(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-13
(45)【発行日】2023-09-22
(54)【発明の名称】出力方法、出力装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
F16T 1/48 20060101AFI20230914BHJP
G06Q 10/04 20230101ALI20230914BHJP
G01M 3/24 20060101ALN20230914BHJP
【FI】
F16T1/48 Z
G06Q10/04
G01M3/24 A
(21)【出願番号】P 2022127767
(22)【出願日】2022-08-10
【審査請求日】2022-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000137889
【氏名又は名称】株式会社ミヤワキ
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100118049
【氏名又は名称】西谷 浩治
(72)【発明者】
【氏名】吉川 成雄
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/071040(WO,A1)
【文献】特開2001-50493(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16T 1/48
G06Q 10/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸気トラップにおける蒸気の漏洩量に関する情報を出力する出力装置における出力方法であって、
第1蒸気トラップにおける蒸気の漏洩量に関する複数の診断の結果を示す結果情報を取得し、
前記結果情報に基づいて、前記第1蒸気トラップにおける蒸気の漏洩量の時間的推移を示す第1関数を算出し、
前記第1蒸気トラップが設置されている配管と同じ材質の配管に設置された正常状態の第2蒸気トラップにおける蒸気の漏洩量の時間的推移を示す第2関数を取得し、
前記第1関数と前記第2関数との比較結果に基づいて、前記第1蒸気トラップの性能が劣化しているか否かを判定し、
前記第1蒸気トラップの性能が劣化している場合、前記第1関数に基づいて、前記第1蒸気トラップの前記複数の診断後における蒸気の漏洩量の時間的推移である対象推移を予測し、前記第1蒸気トラップの性能が劣化していない場合、前記第2関数に基づいて、前記対象推移を予測し、
前記対象推移を示す情報を出力する、
出力方法。
【請求項2】
前記第1関数の算出では、
前記結果情報が、時間の経過に応じて前記第1蒸気トラップにおける蒸気の漏洩量が線形的に増大することを示す場合、時間の経過に応じて蒸気の漏洩量が線形的に増大することを示す一次関数を前記第1関数として算出し、
前記結果情報が、時間の経過に応じて前記第1蒸気トラップにおける蒸気の漏洩量が非線形的に増大することを示す場合、時間の経過に応じて蒸気の漏洩量が二次関数的に増大することを示す二次関数を前記第1関数として算出する、
請求項1に記載の出力方法。
【請求項3】
前記第2関数は、時間の経過に応じて蒸気の漏洩量が前記材質に応じた増大率で線形的に増大することを示す一次関数である、
請求項1に記載の出力方法。
【請求項4】
前記対象推移を示す情報の出力では、
前記対象推移を示すグラフを出力する、
請求項1から3の何れか一項に記載の出力方法。
【請求項5】
前記対象推移を示す情報の出力では、
更に、前記第1関数を示すグラフを出力する、
請求項4に記載の出力方法。
【請求項6】
前記対象推移を示す情報の出力では、
更に、前記第2関数を示すグラフを出力する、
請求項5に記載の出力方法。
【請求項7】
蒸気トラップにおける蒸気の漏洩量に関する情報を出力する出力装置であって、
第1蒸気トラップにおける蒸気の漏洩量に関する複数の診断の結果を示す結果情報を取得する第1取得部と、
前記結果情報に基づいて、前記第1蒸気トラップにおける蒸気の漏洩量の時間的推移を示す第1関数を算出する算出部と、
前記第1蒸気トラップが設置されている配管と同じ材質の配管に設置された正常状態の第2蒸気トラップにおける蒸気の漏洩量の時間的推移を示す第2関数を取得する第2取得部と、
前記第1関数と前記第2関数との比較結果に基づいて、前記第1蒸気トラップの性能が劣化しているか否かを判定する判定部と、
前記第1蒸気トラップの性能が劣化している場合、前記第1関数に基づいて、前記第1蒸気トラップの前記複数の診断後における蒸気の漏洩量の時間的推移である対象推移を予測し、前記第1蒸気トラップの性能が劣化していない場合、前記第2関数に基づいて、前記対象推移を予測する予測部と、
前記対象推移を示す情報を出力する出力部と、
を備える出力装置。
【請求項8】
蒸気トラップにおける蒸気の漏洩量に関する情報を出力する出力装置のプログラムであって、
前記出力装置に、
第1蒸気トラップにおける蒸気の漏洩量に関する複数の診断の結果を示す結果情報を取得し、
前記結果情報に基づいて、前記第1蒸気トラップにおける蒸気の漏洩量の時間的推移を示す第1関数を算出し、
前記第1蒸気トラップが設置されている配管と同じ材質の配管に設置された正常状態の第2蒸気トラップにおける蒸気の漏洩量の時間的推移を示す第2関数を取得し、
前記第1関数と前記第2関数との比較結果に基づいて、前記第1蒸気トラップの性能が劣化しているか否かを判定し、
前記第1蒸気トラップの性能が劣化している場合、前記第1関数に基づいて、前記第1蒸気トラップの前記複数の診断後における蒸気の漏洩量の時間的推移である対象推移を予測し、前記第1蒸気トラップの性能が劣化していない場合、前記第2関数に基づいて、前記対象推移を予測し、
前記対象推移を示す情報を出力する、
処理を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸気トラップにおける蒸気の漏洩量を予測する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気配管系を備えたプラントにおいては、配管系の適所に設置した蒸気トラップによって、熱交換又は放熱等により生じた復水(ドレン)を配管系の外部に排出している。経年劣化や作動不良等によって蒸気トラップの性能が損なわれると、配管系内の蒸気が蒸気トラップを介して外部に漏出し、無駄な蒸気損失を招く。また、長期にわたる蒸気と配管の材質との反応によって配管内に蓄積した錆等の不純物(水蒸気酸化スケール)が流通することで、蒸気トラップの性能が損なわれることがある。このため、一年に一回等の定期的に、複数の担当者に特許文献1等に開示のような計測診断装置(以降、診断器)を持参させ、1日で約1000機の蒸気トラップの診断を分担して行っている。
【0003】
しかし、担当者の手作業による蒸気トラップの診断には多大な時間を要する。このため、各蒸気トラップに測定装置を常設して、診断に必要な測定データをサーバ装置に送信するようにし、サーバ装置において各蒸気トラップを診断するシステムを採用するプラントも存在する。
【0004】
複数の蒸気トラップの診断の終了後には、診断結果に関する報告書が作成される。具体的には、作業者は、診断器又はサーバ装置から、複数の診断結果を取得し、当該診断結果に関する種々の統計量及び各統計量の時間的推移を算出する。統計量には、複数の蒸気トラップにおける蒸気の漏洩量の総和及び平均値等が含まれる。そして、作業者は、当該種々の統計量を示す表及び各統計量の時間的推移を示すグラフ等が掲載された報告書を作成し、当該報告書を当該蒸気トラップを管理する顧客に提示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の報告書では、蒸気トラップの診断後における蒸気の漏洩量の時間的推移を、蒸気トラップの性能が劣化しているか否かに応じて適切に予測することができないという問題があった。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みて成されたものであり、蒸気トラップの診断後における蒸気の漏洩量の時間的推移を、蒸気トラップの性能が劣化しているか否かに応じて適切に予測することができる出力方法、出力装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る出力方法は、蒸気トラップにおける蒸気の漏洩量に関する情報を出力する出力装置における出力方法であって、第1蒸気トラップにおける蒸気の漏洩量に関する複数の診断の結果を示す結果情報を取得し、前記結果情報に基づいて、前記第1蒸気トラップにおける蒸気の漏洩量の時間的推移を示す第1関数を算出し、前記第1蒸気トラップが設置されている配管と同じ材質の配管に設置された正常状態の第2蒸気トラップにおける蒸気の漏洩量の時間的推移を示す第2関数を取得し、前記第1関数と前記第2関数との比較結果に基づいて、前記第1蒸気トラップの性能が劣化しているか否かを判定し、前記第1蒸気トラップの性能が劣化している場合、前記第1関数に基づいて、前記第1蒸気トラップの前記複数の診断後における蒸気の漏洩量の時間的推移である対象推移を予測し、前記第1蒸気トラップの性能が劣化していない場合、前記第2関数に基づいて、前記対象推移を予測し、前記対象推移を示す情報を出力する。
【0009】
本構成によれば、第1関数及び第2関数の比較結果に基づいて、第1蒸気トラップの性能が劣化しているか否かを適切に判定することができる。また、本構成では、第1蒸気トラップの性能が劣化している場合、第1関数に基づいて対象推移が予測され、第1蒸気トラップの性能が劣化していない場合、第2関数に基づいて対象推移が予測される。このため、本構成は、蒸気トラップの診断後における蒸気の漏洩量の時間的推移である対象推移を、蒸気トラップの性能が劣化しているか否かに応じて適切に予測することができる。
【0010】
上記の出力方法において、前記第1関数の算出では、前記結果情報が、時間の経過に応じて前記第1蒸気トラップにおける蒸気の漏洩量が線形的に増大することを示す場合、時間の経過に応じて蒸気の漏洩量が線形的に増大することを示す一次関数を前記第1関数として算出し、前記結果情報が、時間の経過に応じて前記第1蒸気トラップにおける蒸気の漏洩量が非線形的に増大することを示す場合、時間の経過に応じて蒸気の漏洩量が二次関数的に増大することを示す二次関数を前記第1関数として算出してもよい。
