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特許7349222建築用パネルとパネル吊り具のセット及びこれを用いたパネル吊り上げ方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-13
(45)【発行日】2023-09-22
(54)【発明の名称】建築用パネルとパネル吊り具のセット及びこれを用いたパネル吊り上げ方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/16 20060101AFI20230914BHJP
【FI】
E04G21/16
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019135659
(22)【出願日】2019-07-23
(65)【公開番号】P2021017786
(43)【公開日】2021-02-15
【審査請求日】2022-07-19
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ・2018年7月24日~2018年7月26日 日鉄鋼板株式会社西日本製造所(湖南地区)内 施工実験棟にて公開 ・2018年10月22日~2018年10月26日 日鉄鋼板株式会社西日本製造所(湖南地区)内 施工実験棟にて公開
(73)【特許権者】
【識別番号】000207436
【氏名又は名称】日鉄鋼板株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504082025
【氏名又は名称】株式会社イング
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 極
(72)【発明者】
【氏名】原田 清一
(72)【発明者】
【氏名】永木 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】田中 悦二
【審査官】櫻井 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-172346(JP,A)
【文献】実開平06-032596(JP,U)
【文献】実開昭56-020970(JP,U)
【文献】特開2007-238219(JP,A)
【文献】特開2014-043742(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G21/14-21/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造躯体に固定される固定部材が突出するように取り付けられた建築用パネルと、
前記建築用パネルを、倒伏姿勢から起立姿勢に至るように起こして吊り上げるために使用されるパネル吊り具と、を備える建築用パネルとパネル吊り具のセットであって、
前記パネル吊り具は、
前記建築用パネルに取り付けられる吊り具本体と、
前記吊り具本体に対して回転可能に連結され、かつ吊り上げ手段が接続される環状部材と、を備え、
前記吊り具本体は、前記建築用パネルのうち、前記起立姿勢において前記建築用パネルの上面を構成する部分に、着脱可能に取り付けられ、
前記環状部材は、前記環状部材の内側に前記固定部材が挿し通される姿勢と、前記環状部材の外側に前記固定部材が位置する姿勢との間で、回転可能である、
建築用パネルとパネル吊り具のセット
【請求項2】
前記環状部材は、円環状である、
請求項1に記載の建築用パネルとパネル吊り具のセット
【請求項3】
前記固定部材は、
前記建築用パネルに固定された第一固定板と、
前記第一固定板に結合され、前記建築用パネルが前記起立姿勢にあるときに前記建築用パネルよりも上方に突出する第二固定板と、を備え、
前記吊り具本体は、前記第一固定板に対して着脱可能に取り付けられ、
前記構造躯体には、前記第二固定板が固定される、
請求項1又は2に記載の建築用パネルとパネル吊り具のセット
【請求項4】
前記第二固定板は、前記第一固定板にボルト接合されている、
請求項3に記載の建築用パネルとパネル吊り具のセット
【請求項5】
前記建築用パネルは、一対の金属外皮と、前記一対の金属外皮の間に位置する芯材と、を有するサンドイッチパネルである、
請求項1から4のいずれか一項に記載の建築用パネルとパネル吊り具のセット
