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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-13
(45)【発行日】2023-09-22
(54)【発明の名称】棒材取り扱い機の自動運転準備方法
(51)【国際特許分類】
   B23B 13/02 20060101AFI20230914BHJP
   B23B 15/00 20060101ALI20230914BHJP
   G05B 19/4063 20060101ALI20230914BHJP
   G05B 19/4067 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
B23B13/02 Z
B23B15/00 A
G05B19/4063 L
G05B19/4067
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019155565
(22)【出願日】2019-08-28
(65)【公開番号】P2021030396
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-07-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000127042
【氏名又は名称】株式会社アルプスツール
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 拓郎
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-001205(JP,A)
【文献】特開2011-158979(JP,A)
【文献】特開昭61-243506(JP,A)
【文献】特開平05-061523(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 13/00-08
B23B 15/00
B23Q 15/00
G05B 19/4063
G05B 19/4067
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
棒材加工機に棒材を供給する棒材供給機、棒材加工機によって加工された加工済みの棒材を該棒材加工機から受け取って排出する棒材排出機又は棒材加工機に棒材を供給すると共に、前記棒材加工機によって加工された加工済みの棒材を該棒材加工機から受け取って排出する棒材供給・排出機である棒材取り扱い機の自動運転準備方法であって、
前記棒材取り扱い機の停止前の動作状況を記憶する動作記憶工程と、
前記動作記憶工程で記憶された動作状況に基いて、自動運転開始条件を判別する自動運転開始条件判別工程と、
前記自動運転開始条件判別工程で全ての前記自動運転開始条件が成立していないと判別した場合に、全ての前記自動運転開始条件成立までの自動動作を所定の手順で行う条件成立工程と、
を有することを特徴とする棒材取り扱い機の自動運転準備方法。
【請求項2】
請求項1に記載の棒材取り扱い機の自動運転準備方法において、
動運転停止後の手動操作の内容を記憶する第2の動作記憶工程を有し、
前記自動運転開始条件判別工程は、前記動作記憶工程及び前記第2の動作記憶工程で記憶された動作状況に基づいて自動運転開始条件を判別することを特徴とする棒材取り扱い機の自動運転準備方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の棒材取り扱い機の自動運転準備方法において、
自動運転開始前のセットアップ時間を計測するセットアップ時間計測工程と、
該セットアップ時間が所定の時間を経過した場合に警告を発する警告工程と、
を備えることを特徴とする棒材取り扱い機の自動運転準備方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の棒材取り扱い機の自動運転準備方法において、
