(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-13
(45)【発行日】2023-09-22
(54)【発明の名称】植物育成用鉢
(51)【国際特許分類】
A01G 31/00 20180101AFI20230914BHJP
【FI】
A01G31/00 611Z
(21)【出願番号】P 2019117337
(22)【出願日】2019-06-25
【審査請求日】2022-05-30
(73)【特許権者】
【識別番号】513260926
【氏名又は名称】新野 守信
(74)【代理人】
【識別番号】100090985
【氏名又は名称】村田 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】新野 守信
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3009115(JP,U)
【文献】特開2001-037357(JP,A)
【文献】特開2000-157079(JP,A)
【文献】国際公開第2016/059746(WO,A1)
【文献】登録実用新案第3214856(JP,U)
【文献】特開2004-267181(JP,A)
【文献】特開平09-084461(JP,A)
【文献】特開2005-138083(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室内やベランダ等の居住空間において、空豆等の大型種子の植物や球根植物を水耕栽培によって育成するのに適用する小型水耕栽培育成用鉢(1)であ
って、同鉢(1)が、上端が滑らかに拡径された円筒形状の樹脂製筐体(2)と、該筐体(2)の側壁に穿たれた8個の穿設孔(2a)を介して前後、左右にそれぞれ平行に折り返された可撓性で弾力性を有する紐状体(3)とで構成され、前記筐体(2)の前後、左右に平行に折り返された可撓性で弾力性を有する紐状体(3)を前記円筒形状の筐体(2)の中心部で交差させて井桁を形し、この井桁を上下に2段、45度の角度差を持って配設し、前記上下の井桁によって大型種子の上下や球根を把持する種子・球根把持部(4)を形成してなることを特徴とする植物育成用鉢。
【請求項2】
紐状体がゴム状弾性を示す天然ゴム、合成ゴムウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ポリ塩化ビニールゴム、オリフィン系ゴム、ポリスチレン系ゴム
、ポリエステル系ゴム、ポリアミド系ゴム等のエラストマー製の物であることを特徴とする請求項
1に記載の植物育成用鉢。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
空豆等の大型種子の食用植物や球根植物等を室内やベランダ等の居住空間において一株ごと水耕栽培によって育成する小型水耕栽培用育成鉢に関する。
【背景技術】
【0002】
居住空間で食用植物を水耕栽培で育成し収穫に適用するための装置や方法の発明がこれまでにも多数行われてきている。
例えば特許文献1には、
[請求項1]予め用意された小型の育成鉢内の、土植えした植物の苗、或いは、土中に挿し木した観葉植物である土付きの植物を、該育成鉢から土ごと取り出し培養液で培養するように構成した水耕栽培キッドであって、この育成鉢取り出した植物の土周りを囲む発泡石と、この発泡石て土周りを囲んだ植物を保持する保持体と、この保持体を水槽本体内の培養液に浮遊させる浮力体と、を備え、前記保持体は、前記発泡石の通過を禁止する一方、前記植物からはりだす根の通過を許容するような貫通孔を有するものであることを特徴とする水耕栽培キット。
[請求項2]前記浮力体は,前記保持体の上部のみを支持可能であることを特徴とする水耕栽培キット。
[請求項3]前記水槽本体の上部において前記浮力体を止めるストッパ手段を備えたことを特徴とする水耕栽培キット。
などとする水耕栽培キットが開示されており、
また特許文献2には、