【0011】
本構成によれば、第1蒸気トラップの性能が劣化している場合に、第1関数に基づいて、第1蒸気トラップにおける蒸気の漏洩量が、前記複数の診断後、時間の経過に応じて線形的に又は二次関数的に増大すると予測することができる。
【0012】
上記の出力方法において、前記第2関数は、時間の経過に応じて蒸気の漏洩量が前記材質に応じた増大率で線形的に増大することを示す一次関数であってもよい。
【0013】
本構成によれば、第1蒸気トラップの性能が劣化していない場合に、第2関数に基づいて、第1蒸気トラップにおける蒸気の漏洩量が、前記複数の診断後、第1蒸気トラップが設置されている配管の材質に応じた増大率で、時間の経過に応じて線形的に増大すると予測することができる。
【0014】
上記の出力方法において、前記対象推移を示す情報の出力では、前記対象推移を示すグラフを出力してもよい。
【0015】
本構成によれば、対象推移を示すグラフが出力されるので、当該グラフから、第1蒸気トラップの前記複数の診断後における蒸気の漏洩量の時間的推移を視覚的に把握することができる。
【0016】
上記の出力方法において、前記対象推移を示す情報の出力では、更に、前記第1関数を示すグラフを出力してもよい。
【0017】
本構成によれば、対象推移を示すグラフだけでなく、更に第1関数を示すグラフが出力されるので、これらのグラフから、第1蒸気トラップの前記複数の診断時及びその後における蒸気の漏洩量の時間的推移を視覚的に把握することができる。
【0018】
上記の出力方法において、前記対象推移を示す情報の出力では、更に、前記第2関数を示すグラフを出力してもよい。
【0019】
本構成によれば、第1関数及び対象推移を示すグラフだけでなく、更に第2関数を示すグラフが出力される。このため、これらのグラフから、第1蒸気トラップの前記複数の診断時及びその後における蒸気の漏洩量の時間的推移と、第2蒸気トラップにおける蒸気の漏洩量の時間的推移と、を視覚的に比較することができる。
【0020】
本発明の別の一態様に係る出力装置は、蒸気トラップにおける蒸気の漏洩量に関する情報を出力する出力装置であって、第1蒸気トラップにおける蒸気の漏洩量に関する複数の診断の結果を示す結果情報を取得する第1取得部と、前記結果情報に基づいて、前記第1蒸気トラップにおける蒸気の漏洩量の時間的推移を示す第1関数を算出する算出部と、前記第1蒸気トラップが設置されている配管と同じ材質の配管に設置された正常状態の第2蒸気トラップにおける蒸気の漏洩量の時間的推移を示す第2関数を取得する第2取得部と、前記第1関数と前記第2関数との比較結果に基づいて、前記第1蒸気トラップの性能が劣化しているか否かを判定する判定部と、前記第1蒸気トラップの性能が劣化している場合、前記第1関数に基づいて、前記第1蒸気トラップの前記複数の診断後における蒸気の漏洩量の時間的推移である対象推移を予測し、前記第1蒸気トラップの性能が劣化していない場合、前記第2関数に基づいて、前記対象推移を予測する予測部と、前記対象推移を示す情報を出力する出力部と、を備える。
【0021】
本構成によれば、上記出力方法と同様の作用効果が得られる。
【0022】
本発明の別の一態様に係るプログラムは、蒸気トラップにおける蒸気の漏洩量に関する情報を出力する出力装置のプログラムであって、前記出力装置に、第1蒸気トラップにおける蒸気の漏洩量に関する複数の診断の結果を示す結果情報を取得し、前記結果情報に基づいて、前記第1蒸気トラップにおける蒸気の漏洩量の時間的推移を示す第1関数を算出し、前記第1蒸気トラップが設置されている配管と同じ材質の配管に設置された正常状態の第2蒸気トラップにおける蒸気の漏洩量の時間的推移を示す第2関数を取得し、前記第1関数と前記第2関数との比較結果に基づいて、前記第1蒸気トラップの性能が劣化しているか否かを判定し、前記第1蒸気トラップの性能が劣化している場合、前記第1関数に基づいて、前記第1蒸気トラップの前記複数の診断後における蒸気の漏洩量の時間的推移である対象推移を予測し、前記第1蒸気トラップの性能が劣化していない場合、前記第2関数に基づいて、前記対象推移を予測し、前記対象推移を示す情報を出力する、処理を実行させる。
【0023】
本構成によれば、上記出力方法と同様の作用効果が得られる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、蒸気トラップの診断後における蒸気の漏洩量の時間的推移を、蒸気トラップの性能が劣化しているか否かに応じて適切に予測することができる出力方法、出力装置及びプログラムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】蒸気トラップ管理システムの構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】診断装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】情報処理装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】測定装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図5】サーバ装置の構成の一例を示すブロック図である。
【
図6】第1関数に基づく対象推移の一例を示す図である。
【
図7】第2関数に基づく対象推移の一例を示す図である。
【
図8】蒸気トラップ管理システムにおける診断作業時の処理の流れを示すシーケンス図である。
【
図10】報告書作成処理の流れを示すシーケンス図である。
【
図11】イベント情報の入力画面の一例を示す図である。
【
図12】第1蒸気トラップにおける蒸気の漏洩量の時間的推移を示す報告書の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて詳細に説明する。尚、異なる図面において同一の符号を付した要素は、同一又は相応する要素を示すものとする。
【0027】
<システムの構成>
図1は、蒸気トラップ管理システム100の構成を示すブロック図である。蒸気トラップ管理システム100は、診断装置1と、ノートパソコン又はタブレット端末等の情報処理装置2と、測定装置3と、クラウドサーバ等のサーバ装置4(出力装置)とを備えている。
【0028】
診断装置1と情報処理装置2とは、Bluetooth(登録商標)等の任意の通信方式によって相互に通信可能である。また、情報処理装置2とサーバ装置4とは、公衆回線網等の任意の通信ネットワーク9を介して、IP等の任意の通信方式によって相互に通信可能である。
【0029】
蒸気配管系を備えたプラントにおいては、配管系内に生じた復水(ドレン)を配管系の外部に排出するために、配管系の適所に複数の蒸気トラップが設置されている。経年劣化又は作動不良等によって蒸気トラップの性能が損なわれると、配管系内の蒸気が蒸気トラップを介して外部に漏出し、無駄な蒸気損失を招く。また、長期にわたる蒸気と配管の材質との反応によって配管内に蓄積した錆等の不純物(水蒸気酸化スケール)が流通することで、蒸気トラップの性能が損なわれることがある。このため、一年に一回等の定期的に、当該複数の蒸気トラップを診断する作業(以降、診断作業)が行われる。尚、当該診断作業は、定期的に限らず、不定期に行われても良い。
【0030】
診断作業は、複数の作業者によって分担して行われる。各作業者は、診断装置1を携帯してプラント内を移動することにより、担当の一以上の蒸気トラップを診断装置1によって順次診断する。
【0031】
プラント内へのノートパソコン等の情報処理装置2の持ち込みが許可されている場合、作業者は、診断装置1とともに情報処理装置2を携帯して、各蒸気トラップを順に診断することもできる。この場合、診断装置1は、情報処理装置2及び通信ネットワーク9を介してサーバ装置4に、各蒸気トラップの診断結果をリアルタイムで送信することができる。
【0032】
一方、プラント内へのノートパソコン等の持ち込みが禁止されている場合、作業者は、営業車又は現場事務所等の待機場所に情報処理装置2を保管し、診断装置1のみを携帯して、担当の複数の蒸気トラップを診断装置1によって順次診断する。この場合、各蒸気トラップの診断結果は、診断装置1内に保存される。作業者が待機場所に戻った後、診断装置1は、情報処理装置2及び通信ネットワーク9を介してサーバ装置4に、診断装置1内に保存した担当の複数の蒸気トラップの診断結果を送信する。
【0033】
大規模なプラントでは数千個から数万個の蒸気トラップが設置されている場合がある。この場合、作業者による診断装置1を用いた手作業での各蒸気トラップの診断には多大な時間が必要になる。このため、通信ネットワーク9を介してサーバ装置4と相互に通信可能な測定装置3を、各蒸気トラップに常設しているプラントも存在する。
【0034】
測定装置3は、例えば、月1回等の定期的に、各蒸気トラップの診断に必要なデータを測定し、測定したデータ(以降、測定データ)をサーバ装置4に送信する。この場合、サーバ装置4が、受信した測定データに基づいて各蒸気トラップの診断を行う。
【0035】
また、サーバ装置4へのアクセス権を有する任意の情報処理装置(図略)は、通信ネットワーク9を介してサーバ装置4にアクセス可能である。これにより、当該情報処理装置において、サーバ装置4が管理している種々の情報を閲覧等することが可能となっている。
【0036】
以下、診断装置1、情報処理装置2、測定装置3及びサーバ装置4の構成について詳述する。
【0037】
<診断装置1の構成>
図2は、診断装置1の構成の一例を示す図である。診断装置1は、測定部12、操作部13、表示部14、記憶部15、通信部16、インターフェイス部17(以降、IF部17)及び制御部11を有している。
【0038】
測定部12は、温度センサ121及び振動センサ122を含む。温度センサ121は、熱電対、増幅回路、及びAD変換回路等を用いて構成されている。作業者が診断装置1の探針(図略)を、測定対象の蒸気トラップ(以降、対象蒸気トラップ)に押し当てることにより、温度センサ121は、対象蒸気トラップの温度を測定し、その測定結果を示す温度データを出力する。振動センサ122は、圧電素子、増幅回路、及びAD変換回路等を用いて構成されている。作業者が上記探針を対象蒸気トラップに押し当てることにより、振動センサ122は、対象蒸気トラップの振動を測定し、その測定結果を示す振動データを出力する。
