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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-13
(45)【発行日】2023-09-22
(54)【発明の名称】電卓
(51)【国際特許分類】
   G06F 15/02 20060101AFI20230914BHJP
【FI】
G06F15/02 310Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020114526
(22)【出願日】2020-07-02
(65)【公開番号】P2022012588
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2022-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】320005855
【氏名又は名称】根来川 弘充
(74)【代理人】
【識別番号】100081673
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100141483
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 生吾
(72)【発明者】
【氏名】根来川 弘充
【審査官】漆原 孝治
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-067116(JP,A)
【文献】特開平11-066012(JP,A)
【文献】特開2002-032348(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
数字入力を行うための数字キーと、
演算処理内容を指定するための演算指定キーと、
前記数字キーによる入力数字及び演算処理の結果として得られる演算結果数字を表示するための表示部と、
所定のタイミングにおいて前記入力数字、前記演算結果数字及び演算処理内容を記憶させるためのメモリと、
前記演算指定キーが入力された時点で前記表示部に表示させていた数字及び当該演算指定キーが示す演算処理内容をそれぞれ前記メモリに記憶させる記憶処理部と、
入力操作に基づいた数字を前記表示部に表示させた状態で前記演算指定キーが入力された時点において既に前記記憶処理部によって記憶させた数字が存在する場合、1つ前の演算指定キーの入力によって記憶された第1数字と、1つ前の演算指定キーが示す演算処理内容と、1つ前の演算指定キーの入力後であって当該演算指定キーの入力前に前記数字キーによって入力された第2数字とを用いて演算処理を実行する演算処理部と、
所定規則に従って前記表示部に対する表示処理を実行する表示処理部と
を備えた電卓であって、
前記メモリは、一連の演算過程において記憶させる複数の数字について、記憶させた時系列関係を把握し得る態様にて記憶可能な複数領域からなる時系列記憶領域を備えており、
前記記憶処理部は、一連の演算過程において記憶させる複数の数字を前記時系列記憶領域に対して時系列順に記憶させるものとし、
さらに、
前記時系列記憶領域に記憶させた数字が複数存在する場合に、1回押下毎に現在表示中の数字よりも1つ前に記憶させた数字を表示させる「戻る」キーと、
前記時系列記憶領域に記憶させた数字が複数存在する場合に、1回押下毎に現在表示中の数字よりも1つ後に記憶させた数字を表示させる「進む」キーと
を備え、
前記「戻る」キー及び/又は「進む」キーを使用することによって前記時系列記憶領域に記憶させた時系列関係にある複数の数字の何れかを前記表示部に表示させた状態において前記演算指定キーに含まれた加減乗除キーが入力された場合、当該表示させた数字よりも時系列的に一つ前に記憶させた数字と、当該加減乗除キーの入力後に入力された数字との演算を行う上書処理に移行し、
前記演算処理部は、上書処理移行後に入力された数字に続けて前記加減乗除キーが入力された場合、上書処理移行時に表示していた数字の時系列的に一つ前に記憶している数字と、上書処理移行のトリガーとして入力された前記加減乗除キーが示す演算処理内容と、上書処理移行後に入力された数字との3つのみを用いて上書演算処理を実行するようにし、
前記表示処理部は、前記上書演算処理の実行結果である演算結果数字を前記表示部に表示させるようにした
ことを特徴とする電卓。
【請求項2】
前記記憶処理部は、上書処理移行後に入力された数字に続けて前記演算指定キーが入力された場合、上書処理移行時に表示していた数字の時系列的に一つ前に記憶している数字の続きとして上書処理移行後に入力された数字を、上書き処理移行前とは異なる時系列として前記時系列記憶領域に対して記憶させるようにした
