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  • 特許-脈動吸収機能付きコネクタ 図1
  • 特許-脈動吸収機能付きコネクタ 図2
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  • 特許-脈動吸収機能付きコネクタ 図5A
  • 特許-脈動吸収機能付きコネクタ 図5B
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-13
(45)【発行日】2023-09-22
(54)【発明の名称】脈動吸収機能付きコネクタ
(51)【国際特許分類】
   F02M 55/00 20060101AFI20230914BHJP
   F02M 55/02 20060101ALI20230914BHJP
   F02M 37/00 20060101ALI20230914BHJP
   F16L 55/04 20060101ALI20230914BHJP
   F16J 3/02 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
F02M55/00 E
F02M55/02 310Z
F02M55/02 330C
F02M37/00 321A
F02M37/00 D
F16L55/04
F16J3/02 B
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019118070
(22)【出願日】2019-06-26
(65)【公開番号】P2021004565
(43)【公開日】2021-01-14
【審査請求日】2022-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000233619
【氏名又は名称】株式会社ニチリン
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】桝野 哲朗
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 一斉
【審査官】藤村 泰智
(56)【参考文献】
【文献】特表2000-517034(JP,A)
【文献】特開2004-183812(JP,A)
【文献】特公昭47-000347(JP,B1)
【文献】特開2010-077973(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 55/00 ~ 55/02
F02M 37/00
F16L 55/04
F16J 3/00 ~ 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプが挿入されるコネクタ本体部と、
前記コネクタ本体部から突出する継手部であって、前記コネクタ本体部の内部の流体流路と連通する流路を有する継手部と、
前記流体流路を流れる流体の脈動を吸収するための、ゴム材料からなる脈動吸収体と、
前記コネクタ本体部の内部に形成され、前記脈動吸収体を格納する格納室と、
を備え、
前記脈動吸収体は、
平板形状の膜部であって、外周縁部において前記コネクタ本体部に固定されて前記流体流路と前記格納室との間を仕切る膜部と、
前記膜部と一体成形された支柱部であって、前記格納室に配置される支柱部と、
を有し、
前記支柱部は、前記脈動吸収体の軸方向に延びると共に、当該軸方向において、前記格納室の内壁面に当接しており、
前記軸方向に直交する方向においては、前記支柱部と前記格納室の内壁面との間に隙間が形成されている、
脈動吸収機能付きコネクタ。
【請求項2】
請求項に記載の脈動吸収機能付きコネクタにおいて、
前記支柱部に、開口を有する空洞部が形成されている、
脈動吸収機能付きコネクタ。
【請求項3】
請求項に記載の脈動吸収機能付きコネクタにおいて、
前記空洞部は、前記脈動吸収体の軸方向に延び、
前記空洞部の前記膜部側の底角部がR面形状とされている、
脈動吸収機能付きコネクタ。
【請求項4】
請求項1~のいずれかに記載の脈動吸収機能付きコネクタにおいて、
前記膜部と前記支柱部の外周面との境界部がR面形状とされている、
脈動吸収機能付きコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脈動吸収機能を有するコネクタに関し、特に、燃料用配管などの接続に用いるのに好適な脈動吸収機能を有するコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のコネクタとして、例えば、特許文献1、2に記載のコネクタがある。特許文献1に記載のコネクタ(燃料配管用コネクタ)は、ハウジングと一体的に形成されたシリンダを備え、このシリンダの中にピストンが収容される。ピストンの外周部に形成された溝にはOリング(シール部材)が嵌装される。Oリングが嵌装された上記ピストンが脈動吸収の役割を担う。