【0039】
操作部13は、作業者が各種の情報を入力するための操作スイッチ等によって構成されている。表示部14は、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイ等を用いて構成されている。但し、タッチパネル式ディスプレイを使用することにより、操作部13と表示部14とを一体として構成してもよい。
【0040】
記憶部15は、フラッシュメモリ等の書き換え可能な半導体メモリ等を用いて構成されている。通信部16は、Bluetooth(登録商標)等の任意の通信方式に対応した通信回路を用いて構成され、情報処理装置2等の外部装置と通信を行う。
【0041】
IF部17は、SDカード又はUSBメモリ等のフラッシュメモリ7が着脱自在に接続される入出力端子等によって構成されている。IF部17は、自身にフラッシュメモリ7が接続された状態で、当該フラッシュメモリ7と制御部11との間で情報を入出力する。
【0042】
具体的には、IF部17は、制御部11による制御の下、フラッシュメモリ7に記憶されている情報を読み出し、当該読み出した情報を制御部11に入力する。また、IF部17は、制御部11による制御の下、制御部11から出力された情報を、フラッシュメモリ7に記憶する。
【0043】
制御部11は、CPU等を用いて構成されている。制御部11は、当該CPUが所定のプログラムを実行することによって実現される機能として、取得部111、診断部112及び出力部113を有している。
【0044】
取得部111は、IF部17を介してフラッシュメモリ7から、複数の蒸気トラップのそれぞれの診断に必要な情報が記述された管理台帳52(
図5)を取得し、取得した管理台帳52を記憶部15に記憶する。
【0045】
また、取得部111は、作業者が診断装置1とともに情報処理装置2を携帯している場合、通信部16を介して情報処理装置2から管理台帳52を取得し、取得した管理台帳52を記憶部15に記憶する。
【0046】
管理台帳52には、診断作業で診断する複数の蒸気トラップのそれぞれについて、診断順に、各蒸気トラップの識別情報、位置情報、属性情報、条件情報及び特性情報が記述されている。
【0047】
識別情報は、診断対象の各蒸気トラップを識別する情報である。例えば、識別情報には、各蒸気トラップがプラントで管理する対象の蒸気トラップとして登録された順番を示すトラップナンバーが採用される。例えば、ある蒸気トラップが、プラントで管理する対象の蒸気トラップとして3番目に登録されたとする。この場合、当該蒸気トラップのトラップナンバー「3」が、当該蒸気トラップの識別情報として採用される。
【0048】
位置情報は、各蒸気トラップが設置されている位置を示す情報である。プラントに設置されている複数の配管系は、配管系を構成する配管の材質に応じて複数のグループに分類されている。
【0049】
具体的には、配管の材質には、例えば、低合金(Cr-MO)鋼及びステンレス鋼等が含まれる。例えば、材質が低合金鋼の配管によって構成された配管系は、識別情報「低合金鋼」によって識別されるグループに分類されている。一方、材質がステンレス鋼の配管によって構成された配管系は、識別情報「ステンレス鋼」によって識別されるグループに分類されている。
【0050】
また、位置情報には、プラントを複数のエリアに区画したときの、各蒸気トラップが設置された場所を含むエリアの識別情報が含まれる。また、位置情報には、各エリアを複数行かつ複数列に並ぶ複数のグリッドに分割したときの、各蒸気トラップが設置されているグリッドの行番号及び列番号を示す情報が含まれる。
【0051】
属性情報は、各蒸気トラップの属性を示す情報である。例えば、属性情報には、各蒸気トラップの製造メーカ名、機種名、弁の開閉方式を特定する情報(以降、型式)及び復水の最大排出量を特定する情報(以降、モデル)が含まれる。
【0052】
条件情報は、各蒸気トラップの動作条件を示す情報である。例えば、条件情報には、各蒸気トラップの使用圧力及び設定温度が含まれる。
【0053】
特性情報は、各蒸気トラップの特性を示す情報である。例えば、特性情報には、各蒸気トラップにおける蒸気の漏洩量と振動値との関係を示す情報(以降、振動特性)及び各蒸気トラップにおける蒸気の漏れ度合を判別するために用いる振動閾値等が含まれる。また、特性情報には、各蒸気トラップの状態を判別するために用いる温度閾値等が含まれる。
【0054】
管理台帳52には、更に、診断作業を行う時期を示す情報(以降、時期情報)が含まれる。時期情報は、例えば、診断作業を行うときの年月日によって表される。ただし、時期情報は、診断作業を行うときの年月日に限らず、更に、午前、午後又は時刻を用いて表されてもよい。
【0055】
診断部112は、記憶部15に記憶された管理台帳52と、測定部12から入力された対象蒸気トラップの温度データ及び振動データと、に基づいて、対象蒸気トラップの診断を行う。
【0056】
例えば、診断部112は、管理台帳52に含まれている対象蒸気トラップの温度閾値と対象蒸気トラップの温度データとを比較し、管理台帳52に含まれている対象蒸気トラップの振動閾値と対象蒸気トラップの振動データとを比較する。
【0057】
診断部112は、これらの比較の結果に基づいて、対象蒸気トラップが正常状態であるか不良状態であるかを診断する。また、対象蒸気トラップが不良状態の場合、診断部112は、上記比較の結果に基づいて不良の内容を判別する。例えば、不良の内容は、蒸気漏れ、閉塞、排出不良又はその他等である。対象蒸気トラップが蒸気漏れの状態の場合、診断部112は、上記比較の結果に基づいて、対象蒸気トラップの蒸気の漏れ度合を段階的に判別する。例えば、蒸気の漏れ度合は、吹放し、大、中又は小等である。
【0058】
また、診断部112は、対象蒸気トラップの特性情報に含まれる振動特性及び振動データに基づいて、対象蒸気トラップにおける蒸気の漏洩量を算出する。
【0059】
診断部112は、対象蒸気トラップの診断を終了すると、対象蒸気トラップの診断を行った時期を示す情報(以降、診断時期情報)と対象蒸気トラップの診断結果を示す情報(以降、診断結果情報)とを、記憶部15に記憶されている管理台帳52に追記する。これにより、診断部112は、対象蒸気トラップの診断を終了する度に、記憶部15に記憶されている管理台帳52を更新する。
【0060】
尚、対象蒸気トラップが診断装置1の探針を押し当てることができない位置に設置されていた又は作業者が診断作業の予定時間内に対象蒸気トラップを診断できなかったこと等が原因で、対象蒸気トラップの診断を行えない場合がある。この場合、作業者は、操作部13を用いて、対象蒸気トラップが未診断状態であることを示す情報を入力する。この場合、診断部112は、対象蒸気トラップが未診断状態であることを示す情報を、対象蒸気トラップの診断結果情報として管理台帳52に追記する。
【0061】
また、対象蒸気トラップが撤去され、管理台帳52に含まれる対象蒸気トラップの位置情報が示す位置に設置されていない場合がある。この場合、作業者は、操作部13を用いて、対象蒸気トラップが撤去状態であることを示す情報を入力する。この場合、診断部112は、対象蒸気トラップが撤去状態であることを示す情報を、対象蒸気トラップの診断結果情報として管理台帳52に追記する。
【0062】
また、対象蒸気トラップが設置されている配管が利用されていない又は診断作業時に顧客から対象蒸気トラップの診断を行わないように指示される場合がある。この場合、作業者は、操作部13を用いて、対象蒸気トラップが診断除外状態であることを示す情報を入力する。この場合、診断部112は、対象蒸気トラップが診断除外状態であることを示す情報を、対象蒸気トラップの診断結果情報として管理台帳52に追記する。
【0063】
出力部113は、作業者による操作部13の操作に応じて、記憶部15に記憶されている更新後の管理台帳52(結果情報)を出力する。具体的には、作業者がフラッシュメモリ7をIF部17に接続した場合、出力部113は、記憶部15に記憶されている更新後の管理台帳52をIF部17を介して当該フラッシュメモリ7に記憶する。作業者が診断装置1とともに情報処理装置2を携帯している場合、出力部113は、更新後の管理台帳52を通信部16を用いて当該情報処理装置2に送信する。
【0064】
<情報処理装置2の構成>
図3は、情報処理装置2の構成の一例を示す図である。情報処理装置2は、操作部23、表示部24、記憶部25、通信部26、IF部27及び制御部21を有している。
【0065】
操作部23は、作業者が各種の情報を入力するためのキーボード又はマウス等によって構成されている。表示部24は、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイ等を用いて構成されている。但し、タッチパネル式ディスプレイを使用することにより、操作部23と表示部24とを一体として構成してもよい。
【0066】
記憶部25は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、又はフラッシュメモリ等の書き換え可能な任意の記憶装置を用いて構成されている。
【0067】
通信部26は、Bluetooth(登録商標)等の任意の通信方式に対応した通信回路を用いて構成されており、診断装置1の通信部16と相互に通信可能である。また、通信部26は、IP等の任意の通信方式に対応した通信回路を用いて構成されており、通信ネットワーク9を介して、サーバ装置4の通信部46と相互に通信可能である。
【0068】
IF部27は、SDカード又はUSBメモリ等のフラッシュメモリ7が着脱自在に接続される入出力端子等によって構成されている。IF部27は、自身にフラッシュメモリ7が接続された状態で、当該フラッシュメモリ7と制御部21との間で情報を入出力する。
【0069】
制御部21は、CPU(Central Processing Unit)等を用いて構成されている。制御部21は、当該CPUが所定のプログラムを実行することによって実現される機能として、作成部211、取得部212及び出力部213を有している。
【0070】
