(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-13
(45)【発行日】2023-09-22
(54)【発明の名称】能動的インプラント可能医療デバイス(AIMD)のための高分子光ファイバ及びそれを使用するAIMD
(51)【国際特許分類】
G02B 6/02 20060101AFI20230914BHJP
G02B 6/44 20060101ALI20230914BHJP
G02B 6/42 20060101ALI20230914BHJP
A61N 1/372 20060101ALI20230914BHJP
A61N 1/378 20060101ALI20230914BHJP
A61N 1/05 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
G02B6/02 391
G02B6/02 461
G02B6/44 366
G02B6/44 311
G02B6/42
A61N1/372
A61N1/378
A61N1/05
(21)【出願番号】P 2022504552
(86)(22)【出願日】2019-08-14
(86)【国際出願番号】 EP2019071803
(87)【国際公開番号】W WO2021028034
(87)【国際公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-03-23
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517285068
【氏名又は名称】シナジア メディカル
【氏名又は名称原語表記】Synergia Medical
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】デ コック デ ラメヤン,オーレリー
(72)【発明者】
【氏名】ドゲット,パスカル
(72)【発明者】
【氏名】カレガリ,ヴィンセント
(72)【発明者】
【氏名】ニューウェンヒュー,オーロラ
【審査官】奥村 政人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0015467(US,A1)
【文献】特開平11-095044(JP,A)
【文献】国際公開第2019/059160(WO,A1)
【文献】特開平10-274716(JP,A)
【文献】特開2001-235662(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0155948(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/02- 6/10
G02B 6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
能動的インプラント可能医療デバイス(AIMD)の2つの別個の要素間に波長λiの光を送信するための高分子光ファイバ(POF)(30)において、
前記波長λiは380~1800nmに含まれ、
前記POFは、第1の端及び第2の端、並びに以下のものを含むマルチモード光ファイバであり、
(a)円柱形状であるとともにシクロオレフィンポリマー(COP)又は共重合体(COC)で作られ、波長λiにおいて芯屈折率n
coreを有する芯(31)であって、次のものに封入される芯(31)、
(b)前記波長λiにおいてクラッディング屈折率n
clad<n
coreを有するとともにテトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン及びフッ化ビニリデンの単量体を含むクラッディング共重合体で作られるクラッディング(32)であって、それ自体が次のものに封入されるクラッディング、
(c)テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン及びフッ化ビニリデンの単量体の中から選択されるクラッディング共重合体の単量体のうちの1つを含むコーティング高分子で作られるコーティング(33)であって、前記コーティング高分子は前記クラッディング共重合体より高い剛性を有する、コーティング、
を含み、
前記POFは、前記波長λiにおいて少なくとも0.5の開口数NAを有し、NA=((n
core)
2-(n
clad)
2)
1/2であることを特徴とする、高分子光ファイバ。
【請求項2】
前記クラッディング
共重合体は、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン及びフッ化ビニリデン(THV)の三量体であることを特徴とする、請求項1に記載の高分子光ファイバ。
【請求項3】
前記コーティング高分子はフッ化ポリビニリデン(PVDF)であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の高分子光ファイバ。
【請求項4】
前記高分子光ファイバの前記第1の端及び/又は前記第2の端は研磨されることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の高分子光ファイバ。
【請求項5】
前記高分子光ファイバ(30)は150~530μmに含まれる径(D30)を有し、
・前記芯(31)の径(D31)は100~300μmに含まれる、及び/又は
・前記クラッディング(32)は、5~50μmに含まれる厚さ(t32)を有するか、又は
・130~500μmに含まれる外径(D32)を有する、及び/又は
・前記コーティング(33)は、10~40μmに含まれる厚さ(t33)を有することを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の高分子光ファイバ。
【請求項6】
・少なくとも2つの芯が単一クラッディング内に封入されるか、又は
・1つ又は複数の芯を封入する少なくとも2つのクラッディングが単一コーティング(33)内に封入されることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の高分子光ファイバ。
【請求項7】
前記芯
を構成する高分子は、550nm~875nmの波長範囲内に含まれる少なくとも1つの波長において4.0dB/m未満の減衰を有することを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の高分子光ファイバ。
【請求項8】
直線ファイバに対する光損失は2mmの曲げ半径において2%未満であることを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の高分子光ファイバ。
【請求項9】
波長λiの光を能動的インプラント可能医療デバイス(AIMD)の2つの別個の要素間に送信するための光リード(35)であって、外側管(35t)内に封入された請求項1乃至8のいずれか一項に記載の1つ又は複数の高分子光ファイバ(30)を含むことを特徴とする、光リード。
【請求項10】
少なくとも1つの高分子光ファイバは、着色されることを特徴とする、請求項9に記載の光リード。
【請求項11】
