(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-13
(45)【発行日】2023-09-22
(54)【発明の名称】スラブ構築方法及びスラブ
(51)【国際特許分類】
E04B 1/06 20060101AFI20230914BHJP
E02D 29/05 20060101ALI20230914BHJP
E03F 3/04 20060101ALI20230914BHJP
E02D 17/08 20060101ALI20230914BHJP
E04B 5/43 20060101ALI20230914BHJP
E04C 5/18 20060101ALI20230914BHJP
E04G 21/12 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
E04B1/06
E02D29/05 D
E03F3/04 A
E02D17/08 A
E04B5/43 B
E04C5/18 102
E04G21/12 105E
(21)【出願番号】P 2022061938
(22)【出願日】2022-04-01
【審査請求日】2022-04-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000116769
【氏名又は名称】旭コンクリート工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085338
【氏名又は名称】赤澤 一博
(74)【代理人】
【識別番号】100148910
【氏名又は名称】宮澤 岳志
(72)【発明者】
【氏名】福田 俊
(72)【発明者】
【氏名】岸 秀樹
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-097305(JP,A)
【文献】特開2013-181277(JP,A)
【文献】特公昭44-026215(JP,B1)
【文献】特開2011-089268(JP,A)
【文献】特開2005-016076(JP,A)
【文献】特開2016-102323(JP,A)
【文献】特開2006-009249(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/06
E02D 29/05
E03F 3/04
E02D 17/08
E04B 5/43
E04C 5/18
E04G 21/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレストレストコンクリート構造又はプレストレストレインフォースドコンクリート構造を有する中央部材と、この中央部材の長手方向
両端部に接続され鉄筋を埋設したレインフォースドコンクリート構造を有する
両側の端部部材とを接合してスラブを構築する方法であって、
前記スラブが、立坑の開口を閉塞するものであり、
前記両側の端部部材が、前記立坑を構成する構造物によりそれぞれ下方から支持されるものであり、
前記中央部材は、鉄筋が埋設されたものであり、
前記端部部材は、PC鋼材が埋設されていない構成のものであり、
前記中央部材に埋設したアンボンドPC鋼材を予め緊張しておき、
前記中央部材の側方に
前記端部部材を配し、
前記中央部材の
前記鉄筋と
前記端部部材の
前記鉄筋とを
継手を介して接合する
ことにより前記スラブが形成されるスラブ構築方法。
【請求項2】
前記中央部材の厚さ寸法が前記端部部材の厚さ寸法よりも大きい請求項1記載のスラブ構築方法。
【請求項3】
プレストレストコンクリート構造又はプレストレストレインフォースドコンクリート構造を有する中央部材と、
この中央部材の長手方向
両端部に接続され鉄筋を埋設したレインフォースドコンクリート構造を有する
両側の端部部材とを備え、
立坑の開口を閉塞するものであり、
前記両側の端部部材が、前記立坑を構成する構造物によりそれぞれ下方から支持されるものであり、
前記中央部材は、鉄筋が埋設されたものであり、
前記端部部材は、PC鋼材が埋設されていない構成のものであり、
前記中央部材の
前記鉄筋と
前記端部部材の
前記鉄筋とが
継手を介して接合されているスラブ。
【請求項4】
