(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-13
(45)【発行日】2023-09-22
(54)【発明の名称】神経の電気刺激のためのシステム
(51)【国際特許分類】
A61N 1/36 20060101AFI20230914BHJP
A61N 1/05 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
A61N1/36
A61N1/05
(21)【出願番号】P 2020509051
(86)(22)【出願日】2018-08-19
(86)【国際出願番号】 DK2018050200
(87)【国際公開番号】W WO2019034223
(87)【国際公開日】2019-02-21
【審査請求日】2021-08-18
(32)【優先日】2017-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(32)【優先日】2018-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DK
(73)【特許権者】
【識別番号】520050668
【氏名又は名称】イノコン メディカル エーピーエス
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100103078
【氏名又は名称】田中 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100130650
【氏名又は名称】鈴木 泰光
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【氏名又は名称】小淵 景太
(74)【代理人】
【識別番号】100200609
【氏名又は名称】齊藤 智和
(72)【発明者】
【氏名】クヌドセン、ディアナ メルスク
(72)【発明者】
【氏名】フヴァルス、トルステン フェルドガード
(72)【発明者】
【氏名】ニールセン、イエスパー
【審査官】野口 絢子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05144952(US,A)
【文献】特表2010-505550(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N1/04
A61N1/32-1/39
A61N2/00-2/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚に表在的に形成されたチャネル内に配置されるように構成され、かつ神経の電気刺激のために生体の神経の一部分に近接して配置されるように構成された少なくとも一つの電極を適切に固定するように特別に適応された、電極固定ユニットと、神経の電気刺激を達成するために、少なくとも一つの電極に一連の電気パルスを提供するように構成されたパルス発生器とを含む、生体の神経の電気刺激のためのシステムであって、
前記電極固定ユニットは第一端および第二端を有し、前記電極固定ユニットの前記第一端は前記形成されたチャネルの第一端から突出するように構成され、かつ前記電極固定ユニットの前記第二端は前記形成されたチャネルの第二端から突出するように構成されて成り、
電極固定ユニット本体部材は前記電極固定ユニットの構造を形成しており、前記電極固定ユニット本体部材は、少なくとも一つの電極がそこに配設または含まれる固定部材を構成して成り、
前記電極固定ユニット本体部材から繰返し非破壊的に分解されかつそこに再び組み付けられるように構成された少なくとも一つの終端部材は、前記形成されたチャネル内の少なくとも一方向の前記電極固定ユニット本体部材の移動を阻止するように構成され、前記電極固定ユニットが前記形成されたチャネル内に配設されたとき、少なくとも一つの終端は前記形成されたチャネルの第一および/または第二端の外側に位置し、前記終端のジオメトリによって前記電極固定ユニットのための機械的連動機構を提供して成る、
生体の神経の電気刺激のためのシステム。
【請求項2】
前記少なくとも一つの終端部材は、ヒンジまたは延性のある成形可能な構造部材として前記電極固定ユニット本体
部材に配設される、請求項1に記載の電極固定ユニット。
【請求項3】
前記電極固定ユニットは繰返し非破壊的に少なくとも二つの要素に分解され、かつ前記形成されたチャネル内に配設された後、再び組み合わされるように構成される、請求項1又は2に記載の電極固定ユニット。
【請求項4】
前記電極固定ユニット本体部材は中実または中空管状に形成され、断面は、均一もしくは不均一な大きさの辺を持ちかつ/または直線状もしくは湾曲した辺を持つ、三角形、方形、または実質的に円形もしくは楕円形になるまで多角形の断面を有し、前記電極固定ユニットは長手方向に、直線方向、または屈曲方向、または湾曲方向、または螺旋方向、または蛇行方向、またはこれらの方向を組み合わせた方向に移動することができる、請求項1ないし3のいずれかに記載の電極固定ユニット。
【請求項5】
前記電極固定ユニットの断面は1ミリメートルから10ミリメートルの範囲内である、請求項1ないし4のいずれかに記載の電極固定ユニット。
【請求項6】
前記電極固定ユニットのシャフトの長さは10~40ミリメートルの範囲内である、請求項1ないし5のいずれかに記載の電極固定ユニット。
【請求項7】
チタン、医療グレードのステンレス鋼、プラチナ、プラチナ/イリジウム、医療グレードの金属、および電気刺激に適した他の貴金属合金からなる群より選択された生体適合性導電性材料を含み、かつ/またはシリコーン、ポリウレタン、PTFE、
PEEKおよびセラミックからなる群より選択された生体適合性電気絶縁材料を含み、かつ/または可撓性もしくは弾性材料を含む、請求項1ないし6のいずれかに記載の電極固定ユニット。
【請求項8】
前記電極固定ユニットまたはその電極部は貴金属合金、窒化チタン、またはダイヤモンド状炭素で被覆される、請求項1ないし7のいずれかに記載の電極固定ユニット。