ことを特徴とする請求項1記載の電卓。
【請求項3】
数字入力を行うための数字キーと、
演算処理内容を指定するための演算指定キーと、
前記数字キーによる入力数字及び演算処理の結果として得られる演算結果数字を表示するための表示部と、
所定のタイミングにおいて前記入力数字、前記演算結果数字及び演算処理内容を記憶させるためのメモリと、
前記演算指定キーが入力された時点で前記表示部に表示させていた数字及び当該演算指定キーが示す演算処理内容をそれぞれ前記メモリに記憶させる記憶処理部と、
入力操作に基づいた数字を前記表示部に表示させた状態で前記演算指定キーが入力された時点において既に前記記憶処理部によって記憶させた数字が存在する場合、1つ前の演算指定キーの入力によって記憶された第1数字と、1つ前の演算指定キーが示す演算処理内容と、1つ前の演算指定キーの入力後であって当該演算指定キーの入力前に前記数字キーによって入力された第2数字とを用いて演算処理を実行する演算処理部と、
所定規則に従って前記表示部に対する表示処理を実行する表示処理部と
を備えた電卓であって、
前記メモリは、一連の演算過程において記憶させる複数の数字について、記憶させた時系列関係を把握し得る態様にて記憶可能な複数領域からなる時系列記憶領域を備えており、
前記記憶処理部は、一連の演算過程において記憶させる複数の数字を前記時系列記憶領域に対して時系列順に記憶させるものとし、
さらに、
前記時系列記憶領域に記憶させた数字が複数存在する場合に、1回押下毎に現在表示中の数字よりも1つ前に記憶させた数字を表示させる「戻る」キーと、
前記時系列記憶領域に記憶させた数字が複数存在する場合に、1回押下毎に現在表示中の数字よりも1つ後に記憶させた数字を表示させる「進む」キーと
を備え、
前記「戻る」キー及び/又は「進む」キーを使用することによって前記時系列記憶領域に記憶させた時系列関係にある複数の数字の何れかを前記表示部に表示させた状態において前記演算指定キーに含まれた加減乗除キーが入力された場合、当該表示させた数字と、当該加減乗除キーの入力後に入力された数字との演算を行う挿入処理に移行し、
前記演算処理部は、挿入処理移行後に入力された数字に続けて前記加減乗除キーが入力された場合、挿入処理移行時に表示していた数字と、挿入処理移行のトリガーとして入力された前記加減乗除キーが示す演算処理内容と、挿入処理移行後に入力された数字との3つのみを用いて挿入演算処理を実行するようにし、
前記表示処理部は、前記挿入演算処理の実行結果である演算結果数字を前記表示部に表示させるようにした
ことを特徴とする電卓。
【請求項4】
前記記憶処理部は、上書処理移行後に入力された数字に続けて前記演算指定キーが入力された場合、上書処理移行時に表示していた数字の時系列的に一つ前に記憶している数字の続きとして上書処理移行後に入力された数字を、上書き処理移行前とは異なる時系列として前記時系列記憶領域に対して記憶させるようにした
ことを特徴とする請求項3記載の電卓。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シンプルな構成の電卓における演算の修正機能に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、数字入力を行うための数字キーと、加減乗除キーとイコールキーとからなる演算指定キーと、液晶などの表示部とで構成されたシンプルな構成の電卓(以下、単に「電卓」と表現する場合、このようなシンプルな構成の電卓のことを指すものとする)が普及している。また、シンプルな電卓が備えていない特殊な関数を扱う機能を備えた関数電卓も存在する。関数電卓はシンプルな電卓の演算機能を全て備えているが、経理業務など膨大な量の演算を要求される場面においては、入力操作を行うキーが大きくて押し間違いをし難いシンプルな電卓の方が未だに重宝されている。
【0003】
このような電卓に関しては、例えば、特許文献1が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭58-213364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
