(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-13
(45)【発行日】2023-09-22
(54)【発明の名称】光演出装置
(51)【国際特許分類】
G03B 21/00 20060101AFI20230914BHJP
A63J 5/02 20060101ALI20230914BHJP
G10L 19/00 20130101ALI20230914BHJP
G10L 19/018 20130101ALI20230914BHJP
G10L 25/18 20130101ALI20230914BHJP
【FI】
G03B21/00 D
A63J5/02
G10L19/00 312F
G10L19/018
G10L25/18
(21)【出願番号】P 2020001339
(22)【出願日】2020-01-08
【審査請求日】2022-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】520008267
【氏名又は名称】株式会社カイロス
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100133592
【氏名又は名称】山口 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100162259
【氏名又は名称】末富 孝典
(74)【代理人】
【識別番号】100146916
【氏名又は名称】廣石 雅紀
(72)【発明者】
【氏名】伊達 さおり
(72)【発明者】
【氏名】上戸 一範
(72)【発明者】
【氏名】松山 敬太
【審査官】村上 遼太
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-146798(JP,A)
【文献】特開2016-072013(JP,A)
【文献】特開2006-065002(JP,A)
【文献】特開2006-323161(JP,A)
【文献】特開2019-033869(JP,A)
【文献】特開平11-235477(JP,A)
【文献】国際公開第2017/195326(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/163085(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2017-0024374(KR,A)
【文献】米国特許第07451077(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63J 1/00-99/00
A63K 1/00-99/00
F21K 9/00-9/90
F21S 2/00-45/70
G03B21/00-21/10
21/12-21/13
21/134-21/30
33/00-33/16
G10L13/00-13/10
19/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
楽曲と制御信号が記録された音響記録媒体から、前記楽曲と前記制御信号を読み出して、前記楽曲とともに、前記制御信号を音響信号の形で外部に出力する音響出力手段と、
前記音響出力手段から出力された前記制御信号に由来する前記音響信号を解析して、前記音響信号に含まれる周波数成分を検出する音響信号解析手段と、
演出光を投射する光投射手段と、
複数個の演出シナリオを、それぞれ、特定の周波数成分の組み合わせと紐付けて記録する演出シナリオ記録手段と、
前記音響信号解析手段において検出された前記音響信号に含まれる周波数成分の組み合わせと前記複数個の演出シナリオのそれぞれに紐付けられた周波数成分の組み合わせを照合して、当該音響信号に含まれる周波数成分の組み合わせに紐付けられた演出シナリオを前記演出シナリオ記録手段から読み出して、当該演出シナリオに基づいて、前記光投射手段が投射する前記演出光を変化させる演出光制御手段と、
を備える光演出装置。
【請求項2】
前記演出光制御手段は、前記光投射手段が投射する前記演出光の色彩、明るさ、あるいは投射方向の、少なくともいずれか一つを、時間の経過に従って変化させる、
請求項1に記載の光演出装置。
【請求項3】
楽曲と制御信号が記録された音響記録媒体から、前記楽曲と前記制御信号を読み出して、前記楽曲とともに、前記制御信号を音響信号の形で外部に出力する音響出力手段と、
前記音響出力手段から出力された前記制御信号に由来する前記音響信号を解析して、前記音響信号に含まれる周波数成分を検出する音響信号解析手段と、
複数個の光画像データを、それぞれ、特定の周波数成分の組み合わせと紐付けて記録する光画像データ記録手段と、