X線可視添加材を前記光リードの前記高分子光ファイバのうちの1つ又は複数の高分子光ファイバの前記外側管(35t)又は前記コーティング(33)に対して含むことによりX線に対して可視であることを特徴とする、請求項9又は10に記載の光リード。
【請求項12】
(a)380~1800nm間に含まれる少なくとも波長λIにおいて発射する光源を含む封入ユニット、
(b)前記封入ユニットとは別個であるとともに光起電力電池及び/又はフォトセンサ及び/又はオプトロードを含む組織結合ユニット、及び
(c)高分子光ファイバの前記第1の端へ光学的に結合される前記封入ユニットの光源であって、前記組織結合ユニットの前記光起電力電池及び/又はフォトセンサ及び/又はオプトロードは、前記光源が前記高分子光ファイバを介し前記光起電力電池及び/又はフォトセンサ及び/又はオプトロードと光学的に連通するように、前記高分子光ファイバの第2の端へ光学的に結合される光源を含む、能動的インプラント可能医療デバイス(AIMD)において、
前記高分子光ファイバは、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のものであることを特徴とする、能動的インプラント可能医療デバイス。
【請求項13】
請求項9乃至11のいずれか一項に記載の光リードを形成するために外側管(35t)内に集められた2つ以上の高分子光ファイバを含むことを特徴とする、請求項12に記載の能動的インプラント可能医療デバイス。
【請求項14】
前記
組織結合ユニットは、光起電力電池及び以下のものを含むカフ電極ユニットであり、
・非導電性であるとともに、内面と、内面から厚さだけ分離された外面と、を有する支持シート(43)であって、前記支持シートは、前記内面の少なくとも一部
がカフの内部を形成し前記外面の少なくとも一部が前記カフの外部を形成するように長手軸(Z)を中心に巻かれており、ほぼ円筒状ジオメトリの
前記カフを形成する、支持シート、
・前記カフの前記内面において晒される電極コンタクトを含む少なくとも1つの第1のコネクタ(40C)、
・前記光起電力電池は、前記高分子光ファイバの前記第2の端へ及びこれを通って前記
光源(21L)へ光学的に結合され、前記電極コンタクトへ電気的に結合されることを特徴とする、請求項12又は13に記載の能動的インプラント可能医療デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、封入ユニットと生体組織との間での光ファイバを介した光エネルギーの送信による、封入ユニット内に封入された光パルス生成器と生体組織との間のエネルギーパルスの送信に関与する医療における使用のための、光電子能動的インプラント可能医療デバイス(AIMD:active implantable medical device)の分野におけるものである。特に、本発明は、インプラント型AIMDにおける使用のためのすべての要件(高開口数(NA:numerical aperture)、高柔軟性、高生体適合性、高疎水性、高い寸法的、機械的及び化学的安定性、容易な研磨、低曲げ半径値、低外径、及び低光損失を含む)を組み合わせる新規高分子光ファイバに関する。最も重要なことには、脆いガラス芯を有する光ファイバと比較して、本発明の高分子光ファイバは、人体又は動物体内のインプラントに非常に安全である。
【背景技術】
【0002】
能動的インプラント可能医療デバイス(AIMD)は、多くの障害(特に神経障害)の治療に数十年間使用されてきた。主タイプのAIMDは、多くの障害(パーキンソン病、てんかん、慢性疼痛、運動障害など)を診断又は治療するため、及び多くの他の用途のために神経又は筋肉などの組織へ電気パルスを送達する神経刺激器からなる。治療される組織、使用される電極のタイプ及び電極間距離に依存して、インプラントされる電極間に必要とされる電圧は、一般的には15V±5V程度である。このような電圧は、電気的刺激インプラントが以下の2つの別個の部品で概して形成されるような寸法の電気パルス生成器を必要とする:一つは、治療される組織上へ直接インプラントされる電極、及びもう一つは、用途に依存して体内の様々な位置(大抵の場合は鎖骨下部領域、下側腹部又は臀部内)にインプラントされ得る、より大きな寸法の及び筐体内に封入される電気パルス生成器である。パルス生成器を電極へ接続するワイヤは通常、柔軟性を提供し、電極からの距離及び電気パルス生成器の変更を可能にし、並びに身体運動に対する高い従順性に機械的安定性を強化するために巻回される。電線を使用するので、特に巻回されている場合、このようなインプラントは、核磁気共鳴撮像(MRI:magnetic resonance imaging)装置への露出、及びまた、空港、銀行などにおいて使用される単純な金属検知口への露出には推奨されない。
【0003】
その最も単純な形式において、電気パルスを送達するためのデバイスは、筐体内に収容されるエネルギーパルス生成器、刺激電極コンタクト、及びエネルギーパルス生成器からのエネルギーを電気エネルギーの形式で電極へ送信するために電極コンタクトをエネルギーパルス生成器へ結合するリードを含む。エネルギーパルス生成器は、導電リードにより、電極コンタクトへ送信される電気パルスを生成し得る。代替的に、及び例えば欧州特許出願公開第3113838B1号明細書において説明されるように、エネルギーパルス生成器は、光ファイバを介し光起電力電池へ送信される光パルスを生成し得る。光起電力電池は、光エネルギーを電極コンタクトへ供給される電気的エネルギーへ変換する。
【0004】
近年、光エネルギーによる組織の治療は、光遺伝学の分野を支援するためにか、又は直接赤外線光を使用することによってか、のいずれかで、障害治療を促す可能性を示した。組織のこのような光治療のために、所謂オプトロードが使用され得る。オプトロードは、組織の精密エリア上へ光線を集束する発光体であってもよいし、又は発光体により発射された光線の反射、透過、又は散乱を感知する光センサであってもよい。
【0005】
図1に示すように、本発明の高分子光ファイバ(POF:polymer optical fibre)は、以下のものを含む光電子AIMDと共に使用される:
・エネルギー源を封入する筐体を含む封入ユニット(50)、パルス生成器などの任意のアナログ及び/又はデジタル回路、及び光発射源(21L)及び/又は光センサ(21s)、
・治療される組織上へ直接インプラントされるために好適な、1つ又は複数の電極及び/又はオプトロードを含む組織結合ユニット(40)、及び、
・封入ユニットと組織結合ユニットとの間で光エネルギーを転送するための1つ又は複数の高分子光ファイバ(30)(POF)を含む、光リード(35)。
【0006】
続いて、このようなAIMDは「光電子AIMD」と呼ばれ、高分子光ファイバは「POF」と呼ばれる。
【0007】
光電子AIMDのインプラントは以下の工程を含む。外科医は、治療される組織を含むエリアを開き、組織結合ユニットを前記組織へ結合する。組織結合ユニットはしばしば、治療される組織へ組織結合ユニットをインプラントする前に、1つ又は複数のPOFの遠端へ光学的に結合される。電極ユニットへの光ファイバの結合は、例えばPCT/欧州特許第2017/071858号明細書に説明されている。
【0008】