シンプルな構成の電卓は、数字入力、演算指定キーの入力、数字入力、演算指定キーの入力・・・といったように、数字と加減乗除キーを押下する処理を繰り返し実行する際に、最初の数字入力の後に加減乗除キーを押下してその後に数字入力を行うと、最初の数字の表示から後の入力数字に表示が変化し、その状態でさらに演算指定キーを押下すると、演算結果が表示部に表示される構成となっている。このようなシンプルな電卓においては、最終的に表示された演算結果に対してさらに演算を実行することは可能であるが、過去の演算過程において入力ミスがあった場合、最初から演算をし直す必要があるという問題があった。関数電卓では計算式の途中を修正する機能が備わっているが、シンプルな電卓を使用したいユーザにとっては、シンプルな電卓に修正機能がないことが問題であった。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みなされたものであり、演算を遡って修正するための修正機能を備えたシンプルな構成の電卓を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明に係る電卓は、数字入力を行うための数字キーと、演算処理内容を指定するための演算指定キーと、前記数字キーによる入力数字及び演算処理の結果として得られる演算結果数字を表示するための表示部と、所定のタイミングにおいて前記入力数字、前記演算結果数字及び演算処理内容を記憶させるためのメモリと、前記演算指定キーが入力された時点で前記表示部に表示させていた数字及び当該演算指定キーが示す演算処理内容をそれぞれ前記メモリに記憶させる記憶処理部と、入力操作に基づいた数字を前記表示部に表示させた状態で前記演算指定キーが入力された時点において既に前記記憶処理部によって記憶させた数字が存在する場合、1つ前の演算指定キーの入力によって記憶された第1数字と、1つ前の演算指定キーが示す演算処理内容と、1つ前の演算指定キーの入力後であって当該演算指定キーの入力前に前記数字キーによって入力された第2数字とを用いて演算処理を実行する演算処理部と、所定規則に従って前記表示部に対する表示処理を実行する表示処理部とを備えた電卓であって、前記メモリは、一連の演算過程において記憶させる複数の数字について、記憶させた時系列関係を把握し得る態様にて記憶可能な複数領域からなる時系列記憶領域を備えており、前記記憶処理部は、一連の演算過程において記憶させる複数の数字を前記時系列記憶領域に対して時系列順に記憶させるものとし、さらに、前記時系列記憶領域に記憶させた数字が複数存在する場合に、1回押下毎に現在表示中の数字よりも1つ前に記憶させた数字を表示させる「戻る」キーと、前記時系列記憶領域に記憶させた数字が複数存在する場合に、1回押下毎に現在表示中の数字よりも1つ後に記憶させた数字を表示させる「進む」キーとを備え、前記「戻る」キー及び/又は「進む」キーを使用することによって前記時系列記憶領域に記憶させた時系列関係にある複数の数字の何れかを前記表示部に表示させた状態において前記演算指定キーに含まれた加減乗除キーが入力された場合、当該表示させた数字よりも時系列的に一つ前に記憶させた数字と、当該加減乗除キーの入力後に入力された数字との演算を行う上書処理に移行し、前記演算処理部は、上書処理移行後に入力された数字に続けて前記加減乗除キーが入力された場合、上書処理移行時に表示していた数字の時系列的に一つ前に記憶している数字と、上書処理移行のトリガーとして入力された前記加減乗除キーが示す演算処理内容と、上書処理移行後に入力された数字との3つのみを用いて上書演算処理を実行するようにし、前記表示処理部は、前記上書演算処理の実行結果である演算結果数字を前記表示部に表示させるようにしたことを特徴とする。
【0008】
また、前記記憶処理部は、上書処理移行後に入力された数字に続けて前記演算指定キーが入力された場合、上書処理移行時に表示していた数字の時系列的に一つ前に記憶している数字の続きとして上書処理移行後に入力された数字を、上書き処理移行前とは異なる時系列として前記時系列記憶領域に対して記憶させるようにしたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る電卓は、数字入力を行うための数字キーと、演算処理内容を指定するための演算指定キーと、前記数字キーによる入力数字及び演算処理の結果として得られる演算結果数字を表示するための表示部と、所定のタイミングにおいて前記入力数字、前記演算結果数字及び演算処理内容を記憶させるためのメモリと、前記演算指定キーが入力された時点で前記表示部に表示させていた数字及び当該演算指定キーが示す演算処理内容をそれぞれ前記メモリに記憶させる記憶処理部と、入力操作に基づいた数字を前記表示部に表示させた状態で前記演算指定キーが入力された時点において既に前記記憶処理部によって記憶させた数字が存在する場合、1つ前の演算指定キーの入力によって