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の建築用パネルとパネル吊り具のセット前記パネル吊り具を用いて、前記建築用パネルを前記倒伏姿勢から前記起立姿勢に至るように起こして吊り上げるパネル吊り上げ方法であって、
前記倒伏姿勢にある前記建築用パネルに前記吊り具本体を取り付け、
前記環状部材に前記吊り上げ手段を接続し、
前記吊り上げ手段で前記環状部材を吊り上げることで、前記環状部材の内側に挿し通されるように前記固定部材を位置させながら、前記建築用パネルを前記倒伏姿勢から前記起立姿勢に至るように起こし、前記建築用パネルを吊り上げる、
パネル吊り上げ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、建築用パネルとパネル吊り具のセット及びこれを用いたパネル吊り上げ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、構造躯体に固定される取付用プレートが突出するように取り付けられたパネルを、クレーン等のリフト手段で吊り上げるために使用されるパネル吊り用連結具が記載されている。パネル吊り用連結具は、取付用プレートにねじで連結される。
【0003】
パネル吊り用連結具を介してリフト手段とパネルとを連結して、リフト手段でパネルを吊り上げることで、パネルを平置き状態から起こして吊り上げることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-172346号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載のパネル吊り用連結具は、取付用プレートに連結されるものであるため、パネルを吊り上げて平置き状態から起こすときに、取付用プレートに負荷がかかり、取付用プレートがパネルに対して回転したり変形するおそれがある。この場合、取付用プレートを構造躯体に固定する前に、取付用プレートを元の状態に戻す施工が必要となる。
【0006】
また、取付用プレートにパネル吊り用連結具が連結されるため、取付用プレートを構造躯体に固定するときに、パネル吊り用連結具が邪魔になるおそれがある。
【0007】
上記事情に鑑みて、本開示は、構造躯体に固定される固定部材が突出するように取り付けられたパネルを、固定部材への干渉を抑えたうえで吊り上げることができる、建築用パネルとパネル吊り具のセット、及びこれを用いたパネル吊り上げ方法を提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る建築用パネルとパネル吊り具のセットは、構造躯体に固定される固定部材が突出するように取り付けられた建築用パネルと、前記建築用パネルを、倒伏姿勢から起立姿勢に至るように起こして吊り上げるために使用されるパネル吊り具と、を備える前記パネル吊り具は、前記建築用パネルに取り付けられる吊り具本体と、前記吊り具本体に対して回転可能に連結され、かつ吊り上げ手段が接続される環状部材と、を備える。前記吊り具本体は、前記建築用パネルのうち、前記起立姿勢において前記建築用パネルの上面を構成する部分に、着脱可能に取り付けられる。前記環状部材は、前記環状部材の内側に前記固定部材が挿し通される姿勢と、前記環状部材の外側に前記固定部材が位置する姿勢との間で、回転可能である。
【0009】
また、本開示の一態様に係るパネル吊り上げ方法は、前記のパネル吊り具を用いて、前記建築用パネルを前記倒伏姿勢から前記起立姿勢に至るように起こして吊り上げるパネル吊り上げ方法である。一態様に係るパネル吊り上げ方法では、前記倒伏姿勢にある前記建築用パネルに前記吊り具本体を取り付け、前記環状部材に前記吊り上げ手段を接続する。一態様に係るパネル吊り上げ方法では、前記吊り上げ手段で前記環状部材を吊り上げることで、前記環状部材の内側に挿し通されるように前記固定部材を位置させながら、前記建築用パネルを前記倒伏姿勢から前記起立姿勢に至るように起こし、前記建築用パネルを吊り上げる。
【発明の効果】
【0010】
本開示の一態様に係る建築用パネルとパネル吊り具のセット及びこれを用いたパネル吊り上げ方法では、構造躯体に固定される固定部材が突出するように取り付けられたパネルを、固定部材への干渉を抑えたうえで吊り上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、一実施形態のパネル吊り具を使用して吊り上げた建築用パネルを構造躯体に固定する様子を概略的に示す斜視図である。