[請求項1]水の漏らない水耕栽培用容器と、所定の間隔で多数の貫通孔が設けられた苗床と、該苗床を該水耕栽培用容器上に固定するための苗床固定具と、該苗床に設けられた貫通孔に嵌合可能であってスポンジ状で浸水性に富む発芽マットと、害す以降栽培用容器に満たされた水の中へ空気を送るための空気供給装置と、植物の種子と、肥料と、取扱説明書とが備えられており、該苗床と、該苗床固定具と、該発芽マットと、該エアポンプを有する空気供給装置と、該植物の種子と、該肥料と、該取扱説明書とが該水耕栽培用容器に収容されていることを特徴とする水耕栽培セット。
などとする水耕栽培セットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5476500号公報
【文献】実用新案登禄3103311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記2つの先行文献は、いずれも植物の水耕栽培に関する知識に乏しい人であっても水耕栽培を容易に居住空間内に取り入れられるようにしたものであるが、特許文献1の発明にあっては、予め用意した育成鉢に土植えした植物の苗、挿し木した観葉側物を土付きのまま発泡石で囲んでメッシュポットでなる保持体に移植するという作業が必要となり、
また特許文献2の発明においては、苗床に設けられた多数の貫通孔に嵌合されたスポンジ状の発芽マットに播種すればよいという簡便さがあるが、種子の大きい空豆等の豆類では発芽マット上に載置しただけでは培養液の種子への浸潤が充分でなく発芽し難いことが想定される。
本発明は、大型種子に十分な培養液を浸潤させて発芽を促し、併せて予め育成鉢に土植えし発芽後に水耕栽培装置の育苗部に移植する手作業を不要にする小型水耕栽培用育成鉢の提供を課題として行ったものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は上記従来技術における課題を下記の手段によって解決した。
(1)植物育成用鉢の内側に可塑性で弾力性を有する紐状体の複数本を水平にかつ交差させ格子状に張架してなることを特徴とする植物育成用鉢。
(2)可塑性で弾力性を有する紐状体の複数本の格子状の張架が植物育成用鉢の空間に複数段設けられてなることを特徴とする(1)に記載の植物育成用鉢。
(3)前記(1)又は(2)に記載の植物育成用鉢が、室内やベランダ等の居住空間において、空豆等の大型種子の植物や球根植物を水耕栽培によって育成するのに適用する小型水耕栽培用育成鉢であることを特徴とする植物育成用鉢。
(4)前記(3)に記載の小型水耕栽培用育成鉢が、上端が滑らかに拡径された円筒形状の樹脂製筐体と、該筐体の側壁に穿たれた8個の穿設孔を介して前後、左右にそれぞれ平行に折り返された可撓性で弾力性を有する紐状体とで構成され、前記筐体の前後、左右形平行に折り返された可撓性で弾力性を有する紐状体(3)を前記円筒形状の筐体の中心部で交差させて井桁を形し、この井桁を上下に2段、45度の角度差を持って配設し、前記上下の井桁によって大型種子の上下や球根を把持する種子・球根把持部を形成してなることを特徴とする植物栽培用育成鉢。
(5)紐状体がゴム状弾性を示す天然ゴム、合成ゴムウレタンゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ポリ塩化ビニールゴム、オリフィン系ゴム、ポリスチレン系ゴム、、ポリエステル系ゴム、ポリアミド系ゴム等のエラストマー製の物であることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の植物栽培用育成鉢。
【発明の効果】
【0006】
本発明の植物栽培用育成鉢によって下記の効果が発揮される。
〈1〉植物育成用鉢の内側に可塑性で弾力性を有する紐状体の複数本を水平にかつ交差させ格子状に張架し、そして該紐状体複数本の格子状張架が植物育成用鉢の空間に複数段設けられてなる植物育成用鉢であって、
この植物育成用鉢によって室内やベランダ等の居住空間において、空豆等の大型種子や球根植物を水耕栽培で育成するのに適応させられるよう、小型で上端が滑らかに拡径された円筒形状の樹脂製鉢(以下小型水耕栽培用育成鉢という)でなるので取り扱いやすく、