【請求項9】
前記電極固定ユニットは前記電極固定ユニット本体部材のどこかの位置で分解することができる、請求項1ないし
8のいずれかに記載の電極固定ユニット。
【請求項10】
前記電極固定ユニットは少なくとも一つの電極を構成する、請求項1ないし9のいずれかに記載の電極固定ユニット。
【請求項11】
前記電極固定ユニット本体部材は部分的に電気絶縁材料から作られ、電極として働く導電部を有する、請求項1ないし10のいずれかに記載の電極固定ユニット。
【請求項12】
パルス発生器から少なくとも一つの印加電極に刺激信号を提供する、少なくとも一つの取外し可能な電気接続部を含む、請求項1ないし11のいずれかに記載の電極固定ユニット。
【請求項13】
前記電極固定ユニットの前記第一および/または第二端の各々は、パッチ部材を皮膚の所定の位置に接続しかつ/または固定するためのアンカリングポイントを形成するように適応され、前記パッチ部材は前記電極固定ユニットの前記第一および第二点の間にブリッジを形成する、請求項1ないし12のいずれかに記載のシステム。
【請求項14】
前記パルス発生器は、前記電極固定ユニット内、上、もしくはそれと共に配設され、またはパッチ部材内、上、もしくはそれと共に配設される、請求項1ないし13のいずれかに記載のシステム。
【請求項15】
前記電極固定ユニット上、パッチ部材上、またはパルス発生器と共に配設され、前記電極固定ユニット上または前記パッチ部材上に配設された少なくとも一つの電極のための対電極として働く、第二電極を含む、請求項1ないし14のいずれかに記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一般的に神経の電気刺激に関する。
【背景技術】
【0002】
神経の刺激は、欠損神経系に由来する様々な病気に対し好ましい効果を有することが知られている。迷走神経の電気刺激は、一例としててんかんの有効な治療であることが証明されてきた。また、生殖神経の刺激は便および尿失禁の治療に好ましい効果を有することも示されてきた。
【0003】
本発明を説明するために、有利な特徴を例証するのに失禁の治療を選択したが、それは、特定の神経を刺激する理由を明確にすることなく人体に含まれる神経を刺激するために本発明の概念を実行することのできる発明の範囲に対する制限と解釈されるべきではない。
【0004】
過活動膀胱(OAB)症候群は、世界中で非常に広く蔓延している病状であり、特に40歳超の母集団では、有病率は約17%と報告されている。頻尿(85%)は最も一般的に報告されている症状であり、尿意逼迫(54%)および切迫性尿失禁(36%)がそれに続く。これらの症状は、社会的および衛生的な問題のため、患者の生活の質に悪影響を及ぼす。持続性の高膀胱内圧および繰り返される膀胱感染症によって引き起こされる上部尿路障害は、罹患、入院加療、または死さえも引き起こす別の懸念である。従来の治療は典型的には、用量制限全身性副作用を持つ薬物に基づいている。
【0005】
便失禁(FI)もまた高頻度であり、有病率は母集団の5~15%である。それは一般的に、固形または液状の排泄物または粘液の不随意の漏出と定義され、身体障害性症状であり、その影響は困惑、社会的孤立、および雇用喪失さえも含むことがあるので、それは生活の質に対し計り知れない影響を及ぼし得る。伝統的な治療としては、食事療法対策、様々な薬理学的薬剤、肛門直腸のリハビリテーション、および経肛門的洗腸療法が挙げられる。
【0006】
OABおよびFIのどちらも、従来の治療選択肢が患者に無効である場合、外科的破壊的介入を検討してよいが、合併症の発生率は往々にして高い。効果が見られなかった患者には、破壊的外科手術を回避するため、代替的治療選択肢を検討する必要がある。
【0007】
仙骨神経の連続的または断続的電気刺激は、OABおよびFIなど様々な骨盤障害の治療に効果があることが知られている(InterStim(登録商標)Therapy,Medtronic,MN,USA)。InterStim(登録商標)Therapyは、埋込みパルス発生器に接続された医療用リード線を使用する仙骨根の電気刺激に基づく。パルス発生器は、無線データ伝送を介して外部制御装置によってプログラム可能である。仙骨根の電気刺激は、仙骨反射経路を調節する仙骨体細胞求心性神経を活性化させる。この効果は神経調節(neuromodulation)としても知られており、OABおよびFIの症状を緩和することが示されてきた。
【0008】
しかしながら、埋込み型システムは、ハードウェアコストおよびシステムを生体内に埋め込む行為に対して極めて高価である。加えて、医療システムの生体内への埋込みは、利用可能な代替的解決策が全て失敗した場合にのみ、提案されるべきである。埋込みシステムを必要とすることなく、略述した問題に対する受入れ可能な解決をもたらす、より単純かつより安価な解決策が必要であるように思われる。
【0009】
Medtronicの米国出願公開US2015/0352357A1は、表面電極の二つのバリアントを提供する解決策を提示している。一つは男性用、一つは女性用であり、各々のバリアントはそれぞれの性の生殖器の特有の形状を利用しようとして、かつ生殖神経を標的とする電極を配設しようとして、設計されたものである。しかしながら、この開示は、有効な電荷を生殖神経に向けて送ることのできる所望の位置に、電極をいかにして配設しかつ固定するかを説明していない。
【0010】
典型的には、表面電極は、強度および構造支持のための様々な支持用スクリムおよび布と共に接着性導電性ヒドロゲルを利用する、パッチ型の電極である。支持用スクリムおよびワイヤメッシュを必要とするため、大部分の種類のそのような電極は比較的堅固かつ剛性になる。これは、特に活動中、あるいは生殖器またはアキレス腱など凹凸のある構造に付着した場合に、電極が付着した皮膚から緩んでくるという効果を持ち、機能性の喪失を導く。
【0011】