前記光画像データ記録手段に記録された任意の前記光画像データを読み出して、光画像を再生して、当該光画像を対象物に投影する光画像再生投影手段と、
前記音響信号解析手段において検出された前記音響信号に含まれる周波数成分の組み合わせと前記複数個の光画像データのそれぞれに紐付けられた周波数成分の組み合わせを照合して、当該音響信号に含まれる周波数成分の組み合わせに紐付けられた光画像データを前記光画像再生投影手段において、再生させ、当該光画像を対象物に投影させる光画像制御手段と、
を備える光演出装置。
【請求項4】
前記音響信号解析手段は、前記音響信号の特定の帯域に含まれる周波数成分を検出する周波数解析手段を備える、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の光演出装置。
【請求項5】
前記周波数解析手段は、前記音響信号の前記特定の帯域を周波数解析して得られる周波数スペクトルにおいて、顕著なピークを構成する周波数成分の組を検出する、
請求項4に記載の光演出装置。
【請求項6】
前記周波数解析手段は、前記音響信号の前記特定の帯域を周波数解析して得られる周波数スペクトルにおいて、最大の信号強度を示す第1のピーク及びそれに次ぐ信号強度を示す第2のピークのそれぞれを構成する周波数成分の組を検出する、
請求項5に記載の光演出装置。
【請求項7】
前記特定の帯域は、17,700~19,300Hzの範囲である
、
請求項4から請求項6のいずれか一項に記載の光演出装置。
【請求項8】
前記音響記録媒体に記録される前記制御信号は、制御信号の始まりを示すスタート信号、制御信号の終わりを示すフィニッシュ信号、及び前記スタート信号と前記フィニッシュ信号の中間にあって、前記周波数解析手段による解析対象となるデータ信号の、3個の要素で構成される、
請求項4から請求項7のいずれか一項に記載の光演出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、楽曲に合わせて、光を投射する光演出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、イベント会場、劇場、コンサートホール等において、会場内に設置されたスクリーンに画像を投影する演出がされる場合がある。また、コンサートホールにおいて、演奏される楽曲に合わせて照明を変化させる演出がされる場合がある。従来、このような演出は人手で行われていた。つまり、演出を開始するタイミングと終了するタイミングを担当者が判断して、その担当者が投影機あるいは照明器具の操作を行っていた。
【0003】
一方、近年は、照明あるいは画像による演出を自動化する試みがなされている。例えば、特許文献1には、演出情報を時系列で切り替えるシナリオ再生手段を備えて、シナリオ再生手段で再生されたシナリオに従って、画像を変調してスクリーンに投影する光演出装置が開示されている。また、この光演出装置は、音声発生装置を備えていて、画像による演出に合わせて音声を発生させることができる。特許文献2には、観客が叩く太鼓の音をマイクロホンで拾って、その太鼓の音に応じて、花火画像の外観を変化させて、スクリーンに投影する花火演出装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-146798号公報
【文献】特開2002-066163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の光演出装置によれば、事前に記録されたシナリオに従って画像を変調することができる。特許文献2に記載の花火演出装置によれば、観客が叩く太鼓の音に応じて、花火画像の外観を変化させることができる。しかしながら、いずれの装置も、画像の外観を変化させるものであって、複数の異なる画像の中から、特定の画像を選択してスクリーンに投影するという機能は備えていない。また、複数の演出シナリオの中から、特定の演出シナリオを選択して、実施するという機能は備えていない。そのため、演奏される楽曲に合わせて、所望の光演出を行うためには、人手による操作を必要とするという問題があった。