記憶された第1数字と、1つ前の演算指定キーが示す演算処理内容と、1つ前の演算指定キーの入力後であって当該演算指定キーの入力前に前記数字キーによって入力された第2数字とを用いて演算処理を実行する演算処理部と、所定規則に従って前記表示部に対する表示処理を実行する表示処理部とを備えた電卓であって、前記メモリは、一連の演算過程において記憶させる複数の数字について、記憶させた時系列関係を把握し得る態様にて記憶可能な複数領域からなる時系列記憶領域を備えており、前記記憶処理部は、一連の演算過程において記憶させる複数の数字を前記時系列記憶領域に対して時系列順に記憶させるものとし、さらに、前記時系列記憶領域に記憶させた数字が複数存在する場合に、1回押下毎に現在表示中の数字よりも1つ前に記憶させた数字を表示させる「戻る」キーと、前記時系列記憶領域に記憶させた数字が複数存在する場合に、1回押下毎に現在表示中の数字よりも1つ後に記憶させた数字を表示させる「進む」キーとを備え、前記「戻る」キー及び/又は「進む」キーを使用することによって前記時系列記憶領域に記憶させた時系列関係にある複数の数字の何れかを前記表示部に表示させた状態において前記演算指定キーに含まれた加減乗除キーが入力された場合、当該表示させた数字と、当該加減乗除キーの入力後に入力された数字との演算を行う挿入処理に移行し、前記演算処理部は、挿入処理移行後に入力された数字に続けて前記加減乗除キーが入力された場合、挿入処理移行時に表示していた数字と、挿入処理移行のトリガーとして入力された前記加減乗除キーが示す演算処理内容と、挿入処理移行後に入力された数字との3つのみを用いて挿入演算処理を実行するようにし、前記表示処理部は、前記挿入演算処理の実行結果である演算結果数字を前記表示部に表示させるようにしたことを特徴とする。
【0010】
また、前記記憶処理部は、上書処理移行後に入力された数字に続けて前記演算指定キーが入力された場合、上書処理移行時に表示していた数字の時系列的に一つ前に記憶している数字の続きとして上書処理移行後に入力された数字を、上書き処理移行前とは異なる時系列として前記時系列記憶領域に対して記憶させるようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の構成によれば、シンプルな構成の電卓に対して、時系列記憶領域に記憶させた数字が複数存在する場合に、1回押下毎に現在表示中の数字よりも1つ前に記憶させた数字を表示させる「戻る」キーと、1回押下毎に現在表示中の数字よりも1つ後に記憶させた数字を表示させる「進む」キーとを備えさせ、「戻る」キーと「進む」キーを使用することによって時系列記憶領域に記憶させた時系列関係にある複数の数字の何れかを表示部に表示させた状態において加減乗除キーが入力された場合、当該表示させた数字に代えて新たな数字を上書きして演算する上書処理に移行させるようにしたので、演算を誤ったところまで遡ってその続きから演算を再開することが可能となる。また、上書処理ではなく、表示させた数字の続きから演算を行う挿入処理とすることも可能である。また、「戻る」キーと「進む」キーの両方を設けているので、演算過程に誤りがないか不安になったときに「戻る」キーによって遡って確認しつつ、問題がなければ「進む」キーによって直近の演算結果表示状態まで再度進めることができ、演算過程の再確認を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係る電卓の構成の一例を表した模式図である。
図2】本発明に係る電卓の内部構成の一例を表したブロック図である。
図3】本発明に係る電卓の使用例を説明するための説明図である。
図4】本発明に係る電卓の使用例を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[第1の実施の形態]
以下、図面を参照しながら、本発明の第1の実施の形態に係る電卓の例について説明する。図1は、本発明に係る電卓の構成の一例を表した模式図である。この図1に示すように、電卓100は、数字入力を行うための数字キー11と、演算処理内容を指定するための演算指定キー12と、数字キーによる入力数字及び演算処理の結果として得られる演算結果数字を表示するための表示部20と、所定のタイミングにおいて入力数字、演算結果数字及び演算処理内容を記憶させるためのメモリ30と、各種制御を実行するための制御部40とを備えた電卓であり、さらに、後述する「戻る」キー13と「進む」キー14とを設けたことを特徴とする。なお、図1に示すように、一般的な電卓に備わった他の機能として「C」で表示されたクリアキー15や、「AC」で表示されたオールクリアキー16を備えるようにしてもよい。なお、クリアキー15及びオールクリアキー16の機能に関しては既知の構成と同様であるため、以下において説明を省略する。また、図1において図示したものに限らず、他の機能に関する操作キーを設けるようにしてもよい。