したがって、生殖神経に向けて安定した電極界面を提供するように、かつ生殖神経に近接する関心位置で人体の皮膚に確実に配設されるように、改善する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】米国出願公開第US2015/0352357A1号
【発明の概要】
【0013】
本発明の実施形態の目的は、上記の欠点を克服または少なくとも軽減するシステムを提供することである。
【0014】
本発明は、処置することが決定された神経の部分および/またはその枝の位置に関して同一距離および同一の向きに電極が固定されかつ維持され、したがって電極および神経が相互に関して相互同一安定位置に配置されるようにした、解決策を提供する。
【0015】
背側生殖神経を刺激するための表面刺激システムの場合、市販されている標準表面刺激システムの場合より、固定の問題はかなり難しい。生殖器またはその付近における固定は、自然な解剖学的相違のため、女性および男性両方のユーザを対象とする解決策が必要である。性による相違に加えて、個人による相違も課題である。標的とされる神経は、適切な刺激を用いて表面電極でアクセスすることが可能な背側生殖神経(陰核/陰茎神経)である。標的領域は、生殖器領域すなわち陰茎に沿った領域および陰核に近接する領域である。
【0016】
生殖器領域の皮膚を剥出しにすることの難しさは、女性ユーザにとっては最も懸念され、また多くのユーザの場合、多少とも肌に直接触れる剃毛が必要になることがある。これは皮膚の刺激やかゆみを生じることが知られており、したがっておそらく多くのユーザにとって不快である。
【0017】
接地されたアノードまたはリターン電極は、カソード電極または刺激電極に近接して、または離れて配置してよい。後者は比較的大きい電極に対する選択肢を提供し、したがってカソード電極のために取り組むべき問題の多くを解消することができる。男性ユーザは、腹部の大部分を覆う体毛を有する場合があり、したがって、大きいリターンパッチ電極よりむしろ二極設計の方が好ましいかもしれない。
【0018】
この用途では、特定の患者/ユーザに対する臨床的に支援された設定に応じて、要求されたときに刺激を迅速に開始するか、あるいは定期的な治療セッションを含め、日中および/または夜間に連続的に刺激するかのいずれかが要求される。したがって、固定の信頼性は製品にとって極めて重要であり、多くの他の用途と比較して、異なる使用シナリオであってよい。重要な側面は、ウォーキング、自転車乗り、ランニング、または他のスポーツに関連する活動など、日々の活動中に要求される運動の自由度であり、電極の信頼できかつ快適な固定が極めて重要であることがさらにいっそう強調される。
【0019】
さらに詳しくは、背側生殖神経または陰部神経求心性神経の左枝および/または右枝の刺激によって尿および便失禁などの骨盤底障害を治療する方法のための神経調節電極の固定は、本発明によれば、神経調節電極の配設を支持するように、標的神経に近接して、陰茎に沿った領域および/または陰核の亀頭またはその付近の領域の皮膚組織を介して挿入される電極固定ユニットを用いて実現される。
【0020】
意図する固定レベルは、電極が刺激することを意図した部位から移動するのを防止するものでなければならない。完全に固着または成長することを意図するものではなく、すなわち臨床的介入無く取り外すことが可能であり続けなければならない。
【0021】
男性では、背側生殖神経は背側に表在し(すなわち陰茎の断面の上部約1/4に存在し)、陰茎体の長さに沿ってそれが亀頭に達するまで延び、そこで扇形に広がる。
【0022】
女性では、背側生殖神経は、小陰唇と大陰唇との間の陰核の亀頭付近の粘膜(または皮膚)に近接する傾向がある。したがって、脂肪層および筋肉組織などの要素は標的神経の活性化に対する影響が大きいので、これらの刺激部位は男性および女性の両方に効果的である。意図された刺激部位では、脂肪層は限定的であり、かつ筋肉は神経を被覆していない。
【0023】
組織における信頼できる固定手段は、刺激すべき標的組織の皮膚の内外に形成されたチャネル内に配設される、電極固定ユニットの使用によって提示される。一般的に、本開示は、電気刺激を送達するために電極を固定するように皮膚を刺通する固定手段に向けられる。一実施形態では、開示は、リード線付きで構成されるか、それとも典型的なスナップコネクタなどリード線を取り付けるための装置付きで構成されるかにかかわらず、穿孔要素をパッチ、パッド、または同様の種類の表面電極と組み合わせて使用することによる、表面電極の固定に向けられる。さらなる実施形態では、開示は、複数の運動の自由度を有する穿孔要素に接続されたリード線を介して固定および表面電極への信号を提供する、信号経路の部分に向けられる。
【0024】
本発明について、失禁を治療するための独創的電極システムのバリアントを使用して説明するが、この概念は、皮膚の下に位置する神経へのアクセスが標的電気刺激となる全身に使用することができることを理解されたい。それはてんかんを治療するための頸部であり得、あるいは他の神経系障害を治療するための四肢であり得る。
【0025】
第一態様では、本発明は、皮膚に表在的に形成されたチャネル内に配置されるように構成され、かつ神経の電気刺激のために生体の神経の一部分に近接して配置されるように構成された少なくとも一つの電極を適切に固定するように特別に適応された電極固定ユニットと、神経の電気刺激を達成するために、少なくとも一つの電極に一連の電気パルスを提供するように構成されたパルス発生器とを含む、生体の神経の電気刺激のためのシステムであって、ここで電極固定ユニットは第一端および第二端を有し、電極固定ユニットの第一端は、形成されたチャネルの第一端から突出するように構成され、かつ電極固定ユニットの第二端は、形成されたチャネルの第二端から突出するように構成されて成り、ここで電極固定ユニット本体部材は電極固定ユニットの構造を形成しており、電極固定ユニット本体は、少なくとも一つの電極がそこに配設されまたは含まれる固定部材を構成して成り、ここで電極固定ユニット本体から繰返し非破壊的に分解されかつそこに再び組み付けられるように構成された少なくとも一つの終端部材は、形成されたチャネル内の少なくとも一方向の電極固定ユニット本体の移動に対する停止子を提供するように構成され、電極固定ユニットが形成されたチャネル内に配設されたとき、少なくとも一つの終端が形成されたチャネルの第一端および/または第二端の外側に位置し、終端のジオメトリによって電極固定ユニットのための機械的連動機構を提供して成る、生体の神経の電気刺激のためのシステムを提供する。
