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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-13
(45)【発行日】2023-09-22
(54)【発明の名称】錠止機構付ロッカー
(51)【国際特許分類】
   E05B 65/02 20060101AFI20230914BHJP
   G07F 17/12 20060101ALN20230914BHJP
【FI】
E05B65/02 B
E05B65/02 D
G07F17/12
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019229173
(22)【出願日】2019-12-19
(65)【公開番号】P2021095815
(43)【公開日】2021-06-24
【審査請求日】2022-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】500359316
【氏名又は名称】株式会社サラインテリアシステム
(74)【代理人】
【識別番号】100092679
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 盛之助
(72)【発明者】
【氏名】堀 裕之
(72)【発明者】
【氏名】寺田 建也
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-240333(JP,A)
【文献】実開昭64-39590(JP,U)
【文献】登録実用新案第3211813(JP,U)
【文献】登録実用新案第3212994(JP,U)
【文献】実開平2-49457(JP,U)
【文献】実開昭63-088136(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2020/0066077(US,A1)
【文献】特開平5-321531(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00-85/28
A47G 29/00-29/30
G07F 17/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
を収納するための収納空間を有するロッカー本体と、
前記収納空間の正面側開口部を開閉する扉と、
前記扉を施錠するシリンダ錠を備えるシリンダ錠機構と、
前記収納空間の底部で支点を中心として上下に揺動可能な載置台と、
前記載置台にが載置された場合にのみ前記扉の施錠を可能とする錠止機構と、
を備えた錠止機構付ロッカーにおいて、
前記載置台の支点を、前記収納空間に対するの出し入れ方向中央よりも正面側に配置するとともに、同載置台の正面側端部にウェイトを取り付け、
前記ウェイトの重量を、前記載置台にが載置されていない状態において該載置台がその正面側端部を下として傾斜し、且つ、が前記載置台に載置されると該の軽重に関わらず前記載置台がその正面側端部を上として傾斜する値に設定したことを特徴とする錠止機構付ロッカー。
【請求項2】
前記ウェイトを金属プレートで構成し、該金属プレートを前記載置台の正面側端部に着脱可能に取り付けたことを特徴とする請求項1に記載の錠止機構付ロッカー。
【請求項3】
前記シリンダ錠機構は、
前記シリンダ錠にキーを挿し込んでこれを回すと該キーと共に一体に回動可能なラッチと、前記扉に設けられた出没可能な施錠阻止片と、を備え、
前記施錠阻止片は、前記扉が開いている状態では前記シリンダ錠に差し込まれた前記キーの回動と抜き取りを禁止することを特徴とする請求項1または2に記載の錠止機構付ロッカー。
【請求項4】
前記錠止機構は、前記ロッカー本体の正面側開口部側縁に形成された係合孔と、下端部が前記載置台の正面側端部に当接して該載置台の揺動に連動して上下動する連動ロッドと、を備え、
前記載置台上にが載置されていない状態では、前記連動ロッドが下限位置にあって前記係合孔の一部を塞いで前記ラッチの該係合孔への係合を禁止し、
前記載置台上にが載置された状態では、前記連動ロッドが前記載置台の揺動によって上動して前記係合孔を全開とすることによって前記ラッチの該係合孔への係合を許容することを特徴とする請求項3に記載の錠止機構付ロッカー。
【請求項5】