次に、1つ又は複数の光ファイバの近端(遠端に対向する)は、特定ガイドを介し、封入ユニット(電極ユニットより寸法的に著しく大きく、したがって身体のより多くの適切な部分内にインプラントされる)のインプラントのエリアへ皮下導出される。外科医は封入ユニットをインプラントし、及びこれを光ファイバの近端へ結合し得る(任意のシーケンスで)。
【0009】
図2(a)に示すように、光ファイバは、光ファイバの一端から反対端への光の輸送を可能にする精細な複合ガラス又はプラスチックファイバである。光ファイバは、クラッディング(32)により囲まれた、通常は石英ガラス又はプラスチックで作られる芯(31)を含む。光ファイバは芯に沿って光ビームを送信し、光ビームは、臨界角θcより小さい角度で芯/クラッディング界面に到達するときは、常に内部反射される。したがって、光ビームはさらに曲線経路に沿って導かれ得る。
【0010】
図2(b)に示すように、マルチモード光ファイバは、ファイバの受光円錐を定義する受光角θmaxより小さい入射角でファイバに入る光だけを伝播する。この円錐の半角は、受光角θmaxと呼ばれる。その屈折角が90°になる臨界角θc(sin c=n
clad/n
coreとして定義される)は、芯/クラッディング界面における芯内の入射角である。光ファイバの開口数(NA)は、光ファイバの集光能力を定義する。開口数は
として定義される。ここで、n0、n
core及びn
cladはそれぞれファイバ、芯及びクラッディング周囲の媒体の屈折率である。
【0011】
光ファイバは、通常はガラスで作られた芯を含む光ファイバによる長距離にわたる且つ高帯域でのデータ転送のために主として使用されてきた。高分子光ファイバ(POF)は、ガラス製光ファイバを置換するために提案された。ガラス製光ファイバ(GOF:glass made optical fibre)のほとんどは、融解石英で作られた芯を有し、及び
図3に示すように、POFより近赤外線(700~2000nm)において高い光透過率を生じる。しかし、GOFは脆く、患者の体内にインプラントされるAIMDを含む用途においては、安全上の理由のために許容不能である。さらに、ガラス脆性のために、GOFは、光ファイバが損傷することなく曲げられ且つ依然として導波管として働き得る最小内径として定義される、非常に制限された曲げ半径Rを有する(
図2(c)参照)。その結果、優れた光学特性にもかかわらず、GOFはAIMDにおける使用には不向きである。POFは、本明細書では高分子で作られた芯を少なくとも有する光ファイバとして定義され、GOFは、ガラス(一般的には融解石英)で作られた芯を少なくとも有する光ファイバとして定義される。
【0012】
GOF及び様々なPOFの光ファイバの単位長さ当たり減衰を示す
図3からわかるように、POFは700~900nmの波長範囲において、GOFより3桁高い光学的減衰に悩まされる。しかし、これらの値は、AIMD内の光ファイバの長さが30~50cm(好適には35~45cm)程度あるので、依然として受容可能である。
【0013】
GOFと比較して低い透過率(すなわち、
図3に示すように高い減衰)にもかかわらず、POFは、その高柔軟性及び低脆性~零脆性のために大いに注目を集めてきており、後者は、患者の体内にインプラントされるAIMDにおける使用のための必須条件である。ポリメタクリル酸メチル(PMMA:polymethyl methacrylate)、ポリカーボネート(PC:polycarbonate)、ポリスチレン(PS:polystyrene)又はシクロポリオレフィンポリマー又は共重合体(COP又はCOC:cyclic polyolefin polymers又はcopolymer)などの高分子は様々なクラッディング(シリコーン、フッ素重合体、PMMAを含む)とともに芯に使用されてきた。PMMAは、フッ素重合体クラッディングと共に米国特許第5148511号明細書では家又は自動車配線における使用のために提案されてきた。同様な組成のPOFは米国特許第2012020637号明細書に説明されている。しかし、PMMAは、湿気に晒されると重大な欠点を有する。すなわち、PMMAは屈折率の対応変動と共に膨れ、脆くなり、及び亀裂を形成する。患者の体内にインプラントされるPOFは、高湿度レベルに晒されるので、GOFを置換するには、受容可能な候補ではない。
【0014】
手術器具の分野における米国特許第20160015467号明細書などにおいて、クラッディング材料としての様々なフッ素重合体と共に、芯材料としてシクロオレフィンポリマー又は共重合体(COP、COC)を使用することにより、様々な用途が説明されてきた。COP及びCOCの化学構造が
図4(a)に示される。
【0015】
COP及びCOCは疎水性であり、及び生体適合材料として利用可能である。COP及びCOCは、湿気に対し非常に安定しており、及びクラッディング材料としてのフッ素重合体と共に、0.7より高いNAの値を有する。これらのタイプのPOFは、AIMDの用途における使用に有望とみられた。
【0016】
フッ素重合体クラッディングと共にCOPで作られた芯を含むPOFを試験すると、POFの自由端を研磨する際に自由端が擦り減らされるという問題が発生したが、これは透過損失の観点で受容不能である。POFの両端の研磨された断面は、POFと任意の他のデバイス(別の光ファイバ、封入ユニット又は組織結合ユニットなど)との間の接続のレベルにおける透過損失を低減するのに必須である。インプラント式AIMDは、封入ユニット内に通常は格納される電池により給電されるので、エネルギー損失は電池の自律性を延長するために回避されなければならない。再充電可能電池に関し、患者にとって辛い作業であるとともに電池の寿命に影響を与える2つの連続充電作業間の期間を延長することが有利である。その両端が正しく研磨され得ないPOFは、インプラント式AIMDにおける使用には不向きである。
【0017】
本発明は、自由端の容易な機械研磨(自由端の滑らかな表面をもたらし、これにより接続点における透過損失を低減するための)と、使用される材料の生体適合性及び疎水性とを組み合わせるPOFを提案する。現在のPOFに典型的である受容可能減衰と共に、本発明のPOFは、高安全性と高柔軟性と低曲げ半径とを兼ね備えるので、インプラント式AIMDの用途に好適である。これら及び他の利点は、以下の章において詳細に説明される。
【発明の概要】
【0018】
本発明は添付の独立請求項において定義される。好ましい実施形態は従属請求項において定義される。特に、本発明は、能動的インプラント可能医療デバイス(AIMD)の2つの別個の要素間に波長λiの光を送信するための高分子光ファイバ(POF)に関する。ここで、波長λiは380~1800nm、好適には650~1550nmに含まれ、前記POFは、第1の端及び第2の端並びに以下のものを含むマルチモード光ファイバである:
(a)円筒状であるとともにシクロオレフィンポリマー(COP)又は共重合体(COC)で作られ及び波長λiにおいて芯屈折率ncoreを有する芯であって、次のものに封入される芯、
(b)波長λiにおいてクラッディング屈折率nclad<ncoreを有するとともにテトラフロオルエチレン、ヘキサフルオロプロピレン及びフッ化ビニリデンの単量体を含むクラッディング共重合体で作られるクラッディングであって、それ自体が次のものに封入されるクラッディング、