前記自動動作を開始及び継続することができる条件を満たしているか否かを判別するセットアップ判定工程を有することを特徴とする棒材取り扱い機の自動運転準備方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棒材供給機、棒材排出機及び棒材供給・排出機である棒材取り扱い機の自動運転開始方法に関し、特に、作業者自身が機体の状態を把握することなく、複雑な手動操作を省略して棒材取り扱い機の運転を開始することができる棒材取り扱い機の自動運転準備方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、棒材を棒材加工機に供給したり、棒材加工機で加工された棒材を取り出す装置として棒材供給機、棒材排出機及び棒材供給・排出機などの棒材取り扱い機が知られている。棒材加工機で加工された棒材を取り出す場合、棒材排出機が用いられている。これは、棒材加工機の主軸の延長線上にパイプを必要に応じて設け、フィンガーチャックを主軸中心線上に移動可能に配置してなるものであり、棒材の排出に際しては、フィンガーチャックが主軸中心線を移動して加工済みの棒材を受け取り、元の位置に復帰し、そこで棒材を解放する。これにより、人手を介さずに棒材の加工品を旋盤等から取り出すことができる。
【0003】
このような棒材排出機は種々の形態が知られているが、例えば、特許文献1に記載された棒材排出機が知られている。
【0004】
特許文献1に記載された棒材排出機は、棒材加工機の主軸の延長線上にて棒材の把持と解放を選択的に行うフィンガーチャックと、前記棒材を解放したフィンガーチャックが復帰する前記主軸の延長線上に設定された原位置とこれに平行に設けられた退避位置との二位置間で前記フィンガーチャックを往復動せしめる第1の往復駆動部と、前記フィンガーチャックが前記主軸から棒材を受け取って把持する前記主軸の延長線上に設定された棒材受取位置と前記原位置との二位置間で前記フィンガーチャックを往復動せしめる第2の往復駆動部と、前記フィンガーチャックが前記棒材受取位置から前記原位置に復帰する際にフィンガーチャックより棒材を受け取り、前記フィンガーチャックが前記原位置から前記退避位置に退避した後に前記主軸の延長線上に棒材を移送し、解放するクランプと、前記クランプが解放する棒材を受け取り、所定の排出位置へと送る受け部とを備えている。
【0005】
このような棒材排出機によれば、棒材加工機の主軸の延長線と平行にフィンガーチャックの退避位置を設定することができるので、棒材排出機の短縮化を図ることができると共に、省スペース化を図ることができる。
【0006】
また、棒材を棒材加工機に供給する棒材供給機が知られている。棒材供給機は種々の形態が知られているが、例えば特許文献2に示すような棒材供給機が知られている。棒材供給機は、棒材を載せるための受台と、前記受台を分割する仕切りとを備えた材料棚と、記材料棚から棒材を受け取る共にこの材料を加工装置へ搬送するサポート装置を備えている。また棒材の搬送方法は主種の形態が知られているが、例えば、棒材の後端をフィンガーチャックで把持した状態で加工機へと送り込み、加工機に送り込まれた棒材の先端部は、加工機のチャックで把持され、バイト等の工具により切削加工が行われている。さらに、棒材供給機や棒材排出機の機能を統合して、棒材加工機への棒材の供給及び加工された棒材の排出を行う棒材供給・排出機も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平4-343602号公報
【文献】特開2010-36307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来の棒材取り扱い機は、運転開始時に行われる自動運転開始までの手順は図6に示す手順で行われており、自動運転開始条件の判別は、作業員が棒材取り扱い機の状態を目視等で確認しながら自動運転開始条件の人による判別102を行ったうえで、条件成立のための手動操作103によって棒材取り扱い機を操作して自動運転開始操作を開始することができる全ての条件を成立させている。
【0009】
この自動運転開始条件の判別は、棒材取り扱い機を操作する作業員自身で機体の状態を把握し、条件成立のための手動操作にて自動運転を開始することができる状態まで各ユニットを動かす必要があった。この各ユニットを動かす作業は多数のユニットなどの状態を把握したうえで、全n個の条件が全て成立するまで適切な順序で操作することが求められることから、その取扱いには専門的な知識が必要であり、操作が未熟な作業員の場合には、これを行うことが難しいという問題があった。
【0010】