作成部211は、作業者による操作部23の操作に応じて、診断作業における診断対象の複数の蒸気トラップのそれぞれの診断に必要な情報が記述された管理台帳52を作成する。具体的には、作成部211は、作業者による操作部23の操作に応じて、通信部26を用いて、当該複数の蒸気トラップを管理しているプラントの最新の機器情報51(
図5)をサーバ装置4から取得し、当該機器情報51に基づいて管理台帳52を作成する。
【0071】
プラントの機器情報51とは、当該プラントで管理されている複数の蒸気トラップ及び配管系に関する情報である。プラントの機器情報51には、当該プラントが管理する複数の蒸気トラップのそれぞれの識別情報、位置情報、属性情報、条件情報及び特性情報と、当該プラントが管理する各配管系を構成する配管の特性を示す配管特性情報と、当該機器情報51がサーバ装置4に記憶された時期を示す情報(以降、登録時期情報)と、が含まれる。プラントの最新の機器情報51とは、登録時期情報が示す時期が最も現在に近い当該プラントの機器情報51を示す。
【0072】
配管特性情報には、各配管系を示すグループの識別情報と、各配管系を構成する配管に設置された正常状態の蒸気トラップにおける蒸気の漏洩量の時間的推移を示す関数(以降、漏洩量特性関数)が含まれている。漏洩量特性関数は、実験値等に基づき予め定められている。漏洩量特性関数は、時間の経過に応じて蒸気の漏洩量が線形的に増大する一次関数(線形関数)を示す。漏洩量特性関数が示す蒸気の漏洩量の増大率は、各配管系を構成する配管の材質に応じて異なっている。
【0073】
例えば、材質が低合金鋼(Cr-Mo鋼)の配管には、マグネタイトから成る水蒸気酸化スケールの層とスピネル酸化物から成る水蒸気酸化スケールの層とが略同じ厚さで平坦に蓄積する。低合金鋼の配管は、水蒸気酸化スケールが厚く蓄積するものの、水蒸気酸化スケールが配管から剥離することが少ないという特性を有する。一方、材質がオーステナイトステンレス鋼の配管には、配管中のクロム濃化層の影響を受けて、水蒸気酸化スケールが複雑な形状で蓄積する。このため、オーステナイトステンレス鋼の配管は、低合金鋼(Cr-Mo鋼)の配管よりも、水蒸気酸化スケールが配管から剥離され易いという特性を有する。したがって、オーステナイトステンレス鋼の配管によって構成された配管系の漏洩量特性関数が示す蒸気の漏洩量の増大率(漏洩量特性関数の傾き)は、低合金鋼(Cr-Mo鋼)の配管によって構成された配管系の漏洩量特性関数が示す蒸気の漏洩量の増大率よりも大きく定められている。
【0074】
作成部211は、サーバ装置4から取得したプラントの最新の機器情報51から、作業者の操作により指示された、診断対象の一以上の蒸気トラップの識別情報、位置情報、属性情報、条件情報及び特性情報を抽出する。以降、蒸気トラップの識別情報、位置情報、属性情報、条件情報及び特性情報を総称する場合、蒸気トラップの管理情報と記載する。
【0075】
作成部211は、抽出した各蒸気トラップの管理情報を、作業者の操作により指示された各蒸気トラップの診断順に並べて記述した管理台帳52を作成する。尚、管理台帳52における各蒸気トラップの管理情報の並び順は、診断順に限らず、例えば、各蒸気トラップの識別情報の降順又は昇順等であっても良い。
【0076】
IF部27にフラッシュメモリ7が接続された場合、作成部211は、作成した管理台帳52をIF部27を介してフラッシュメモリ7に記憶する。この場合、作業者は、当該フラッシュメモリ7を診断装置1のIF部17に接続する。診断装置1では、取得部111が、当該フラッシュメモリ7に記憶されている管理台帳52をIF部17を介して取得する。これにより、診断装置1において、当該管理台帳52と、測定部12が出力した測定データと、に基づいて、複数の蒸気トラップの診断が行えるようになる。
【0077】
また、作業者が診断装置1と情報処理装置2とを携帯している場合、作成部211は、作成した管理台帳52を、通信部26を介して当該診断装置1に送信する。この場合、当該診断装置1では、取得部111が、通信部16が情報処理装置2から受信した管理台帳52を、通信部16から取得する。これにより、診断装置1において、当該管理台帳52と、測定部12が出力した測定データと、に基づいて、複数の蒸気トラップの診断が行えるようになる。
【0078】
また、作成部211は、作成した管理台帳52を通信部26を用いてサーバ装置4に送信する。これにより、サーバ装置4において、情報処理装置2から受信した管理台帳52に、一以上の診断装置1のそれぞれから受信した複数の蒸気トラップの診断結果情報を追記することが可能となる。その結果、サーバ装置4において、診断作業における複数の蒸気トラップの診断結果を一元管理することが可能となる。
【0079】
取得部212は、通信部26が診断装置1から受信した情報を、通信部26から取得する。例えば、通信部26が、診断時期情報及び診断結果情報が追記された更新後の管理台帳52を診断装置1から受信した場合、取得部212は、当該更新後の管理台帳52を通信部26から取得する。
【0080】
また、取得部212は、IF部27にフラッシュメモリ7が接続された状態で、IF部27を介して当該フラッシュメモリ7に記憶されている情報を取得する。例えば、診断装置1において診断時期情報及び診断結果情報が追記された更新後の管理台帳52がフラッシュメモリ7に記憶された後、当該フラッシュメモリ7がIF部27に接続されたとする。この場合、取得部212は、当該フラッシュメモリ7から当該管理台帳52を取得する。
【0081】
出力部213は、種々の情報を通信部26を用いてサーバ装置4に送信する。例えば、出力部213は、取得部212が取得した更新後の管理台帳52を通信部26を用いてサーバ装置4に送信する。
【0082】
<測定装置3の構成>
図4は、測定装置3の構成の一例を示す図である。測定装置3は、測定部32、通信部36及び制御部31を備えている。
【0083】
測定部32は、温度センサ321及び振動センサ322を含む。温度センサ321は、熱電対、増幅回路、及びAD変換回路等を用いて構成されている。温度センサ321は、対象蒸気トラップの入口部(一次側)等に設置されている。温度センサ321は、制御部31からの指示に応じて、対象蒸気トラップの温度を測定し、その測定結果を示す温度データを制御部31に出力する。振動センサ322は、圧電素子、増幅回路、及びAD変換回路等を用いて構成されている。振動センサ322は、対象蒸気トラップの排出部(二次側)等に設置されている。振動センサ322は、制御部31からの指示に応じて、対象蒸気トラップの振動を測定し、その測定結果を示す振動データを出力する。
【0084】
通信部36は、IP等の任意の通信方式に対応した通信回路を用いて構成されており、通信ネットワーク9を介して、サーバ装置4の通信部46と相互に通信可能である。尚、プラントに、通信ネットワーク9を介してサーバ装置4の通信部46と相互に通信可能な中継通信装置を設けてもよい。これに合わせて、通信部36が、Bluetooth(登録商標)等の任意の通信方式に対応した通信回路を用いて構成され、当該中継通信装置と相互に通信可能に構成されてもよい。これにより、通信部36が、当該中継通信装置と通信ネットワーク9とを介して、サーバ装置4の通信部46と相互に通信可能に構成されてもよい。
【0085】
制御部31は、CPU(Central Processing Unit)及びメモリ等を備えたマイクロコンピュータを用いて構成されている。
【0086】
制御部31は、月一回等の定期的に、対象蒸気トラップの温度及び振動を測定部32に測定させる測定処理を実行する。制御部31は、測定処理によって測定部32から入力された温度データ及び振動データを、対象蒸気トラップの測定結果を示す測定データとし、対象蒸気トラップが設置されているプラントの識別情報、対象蒸気トラップの識別情報及び現在日時を示す情報(以降、測定日時情報)とともに、通信部36を用いてサーバ装置4へ送信する。尚、制御部31が、温度データ及び振動データのうちの何れか一方のみを測定データとして、サーバ装置4へ送信するようにしてもよい。
【0087】
<サーバ装置4の構成>
図5は、サーバ装置4の構成の一例を示す図である。サーバ装置4は、通信部46、記憶部45及び制御部41を有している。
【0088】
通信部46は、IP等の任意の通信方式に対応した通信回路を用いて構成されており、通信ネットワーク9を介して情報処理装置2等の外部装置と通信を行う。
【0089】
記憶部45は、HDD、SSD、又はフラッシュメモリ等の書き換え可能な任意の記憶装置を用いて構成されている。記憶部45には、一以上のプラントのそれぞれの識別情報と対応付けて、各プラントの機器情報51が記憶されている。機器情報51の内容が更新された場合、更新の時期を示す登録時期情報を含んだ更新後の内容の機器情報51が、記憶部45に新たに記憶される。
【0090】
記憶部45には、一以上の診断作業のそれぞれに対応する管理台帳52が記憶される。診断作業に対応する管理台帳52とは、当該診断作業における診断対象の複数の蒸気トラップのそれぞれの診断に必要な情報を含む管理台帳52である。
【0091】
記憶部45の記憶領域の一部は、管理テーブル53として利用される。管理テーブル53は、測定装置3が設置されている蒸気トラップの診断に関する情報を管理するためのテーブルである。管理テーブル53には、測定装置3が設置されている蒸気トラップを管理するプラントの識別情報と、当該蒸気トラップの識別情報と、当該蒸気トラップの測定結果を示す測定データと、当該蒸気トラップの診断を行った時期を示す診断時期情報と、当該蒸気トラップの診断結果を示す診断結果情報と、が対応付けて記憶される。
【0092】
記憶部45には、複数の蒸気トラップの診断結果に関する報告書の定型フォーム54が記憶されている。報告書の定型フォーム54の詳細については後述する。
【0093】
制御部41は、CPU等を用いて構成されている。制御部41は、当該CPUが所定のプログラムを実行することによって実現される機能として、管理部411、診断部412、受付部413、取得部414(第1取得部)、算出部415、判定部416(第2取得部、判定部)、予測部417、作成部418及び出力部419を有している。
【0094】
管理部411は、各診断作業に対応する管理台帳52を管理する。
【0095】
具体的には、管理部411は、通信部46が受信した管理台帳52を通信部46から取得する。管理部411は、取得した管理台帳52(以降、取得台帳)に診断時期情報及び診断結果情報が含まれていない場合、当該取得台帳を、新たな診断作業に対応する管理台帳52として記憶部45に記憶する。