図2図2は、同上のパネル吊り具が取り付けられた建築用パネルを示す斜視図である。
図3図3は、同上のパネル吊り具が取り付けられた建築用パネルを示す一部破断した側面図である。
図4図4A図4Bは、同上のパネル吊り具が有する環状部材が回転する様子を示す斜視図である。
図5図5は、同上のパネル吊り具を使用して建築用パネルを倒伏姿勢から起立姿勢に至るように起こして吊り上げる様子を示す側面図である。
図6図6は、同上のパネル吊り具を使用して建築用パネルを倒伏姿勢から起立姿勢に至るように起こして吊り上げる様子を示す側面図である。
図7図7は、同上の建築用パネルを構造躯体に複数取り付けて形成された壁構造の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.概要
図1に示す一実施形態のパネル吊り具1は、構造躯体2に固定される固定部材3が突出するように取り付けられた建築用パネル4を、倒伏姿勢から起立姿勢に至るように起こして吊り上げるために使用される(図5及び図6参照)。パネル吊り具1は、建築用パネル4に取り付けられる吊り具本体5と、吊り具本体5に対して回転可能に連結され、かつ吊り上げ手段6が接続される環状部材7と、を備える。吊り具本体5は、建築用パネル4のうち、起立姿勢において建築用パネル4の上面を構成する部分に、着脱可能に取り付けられる。環状部材7は、環状部材7の内側に固定部材3が挿し通される姿勢と、環状部材7の外側に固定部材3が位置する姿勢との間で、回転可能である。
【0013】
上記構成を備える一実施形態のパネル吊り具1では、吊り上げ手段6で建築用パネル4を倒伏姿勢から起立姿勢に至るように起こして吊り上げる際に、環状部材7の内側に固定部材3が挿し通されるように、環状部材7を回転させることができる。これにより、一実施形態のパネル吊り具1では、固定部材3が突出するように取り付けられた建築用パネル4を、固定部材3への干渉を抑えたうえで吊り上げることができる。
【0014】
また、一実施形態のパネル吊り上げ方法は、前記のパネル吊り具1を用いて、建築用パネル4を倒伏姿勢から起立姿勢に至るように起こして吊り上げるパネル吊り上げ方法である。このパネル吊り上げ方法では、建築用パネル4が倒伏姿勢にあるときに、建築用パネル4に吊り具本体5を取り付け、環状部材7に吊り上げ手段6を接続する。このパネル吊り上げ方法では、吊り上げ手段6で環状部材7を吊り上げることで、環状部材7の内側に挿し通されるように固定部材3を位置させながら、建築用パネル4を倒伏姿勢から起立姿勢に至るように起こし、建築用パネル4を吊り上げる。
【0015】
上記構成を備える一実施形態のパネル吊り上げ方法では、環状部材7の内側に挿し通されるように固定部材3を位置させながら、建築用パネル4を倒伏姿勢から起立姿勢に至るように起こし、建築用パネル4を吊り上げることができる。そのため、一実施形態のパネル吊り上げ方法では、固定部材3が突出するように取り付けられた建築用パネル4を、固定部材3への干渉を抑えたうえで吊り上げることができる。
【0016】
2.詳細
続いて、図1から図6に示す一実施形態のパネル吊り具1及びこれを用いたパネル吊り上げ方法について更に詳しく説明する。
【0017】
以下では、図1に示す起立姿勢にある建築用パネル4に対して構造躯体2が位置する側を後方とし、その反対側を前方として、各構成について詳しく説明する。また、以下では、建築用パネル4の前面に沿った水平方向を左右方向とし、鉛直方向を上下方向とする。
【0018】
2-1.構造躯体
構造躯体2は、ビル等の建築物の骨組みである。構造躯体2は、梁20と、梁20の上に設置された床スラブ21と、床スラブ21の前端部の上に固定された横架材22と、を有する。本実施形態では、梁20は、H形鋼である。横架材22は、左右方向に沿った長手方向を有する。横架材22は、本実施形態では、長手方向に直交する断面形状がL字状のアングル材である。横架材22の縦片220に、建築用パネル4に取り付けた固定部材3が溶接、ボルト、ねじ等の適宜の固定手段で固定される。縦片220の長手方向の一部の前面には、側面視L字状の受け部材23が溶接等で固定されている。
