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  • 特許-米麺 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-13
(45)【発行日】2023-09-22
(54)【発明の名称】米麺
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/109 20160101AFI20230914BHJP
【FI】
A23L7/109 G
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022573759
(86)(22)【出願日】2022-11-29
(86)【国際出願番号】 JP2022043999
【審査請求日】2023-03-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521481784
【氏名又は名称】金田 淳二
(74)【代理人】
【識別番号】100120086
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼津 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【弁理士】
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【弁理士】
【氏名又は名称】清井 洋平
(72)【発明者】
【氏名】金田 淳二
【審査官】戸来 幸男
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-044981(JP,A)
【文献】特開2012-090530(JP,A)
【文献】特開2007-244220(JP,A)
【文献】お米をもっと食べて欲しい!国産米だけで作った米粉乾麺『BEIMEN(べいめん)』,CAMPFIRE [online],2022年08月04日,pp.1-20,[retrieved on 2023.01.17], retrieved from the internet <https://camp-fire.jp/projects/view/578005>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 7/00-7/25
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
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(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
澱粉がα澱粉である玄米の粉からなる玄米α粉と、澱粉がα澱粉である白米の粉からなる白米α粉と、澱粉がβ澱粉である白米の粉からなる白米β粉とを含む米粉を原料とする米麺であって、前記米粉全体に対する割合は、前記玄米α粉が5質量%以上30質量%以下、前記白米α粉が15質量%以上40質量%以下、前記白米β粉が30質量%以上70質量%以下であることを特徴とする米麺。
【請求項2】
請求項1記載の米麺において、前記米粉全体に対する前記玄米α粉の割合が20質量%以下であることを特徴とする米麺。
【請求項3】
請求項1記載の米麺において、前記米粉全体に対する前記白米α粉の割合が30質量%以下であることを特徴とする米麺。
【請求項4】
請求項1記載の米麺において、前記米粉全体に対する前記白米β粉の割合が40質量%以上であることを特徴とする米麺。
【請求項5】
請求項1又は4記載の米麺において、前記米粉全体に対する前記白米β粉の割合が65質量%以下であることを特徴とする米麺。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、米粉を主な原料とする米麺に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの麺が小麦を原料に含んでいることから、アレルギー等が理由で小麦を用いた食品を食せない人や、体質の改善等を目的にグルテンの摂取量を抑える人は、麺類を食す機会が制限されている。また、アレルギーによって蕎麦を食べられない人もいる。このような人が安心して食べられる麺類の一つに、米を主原料とする米麺が挙げられる。従来、米麺は白米を原料としたものが主流であり、澱粉がβ澱粉である白米の粉(以下、「白米β粉」と言う)及び澱粉がα澱粉(β澱粉をα化したもの)である白米の粉(以下、「白米α粉」と言う)に水等を加えたものが製麺されて製品化されている。
【0003】
ところで、近年、白米に比べて、ビタミン、ミネラル、食物繊維等の栄養が豊富な玄米が注目され、米麺においても玄米を含んだものの製品化が試みられている。例えば、特許文献1には玄米を用いたうどん用の麺が、特許文献2には玄米及び白米粉を主原料とした玄米麺がそれぞれ開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2008-301708号公報
【文献】特開2021-83406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のうどん用の麺は、玄米を含んではいるが、原料の大半が小麦粉であり、小麦を摂取できない人は食べることができない。これに対し、特許文献2に記載の玄米麺は小麦粉を含んでいない。