また、作業員の操作が未熟である場合には、誤操作によって機体の破損や作業員が怪我をするなどの可能性があり、作業員に相当の教育や訓練を行うのに多大な時間を要するという問題があった。
【0011】
本発明は、このような問題点を解決することを目的としており、どのような作業者が棒材取り扱い機の操作を行う場合であっても、複雑な手動操作を行うことなく、安全に棒材取り扱い機の運転を開始することができる棒材取り扱い機の自動運転開始方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明に係る棒材取り扱い機の自動運転準備方法は、棒材加工機に棒材を供給する棒材供給機、棒材加工機によって加工された加工済みの棒材を該棒材加工機から受け取って排出する棒材排出機又は棒材加工機に棒材を供給すると共に、前記棒材加工機によって加工された加工済みの棒材を該棒材加工機から受け取って排出する棒材供給・排出機である棒材取り扱い機の自動運転準備方法であって、前記棒材取り扱い機の停止前の動作状況を記憶する動作記憶工程と、前記動作記憶工程で記憶された動作状況に基いて、自動運転開始条件を判別する自動運転開始条件判別工程と、前記自動運転開始条件判別工程で全ての前記自動運転開始条件が成立していないと判別した場合に、全ての前記自動運転開始条件成立までの自動動作を所定の手順で行う条件成立工程と、を有することを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る棒材取り扱い機の自動運転準備方法において、動運転停止後の手動操作の内容を記憶する第2の動作記憶工程を有し、前記自動運転開始条件判別工程は、前記動作記憶工程及び前記第2の動作記憶工程で記憶された動作状況に基づいて自動運転開始条件を判別すると好適である。
【0014】
また、本発明に係る棒材取り扱い機の自動運転準備方法において、自動運転開始前のセットアップ時間を計測するセットアップ時間計測工程と、該セットアップ時間が所定の時間を経過した場合に警告を発する警告工程と、を備えると好適である。
【0015】
また、本発明に係る棒材取り扱い機の自動運転準備方法において、前記自動動作を開始及び継続することができる条件を満たしているか否かを判別するセットアップ判定工程を有すると好適である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、動作記憶工程で自動運転停止前の動作状況を記憶しており、当該記憶した動作状況に応じて、次の自動運転開始時に自動運転開始できる全ての条件が成立するまで各ユニット等を自動運転させて自動運転開始を行うので、作業者の誤操作を防止すると共に、作業者の習熟度に依らずに安全に棒材取り扱い機の自動運転を開始することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る自動運転準備手順を行う棒材取り扱い機の概要図。
図2】本発明の実施形態に係る棒材供給機の動作を示す概念図。
図3】本発明の実施形態に係る棒材排出機の動作を示す概念図。
図4】本発明の実施形態に係る棒材供給・排出機の動作を示す概念図。
図5】本発明の実施形態に係る自動運転準備手順のフロー図。
図6】従来の運転開始時に行われる自動運転開始までの手順を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る自動運転準備手順を行う棒材取り扱い機の概要図であり、図2は、本発明の実施形態に係る棒材供給機の動作を示す概念図であり、図3は、本発明の実施形態に係る棒材排出機の動作を示す概念図であり、図4は、本発明の実施形態に係る棒材供給・排出機の動作を示す概念図であり、図5は、本発明の実施形態に係る自動運転準備手順のフロー図である。
【0020】
まず、本実施形態に係る棒材取り扱い機について説明を行う。本明細書における棒材取り扱い機という用語は、棒材加工機に棒材を供給する棒材供給機、棒材加工機によって加工された加工済みの棒材を該棒材加工機から受け取って排出する棒材排出機又は棒材加工機に棒材を供給すると共に、前記棒材加工機によって加工された加工済みの棒材を該棒材加工機から受け取って排出する棒材供給・排出機を包含するものとして定義し、以下これらの棒材供給機、棒材排出機及び棒材供給・排出機を総括する用語として棒材取り扱い機の用語を用いて説明を行う。
【0021】