【0019】
図7には、建築用パネル4を構造躯体2に複数取り付けて形成した壁構造の一例が示されている。構造躯体2は、上下方向に距離をおいて位置する複数の横架材22を有する。上下に並ぶ二つの横架材22の間隔は、建築用パネル4の上下長さに対応している。
【0020】
2-2.建築用パネル
建築用パネル4は、構造躯体2の横架材22に固定されて建物の壁を形成するパネルである。本実施形態では、建築用パネル4は、図1図2及び図3に示すように、一対の金属外皮40,41と、一対の金属外皮40,41の間に位置する芯材42と、を有するサンドイッチパネルである。以下では、起立姿勢の建築用パネル4を基準にして、建築用パネル4の各構成について説明する。
【0021】
建築用パネル4は、矩形板状である。建築用パネル4は、上下方向と平行な長手方向と、左右方向と平行な短手方向と、前後方向と平行な厚み方向とを有する。建築用パネル4は、例えば、上下方向の長さが、0.5~6.0mであり、左右方向の長さ(幅)が、0.3~1.5mであり、前後方向の長さ(厚み)が、30~150mmである。
【0022】
芯材42は、断熱性を有する本体部と、本体部の左右の端部に配置され、本体部よりも耐火性の高い耐火部とを含む。本体部は、例えば、ロックウールやグラスウールなどの繊維状無機材をバインダー等で固めた複数のブロック体を1枚の矩形板状に並べたものである。耐火部は、例えば、石膏ボードや、珪酸カルシウムボードであり、本体部の左右の端部に設けた凹部内に配置される。なお、芯材42の本体部は、ウレタンフォーム、フェノールフォーム等の発泡系の有機材で形成されてもよいし、スチレンボード、ウレタンボード等であってもよい。
【0023】
一対の金属外皮40,41のそれぞれは、金属板をロール加工やプレス加工などにより所望の形状に成形することによって得られる。金属板は、例えば、厚みが0.25~2.0mmである。金属板は、塗装鋼板、亜鉛めっき鋼板、アルミニウム-亜鉛合金めっき鋼板、ガルバリウム鋼板(登録商標)、エスジーエル(登録商標)鋼板等であるが、これらに限定されない。
【0024】
一対の金属外皮40,41のうち、前側に位置する金属外皮40は、後側に向けて開口した矩形の箱状である。金属外皮40は、芯材42の前面を覆う矩形板状の本体部400と、芯材42の上面の前側の部分を覆う上壁部401と、芯材42の下面の前側の部分を覆う下壁部と、芯材42の左右の側面の前側の部分を覆う左右の側壁部402と、を有する。
【0025】
一対の金属外皮40,41のうち、後側に位置する金属外皮41は、芯材42の後面を覆う矩形板状の本体部410と、芯材42の左右の側面の後側の部分を覆う左右の側壁部411と、を有する。なお、金属外皮41は、芯材42の上面や下面を覆う部分を有さない。
【0026】
金属外皮40,41のそれぞれは、本体部400,410が芯材42の前後の面に接着されて、芯材42と一体化している。建築用パネル4には、固定部材3と第二固定部材8が取り付けられる。
【0027】
固定部材3は、建築用パネル4に固定された第一固定板30と、第一固定板30に結合され、建築用パネル4が起立姿勢にあるときに建築用パネル4よりも上方に突出する第二固定板31と、を備える。パネル吊り具1の吊り具本体5は、第一固定板30に対して着脱可能に取り付けられ、構造躯体2には、第二固定板31が固定される。本実施形態では、第二固定板31は、第一固定板30にボルト接合されている。
【0028】
第一固定板30は、側面視L字状の部材である。第一固定板30は、例えば、金属外皮40,41よりも厚みの大きい鋼板を折り曲げて形成される。第一固定板30は、建築用パネル4の後面に沿う第一片部30aと、第一片部30aの上端部から前方に延長され、建築用パネル4の上面に沿う第二片部30bと、を有する。第一片部30aと第二片部30bのそれぞれは、矩形板状である。第一片部30aは、建築用パネル4の金属外皮41の本体部410の上端部にビス等の固定具(図示せず)で固定されている。第二片部30bは、その前端部が建築用パネル4の金属外皮40の上壁部401にビス等の固定具(図示せず)で固定されている。
【0029】
第一片部30aには、第二固定板31を第一固定板30に対してボルト結合するためのボルト32が結合される固定孔300が設けられている。ボルト32は、本実施形態では、片面側から締結することができるワンサイドボルトである。第二片部30bには、吊り具本体5を取り付けるための取付孔301が設けられている。取付孔301は、第二片部30bを上下方向(厚み方向)に貫通している。