【0096】
一方、取得台帳に一以上の蒸気トラップの診断時期情報及び診断結果情報が含まれている場合、管理部411は、当該一以上の蒸気トラップの診断時期情報及び診断結果情報を、記憶部45に記憶されている、取得台帳と同じ診断作業に対応する管理台帳52に追記する。これにより、管理部411は、記憶部45に記憶されている、取得台帳と同じ診断作業に対応する管理台帳52を更新する。
【0097】
具体的には、管理部411は、記憶部45に記憶されている一以上の診断作業に対応する管理台帳52のうち、取得台帳と同じ時期情報を含み、且つ、取得台帳に含まれる診断時期情報及び診断結果情報に対応する一以上の蒸気トラップと同じ位置情報を含む管理台帳52を、取得台帳と同じ診断作業に対応する管理台帳52として特定する。管理部411は、特定した管理台帳52に、取得台帳に含まれる一以上の蒸気トラップの診断時期情報及び診断結果情報を追記する。これにより、同時期に互いに異なる複数のプラントで行われた複数の診断作業のそれぞれにおける蒸気トラップの診断時期情報及び診断結果情報が、他の診断作業に対応する管理台帳52に追記されることを回避することができる。
【0098】
管理部411は、更に管理テーブル53を管理する。
【0099】
具体的には、管理部411は、通信部46が測定装置3から測定データ、プラントの識別情報、対象蒸気トラップの識別情報及び測定日時情報を受信すると、当該測定データ、プラントの識別情報、対象蒸気トラップの識別情報及び測定日時情報を、通信部46から取得する。管理部411は、記憶部45に記憶されている、取得したプラントの識別情報に対応する機器情報51のうち、登録時期情報が示す時期が最新の機器情報51から、取得した対象蒸気トラップの識別情報を含む蒸気トラップの管理情報を抽出する。
【0100】
管理部411は、通信部46から取得した測定日時情報を診断時期情報とし、上記の抽出した管理情報と、通信部46から取得した測定データと、当該診断時期情報と、を対応付けて管理テーブル53に記憶する。
【0101】
診断部412は、管理テーブル53に記憶されている測定データ及び当該測定データに対応する蒸気トラップの管理情報に基づいて、当該測定データに対応する蒸気トラップの診断を行う。測定データに対応する蒸気トラップとは、当該測定データをサーバ装置4に送信した測定装置3の測定対象の蒸気トラップである。
【0102】
具体的には、診断部412は、管理テーブル53において、診断に用いる対象の測定データ(以降、対象測定データ)に対応付けられている蒸気トラップの管理情報から、当該蒸気トラップの特性情報を取得する。診断部412は、当該特性情報に含まれる温度閾値と対象測定データに含まれる温度データとを比較し、また、当該特性情報に含まれる振動閾値と対象測定データに含まれる振動データとを比較する。診断部412は、これらの比較の結果に基づいて、対象測定データに対応する蒸気トラップが正常状態であるか不良状態であるかを診断する。
【0103】
対象測定データに対応する蒸気トラップが不良状態の場合、診断部412は、更に、上記比較の結果に基づいて、当該蒸気トラップの不良の内容を判別する。対象測定データに対応する蒸気トラップが蒸気漏れの状態である場合、診断部412は、更に、上記比較の結果に基づいて、当該蒸気トラップにおける蒸気の漏れ度合を段階的に判別する。
【0104】
また、診断部412は、取得した特性情報に含まれる振動特性と対象測定データに含まれる振動データとに基づいて、対象測定データに対応する蒸気トラップにおける蒸気の漏洩量を算出する。
【0105】
診断部412は、対象測定データに対応する蒸気トラップの診断を終了すると、当該対象測定データに対応する蒸気トラップの診断結果を示す診断結果情報を、当該対象測定データと対応付けて管理テーブル53に記憶する。
【0106】
受付部413は、報告書を作成する対象のイベントを示す情報(以降、イベント情報)の入力を受け付ける。イベントとは、複数の蒸気トラップを診断した機会を示す。具体的には、受付部413は、通信部46が情報処理装置2等の外部装置からイベント情報を受信した場合に、当該イベント情報の入力を受け付ける。以降、受付部413が受け付けたイベント情報が示すイベントを対象イベントと記載する。
【0107】
イベント情報は、対象イベントで診断した複数の蒸気トラップが設置されている場所を示す情報(以降、イベント場所情報)と、当該複数の蒸気トラップの診断を行った時期を示す情報(以降、イベント時期情報)と、を含む。
【0108】
具体的には、イベント場所情報は、対象イベントで診断された複数の蒸気トラップが設置されているプラントの識別情報及び当該複数の蒸気トラップが設置された配管を含む配管系を示すグループの識別情報を含む。尚、イベント場所情報は、更に、当該複数の蒸気トラップが設置された場所を含むエリアの識別情報を含んでもよい。
【0109】
イベント時期情報は、例えば、対象イベントが行われたときの年月日によって表される。ただし、イベント時期情報は、対象イベントが行われたときの年月日に限らず、更に、午前、午後又は時刻を用いて表されてもよい。
【0110】
取得部414は、対象イベントにおける複数の蒸気トラップの診断結果を示す情報(以降、対象イベントに対応する結果情報)を取得する。対象イベントにおける複数の蒸気トラップの診断結果には、診断装置1による蒸気トラップの診断結果と、測定装置3による対象蒸気トラップの測定結果に基づく、サーバ装置4の診断部412による当該蒸気トラップの診断結果と、のうち、少なくとも一方が含まれる。
【0111】
具体的には、取得部414は、受付部413が受け付けたイベント情報に含まれるイベント場所情報及びイベント時期情報を参照する。取得部414は、記憶部45から、イベント場所情報が示す場所に該当する位置を示す位置情報を含み、且つ、イベント時期情報が示す時期に該当する時期を示す診断時期情報を含む管理台帳52を、対象イベントに対応する結果情報として取得する。つまり、対象イベントに対応する結果情報は、対象イベントにおける診断装置1による蒸気トラップの診断結果を示す。
【0112】
イベント場所情報が示す場所に該当する位置は、イベント場所情報に含まれているプラントの識別情報によって識別されるプラントにおける、イベント場所情報に含まれているグループの識別情報によって特定されるグループに属する配管が存在する位置である。
【0113】
尚、イベント場所情報に、プラントの識別情報、グループの識別情報及びエリアの識別情報が含まれていたとする。この場合、イベント場所情報が示す場所に該当する位置は、当該プラントの識別情報によって識別されるプラントにおける、当該エリアの識別情報によって特定されるエリアにおいて、当該グループの識別情報によって特定されるグループに属する配管が存在する位置である。
【0114】
イベント時期情報が年月日で表されていたとする。この場合、イベント時期情報が示す時期に該当する時期を示す診断時期情報は、イベント時期情報が示す年月日と一致する年月日を含む診断時期情報である。
【0115】
イベント時期情報及び診断時期情報が年月日及び時刻で表されていたとする。この場合、イベント時期情報が示す時期に該当する時期を示す診断時期情報は、当該イベント時期情報が示す年月日と一致する年月日における、当該イベント時期情報が示す時刻から所定時間以内の時刻を示す診断時期情報である。当該所定時間は、例えば、イベントを開始してから終了するまでに要すると考えられる時間よりも長い時間(例えば6時間)である。
【0116】
更に、取得部414は、記憶部45に記憶されている管理テーブル53から、対象イベントに対応する結果情報を取得する。
【0117】
具体的には、取得部414は、管理テーブル53において、イベント場所情報が示す場所に該当する位置を示す位置情報を含む蒸気トラップの管理情報に対応付けられ、且つ、イベント時期情報が示す時期に該当する時期を示す診断時期情報に対応付けられている診断結果情報を、対象イベントに対応する結果情報として取得する。更に、取得部414は、管理テーブル53において、当該診断結果情報に対応付けられている蒸気トラップの管理情報及び診断時期情報も対象イベントに対応する結果情報として取得する。つまり、対象イベントに対応する結果情報は、対象イベントにおける測定装置3による蒸気トラップの測定結果に基づく、サーバ装置4による当該蒸気トラップの診断結果を示す。
【0118】
更に、取得部414は、対象イベントよりも過去に行われた一以上のイベント(以降、過去イベント)に対応する結果情報を取得する。
【0119】
具体的には、取得部414は、受付部413が受け付けたイベント情報に含まれるイベント場所情報及びイベント時期情報を参照する。取得部414は、記憶部45から、イベント場所情報が示す場所に該当する位置を示す位置情報を含み、且つ、イベント時期情報が示す時期に該当する時期よりも過去の時期を示す診断時期情報を含む管理台帳52を、診断時期情報が示す時期がイベント時期情報が示す時期に近いものから順に、所定数以下の数だけ取得する。取得部414は、取得した所定数以下の管理台帳52のそれぞれを、各過去イベントに対応する結果情報として取得する。
【0120】
更に、取得部414は、各過去イベントに対応する結果情報として取得した管理台帳52を参照する。取得部414は、管理テーブル53において、イベント場所情報が示す場所に該当する位置を示す位置情報を含む蒸気トラップの管理情報に対応付けられ、且つ、参照した管理台帳52に含まれる時期情報が示す時期から所定時間以内の時期を示す診断時期情報に対応付けられている診断結果情報と、当該診断結果情報に対応付けられている蒸気トラップの管理情報及び診断時期情報と、を、参照した管理台帳52と同じ過去イベントに対応する結果情報として取得する。
【0121】
尚、記憶部45に、イベント場所情報が示す場所に該当する位置を示す位置情報を含み、且つ、イベント時期情報が示す時期に該当する時期よりも過去の時期を示す診断時期情報を含む管理台帳52が記憶されていなかったとする。この場合、取得部414は、管理テーブル53において、イベント場所情報が示す場所に該当する位置を示す位置情報を含む蒸気トラップの管理情報に対応付けられ、且つ、イベント時期情報が示す時期に該当する時期よりも過去の時期を示す診断時期情報に対応付けられている診断結果情報と、当該診断結果情報に対応付けられている蒸気トラップの管理情報及び診断時期情報と、の組み合わせを、診断時期情報が示す時期がイベント時期情報が示す時期に近いものから順に、所定数(例えば9)以下の数だけ取得する。取得部414は、取得した所定数以下の前記組み合わせのそれぞれを、各過去イベントに対応する結果情報として取得する。