【0006】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、コンサート会場等において演奏される楽曲に応じて、所望の光演出を自動的に行うことができる光演出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の観点に係る光演出装置は、楽曲と制御信号が記録された音響記録媒体から、楽曲と制御信号を読み出して、楽曲とともに、制御信号を音響信号の形で外部に出力する音響出力手段と、音響出力手段から出力された制御信号に由来する音響信号を解析して、音響信号に含まれる周波数成分を検出する音響信号解析手段と、演出光を投射する光投射手段と、複数個の演出シナリオを、それぞれ、特定の周波数成分の組み合わせと紐付けて記録する演出シナリオ記録手段と、音響信号解析手段において検出された音響信号に含まれる周波数成分の組み合わせと複数個の演出シナリオのそれぞれに紐付けられた周波数成分の組み合わせを照合して、当該音響信号に含まれる周波数成分の組み合わせに紐付けられた演出シナリオを演出シナリオ記録手段から読み出して、当該演出シナリオに基づいて、光投射手段が投射する演出光を変化させる演出光制御手段と、を備えるものである。
【0008】
演出光制御手段は、光投射手段が投射する演出光の色彩、明るさ、あるいは投射方向の、少なくともいずれか一つを、時間の経過に従って変化させるものであっても良い。
【0009】
本発明の第2の観点に係る光演出装置は、楽曲と制御信号が記録された音響記録媒体から、楽曲と制御信号を読み出して、楽曲とともに、制御信号を音響信号の形で外部に出力する音響出力手段と、音響出力手段から出力された制御信号に由来する音響信号を解析して、音響信号に含まれる周波数成分を検出する音響信号解析手段と、複数個の光画像データを、それぞれ、特定の周波数成分の組み合わせと紐付けて記録する光画像データ記録手段と、光画像データ記録手段に記録された任意の光画像データを読み出して、光画像を再生して、当該光画像を対象物に投影する光画像再生投影手段と、音響信号解析手段において検出された音響信号に含まれる周波数成分の組み合わせと複数個の光画像データのそれぞれに紐付けられた周波数成分の組み合わせを照合して、当該音響信号に含まれる周波数成分の組み合わせに紐付けられた光画像データを光画像再生投影手段において、再生させ、当該光画像を対象物に投影させる光画像制御手段と、を備えるものである。
【0010】
音響信号解析手段に、音響信号の特定の帯域に含まれる周波数成分を検出する周波数解析手段を備えるようにしても良い。
【0011】
周波数解析手段が、音響信号の特定の帯域を周波数解析して得られる周波数スペクトルにおいて、顕著なピークを構成する周波数成分の組を検出するようにしても良い。
【0012】
周波数解析手段が、音響信号の特定の帯域を周波数解析して得られる周波数スペクトルにおいて、最大の信号強度を示す第1のピーク及びそれに次ぐ信号強度を示す第2のピークのそれぞれを構成する周波数成分の組を検出するようにしても良い。
【0013】
周波数解析手段が解析する特定の帯域は、17,700~19,300Hzの範囲であっても良い。
【0014】
音響記録媒体に記録される制御信号は、制御信号の始まりを示すスタート信号、制御信号の終わりを示すフィニッシュ信号、及びスタート信号とフィニッシュ信号の中間にあって、周波数解析手段による解析対象となるデータ信号の、3個の要素で構成されるようにしても良い。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、コンサート会場等において演奏される楽曲に応じた光演出を自動的に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施の形態に係る光演出装置の構成を示す構成図である。
【
図2】
図1に記載の光演出装置が備える制御装置の構成を示す制御ブロック図である。
【
図3】
図1に記載の光演出装置が備えるテープデッキにおいて使用される磁気テープに記録される楽曲データ及び制御信号データの構成を示す構成図である。
【
図4】
図1に記載の光演出装置が備える周波数解析装置で行われる周波数解析を説明する説明図である。
【
図5】
図1に記載の光演出装置が備える制御装置で実行される処理を説明するフローチャートである。
【
図6】本発明の第1の変形例に係る光演出装置の構成を示す構成図である。
【
図7】本発明の第2の変形例に係る制御信号の構成を示す説明図である。
【
図8】本発明の第2の変形例に係る制御信号の信号強度の変化を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態に係る光演出装置の構成と作用を、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図面においては、同一または同等の部分に同一の符号を付している。
【0018】
図1は、本発明の実施の形態に係る光演出装置1の構成を示す構成図である。
図1に示すように、光演出装置1は、テープデッキ2とスピーカ3と周波数解析装置4と制御装置5と投光器6とを備える。
