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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-13
(45)【発行日】2023-09-22
(54)【発明の名称】NADH及びNADPHの安定化方法
(51)【国際特許分類】
   C07H 19/207 20060101AFI20230914BHJP
   C07H 21/02 20060101ALI20230914BHJP
   C12Q 1/52 20060101ALI20230914BHJP
   C12Q 1/58 20060101ALI20230914BHJP
   C12Q 1/32 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
C07H19/207
C07H21/02
C12Q1/52
C12Q1/58
C12Q1/32
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018160136
(22)【出願日】2018-08-29
(65)【公開番号】P2020033288
(43)【公開日】2020-03-05
【審査請求日】2021-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000131474
【氏名又は名称】株式会社シノテスト
(72)【発明者】
【氏名】和田 祥太朗
【審査官】早乙女 智美
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-105024(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102863495(CN,A)
【文献】独国特許出願公開第102008061866(DE,A1)
【文献】米国特許第05804403(US,A)
【文献】特開昭55-042599(JP,A)
【文献】特開平04-229192(JP,A)
【文献】特表平10-513063(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H
C12Q1/00-1/58
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
pH6.2~pH7.8の水溶液中において、NADH又はNADPHと共に、カリウムイオンの水酸化物又は塩、カルシウムイオンの水酸化物又は塩、ナトリウムイオンの水酸化物又は塩、アルミニウムイオンの水酸化物又は塩、リチウムイオンの水酸化物又は塩、ベリリウムイオンの水酸化物又は塩、マグネシウムイオンの水酸化物又は塩、アンモニウムイオンの水酸化物又は塩、グアジニウムイオンの水酸化物又は塩、アルギニウムイオンの水酸化物又は塩、ベンザルコニウムの水酸化物又は塩、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインの水酸化物又は塩、及びカルニチンの水酸化物又は塩からなる群から選ばれるものを共存させることを特徴とする、NADH及びNADPHの安定化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NADH及びNADPHの安定化方法に関するものである。
本発明は、臨床検査、臨床病理学及び医学などの生命科学分野、並びに分析化学などの化学分野等において有用なものである。
【背景技術】
【0002】
NADH(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド[還元型])及びNADPH(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸[還元型])は生体内の電子伝達体である。
NADH及びNADPH(以下総称して「NADH類」ということがある。)は、種々の脱水素酵素の補酵素として働く。
【0003】
例えば、血清又は血漿中のアスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)[GOT]の活性を測定する方法として、次の方法が知られている。
検体中のASTは、L-アスパラギン酸及びα-ケトグルタル酸を基質として接触させることにより、オキサロ酢酸とL-グルタミン酸を生成する。
このオキサロ酢酸は、リンゴ酸脱水素酵素(MD)の作用によりL-リンゴ酸に変化し、同時に補酵素としてのNADHはNAD[酸化型]に変化する。
NADHは、340nmに吸収極大を持つので、この吸光度の減少速度を測定することによりAST活性値を求めることができる。
【0004】
しかしながら、NADH類は水溶液中において、その安定性が悪いことが知られており、特に、高pH域に比べて、中性域から酸性域において特に安定性が悪いことが知られていた。
【0005】
よって、NADH類は、高pH域において存在させることが一般的であった。