【0030】
第二固定板31は、矩形板状である。第二固定板31は、例えば、金属外皮40,41よりも厚みの大きい鋼板で形成される。第二固定板31は、その下部にボルト32が挿入される挿入孔310が設けられている。挿入孔310は、上下方向の長さが左右方向の長さよりも長い長孔である。第二固定板31は、第二固定板31の下部が第一固定板30の第一片部30aにボルト32で固定され、第二固定板31の上部が建築用パネル4の上面よりも上方に突出している。第二固定板31は、第一固定板30の第二片部30bよりも上方に位置する突出部分311が、構造躯体2の横架材22に固定される部分である。ボルト32は、建築用パネル4の金属外皮41の本体部410を貫通して、その先端部が芯材42に埋め込まれる。
【0031】
本実施形態では、固定部材3は、左右方向に距離をおいて位置する左右一対の第一固定板30と、左右一対の第一固定板30のそれぞれにボルト接合される左右一対の第二固定板31と、を有する。左右一対の第一固定板30は、建築用パネル4の左右方向の中心から同じ距離だけ離れて配置されている。
【0032】
第二固定部材8は、図2に示すように、建築用パネル4に固定された固定板80と、固定板80にボルト81で取り付けられた取付板82と、を有する。ボルト81は、本実施形態では、片面側から締結することができるワンサイドボルトである。本実施形態では、第二固定部材8は、左右方向に距離をおいて位置する三つの固定板80と、三つの固定板80のうち左右の端に位置する二つの固定板80にボルト接合された二つの取付板82と、を有する。三つの固定板80のうち、左右両端に位置する二つの固定板80は、左右方向における位置が、左右一対の第一固定板30と同じである。三つの固定板80のうち、左右方向の中央に位置する固定板80は、建築用パネル4の左右方向の中央に位置している。
【0033】
固定板80は、側面視L字状の部材である。固定板80は、例えば、金属外皮40,41よりも厚みの大きい鋼板を折り曲げて形成される。固定板80は、建築用パネル4の後面に沿う第一片部80aと、第一片部80aの下端部から前方に延長され、建築用パネル4の下面に沿う第二片部80b(図5参照)と、を有する。第一片部80aと第二片部80bのそれぞれは、矩形板状である。第一片部80aは、建築用パネル4の金属外皮41の本体部410の下端部にビス等の固定具(図示せず)で固定されている。第二片部80bは、その前端部が建築用パネル4の金属外皮40の下壁部にビス等の固定具(図示せず)で固定されている。第一片部80aには、ボルト81が結合される固定孔(図示せず)が設けられている。
【0034】
取付板82は、側面視Z字状の部材である。取付板82は、例えば、金属外皮40,41よりも厚みの大きい鋼板を折り曲げて形成される。取付板82は、矩形板状のパネル固定部820と、パネル固定部820の下端部に連続し、パネル固定部820に対して傾いた矩形板状の連結部821と、連結部821の下端部に連続する矩形板状の引っ掛け部822と、を有する。パネル固定部820には、ボルト81が挿入される挿入孔が設けられている。
【0035】
パネル固定部820は、ボルト81によって、固定板80の第一片部80aに仮止め又は固定される部分である。ボルト81は、パネル固定部820を固定板80の第一片部80aに固定した状態で、建築用パネル4の金属外皮41の本体部410を貫通して、その先端部が芯材42に埋め込まれる。引っ掛け部822は、固定板80の第一片部80aから後方に離れて位置する。固定板80の第一片部80aと連結部821と引っ掛け部822とは、下方に向けて開口した挿入溝823を囲んで形成する。
【0036】
2-3.パネル吊り具
パネル吊り具1は、図3図4A及び図4Bに示すように、建築用パネル4に取り付けられる吊り具本体5と、吊り具本体5に対して回転可能に連結され、かつ吊り上げ手段6が接続される環状部材7と、を備える。吊り具本体5は、建築用パネル4のうち、起立姿勢において建築用パネル4の上面を構成する部分に、着脱可能に取り付けられる。なお、図4A及び図4Bには、倒伏姿勢にある建築用パネル4に取り付けられたパネル吊り具1が示されている。