【0026】
より有利には、電極固定ユニットは細長い形状を有し、電極固定ユニットは第一端および第二端を有し、電極固定ユニット本体の第一端は、皮膚に表在的に形成されたチャネルから皮膚の第一穿孔を介して突出するように構成され、かつ第二端は、前記電極固定ユニットが前記形成されたチャネル内に挿入されるときに、生体の皮膚の二つの相互接続された穿孔によって形成される、皮膚に表在的に形成されたチャネルの皮膚の第二穿孔から突出するように構成される。
【0027】
一実施形態では、少なくとも一つの終端部材は、ヒンジまたは延性のある成形可能な構造部材として、電極固定ユニット本体に配設される。
【0028】
一実施形態では、少なくとも一つの終端部材は、電極固定ユニット本体を閉鎖して、閉ループすなわち幾何学的閉鎖構造または重なり合う構造を形成するように取り付けられる。
【0029】
一実施形態では、少なくとも一つの終端部材は、別の終端部材を特徴とするか否かに関係無く、電極固定ユニット本体の端部に、終端部材と電極固定ユニット本体の他端との間に間隙を設けて取り付けられる。皮膚における固定は、完全な閉ループの形成に頼るのではなく、安全な固定を維持することに頼ることを理解すべきであり、それはたとえ間隙が形成される場合でも当てはまる。
【0030】
一実施形態では、電極固定ユニットは、繰返し非破壊的に少なくとも二つの要素に分解され、かつ形成されたチャネル内に配設された後、再び組み合わされるように構成される。
【0031】
一実施形態では、電極固定ユニット本体は中実、中空、または管状に形成され、断面は、均一もしくは不均一な大きさの辺を持ちかつ/または直線状もしくは湾曲した辺を持つ、三角形、方形、もしくは実質的に円形または楕円形になるまで多角形の断面を有し、電極固定ユニットは長手方向に、直線方向、または屈曲方向、または湾曲方向、または螺旋方向、または蛇行方向、または前記移動形状を組み合わせた方向に移動することができる。
【0032】
しかしながら、本発明の実施形態では、電極固定ユニットの形状は、直線状または成形された電極固定ユニット本体によって異なり、様々な設計および大きさの包囲リングを完成する。個々のユーザの選好および必要性に応じて調整される電極固定ユニットの分かり易い構成は、直径が1ミリメートル~10ミリメートルの範囲の断面を有し、典型的なシャフトの長さは10~40ミリメートルである。固定ユニットの曲率は、組織の違いまたは個人的な選好に関連して、直線から完全に閉じた設計まで、変化することができ、前記曲率は一定である必要はない。
【0033】
複数の実施形態では、電極固定ユニットは、チタン、医療グレードのステンレス鋼、プラチナ、プラチナ/イリジウム、医療グレードの金属、および電気刺激に適した他の貴金属合金などの生体適合性導電性材料を含み、かつ/またはシリコーン、ポリウレタン、セラミック、PTFEもしくはPEEKなどの生体適合性電気絶縁材料を含み、かつ/または可撓性もしくは弾性材料を含む。
【0034】
しかしながら、さらに詳しくは、電極固定ユニットおよび本明細書で後述するパッチ部材のための様々な材料の例は、ポリエーテル‐ケトン系材料、HD‐PE、PP、PET、フッ素化ポリマー材などの生体適合性熱可塑性材料、または患者の皮膚を介する恒久的な接触に適した他の滅菌可能な材料を含む。固定ユニットの金属系バージョンは、316LVMのような外科用鋼、チタン系合金、および貴金属合金から作ることができる。さらに、セラミックはより短い長さおよび/またはより大きい直径の電極固定ユニット本体に使用してよい。一実施形態では、固定ユニットまたは電極は、より良好な導電性と高い生体適合性を達成するために、貴金属合金、窒化チタン、またはダイヤモンド状炭素で被覆される。一実施形態では、被覆は、皮膚/電極界面でインピーダンスを調整するための手段を構成する。
【0035】
一実施形態では、前記電極固定ユニットの第一または第二端の少なくとも一方には、組織内に形成されたチャネルを介する電極固定ユニットの一方向の移動に対する停止子を形成する部分が構成される。システムが起動されないときに、刺激信号を提供するリード線は完全に取り外すことができ、ユーザが関連する不便さから最大限に解放されることを可能にする。
【0036】
電極固定ユニットは、組織内に挿入されると、関心対象の神経までの固定距離を指定する固定位置を取るための安定した固定機構を形成する。したがって、電極固定ユニットは、関心対象の神経に向けられた神経調節信号を提供するように、一つ以上の電極を配設するための安定したプラットフォームとして働く。形成されたチャネルの固定位置に電極固定ユニットを固定するために、電極固定ユニットに少なくとも一つの終端が設けられ、固定ユニットが、組織に形成されたチャネルから外れて移動できるようになることを防止する。形成されたチャネル内に挿入されたとき、当初終端を備えていない端部に終端を設けることができる。終端は様々な仕方で設けることができる。
【0037】
終端は、ほとんど何ら制限無しに、様々な仕方で形成することができることを理解されたい。しかしながら、終端の設計の結果、衛生的に維持することが難しくなる場合、感染のリスクに対処するように設計に配慮する必要である。したがって、先が尖りすぎた形状や細部は終端としては適さないと思われる。
【0038】
一実施形態では、終端は、形成されたチャネルから外に突出するように構成された第一または第二端の少なくとも一部分に、形成されたチャネルを介する電極固定ユニットの一方向の移動に対する停止子を形成するように、形成されたチャネルの測定外接断面より大きい断面を持つ、電極固定ユニットの端部を構成することによって形成される。
【0039】