【0014】
図2は、本発明に係る電卓の内部構成の一例を表したブロック図である。この図2に示すように、電卓100は、内部構成として、入力部10と、表示部20と、メモリ30と、制御部40とを備える。
【0015】
入力部10は、数字キー11、演算指定キー12、「戻る」キー13、「進む」キー14、クリアキー15及びオールクリアキー16に対する入力操作を受付ける機能を有する。ここで、数字キー11は、0~9までのキー、小数点キー、2ケタ分のゼロを入力するための「00」キーなどで構成されている。また、演算指定キーは、加減乗除キーと演算の最終結果を演算するためのイコールキーとを少なくとも含むように構成されている。「戻る」キー13は、1回押下毎に現在表示中の数字よりも1つ前に記憶させた数字を表示させるための操作キーである。「進む」キー14は、1回押下毎に現在表示中の数字よりも1つ後に記憶させた数字を表示させるための操作キーである。
【0016】
表示部20は、既存の電卓と同様に、数字キーによる入力数字及び演算処理の結果として得られる演算結果数字を表示することが可能であればどのような構成であってもよいが、例えば液晶パネルによって構成することが考えられる。
【0017】
メモリ30は、所定のタイミングにおいて入力数字、演算結果数字及び演算処理内容を記憶させる機能を有する。ここで、メモリ30は、図2に示すように、時系列記憶領域31と、一時記憶領域32を有する。時系列記憶領域31は、一連の演算処理において登場する複数の入力数字及び演算処理結果について、記憶させた時系列関係を把握し得る態様にて記憶可能な複数の領域で構成されるものであり、本発明特有の記憶領域である。一時記憶領域32は、演算指定キーが入力された時点で表示部20に表示させていた数字及び当該演算指定キーが示す演算処理内容を記憶させるための領域であり、既存の電卓も備える記憶領域である。
【0018】
制御部40は、記憶処理部41と、演算処理部42と、表示処理部43とで構成されている。記憶処理部41は、演算指定キー12が入力された時点で表示部20に表示させていた数字及び当該演算指定キーが示す演算処理内容をそれぞれメモリ30に記憶させる機能を有する。この記憶処理部41は、既存の電卓と同様に、演算処理のために一時記憶領域32に対して記憶させる処理と、一連の演算過程において記憶させる複数の数字を時系列記憶領域31に対して時系列順に記憶させる処理の両方を実行する。すなわち、記憶処理部41は、表示させていた数字及び演算処理内容を演算処理のために一時記憶領域32に記憶させるとともに、同じ数字を時系列記憶領域31の該当領域に記憶させるように機能する。
【0019】
また、記憶処理部41では、上記の記憶処理に加え、演算結果数字を表示部20に表示させている状態において「戻る」キー13が入力された場合、表示させていた演算結果数字を時系列記憶領域31に記憶させるようにする。これにより、最新の演算結果数字から遡る処理が実行された場合に、再度最新の演算結果数字まで進めることが可能となる。
【0020】
演算処理部42は、入力操作に基づいた数字を表示部に表示させた状態で演算指定キーが入力された時点において既に記憶処理部41によって記憶させた数字が存在する場合、1つ前の演算指定キーの入力によって記憶された第1数字と、1つ前の演算指定キーが示す演算処理内容と、1つ前の演算指定キーの入力後であって当該演算指定キーの入力前に前記数字キーによって入力された第2数字とを用いて演算処理を実行する機能を有する。演算処理部42による演算が実行される条件は、先ず、第1数字と1つ前の演算指定キーが示す演算処理内容が一時記憶領域32に記憶されていることである。また、入力操作に基づいた数字を表示部20に表示させた状態において何らかの演算指定キーが入力されたことも条件となる。これは、使用者が入力操作を行って数字を入力した後で演算指定キーが押下された場合にのみ演算処理を実行することを意味し、この条件があることによって演算処理結果を表示した状態において演算指定キーを押下したとしても演算処理は実行されないことになる。入力操作に基づいた数字を表示部20に表示させた状態であり、かつ、第1数字と1つ前の演算指定キーが示す演算処理内容が一時記憶領域32に記憶されている場合に、第1数字及び演算処理内容を一時記憶領域32から読み出して、トリガーとなった演算指定キーの入力の直前に表示していた第2数字との間で演算処理を実行する。