(c)テトラフロオルエチレン、ヘキサフルオロプロピレン及びフッ化ビニリデンの単量体の中から選択されるクラッディング共重合体の単量体のうちの1つを含むコーティング高分子で作られるコーティング、
ここで、POFは、波長λiにおいて少なくとも0.5、好適には少なくとも0.6、より好適には少なくとも0.7の開口数NAを有し、ここでNA=((ncore)2-(nclad)2)1/2である。
【0019】
クラッディング高分子はテトラフロオルエチレン、ヘキサフルオロプロピレン及びフッ化ビニリデン(THV)の三量体であり得る。コーティング高分子はフッ化ビニリデン(PVDF)であり得る。
【0020】
高分子光ファイバの第1の端及び/又は第2の端は光ファイバからの及びそれへの光エネルギーの送信を最大化するために研磨される、好適には機械的に、化学的に、機械化学的に研磨されるということが好ましい。第1の端及び/又は第2の端は好適には機械的に研磨される。
【0021】
高分子光ファイバは150~530μm、好適には250~480μmに含まれる径(D30)を有し得る。芯の径(D31)は100~300μm、好適には200~250μm、より好適には220~240μmに含まれ得る。クラッディングは、5~50μm、好適には7~25μm、より好適には10~15μmに含まれる厚さ(t32)を有し得る、又は130~500μm、好適には110~400μmに含まれる外径(D32)を有し得る。コーティングは10~40μm、好適には15~30μm、より好適には20~25μmに含まれる厚さ(t33)を有し得る。
【0022】
芯高分子は、550nm~875nmの波長範囲内に含まれる少なくとも1つの波長において4.0dB/m未満、より好適には3.6dB/m未満の減衰を有することが好ましい。直線ファイバに対する光損失は好適には2mmの曲げ半径において2%未満である。
【0023】
本発明はまた、外側管内に封入された前に説明した1つ又は複数の高分子光ファイバを含む能動的インプラント可能医療デバイス(AIMD)の2つの別個の要素間に波長λiの光を送信するための光リードに関する。
【0024】
光リードの少なくとも1つの高分子光ファイバは着色され得る。例えば、前記少なくとも1つの高分子光ファイバは、着色コーティング、又は透明コーティングと組み合わされた着色クラッディングを含み得る。一実施形態では、光リードはX線に対して可視である。これは、光リードの高分子光ファイバのうちの1つ又は複数の高分子光ファイバの外側管又はコーティング(33)へBaSO4などのX線可視添加物を含むことにより実現され得る。
【0025】
本発明はまた能動的インプラント可能医療デバイス(AIMD)に関する。能動的インプラント可能医療デバイス(AIMD)は、
(a)380~1800nm、好適には600~1500nmに含まれる少なくとも波長λIにおいて発射する光源を含む封入ユニット、及び
(b)封入ユニットとは別個であるとともに光起電力電池及び/又はフォトセンサ及び/又はオプトロードを含む組織結合ユニット、を含み、
(c)封入ユニットの光源は以前に説明されたような高分子光ファイバの第1の端へ光学的に結合され、組織結合ユニットの光起電力電池及び/又はフォトセンサ及び/又はオプトロードは光源が高分子光ファイバを介し光起電力電池及び/又はフォトセンサ及び/又はオプトロードと光学的に連通するように高分子光ファイバの第2の端へ光学的に結合される。
【0026】
AIMDは好適には、以前に説明されたような光リードを形成するために外側管内に集められた2つ以上高分子光ファイバを含む。
【0027】
好ましい実施態様では、第2の部品は光起電力電池を含むカフ電極ユニットであり、カフ電極ユニットは、
・非導電性であるとともに内面と内面から厚さだけ分離された外面とを有する支持シートであって、支持シートは、内面の少なくとも一部がカフの内部を形成し外面の少なくとも一部がカフの外部を形成するように長手軸(Z)を中心に巻かれておりほぼ円筒状ジオメトリのカフを形成する、支持シート、及び
・カフの内面において晒される電極コンタクトを含む少なくとも1つの第1のコネクタを含み、
・光起電力電池は、高分子光ファイバの第2の端へ及びこれを通って光発射源(21L)へ光学的に結合され、及び電極コンタクトへ電気的に結合される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本発明の性質の十分な理解のために、添付図面と併せた以下の詳細な説明が参照される。
【0029】
【
図1a】
図1(a)は本発明によるAIMDを示す。
【
図1d】
図1(d)は本発明によるPOFを含む光リードを示す。
【
図2a】
図2(a)は芯/クラッディング界面における内部反射による光線の導波管の原理を示す。
【
図2b】
図2(b)は開口数(NA)及び臨界角(θc)を示す。
【
図2c】
図2(c)は曲げ角度及び光線の伝搬への影響を示す。
【
図2d】
図2(d)はn
core=1.531を有する芯のNAに応じた臨界角のプロットを示す。
【
図3】
図3はGOFと比較した様々なPOFの減衰を示す。
【
図4a】
図4(a)は芯のCOP及びCOCの化学構造を示す。
【
図4b】
図4(b)はクラッディングのTHVを示す。
【
図4c】
図4(c)はコーティングのPVDF、PTFE及びPHFPを示す。
【
図5a】
図5(a)はシース内に封入された本発明によるPOFを含む光リードの例を示す。
【
図5b】
図5(b)は外塗内に埋め込まれた本発明によるPOFを含む光リードの例を示す。
【
図5c】
図5(c)はロッドの細長いオリフィスの嵌合内に挿入された本発明によるPOFを含む光リードの例を示す。
【
図6a】
図6(a)はPOFの一実施形態であるクラッディング及びコーティング内のシングル芯を示す。
【
図6b】
図6(b)はPOFの一実施形態である単一コーティング内に埋め込まれたいくつかの芯/クラッディングユニットを示す。
【
図6c】
図6(c)はPOFの一実施形態である単一クラッディング及び単一コーティング内に埋め込まれたいくつかの芯を示す。
【
図6d】
図6(d)はPOFの一実施形態である単一コーティング内に封入されたいくつかのマルチ芯/クラッディングユニットを示す。ここで各マルチ芯/クラッディングユニットは単一クラッディング内にいくつかの芯を含む。
【
図7a】
図7(a)は外側管内に封入された
図6(a)の実施形態によるいくつかのPOFを含む光リードの様々な実施形態を示す。
【
図7b】
図7(b)は外側管内に封入された
図6(b)の実施形態によるいくつかのPOFを含む光リードの様々な実施形態を示す。
【
図7c】
図7(c)は外側管内に封入された
図6(c)の実施形態によるいくつかのPOFを含む光リードの様々な実施形態を示す。
【
図7d】
図7(d)は外側管内に封入された