【0003】
特許文献2に記載のコネクタ(流体継手)では、継手本体の内部に樹脂またはゴムからなるベローズ(脈動吸収体)が配置される。また、ベローズの内部にコイルばねなどの弾性体を内蔵させた形態も特許文献2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-163154号公報
【文献】特開2010-77973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2に記載のコネクタには、次のような問題がある。
特許文献1に記載のコネクタでは、Oリングがシリンダの内周面を摺動することで経年変化し、その結果、Oリングの摺動抵抗が変化する。これにより、脈動吸収の効果が変化することが懸念される。また、Oリングがシリンダの内周面を摺動することで磨耗し、その結果、Oリングのシール性能が低下することも懸念される。
【0006】
特許文献2に記載のコネクタでは、ベローズ内部の気密性を保つのが難しい。ベローズ内のガスが抜けると、脈動吸収の効果が変化することが懸念される。また、コイルばねなどの弾性体を内蔵した気密性を有するベローズを製作するのは難しい。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、脈動吸収の効果が変化しにくく、且つ、製作し易い構造の脈動吸収体を備える脈動吸収機能付きコネクタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、パイプが挿入されるコネクタ本体部と、前記コネクタ本体部から突出する継手部であって、前記コネクタ本体部の内部の流体流路と連通する流路を有する継手部と、前記流体流路を流れる流体の脈動を吸収するための、ゴム材料からなる脈動吸収体と、前記コネクタ本体部の内部に形成され、前記脈動吸収体を格納する格納室と、を備える脈動吸収機能付きコネクタである。前記脈動吸収体は、平板形状の膜部であって、外周縁部において前記コネクタ本体部に固定されて前記流体流路と前記格納室との間を仕切る膜部と、前記膜部と一体成形された支柱部であって、前記格納室に配置される支柱部と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明における脈動吸収体は、摺動部を有するものではなく、且つ、気密性が必要な内部空間を有するものでもないので、その脈動吸収の効果は変化しにくい。また、一体成形品であるので、製作も容易である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1実施形態に係る脈動吸収機能付きコネクタに、パイプが接続された状態の脈動吸収機能付きコネクタの斜視図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る脈動吸収機能付きコネクタに、パイプが接続された状態の脈動吸収機能付きコネクタの断面図である。
図3】本発明の第2実施形態に係る脈動吸収機能付きコネクタに、パイプが接続された状態の脈動吸収機能付きコネクタの斜視図である。
図4】本発明の第2実施形態に係る脈動吸収機能付きコネクタに、パイプが接続された状態の脈動吸収機能付きコネクタの断面図である。
図5A図2、4中に示す脈動吸収体の斜視図である。
図5B図2、4中に示す脈動吸収体の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しつつ説明する。本実施形態のコネクタ101、102(脈動吸収機能付きコネクタ)は、例えば、エンジンのインジェクタ(燃料噴射装置、不図示)に、燃料タンクから燃料(ガソリンなどの燃料油)を供給するための燃料配管系統において、配管接続に用いられるコネクタである。
【0012】
(第1実施形態)
図1、2に示す第1実施形態のコネクタ101は、パイプ50が挿入されるコネクタ本体部1と、コネクタ本体部1の側面から突出する雄継手部2(継手部)とを備えるL字形状のコネクタである。コネクタ本体部1は、上記雄継手部2を有するハウジング3と、ハウジング3の軸方向端部に固定された蓋体4とで構成される。なお、本実施形態では、上記ハウジング3と雄継手部2とは直交しているが、ハウジング3と雄継手部2とが直交している必要はなく、例えば、ハウジング3と雄継手部2とのなす角度が45度であってもよい。すなわち、上記の「L字形状」とは、ハウジング3と雄継手部2とのなす角度が、90度のものだけを含むのではなく、30度や45度や60度など、様々な角度をなすものも含まれる。