【0006】
例えば、基準試薬溶液のpHが少なくとも約7.9の塩基性範囲にまで上昇するように強塩基を含有させる条件下で、NADH又はNADPHの基準試薬溶液の安定寿命を延長する方法において、アミン塩基、強塩基、カチオンが正の1価をもつと考えられる塩基、カチオンが正の2価をもつと考えられる塩基、及び強塩基と弱酸との反応で生じる塩の塩基性溶液からなる群から選ばれる1種以上のものを含有させることを特徴とする方法が提案された(特許文献1参照。)。
【0007】
また、NADHが補酵素となる酵素反応に直接的又は間接的に影響を受ける、生物学的試料の成分を決定するためのキットであって、a)決定しようとする成分により影響を受ける反応系のための共反応物を含有する一試薬、並びにb)追加の試薬として、NADHを約1~4ミリモルの濃度及びアルカリ金属若しくはアンモニウムカーボネート/ビカーボネート緩衝剤を約2~15ミリモルの濃度で含み、約9.5~11.0のpHの水溶液、からなるキットが提案された(特許文献2参照。)。
【0008】
更に、水素転移酵素の補酵素の安定化された水溶液であって、使用溶液が少なくとも8.5のpH値を有し、酸化型もしくは還元型のNAD、NADPまたは適当な誘導体、並びに1.0~60mMの水溶性重金属塩を含む水溶液が提案された(特許文献3参照。)。
【0009】
ところで、測定反応に使用する酵素は、その至適pHが中性域にあるものが多く、その酵素の安定性も中性域において安定なものが多い。
【0010】
すなわち、多くの酵素にとって至的な中性域において、NADH類を安定化する方法が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開昭55-42599号公報
【文献】特開平4-229192号公報
【文献】特表平10-513063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
試料中の測定対象物質の測定において脱水素酵素等の補酵素等に用いられるNADH類は、高pH域では比較的安定であるものの、中性域ではその安定性は必ずしも良くないものであった。
しかしながら、測定反応に使用する酵素は、その至適pHが中性域にあるものが多く、その酵素の安定性も中性域において安定なものが多いものであった。
【0013】
これに対して、本発明の課題は、中性域において、NADH類を安定化する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、中性域においてNADH類を安定化する方法について検討を重ねたところ、NADH類と共にカチオン部位を有する物質を共存させることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明は、以下の発明よりなる。
pH6.2~pH7.8の水溶液中において、NADH又はNADPHと共に、カリウムイオンの水酸化物又は塩、カルシウムイオンの水酸化物又は塩、ナトリウムイオンの水酸化物又は塩、アルミニウムイオンの水酸化物又は塩、リチウムイオンの水酸化物又は塩、ベリリウムイオンの水酸化物又は塩、マグネシウムイオンの水酸化物又は塩、アンモニウムイオンの水酸化物又は塩、グアジニウムイオンの水酸化物又は塩、アルギニウムイオンの水酸化物又は塩、ベンザルコニウムの水酸化物又は塩、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタインの水酸化物又は塩、及びカルニチンの水酸化物又は塩からなる群から選ばれるものを共存させることを特徴とする、NADH及びNADPHの安定化方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明のNADH及びNADPHの安定化方法は、pH6.2~pH7.8の水溶液中において、NADH及びNADPHを長期間安定に保つことができるものである。
【0017】
すなわち、本発明のNADH及びNADPHの安定化方法は、測定反応に使用する酵素の至適pH及び安定性がある中性域でNADH及びNADPHを長期間安定に保つことができるものである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
1.総論
本発明のNADH及びNADPHの安定化方法は、pH6.2~pH7.8の水溶液中において、NADH又はNADPHと共にカチオン部位を有する物質を共存させることを特徴とするものである。
【0019】
そして、本発明のNADH及びNADPHの安定化方法は、pH6.2~pH7.8の水溶液中において、NADH又はNADPHと共にカチオン部位を有する物質を共存させることにより、NADH及びNADPHを長期間安定に保つことができるものである。
【0020】
2.本発明におけるNADH類
本発明のNADH及びNADPHの安定化方法におけるNADH及びNADPHとしては、NADH及びNADPHだけに限られず、NADH及びNADPHの類縁体や誘導体を含むものとする。