図6(d)の実施形態によるいくつかのPOFを含む光リードの様々な実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1(d)に示すように、本発明による高分子光ファイバ(POF)(30)は、それ自体がコーティング(33)により囲まれたクラッディング(32)により囲まれた芯(31)を含む。POFは、第1の端及び第2の端を含むマルチモード光ファイバであり、及び波長λiの光を能動的インプラント可能医療デバイス(AIMD)の2つの別個の要素間に送信するために設計されている。ここで波長(λi)は380~1800nm、好適には650~1550nm、より好適には700~900nmに含まれる。
【0031】
芯(31)
芯(31)は、概して円筒状であり、及びその化学構造が
図4(a)に示されるシクロオレフィンポリマー(COP)又は共重合体(COC)で作られる。COPの例はZeonex(例えばZEON社から入手可能なZeonex 480R)であり、COCの例はTOPAS(例えばTOPASAdvanced Polymers社から入手可能なTOPAS 5013又はTOPAS 8007)である。
【0032】
芯(31)は波長λiにおいて芯屈折率(ncore)を有する。シクロオレフィンポリマー/共重合体(COP、COC)は、疎水性であり、及びPC又はPMMAより実質的に低い<0.01%吸水性を有する。COP及びCOCは寸法的に安定であり、その光学特性は様々な湿度環境に晒されてもほぼ安定なままである。例えば、Zeonexはグレードに依存して1.509から1.535まで変化する屈折率ncoreを有し、486nmの波長においてncore=1.531であり、Zeonex E48 Rに関して、これは90% RHの大気内で50°Cにおいて少なくとも14日間安定したままである。比較として、同じ試験条件におけるPMMAの屈折率(ncore)は吸湿性に起因して1.490から1.492まで変化した。
【0033】
POFの芯(31)は、好適には100~300μm、より好適には200~250μm、最も好適には220~240μmに含まれる径(D31)を有する。COP及びCOCは、いかなる特定問題も無くこのようなフィラメント径へ延伸され得る。
【0034】
2.1GPa程度の曲げ弾性率により、シクロオレフィンポリマー/共重合体(COP/COC)ファイバは非常に柔軟であり、3.0GPa程度の曲げ弾性率を有する対応PMMA又はPSファイバよりさらに柔軟である。したがって、COP又はCOC芯を含む光ファイバは破壊することなく鋭く曲げられ得、脆性破壊のリスク無しに長期間インプラントのための安全性を保証する。この要件はAIMDにおける光ファイバの使用にとって必須である。
【0035】
芯高分子は、550nm~875nmの波長範囲内に含まれる少なくとも1つの波長において好適には4.0dB/m未満、好適には3.6dB/m未満の減衰を有する。COP及びCOCは550nm~875nmの波長範囲において2~3dB/m(=2~3×10
3dB/km)程度の光学的減衰を有する(
図3参照)。
【0036】
クラッディング(32)
前に説明したように、光ファイバは、光を光ファイバの一端から他端へ輸送するために芯及びクラッディングを必要とする。クラッディング(32)は、芯/クラッディング界面に到達する光線の反射を許容するために波長λiにおいてクラッディング屈折率n
clad<n
coreを有する(
図2(a)参照)。
【0037】
本発明のクラッディングは、テトラフロオルエチレン、ヘキサフルオロプロピレン及びフッ化ビニリデンの単量体を含むクラッディング共重合体で作られる。クラッディング共重合体は、
図4(b)に示す化学構造のテトラフロオルエチレン、ヘキサフルオロプロピレン及びフッ化ビニリデン(THV)の三量体であり得る。
【0038】
COP/COC芯及びクラッディング材料が波長λiにおいて少なくとも0.5、好適には少なくとも0.6、より好適には少なくとも0.7の
の開口数を生じるように選択されることが好ましい。例えば、芯が屈折率n
core=1.531を有するZeonex E48Rで作られれば、屈折率n
clad≦1.36を有するクラッディング材料によりNA>0.7を有するPOFが取得される。
【0039】
好適なクラッディング材料の例はTHV200、THV220、THV415、THV500、THV X610及びTHV815を含む。これらは比較的低い処理温度を有し且つ非常に柔軟であり、このことはPOFの曲げ半径Rを低減するのに非常に有用である。THVの屈折率はグレードに依存して1.353~1.363の間で変動する。例えば、THV500は屈折率n
clad=1.355を有する。n
core=1.531を有するZeonex E48Rで作られた芯及びn
clad=1.355を有するTHV500で作られたクラッディングを含むPOFは開口数NA=0.713を生じる。反射の対応臨界角θ
c=asin(n
clad/n
core)=53度(
図2(d)参照)。
【0040】
一実施形態では、
図1(d)及び
図6(a)に示すように単芯(31)がクラッディング内に埋め込まれる。この実施形態では、クラッディングは好適には円筒状である(必ずしもというわけではないが)。代替的に、
図6(c)及び
図6(d)に示すように2つ以上のコア(31)が単一クラッディング内に封入され得る。
【0041】
クラッディングは130~500μm、好適には110~400μmに含まれる外径(D32)を有し得る。クラッディング(32)が単芯(31)を埋め込めば(
図1(d)及び
図6(a)を参照)、クラッディング(32)は、5~50μm、好適には7~25μm、より好適には10~15μmに含まれる厚さ(t32)を有し得る。非円筒状クラッディングに関して、水力直径の値がその代りに考慮される必要がある。ここで水力直径はDh=4A/Pとして定義され、ここで、A及びPは芯(群)/クラッディングユニットの断面の面積及び周囲長である。
【0042】
上述のように芯(31)及びクラッディング(32)で作られたPOFは、インプラントされたAIMDと共に使用されるためのPOFとして好適となるための判断基準の多くを満たす。このPOFは、疎水性、耐湿性であり、素晴らしい柔軟性及び良好な光学特性を有し、及び生体適合グレードのすべての材料が既製で入手可能である。AIMDは封入ユニット内に封入された(再充電可能)電池により自己給電されるので、光損失(すなわち減衰、曲げ、及び研磨を含む結合に起因する損失)のすべての源が最小化されなければならない。以下の点は最小化される必要がある光損失の潜在的源である。
・減衰損失-これは以前に説明されており、及び約0.4mのPOF長さ全体にわたる2~3dB/mの減衰により、減衰は0.8~1.2dB程度であり、これは受容可能であり、及びPOFに典型的である。
・曲げ損失-
図2(c)に示すように、光ファイバは曲げられ得る。GOFを超えるPOFの1つの主要利点は、低曲げ半径が機械的に到達されることを可能にするそれらの高柔軟性である。しかし、機械的柔軟性は光ファイバを曲げるために必要であるが不十分な条件に過ぎない。実際、屈曲部内の芯/クラッディング界面に到達する光線の角度は直線部内におけるものより低くなり得る(
図2(c)参照)。角度が臨界角θcより小さくなれば、光ファイバはもはや導波管として働き得なく、光線はクラッディングを介し屈折され得る(
図2(c)の「θ2<θc?」における破線矢印参照)。