前記中央部材の厚さ寸法が前記端部部材の厚さ寸法よりも大きい請求項3記載のスラブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大型のスラブを構築する方法、及び大型のスラブに関する。
【背景技術】
【0002】
スラブの構築には以前からプレキャスト製品が多数用いられているものの、スラブのスパンが大きくなるほど部材厚を厚くする必要があり、製品質量が増加することで運搬車両や揚重機などの施工機械の制約が生じる。
【0003】
そのため、スラブの構造をプレストレストコンクリート構造あるいはプレストレストレインフォースドコンクリート構造とすることでスラブの部材厚を薄くし(質量の低減)、さらに大スパンになり上述の制約等を受ける場合は分割構造とし、施工現場で一体化している(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
一方で、スラブは単純支持であるためスパン中央部付近の曲げモーメントは大きく、支持部(両端部)付近においては小さいあるいは発生しない構造であるにも関わらず、製造上や施工上の都合により、中央部の曲げモーメントで決定した鋼材を、部材厚を変更することなくスパン全体に配置した不経済な構造としている。
【0005】
なお、スパンの両端部に点検孔などの開口を設置する場合、曲げモーメントの大きい中央部付近に導入できるプレストレスが減少し、部材厚が増加するあるいはプレストレスの導入量が偏心することでスラブ全体がたわむなどの欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は以上に着目してなされたもので、中央部の曲げモーメントで決定した鋼材をスパン全体に配置することにより生じる不経済を解消することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、プレストレストコンクリート構造又はプレストレストレインフォースドコンクリート構造を有する中央部材と、この中央部材の長手方向両端部に接続され鉄筋を埋設したレインフォースドコンクリート構造を有する両側の端部部材とを接合してスラブを構築する方法であって、前記スラブが、立坑の開口を閉塞するものであり、前記両側の端部部材が、前記立坑を構成する構造物によりそれぞれ下方から支持されるものであり、前記中央部材は、鉄筋が埋設されたものであり、前記端部部材は、PC鋼材が埋設されていない構成のものであり、前記中央部材に埋設したアンボンドPC鋼材を予め緊張しておき、前記中央部材の側方に前記端部部材を配し、前記中央部材の前記鉄筋と前記端部部材の前記鉄筋とを継手を介して接合することにより前記スラブが形成されるスラブ構築方法である。
【0009】
請求項2に記載の発明は、前記中央部材の厚さ寸法が前記端部部材の厚さ寸法よりも大きい請求項1記載のスラブ構築方法である。
【0010】
請求項3に記載の発明は、プレストレストコンクリート構造又はプレストレストレインフォースドコンクリート構造を有する中央部材と、この中央部材の長手方向両端部に接続され鉄筋を埋設したレインフォースドコンクリート構造を有する両側の端部部材とを備え、
立坑の開口を閉塞するものであり、前記両側の端部部材が、前記立坑を構成する構造物によりそれぞれ下方から支持されるものであり、前記中央部材は、鉄筋が埋設されたものであり、前記端部部材は、PC鋼材が埋設されていない構成のものであり、前記中央部材の前記鉄筋と前記端部部材の前記鉄筋とが継手を介して接合されているスラブである。
【0011】
請求項4に記載の発明は、前記中央部材の厚さ寸法が前記端部部材の厚さ寸法よりも大きい請求項3記載のスラブである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、中央部の曲げモーメントで決定した鋼材をスパン全体に配置することにより生じる不経済を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第一実施形態に係るスラブを使用した円形立坑を示す概略図。
【
図3】同実施形態に係る中央部材及び端部部材を示す正面図及び側面図。
【
図4】同実施形態に係るスラブを示す正面図及び曲げモーメントを示す図。
【
図5】本発明の第二実施形態に係るスラブを示す正面図。
【
図6】本発明の第三実施形態に係るスラブを示す正面図。
【