【0013】
雄継手部2には、例えば、燃料ホース(不図示)が接続される。なお、図1、2中に符号14を付して示す部品は、コネクタ本体部1にパイプ50を固定するためのリテーナと呼ばれる部品である。パイプ50のスプール部50a(環状凸部)とリテーナ14とが係合させられることで、パイプ50はコネクタ本体部1に固定(ロック)される。なお、リテーナ14のより具体的な例については、例えば、特開2015-48898号公報に記載のリテーナを参照されたい。
【0014】
ハウジング3の内部には、Oリング10、環状のスペーサ11、Oリング10、環状のスペーサ12がこの順で挿入されている。なお、本実施形態では、ハウジング3の内部に、Oリング10が2つ挿入されているが、Oリング10の個数は、これに限定されることはない。
【0015】
ここで、燃料が流れる雄継手部2の流路2a、ハウジング3内部の流体流路1a、および、パイプ50の流路50bは、燃料ポンプ(不図示)により、常時、高い圧力(燃料圧力)がかかった状態となる。そして、インジェクタから燃料が噴射されると、圧力は下がり、インジェクタの弁が閉じると、圧力は上昇する。この繰り返しにより圧力が変動し、この圧力変動が、燃料(流体)の脈動の原因となる。
【0016】
そこで、上記流路2a、流体流路1a、および、流路50bなどを流れる燃料(流体)の脈動を吸収するための脈動吸収体5が、コネクタ本体部1の軸方向端部の内部に形成された格納室1bに格納される。この脈動吸収体5は、平板形状の膜部6と、膜部6と一体成形された支柱部7とを有し、全てゴム材料(弾性変形可能な材料)からなる。なお、燃料に対する耐液性の観点から、ゴム材料の中でもフッ素ゴムで脈動吸収体5が形成されることが好ましい。膜部6と支柱部7とは、例えば、射出成形により一体成形される。
【0017】
上記膜部6は、その外周縁部6aにおいてコネクタ本体部1に固定されて、流体流路1aと格納室1bとの間を仕切る。
【0018】
支柱部7は、脈動吸収体5の軸方向に延びると共に、当該軸方向において、蓋体4の裏面4a(格納室1bの内壁面)に当接する。また、上記軸方向に直交する方向においては、支柱部7と格納室1bの内壁面との間に隙間Sが設けられる。支柱部7は、脈動吸収体5の軸方向に延びる空洞部8を有し、空洞部8は、膜部6とは反対側で開口する。空洞部8の膜部6側の底角部8aは、全周にわたってR面形状とされている。また、膜部6と支柱部7の外周面との境界部9も、全周にわたってR面形状とされている。
【0019】
コネクタ本体部1への脈動吸収体5の組み込みは、例えば、次のようにしてなされる。ハウジング3のパイプ50が挿入される側とは反対側の端部は、流体流路1aよりも内部空間が大径の筒状部13とされている。この筒状部13の内側段部13aに、脈動吸収体5の膜部6の外周縁部6aを当てる。そして、蓋体4の筒状の脚部4bを筒状部13に挿入し、脚部4bの先端を膜部6の外周縁部6aに押し付ける。その後、筒状部13と蓋体4とを溶着や接着などの方法で接合する。なお、ハウジング3、および、蓋体4は、例えば、樹脂製部品である。
【0020】
(第2実施形態)
図3、4は、本発明の第2実施形態のコネクタ102を示す。なお、このコネクタ102に関し、第1実施形態のL字形状のコネクタ101と同様の部品、部位については、第1実施形態の説明で用いた符号と同一の符号を付している。
【0021】
図3、4に示すように、コネクタ102は、パイプ50が挿入されるコネクタ本体部1と、コネクタ本体部1の軸方向端部から突出する雄継手部2(継手部)とを備える直線形状(ストレート型)のコネクタである。なお、本実施形態では、コネクタ本体部1と雄継手部2とは直線上に配置されているが、コネクタ本体部1に対して、雄継手部2が傾いていてもよい。
【0022】
コネクタ102では、ハウジング3のパイプ50が挿入される側とは反対側の端部側面に、脈動吸収体5を格納する格納室1bが形成される。この格納室1bは、ハウジング3の軸方向に対して、直交する方向へ延びるように形成されたハウジング3の一部である筒状部13と、筒状部13の開口を閉止する蓋体4とで区画形成される空間である。
【0023】
第1実施形態の場合と同様に、脈動吸収体5を構成する平板形状の膜部6は、その外周縁部6aにおいて、上記筒状部13の内側段部13aと蓋体4の脚部4bとで挟持されて、コネクタ本体部1に固定される。
