動前輪ユニット7を左右方向に搖動可能に支持するための支持部材63が固定され、この支持部材63に上述の支軸61が固定されている。そして、ベースプレート71の中央下側に固定されたベースブロック711(図1D参照)に支軸61が挿通され、これにより、従動前輪ユニット7が支軸61を支点として左右方向に搖動可能に固定アーム6に取り付けられている。
【0016】
無人搬送車Vにおいて従動後輪部9は、一対の従動輪92A,92Bを含む従動後輪ユニットであり、この従動後輪ユニット9は揺動アーム8に対して左右方向に搖動可能に取り付けられている。具体的に説明すると従動後輪ユニット9は図1Cに表れているように、ベースプレート91とベースプレート91の下側に取り付けられた一対の従動輪92A,92Bとを含む。そしてこの従動後輪ユニット9は、揺動アーム8に固定されかつ前後方向に伸びる支軸81を支点として左右方向に搖動可能に揺動アーム8に取り付けられている。また、一対の従動輪92A,92Bはそれぞれ、図面には表れていない上下方向の回転軸を回転中心として回転可能にベースプレート91に取り付けられている。
【0017】
揺動アーム8は図1D及び図6に表れているように、一対の主動輪5A,5Bの駆動軸と同軸に配置されたアーム支軸11を支点として上下方向に搖動可能にベースフレーム1に取り付けられると共に、一対の主動輪5A,5Bの後側において接続軸21を介して揺動フレーム2に接続されている。
ここで、無人搬送車Vにおいて揺動アーム8は一対のアーム部82,82を含み、一対のアーム部82,82の各前端部が、ベースフレーム1に固定された一対のアーム支軸11,11に接続され、これにより、一対のアーム部82,82が一対のアーム支軸11,11を支点として上下方向に搖動可能にベースフレーム1に取り付けられている。
また、一対のアーム部82,82の各中間部は、揺動フレーム2に取り付けられた一対の接続軸21,21を介して揺動フレーム2に接続されている。なお、一対の接続軸21,21は、一対のアーム部82,82が一対のアーム支軸11,11を支点として上下方向に搖動することを許容するように、揺動フレーム2に固定された一対の軸受部211,211に対して、上下方向に搖動可能に取り付けられている。
また、一対のアーム部82,82の各後端部には図1Cに表れているように、従動後輪ユニット9を左右方向に搖動可能に支持するための支持部材83が固定され、この支持部材83に上述の支軸81が固定されている。そして、ベースプレート91の中央下側に固定されたベースブロック911(図1D参照)に支軸81が挿通され、これにより、従動後輪ユニット9が支軸81を支点として左右方向に搖動可能に揺動アーム8に取り付けられている。
【0018】
一方、揺動フレーム2は、一対の主動輪5A,5Bの前側に配置されたフレーム支軸12を支点として上下方向に搖動可能にベースフレーム1に取り付けられている。無人搬送車Vにおいてフレーム支軸12は、ベースフレーム1の左右両側面に対をなして固定されている。
【0019】
支持機構4は、揺動フレーム2の前後左右の4箇所に配置されている。無人搬送車Vにおいて支持機構4は、荷台フレーム3を昇降させる昇降機構41を含み、昇降機構41はカム機構42を含む。
カム機構42は図2及び図3に表れているように、荷台フレーム2の下面に固定された直角三角形状のカムプレート421と、この直角三角形状のカムプレート421の斜辺に突き当たるカムフォロア422との組合せからなり、揺動フレーム2の前後左右の4箇所に配置されている。このうち、前側の左右2箇所に配置されている2つのカム機構42Aを構成する2つのカムフォロア422Aは、揺動フレーム2の上面の前側において左右方向にスライドする前側スライドユニット43Aにそれぞれ固定されている。一方、揺動フレーム2の後側の左右2箇所に配置されている2つのカム機構42Bを構成する2つのカムフォロア422Bは、揺動フレーム2の上面の後側において左右方向にスライドする後側スライドユニット43Bにそれぞれ固定されている。そして、前側スライドユニット43A及び後側スライドユニット43Bは、それぞれ駆動シリンダ44A,44Bの駆動によりガイドレール45A,45Bに沿って左右方向にスライドする。これにより、荷台フレーム3が昇降する。