図7】本発明の第四実施形態に係るスラブを示す正面図。
【
図8】本発明の第五実施形態に係るスラブを示す平面図。
【
図9】
参考例である第六実施形態に係るボックスカルバートを示す正面図。
【
図10】
参考例である第七実施形態に係るボックスカルバートを示す正面図。
【
図11】
参考例である第八実施形態に係るスラブを示す正面図。
【
図12】本発明の他の実施形態の中央部材及び端部部材を示す正面図及び側面図。
【
図13】本発明の他の実施形態の中央部材及び端部部材を示す正面図及び側面図。
【
図14】本発明の他の実施形態の中央部材及び端部部材を示す正面図及び側面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の第一実施形態について、図面を参照しつつ以下に述べる。
【0017】
本実施形態は、
図1に示すような円形立坑Xの上部を閉塞するスラブA1に本発明を適用したものである。
【0018】
本実施形態の円形立坑Xは、地中に埋設したコンクリート製の空間X1の上方に設けたものであり、上端に開口Xaを有している。そして、
図2に示すように、その開口Xa上に本実施形態のスラブA1を幅方向に複数本併設し、これらのスラブA1により開口Xaを閉塞している。なお、開口Xaの端部を閉塞する比較的短尺なスラブA0は、本発明を適用したスラブA1と異なり、全体を一体に成形している。また、空間X1は、コンクリート製に限らず、例えば金属製のものであってもよい。さらに、円形の立坑に限らず、楕円形や、矩形その他多角形状の立坑の上端の開口上に本実施形態のスラブA1を設けてもよい。
【0019】
本実施形態のスラブA1は、
図3及び
図4に示すように、プレストレストレインフォースドコンクリート構造を有し長手方向中央部に位置する中央部材A2と、この中央部材A2の長手方向両端部にそれぞれ接続され鉄筋A7を埋設したレインフォースドコンクリート構造を有する両側の端部部材A3とを備えている。そして、
図2に示すように、このスラブA1の両端部をそれぞれ含む両側の端部部材A3が、円形立坑Xを形成する構造物X2によりそれぞれ下方から保持されている。ここで、
図3の(a)は、中央部材A2の両端に端部部材A3を接続する前の状態を示す正面図である。同図の(b)は、端部部材A3及び中央部材A2の互いに対向する面をそれぞれ示す側面図である。
図4の(a)は、中央部材A2の両端に端部部材A3を接続し、スラブA1を完成させた状態を示す正面図である。同図の(b)は、スラブA1が受ける曲げモーメントを示す図である。
【0020】
より具体的には、中央部材A2は、厚さ方向中間部にアンボンドPC鋼材A4を埋設しているとともに、厚さ方向両端部(上部及び下部)には鉄筋A5を埋設している。アンボンドPC鋼材A4は、現場への出荷に先立って緊張させた状態にしておくようにしている。一方、鉄筋A5の両端に対応する部位には、継手A6を設けている。この継手A6は、中央部材A2の長手方向両端部にそれぞれ埋設して配され内部にモルタルを充填したスリーブA61を利用したものである。そして、このスリーブA61内に前述した鉄筋A5を一方側から挿入するとともに、他方側から後述する端部部材A3の鉄筋A7を挿入することによりこれらの鉄筋A5、A7を接続するものである。
【0021】
端部部材A3は、厚さ方向両端部(上部及び下部)に鉄筋A7を埋設している。この鉄筋A7の埋設深さは、中央部材A2の鉄筋A5の埋設深さに一致させている。この端部部材A3の鉄筋A7の一端部A7aは外方に露出しており、この露出した部分が中央部材A2内に配された継手A6を介して中央部材A2の鉄筋A5に接続されている。
【0022】
本実施形態では、これら中央部材A2と端部部材A3とは厚さ寸法を等しくしている。
【0023】
このようなスラブA1は、以下のようにして形成される。
【0024】
まず、工場において中央部材A2及び端部部材A3をそれぞれ製造し、中央部材A2のアンボンドPC鋼材A4を緊張状態にしておく。
【0025】
その後、中央部材A2及び端部部材A3を工場から現場に搬送し、中央部材A2の両端近傍にそれぞれ端部部材A3を配置する。それから、端部部材A3の鉄筋A7の一端部A7aを中央部材に設けた継手A6に挿入する。そして、継手A6にモルタルを注入し、中央部材A2及び端部部材A3の鉄筋A5、A7同士を接続することにより、中央部材A2と端部部材A3とを接合する。