【0019】
テープデッキ2は、事前に楽曲データと制御信号データが記録された磁気テープ7から、楽曲データと制御信号データを読み出して、電気信号に変換して出力する装置である。磁気テープ7に記録される楽曲データ及び制御信号データ、テープデッキ2で再生される楽曲及び制御信号の、構成と形式については後述する。
【0020】
スピーカ3は、テープデッキ2から出力される電気信号を音に変換して出力する装置である。テープデッキ2から出力される電気信号は、楽曲に係る電気信号に制御信号に係る電気信号が重畳されて構成されているので、スピーカ3からは、楽曲に制御信号音が重畳された音が、ステージ8に向けて放射される。制御信号音と楽曲との関係については後述する。なお、テープデッキ2とスピーカ3は、本発明の音響出力手段の具体的な構成の例示である。また、磁気テープ7は音響記録媒体の例示である。
【0021】
周波数解析装置4は、スピーカ3から出力される音を解析して、スピーカ3から出力される音に含まれる制御信号音を分離して、更に制御信号音に含まれる周波数成分を検出する装置である。制御信号音の分離と周波数成分の検出は、スピーカ3から出力される音をフーリエ解析して行う。なお、後述するように、制御信号音は、ヒトの可聴域の上限近くの、楽曲においては使用されない帯域を使用するので、スピーカ3から出力される音から制御信号音を分離することは容易である。なお、周波数解析装置4は、本発明の音響信号解析手段の具体的な構成の例示である。
【0022】
制御装置5は、周波数解析装置4によって分離された制御信号音に基づいて、投光器6を制御する装置であって、本発明の演出光制御手段の例示である。制御装置5の具体的な構成と作用については後述する。
【0023】
投光器6は、ステージ8に向けて演出光を投射する装置である。投光器6は、制御装置5に制御されて、投射光の色彩と明るさを変化させることができる。また、投光器6は、旋回架6aと揺動架6bを備えていて、X軸及びY軸周りに旋回及び揺動させて、演出光を投射することができる。旋回架6aと揺動架6bは、制御装置5によって制御される電動機を備えている。そのため、投光器6は、制御装置5によって制御されて、X軸及びY軸周りに旋回及び揺動する。つまり、投光器6は、制御装置5によって制御されて、演出光を投射する方向を変更することができる。なお、投光器6は、本発明の光投射手段の具体的な構成の例示である。
【0024】
図2は、制御装置5の構成を示す制御ブロック図である。
図2に示すように、制御装置5は、中央処理装置(CPU)5aと記憶部5bと入出力インターフェイス(I/O)5cを備えている。中央処理装置5aは、記憶部5bにインストールされたプログラムを順に読み込んで解釈・実行することで情報の加工を行う演算装置である。
【0025】
記憶部5bには、中央処理装置5aで実行されるプログラムの他に、複数個の演出シナリオ、つまり、投光器6が投射する投射光の色彩と明るさ及び投射方向を記述したデータが記憶される。なお、演出シナリオに記述される、投射光の色彩と明るさ及び投射方向は、一般に時間の経過とともに変化する動的なデータである。また、演出シナリオは、後述する周波数成分の組に紐付けした状態で記録されている。つまり、特定の周波数成分の組に特定の演出シナリオが対応する形で記録されている。
【0026】
入出力インターフェイス5cは、外部機器と中央処理装置5aの間でのデータの入出力を行う電気回路である。周波数解析装置4によって検出された周波数成分は入出力インターフェイス5cを介して中央処理装置5aに入力される。投光器6を制御する情報、つまり投光器6が投射する投射光の色彩と明るさ及び投射方向を制御する情報は、中央処理装置5aから入出力インターフェイス5cを介して投光器6に出力される。
【0027】
図3は、磁気テープ7に記録される楽曲データ及び制御信号データの構成を示す構成図である。
図3に示すように、磁気テープ7は、楽曲データを記録するトラック7aと制御信号データを記録するトラック7bを備えている。なお、磁気テープ7に記録されたデータは、
図3において左側にあるデータから順に読み出される。
【0028】
図3に示すように、磁気テープ7のトラック7aには、楽曲A,B,Cに係る楽曲データが記録されている。そのため、磁気テープ7に記録された楽曲データをテープデッキ2で読み出すと、楽曲A,B,Cが順に再生される。磁気テープ7のトラック7bには、制御信号P,Qに係る制御信号が記録されている。制御信号Pに係る制御信号データは、楽曲Bに係る楽曲データに先行して記録されている。そのため、テープデッキ2において、制御信号Pが再生されると、その後に、曲Bの再生が開始される。制御信号Qに係る制御信号データは、楽曲Cに係る楽曲データに先行して記録されている。そのため、テープデッキ2において、制御信号Qが再生されると、その後に、楽曲Cの再生が開始される。