さらなる実施形態では、終端は、形成されたチャネルから外に突出するように構成された第一または第二端の少なくとも一部分に、ナットを受容するためのねじを持つ、電極固定ユニットの端部を構成することによって形成され、前記ナットは、形成されたチャネルを介する電極固定ユニットの一方向の移動に対する停止子を形成するように、形成されたチャネルの測定断面より充分に大きい断面を有する。一実施形態では、停止子は、電極固定ユニット本体に終端をスナップ止めすることにより終端を追加することによって設けられる。電極固定ユニット本体は、皮膚および形成されたチャネルの手入れのため、かつ/または電極固定ユニット本体の衛生的な保守のために、取り外すことが必要になる場合があるので、臨床的な介在の必要なく、電極固定ユニットを組織に形成されたチャネルから取り出すために、容易に終端を取り外すかあるいは電極固定ユニット本体を終端の間で分解することが可能でなければならない。終端の取付けは、ばね部材を含むクリックイン機能、または電極固定ユニット本体と終端との間の磁気部材、ねじ、または同様の界面を含めることができる。
【0040】
電極固定ユニット本体端部に配設される終端は、様々な仕方で設計することができ、一つまたは全ての終端は、着用者の選好により、例えば皮膚または組織の色に一致するように、交換または置換することができる。
【0041】
一実施形態では、電極固定ユニットは、着用者の選好のために様々な設計の二つの交換可能な終端を持つように設計される。電極固定ユニットは、電極を電極固定ユニット内または上に取り付けることができるように、様々な設計の二つの対応する特徴を有する。実施形態では、終端は、交換を可能にする雌ねじが切られるか雄ねじを有する。他の形の取付けとしては、ばね性を含むクリックイン機能、または電極固定ユニット本体と終端との間の磁気界面がある。
【0042】
一実施形態では、形成されたチャネルから突出するように構成された第一および/または第二端の少なくとも一部分における電極固定ユニットの端部には、取外し可能な終端を受容するための界面が構成され、終端は、ばね付勢または磁力またはクリックインによって、あるいはねじ結合によって所定の位置に取り付けられ、かつ固定される。代替的に、電極固定ユニットは電極固定ユニット本体のどこかの位置で分解することができなければならない。
【0043】
さらに別の実施形態では、電極固定ユニットは少なくとも一つの電極を構成する。最も単純な実施形態では、電極固定ユニットは、全体が導電性であり、電極自体として働き、組織と接触している表面で、電極固定ユニットの表面全体から電気刺激を提供するように構成される。
【0044】
より洗練された実施形態では、電極固定ユニット本体は部分的に電気絶縁材料から作られ、電極として働く導電部を有する。一実施形態では、電極は、各々が、異なる神経刺激信号を供給されるかあるいは同一電気刺激パターン源から供給される独立極を形成するか、あるいはアノードおよびカソードとして働く。一実施形態では、電極固定ユニット本体は中空であり、電極への電気的接続は装置の内部を走っており、電極固定ユニットの外部からアクセス可能なコネクタで終端する。このようにして単極電極装置を設けることができるが、二極または他極電極装置を設けることもできる。
【0045】
別の実施形態では、少なくとも一つの電極は電極固定ユニット上に配設される。一実施形態では、少なくとも一つの電極に終端の一つが設けられる。別の実施形態では、それは単純に電極固定ユニットに取り付けられる。
【0046】
さらなる実施形態では、電極固定ユニットは、取り付けられた終端の有無に関係無く、電気絶縁部を形成し、少なくとも一つの電極または複数の電極は電極固定ユニット上または内において、電極固定ユニットが皮膚/組織に形成されたチャネルの内部または外部の皮膚と接触するように適応された位置に、配設される。
【0047】
一実施形態では、少なくとも一つの終端は、PEEK、フッ素化材料、セラミック、または同様の材料などの電気絶縁材料を含む。
【0048】
別の実施形態では、少なくとも一つの終端は、適切な導電性材料を利用した電気刺激電極を構成する。
【0049】
一実施形態では、電極固定ユニットは、パルス発生器から少なくとも一つの印加電極に刺激信号を提供する、少なくとも一つの取外し可能な電気接続を含む。
【0050】
一実施形態では、システムはパッチ部材を含み、電極固定ユニットの第一および/または第二端の各々は、前記パッチ部材を皮膚の所定の位置に接続しかつ/または固定するためのアンカリングポイントを形成するように適応され、パッチ部材は電極固定ユニットの前記第一および第二点の間にブリッジを形成する。
【0051】
さらに別の実施形態では、電極固定ユニットはパッチ部材を含み、電極固定ユニットの第一および/または第二端の少なくとも一方は、前記パッチ部材を皮膚の所定の位置に接続しかつ支持するための少なくとも一つのポイントを形成するように適応され、あるいはパッチ部材は固定ユニットの前記第一および第二端の間にブリッジを形成する。
【0052】
パッチ部材は、一実施形態では終端によって固定される。一実施形態では、パッチ部材は、電極固定ユニットの二つの終端によって適位置に維持されるばね付勢または弾性位置に電極固定ユニットを配設する。一実施形態では、パッチ部材の取付けは、パッチ部材の貫通孔または前記パッチ部材の縁部の切出し部を介して行われる。分かり易くするために、パッチ部材は略平坦であって電極固定ユニットの終端を被覆するように延在することができ、あるいはちょうど電極固定ユニットと接続するように広がり、そこまで延在する。一実施形態では、パッチ部材は円形である。別の実施形態では、パッチ部材は楕円形である。パッチ部材は、電極、パルス発生器、または界面を配設するための最良のプラットフォームを提供するために役立つ形状に構成することができ、したがっていかなる特定の形状も除外すべきではないことを理解されたい。さらに別の実施形態では、パッチ部材の広がりは、少なくとも一つのさらなる位置または複数の位置でユーザの皮膚に取り付けるための空間を提供する。一実施形態では、パッチ部材は、電極固定ユニットの第一または第二端の少なくとも一方に、または一方にだけ取り付けられる。これは物理的に小さいサイズのパッチ部材を促進し、電極固定ユニットの端部は、関心対象の神経に対して安定した位置にパッチ部材を固定するように適応される。