【0026】
本実施形態によれば、大きな曲げモーメントを受ける中央部材A2にプレストレストレインフォースドコンクリート構造を採用して工場出荷段階でアンボンドPC鋼材を緊張させる一方、受ける曲げモーメントが小さい端部部材A3にはより簡素なレインフォースドコンクリート構造を採用することで、スラブA1全体としての厚みをいたずらに大きくすることなく、また、スラブ全体としての曲げモーメントへの耐性は確保しつつ、スラブA1全体として必要とする鋼材の量を削減できる。すなわち、中央部の曲げモーメントで決定した鋼材をスパン全体に配置することにより生じる不経済を解消することができる。
【0027】
次いで、本発明の第二実施形態について述べる。
【0028】
本実施形態のスラブB1は、
図5に示すように、プレストレストレインフォースドコンクリート構造を有する中央部材B2と、この中央部材B2の長手方向端部に接続され鉄筋を埋設したレインフォースドコンクリート構造を有する端部部材B3とを備えている。
【0029】
これら中央部材B2及び端部部材B3は、以下に述べる点を除いて第一実施形態のスラブA1における中央部材A2及び端部部材A3と同様の構成を有する。
【0030】
本実施形態では、中央部材B2及び端部部材B3の厚さ寸法はいずれも長手方向の全域にわたって一定であるが、中央部材B2の厚さ寸法を端部部材B3の厚さ寸法よりも大きくしている。
【0031】
中央部材B2及び端部部材B3のその他の構成は、前述したように第一実施形態のスラブA1における中央部材A2及び端部部材A3と同様であるので、第一実施形態のスラブA1におけるものに対応する部位にそれぞれ先頭のAをBとした符号を付して説明を省略する。
【0032】
本実施形態によっても、本発明の最も主要な効果、すなわち中央部の曲げモーメントで決定した鋼材をスパン全体に配置することにより生じる不経済を解消することができるという効果を得ることができる。
【0033】
さらに本実施形態では、受ける曲げモーメントが大きな中央部材B2の厚さ寸法を端部部材B3の厚さ寸法よりも大きくしていること、換言すれば受ける曲げモーメントが小さな端部部材B3の厚さ寸法を中央部材B2の厚さ寸法よりも小さくしているので、端部部材B3の厚さ寸法を小さくしてさらなるコストの低下を図ることができる。
【0034】
次いで、本発明の第三実施形態について述べる。
【0035】
本実施形態のスラブC1は、
図6に示すように、プレストレストレインフォースドコンクリート構造を有する中央部材C2と、この中央部材C2の長手方向端部に接続され鉄筋を埋設したレインフォースドコンクリート構造を有する端部部材C3とを備えている。
【0036】
これら中央部材C2及び端部部材C3は、以下に述べる点を除いて第一実施形態のスラブA1における中央部材A2及び端部部材A3と同様の構成を有する。
【0037】
本実施形態では、端部部材C3の厚さ寸法は長手方向全域にわたって一定である。中央部材C2の厚さ寸法は、長手方向両端部では端部部材C3の厚さ寸法と略同一であり、長手方向中央部に向かうにつれ漸次大きくしている。
【0038】
中央部材C2及び端部部材C3のその他の構成は、前述したように第一実施形態のスラブA1における中央部材A2及び端部部材A3と同様であるので、第一実施形態のスラブA1におけるものに対応する部位にそれぞれ先頭のAをCとした符号を付して説明を省略する。
【0039】
本実施形態によっても、本発明の最も主要な効果、すなわち中央部の曲げモーメントで決定した鋼材をスパン全体に配置することにより生じる不経済を解消することができるという効果を得ることができる。
【0040】
さらに本実施形態では、中央部材C2の厚さ寸法を曲げモーメントが大きな長手方向中央部で最も大きくし、曲げモーメントが小さな端部部材C3及び中央部材の長手方向両端部の厚さ寸法は小さくしているので、強度を確保しつつスラブC1の各部位の厚さ寸法を適切なものとしてさらなるコストの低下を図ることができる。
【0041】
次いで、本発明の第四実施形態について述べる。
【0042】
本実施形態のスラブD1は、