例えば、チオNADHやチオNADPHも、本発明におけるNADH及びNADPHに含まれる。
【0021】
また、NADH類は、遊離の形態のものであってもよいが、塩の形態のものであってもよい。
塩の形態としては、例えば、第1族元素、又は第2族元素等との塩を挙げることができる。
【0022】
この場合、第1族元素としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、又はルビジウム等を挙げることができる。
【0023】
また、第2族元素としては、例えば、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、又はバリウム等を挙げることができる。
【0024】
塩の形態としては、第1族元素との塩が好ましく、ナトリウム塩又はカリウム塩がより好ましく、ナトリウム塩が特に好ましい。
【0025】
水溶液中において、NADH類を存在させる場合の濃度については、特に限定はない。
極微量域から高濃度域まで、適応することができる。
【0026】
3.本発明におけるカチオン部位を有する物質
(1)総論
本発明のNADH及びNADPHの安定化方法においては、カチオン部位を有する物質は、カチオン部位を有する物質であればよく、特に限定はない。
【0027】
(2)カチオン部位
本発明のNADH及びNADPHの安定化方法において、カチオン部位は、カチオンからなる部位よりなるものであって、特に限定はない。
【0028】
このカチオン部位としては、例えば、金属イオン、アンモニウムイオン、又はグアジウムイオン等を挙げることができる。
【0029】
この金属イオンとしては、例えば、第1族元素、第2族元素、又はその他の金属等のイオンを挙げることができる。
【0030】
第1族元素としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、又はルビジウム等を挙げることができる。
【0031】
第2族元素としては、例えば、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、又はバリウム等を挙げることができる。
【0032】
その他の金属としては、例えば、アルミニウム、ガリウム、インジウム、又はゲルマニウム等を挙げることができる。
【0033】
カチオン部位としては、例えば、アンモニウムイオン、グアニジウムイオン、第1族元素のイオン、又は第2族元素のイオンが好ましい。
【0034】
(3)カチオン部位を有する物質
本発明において、カチオン部位を有する物質としては、特に限定はなく、カチオン部位を有する物質であればよい。
このカチオン部位を有する物質としては、例えば、カチオン部位の水酸化物、又はカチオン部位の塩等を挙げることができる。
【0035】
このカチオン部位の塩としては、例えば、ハロゲンイオンとの塩、又は酸基との塩等を挙げることができる。
【0036】
ハロゲンイオンとしては、例えば、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、又はヨウ素イオン等を挙げることができる。
【0037】
酸基としては、例えば、硫酸基、塩酸基、又は硝酸基等を挙げることができる。
【0038】
カチオン部位を有する物質の具体例としては、例えば、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化ナトリウム、塩化アルミニウム、硝酸カリウム、硫酸ナトリウム、臭化ナトリウム、塩化リチウム、硫酸ベリリウム、塩化マグネシウム、デシル硫酸ナトリウム、デキストラン硫酸ナトリウム、EDTA二ナトリウム、塩化ベンザルコニウム、塩化アンモニウム、グアニジン塩酸塩、アルギニン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、又はカルニチン等を挙げることができる。
【0039】
カチオン部位を有する物質としては、例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、塩化アルミニウム、塩化マグネシウム、グアニジン塩酸塩、アルギニン、又は塩化カリウム等が好ましい。
【0040】
水溶液中において、カチオン部位を有する物質の濃度の下限は、特に限定はないが、0.01mM以上が好ましく、0.1mM以上がより好ましく、1mM以上が特に好ましい。
【0041】
また、水溶液中において、カチオン部位を有する物質の濃度の上限は、特に限定はないが、コスト等のことを考えると、10000mM以下が好ましく、5000mM以下がより好ましく、1000mM以下が特に好ましい。
【0042】
(4)水溶液
本発明において、pH6.2~pH7.8の水溶液中には、このpH域に緩衝能を有する公知の緩衝剤を含有させることが好ましい。
この緩衝剤としては、例えば、リン酸、トリス(ヒドロキシル)アミノメタン、又は、MES、Bis-Tris、ADA、PIPES、ACES、MOPSO、BES、MOPS、TES、HEPES、TAPSO、POPSO、HEPPSO、EPPS、Bicine、若しくはTAPS等のグッド緩衝剤等を挙げることができる。