【0024】
また、脈動吸収体5を構成する支柱部7は、脈動吸収体5の軸方向に延びると共に、当該軸方向において、蓋体4の裏面4a(格納室1bの内壁面)に当接する。また、上記軸方向に直交する方向においては、支柱部7と格納室1bの内壁面との間に隙間Sが設けられる。支柱部7に空洞部8が形成されたり、空洞部8の膜部6側の底角部8a、および、膜部6と支柱部7の外周面との境界部9が、全周にわたってR面形状とされたりしているのも、第1実施形態と同じである。
【0025】
(作用・効果)
コネクタ101、102によると、膜部6と支柱部7とで構成された脈動吸収体5が弾性変形することで、流体流路1aなどを流れる燃料の圧力変動が緩和され、燃料の脈動が抑えられる。その結果、インジェクタから噴射される燃料の量の誤差を所望の範囲内に抑え得る。また、脈動吸収体5を構成する支柱部7の硬度(ゴム材料の硬度)、外径、空洞部8の内径、膜部6の厚みなどを適宜調整することで、流体の様々な脈動周波数に対応することができる。また、脈動吸収体5は、摺動部を有するものではなく、且つ、気密性が必要な内部空間を有するものでもないので、その脈動吸収の効果は変化しにくい。さらに、脈動吸収体5は、一体成形品であるので、製作も容易である。
【0026】
また、上記支柱部7が、蓋体4の裏面4a(格納室1bの内壁面)に当接していることで、この支柱部7に裏側から支持されている膜部6の挙動(弾性変形)が安定し、脈動吸収の効果がより変化しにくい。
【0027】
また、脈動吸収体5の軸方向に直交する方向においては、支柱部7と格納室1bの内壁面との間に隙間Sが設けられていることで、当該直交する方向に、支柱部7が弾性変形し易くなり、脈動吸収の効果がより得られやすい。
【0028】
また、支柱部7に空洞部8を形成することで、流体の様々な脈動周波数に対応し易くなる。なお、脈動吸収体5の設計時点において、空洞部8の深さや内径を調整することで、流体の様々な脈動周波数に対応する。
【0029】
また、空洞部8の膜部6側の底角部8aが全周にわたってR面形状とされたり、膜部6と支柱部7の外周面との境界部9が全周にわたってR面形状とされたりすることで、膜部6と支柱部7との境界部(形状変化部)への応力集中を抑制することができ、脈動吸収体5の耐久性が向上する。
【0030】
(変形例)
上記の実施形態は、次のように変更可能である。
脈動吸収体5を構成する支柱部7と、蓋体4の裏面4a(格納室1bの内壁面)との間に隙間が形成されていてもよい。
【0031】
空洞部8を有さない中実の支柱部7とされてもよい。また、上記実施形態では、脈動吸収体5の軸方向に延びる空洞部8とされているが、当該軸方向に直交する方向など、軸方向とは異なる方向へ延びる空洞部が、支柱部7に形成されていてもよい。
【0032】
上記実施形態では、膜部6の裏面側(流体流路1aとは反対側)に支柱部7が1つ形成されているが、膜部6の裏面側(流体流路1aとは反対側)に、例えば、支柱部7よりも外径が小さい複数の支柱部が形成されてもよい。
【0033】
空洞部8の膜部6側の底角部8aがR面形状とされている必要は必ずしもなく、例えば、C面形状とされてもよいし、全周にわたっていなくてもよい。膜部6と支柱部7の外周面との境界部9についても同様であり、当該境界部9がR面形状とされている必要は必ずしもなく、例えば、C面形状とされてもよいし、全周にわたっていなくてもよい。
【0034】
コネクタ101、102の雄継手部2の部分については、この部分が、ネジ継手、フランジ継手などにされてもよい。
【0035】
また、コネクタ101、102の用途は、燃料用配管などの接続に限られるものではない。例えば、内部に水が流れる配管などの接続にコネクタ101、102を用いてもよい。脈動吸収体5で、水の脈動を抑えることができるとともに、水が凍ったときに、コネクタ本体部1や、接続されているパイプの割れを抑制することができる。さらには、圧縮空気が流れる配管などの接続用に、コネクタ101、102を用いてもよく、この用途では、圧縮空気の脈動が抑えられる。
【0036】
その他に、当業者が想定できる範囲で、種々の変更を行えることは勿論である。
【符号の説明】
【0037】
1:コネクタ本体部
1a:流体流路
1b:格納室
2:雄継手部(継手部)
2a:流路
5:脈動吸収体
6:膜部
6a:外周縁部
7:支柱部
8:空洞部
8a:底角部
9:境界部
50:パイプ
101、102:コネクタ(脈動吸収機能付きコネクタ)
S:隙間
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B