【0020】
この荷台フレーム3の昇降動作について、主に図7及び図8を参照して更に詳しく説明する。図7は無人搬送車Vを前側から見た正面図であり、同図(a)は荷台フレーム3が上昇限まで上昇した状態、同図(b)は荷台フレーム3が下降限まで下降した状態を示している。また、図8は無人搬送車Vを後側から見た背面図であり、同図(a)は荷台フレーム3が上昇限まで上昇した状態、同図(b)は荷台フレーム3が下降限まで下降した状態を示している。ここで、図7(a)及び図8(a)はそれぞれ図2及び図3に対応する。すなわち、図1A~D及び図2~6は荷台フレーム3が上昇限まで上昇した状態を示している。
【0021】
荷台フレーム3が上昇限まで上昇した状態において、前側スライドユニット43Aは図7(a)に示しているように右側のスライド限までスライドし、後側スライドユニット43Bは図8(a)に示しているように左側のスライド限までスライドしている。一方、荷台フレーム3が下降限まで下降した状態において、前側スライドユニット43Aは図7(b)に示しているように左側のスライド限までスライドし、後側スライドユニット43Bは図8(b)に示しているように右側のスライド限までスライドしている。そして、前側の2つのカム機構42Aのカムプレート421の斜辺は右下側に向けて傾斜し、前側の2つのカム機構42Aのカムプレート421の斜辺は左下側に向けて傾斜している。したがって、図7(a)及び図8(a)では荷台フレーム3が上昇限まで上昇した状態となり、図7(b)及び図8(b)では荷台フレーム3が下降限まで下降した状態となる
ここで、本発明でいう「左側」及び「右側」とは上述の通り、無人搬送車Vの走行方向を基準とするもので図1Aに例示した通りであるから、正面図(図7)及び背面図(図8)では、「左側」及び「右側」はそれぞれ反対に表れる。すなわち、正面図(図7)において紙面上の左側が本発明でいう「右側」となり、紙面上の右側が本発明でいう「左側」となる。また、背面図(図8)では、紙面上の左側及び右側が本発明でいう「左側」及び「右側」と一致する。
【0022】
次に荷台フレーム3について説明する。無人搬送車Vにおいて荷台フレーム3は、荷物当の物品を積載するテーブル31と、このテーブル31を水平面内で回転させるテーブル回転機構32とを含む。
回転機構32は図5Bに表れているように、モータ321によって回転駆動する駆動ギア322と、テーブル31の下側に固定され駆動ギア322と噛み合う従動ギア323を有する。なお、回転機構32を構成するモータ321、駆動ギア322及び従動ギア323、並びにこの回転機構32によって回転するテーブル31は、いずれも荷台フレーム3に組み込まれており、上述した荷台フレーム3の昇降動作に合わせて荷台フレーム3と共に昇降する。
なお、無人搬送車Vにおいては、荷台フレーム3の昇降動作をガイドするために荷台フレーム3の下面の前側と後側にそれぞれガイドバー33が固定されており、搖動フレーム2に形成されたガイド孔22に、それぞれ挿通されている(図1B図1C等参照)。
【0023】
次に本発明の技術的特徴の一つである物品の荷重の伝達経路について説明する。図9にその伝達経路を概念的に示しており、同図(a)は左側面図で図4に対応し、同図(b)は平面図で図5Aに対応する。
無人搬送車Vにおいて、荷台フレーム3のテーブル31に積載された物品の荷重Fは、揺動フレーム2の前後左右の4箇所に配置されている支持機構4を介して揺動フレーム2へ伝達される。具体的に荷重Fは、前側2箇所に配置されている支持機構4を介して荷台フレーム3の前側へ伝達される(F1の経路)と共に、後側2箇所に配置されている支持機構4を介して荷台フレーム3の後側へ伝達される(F2の経路)。このとき、前側2箇所に配置されている支持機構4と後側2箇所に配置されている支持機構4とは、揺動フレーム2の中心点を通る左右方向の水平線Hに対して線対称となるように配置されているから、F1の経路で伝達される荷重とF2の経路で伝達される荷重はそれぞれF/2となる。その後、F1の経路で伝達された荷重はフレーム支軸12を介してベースフレーム1の前側へ伝達され、更にその後、固定アーム6(一対のアーム部62,62)を介して従動前輪ユニット7へ伝達される(F3の経路)と共に、ベースフレーム1の左右両側面部を介して一対の主動輪5A,5Bへ伝達される(F4A,F4Bの経路)。一方、F2の経路で伝達された荷重は、接続軸21及び揺動アーム8(一対のアーム部82,82)の後側を介して従動後輪ユニット9へ伝達される(F5の経路)と共に、接続軸21、揺動アーム8(一対のアーム部82,82)の前側及びベースフレーム1を介して一対の主動輪5A,5Bへ伝達される(F6A,F6Bの経路)。