図7に示すように、プレストレストレインフォースドコンクリート構造を有する中央部材D2と、この中央部材D2の長手方向端部に接続され鉄筋を埋設したレインフォースドコンクリート構造を有する端部部材D3とを備えている。
【0043】
これら中央部材D2及び端部部材D3は、以下に述べる点を除いて第一実施形態のスラブA1における中央部材A2及び端部部材A3と同様の構成を有する。
【0044】
本実施形態では、中央部材D2の厚さ寸法は、長手方向中央部に向かうにつれ漸次大きくしている。一方、端部部材D3の厚さ寸法は中央部材D2から遠ざかるにつれ漸次小さくしている。
【0045】
中央部材D2及び端部部材D3のその他の構成は、前述したように第一実施形態のスラブA1における中央部材A2及び端部部材A3と同様であるので、第一実施形態のスラブA1におけるものに対応する部位にそれぞれ先頭のAをDとした符号を付して説明を省略する。
【0046】
本実施形態によっても、本発明の最も主要な効果、すなわち中央部の曲げモーメントで決定した鋼材をスパン全体に配置することにより生じる不経済を解消することができるという効果を得ることができる。
【0047】
さらに本実施形態では、中央部材D2及び端部部材D3の厚さ寸法を曲げモーメントが大きな長手方向中央部で最も大きくし、曲げモーメントが小さくなるにつれ厚さ寸法を小さくしているので、強度を確保しつつスラブD1の各部位の厚さ寸法を適切なものとしてさらなるコストの低下を図ることができる。
【0048】
次いで、本発明の第五実施形態について述べる。
【0049】
本実施形態のスラブE1は、
図8に示すように、プレストレストレインフォースドコンクリート構造を有する中央部材E2と、この中央部材E2の長手方向端部に接続され鉄筋を埋設したレインフォースドコンクリート構造を有する端部部材E3とを備えている。
【0050】
これら中央部材E2及び端部部材E3は、以下に述べる点を除いて第一実施形態のスラブA1における中央部材A2及び端部部材A3と同様の構成を有する。
【0051】
本実施形態では、端部部材E3の長手方向に沿った一端縁に、半円形の切欠部E3aを設けている。この切欠部E3aは、同一の構成を有する2つのスラブE1を長手方向に直交する方向に隣接させた状態で配し、両スラブE1の端部部材E3の切欠部E3aの開口端同士を向かい合わせた状態とすることにより円形の開口を形成することを目的とするものである。
【0052】
中央部材E2及び端部部材E3のその他の構成は、前述したように第一実施形態のスラブA1における中央部材A2及び端部部材A3と同様であるので、第一実施形態のスラブA1におけるものに対応する部位にそれぞれ先頭のAをEとした符号を付して説明を省略する。
【0053】
本実施形態によっても、本発明の最も主要な効果、すなわち中央部の曲げモーメントで決定した鋼材をスパン全体に配置することにより生じる不経済を解消することができるという効果を得ることができる。
【0054】
特に本実施形態では、端部部材E3に半円形の開口E3aを設けているが、そのような開口が設けられていない中央部材E2にはアンボンドPC鋼材E4を前後対称となるように配しているので、曲げモーメントの大きい中央付近に効率的にプレストレストレインフォースドコンクリート構造が導入されることにより厚さ寸法を大きくすることなく、プレストレスの導入量が平面的に偏心することによるスラブE1全体のたわみの発生を抑制しつつ、端部に開口部を設けることができる。
【0055】
以上に述べた第二ないし第五実施形態のスラブB1、C1、D1、E1も、円形の立坑の上端の開口上に限らず、楕円形や、矩形その他多角形状の立坑の上端の開口上に設けてもよい。これらの立坑もコンクリート製の空間の上方に限らず、例えば金属製の空間の上方に設けてもよい。
【0056】
次いで、本発明の参考例である第六実施形態について述べる。
【0058】
このボックスカルバートYは、
図9に示すように、図示しない底版と、両側版Y1と、頂版F1とを備えたものであり、頂版F1に本発明を適用している。
【0059】
両側版Y1は、レインフォースドコンクリート構造を有するもので、厚さ方向両端部に鉄筋Y2を埋設している。
【0060】
頂版F1は、両側版Y1の上端からそれぞれ一体をなしつつ内方に突出した両側の端部部材F3と、これら両端部部材F3と別体をなし、それら両端部部材F3間に配された中央部材F2とを備えているスラブである。この中央部材F2は、プレストレストレインフォースドコンクリート構造を有し、アンボンドPC鋼材F4及び鉄筋F5が埋設されている。一方、端部部材F3は、鉄筋F7が埋設されている。