図1に示すように、棒材供給機1は、棒材加工機4に棒材11を供給する装置であり、棒材排出機2は、棒材加工機4によって加工された加工済みの棒材を棒材加工機4から受け取って排出する装置であり、棒材供給機1及び棒材排出機2は、棒材加工機4に近接して配置されている。なお、図示しないが、棒材供給・排出機も同様に棒材加工機4に近接して配置される。
【0022】
次に、棒材供給機1、棒材排出機2及び棒材供給・排出機3の動作について説明を行う、棒材供給機1は、図2(1)に示すように、予め棒材加工機4の主軸中心線M上にセットした棒材11をフィードパイプ13の先端に配置されたフィンガーチャック12で把持し、図2(2)に示すように、主軸中心線Mを通りながら棒材加工機4側へフィードパイプ13を前進させることで、棒材加工機4へ棒材11を供給している。
【0023】
図2(3)に示すように、加工プロセスの進行によって棒材11の長さが減少しこれ以上加工して製品を加工することができない長さとなると、図2(4)に示すように、加工後に残った棒材11が残材として棒材供給機1内に戻され、クランプ装置14にて把持し、図2(5)に示すように棒材11の残材をフィンガーチャック12から抜き出したのち、クランプ装置14を解放して棒材供給機1の機外へ残材を排出している。
【0024】
次に、図3に示すように、棒材排出機2は、棒材加工機4によって加工された加工済材料15を受け取って排出する装置であって、棒材供給機やその他の供給手段によって棒材加工機4内に供給された棒材が、加工後に棒材排出機2へ加工済材料15を受け渡すために主軸中心線M上の所定の位置へ移動される。図3(1)では、当該所定の位置として棒材加工機4の第二主軸16へ移動した場合について説明を行う。
【0025】
その後、図3(2)に示すように、加工済材料15受け取るために、棒材排出機2のフィードパイプ17が主軸中心線Mを通って棒材加工機4の第二主軸16内へ進入する。この時、加工済材料15を受け取りに行く前にフィードパイプ17の待機位置は任意の位置に設定可能であり、いわゆる機械原点に限定されない。
【0026】
図3(3)に示すように、加工済材料15をフィードパイプ17の先端に配置されたフィンガーチャック18で把持し、主軸中心線M上を通って後退し棒材排出機2内へ加工済材料15を持ち帰る。図3(4)に示すように、加工済材料15が棒材排出機2内に持ち帰られた後、当該加工済材料15は、棒材排出機2内において主軸中心線M上を移動可能なクランプ装置19に受け渡される。フィードパイプ17は、主軸中心線M上を移動するクランプ装置19との干渉を防ぐために、主軸中心線M上から外れる位置へ退避したのち、クランプ装置19が任意の排出位置まで移動する。
【0027】
図3(5)に示すように、クランプ装置19が排出位置まで移動すると、受け部20がクランプ装置19に接近してクランプ装置19から加工済材料15が受け渡される。その後、図3(6)に示すように、加工済材料15が受け渡された受け部20は、最終排出地点まで移動して加工済材料15を棒材排出機3外へ排出する。
【0028】
棒材供給・排出機3は、図4に示すように、棒材を棒材加工機4へ供給し、棒材加工機4によって加工された加工済材料15をそのまま機内に持ち帰り排出する装置である。図4(1)に示すように、棒材供給・排出機3は予め主軸中心線M上にセットした棒材11をフィードパイプ21の先端に配置されたフィンガーチャック22によって把持し、図4(2)に示すように、主軸中心線Mを通りながら棒材加工機4側へフィードパイプ21を前進させることで棒材加工機4へ棒材11を供給する。
【0029】
図4(3)に示すように、棒材加工機4において棒材11の加工が終了すると、加工済材料15は、棒材供給・排出機3へ主軸中心線Mを通って持ち帰られる。棒材供給・排出機3のフィードパイプ21先端に配置されたフィンガーチャック22は、ノックアウト機構が備わっているので、図4(4)に示すように、当該ノックアウト機構によって加工済材料15をフィンガーチャック22から抜くことができる。その後、加工済材料15は、図示しない排出機構によって機外へ排出される。
【0030】
このように、棒材供給機1は、棒材加工機4が加工を途中で停止した場合には、棒材供給機1の自動運転再開は、自動運転が停止した位置から再開可能であるが、これは前回の自動運転停止時とフィードパイプ13の位置が変わっていない場合に限られる。つまり、フィードパイプ13の位置が手動操作などによって変わっている場合には、自動運転を再開することができる状態までフィードパイプ13などの装置を手動操作によって動かさなければならない。