【0053】
分かり易い特別な実施形態では、電極固定ユニットは、刺激信号を電極に提供するために少なくとも一つの電気接続界面を持つ電機絶縁部を形成し、電極は電極固定ユニットにおける、電極固定ユニットが皮膚と接触するように適応された位置に配設される。パルス発生器に対する単一の取付けを必要とするだけの単純な装置が提供される。
【0054】
さらなる実施形態では、ブリッジ状パッチ部材は、電極を保持するように適応される。電極はパッチ部材の皮膚に向けられる面に配設しなければならないことを理解されたい。一実施形態では、電極はパッチ部材の標準位置に配設され、あるいはパッチ部材の最良位置を決定した後に配設される。一実施形態では、複数の電極がパッチ部材に配設される。
【0055】
一実施形態では、ブリッジ状パッチ部材は、電極固定ユニットの第一端および第二端を受容するように特別に適応された二つの貫通孔を有し、電極固定ユニットの終端は、皮膚における所定の位置にパッチを維持するための停止子を形成する(ブラケットまたはクラスプを形成する)。
【0056】
一実施形態では、ブリッジ状パッチ部材は、ブリッジ状パッチ部材を皮膚上のさらなる位置に固定するために、さらなる電極固定ユニットに接続されるように特別に適用されたさらなる貫通孔を有する。
【0057】
さらに別の実施形態では、電極固定ユニットは、機構が電極またはパッチ部材と接続することを容易にする。実施形態では、機構手段は磁気、クリックイン、スナップフック、スナップコネクタ等のうちの一つである。したがって、電極固定ユニットおよび生体の組織に形成されたチャネルにおける装置は、取り付けられたリード線が含まれているか、あるいはパルス発生器用のリード線を取り付けることのできるスナップコネクタを有する、パッチもしくはパッド電極のような電極またはヒドロゲル系電極と共に使用される新しい固定具を表す。
【0058】
分かり易い実施形態では、システムは、電極固定ユニットまたはパッチ部材に配設された電極とパルス発生器との間の電気接続を含む。
【0059】
本発明の様々な実施形態において、パルス発生器は、電極固定ユニット内、上、もしくはそれと共に、またはパッチ部材内、上、もしくはそれと共に配設される。
【0060】
さらなる実施形態では、パルス発生器は、取外し可能な有線接続を介して電極固定ユニットに接続される。パルス発生器は、一実施形態では、電極固定ユニットまたはパッチ部材から遠隔的に配設される。
【0061】
一実施形態では、システムは、少なくとも一つの電極とパルス発生器との間の有線電気接続を含み、かつ事前設定された引張力を超えたときに、パルス発生器との有線電気接続を解放するように構成されたコネクタをさらに含む。接続は、単に有線接続を電極固定ユニットに再接続するだけで、再び得ることができる。一実施形態では、ソケットはプラグ‐ソケットコネクタである。
【0062】
これは評価される挙動である。なぜなら、形成されたチャネル内の所定の位置の電極固定ユニットを引っ張ることは、ユーザにとって有害または苦痛であり得るためである。このように、説明した安全装置は単にワイヤを切り離すだけであり、ユーザを危険から守る。
【0063】
一実施形態では、電極は、有線接続に対する事前設定された引張力を超えたときに、電極および/またはワイヤが電極固定ユニットまたはパッチ部材上のその位置から解放されるように、ばね保持装置内にその場で支持される。これは、形成されたチャネル内の電極固定ユニットをユーザが引っ張るのを防止するための別の解決策である。
【0064】
電気刺激は第一電極を介して信号を提供する必要があり、それは第二接続または電極を介してパルス発生器に戻ることを理解されたい。したがって、本発明は、実施形態では電極固定ユニット上、パッチ部材上、またはパルス発生器と共に配設され、電極固定ユニット上またはパッチ部材上に配設された少なくとも一つの電極のための対電極として働く、第二電極をも含む。
【0065】
生体に形成されたチャネル内に挿入するように適応された電極固定ユニットを使用することによって、皮膚の所定の位置に刺激電極を固定することで、移動の問題に関する懸念は全て解消される。関心対象の神経に対する電極の位置ずれは、システムの有効性に対し致命的な結果をもたらす。安定した神経電極界面の確立は、身体疾患を治療するために神経の電気刺激を適用するシステムにとって、極めて重要である。
【図面の簡単な説明】
【0066】
本発明を説明するために、現時点で好適な形態を添付の図面に示すが、本発明が図示する厳密な構成および手段に限定されることを意図するものではないことを理解されたい。
【0067】
【
図1】電極固定ユニットおよび刺激パッチ電極から成る電極システムを示す。
【
図2】終端を取り付けるためのねじ性をも備えた、分離可能な電極固定ユニット本体の一実施形態を示す。
【
図3】終端を取り付けるためのねじ性を備えた、電極固定ユニット本体の鋭く屈曲した一実施形態を示す。
【
図4】一つの終端がねじを用いて取り付けられ、一つの終端が磁気により取り付けられた、電極固定ユニット本体の円滑に屈曲した実施形態を示す。後者の終端は、コネクタおよびリード線を介してパルス発生器への電気接続が可能である。
【
図5】一体化された接続の細部を有する少なくとも一つの終端を備えた、単極構成の一体化された専用の刺激電極を備えた電極固定ユニットを示す。
【
図6】二極構成の一体化された二重刺激電極を備えた電極固定ユニットを示す。
【
図8】円形の電極固定ユニット本体を有する電極固定ユニットの例を示す。
【
図9】分離可能な設計の電極固定ユニット本体を備えた、
図6に提示された電極の詳細バージョンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0068】
電極システムの一実施形態を表す