【0029】
さて、ヒトの可聴域の上限は約20,000Hzとされているが、制御信号に由来する音響信号は、17,700~19,300Hzの帯域を使用する。また、この帯域は、楽曲音においては殆ど使用されない。また、後述するように、音響信号は極めて短時間だけ出力される。このように、音響信号は可聴域の上限近くの帯域を使用していて、しかも極めて短時間だけ出力される。そのため、楽曲Bに先立って制御信号Pに係る音響信号が、楽曲Cに先立って制御信号Qに係る音響信号が、それぞれ、スピーカ3から出力されても、ステージ8の周辺にいる観客には、殆ど聞こえない。
【0030】
図4は、周波数解析装置4で行われる周波数解析を説明する説明図である。周波数解析装置4にはスピーカ3から出力される音の波形9が入力される。前述したように、スピーカ3から出力される音には、楽曲音に制御信号音の波形10が重畳されている。周波数解析装置4は、一種のFFT(高速フーリエ解析)装置であって、入力された音の波形9から、制御信号音の波形10を分離する。さらに、周波数解析装置4は制御信号音の波形10をスペクトル解析して、制御信号音の波形10の周波数スペクトル11を求める。さらに、周波数スペクトル11に含まれていて顕著なピークを示す周波数成分F
1,F
2,‥‥F
nを求める。周波数解析装置4による周波数解析は、光演出装置1の動作中に常時行われていて。周波数解析装置4が制御信号音の波形10を検出すると、周波数解析装置4は制御信号音の波形10の周波数スペクトル11を制御装置5に出力する。
【0031】
図5は、制御装置5で実行される処理を説明するフローチャートである。なお、該処理は制御装置5の記憶部5bに記憶された光演出プログラムを中央処理装置5aが読み出して、逐次実行することによって行われる。光演出プログラムは、光演出装置1が起動中は常時実行される。そのため、光演出装置1の主電源がON状態にある場合(ステップ1:Yes)はステップ2に進み、光演出装置1の主電源がON状態にない場合(ステップ1:No)は処理を終える。ステップ2において、周波数スペクトル11の制御装置5への入力が検出されたら(ステップ2:Yes)、ステップ3に進む。周波数スペクトル11が制御装置5に入力されなかったら(ステップ2:No)、ステップ1に戻る。このように、周波数スペクトル11の制御装置5への入力が検出されるまで、ステップ2とステップ1の間でループを続ける。
【0032】
ステップ3においては、制御装置5に入力された周波数スペクトル11に含まれていて顕著なピークを示す周波数成分F1,F2,‥‥Fnを、記憶部5bに記憶された演出シナリオと照合する。そして、当該周波数成分F1,F2,‥‥Fnの組み合わせに紐付けられた演出シナリオが記憶部5bに記憶されていれば(ステップ4:Yes)、当該演出シナリオを記憶部5bから読み出して、ステップ5に進む。該当する演出シナリオが、記憶部5bに記憶されていなければ(ステップ4:No)、ステップ1に戻る。
【0033】
ステップ5においては、記憶部5bから読み出した当該特定の演出シナリオに基づいて、投光器6を制御して動作させる。つまり、当該特定の演出シナリオに従って、投光器6が投射する投射光の色彩と明るさ及び投射方向を変化させて、光演出を行う。光演出が終わったら、ステップ1に戻る。
【0034】
このように、光演出装置1によれば、特定の楽曲を、スピーカ3からステージ8に向けて出力させる際に、その楽曲の出力に先立って、制御信号音がスピーカ3からステージ8に向けて出力される。そして、その制御信号音に紐付けられた演出シナリオに従って、投光器6が制御されて、光演出が実施される。そのため、光演出の実施に人手を必要としない。つまり、特定の楽曲の演奏開始のタイミングに合わせて、担当者が制御装置5を操作して、光演出を開始する必要がない。あるいは、演奏される楽曲に応じて、担当者が演出シナリオを選択して、当該演出シナリオによる光演出を制御装置5にさせる必要がない。
【0035】
なお、上記においては、楽曲B,Cの演奏に先立って、制御信号P,Qに係る信号音が出力されるので、楽曲B,Cの演奏開始と同時に光演出が開始される。しかしながら、光演出装置1は楽曲の演奏と光演出が同時に開始されるものには限定されない。光演出装置1において、楽曲の演奏開始と光演出の開始のタイミングの前後は、磁気テープ7における制御信号の記録位置を調整することによって、自由に調整できる。光演出装置1においては、楽曲の演奏開始に先立って、光演出を開始することもできる。楽曲の演奏開始に後れて、光演出を開始することもできる。また、光演出を継続する時間も、演出シナリオにおいて任意に設定できる。