前記ウェイトと前記連動ロッドの重量を、前記載置台にが載置されていない状態において該載置台がその正面側端部を下として傾斜する値に設定したことを特徴とする請求項4に記載の錠止機構付ロッカー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収納空間にが収納された場合にのみ扉の施錠を行うことができる錠止機構付ロッカーに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、不特定多数の利用者が入場する飲食店や遊技場、大衆浴場などの施設には、入場する際に靴などを収納し、扉を閉じて施錠することができるロッカーが設置されている。このようなロッカーには、内部に靴などを収納しなくても、扉を閉じさえすれば施錠することができ、施錠に使用したキーを抜き取ることができるものがある。
【0003】
しかしながら、上記のようなロッカーにあっては、ロッカー内になどを収納しない状態で扉を閉じた後にキーを回して施錠すれば、そのキーをそのまま抜き取って持ち去ることができるという不具合がある。
【0004】
そこで、例えば、特許文献1~4には、収納空間にが収納された場合にのみ扉の施錠を行うことができる錠止機構付ロッカーが種々提案されている。例えば、ロッカーの収納空間底部に、支点を中心として揺動する載置台を設け、この載置台にが載置されていない状態では、載置台がバネによって付勢されて一方向に傾斜しているものが提案されている。このようなロッカーにおいては、載置台上にが載置されると、該載置台が支点を中心として他方向に傾斜するように揺動するため、この載置台の揺動を利用して扉の施錠を可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】実開昭63-88136号公報
【文献】実公平6-36205号公報
【文献】特許第5053203号公報
【文献】特許第5355964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、バネの付勢力によって載置台を支点を中心として傾斜させるようにした錠止機構付ロッカーにおいては、例えば、大人用の比較的重い靴を載置台に載置すると、載置台がバネの付勢力に抗して揺動して扉の施錠を可能とするが、子供用の軽い靴を載置台上に載置した場合には、載置台がバネの付勢力に抗して揺動することができず、扉を施錠することができないという問題がある。
【0007】
また、載置台にが載置されていない状態で該載置台を支点を中心として一方向に付勢する手段としてバネを用いる構成を採用すると、部品点数が増えて構造が複雑化するとともに、ばねの強さ(バネ定数)の設定に苦慮するという問題もある。
【0008】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたもので、その目的は、が収納された場合にのみ、そのの軽重とは無関係に扉の施錠が可能であり、部品点数の削減と構造の単純化を図ることができる錠止機構付ロッカーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、を収納するための収納空間を有するロッカー本体と、前記収納空間の正面側開口部を開閉する扉と、前記扉を施錠するシリンダ錠を備えるシリンダ錠機構と、前記収納空間の底部で支点を中心として上下に揺動可能な載置台と、前記載置台にが載置された場合にのみ前記扉の施錠を可能とする錠止機構と、を備えた錠止機構付ロッカーにおいて、前記載置台の支点を、前記収納空間に対するの出し入れ方向中央よりも正面側に配置するとともに、同載置台の正面側端部にウェイトを取り付け、前記ウェイトの重量を、前記載置台にが載置されていない状態において該載置台がその正面側端部を下として傾斜し、且つ、が前記載置台に載置されると該の軽重に関わらず前記載置台がその正面側端部を上として傾斜する値に設定したことを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、錠止機構付ロッカーの扉を開けて載置台上に載置すると、このの軽重に関わらず載置台がその正面側端部を上として傾斜し、この載置台の動作によって錠止機構が扉の施錠を可能とする。このため、が軽いために錠止機構が機能せず、扉の施錠が不可能になるという不具合の発生が防がれる。
【0011】
また、本発明に係る錠止機構付ロッカーには、その強さの設定が容易でないバネを用いることなく、ウェイトの重量の調整のみで錠止機構の感度を最適な値に容易に設定することができるとともに、部品点数を削減して構造の単純化を図ることができる。
【0012】
ここで、前記ウェイトを金属プレートで構成し、該金属プレートを前記載置台の正面側端部に着脱可能に取り付けるようにしてもよい。
【0013】
上記構成によれば、収納するの重量の幅が所定の範囲(錠止機構が機能する範囲)を超える場合には、重さ(厚さ)の異なる別の金属プレートに取り替えることによって、錠止機構が機能するの重量の範囲を簡単に変更することができる。
【0014】