【0021】
表示処理部43は、所定規則に従って表示部20に対する表示処理を実行する機能を有する。表示処理は、入力操作に基づいた数字の表示は、入力操作に応じてその都度表示内容を制御し、演算処理部42による演算処理を実行した際には、演算結果数字を即座に表示させる。また、表示部20に演算指定キー12の演算処理内容を示す表示を行う領域を設けて、演算指定キー12が入力された際には表示処理部43において演算処理内容を示す表示を表示させるようにしてもよい。
【0022】
次に、本発明特有の機能について説明を行う。本発明に係る電卓100は、メモリ30の時系列記憶領域31に時系列関係を把握可能な態様で記憶させた複数の数字が存在する場合に、「戻る」キー13及び「進む」キー14を用いることで、時系列記憶領域31に記憶させた複数の数字を時系列順に遡って表示部20に表示させたり、遡った後でまた進めて表示部20に表示させたりすることができる。すなわち、演算過程に誤りがないか不安になったときに「戻る」キーによって遡って確認し、問題がなければ「進む」キーによって直近の演算結果表示状態まで再度進める、といった操作を行うことが可能となる。
【0023】
また、「戻る」キー13及び「進む」キー14を使用することによって時系列記憶領域31に記憶させた時系列関係にある複数の数字の何れかを表示部20に表示させた状態において、加減乗除キーが入力された場合、当該表示させた数字よりも時系列的に一つ前に記憶させた数字と、当該加減乗除キーの入力後に入力された数字との演算を行う上書処理に移行するように制御部40にて制御を行う。
【0024】
上書処理に移行した際には、演算処理部42は、上書処理移行後に入力された数字に続けて演算指定キーが入力された場合、上書処理移行時に表示していた数字の時系列的に一つ前に記憶している数字と、上書処理移行のトリガーとして入力された加減乗除キーが示す演算処理内容と、上書処理移行後に入力された数字とを用いて上書演算処理を実行する。
【0025】
また、記憶処理部41は、上書処理移行後に入力された数字に続けて演算指定キーが入力された場合、上書処理移行時に表示していた数字の時系列的に一つ前に記憶している数字の続きとして上書処理移行後に入力された数字を、上書き処理移行前とは異なる時系列として時系列記憶領域31に対して記憶させる。これは、上書処理であるからといって、時系列記憶領域31の該当領域のみに上書を行ってしまうと、「進む」キー14によって進めたときに演算内容の整合性がとれなくなるという問題が生じるため、上書処理に移行した場合には、修正箇所から先は新たに時系列記憶領域を確保して異なる領域に記憶させるようにする必要がある。これにより、「戻る」キー13によって遡る場合には最初の数字まで遡ることが可能となるが、「進む」キー14によって進む操作については新たに記憶させた異なる時系列の領域に対してのみ進む操作を許可するように制御することが可能となる。
【0026】
次に、本発明に係る電卓100の使用例について説明を行う。図3及び図4は、本発明に係る電卓の使用例を説明するための説明図である。図3(a)に示すように、先ず、「456」と数字を入力したものとする。次に、図3(b)に示すように、演算指定キーとして「+」キーを入力した場合、表示部20の数字表示は「456」のままとなるが、入力された数字を表示した状態で演算指定キーが入力されたため、記憶処理部41によって、「456」及び演算処理内容「+」が一時記憶領域32に記憶されるとともに、「456」が時系列記憶領域31に記憶される。次に、図3(c)に示すように、「+」キーの入力操作に続いて、「23」と数字を入力したものとする。そして、図3(d)に示すように、イコールキーが入力されると、一時記憶領域32に記憶させた「456」及び「+」と、イコールキーの入力直前に入力されて表示されていた「23」とで演算処理「456+23」が実行されて、演算結果数字の「479」が表示部20に表示される。なお、イコールキーも演算指定キーであるため、イコールキーの入力操作に基づいて「23」が時系列記憶領域31に記憶される。
【0027】