【0031】
また、棒材排出機2や棒材供給・排出機3についても、各動作工程の動作順序が重要であって、自動運転を再開できる状態を手動操作によって整えるには棒材排出機2の状態を適切に理解し、状態に応じた適切な操作を適切な手順で行う必要がある。
【0032】
このように、棒材取り扱い機は、機体の状態によって自動運転を開始することができる条件が変動する。例えば、棒材供給機1が自動運転を開始することができる条件は、棒材供給機1内の材料棚から新材を取り出して主軸中心線M上に材料をセットした後や、加工サイクル停止後にフィードパイプ13の位置が加工サイクル停止時と同じ位置にある場合、さらに、材料交換動作(残材持ち帰り動作)の直前からの自動運転開始など、数種類あるところ、後述する本実施形態に係る棒材取り扱い機の自動運転開始動作を行うことで、複雑な手動操作を行うことなく、安全に自動運転を開始させることが可能となる。
【0033】
次に、本実施形態に係る棒材取り扱い機の自動運転準備方法について説明を行う。本実施形態に係る棒材取り扱い機は、図5に示すような自動運転準備手順を実施する。以下の説明は、棒材取り扱い機のうち、棒材排出機2に適用した場合について説明を行う。この自動運転準備手順は、図示しない制御手段によって実行される。本実施形態に係る自動運転準備手順は、棒材排出機2の停止前の動作状況を記憶する動作記憶工程(S221)と、動作記憶工程(S221)で記憶された動作状況に基づいて、自動運転開始条件を判別する自動運転開始条件判別工程(S204)と、自動運転開始条件判別工程で全ての条件が成立していない場合に、条件成立までの自動運転を所定の手順で行う条件成立工程(S205)とを有している。
【0034】
すなわち、本実施形態に係る棒材排出機2の自動運転開始時には、前回の棒材排出機2の稼働時において自動運転中に記憶された自動運転停止前の動作状況を動作記憶工程(S221)から読み込んで、自動運転開始前の棒材排出機2の状態が自動運転を開始することができる条件を満たしているのかを自動運転開始条件判別工程(S204)において判別する。このとき、自動運転を開始することができる条件を満たしている場合には、セットアップ完了(S209)となり、作業者が棒材排出機2の操作部を操作して釦を押すなどの入力がなされる自動運転開始操作(S210)を行って自動運転が開始される(S211)。
【0035】
これに対し、自動運転開始条件判別工程(S204)において、自動運転を開始することができる条件を満たしていない場合には、条件成立工程(S205)を実行することで各ユニットを所定の位置に移動させ、加工済みのワークの排出動作などを行って自動運転開始位置まで復帰する動作を行う。
【0036】
この条件成立工程(S205)は、条件成立のための自動動作と、セットアップ時間計測工程(S203)で計測されたセットアップ時間が所定の時間を経過していないか判別するセットアップ時間確認工程(S206)と、全n個の条件が成立したかを判別する条件判別工程(S208)とを有している。条件成立のための自動動作(S205)は、棒材排出機1の機種ごとに定められた所定の手順を自動で行うものであり、動作記憶工程(S221)に記憶された自動停止前の動作状況に応じて、現状の棒材排出機2の状況を把握し、その後に必要とされる動作を上記手順に沿って自動で行う。これにより、例えば、棒材加工機から受け取った加工済みのワークを排出する工程は複数あるが、どのタイミングで停止している場合であっても、自動運転を開始することができる状態まで動作することができる。ここで、任意のタイミングで棒材排出機2が停止した場合でも各部の動作状況を記憶しているので、例えば非常停止などの緊急停止や電源遮断による停止後の自動運転開始時にも自動運転を開始するための全n個の条件が成立するまで自動動作を繰り返すことが可能なる。このように、棒材取り扱い機は、機体の状態に応じて自動運転開始の条件が変動し、その数が複数種類となっているため、自動運転準備を実行することで、数種類ある自動運転開始条件から、最適な条件を判別及び選択することが可能となる。
【0037】