また、前記錠止機構付ロッカーにおいて、前記シリンダ錠機構は、前記シリンダ錠にキーを挿し込んでこれを回すと該キーと共に一体に回動可能なラッチと、前記扉に設けられた出没可能な施錠阻止片と、を備え、前記施錠阻止片は、前記扉が開いている状態では前記シリンダ錠に差し込まれた前記キーの回動と抜き取りを禁止するようにしてもよい。
【0015】
上記構成によれば、扉が開いている状態では、シリンダ錠に差し込まれたキーの回動と抜き取りが施錠阻止片によって禁止されるため、正規の使用者以外のものがキーを抜き取って持ち去るなどの不具合が発生することがない。
【0016】
さらに、前記錠止機構付ロッカーにおいて、前記錠止機構は、前記ロッカー本体の正面側開口部側縁に形成された係合孔と、下端部が前記載置台の正面側端部に当接して該載置台の揺動に連動して上下動する連動ロッドと、を備え、前記載置台上にが載置されていない状態では、前記連動ロッドが下限位置にあって前記係合孔の一部を塞いで前記ラッチの該係合孔への係合を禁止し、前記載置台上にが載置された状態では、前記連動ロッドが前記載置台の揺動によって上動して前記係合孔を全開とすることによって前記ラッチの該係合孔への係合を許容するようにしてもよい。
【0017】
上記構成によれば、載置台にが載置されていない状態では連動ロッドが下限に位置して係合孔の一部を塞ぐため、ラッチの係合が阻止され、扉の施錠ができない。そして、載置台上にが載置されると、該載置台が揺動して連動ロッドを押し上げ、該連動ロッドによる係合孔の一部の閉鎖が解除されて係合孔が全開となるため、ラッチが係合孔に係合可能となって扉の施錠も可能となる。
【0018】
また、前記錠止機構付ロッカーにおいて、前記ウェイトと前記連動ロッドの重量を、前記載置台にが載置されていない状態において該載置台がその正面側端部を下として傾斜する値に設定してもよい。
【0019】
上記構成によれば、ウェイトと連動ロッドの重量を考慮し、これらの重量を適度に設定することによって、載置台にが載置されていない状態において該載置台がその正面側端部を下として傾斜するようにすることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、が収納された場合にのみ、そのの軽重とは無関係に扉の施錠が可能であり、部品点数の削減と構造の単純化を図ることができる錠止機構付ロッカーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係る錠止機構付ロッカーの正面図である。
図2】本発明に係る錠止機構付ロッカーの扉を開けた状態を示す斜視図である。
図3図1のA-A線断面図(を収納していない状態)である。
図4図4図3のB-B線断面図である。
図5】連動ロッドの側面図である。
図6図3の矢視C方向の図である。
図7図1のA-A線断面図(を収納している状態)である。
図8図7の矢視D方向の図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0023】
図1は本発明に係る錠止機構付ロッカーの正面図、図2は同錠止機構付ロッカーの扉を開けた状態を示す斜視図、図3図1のA-A線断面図(を収納していない状態)、図4図3のB-B線断面図、図5は連動ロッドの側面図、図6図3の矢視C方向の図、図7図1のA-A線断面図(を収納している状態)、図8図7の矢視D方向の図である。
【0024】
本実施の形態に係る錠止機構付ロッカー(以下、単に「ロッカー」と略称する)1は、として靴を収納するためのものであって、実際には、複数のロッカー1が縦横に整然と配列されているが、以下、1つのロッカー1についてのみ図示および説明する。
【0025】
本実施の形態に係るロッカー1は、図1および図2に示すように、矩形ボックス状のロッカー本体2を備えており、このロッカー本体2の内部には、正面側(図1および図2の手前側)が開口する収納空間Sが形成されている。この収納空間Sには、ロッカー本体1の正面側に開口する矩形の開口部2aから靴20(図7参照)が出し入れされるが、開口部2aは、矩形プレート状の扉3によって開閉される。
【0026】
上記扉3は、図2に示すように、ロッカー本体2の右側側壁(正面から見て右側の側壁)2bの開口部2aの周縁内面に取り付けられた上下2つのヒンジ4によって回動可能に支持されている。そして、この扉3の内面(裏面)には、図2に示すように、シリンダ錠機構5を収容したケース6が取り付けられている。また、扉3の外面(表面)には、図1に示すように、シリンダ錠機構5に設けられたシリンダ錠7の不図示のキー孔が露出しており、その横には把手8が設けられている。そして、扉3の把手8の横には、ロッカー1の外部から収納空間Sの内部を視認することができる透明な矩形の窓9が設けられている。
【0027】