図1は、少なくとも一つの取外し可能な終端(1)が端部に取り付けられた屈曲電極固定ユニット本体(2)から成る電極固定要素によって支持される、古典的なスナップコネクタ(3)付きのパッチ電極(4)から成る。終端を取り付けるための手段は、ねじ接続(5)である。終端に固定されたパッチ部材が緩まないように、あるいは終端が電極固定ユニット本体から抜け落ちるのを防止するように、終端が充分な固定力を提供することは極めて重要である。このシステムの連動機能は、大きい組織の移動が存在する条件下でさえも、使用中にパッチ電極の皮膚接触が緩むことを防止する。しかしながら、これは、パッチ部材を容易に取り外したり、希望により電極固定ユニットの保守を行い、何らかの理由で必要な場合に電極固定ユニットを交換するためのユーザにとっての利便性とバランスを取る必要がある。他の種類の電極、例えばAg/AgCl系電極を電極固定ユニットに取り付けることができ、パルス発生器または適用システムのいずれかの他の部分など、さらなる要素を取り付けることもできるであろう。スナップコネクタ(3)は、リード線をパルス発生器に接続するための一つの手段である。ジャックコネクタまたはパルス発生器との接続に適したいずれかの他の種類など、他の電気コネクタの使用は随意である。パッチ電極の幾何学的表面積は少なくとも25mm
2であり、尖鋭縁部が組織を刺激するのを防止するために丸みをつける必要がある。表面電極の形状は、電荷注入能力を最適化し、かつエッジ効果を最小化するように調整される。電極固定ユニット本体(2)は、例えば高デュロメータシリコーンなどのポリマー製で弾性的とするか、あるいは316LVM、MP35N、セラミックもしくは貴金属などの金属製で比較的剛性とすることができる。
【0069】
図2および
図3は電極固定ユニット本体(2)の一例を表しており、ねじ(5)を使用する終端取付け方法が示されている。電極固定ユニット本体(2および6)は中実のみならず中空とすることもできる。
図2の電極固定ユニット本体は分離可能であり、ジョイント(14)はここではねじ接続として例示されている。終端および分離可能な電極固定ユニット本体もまた、クリックインするか、磁気的に取り付けるか、ばね付勢するか、あるいは類似の概念を用いて取り付けることができる。終端の形状または設計は、尖鋭部をできるだけ最小限に留め、衛生上の保守が容易にでき、したがって感染状況を回避するように、円形およびベル形であることが好ましい。一部の実施形態では、特にパッチ電極が偏平なスペード形の終端等のようなシステムの一部として含まれる場合、他の設計の使用も随意である。
【0070】
電極固定ユニット本体(2および6)の形状は、電極固定ユニット本体の下の組織の量を最適化し、組織/電極固定ユニット界面の物理的強度の必要性とユーザにとっての快適性とのバランスを取ることを目標として、多種多様とすることができる。すなわち、曲げ半径および曲げ角度を特定の関心部位に応じて調整することができる。電極固定ユニット本体の好適な断面は、必ずしも円形ではないが、直径1mm~直径6mmの範囲である。用途のために大きい電荷注入が重要である場合、より大きい円周を有するすなわち最高で10mmまでの電極固定ユニット本体の断面の使用は随意とすることができる。好適なシャフトの長さは10mm~40mmであり、解剖学的に実現可能であるはずである。電極固定ユニット本体のサイズは、パッチ電極のサイズと相対的なその寸法に従い、最高で100mmの長さである。より長い距離の固定が必要な場合は、追加の電極固定ユニットを適用することが好ましい。電極固定ユニットの曲率は、電極固定ユニットの組織内への深さを決定する。この深さに対する要求は、電極固定ユニット本体の長さ、断面等、および刺激の解剖学的位置を考慮に入れ、刺激の部位における局所的組織によって異なることができる。電極固定ユニットが同じくパッチ電極に対して小さすぎる場合、固定の質が低下し、その結果、電極/組織界面が弱くなり、例えば機能が失われる危険性が高まる。
【0071】
図2、
図3、および
図4は、様々な形状の電極固定ユニット本体(2または2および6)を表している。さらなる設計は、電極固定ユニット本体を構成し、組織内への追加的固定手段を提供する、屈曲しコイル状に巻かれたワイヤを含むことができる。同様に、より尖鋭に屈曲した電極固定ユニット本体、多軸湾曲電極固定ユニット本体の設計は、組織固定機能を高める手段である。
【0072】
図4は、絶縁または導電下部(7)と、絶縁上部(8)と、リード線接続のためのコネクタ細部(3)とから成る、電気接続された終端に対し磁気終端支持体を利用する電極固定ユニット本体設計(2)を示す。終端(7、8)の絶縁材料は、電極界面の一部ではないように設計される場合、PEEK、フッ素化材料、セラミック、または類似の生体適合性材料を含むことができる。電極固定ユニット(2)の外面は神経組織との電極界面になる。終端の下部(7)を電極界面の一部とする場合、この部分は、316Lまたは用途に適した貴金属を利用して設計される。したがって、電極固定ユニット本体および/または少なくとも一つの終端は電気刺激電極を構成する。
【0073】
図5は、単極構成で設計された一体化刺激電極(9)を備えた電極固定ユニット本体を表す。電極(9)の作用部の小型化は、現在適用されている材料の電荷蓄積能力およびインピーダンスによって制限される。単極構成は電極固定ユニット本体のシャフトの長さおよび断面に関連する随意領域を最大化する。したがって、より大きい電荷入力は、より大きい電極表面(9)を得るために、より長い電極固定ユニット本体設計が必要になり得る。所与の設計に適用される絶縁材料(6)がある場合、それは生体適合性または生体不活性でなければならず、とりわけPEEKまたはセラミックが理想的である。他の材料としてはフッ素化系材料を挙げることができる。こうして電極固定ユニット本体は、導電性ではないように意図された部分(6)を有し、したがって刺激電極部(9)を隔離し、刺激すべき対象組織から電荷が逸れることを防止する。
【0074】