また、条件成立のための自動動作(S205)を繰り返す間にセットアップ時間確認工程(S206)を行っており、セットアップ時間が所定の時間を経過した場合には、警告を発する警告工程(S207)を行う。これにより、何らかの要因によって自動運転を開始する条件が整わず、必要以上に条件成立のための自動動作を繰り返すことによってセットアップ時間が長くなることを防止している。
【0038】
さらに、条件成立の為の自動運転(S205)の前に、セットアップ実行判別(S222)を行うと好適である。セットアップ実行判別(S222)は、例えば、フィンガーチャックにより把持した材料が途中で脱落するなど、セットアップ動作を継続すると危険が生じる場合に任意アラーム(S223)を発することでセットアップ動作を停止するものであり、このセットアップ実行判別(S222)によって条件成立の為の自動運転(S205)の安全性を向上させている。
【0039】
このように、セットアップ時間が所定の時間内に全n個ある自動運転開始条件をすべて満たした場合、セットアップ完了(S209)となり、操作部などにセットアップが完了した旨が表示される。作業員は、操作部にセットアップが完了した旨が表示されたことを確認したうえで、自動運転開始操作のための釦操作などの人為的操作や外部信号による起動(S210)によって自動運転が開始される(S211)。
【0040】
自動運転が開始された後は、棒材排出機2の動作状況を記憶する動作記憶工程(S221)が常に棒材排出機2の動作状況を記憶している(S212~S214)ので、どのタイミングで棒材排出機2が停止した場合であっても自動運転停止前の棒材排出機2の状況を記憶することができる。
【0041】
なお、棒材排出機2の自動運転停止後に、作業員が手動操作によって棒材排出機2を操作することで、動作記憶工程で記憶している状況と異なる場合が考えられる。ここで、本実施形態に係る自動運転準備手順では、自動運転停止後の手動操作の内容を記憶する手動操作内容記憶工程(S217~S220)を実行する。
【0042】
具体的には、自動運転停止後に手動操作があったか否かを判別する手動操作判別工程(S217)によって手動操作が行われた場合には、手動操作の内容を記憶する手動操作の内(S218~S220)を動作状況記憶工程(S221)で記憶している。これにより、自動運転停止後の動作状況を記憶することで、手動操作による動作状況の変動があった場合にも適切な手順で条件成立のための自動動作(S205)を実行することが可能となる。
【0043】
このように、本実施形態に係る自動運転準備手順によれば、自動運転開始条件の自動判別は、手動操作および自動運転を問わず、常に動作記憶工程(S221)によって記憶されている動作状況に基づいて条件成立までの自動動作を行うことが可能となる。
【0044】
これにより、作業者が操作に不慣れで未熟な場合であっても、複雑な手動操作を行うことなく、自動運転開始のための準備動作を行うことができるので、誤操作による機体の損傷や作業者の負傷を防止することができるとともに、作業員への操作手順などの教育や訓練にかかる時間を大幅に短縮することが可能となる。
【0045】
なお、上述した自動運転準備手順は棒材排出機2に適用した場合について説明を行ったが、例えば、棒材供給機及び棒材供給・排出機に適用しても構わない。この場合、条件成立の為の自動動作(S205)は、棒材供給機や棒材供給・排出機に適用する場合には自動運転の具体的な内容は上述した棒材排出機2とは適宜変更される。例えば、上述した棒材排出機2に適用した場合には、棒材加工機から持ち帰った加工済みのワークを排出する工程が複数含まれるが、いずれの工程のどのようなタイミングで非常停止などの緊急停止や電源遮断などによって装置が停止した場合であっても自動運転を再開することができる状態まで自動動作を行う。この時、未排出の残材やワークが機体内に残存している場合には、まずこれらを排出する動作を行い、その後各機構が自動運転開始位置まで動作するように構成すると好適である。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれうることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0046】
1 棒材供給機, 2 棒材排出機, 3 棒材供給・排出機, 4 棒材加工機, S203 セットアップ時間計測工程, S204 自動運転開始条件判別工程, S205 条件成立工程, S221 動作記憶工程, S207 警告工程。
図1
図2
図3
図4
図5
図6