図2(d)に示すように、臨界角θcはNAの値と共に増加するので、曲げ損失はファイバのNAに関係する。前に説明された芯/クラッディングの高NAは、屈折力の低曲げ損失を生じ、及びPOFの(機械的)柔軟性の十分な利点が活用され得る。
・結合損失-この損失はPCT/欧州特許出願公開第2018/073436号明細書などに説明されるように特殊光ファイバコネクタを使用することにより最小化され得る。所与コネクタに関して、この損失はPOFの芯径及び開口数(NA)により支配される。レーザ源の径及び発散に整合する芯径及びPOFのAN値の両方の高い値が、結合に起因する損失を低減する。0.7より概して大きいNA値により、THVクラッディングとの組み合わせCOPコアは受容可能な結合損失を生じる。
・研磨損失-POFの両端の断面は結合電力喪失を低減するためにうまく研磨されなければならない。
【0043】
減衰、結合及び曲げに起因する屈折力損失のレベルはAIMDの用途に好ましいが、断面を擦り減らすことなく且つクラッディングが芯から剥離することなく、以前に説明された芯/クラッディングユニットの両端を研磨することは可能ではなかった。これは、AIMDの用途に受容不能である研磨損失のレベルを生じた。
【0044】
コーティング(33)
POFの両端の断面の研磨を強化するために、本発明のPOFはさらに、その化学構造が
図4(c)に示されるテトラフロオルエチレン(PTFE)、ヘキサフルオロプロピレン(PHFP)及びフッ化ビニリデン(PVDF)の単量体の中から選択されたクラッディング共重合体の単量体のうちの1つを含むコーティング高分子で作られたコーティング(33)を含む。好適には、コーティング高分子はフッ化ポリビニルデン(PVDF:polyvinylidene fluoride)である。本発明のコーティングは疎水性であり、及び湿気を実質的に吸収しない。
【0045】
コーティングは、POFの外層を画定し、及び150~530μm、好適には250~480μmに含まれ得る径(D30)を有する。コーティング(33)が円筒状でなければ、これらの値はそれの水力直径へ適用される。コーティング(33)が単一クラッディング(32)を封入するケース(
図6(a)及び
図6(c)参照)では、コーティングは、10~40μm、好適には15~30μm、より好適には20~25μmに含まれる厚さ(t33)を有し得る。
【0046】
以前に定義されたコーティング高分子を適用することにより、POFの両端の断面は、擦り減ることなく高表面仕上げまで機械的に研磨され得る。いかなる理論にも制限されることを望まないが、研磨は以下の2つの条件が満たされればコーティングの使用により強化されると考えられる:
(a)コーティング高分子はクラッディング共重合体より高剛性を有する、及び
(b)コーティング高分子はクラッディング共重合体へ接着する。
【0047】
コーティング(33)は、一方ではその高剛性によりクラッディング(32)を安定化し、これにより芯に対するクラッディングの運動(クラッディングが芯へ劣悪に接着する)を抑制し、及び他方では、クラッディング(32)へのその良好な接着により、コーティングはコーティングに対するクラッディングのいかなる運動もなくす。例えば、クラッディング(32)のTHV500は約200MPaの引張弾性率を有し、コーティング(33)のPVDFは1340~2000MPaの引張弾性率を有する(PTFEは400~800MPaの引張弾性率を有する)。したがって、本発明のコーティング(33)は第1の条件(a)を満たす。
【0048】
クラッディングのフルオロ共重合体へ接着する高分子を発見することは、フッ素重合体が非常に低い表面エネルギーを有し、したがって接着するのが困難であるので挑戦的課題である。テトラフロオルエチレン、ヘキサフルオロプロピレン及びフッ化ビニリデンの単量体の中から選択されるクラッディング共重合体の単量体の1つを含む高分子で作られたコーティング材料を選択することにより、クラッディングとコーティングとの間の接着性は、同様な化学構造が界面をはさんで互いに面するので最適化される。試験は、COPはグレードに依存して2100~2740MPa(これはPVDFより高い)の引張弾性率を有しているが、COP芯、THV500クラッディング及びCOPコーティングを含むPOFにより行われ、及び研磨結果は満足ではなかった。この失敗はTHV500へのCOPの劣悪な接着に帰着され、その結果、第2の条件(b)は満たされない。COPコーティングをPVDFコーティングにより置換することにより、研磨はスムーズに行われ、及び最適表面仕上げがPOFの両端において取得された。
【0049】
さらに、POFの第1及び第2の端は、例えば光源に面する封入ユニットへ及び例えばPVセルに面する組織結合ユニットへ耐久可能に且つ確実に結合されなければならない。光ファイバが対応光学素子と完全アラインメント状態のままであるということを保証するために、POFの第1及び第2の端は対応空洞内へ挿入され及び接着剤により適所に接着される。したがって、クラッディングは、融解石英などのセラミック材料で作られ得る対応空洞の壁への良好な接着性を許容しなければならない。POFの第1及び/又は第2の端は、対応封入ユニット及び/又は組織結合ユニットと一体化された空洞へ又は代替的に対応封入ユニット及び/又は組織結合ユニットと一体化されたソケットと嵌合するプラグ内に形成された空洞へ接着され得る。一実施形態では、POFの第2の端は組織結合ユニットへ直接接着され、及び第1の端は封入ユニットのソケットと嵌合するプラグへ接着される。この実施形態により、外科医は、POFを備えた組織結合ユニットを対応組織又は神経へインプラントし、プラグを備えたPOFの第1の端を封入ユニットのインプラントの位置へ皮下駆動し、及び、封入ユニットをインプラントすることに先立って又はその後にプラグを結封入ユニットのソケットへ結合する。本発明によるAIMDにおける使用に好適なプラグの例はPCT/欧州特許出願公開第2018073436号明細書に説明されている。
【0050】
フッ素処理された成分にもかかわらず、PVDFは、接着剤としてエポキシ又はケイ素樹脂を使用する際に、融解石英で作られた空洞壁への受容可能接着を生じる。接着はさらに、接着剤を治療面へ塗布することに先立ってコーティング面の表面処理(プラズマ又はコロナ処理など)により強化される。接着剤の屈折率は、POFの端から出て及び接着剤(POFの端の下流の空洞を満たし且つその断面を覆う)全体に伝播する光線の屈折無しに、空洞が最初に接着剤により満たされ得、続いてPOFの端を接着剤充填済み空洞内に挿入するように、POFの芯の屈折率に可能な限り近い(好適にはPOFの芯の屈折率に等しい)ことが好ましい。
【0051】
コーティングはまた、POFの外側管(35t)のオリフィス内への且つそれに沿った容易な挿入を可能にしなければならない。本発明のコーティング高分子は、素晴らしい滑性を有し、及び、ぴったりしたオリフィス内にトラブルなく挿入され得る。
【0052】
コーティング(33)の屈折率は、導波管が芯(31)及びクラッディング(32)により形成される一方でコーティング(33)は構造的安定器としてだけ働くので本発明にとって重要ではない。
【0053】
図1(d)、
図6(a)及び