【0024】
ここで、無人搬送車Vは図4に示しているように、一対の主動輪5A,5Bの駆動軸Z1と従動前輪部7の上下方向中心軸Z2との前後方向の間隔をL、一対の主動輪5A,5Bの駆動軸Z1と従動後輪部9の上下方向中心軸Z3との前後方向の間隔をL、一対の主動輪の駆動軸5A,5Bの駆動軸Z1とフレーム支軸12との前後方向の間隔をL、一対の主動輪の駆動軸5A,5Bの駆動軸Z1と接続軸21との前後方向の間隔をLとしたときに、以下の式(1)及び式(2)を満足するように構成されている。
=L 式(1)
0.85L≦L≦1.15L 式(2)
すなわち、無人搬送車VではLとLとが等しく、かつLがLの±15%の範囲内にあることから、上述のF1の経路で伝達された荷重(F/2)は、F3の経路とF4A,F4Bの経路とに実質的に2等分される。すなわち、F3の経路で従動前輪部7へ伝達される荷重はF/4、F4Aの経路で主動輪5Aへ伝達される荷重はF/8、F4Bの経路で主動輪5Bへ伝達される荷重はF/8となり、また、F5の経路で従動後輪部9へ伝達される荷重はF/4、F6Aの経路で主動輪5Aへ伝達される荷重はF/8、F6Bの経路で主動輪5Bへ伝達される荷重はF/8となる。その結果、荷台フレーム3のテーブル31に積載された物品の荷重Fは、従動前輪部7、主動輪5A、主動輪5B及び従動後輪部9へ実質的に4等分されてF/4ずつ伝達される。
なお、荷重Fを均等に分散する観点からは、LとLとは等しいことが最も好ましいが、無人搬送車Vの設計上の制約などからL=Lとできないことがある。そのため本発明ではLがLの±15%の範囲内であるようにしている。この範囲内であれば、荷重Fは、従動前輪部7、主動輪5A、主動輪5B及び従動後輪部9へ実質的に4等分されてF/4ずつ伝達される。
【0025】
次に無人搬送車Vの動作について説明する。無人搬送車Vの基本動作は、上述のAGV(Automatic Guided Vehicle)、AMR(Autonomous Mobile Robot)、AIV(Autonomous Intelligent Vehicle)などと表記される「自動的に誘導される車両」、「自律移動型ロボット」の基本動作と同じであり、路面に敷設された磁気テープや磁気棒が発する磁気により誘導されて無人走行したり、自身でマップ及び経路情報を作成し自律移動を実行したりする。具体的に無人搬送車Vは、一対の主動輪5A,5Bをエンコーダー制御等により駆動させることにより走行し、走行(直進)する際には一対の主動輪5A,5Bを同調させて駆動し、方向転換する際には一対の主動輪5A,5Bをそれぞれ反対方向に駆動させる。また、物品の積載又は荷下の際には、必要に応じて荷台フレーム3を昇降させたり、テーブル31を水平面内で回転させたりする。
【0026】
続いて、路面に凹凸や傾斜があった場合における無人搬送車Vの動作について説明する。図10に、走行時の無人搬送車Vを左側面図で示しており、同図(a)は路面Rが水平である状態で図4及び図9(a)に対応する。一方、図10(b)は一対の主動輪5A,5Bが凹部R1に位置する状態、同図(c)は一対の主動輪5A,5Bが凸部R2に位置する状態である。
無人搬送車Vは図10(a)に示しているように、路面Rが水平である状態を初期状態(基準状態)として、路面Rの変化状況に応じて、同図(b)に示しているように揺動フレーム2及び揺動アーム8が上側に搖動したり、同図(c)に示しているように揺動フレーム2及び揺動アーム8が下側に搖動したりすることで、従動後輪ユニット9を路面の変化状況(凹凸や傾斜)に積極的に追従させる。これにより、路面Rの変化状況による影響を軽減することができる。