【0036】
また、制御装置5において照合される周波数成分の組を構成する周波数成分の数は任意である。周波数成分の組は1個の周波数成分で構成されても良いし、2個あるいは3個以上の周波数成分で構成されても良い。また、制御装置5において照合される周波数成分の組が2個の周波数成分で構成される場合に、制御信号音を周波数解析して得られた周波数スペクトル11において、最大の信号強度を示すピーク及びそれに次ぐ信号強度を示すピークのそれぞれを構成する周波数成分を検出して、その2個の周波数成分の組を、演出シナリオに紐付された周波数成分の組と照合するようにしても良い。
【0037】
(第1の変形例)
光演出装置1は投光器6を備えて、投光器6から投射される演出光の色彩あるいは明るさ、あるいは演出光が投射される方向を変化させるものには限定されない。
図6に示すように、投光器6に代えて、投影機21を備えて、ステージ8に設置されたスクリーン22に光画像を投影するようにしても良い。本変形例においては、制御装置5に演出シナリオに代えて、複数個の光画像データが記憶されている。また、制御装置5に記憶された光画像データのそれぞれには周波数成分F
1,F
2,‥‥F
nの組み合わせが紐付けられている。投影機21は、制御装置5によって制御されて、制御装置5によって指定された光画像データを制御装置5から読み出して、当該光画像をスクリーン22に投影することができる。なお、投影機21は、本発明の光画像再生投影手段の例示である。
【0038】
このように構成されているので、本変形例に係る光演出装置1によれば、特定の楽曲を、スピーカ3からステージ8に向けて出力させる際に、その楽曲の出力に先立って、制御信号音がスピーカ3からステージ8に向けて出力される。そして、その制御信号音に紐付けられた光画像データが投影機21に読みだされて、再生され、スクリーンに投影される。そのため、光画像の選択と投影に人手を必要としない。つまり、特定の楽曲の演奏開始のタイミングに合わせて、担当者が制御装置5を操作して、画像の投影による光演出を開始する必要がない。あるいは、演奏される楽曲に応じて、担当者が画像を選択して、当該画像の投影による光演出を制御装置5にさせる必要がない。
【0039】
なお、上記変形例において、投影機21がスクリーン22に投影する光画像の種類は限定されない。光画像は静止画像であっても良いし動画像であっても良い。あるいは、複数個の静止画像の短時間で切り替えて連続的に投影しても良い。光画像は、実写画像であっても良いし、手書きあるいはCGによるアニメーション画像であっても良い。
【0040】
光演出装置1に、投光器6と投影機21の両方を備えて、演出光による光演出と光画像による光演出を、同時に、あるいは順次切り替えて、実施できるようにしても良い。
【0041】
(第2の変形例)
磁気テープ7に記録される制御信号31は、
図7に示されるものであっても良い。すなわち、
図7に示すように、制御信号31は、再生時間にして600msに渉って磁気テープ7に記録されている。制御信号31は、スタート信号31S、データ信号31D及びフィニッシュ信号31Fの3個の要素に区分されている。スタート信号31Sは制御信号31の始まりを示す部分であり、スタート信号31Sであることを示す特定の周波数成分が含まれる。データ信号31Dは制御信号31の本体部分であって、記憶部5bに記憶された演出シナリオに紐付けられた周波数成分と照合される周波数成分が含まれる。フィニッシュ信号31Fは制御信号31の終わりを示す部分であり、フィニッシュ信号31Fであることを示す特定の周波数成分が含まれる。
【0042】
これらの信号は、それぞれ、再生時間にして200msに渉って磁気テープ7に記録されている。また、制御信号31は全体として、はフェードインし、フェードアウトするように記録されている。すなわち、
図8に示すように、スタート信号31Sの信号強度は始端において0に設定され、その後、漸増される。このように、スタート信号31Sはフェードインする。そして信号強度が最大値に達すると、その最大値が維持される。この最大値は、データ信号31Dの全区間で維持され、さらにフィニッシュ信号31Fの途中まで維持される。その後、フィニッシュ信号31Fの信号強度は漸減され、終端で0になる。このように、フィニッシュ信号31Fはフェードアウトする。制御信号31が全体としてフェードイン、フェードアウトするよう構成すれば、スピーカ3から出力される信号音がフェードイン、フェードアウトするので、観客が信号音を更に認識しにくくなる。その一方で、データ信号31Dの信号強度は最大にされるので、周波数解析装置4におけるエラーの発生が抑制される。