ここで、図3(c)において入力した「23」が「12」の誤入力であったものとする。その場合、演算結果数字の「479」が表示されている状態にて、「戻る」キー13を入力することで、図4(a)に示すように、時系列記憶領域31に記憶された数字「23」が表示される。なお、演算結果数字の「479」が表示されている状態で「戻る」キー13が入力された場合、記憶処理部41において、「479」の数字を時系列記憶領域31に記憶させる。これにより、仮に修正を行わなかった場合に、「進む」キー14によって再度「479」を表示させることが可能となる。誤入力であった「+23」の処理を「+12」と上書処理したい場合、図4(a)に示すように、時系列記憶領域31に記憶された数字「23」が表示された状態において、「+」キーを入力することで上書処理に移行する。そして、「+」キーに続けて「12」と入力することで、図4(b)に示すように、表示部20には、入力した「12」が表示される。そして、図4(c)に示すように、「+」と「12」が入力された状態において、演算指定キーであるイコールキーを入力すると、上書演算処理を実行する。これは、上書処理移行時に表示していた数字「23」の時系列的に一つ前に記憶している数字「456」と、上書処理移行のトリガーとして入力された加減乗除キーが示す演算処理内容「+」と、上書処理移行後に入力された数字「12」とを用いて上書演算処理である「456+12」を実行することになり、上書演算処理の結果として、図4(d)に示すように、演算結果数字である「468」が表示部20に表示される。
【0028】
以上のように、第1の実施の形態に係る電卓100によれば、シンプルな構成の電卓に対して、時系列記憶領域31に記憶させた数字が複数存在する場合に、1回押下毎に現在表示中の数字よりも1つ前に記憶させた数字を表示させる「戻る」キー13と、1回押下毎に現在表示中の数字よりも1つ後に記憶させた数字を表示させる「進む」キー14とを備えさせ、「戻る」キー13と「進む」キー14を使用することによって時系列記憶領域31に記憶させた時系列関係にある複数の数字の何れかを表示部20に表示させた状態において加減乗除キーが入力された場合、当該表示させた数字に代えて新たな数字を上書きして演算する上書処理に移行させるようにしたので、演算を誤ったところまで遡ってその続きから演算を再開することが可能となる。また、「戻る」キー13と「進む」キー14の両方を設けているので、演算過程に誤りがないか不安になったときに「戻る」キー13によって遡って確認しつつ、問題がなければ「進む」キー14によって直近の演算結果表示状態まで再度進めることができ、演算過程の再確認を行うことが可能となる。
【0029】
[第2の実施の形態]
第1の実施の形態においては、上書処理を適用した場合について説明を行ったが、これに替えて、挿入処理を適用するようにしてもよい。具体的には、図4に基づいて説明した状況に即して説明を行うと、図3(c)において入力した「23」が「12」の誤入力であった場合、第1の実施の形態では、誤入力である「23」を表示させた状態にて「+12」を入力することで上書処理に移行することとしていたが、この第2の実施の形態における挿入処理を適用した状況において同様の修正を行うためには、図3(a)において入力した「456」を表示させるまで「戻る」キー13を入力して、「456」を表示させた状態にて「+」キーが入力された時点で挿入処理に移行し、「+」キーに続けて「12」と入力し、さらにイコールキーが入力されたときに、挿入演算処理である「456+12」を実行するようにする。
【0030】
すなわち、挿入処理を適用した第2の実施の形態においては、「戻る」キー13及び「進む」キー14を使用することによって時系列記憶領域31に記憶させた時系列関係にある複数の数字の何れかを表示部20に表示させた状態において、加減乗除キーが入力された場合、当該表示させた数字と、当該加減乗除キーの入力後に入力された数字との演算を行う挿入処理に移行するように制御部40において制御を実行する。そして、演算処理部41は、挿入処理移行後に入力された数字に続けて演算指定キーが入力された場合、挿入処理移行時に表示していた数字と、挿入処理移行のトリガーとして入力された加減乗除キーが示す演算処理内容と、挿入処理移行後に入力された数字とを用いて挿入演算処理を実行するようにする。
【0031】
このように、挿入処理を適用する第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態の上書処理とはユーザの操作感が異なるだけで、第1の実施の形態の場合と同様の効果が得られるものであり、同様に、演算を誤ったところまで遡ってその続きから演算を再開することが可能となる。
【符号の説明】
【0032】
100 電卓
10 入力部
11 数字キー
12 演算指定キー
13 「戻る」キー
14 「進む」キー
15 クリアキー
16 オールクリアキー
20 表示部
30 メモリ
31 時系列記憶領域
32 一時記憶領域
40 制御部
41 記憶処理部
42 演算処理部
43 表示処理部
図1
図2
図3
図4