その他に、この水溶液には、酵素、酵素の基質、酵素の安定化剤、又は酵素の活性化剤等を含有させてもよい。
【0043】
(5)測定試薬
本発明を、測定試薬に応用する場合の例を以下に示す。
【0044】
(a)アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)[GOT]活性測定試薬
【0045】
(i)第1試薬(酵素補酵素試液)[pH6.2~pH7.8]
L-アスパラギン酸ナトリウム(例えば、1mM~3000mM)
NADH・2Na(例えば、0.01mM~1mM)
カチオン部位を有する物質(例えば、0.01mM~10000mM)
リンゴ酸脱水素酵素(例えば、100U/L~100000U/L)
【0046】
(ii)第2試薬(α-KG液)[例えば、pH3.0~pH11.0]
L-アスパラギン酸ナトリウム(例えば、0mM~3000mM)
α-ケトグルタル酸(例えば、1mM~500mM)
【0047】
(iii)測定原理
検体中のASTは、L-アスパラギン酸及びα-ケトグルタル酸を基質として接触させることにより、オキサロ酢酸とL-グルタミン酸を生成する。
このオキサロ酢酸は、リンゴ酸脱水素酵素(MD)の作用によりL-リンゴ酸に変化し、同時に補酵素としてのNADHと水素イオンはNADに変化する。
NADHは、340nmに吸収極大を持つので、この吸光度の減少速度を測定することによりAST活性値を求めることができる。
【0048】
(iv)自動分析装置を用いて測定する場合の測定例
検体5.7μLに前記の第1試薬100μLを添加し、37℃で5分間インキュベートした後、前記の第2試薬33μLを添加し、37℃で5分間インキュベートした。この第2試薬を添加した後、主波長340nm及び副波長405nmでNADHの吸光度の減少速度を測定して、検体中のAST活性値を求める。
【0049】
(b)アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)[GPT]活性測定試薬
【0050】
(i)第1試薬(酵素補酵素試液)[pH6.2~pH7.8]
L-アラニン(例えば、1mM~3000mM)
NADH・2Na(例えば、0.01mM~1mM)
カチオン部位を有する物質(例えば、0.01mM~10000mM)
乳酸脱水素酵素(例えば、100U/L~100000U/L)
【0051】
(ii)第2試薬(α-KG液)[例えば、pH3.0~pH11.0]
L-アラニン(例えば、0mM~3000mM)
α-ケトグルタル酸(例えば、1mM~500mM)
【0052】
(iii)測定原理
検体中のALTは、L-アラニン及びα-ケトグルタル酸を基質としてピルビン酸とL-グルタミン酸を生成する。
このピルビン酸は乳酸脱水素酵素の作用によりL-乳酸に変化し、同時にNADHと水素イオンはNADに変わる。
NADHは340nmに吸収極大を持つので、この吸光度の減少速度を測定してALT活性値を求めることができる。
【0053】
(iv)自動分析装置を用いて測定する場合の測定例
検体5.7μLに前記の第1試薬100μLを添加し、37℃で5分間インキュベートした後、前記の第2試薬33μLを添加し、37℃で5分間インキュベートした。この第2試薬を添加した後、主波長340nm及び副波長405nmでNADHの吸光度の減少速度を測定して、検体中のALT活性値を求める。
【0054】
(c)尿素窒素(BUN)測定試薬
(i)第1試薬(酵素試液A)[pH6.2~pH7.8]
NADPH・4Na(例えば、0.01mM~1mM)
カチオン部位を有する物質(例えば、0.01mM~10000mM)
グルタミン酸脱水素酵素(例えば、100U/L~100000U/L)
α-ケトグルタル酸(例えば、1mM~500mM)
【0055】
(ii)第2試薬(酵素試液B)[例えば、pH3.0~pH11.0]
ウレアーゼ(例えば、100U/L~100000U/L)
α-ケトグルタル酸(例えば、0mM~500mM)
【0056】
(iii)測定原理
まず、アンモニアとα-ケトグルタル酸とNADPHと水素イオンをグルタミン酸脱水素酵素によりグルタミン酸とNADPと水に変換し、検体中の内因性のアンモニアを消去する。
この検体中の内因性のアンモニアを消去した後、検体中の尿素はウレアーゼの作用によりアンモニアと二酸化炭素に分解される。
このアンモニアとα-ケトグルタル酸はグルタミン酸脱水素酵素の作用によりグルタミン酸に変化し、同時にNADPHはNADPに変わる。
NADPHは340nmに吸収極大を持つので、この吸光度の減少速度を測定して尿素窒素値を求めることができる。
【0057】
(iv)自動分析装置を用いて測定する場合の測定例
検体1.7μLに前記の第1試薬100μLを添加し、37℃で5分間インキュベートした後、前記の第2試薬25μLを添加し、37℃で5分間インキュベートした。この第2試薬を添加した後、主波長340nm及び副波長405nmでNADPHの吸光度の減少速度を測定して、検体中の尿素窒素値を求める。