【0043】
また、本変形例においては、制御装置5は、制御信号31にスタート信号31S、データ信号31D及びフィニッシュ信号31Fの3個の要素が含まれることを認識した場合にのみ、光演出を実行するように構成されている。そのため、本変形例によれば、ノイズに起因する誤動作の発生を抑制できる。
【0044】
以上、説明したように、上記の実施の形態及び各変形例に係る光演出装置1によれば、楽曲の演奏に合わせて光演出を自動的に実施することができる。また光演出のタイミング調整に人手による操作あるいは判断を必要としないので、光演出を省力化できる。
【0045】
しかしながら、本発明の技術的範囲は、上記の実施の形態及び各変形例によっては限定されない。本発明は、特許請求の範囲に記載の技術的思想の限りにおいて、自由に変形、応用、または改良して実施することができる。
【0046】
上記の実施の形態においては、音響信号に使用する帯域として、17,700~19,300Hzの帯域を例示したが、本発明の技術的範囲は17,700~19,300Hzの帯域を使用するものには限定されない。スピーカ3から出力される楽曲に使用されない帯域であって、ヒトの可聴帯域の上限に近い帯域を任意に選択することができる。スピーカ3からの出力が可能でれあれば、ヒトの可聴帯域の上限を超える帯域を、音響信号に使用するようにしても良い。
【0047】
上記の実施の形態及び第1の変形例においては、ステージ8を備える場所に光演出装置1を設置する例を示したが、本発明に係る光演出装置はステージ8を備える場所に設置されるものには限定されない。本発明に係る光演出装置は、楽曲の演奏に合わせて光演出を行う場所であれば、どこにでも設置できる。
【0048】
上記の第1の変形例においては、光演出装置1を設置する場所にスクリーン22を備えて、光画像を投影する例を示したが、本発明に係る光演出装置は光画像をスクリーン22に投影するものには限定されない。本発明に係る光演出装置が光画像を投影する対象は、その場にある物体であれば何でも良い。光画像を投影する対象は、例えば施設の壁であっても良いし、その場に仮設された舞台装置であっても良い。本発明に係る光演出装置が光画像を投影する対象は、その場に物理的に固定されたものには限定されない。例えば、その場に一時的に発生させたミストあるいはスモークに光画像を投影するようにしても良い。
【0049】
上記の実施の形態及び第1の変形例においては、テープデッキ2とスピーカ3で音響出力手段を構成する例を示したが、本発明の音響出力手段はテープデッキ2を備えるものには限定されない。また、上記の実施の形態及び第1の変形例においては、音響記録媒体の具体的例として磁気テープ7を例示したが、本発明の音響記録媒体は磁気テープ7には限定されない。本発明の音響出力手段においては各種の音響記録媒体を任意に選択して使用することができる。要するに、音響記録媒体は、音響信号を記録して、読み出すことができれば十分であり、その原理あるいは構成は限定されない。音響出力手段の原理あるいは構成も限定されない。
【0050】
上記の第1の変形例においては、光画像データを制御装置5の記憶部5bに記憶させる例を示したが、光画像データを記憶する装置は記憶部5bには限定されない。光画像データを記憶する装置は、制御装置5に外付けされていても良い。光画像データを媒体に記録して、その媒体から光画像データを読みだすようにしても良い。
【0051】
本発明に係る光演出装置が出力する楽曲のジャンルあるいは構成は限定されない。本発明に係る光演出装置は楽曲の構成要素の全てを出力するものには限定されない。本発明に係る光演出装置は、楽曲の構成要素の一部を出力するものであっても良い。本発明に係る光演出装置は、例えば、生バンドの演奏と組み合せて使用されるものであって、当該生バンドの演奏に伴奏を追加するものであっても良い。
【0052】
以上、説明したように、上記実施の形態及び各変形例に係る光演出装置1によれば、楽曲の演奏に合わせて光演出を自動的に実施することができる。また光演出のタイミング調整に人手による操作あるいは判断を必要としないので、光演出を省力化できる。
【符号の説明】
【0053】
1 光演出装置、2 テープデッキ、3 スピーカ、4 周波数解析装置、5 制御装置、5a 中央処理装置(CPU)、5b 記憶部、5c 入出力インターフェイス(I/O)、6 投光器、6a 旋回架6a、6b 揺動架、7 磁気テープ、7a,7b トラック7b、8 ステージ、9,10 波形、11 スペクトル、21 投影機、22 スクリーン、31 制御信号、31S スタート信号、31D データ信号、31F フィニッシュ信号