図6は、二重の一体化刺激電極(9)を持つ二極構成の電極固定ユニット本体をベースとする固定具設計を表す。三極、四極、または五極の電極の概念も、用途によっては関連する選択肢であることを証明することができるが、これらの設計は図には含まれない。刺激電極領域の形状は重要性が限定的であるが、挿入を可能にするため充分に平滑でなければならず、また組織に形成されたチャネル内で刺激を与えたりまたは危険にさえなり得る尖鋭縁を阻止しなければならない。電極領域は、注入される電界の負荷、選択される電極材料、および適用されるアプリケーションの使用頻度とのバランスを取る必要がある。電気接点の特徴はクリックオンスタッド(3)として示されているが、例えば
図9に示すようにばね付勢または磁気等を利用する他の設計も関連する。電極固定ユニット本体の形状は、刺激電極を電荷注入の標的組織に密接して配置することを可能にするために、変動することができる。組織内の電極の深さは理想的には2~5mmであるが、場合によっては、興奮組織の位置がさらに深い位置にあり、それ以上の深さが必要になることがある。この理由から、屈曲部(6)は関心部位に合せて調整しなければならない。電気刺激ベースのシステムの臨床的成果は、とりわけ、電極接点が神経系の標的構成要素に安全なレベルの刺激を一貫して提供する能力に依存する。安全な電荷注入の限度を超えると、電極の劣化および/または不可逆的な組織の損傷を引き起こし、結果的に臨床効果が失われ、電極が危険になりかねない。物理的大きさの低減に関連付けられる問題を緩和するために、先進的生体材料および貴重な材料が使用され、長寿命を確実にする。電極接点(9)は、刺激中に電荷移動が起きる、電極の電気化学的に活性な領域である。電極接点は、低い刺激閾値を得るために標的神経に近接することになっている。理想的には、電極接点は良好な化学的安定性、高い電荷注入能力、低い電気インピーダンスを有する必要があり、また低度の炎症を引き起こす柔軟な材料として組織内に挿入したままにする必要がある。ここでは有線接続(10)として示される電極接点(9)への電気接続(10)は、理想的には電極固定ユニット本体(2)の内部を走らなければならない。内部配線(10)は、電極自体の構造部によって、あるいは例えばセラミックの電極固定ユニット本体の部分的な被覆によって得ることもできる。このようにして、電極固定ユニットの組立ての簡素化が達成される。電極固定ユニットの配置のために、
図9に提示するように、少なくとも一つの終端(1)は取外し可能でなければならず、あるいは分離可能な電極固定ユニット本体を使用しなければならない。
【0075】
図7は、ここでは円形の電極固定ユニット本体形状として表される、閉ループの電極固定ユニット本体形状を有する電極固定ユニットの一例を示す。終端(1)は、電極固定ユニット本体(2)の湾曲した特徴内に配設されたばね付勢終端部材(11)を利用する、一つの終端要素を使用することによって形成される。電極固定ユニット本体は円形である必要はなく、またそれが配設される電極固定ユニット本体と同一の形状を有する必要はない。しかしながら、組織に形成されたチャネル内に配置または配設される部分は少なくとも、平滑な表面および全体構造を有する必要がある。終端要素は、皮膚レベルの支持を提供する構造要素を含むことができ、こうして電極固定ユニットがその使用中に配設される形成されたチャネル内で回転することを防止する。
【0076】
図8は、閉ループの電極固定ユニット本体形状(2)を有する電極固定ユニットの一例を示し、ここでは終端(1)はヒンジ(12)付き終端部材(1)によって提供される。これは、組織に形成されたチャネル内への挿入を容易にするために可撓性開口を提供する、二重ヒンジ設計でも同様に提供することができる。ヒンジ操作の方向はその機能にとって重要ではないが、一種のロック(13)であり、ここではクリックイン機能として例示される。ヒンジ要素(1)はさらに、延性のある成形可能な材料から作製することができ、ニチノールは好適な特徴を含み、したがって無限閉ループを形成する必要はなく、重なり合う部分または形成された端部間の充分に短い距離を置けばよく、それは充分な連動機能を有するであろう。電極固定ユニット本体は円形である必要はないが、組織に形成されたチャネルの内部に配設される部分は少なくとも、平滑な表面および構造を有する必要があり、この部分が平坦/非円形である場合、回転運動を防止することができる。
【0077】
図9は、
図6に提示した電極固定ユニットの分離可能なバージョンを示す。全てねじ式組立要素(16)を使用して分解することのできる、二つの電極部(9)および絶縁部(14)から成る分離可能な電極固定ユニット本体設計は、製造工程にとって有利である。終端のねじ付き細部は逆方向とすることもできる。すなわち、ねじ山は終端(1)の内部ではなく、電極(9)またはコネクタ終端下部(7)の内部に着座する。組立要素(16)はさらに摩擦干渉嵌合によって形成することができる。
【0078】
中間部(14)は絶縁部材および二つの導電性組立部材(9)から成り、そこに内部ワイヤが接続され、電極が取り付けられる。
【0079】
逆に、組立ては単極の電極固定ユニット設計を形成する。電気ワイヤ(10)は中間部部材(14)の内部、およびコネクタを形成する特徴(7、8、3、15)を有するコネクタ終端が配設される電極部材(9)を介して配線される。反対側の終端(1)のみならずそれが取り付けられる電極部材(9)も、電極固定ユニットから繰返し分解することができ、同様にそこに再び組み付けることができる。
【0080】
図10は、
図5の電極固定ユニット(17)によって表される、電気刺激システム全体の一例を示す。リード線(19)は取外し可能であり、予め定められた力で接続(18)を解放するように設計され、接続の好適な方法は磁気的に支持することである。同様の接続はパルス発生器(20)に配設することもできる。電極固定ユニットが電極を保持するときに、リード線は少なくとも対応する数のワイヤを保持しなければならず、したがって
図1~
図9に示したこれまでのシステムはいずれも、
図10に示す電極固定ユニット(17)を構成することができる。