扉3の内面(裏面)に取り付けられたシリンダ錠機構5は、シリンダ錠7(図1参照)と、該シリンダ錠7の不図示の軸に取り付けられた鍵状のラッチ10と、出没可能な施錠阻止片11とを備えている(図2参照)。ここで、ラッチ10は、シリンダ錠7の不図示のキー孔に差し込まれたキーK(図1参照)を回すと、このキーKと共に回動する。また、施錠阻止片11は、突出方向に常時付勢されており、扉3が開いている状態では、突出状態が維持されてシリンダ錠7のキー孔に差し込まれたキーKの回動とシリンダ錠7からの抜き取りを禁止する機能を果たす。
【0028】
ところで、図3に示すように、ロッカー本体2の収納空間Sの底部には、靴20(図7参照)を載置するための矩形平板状の載置台12が支点13を中心として上下に揺動可能に収容されている。ここで、載置台12の支点13は、収納空間Sに対するの出し入れ方向(図3の左右方向)中央よりも正面側(図3の左側)に配置されている。したがって、載置台12上に靴20が載置されていない状態では、通常は、載置台12の支点13よりも奥側(図3の右側)の部分の重量G1の方が支点13よりも正面側(図3の左側)の重量G2よりも大きいため(G1>G2)、該載置台12は、奥側端部(図3の右側端部)が下になるように傾斜する。
【0029】
ところが、本実施の形態では、載置台12の正面側端部(図3の左端部)の下面にウェイト14が取り付けられている。本実施の形態では、ウェイト14は、厚さの薄い金属プレートで構成されており、このウェイト14は、載置台12の下面に磁石や両面テープ、面ファスナーなどによって着脱可能に取り付けられている。したがって、ウェイト14の重量Gを適当に設定すれば、このウェイト14と載置台12の支点13よりも正面側(図3の左側)の重量によって載置台12を図3の反時計方向に回そうとするモーメントM2の方が、載置台12の支点13よりも奥側(図3の右側)の重量G2によって該載置台12を時計方向に回そうとするモーメントM1よりも大きくなる(M2>M1)。この結果、載置台12に靴20図7参照)が載置されていない図3に示す状態では、該載置台12は、支点13を中心として反時計方向に回動し、その正面側の端部(図3の左端部)が下になって収納空間Sの底面に当接した状態で斜めに傾斜した状態を保持している。
【0030】
また、本実施の形態に係るロッカー1においては、ロッカー本体2の左側壁(正面から見て左側の側壁)2cの正面側開口部の周縁内面には、図1に示すように、錠止機構15が設けられている。この錠止機構15は、図7に示すように、載置台12上に靴20が載置された場合にのみ扉3の施錠を可能とするものであって、図3に示すように、ロッカー本体2の左側壁2c、具体的には、左側壁2cの開口部2a周縁の内面に形成された上下方向に細長い矩形の係合孔16と、載置台12の支点13を中心とする揺動に連動して上下動する連動ロッド17を備えている。
【0031】
ここで、ロッカー本体2の左側壁2cの開口部2a周縁の正面側端部は、図4に示すように、内側(収納空間Sの奥側)にコの字状に折り曲げられて略四角筒状のガイド筒2dが上下方向(図4の紙面垂直方向)に沿って形成されており、このガイド筒2dの内部に平断面が略矩形筒状の連動ロッド17が上下動可能に嵌挿されている。本発明では、既製のロッカー本体2が具備するガイド筒2dの内部に矩形筒状の連動ロッド17をスッキリした形で収めて本発明の機構を構成するから、既製ロッカー本体2に本発明を容易に適用することができる。
【0032】
上記連動ロッド17は、図5に示すように、その下端に、直角に折り曲げられた矩形の係止片17aが形成されており、その上半部の前記係合孔16(図3参照)に対向する面には、係合孔16に連通する上下方向に細長い矩形の挿通孔17bが形成されている。そして、この連通ロッド17の挿通孔17bが形成された面の上端部(挿通孔17bの上の部分)は、矩形平面状のストッパ部17cが形成されている。なお、連動ロッド17の下端に形成された係合片17aに代えてスプリングピンなどの別部材を直角に取り付けてもよい。
【0033】
そして、連動ロッド17は、図3に示すように、その下端に形成された係止片17aが載置台12の正面側端部(図3の左端部)に当接しており、載置台12に靴20(図7参照)が載置されていない図3に示す状態では、該連通ロッド17は下限に位置している。この状態では、連通ロッド17の上端に形成されたストッパ部17cは、ロッカー本体2の左側壁2cの内面に形成された係合孔16の上端部に露出して該係合孔16を部分的に塞いでいる。
【0034】