図6(c)に示す一実施形態では、単一クラッディング(32)がコーティング(33)内に埋め込まれる。前に説明されたように、クラッディング(32)は単一芯(31)又はいくつかの芯(31)を囲み得る。
図6(b)及び
図6(d)に示す代替実施態様では、2つ以上のクラッディング(32)が単一コーティング(33)内に埋め込まれ得る。再び、各クラッディングは1つ又は複数の芯(31)を囲み得る。
【0054】
高分子光ファイバ(30)(POF)
本発明の高分子光ファイバ(POF)(30)は、前に説明したようにそれ自体がコーティング(33)により囲まれるクラッディング(32)により囲まれた芯(31)で構成される。このPOFは、
図1(a)に示すように光ファイバが封入ユニット(50)と組織結合ユニット(40)との間で光を輸送するために患者の体内にインプラントされるAIMDの用途における使用のために開発されてきた。本発明のPOFはAIMDの用途における使用のためのすべての要件を満たす。何よりもまず、芯(31)、クラッディング(32)、及びコーティング(33)のすべての(共)重合体は既製の生体適合可能グレードで入手可能である。これは任意のインプラント用途を考量する前の強制条件である。
【0055】
POFは一般的には、湿気に対し低耐性を有すると考えられ、このことは患者の体の非常に湿度の高い環境内へのインプラント用途における主要な障害である。芯、クラッディング及びコーティングを形成する(共)重合体のそれぞれは、疎水性であり、及び極めて低い吸水性により特徴付けられる。これらは、湿潤環境において寸法的且つ光学的に非常に安定している。これらは長期的インプラント用途の強制条件である。
【0056】
大抵のPOFのように、本発明のPOFはGOFとは違って脆くない。これは、患者の体内の光ファイバを破壊することは当然ながらいくら犠牲を払っても回避されるべきなので安全上の理由のために非常に重要である。本発明のPOFは、非常に柔軟であり、及び非常に小さな曲げ半径(R)まで曲げられ得る。外側管内に封入された1つ又は複数の光ファイバを含む本発明による光リードは、EN 45502-2-1:2014 Active Implantable Medical Devices(Part 2-1)による2Hzの周波数及び90°±5°において47,000サイクルの曲げにわたって破壊することなく耐える。
【0057】
本発明のPOFの機械的柔軟性は0.7程度の開口数NAの高い値及び52~53度程度の対応臨界角θcと組み合わされ(
図2(d)参照)、これにより、低曲げ半径(R)で曲げられた場合ですらPOFの導波管機能を維持することを可能にする(
図2(c)参照)。例えば、本発明のPOFは、曲げ半径R=2mmにおいて2%未満の直線ファイバに相当する光損失を有し得る。低曲げ損失と結合された光ファイバの高柔軟性は、以下の理由でAIMDと共に使用するのに有利である:
・光ファイバは障害に対処するためにインプラント中に折り畳むことと曲げることとを必要とし得る、
・組織結合ユニットに対する光ファイバの挿入の方向と封入ユニットの位置の方向へ延伸する光ファイバの方向との間の角度が形成され得、したがって可能性として光ファイバ内に鋭角を形成する、及び
・患者の運動が光ファイバを曲げ得、及びこのような運動中の電力伝送変動は低曲げ損失を有する光ファイバだけにより回避され得る。
【0058】
減衰損失は、ほとんどのPOFに一致しており(
図3参照)、AIMD内のPOFの限られた長さ(一般的には40~50cmを越えない)という観点で好ましい。結合損失は以前に説明されたNAの高い値に起因して最小化される。
【0059】
AIMDの用途における使用のための最後のハードル(POFの両端の断面が研磨時に擦り減らされるという)はコーティング(33)を含むことにより解決された。芯(31)とコーティング(33)との間に挟まれたクラッディング(32)をこのように機械的に安定化することにより、本発明のPOFは、コネクタのレベルにおける電力損失を低減するために必要とされる所望表面平滑度に到達するように研磨され得る。したがって本発明のPOFの第1の端及び/又は第2の端は好適には研磨され、好適には機械的、化学的又は機械化学的に研磨される。より好適には、これらは所望表面仕上げまで機械的に研磨される。
【0060】
光リード(35)
実際、POFは、非常に薄い(外径<530μm)ので扱うのが非常に困難であると推測されるために、緩んだ状態でインプラントされることはめったにない。一般的に、本発明による1つ又は複数のPOFは
図1(d)、
図5(a)、
図5(b)及び
図7に示すように外側管(35t)内に封入される。
【0061】
2つ以上のPOFが外側管内に封入されるケースでは、その両端において各POFを識別することができることが好ましい。これは、いくつかのPOFのうちの1つのPOFの第1の端へ結合される光源が同POFの第2の端において対応デバイス(PVセル又は光検出器)へ結合されるということを保証するために重要である。例えば、POFは所定コードにより着色され得る。これは、着色済みコーティング(33)又は代替的に透明コーティング(33)と組み合わされた着色済みクラッディングを使用することにより実現され得る。代替的に又は付随的に、外側管は、着色済みラインを備えてもよいし、POFの2つの端の適切な接続のために必要とされる配向の識別を可能にする非回転断面(例えばその長さに沿って延伸する溝又は突起を含む)を有してもよい。
【0062】
別の好適な実施形態では、光リード(35)は、BaSO4などのX線可視添加材を光リードの高分子光ファイバのうちの1つ又は複数の高分子光ファイバの外側管(35t)又はコーティング(33)に含むことによりX線に対して可視である。
【0063】
図5(a)に示す一実施形態では、外側管はシース内で互いに接触し得る1つ又は複数のPOFを封入するシースの形式であり得る。
図5(b)に示す代替実施態様では、外側管は個々のPOFを埋め込むことにより引き抜き成形され得る。
図5(c)に示す好適な実施形態では、外側管(35t)は、各オリフィス内に個々に導入され得るPOFのジオメトリに嵌合する径を有するロッドの全長にわたって延伸する多くの細長い並列オリフィスを含むロッドである。この実施形態では、POFのコーティング(33)は、細長いオリフィス内のPOFのスムーズな挿入を可能にするために良好な滑性を有しなければならない。
【0064】
外側管(35t)は高分子(好適にはエラストマーなどの可塑性ポリマー)で作られ得る。例えば、外側管はシリコーンで作られ得る。当然、すべての他の部品のように、外側管材は医療用途のために生体適合性でなければならない。
【0065】
図7は
図6に示す多くのPOFを含む光リードの様々な実施形態を示す。
【0066】
AIMD
図1(a)に示すように、本発明のPOFは、封入ユニット(50)、電極及び/又はオプトロードを含む組織結合ユニット(40)並びに1つ又は複数のPOF(30)を含む光リード(35)を含む光電子能動的インプラント可能医療デバイス(AIMDの)との使用のために特別に設計される。
【0067】