【0122】
算出部415は、取得部414が取得した対象イベントに対応する結果情報に基づいて、対象イベントにおける複数の蒸気トラップの診断結果に関する統計量を算出する。以降、対象イベントにおける診断対象の複数の蒸気トラップを総称して、第1蒸気トラップと記載する。
【0123】
具体的には、算出部415は、対象イベントにおける第1蒸気トラップの診断結果に関する統計量として、対象イベントで診断された第1蒸気トラップにおける蒸気の漏洩量を算出する。第1蒸気トラップにおける蒸気の漏洩量とは、対象イベントにおける診断対象の複数の蒸気トラップのそれぞれにおける蒸気の漏洩量の代表値である。代表値とは、例えば、総和、平均値、最大値又は最小値等である。
【0124】
同様にして、算出部415は、各過去イベントに対応する結果情報に基づいて、各過去イベントにおける第1蒸気トラップの診断結果に関する統計量を算出する。具体的には、算出部415は、各過去イベントにおける第1蒸気トラップの診断結果に関する統計量として、各過去イベントで診断された第1蒸気トラップにおける蒸気の漏洩量を算出する。
【0125】
尚、算出部415が算出する第1蒸気トラップの診断結果に関する統計量は、第1蒸気トラップにおける蒸気の漏洩量だけでなく、例えば、正常状態の第1蒸気トラップの台数及び不良状態の第1蒸気トラップの台数等を更に含んでもよい。
【0126】
また、算出部415は、算出した各過去イベント及び対象イベントにおける第1蒸気トラップの診断結果に関する統計量に含まれる、各過去イベント及び対象イベントで診断された第1蒸気トラップにおける蒸気の漏洩量を用いて、第1蒸気トラップにおける蒸気の漏洩量の時間的推移を示す第1関数を算出する。
【0127】
具体的には、算出部415は、各過去イベント及び対象イベントが行われた時期と、各過去イベント及び対象イベントで診断された第1蒸気トラップにおける蒸気の漏洩量と、の関係を示す関数を、第1関数として算出する。
【0128】
例えば、各過去イベント及び対象イベントに対応する結果情報に含まれる診断時期情報が示す時期が遅くなるにつれて、各過去イベント及び対象イベントで診断された第1蒸気トラップにおける蒸気の漏洩量が線形的に増大しているとする。この場合、算出部415は、各過去イベント及び対象イベントに対応する結果情報に含まれる診断時期情報が示す時期を説明変数とし、各過去イベント及び対象イベントで診断された第1蒸気トラップにおける蒸気の漏洩量を目的変数とした線形近似によって、これらの関係を示す一次関数を第1関数として算出する。
【0129】
一方、各過去イベント及び対象イベントに対応する結果情報に含まれる診断時期情報が示す時期が遅くなるにつれて、各過去イベント及び対象イベントで診断された第1蒸気トラップにおける蒸気の漏洩量が非線形的に増大しているとする。この場合、算出部415は、各過去イベント及び対象イベントに対応する結果情報に含まれる診断時期情報が示す時期を説明変数とし、各過去イベント及び対象イベントで診断された第1蒸気トラップにおける蒸気の漏洩量を目的変数とした多項式近似によって、これらの関係を示す二次関数を第1関数として算出する。
【0130】
判定部416は、第1蒸気トラップが設置されている配管と同じ材質の配管に設置された正常状態の蒸気トラップ(以降、第2蒸気トラップ)における蒸気の漏洩量の時間的推移を示す第2関数を取得する。
【0131】
具体的には、判定部416は、記憶部45に記憶されているプラントの機器情報51から、第1蒸気トラップが設置されている配管を含む配管系を示すグループの識別情報を含んだ配管特性情報を取得する。判定部416は、当該配管特性情報に含まれている漏洩量特性関数を第2関数として取得する。
【0132】
更に、判定部416は、算出部415が算出した第1関数と、取得した第2関数と、の比較結果に基づいて、第1蒸気トラップの性能が劣化しているか否かを判定する。
【0133】
具体的には、第1関数が二次関数である場合、第1関数は一次関数である第2関数とは明らかに異なる。この場合、第1蒸気トラップは、正常状態の第2蒸気トラップとは異なる状態であると考えられるので、判定部416は、第1蒸気トラップの性能が劣化していると判定する。
【0134】
また、第1関数が一次関数であり、且つ、第1関数が示す蒸気の漏洩量の増大率(第1関数の傾き)と第2関数が示す蒸気の漏洩量の増大率(第2関数の傾き)との差分が所定値以上であるとする。この場合、第1関数と第2関数とが顕著に異なっており、第1蒸気トラップは、正常状態の第2蒸気トラップとは異なる状態であると考えられる。このため、前記差分が所定値以上である場合、判定部416は、第1蒸気トラップの性能が劣化していると判定する。
【0135】
一方、第1関数が一次関数であり、且つ、第1関数が示す蒸気の漏洩量の増大率と第2関数が示す蒸気の漏洩量の増大率との差分が所定値未満であるとする。この場合、第1関数と第2関数とが類似しており、第1蒸気トラップは、正常状態の第2蒸気トラップと同様の状態であると考えられる。このため、前記差分が所定値未満である場合、判定部416は、第1蒸気トラップの性能が劣化していないと判定する。
【0136】
予測部417は、判定部416によって第1蒸気トラップの性能が劣化していると判定された場合、第1関数に基づいて、第1蒸気トラップの対象イベント後(複数の診断後)における蒸気の漏洩量の時間的推移(以降、対象推移)を予測する。一方、予測部417は、判定部416によって第1蒸気トラップの性能が劣化していないと判定された場合、第2関数に基づいて、対象推移を予測する。
【0137】
図6は、第1関数に基づく対象推移の一例を示す図である。
図7は、第2関数に基づく対象推移の一例を示す図である。
図6及び
図7の横軸は、時間を示し、縦軸は、第1蒸気トラップにおける蒸気の漏洩量を示している。
図6及び
図7の6個の黒丸は、2022年に行われた対象イベント及び2017年から2021年の間、一年に一回定期的に行われた各過去イベントで診断された第1蒸気トラップにおける蒸気の漏洩量を示している。
図6及び
図7の符号V511は、第1蒸気トラップにおける蒸気の漏洩量の時間的推移を示す第1関数(以降、第1関数V511)を示している。
図6及び
図7の符号V512は、第1蒸気トラップが設定されている配管と同じ材質の配管に設置された正常状態の第2蒸気トラップにおける蒸気の漏洩量の時間的推移を示す第2関数(以降、第2関数V512)を示している。
図6及び
図7の符号V513は、予測部417が予測した対象推移を示している。
【0138】
例えば、
図6に示すように、第1関数V511が一次関数ではない場合、判定部416は、第1蒸気トラップの性能が劣化していると判定する。この場合、予測部417は、符号V513に示すように、対象イベントが行われた2022年以降、第1関数V511と同じ二次関数に従って、第1蒸気トラップにおける蒸気の漏洩量が時間の経過に応じて非線形的に増大すると予測する。
【0139】
一方、
図7に示すように、第1関数V511が一次関数であり、且つ、第1関数V511が示す蒸気の漏洩量の増大率と第2関数V512が示す蒸気の漏洩量の増大率との差分が所定値未満である場合、判定部416は、第1蒸気トラップの性能が劣化していないと判定する。この場合、予測部417は、符号V513に示すように、対象イベントが行われた2022年以降、第2関数V512の傾きが示す増大率で、第1蒸気トラップにおける蒸気の漏洩量が時間の経過に応じて線形的に増大すると予測する。
【0140】
作成部418は、記憶部45に記憶されている報告書の定型フォーム54に、算出部415が算出した各過去イベント及び対象イベントにおける第1蒸気トラップの診断結果に関する統計量と、予測部417が予測した対象推移と、を挿入することによって、第1蒸気トラップの診断結果に関する報告書を作成する。
【0141】
出力部419は、通信部46を用いて、イベント情報を送信した外部装置に対し、作成部418が作成した報告書を示すデータ(以降、報告書データ)を返信(出力)する。尚、出力部419が、返信する報告書データを記憶部45に記憶(出力)するようにしてもよい。これにより、サーバ装置4にアクセス可能な情報処理装置2等の情報処理装置において、サーバ装置4の記憶部45に記憶されている報告書データを取得できるようにしてもよい。
【0142】
<診断作業の流れ>
次に、診断装置1を用いて複数の蒸気トラップの診断作業を行う場合に、蒸気トラップ管理システム100において行われる処理の流れについて説明する。
図8は、蒸気トラップ管理システム100における診断作業時の処理の流れを示すシーケンス図である。情報処理装置2において、作成部211は、作業者による操作部23の操作に応じて、診断作業の対象となる複数の蒸気トラップに関する管理台帳52を作成する(ステップS1)。
【0143】
通信部26は、ステップS1で作成された管理台帳52をサーバ装置4に送信する(ステップS2)。サーバ装置4において、通信部46は、通信部26から送信された管理台帳52を受信する。管理部411は、通信部46から当該管理台帳52を取得し、当該管理台帳52を記憶部45に記憶する(ステップS3)。
【0144】
また、作成部211は、作業者による操作部23の操作に応じて、ステップS1で作成された管理台帳52をIF部27を介してフラッシュメモリ7に記憶する。作業者は、当該管理台帳52が記憶されたフラッシュメモリ7を、診断装置1のIF部17に接続する(ステップS4)。
【0145】
診断装置1において、IF部17にフラッシュメモリ7が接続されると、取得部111は、IF部17を介して当該フラッシュメモリ7から管理台帳52を取得する。又は、取得部111は、IF部17にフラッシュメモリ7が接続された状態で、作業者によって操作部13が操作されたことに応じて、IF部17を介して当該フラッシュメモリ7から管理台帳52を取得する。取得部111は、当該取得した管理台帳52を記憶部15に記憶する(ステップS5)。
【0146】