また無人搬送車Vでは、従動後輪ユニット9が揺動アーム8に対して左右方向に搖動可能に取り付けられていると共に、従動前輪ユニット7が固定アーム6に対して左右方向に搖動可能に取り付けられているから、路面Rの変化状況による影響を更に軽減することができる。
【0027】
以上の通り無人搬送車Vでは、従動後輪ユニット9を路面の変化状況(凹凸や傾斜)に積極的に追従させると共に、物品の荷重を従動前輪ユニット7、主動輪5A、主動輪5B及び従動後輪ユニット9へ実質的に均等に分散させることができる。これにより、路面の変化状況による影響を軽減し、上述の1)~4)のような問題の発生を抑制することができる。要するに本発明の無人搬送車によれば、シーソー型(ロッキングチェア型)構造による前後挙動が発生せず、直進安定性を損なうことがない。また、荷重の急激な変動による衝撃荷重の発生がないことから、積載した物品が損傷することがなく、無人搬送車を構成する部品の長寿命化にも繋がる。
【0028】
以上の無人搬送車Vでは、従動後輪部が上下方向に搖動するようにしたが、従動前輪部が上下方向に搖動するようにしてもよい。
また無人搬送車Vにおいて支持機構4は昇降機構41を含むが、必ずしも昇降機構41を含む必要はない。更に無人搬送車Vでは、昇降機構41をカム機構42を用いて構成したが、他の昇降機構を用いることもできる。ただし、物品の荷重を効率的に、かつ簡単な構成で伝達するためにはカム機構42を用いて構成することが好ましい。
また無人搬送車Vにおいて荷台フレーム3は、テーブル31とテーブル31を水平面内で回転させるテーブル回転機構32を含むが必ずしもテーブル回転機構32を含む必要はない。更にテーブル回転機構は他の機構を用いて構成することもできる。
【符号の説明】
【0029】
V 無人搬送車
R 路面
R1 路面の凹部
R2 路面の凸部
F 物品の荷重
F1、F2、F3、F4A、F4B、F5、F6A、F6B 物品の荷重の伝達経路
Z1 一対の主動輪の駆動軸
Z2 従動前輪部の上下方向中心軸
Z3 従動後輪部の上下方向中心軸
1 ベースフレーム
11 アーム支軸
12 フレーム支軸
2 揺動フレーム
21 接続軸
211 軸受部
22 ガイド孔
3 荷台フレーム
31 テーブル
32 テーブル回転機構
321 モータ
322 駆動ギア
323 従動ギア
33 ガイドバー
4 支持機構
41、41A、41B 昇降機構
42、42A、42B カム機構
421 カムプレート
422、422A、422B カムフォロア
43A 前側スライドユニット
43B 後側スライドユニット
44A、44B 駆動シリンダ
45A、45B ガイドレール
5A、5B 主動輪
6 固定アーム
61 支軸
62 アーム部
63 支持部材
7 従動前輪部(従動前輪ユニット)
71 ベースプレート
711 ベースブロック
72A、72B 従動輪
8 揺動アーム
81 支軸
82 アーム部
83 支持部材
9 従動後輪部(従動後輪ユニット)
91 ベースプレート
911 ベースブロック
92A、92B 従動輪
【要約】
【課題】路面の変化状況による影響を軽減できる無人搬送車を提供する。
【解決手段】ベースフレーム1と、ベースフレーム1の上側に配置された揺動フレーム2と、揺動フレーム2の上側に支持機構4を介して配置された荷台フレーム3とを含む無人搬送車Vである。ベースフレーム1の左右両側には一対の主動輪が取り付けられ、ベースフレーム1の前側には固定アーム6を介して従動前輪部7が取り付けられ、ベースフレーム1の後側には揺動アーム8を介して従動後輪部9が取り付けられている。揺動フレーム2は一対の主動輪の前側に配置されたフレーム支軸12を支点として上下方向に搖動可能にベースフレーム1に取り付けられ、揺動アーム8は一対の主動輪の駆動軸と同軸に配置されたアーム支軸を支点として上下方向に搖動可能にベースフレーム1に取り付けられると共に一対の主動輪の後側において接続軸21を介して揺動フレーム2に接続されている。
【選択図】図1A
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10