【0061】
これら中央部材F2及び端部部材F3は、第一実施形態のスラブA1における中央部材A2及び端部部材A3と同様の構成を有するので、第一実施形態のスラブA1におけるものに対応する部位にそれぞれ先頭のAをFとした符号を付して説明を省略する。
【0062】
本実施形態によっても、本発明の最も主要な効果、すなわち中央部の曲げモーメントで決定した鋼材をスパン全体に配置することにより生じる不経済を解消することができるという効果を得ることができる。
【0063】
次いで、本発明の参考例である第七実施形態について述べる。
【0065】
このボックスカルバートZは、
図10に示すように、図示しない底版と、両側版Z1と、頂版G1とを備えたものであり、頂版G1に本発明を適用している。
【0066】
両側版Z1は、レインフォースドコンクリート構造を有するもので、厚さ方向両端部に鉄筋Z2を埋設している。
【0067】
頂版G1は、両側版Z1の上端からそれぞれ一体をなしつつ内方に突出した両側の端部部材G3と、これら両端部部材G3と別体をなし、それら両端部部材G3間に配された中央部材G2とを備えているスラブである。この中央部材G2は、プレストレストレインフォースドコンクリート構造を有し、アンボンドPC鋼材G4及び鉄筋G5が埋設されている。一方、端部部材G3は、鉄筋G7が埋設されている。
【0068】
これら中央部材G2及び端部部材G3は、以下に述べる点を除いて第一実施形態のスラブA1における中央部材A2及び端部部材A3と同様の構成を有する。
【0069】
本実施形態では、端部部材G3の厚さ寸法は長手方向略全域にわたって一定である。但し、両端部部材G3の突出端面すなわち内側端面G3aには、下半部をそれぞれ内方に突出させた係止突起G31が形成されている。この係止突起G31の上面が、中央部材G2を受ける受け面G31sとなっている。中央部材G2の厚さ寸法も、長手方向略全域にわたって一定であるが、両側端面G2aには上半部をそれぞれ外方に突出させた係止突起G21が形成されている。そして、その係止突起G21の下面G21sを端部部材G3の受け面G31sに突き合わせた状態で、端部部材G3により中央部材G2を保持するようになっている。
【0070】
中央部材G2及び端部部材G3のその他の構成は、前述したように第一実施形態のスラブA1における中央部材A2及び端部部材A3と同様であるので、第一実施形態のスラブA1におけるものに対応する部位にそれぞれ先頭のAをGとした符号を付して説明を省略する。
【0071】
本実施形態によっても、本発明の最も主要な効果、すなわち中央部の曲げモーメントで決定した鋼材をスパン全体に配置することにより生じる不経済を解消することができるという効果を得ることができる。
【0072】
さらに本実施形態では、端部部材G3に設けた係止突起G31の受け面G31sで中央部材G2に設けた係止突起G21の下面G21sを受けるようにすることにより、支保工を使用することなくこれら中央部材G2と端部部材G3とを接合することができる。
【0073】
次いで、本発明の参考例である第八実施形態について述べる。
【0074】
本実施形態のスラブH1は、
図11に示すように、プレストレストレインフォースドコンクリート構造を有する中央部材H2と、この中央部材H2の長手方向端部に接続され同じくプレストレストレインフォースドコンクリート構造を有する端部部材H3とを備えている。
【0075】
より具体的には、中央部材H2は、厚さ方向中間部にアンボンドPC鋼材H4を埋設している。アンボンドPC鋼材H4は、現場への出荷に先立って緊張させた状態にしておくようにしている。一方、アンボンドPC鋼材H4の両端に対応する部位には、カプラH6を設けている。このカプラH6は、中央部材H2の長手方向両端部にそれぞれ形成した切欠H2a内に配されるものである。そして、前述したアンボンドPC鋼材H4にこのカプラH6を一方側から接続するとともに、他方側から後述する端部部材H3のPC鋼材H7を挿入することによりこれらのPC鋼材H4、H7を接続するものである。
【0076】