尚、作業者が診断装置1と情報処理装置2とを携帯している場合、ステップS4において、通信部26が、ステップS1で作成された管理台帳52を、当該診断装置1に送信するようにしてもよい。そして、当該診断装置1において、通信部16が通信部26から送信された管理台帳52を受信すると、ステップS5において、取得部111が、通信部16から当該管理台帳52を取得し、当該取得した管理台帳52を記憶部15に記憶するようにしてもよい。
【0147】
作業者は、診断装置1(及び許可されている場合には情報処理装置2)を携帯してプラント内を移動することにより、診断装置1によって各蒸気トラップを順に診断する(ステップS6)。その際、作業者による操作部13の操作により、制御部11は、事前準備で記憶部15に記憶した管理台帳52を表示部14に表示する。これにより、作業者は、複数の蒸気トラップの診断順と、各蒸気トラップの管理情報(識別情報、位置情報、属性情報及び特性情報)と、を認識することができる。
【0148】
尚、作業者が診断装置1と情報処理装置2とを携帯している場合、管理台帳52を情報処理装置2の表示部24に表示させても良い。通常は表示部14よりも表示部24のほうが大きい画面を有するため、管理台帳52を表示部24に表示することにより、作業者による視認性が向上する。
【0149】
作業者は、表示された管理台帳52から認識できる診断順及び位置情報に従って、診断対象の蒸気トラップが設置されている場所に移動する。作業者は、操作部13の操作によって、管理台帳52に含まれている複数の蒸気トラップの中から今回の診断対象である一の蒸気トラップを選択する。これにより、選択された蒸気トラップの識別情報が、操作部13から制御部11に入力される。
【0150】
次に、作業者は、診断装置1の探針(図略)を、今回の診断対象である対象蒸気トラップに押し当てる。これにより、測定部12から制御部11に対象蒸気トラップの測定データ(温度データ及び振動データ)が入力される。診断部112は、管理台帳52から、操作部13から入力された蒸気トラップの識別情報を含む管理情報を取得し、当該管理情報に含まれる特性情報及び測定部12から入力された測定データに基づいて、対象蒸気トラップを診断する。診断部112は、診断の結果を示す診断結果情報を表示部14に表示する。
【0151】
診断部112は、対象蒸気トラップの診断時期を示す診断時期情報と対象蒸気トラップの診断結果を示す診断結果情報とを、記憶部15に記憶されている管理台帳52に追記することで、当該管理台帳52を更新する(ステップS7)。
【0152】
作業者は、担当する一以上の蒸気トラップの診断作業を終了すると、IF部17にフラッシュメモリ7を接続する。IF部17にフラッシュメモリ7が接続されると、出力部113は、記憶部15に記憶されている更新後の管理台帳52を、IF部17を介してフラッシュメモリ7に記憶する。又は、出力部113は、IF部17にフラッシュメモリ7が接続された状態で、作業者によって操作部13が操作されたことに応じて、記憶部15に記憶されている更新後の管理台帳52を、IF部17を介してフラッシュメモリ7に記憶する。作業者は、当該更新後の管理台帳52が記憶されたフラッシュメモリ7を、情報処理装置2のIF部27に接続する(ステップS8)。
【0153】
情報処理装置2において、取得部212は、IF部27にフラッシュメモリ7が接続されると、IF部27を介して当該フラッシュメモリ7から更新後の管理台帳52を取得する。又は、取得部212は、IF部27にフラッシュメモリ7が接続された状態で、作業者によって操作部23が操作されたことに応じて、IF部27を介して当該フラッシュメモリ7から更新後の管理台帳52を取得する(ステップS9)。
【0154】
尚、作業者が診断装置1と情報処理装置2とを携帯している場合には、ステップS8において、通信部16が、記憶部15に記憶されている更新後の管理台帳52を、情報処理装置2に送信するようにしてもよい。この場合、ステップS9では、取得部212が、通信部26が受信した更新後の管理台帳52を取得するようにしてもよい。
【0155】
次に、出力部213は、取得部212が取得した更新後の管理台帳52を通信部26を用いてサーバ装置4に送信する(ステップS10)。
【0156】
サーバ装置4では、通信部46が情報処理装置2から更新後の管理台帳52を受信すると、管理部411は、通信部46が受信した更新後の管理台帳52を通信部46から取得する。管理部411は、取得した管理台帳52によって、記憶部45に記憶されている、当該取得した管理台帳52と同じ診断作業に対応する管理台帳52を更新する(ステップS11)。
【0157】
尚、ステップS10において、出力部213が、更新後の管理台帳52をサーバ装置4に送信することに替えて、更新後の管理台帳52に含まれる時期情報と、ステップS7で管理台帳52に追記された各蒸気トラップの診断時期情報及び診断結果情報と、当該診断時期情報及び診断結果情報に対応する蒸気トラップの位置情報とを、サーバ装置4に送信するようにしてもよい。
【0158】
これに応じて、サーバ装置4では、ステップS11において、管理部411が、通信部46が受信した、時期情報、各蒸気トラップの位置情報、診断時期情報及び診断結果情報を通信部46から取得するようにしてもよい。これに合わせて、管理部411が、取得した診断時期情報及び診断結果情報を、記憶部45に記憶されている、取得した時期情報と同じ時期情報を含み、且つ、取得した位置情報と同じ位置情報を含む管理台帳52に追記するようにしてもよい。
【0159】
<診断処理の流れ>
次に、蒸気トラップ管理システム100において行われる診断処理の流れについて説明する。診断処理とは、複数の測定装置3による複数の蒸気トラップの測定結果を示す測定データに基づいて、当該複数の蒸気トラップの診断を行う処理である。
図9は、診断処理の流れを示すシーケンス図である。
【0160】
複数の測定装置3の制御部31は、それぞれ、定期的に測定処理を実行する(ステップS21)。各測定装置3の制御部31は、測定処理による対象蒸気トラップの温度及び振動の測定結果を示す測定データ、対象蒸気トラップが設置されているプラントの識別情報、対象蒸気トラップの識別情報及び現在日時を示す測定日時情報を、通信部36を用いてサーバ装置4へ送信する(ステップS22)。
【0161】
サーバ装置4において、管理部411は、通信部46が測定装置3から受信した測定データ、プラントの識別情報、対象蒸気トラップの識別情報及び測定日時情報を通信部46から取得する(ステップS23)。
【0162】
管理部411は、記憶部45に記憶されている、ステップS23で取得したプラントの識別情報に対応するプラントの機器情報51のうち、登録時期情報がステップS23で取得した測定日時情報が示す日時よりも過去の当該日時に最も近い時期を示すプラントの機器情報51を参照する。管理部411は、当該参照した機器情報51から、ステップS23で取得した対象蒸気トラップの識別情報を含む蒸気トラップの管理情報を抽出する(ステップS24)。
【0163】
管理部411は、ステップS23で取得した測定日時情報を診断時期情報とし、ステップS24で抽出した管理情報と、ステップS23で取得した測定データと、当該診断時期情報と、を対応付けて管理テーブル53に記憶する(ステップS25)。
【0164】
診断部412は、管理テーブル53に記憶されている測定データ及び当該測定データに対応する蒸気トラップの管理情報に基づいて、当該測定データに対応する蒸気トラップの診断を行う(ステップS26)。尚、ステップS26は、ステップS25の終了直後に行われてもよいし、ステップS25の終了後、所定時間が経過した時点で行われてもよい。
【0165】
診断部412は、ステップS26における、測定データに対応する蒸気トラップの診断結果を示す診断結果情報を、当該測定データと対応付けて管理テーブル53に記憶する(ステップS27)。
【0166】
<報告書作成処理の流れ>
次に、蒸気トラップ管理システム100において行われる報告書作成処理の流れについて説明する。報告書作成処理とは、作業者が入力したイベント情報が示すイベントにおいて診断された複数の蒸気トラップの診断結果に関する報告書を作成する処理である。
図10は、報告書作成処理の流れを示すシーケンス図である。
【0167】
情報処理装置2において、作業者による操作部23の操作により、報告書を作成する対象のイベントを示すイベント情報が入力されると(ステップS31)、制御部21は、通信部26を用いて、サーバ装置4に当該イベント情報を送信する(ステップS32)。
【0168】
受付部413は、通信部46が情報処理装置2からイベント情報を受信した場合に、当該イベント情報の入力を受け付ける(ステップS33)。
【0169】
取得部414は、ステップS33で受け付けられたイベント情報が示す対象イベント及び所定数の各過去イベントに対応する結果情報を取得する(ステップS34)。
【0170】
算出部415は、ステップS34で取得された、各過去イベント及び対象イベントに対応する結果情報に基づいて、各過去イベント及び対象イベントにおける第1蒸気トラップの診断結果に関する統計量を算出する(ステップS35)。
【0171】
算出部415は、ステップS35で算出した統計量に含まれる、各過去イベント及び対象イベントで診断された第1蒸気トラップにおける蒸気の漏洩量を用いて、第1蒸気トラップにおける蒸気の漏洩量の時間的推移を示す第1関数を算出する(ステップS36)。
【0172】
判定部416は、第1蒸気トラップが設置されている配管と同じ材質の配管に設置された正常状態の第2蒸気トラップにおける蒸気の漏洩量の時間的推移を示す第2関数を取得する(ステップS37)。
【0173】
判定部416は、ステップS36で算出された第1関数とステップS37で取得した第2関数との比較結果に基づいて、第1蒸気トラップの性能が劣化しているか否かを判定する(ステップS38)。
【0174】
予測部417は、ステップS38における判定結果、ステップS36で算出された第1関数及びステップS37で取得された第2関数に基づいて、第1蒸気トラップの対象イベント後における蒸気の漏洩量の時間的推移である対象推移を予測する(ステップS39)。
【0175】