ところで、シリンダ錠機構5に設けられた施錠阻止片11(図2参照)は、前述のように扉3が開いている状態では突出してキーKの回動と抜き取りを阻止しているが、扉3を閉じると、この扉3の閉じ動作によってロッカー本体2の一部に係合してケース6内に没する。この状態では、施錠阻止片11は、キーKの回動操作を許容するが、載置台12に靴20が載置されていない図3に示す状態では、前述のようにロッカー本体2側の係合孔16は、その一部が連動ロッド17の上端に形成されたストッパ部17cによって塞がれているため、図6に示すように、キーKを回してラッチ10を図示矢印方向(時計方向)に回動させても、該ラッチ10が連動ロッド17のストッパ部17cに当接してそれ以上回動することができない。このため、ラッチ10が係合孔16に係合することができず、扉3の施錠が不可能となる。そして、シリンダ錠7の構造上、キーKを施錠位置まで回すことができない状態ではキーKをシリンダ錠7から抜き取ることができない。
【0035】
これに対して、扉3を開けて図7に示すように靴20を載置台12上に載置すると、この靴20の重量によって載置台12が支点13を中心として時計方向に回そうとするモーメントM3が反時計方向に回そうとするモーメントM2よりも大きくなるため(M3>M2)、載置台12が支点13を中心として時計方向に揺動する。このため、載置台12は、その奥側端部(図7の右側端部)が収納空間Sの底面に当接した状態で、その正面側端部(図7の左端部)が上になるように傾斜した状態で静止する。
【0036】
上述のように、載置台12に靴20を載置したために該載置台12が支点13を中心として図7の時計方向に回動すると、その下端に形成された係止片17aが載置台12の正面側端部(図7の左端部)に当接する連動ロッド17が上動する。この結果、今まで係止孔16の一部を塞いでいた連動ロッド17のストッパ部17cが係合孔16から退避するため、係合孔16は全開状態となる。
【0037】
そして、上記状態において、シリンダ錠7に差し込まれたキーKを回せば、図8に示すように、ラッチ10がキーKと共に図示矢印方向(時計方向)回動し、該ラッチ10が係合孔16に係合して扉3の施錠を行う。このように、キーKが施錠位置まで回されることによって扉3が施錠状態になると、キーKをシリンダ錠7から抜き取ることができる。
【0038】
以上のように、本実施の形態に係るロッカー1においては、錠止機構15の作用によって、靴20が収納空間S内の載置台12上に載置されたときにのみ、扉3の施錠とキーKの抜き取りが可能になるため、収納空間Sに靴20を収納しないままの状態でキーKを抜き取ることができるという不具合の発生が確実に防がれるが、以下、ウェイト14の重量の設定について説明する。
【0039】
ウェイト14の重量は、収納空間S内の載置台12上に靴20が載置されていない図3に示す状態において、載置台12をその正面側端部(図3の左端部)が下になるように傾斜させるとともに、載置台12上に靴20が図7に示すように載置されると、該載置台12が支点13を中心として図7の時計方向に回動し、該載置台12がその正面側端部(図7の左端部)が上になるように傾斜するために必要な値に設定される。
【0040】
すなわち、載置台12上に靴20が載置されていない図3に示す状態において、該載置台12の支点13よりも奥側(図3の右側)の部分の重量をW1、同載置台12の支点13よりも正面側(図3の左側)部分の重量をW2、ウェイト14の重量をW、連動ロッド17の重量によって該連動ロッド17の係止片17aから載置台12に作用する押圧力をFとし、これらの重量W1,W2,Wと押圧力Fの作用点の支点13からの水平距離を図示のようにそれぞれL1,L2,L3,L4とする。この場合、載置台12を支点13を中心として図7の時計方向に回そうとするモーメントM1と、同載置台12を図7の反時計方向に回そうとするモーメントM2は、それぞれ次式によって求められる。
【0041】
M1=W1×L1 …(1)
M2=W2×L2+W×L3+F×L4 …(2)
したがって、載置台12上に靴20が載置されていない状態で該載置台12がその正面側端部(図3の左端部)が下になるように傾斜するためには、モーメントM1,M2の間に次の大小関係が成立する必要がある。
【0042】
M2<M1 …(3)
つまり、式(1),(2)より、ウェイト14の重量Wは、次の関係を満たす値である必要がある。
【0043】
W2×L2+W×L3+F×L4>W1×L1 …(4)
また、載置台12に靴20が載置されると、載置台12が図7に示すように支点13を中心として時計方向に回動するためには、靴20の重量をW3、この重量G3の作用点の支点13からの水平距離をL5とすると、載置台12を支点13を中心として時計方向に回そうとするモーメントM3は、次式にて求められる。
【0044】
M3=G1×L1+G3×L5 …(5)
したがって、載置台12が支点13を中心として図7の時計方向に回動するためには、次式の大小関係が成立する必要がある。
【0045】
M3>M2 …(6)
つまり、式(2)(5)より、ウェイト14の重量Wは、次の関係を満たす値である必要がある。
【0046】
W1×L1+W3×L5>W2×L2+W×L3+F×L4 …(7)