【0058】
(d)尿素窒素(UN)測定試薬[ICDH共存法]
(i)第1試薬(酵素試液A)[pH6.2~pH7.8]
グルタミン酸脱水素酵素(例えば、100U/L~100000U/L)
イソクエン酸脱水素酵素(ICDH)(例えば、1U/L~100000U/L)
L-イソクエン酸カリウム(例えば、0.1mM~1000mM)
NADPH・4Na(例えば、0.01mM~1mM)
カチオン部位を有する物質(例えば、0.01mM~10000mM)
α-ケトグルタル酸(例えば、1mM~500mM)
【0059】
(ii)第2試薬(酵素試液B)[例えば、pH3.0~pH11.0]
ウレアーゼ(例えば、100U/L~100000U/L)
α-ケトグルタル酸(例えば、0mM~500mM)
【0060】
(iii)測定原理
まず、アンモニアとα-ケトグルタル酸とNADPHと水素イオンをグルタミン酸脱水素酵素によりグルタミン酸とNADPと水に変換し、検体中の内因性のアンモニアを消去する。
このとき生じたNADPはL-イソクエン酸と共にイソクエン酸脱水素酵素の作用により、NADPHとα-ケトグルタル酸と二酸化炭素に変換される。
検体中の内因性のアンモニアを消去した後、検体中の尿素はウレアーゼの作用によりアンモニアと二酸化炭素に分解される。
このアンモニアとα-ケトグルタル酸はグルタミン酸脱水素酵素の作用によりグルタミン酸に変化し、同時にNADPHはNADPに変わる。
NADPHは340nmに吸収極大を持つので、この吸光度の減少速度を測定して尿素窒素値を求めることができる。
【0061】
(iv)自動分析装置を用いて測定する場合の測定例
検体3.8μLに前記の第1試薬100μLを添加し、37℃で5分間インキュベートした後、前記の第2試薬25μLを添加し、37℃で5分間インキュベートした。この第2試薬を添加した後、主波長340nm及び副波長405nmでNADPHの吸光度の減少速度を測定して、検体中の尿素窒素値を求める。
【実施例
【0062】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0063】
〔実施例1〕(カチオン部位を有する物質によるNADH類の安定化の効果の確認)
本発明におけるカチオン部位を有する物質によるNADH類の安定化の効果を確かめた。
【0064】
1.水溶液
0.3mMのNADH二ナトリウム又はNADPH四ナトリウム(4水塩)にカチオン部位を有する物質及び緩衝剤を共存させて各々の水溶液を調製した。
【0065】
なお、それぞれのカチオン部位を有する物質及びその濃度並びに緩衝剤及びその濃度及びpHを表1に示した。
【0066】
【表1】
【0067】
そして、カチオン部位を有する物質として、塩化カリウム[関東化学]、塩化カルシウム(2水塩)[国産化学]、塩化アルミニウム六水和物[富士フィルム和光純薬]、硝酸カリウム[富士フィルム和光純薬]、硫酸ナトリウム[関東化学]、臭化ナトリウム[富士フィルム和光純薬]、塩化リチウム[国産化学]、硫酸ベリリウム(四水和物)[林純薬工業]、塩化マグネシウム六水和物[国産化学]、デシル硫酸ナトリウム[日光ケミカルズ]、デキストラン硫酸ナトリウム5000[富士フィルム和光純薬]、EDTA二ナトリウム(2水塩)[積水メディカル]、CA-101〔塩化ベンザルコニウム〕[日光ケミカルズ]、塩化アンモニウム[富士フィルム和光純薬]、グアニジン塩酸塩[富士フィルム和光純薬]、L-アルギニン[ナカライテスク]、AM-301〔ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン〕[日光ケミカルズ]、及びDL-カルニチン塩酸塩[富士フィルム和光純薬]をそれぞれ使用した。
【0068】
2.保存前測定
前記1で調製した各水溶液の340nmにおける吸光度(吸光度1)を、分光光度計[日本分光社;V-630]で測定した。
【0069】
3.保存
前記2で測定した各水溶液を、それぞれ表1に示した温度及び期間保存した。
【0070】
4.測定
前記3で保存した各水溶液の340nmにおける吸光度(吸光度2)を、分光光度計[日本分光社;V-630]で測定した。
【0071】
5.残存濃度比
前記4の「吸光度2」の値を前記2の「吸光度1」の値で除した値に100を乗じて、「残存濃度比率」(単位:パーセント)の値を求めた。
【0072】
なお、この「残存濃度比率」の値が高い程、NADH又はNADPHが安定化されていると判断する。
【0073】
6.測定結果を表2に示した。
【0074】
【表2】
【0075】
この表より、カチオン部位を有する物質を共存させない場合に比べて、カチオン部位を有する物質を共存させた場合は、いずれも残存濃度比率が増加していることが分かる。
このことより、pH6.2~pH7.8の水溶液中において、NADH又はNADPHと共にカチオン部位を有する物質を共存させることにより、NADH及びNADPHを安定化することができることが確かめられた。