尚、上記のように、ステップS39において、予測部417は、ステップS38で第1蒸気トラップの性能が劣化していると判定された場合、ステップS36で算出された第1関数に基づいて対象推移を予測する。一方、予測部417は、ステップS38で第1蒸気トラップの性能が劣化していないと判定された場合、ステップS37で取得した第2関数に基づいて対象推移を予測する。
【0176】
作成部418は、記憶部45に記憶されている報告書の定型フォーム54に、ステップS35で算出された各過去イベント及び対象イベントにおける第1蒸気トラップの診断結果に関する統計量と、ステップS39で予測された対象推移と、を挿入することによって、第1蒸気トラップの診断結果に関する報告書を作成する(ステップS40)。
【0177】
出力部419は、通信部46を用いて、ステップS33で受け付けられたイベント情報を送信した情報処理装置2に対して、ステップS40で作成された報告書を示す報告書データを返信する(ステップS41)。
【0178】
情報処理装置2では、通信部26がサーバ装置4から報告書データを受信すると、制御部21は、当該報告書データが示す報告書を表示部14に表示する(ステップS42)。
【0179】
<イベント情報の入力画面>
次に、報告書作成処理において情報処理装置2の表示部14に表示されるイベント情報の入力画面の一例について説明する。
図11は、イベント情報の入力画面W1の一例を示す図である。報告書作成処理のステップS31(
図10)において、制御部21は、例えば
図11に示すイベント情報の入力画面W1を表示部14に表示する。作業者は、当該入力画面W1の操作により、報告書の作成対象となるイベントを示すイベント情報を入力する。
【0180】
入力画面W1には、診断場所入力領域A11、診断時期入力領域A12、出力ボタンB11及び閉じるボタンB12が設けられている。
【0181】
診断場所入力領域A11には、イベントで診断された複数の蒸気トラップが設置されている場所を示すイベント場所情報を入力するための画面部品が表示される。
【0182】
図11は、一のプラントの識別情報及び当該一のプラントが管理する一の配管系を示すグループの識別情報を、イベント場所情報として選択入力するためのリストボックスが診断場所入力領域A11に表示され、一のプラントの識別情報「プラントA」及びグループの識別情報「配管系a」が選択入力された例を示している。尚、制御部21は、通信部26を介して、サーバ装置4の記憶部45に記憶されている一以上のプラントの機器情報51から、上記のリストボックスで選択候補として用いる一以上のプラントの識別情報及び一以上のグループの識別情報を取得する。
【0183】
尚、診断場所入力領域A11に表示される画面部品は、上記のリストボックスに限らず、テキストボックス等の他の画面部品であってもよい。また、診断場所入力領域A11には、イベントで診断された複数の蒸気トラップが設置された場所を含むエリアの識別情報をイベント場所情報として入力するための画面部品が更に表示されてもよい。
【0184】
診断時期入力領域A12には、イベントにおいて複数の蒸気トラップが診断された時期を示すイベント時期情報を入力するための画面部品が表示される。
【0185】
図11は、一以上の年月日を示す情報の中から一の年月日をイベント時期情報として選択入力するためのリストボックスが診断時期入力領域A12に表示され、一の年月日「2022年6月30日」が選択入力された例を示している。尚、診断時期入力領域A12に表示される画面部品は、上記のリストボックスに限らず、カレンダー画面を用いて年月日を選択入力する画面部品等の他の画面部品であってもよい。
【0186】
出力ボタンB11は、イベント情報をサーバ装置4に送信するためのボタンである。診断場所入力領域A11にイベント場所情報が入力され、診断時期入力領域A12においてイベント時期情報が入力された後、出力ボタンB11が押下されると、制御部21は、ステップS32(
図10)を実行する。ステップS32において、制御部21は、診断場所入力領域A11において入力されたイベント場所情報と診断時期入力領域A12において入力されたイベント時期情報とを含むイベント情報をサーバ装置4に送信する。
【0187】
閉じるボタンB12は、入力画面W1を閉じるためのボタンである。閉じるボタンB12が押下されると、制御部21は、表示部14に表示されている入力画面W1を非表示にする。
【0188】
以下では、報告書作成処理において作成される報告書の具体例として、第1蒸気トラップにおける蒸気の漏洩量の時間的推移を示す報告書について説明する。本説明において、ステップS40(
図10)における作成部418の処理内容の詳細について説明する。
【0189】
図12は、第1蒸気トラップにおける蒸気の漏洩量の時間的推移を示す報告書R2の一例を示す図である。ステップS40(
図10)において、作成部418は、ステップS35(
図10)で算出された、各過去イベント及び対象イベントで診断された第1蒸気トラップにおける蒸気の漏洩量と、ステップS39で予測された対象推移と、を、報告書R2の定型フォーム54(
図5)である漏洩量推移フォームF2に挿入することによって、報告書R2を作成する。
【0190】
漏洩量推移フォームF2には、タイトル領域T2及びグラフ領域A21が設けられている。
【0191】
作成部418は、ステップS40(
図10)において、ステップS33(
図10)で受け付けられたイベント情報に基づいて、報告書R2のタイトルを作成し、当該報告書R2のタイトルをタイトル領域T2に挿入する。
【0192】
例えば、
図12は、作成部418が、ステップS33(
図8)で受け付けられたイベント情報に含まれるイベント場所情報を参照し、当該イベント場所情報に含まれるグループの識別情報「配管系a」に基づいて、報告書R2のタイトル「配管系aの蒸気漏洩量推移」を作成し、当該報告書R2のタイトル「配管系aの蒸気漏洩量推移」を、タイトル領域T2に挿入した例を示している。
【0193】
グラフ領域A21は、ステップS36(
図10)で算出された第1関数を示すグラフG511と、ステップS36(
図10)で取得された第2関数を示すグラフG512と、ステップS39で予測された対象推移を示すグラフG513と、の挿入部である。グラフ領域A21の横軸は、時間を示し、グラフ領域A21の縦軸は、第1蒸気トラップにおける蒸気の漏洩量を示している。尚、グラフ領域A21の縦軸に記載の「閉塞」は、閉塞状態の第1蒸気トラップにおける蒸気の漏洩量の下限値を示している。グラフ領域A21の縦軸に記載の「漏れ大」は、蒸気の漏洩状態が「漏れ大」の第1蒸気トラップにおける蒸気の漏洩量の下限値を示している。
【0194】
作成部418は、ステップS40(
図10)において、ステップS36(
図10)で算出された第1関数を示すグラフG511と、ステップS37(
図10)で取得された第2関数を示すグラフG512と、ステップS39(
図10)で予測された対象推移を示すグラフG513と、を作成し、作成した3個のグラフをグラフ領域A21に挿入する。
【0195】
例えば、ステップS36(
図10)で
図6に示す第1関数V511が算出され、ステップS36(
図10)で
図6に示す第2関数V512が取得されたとする。これにより、ステップS39(
図10)では、
図6の符号V513に示す対象推移が予測されたとする。
図12は、この場合に、作成部418が、当該第1関数V511を示すグラフG511、当該第2関数V512を示すグラフG512、及び当該対象推移を示すグラフG513を、グラフ領域A21に挿入した例を示している。
【0196】
このように、報告書R2によれば、グラフ領域A21に表示されたグラフG513によって、第1蒸気トラップにおける対象イベント以降の蒸気の漏洩量の時間的推移を把握することができる。例えば、
図12に示すグラフG513によって、「2024年」に、第1蒸気トラップにおける蒸気の漏洩量が「漏れ大」になることを把握することができる。また、当該グラフG513によって、「2025年」に、第1蒸気トラップにおける蒸気の漏洩量が「閉塞」になることを把握することができる。これにより、「2024年」以降、第1蒸気トラップの蒸気の漏洩状態が「漏れ大」と診断され、「2025年」以降、第1蒸気トラップが閉塞状態と診断されると容易に予測することができる。
【0197】
また、報告書R2によれば、グラフ領域A21に表示されたグラフG511によって、第1蒸気トラップにおける対象イベント以前の蒸気の漏洩量の時間的推移を把握することができる。また、グラフ領域A21に表示されたグラフG512によって、第1蒸気トラップにおける対象イベント前後の蒸気の漏洩量の時間的推移と、正常状態の第2蒸気トラップにおける対象イベント前後の蒸気の漏洩量の時間的推移と、を容易に比較することができる。
【0198】
尚、作成部418が、第1関数を示すグラフG511及び第2関数を示すグラフG512のうち一以上のグラフを、グラフ領域A21に挿入しないようにしてもよい。また、作成部418が、上記報告書R2とは異なる報告書を作成するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0199】
4 :サーバ装置(出力装置)
414 :取得部(第1取得部)
415 :算出部
416 :判定部(第2取得部、判定部)
417 :予測部
419 :出力部
G511 :第1関数を示すグラフ
G512 :第2関数を示すグラフ
G513 :対象推移を示すグラフ
V511 :第1関数
V512 :第2関数
V513 :対象推移
【要約】
【課題】蒸気トラップの診断後における蒸気の漏洩量の時間的推移を、蒸気トラップの性能が劣化しているか否かに応じて適切に予測する。
【解決手段】出力方法は、第1蒸気トラップにおける蒸気の漏洩量に関する複数の診断の結果を示す結果情報を取得し、結果情報に基づいて第1蒸気トラップにおける蒸気の漏洩量の時間的推移を示す第1関数を算出し、第1蒸気トラップと同じ材質の配管に設置された正常状態の第2蒸気トラップにおける蒸気の漏洩量の時間的推移を示す第2関数を取得し、第1関数と第2関数との比較結果に基づいて第1蒸気トラップの性能が劣化しているか否かを判定し、第1蒸気トラップの性能が劣化している場合、第1関数に基づいて第1蒸気トラップの複数の診断後における蒸気の漏洩量の時間的推移である対象推移を予測し、第1蒸気トラップの性能が劣化していない場合、第2関数に基づいて対象推移を予測し、対象推移を示す情報を出力する。
【選択図】
図10