端部部材H3は、厚さ方向両端部(上部及び下部)にPC鋼材H7を埋設している。この端部部材H3のPC鋼材H7の一端部は外方に露出しており、この露出した部分が中央部材H2内に配されたカプラH6を介して中央部材H2のアンボンドPC鋼材H4に接続されている。
【0077】
本実施形態では、これら中央部材H2の厚さ寸法を端部部材H3の厚さ寸法よりも大きくしている。
【0078】
このようなスラブH1は、以下のようにして形成される。
【0079】
まず、工場において中央部材H2及び端部部材H3をそれぞれ製造し、中央部材H2のアンボンドPC鋼材H4を緊張状態にしておく。
【0080】
その後、中央部材H2及び端部部材H3を工場から現場に搬送し、中央部材H2の両端近傍にそれぞれ端部部材H3を配置する。それから、端部部材H3のアンボンドPC鋼材H7の一端部を中央部材に設けたカプラH6に接続することにより中央部材H2のアンボンドPC鋼材H4及び端部部材H3のPC鋼材H7とを接続し、中央部材H2と端部部材H3とを接合する。
【0081】
本実施形態によれば、中央部材H2及び端部部材H3の双方にプレストレストレインフォースドコンクリート構造を採用しつつ、大きな曲げモーメントを受ける中央部材H2の厚さ寸法を受ける曲げモーメントが小さい端部部材H3よりも大きくする、換言すれば受ける曲げモーメントが小さい端部部材H3の厚さ寸法を大きな曲げモーメントを受ける中央部材H2の厚さ寸法よりも小さくすることで、スラブH1全体としての厚みをいたずらに大きくすることなく、中央部の曲げモーメントで決定した厚さ寸法をスパン全体に設定することにより生じる不経済を解消することができる。
【0082】
なお、本発明は以上に述べた実施形態に限らない。
【0084】
また、本発明は、中央部が大きな曲げモーメントを受ける使用態様のスラブ全般に採用することができる。
【0085】
さらに、本発明にかかるスラブの形状は、任意のものを採用してもよい。例えば、
図12に示すスラブJ1のように、中央部材J2及び端部部材J3のそれぞれに長手方向に伸びる中空部J2a、J3aを有するものであってもよい。また、
図13に示すスラブK1のように、中央部材K2及び端部部材K3のそれぞれが上部に拡開した側面視T字状のものであってもよい。さらに、
図14に示すスラブL1のように、中央部材L2及び端部部材L3のそれぞれが高さ方向中央部の幅寸法を小さくした横H字状のものであってもよい。
【0086】
ここで、
図12の(a)はスラブJ1の中央部材J2及び端部部材J3を示す正面図である。同図の(b)は中央部材J2及び端部部材J3の互いに対向する面をそれぞれ示す側面図である。
図13の(a)はスラブK1の中央部材K2及び端部部材K3を示す正面図である。同図の(b)は中央部材K2及び端部部材K3の互いに対向する面をそれぞれ示す側面図である。
図14の(a)はスラブL1の中央部材L2及び端部部材L3を示す正面図である。同図の(b)は中央部材L2及び端部部材L3の互いに対向する面をそれぞれ示す側面図である。
【0087】
中央部材J2、K2、L2及び端部部材J3、K3、K3のその他の構成は、前述したように第一実施形態のスラブA1における中央部材A2及び端部部材A3と同様であるので、第一実施形態のスラブA1におけるものに対応する部位にそれぞれ先頭のAをそれぞれJ、K、Lとした符号を付して説明を省略する。
【0088】
その他、本発明の趣旨を損ねない範囲で種々に変更してよい。
【符号の説明】
【0089】
A1~L1…スラブ
A2~L2…中央部材
A3~L3…端部部材
A5~G5、K5~L5…中央部材の鉄筋
H4…中央部材のアンボンドPC鋼材
A7~L7…中央部材の鉄筋
【要約】
【課題】スラブの構築にあたり、中央部の曲げモーメントで決定した鋼材をスパン全体に配置することにより生じる不経済を解消する。
【解決手段】プレストレストコンクリート構造又はプレストレストレインフォースドコンクリート構造を有する中央部材A2と、この中央部材A2の長手方向端部に接続され鉄筋A7を埋設したレインフォースドコンクリート構造を有する端部部材A3とを接合してスラブA1を構築するに際し、中央部材A2に埋設したアンボンドPC鋼材A4を予め緊張しておき、中央部材A2の側方に端部部材A3を配し、中央部材A2の鉄筋A5と端部部材A3の鉄筋A7とを接合する。
【選択図】
図3