しかしながら、引用文献2に記載の玄米麺は、押出し型製麺機を利用して製麺される。即ち、量産に適しているロール式製麺機による製麺を前提としていない。
【0006】
ロール式製麺機による製麺を可能にするには、生地(穀物粉に水や食塩等を加えて混ぜ合わせたもの、以下同じ)が適度な粘り気(粘着性)を有している必要がある。粘り気が小さ過ぎると、生地を延伸する工程で麺の生地が切れてしまい、麺帯(生地の塊を薄く伸ばしたもの)ができない。一方、生地の粘り気が大き過ぎると、ロール式製麺機のロール等に生地が引っ付いたり、生地の異なる箇所どうしが引っ付いたりして、麺帯ができないという問題や、麺帯を切り刃で切ることができないという問題が生じる。
【0007】
更に、麺の生地の状態によっては、麺帯を切り刃で切って麺にできたとしても、茹でる際に、湯の中で溶けたり切れたりして調理できないという問題が招来する。
ここで、増粘剤を用いて、ロール式製麺機による製麺及び茹で処理を安定的に行える米麺を得ることは可能であるが、米粉以外のものを極力含まない米麺が市場で求められる傾向があることから、増粘剤を用いずとも、ロール式製麺機による製麺及び茹で処理を安定的に行えるのが望ましい。従来、玄米粉を含んだ米麺で増粘剤が添加されていないものについて、ロール式製麺機による製麺及び茹で処理を可能にする研究はなされていなかった。
【0008】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、増粘剤を要することなくロール式製麺機による製麺及び茹で処理による調理を安定的に行うことが可能な玄米入り米麺を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的に沿う本発明に係る米麺は、澱粉がα澱粉である玄米の粉からなる玄米α粉と、澱粉がα澱粉である白米の粉からなる白米α粉と、澱粉がβ澱粉である白米の粉からなる白米β粉とを含む米粉を原料とする米麺であって、前記米粉全体に対する割合は、前記玄米α粉が5質量%以上30質量%以下、前記白米α粉が15質量%以上40質量%以下、前記白米β粉が30質量%以上70質量%以下である。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る米麺は、米粉全体に対する割合が、玄米α粉が5質量%以上30質量%以下、白米α粉が15質量%以上40質量%以下、白米β粉が30質量%以上70質量%以下であるので、増粘剤を要することなくロール式製麺機による製麺及び茹で処理による調理を安定的に行うことが可能である。これは、本願の発明者が種々の検証により、玄米α粉、白米α粉及び白米β粉の各割合を上述のようにした米麺が、ロール式の製麺機による製麺及び茹で処理による調理を安定的に行うことができる米麺となることを見出したことによる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】(A)、(B)はそれぞれ、本発明の一実施例に係る米麺の製造についての説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
続いて、本発明を具体化した実施例につき説明し、本発明の理解に供する。
本発明の一実施例に係る米麺10は、図1(A)、(B)に示すように、澱粉がα澱粉である玄米の粉からなる玄米α粉11と、澱粉がα澱粉である白米の粉からなる白米α粉12と、澱粉がβ澱粉である白米の粉からなる白米β粉13とを含む米粉14を原料とする米麺10であって、米粉14全体に対する割合は、玄米α粉11が5質量%以上30質量%以下、白米α粉12が15質量%以上40質量%以下、白米β粉13が30質量%以上70質量%以下である。
【0013】
本実施例において、玄米α粉11は、α化されていない玄米を加圧しながら加熱した後、圧力を解放して玄米に対しα化を伴った膨化処理を行い、粉砕処理を経て製造されている。白米α粉12も玄米α粉11と同様の処理によって製造可能である。玄米α粉11及び白米α粉12の製造には、例えば、エクストルーダが用いられる。また、白米β粉13は、生米を粉砕して製造されている。
【0014】
米麺10は、図1(A)、(B)に示すように、玄米α粉11、白米α粉12及び白米β粉13を混合した混合物である米粉14に水及び食塩を加えた米麺10の生地(以下、単に「生地」とも言う)をロール式製麺機15によって製麺化したものである。
【0015】
ここで、生地に含有されている米粉14全体に対する玄米α粉11の割合、白米α粉12の割合及び白米β粉13の割合をそれぞれ、5質量%以上30質量%以下(好ましくは、20質量%以下)、15質量%以上40質量%以下(好ましくは、30質量%以下)、30質量%以上70質量%以下(好ましくは、40質量%以上65質量%以下)としている。これは、種々の検証を重ねて以下のことを知得し、生地に増粘剤を含ませなくとも、生地に対してロール式製麺機15による製麺も、製麺により得られた米麺10に対し茹で処理による調理も安定的に行える割合を見出したためである。
【0016】
1)玄米α粉11、白米α粉12及び白米β粉13は、白米β粉13、玄米α粉11、白米α粉12の順に生地の粘り気を強くすることができ、ロール式製麺機15による製麺は生地が適度な粘り気を有する必要がある。
【0017】