したがって、ウェイト14の重量Wは、式(4)と式(7)の何れも満たす値である必要がある。しかも、本実施の形態では、載置台12に載置される靴20の軽重に関わらず、つまり、靴20が子供用の軽いものであっても、大人用の重いものであっても、ウェイト14の重量Wは、式(4)と式(7)の何れも満たす値に設定される。より詳細には、本実施の形態では、式(2)から明らかなように、載置台12を支点13を中心として図3の反時計方向に回そうとするモーメントM2には、ウェイトの重量W2以外に、載置台12の支点13よりも正面側(図3の左側)の重量W2と連動ロッド17の押圧力Fによって決まるため、実際には、これらの重量W2(支点13の位置を変更することによって変化する)と連動ロッド17の押圧力F(連動ロッド17の重量を変えることによって変化する)を加味してウェイト14の重量Wが決定される。
【0047】
ここで、ウェイト14の重量Wは、靴20の軽重に関わらず式(4)と式(7)の何れも満たす値に設定されるが、それには靴20の重量W3が或る一定の範囲にあることが条件になる。したがって、靴20の重量の変化の幅が所定の範囲を超える場合には、ウェイト14を取り外して重量Wの異なるものに付け替える必要がある。この場合、ウェイト14は、前述のように載置台12に着脱可能に取り付けられているため、これを載置台12から容易に取り外して別の重量の異なるものと取り替えることができる。
【0048】
他方、当該ロッカー1の使用者が靴20を取り出すためにキーKをシリンダ錠7の不図示のキー孔に差し込んでこれを解錠方向に回せば、係合孔16に係合していたラッチ10がキーKと共に一体に図8の反時計方向に回動して係合孔16への係合が解除される。すると、使用者は、扉3の表面に設けられた把手8(図1参照)に手を掛けて扉3を手前側に引き、扉3を上下のヒンジ4を中心として回動させてこれを開くことができる。
【0049】
上述のように扉3を開くと、シリンダ錠機構5の施錠阻止片11(図2参照)が突出してキーKの回動と抜き取りを禁止する。そして、使用者は、ロッカー本体2の開口部2aから収納室Sの中へ手を入れ、収納室S内の載置台12上に載置されている靴20を取り出すことができる。このようにして靴20をロッカー1から取り出すと、載置台12が支点13を中心として揺動して図3に示すように正面側端部(図3の左端部)が下になるように傾斜するため、この載置台12の上面に係合する連動ロッド17が下動し、そのストッパ部17cが係合孔16の一部を塞ぎ、ロッカー1は、これに靴20を収納する前の図3に示す状態にリセットされる。
【0050】
以上のように、本実施の形態に係るロッカー1においては、扉3を開けて靴20を載置台12上に載置すると、この靴20の軽重に関わらず載置台12がその正面側端部を上として傾斜し、この載置台12の動作によって錠止機構15が扉3の施錠を可能とする。このため、靴20が軽いために錠止機構15が機能せず、扉3の施錠が不可能になるという不具合の発生が防がれる。
【0051】
また、本実施の形態に係るロッカー1には、その強さの設定が容易でないバネを用いることなく、ウェイト14の重量Wの調整のみで錠止機構15の感度を最適な値に容易に設定することができるとともに、ロッカー1の部品点数を削減して構造の単純化を図ることができる。
【0052】
そして、本実施の形態では、ウェイト14を金属プレートで構成し、該金属プレートを載置台12の正面側端部に着脱可能に取り付けるようにしたため、ロッカー1に収納する靴20の重量の幅が所定の範囲(錠止機構15が機能する範囲)を超える場合には、ウェイト14を重さ(厚さ)の異なる別の金属プレートに取り替えることによって、錠止機構15が機能する靴20の重量の範囲を簡単に変更することができる。
【0053】
なお、以上は本発明を靴を収納するための錠止機構付ロッカーに適用した形態について説明したが、本発明は、靴以外の任意の物品を収納するための錠止機構付ロッカーに対しても同様に適用可能である。
【0054】
その他、本発明は、以上説明した実施の形態に適用が限定されるものではなく、特許請求の範囲及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0055】
1 錠止機構付ロッカー
2 ロッカー本体
2a ロッカー本体の開口部
3 扉
5 シリンダ錠機構
7 シリンダ錠
10 ラッチ
11 施錠阻止片
12 載置台
13 載置台の支点
14 ウェイト
15 錠止機構
16 係合孔
17 連動ロッド
17a 連動ロッドの係止片
17b 連動ロッドの挿通孔
17c 連動ロッドのストッパ部
20
K キー
S 収納空間
W ウェイトの重量
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8