図1(b)に部分的に示されるように、封入ユニット(50)は、1つ又は複数の光発射源(21L)、光センサ、マイクロ光学部品(例えばレンズ)、1つ又は複数の光発射源を制御するための及び/又は光センサから受信されたすべての情報を処理するための電子ユニット(例えばアナログ及び/又はデジタル回路)、並びに少なくとも1つの光発射源及び電子ユニットを給電するための電源を含む1つ又は複数の光学部品を封入する内側空間を画定する筐体(50h)により形成される。光発射源(21L)は、380~1800nm、好適には600~1500nm、より好適には700~900nmに含まれる少なくとも波長λIで発射する。本発明に好適な封入ユニットの例は国際公開第2018068807号パンフレットに説明されている。
【0068】
組織結合ユニット(40)はまた通常、光学部品を含み得る。組織結合ユニットが電極を含めば、組織結合ユニットは、組織結合ユニットのコネクタ(40c)内に位置する光起電力電池へ光エネルギーを送信し、光エネルギーを電気的エネルギーに変換し、及び電気的エネルギーを電極へ導くことにより活性化され得る。光学部品はまた、フォトセンサ、又は380~1800nm、好適には600~1500nm、より好適には700~900nmに含まれる少なくとも波長λIで発射する光発射源を含み得る。組織結合ユニットの光発射源は例えば帰還信号として使用され得る。組織結合ユニットはまたオプトロードを備え得る。
【0069】
図1(c)に示すように、治療される組織が神経であれば、組織結合ユニット(40)は、前記神経に接触する電極又は前記神経を指すオプトロードにより治療される神経の周囲に巻かれ得る支持体を含むカフの形式であり得る。本発明に好適なカフ電極の例はPCT/欧州特許出願公開第2017/081408号明細書に説明されている。他のジオメトリは、他の組織の治療のために適合化され、及び当該技術領域においてよく知られている。本発明は、組織結合ユニットのいかなる特定ジオメトリにも限定されない。
【0070】
封入ユニット(50)と組織結合ユニット(40)との間の光通信は、本発明による1つ又は複数のPOFを含む光リード(35)により保証される。光リード(35)は、最大40又は50cm程度の長さを有し、及び素晴らしい柔軟性を有し、破壊することなく2mm未満の半径で曲げられることができる。POF自体内の光損失は
図3に示す減衰損失と曲げ損失(
図2(b)参照)とに起因しており、両特性は、前に説明されており、本発明によるPOFが使用される際に2mm程の低い曲げ半径においてですら好ましいと考えられる。
【0071】
光リード(35)の第1及び第2の端は、封入ユニット(50)及び組織結合ユニット(40)の光学部品と光学的に連通して接続されなければならない。したがって、封入ユニット(50)及び組織結合ユニット(40)への光リード(35)のコネクタ(40c、50c)は、封入ユニット(50)及び組織結合ユニット(40)の光学部品との完全なアラインメントを保証するように最適化されなければならない。光リード(35)と封入ユニット(50)との間のコネクタ(50c)の例は、PCT/欧州特許出願公開第2018/073426号明細書及び国際公開第2015164571号パンフレットに説明されている。光リード(35)と組織結合ユニット(40)との間のコネクタ(40c)の例は国際公開第2019042553号パンフレットに記載されている。
【0072】
所与組のコネクタ(40c、50c)及び光学部品に関して、結合損失は光ファイバのNAと各POFの第1及び第2の端の表面仕上げとに起因する。本発明によるPOFにより、0.7以上程度のNAは結合損失が制限されることを保証し、及びクラッディング(32)及び芯(31)に対するコーティング(33)の安定化効果のおかげで、POFの両端は、劣悪な表面仕上げに起因する結合損失を低減するために所望表面仕上げまで機械的に研磨され得る。
【0073】
例えば、封入ユニット(50)は光発射源(21L)を含み得、組織結合ユニット(40)は電極と電気的に連通する光起電力電池を含み得る。光リード(35)は、光発射源(21L)により提供される光エネルギーを可能な限り小さな損失でもって光起電力電池へ輸送しなければならない。これは本発明のPOFにより可能にされる。さらに、組織結合ユニット(40)は、電極へ結合されるとともに電極が電流を受信する際に活性化されるフィードバック光源を備え得る。このフィードバック光源により発射されるフィードバック光は、封入ユニット(50)内に位置するフォトセンサへ可能な限り小さな損失でもって輸送されなければならない。これもまた本発明のPOFにより可能にされる。
【0074】
この実施形態では、以下の2つの異なるPOFを使用することが好ましい:封入ユニット(50)の光発射源(21L)を組織結合ユニット(40)の光起電力電池へ結合するためのPOF;及び組織結合ユニットのフィードバック光源を封入ユニット(50)のフォトセンサへ結合するための他のPOF。2つ(又は3つ以上)のPOFが光リードを形成するために外側管(35t)内に集められる。光リードは容易に捩じられ得るので、光起電力電池をフォトセンサへ光学的に結合することを回避するために各POFの第1及び第2の端をコネクタ(40c、50c)内の正しい位置において結合すること(このことはいかなる影響も及ぼさないだろう)が重要である。以前に説明されたようなPOFを着色することで、熟練工が個々のPOFの両端をコネクタ(40c、50c)内のそれらの対応位置へ結合するのを支援する。
【0075】
好ましい実施態様では、AIMDは、光起電力電池及び以下のものを含む
図1(c)に示すようなカフ電極ユニットを含む:
・非導電性であるとともに、内面と内面から厚さだけ分離された外面とを有する支持シート(43)であって、支持シートは、内面の少なくとも一部がカフの内部を形成するように且つ外面の少なくとも一部がカフの外部を形成するように長手軸(Z)を中心に巻かれており、ほぼ円筒状ジオメトリのカフを形成する、支持シート、
・カフの内面において晒される電極コンタクトを含む少なくとも1つの第1のコネクタ(40C)、ここで、
・光起電力電池は、高分子光ファイバの第2の端へ及びこれを通って光発射源(21L)へ光学的に結合され、電極コンタクトへ電気的に結合される。
【0076】
組織の光治療のために、所謂オプトロードが使用され得る。オプトロードは、組織の精密エリア上へ光線を集束する発光体であってもよいし、発光体により発射された光線の反射、透過、又は散乱を感知する光センサであってもよい。発光体は、勾配付きエッジ光ファイバの形式であってもよいし、治療される組織の精密エリア上へ光線を集束するレンズへ結合された光ファイバの形式であってもよい。代替的に、発光体は、発光ダイオード(LED)、垂直共振器面発光レーザ(VCSEL:vertical-cavity surface-emitting laser)又は別のタイプのレーザダイオードなどの1つ又は複数の発光源であり得る。発光源は、以前に説明された電極へのやり方と同様なやり方で電流により給電され得る。
【符号の説明】
【0077】
30 高分子光ファイバ
31 芯
32 クラッディング
33 コーティング
35 光リード
35t 外側管
40 第2の部品=組織結合ユニット
40c 組織結合ユニットへのコネクタ
50 第1の部品=封入ユニット
50c 封入ユニットへのコネクタ