また、前記可撓性で弾力性を有する紐状体が、前記小型水耕栽培用育成鉢の側壁に穿たれた8個の穿設孔を介して前後、左右にそれぞれ平行に折り返され該小型水耕栽培用育成鉢の中心部で交差して井桁が形成され、この井桁を上下に2段、45度の角度差を持って配設し、前記上下の井桁によって大型種子の上下や球根を把持する種子・球根把持部を形成しているので、
大型種子を前記種子・球根把持部に把持させて培養液槽に配設すれば、培養液が充分に浸潤して発芽を促し、結実に至らせることができ、また、前記小型水耕栽培用育成鉢が、上端が緩やかに拡径した円筒体でなる筐体と可撓性で弾力性を有する紐状体のみで構成されており、製造しやすく、かつ前記種子・球根把持部の井桁に組まれた紐状体が指先で簡単に拡縮でき、種子や球根の把持作業が容易になし得る効果をも備えている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】本発明の小型水耕栽培用育成鉢の上面図(a)底面図(b)側面図(c)
【
図3】本発明の小型水耕栽培用育成鉢を個別に円形培養液槽へ配設する方法の説明図
【
図4】本発明の小型水耕栽培用育成鉢複数個を長方形培養液槽へ配設する方法の説明図
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明を実施するための形態を、実施例の図に基づいて説明する。
図1は本発明の小型水耕栽培用育成鉢の斜視図、
図2は本発明の小型水耕栽培用育成鉢の上面図(a)底面図(b)側面図(c)であり、
図3は本発明の小型水耕栽培用育成鉢を個別に円形培養液槽へ配設する方法の説明図、
図4は本発明の小型水耕栽培用育成鉢複数個を長方形培養液槽へ配設する方法の説明図である。
図において1は小型水耕栽培用育成鉢、2は育成鉢筐体、2aは筐体側壁に穿設された穿設孔、3は可撓性で弾力性を有する紐状体、4は種子・球根把持部、10は小型円形培養液槽、20は小型円形水槽、21は長方形水槽、22は長方形水槽へ小型水耕栽培用育成鉢を複数個を配設する際に使用する配設具を示す。
【0009】
本発明の小型水耕栽培用育成1は、
図1の斜視図、及び
図2(c)の側面図に示すように、上端が滑らかに拡径された円筒状の筐体2と、該筐体2の側壁に穿たれた8個の穿設孔2aを介して前後、左右にそれぞれ平行に折り返された可撓性で弾力性を有する紐状体3とで構成されている。
前記筐体2の前後、左右からそれぞれ平行に折り返された可撓性で弾力性を有する紐状体3は、
図2(a)の上面図、及び
図2(b)の底面図に示すように前記筐体2の中心部で井桁状に交差してなり、この井桁状の交差が
図1に見られるように上下に2段、45度の角度差を持って配設され[
図2参照]、この上下の井桁状の交差部によって大型種子や球根の上下を把持する種子・球根把持部4を形成している。
【0010】
この小型水耕栽培用育成鉢1は、
図3に示すように、小型水耕栽培用育成鉢1の筐体2の下部が挿入でき、上部開口が前記小型水耕栽培用育成鉢1の筐体2上端の拡径部を掛止できる形状の小型の円形培養液槽10を用意すれば、前記小型水耕栽培用育成鉢1を小型円形培養液槽10に装着するだけで簡便に使用でき、該円形培養液槽10に陶器等装飾性に富んだものを使用すれば、インテリアとしても活用できる。
また、
図4に示すように、長方形培養液槽20に、小型水耕栽培用育成鉢配設具21をを用いて小型水耕栽培用育成鉢1を複数個配設して大型種子の植物や球根植物を複数株、または複数種を同時に、あるいは育成時期をずらして栽培することも可能となる。
なお、
図4に示した小型水耕栽培用育成鉢装着具21はその一例であって、前記小型水耕栽培用育成鉢1の筐体2上端の拡径部を掛止する複数の掛止部21aと、該複数の掛止部21をそれぞれ所定間隔で連結する連結部21bと、連結された掛止部21の端部を前記直方体の培養液槽20の上部の開口に掛止し装着する装着部21cを備え、前記長方の培養液槽20に安定に装着できる形状のものであればよい。
【符号の説明】
【0011】
1:小型水耕栽培用育成鉢
2:育成鉢筐体
2a:穿設孔
3:可撓性の紐状体
4:種子.球根把持部
10:小型培養液槽
20:長方形培養液槽
21:小型水耕栽培用育成鉢装着具
21a:掛止部
21b:連結部
21c:装着部