2)玄米α粉11、白米α粉12及び白米β粉13それぞれの割合によっては、生地がロール式製麺機15に与えることができる状態、具体的には団子状にならない。
【0018】
3)玄米α粉11、白米α粉12及び白米β粉13それぞれの割合によっては、ロール式製麺機15による製麺は可能であっても、得られた米麺10に対して茹でる(例えば、熱湯で2~5分間茹でる)処理を実質的に行えない。茹でる処理を実質的に行えないとは、例えば、茹でている最中に米麺10が湯に溶け出したり、切れ易かったりすることや、茹であがった米麺10を箸ですくい上げると切れることや、茹であがった米麺10が全く歯ごたえのないものとなること等を意味する。
【0019】
なお、米粉14全体に対する玄米α粉11の割合が5質量%未満の場合、一般的に米麺10が玄米α粉11入りの米麺であると言うことはできなくなる。
また、玄米α粉11、白米α粉12及び白米β粉13の各割合を上述した範囲にすれば、米粉14に、玄米α粉11、白米α粉12及び白米β粉13以外のもの、例えば玄米β粉を含むようにしても、ロール式製麺機15による製麺、及び、製麺により得られた米麺10に対する茹で処理を共に安定的に行える。本実施の形態では、米麺10が穀粉として米粉のみを含んでいる。米麺市場の観点において、米麺10は米粉、水及び食塩のみからなるのが好適である。
【実験例】
【0020】
次に、本発明の作用効果を確認するために行った実験について説明する。
玄米α粉、白米α粉及び白米β粉の含有率が異なる米粉を用意し、これらの米粉に所定量の水及び所定量の食塩を加えた生地に対しロール式製麺機による製麺を行い、同製麺により得られた米麺の茹で処理を行い、茹であがった米麺を30代から70代の男女5人に食してもらい食味及び食感を採点させた。
【0021】
全項目について、採点は1~3点の3段階とし、良い結果ほど点数が大きくなるようにした。
ロール式製麺機による製麺の採点は、生地が団子状にならない等、製麺できる状態にできなかったものを×とし、製麺はできるがロール式製麺機に生地がへばりつく等して安定的に製麺できなかったものを1点とし、安定的に製麺ができたものを3点とし、その中間を2点とした。ロール式製麺機による製麺の採点が×のものは、茹で処理や米麺を食すテストを行えなかった。
【0022】
茹で処理の採点は、茹でる最中に米麺が湯に溶けたり、切れたりしたものを1点とし、米麺を安定的に茹でることができたものを3点とし、その中間を2点とした。
食味及び食感については、事前に採点者である5人に複数の種類の米麺のサンプルを食してもらい各採点者の採点基準が合うようにする作業を行った後、対象の米麺を食してもらい採点させた。実験結果は採点者の平均点を記載した。
実験結果を表1及び表2に示す。
【0023】
【表1】
【0024】
【表2】
【0025】
表1及び表2において、玄米α:白米α:白米βは、生地に含まれる米粉における玄米α粉の質量:白米α粉の質量:白米β粉の質量比を意味する。
実験結果より、製麺の採点が3点となったのは、米粉全体に対する玄米α粉の割合が5質量%以上30質量%以下の米麺であった。食味、食感の採点が3点となったのは、米粉全体に対する玄米α粉の割合が20質量%以下の米麺であった。
【0026】
以下に記載する白米α粉及び白米β粉の割合について検証は、米粉全体に対する玄米α粉の割合が5質量%以上30質量%以下の米麺についてのものである。
米粉全体に対する白米α粉の割合が15質量%以上30質量%以下の米麺は、同割合が40質量%の米麺に比べて、製麺の採点が安定して3点になった。米粉全体に対する白米β粉の割合が40質量%以上65質量%以下の米麺は、同割合が30質量%の米麺及び同割合が70質量%の米麺に比べて、製麺及び茹で処理の採点が安定して3点になった。
【0027】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は、上記した形態に限定されるものでなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。
玄米α粉及び白米α粉は、エクストルーダ以外の装置を用いて製造してもよいことは言うまでもない。また、米麺の生地は、玄米α粉、白米α粉、白米β粉、水及び食塩以外のもの(例えば、よもぎ)を含んでいてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0028】
玄米α粉、白米α粉及び白米β粉が上述した割合である米麺は、増粘剤を要することなくロール式製麺機による製麺及び茹で処理を安定的に行えることから、玄米粉入りの米麺により新たな麺市場を創造できる。
【符号の説明】
【0029】
10:米麺、11:玄米α粉、12:白米α粉、13:白米β粉、14:米粉、15:ロール式製麺機
【要約】
澱粉がα澱粉である玄米の粉からなる玄米α粉11と、澱粉がα澱粉である白米の粉からなる白米α粉12と、澱粉がβ澱粉である白米の粉からなる白米β粉13とを含む米粉14を原料とする米麺10であって、米粉全体に対する割合は、玄米α粉11が5質量%以上30質量%以下、白米α粉12が15質量%以上40質量%以下、白米β粉13が30質量%以上70質量%以下である。なお、米粉全体に対する玄米α粉11の割合が20質量%以下であること、米粉全体に対する白米α粉12の割合が30質量%以下であること、米粉全体に対する白米β粉13の割合が40質量%以上65質量%以下であることが好ましい。
図1