【0037】
図3に示すように、吊り具本体5は、固定部材3の第一固定板30の取付孔301に挿入される軸部50と、環状部材7が回転可能に連結されるリング状の連結部51とを有する。軸部50は、取付孔301に対して着脱可能に設けられている。
【0038】
本実施形態では、吊り具本体5は、軸部50の先端部分の径を拡縮させる機構を有する。施工者は、この機構を操作することで、軸部50の先端部分の径が取付孔301の径よりも大きい取付状態と、軸部50の先端部分の径が取付孔301の径よりも小さい取り外し状態とに切り替え可能である。
【0039】
なお、軸部50を取付孔301に対して着脱可能とするための構造は、従来周知の構造が採用可能である。例えば、軸部50は、その外周面にねじ溝が設けられてもよく、この場合、取付孔301の内周面にはねじ溝が設けられる。
【0040】
連結部51は、その内側の孔が、左右方向に開口している。連結部51に連結された環状部材7は、連結部51に連結された部分を中心にして、左右方向と平行な軸周りに回転する。
【0041】
図4A及び図4Bに示すように、環状部材7は、その周方向の全長にわたって連続し、切れ目を有さない形状である。本実施形態では、環状部材7は、円環状である。環状部材7は、例えば、SUS304等のステンレス鋼材で形成される。
【0042】
環状部材7は、連結部51に連結された部分を中心にして、左右方向と平行な軸周りに回転したときに、固定部材3の第二固定板31の突出部分311を挿し通すことが可能な寸法を有する。環状部材7の寸法は、環状部材7の回転軸の位置を決める連結部51と突出部分311との位置関係等に応じて適宜設定される。環状部材7は、例えば、内径が190mm程度で、外径が200mm程度である。環状部材7は、吊り上げ手段6によって建築用パネル4を吊り上げるときに、変形しにくい強度を有する。
【0043】
環状部材7は、吊り具本体5の連結部51に対して、回転自在に連結されている。環状部材7は、例えば図4Bに示すような、環状部材7の内側に固定部材3が挿し通される姿勢と、例えば図4Aに示すような、環状部材7の外側に固定部材3が位置する姿勢との間で、回転可能である。
【0044】
環状部材7に接続される吊り上げ手段6は、クレーン等の吊り上げ装置(図示せず)と、吊り上げ装置と環状部材7とを連結するワイヤー、スリング等の連結部材60とを有する。連結部材60は、本実施形態では、ベルトスリングである。
【0045】
3.パネル吊り上げ方法
続いて、上述したパネル吊り具1を用いて、建築用パネル4を倒伏姿勢から起立姿勢に至るように起こして吊り上げる方法の一例について説明する。
【0046】
建築用パネル4は、図5に示すように、構造躯体2への施工前の状態では、倒伏姿勢で施工現場の台、床、地面等の作業スペースに置かれている。建築用パネル4は、起立姿勢における上面が前方を向き、起立姿勢における前面が下方を向くように、倒伏している。なお、建築用パネル4は、施工現場にて、倒伏姿勢で上下方向に複数枚積み重なった状態で、置かれることもある。
【0047】
まず、倒伏姿勢にある建築用パネル4に、固定部材3と第二固定部材8を取り付ける。固定部材3は、第一固定板30の第一片部30aと第二片部30bのそれぞれを建築用パネル4の上面と前面(倒伏姿勢における後面と上面)にビス等の固定具で固定する。そして、第一固定板30の第一片部30aに第二固定板31の後部(倒伏姿勢における下部)をボルト32で固定する。第二固定部材8は、固定板80の第一片部80aと第二片部80bのそれぞれを建築用パネル4の上面と後面(倒伏姿勢における後面と下面)にビス等の固定具で固定する。そして、固定板80の第一片部80aに取付板82のパネル固定部820をボルト81で固定する。建築用パネル4には、図2に示すように、固定部材3と第二固定部材8が取り付けられる。
【0048】
次いで、図5に示すように、第一固定板30の第二片部30bにパネル吊り具1の吊り具本体5を取り付ける。このとき、図3に示すように、第二片部30bの取付孔301に吊り具本体5の軸部50を挿入して、吊り具本体5を第二片部30bに対して固定する。
【0049】
次いで、図5の二点鎖線で示すように、パネル吊り具1の連結部51に連結された環状部材7と、吊り上げ手段6の吊り上げ装置とを、連結部材60で連結する。
【0050】
次いで、吊り上げ手段6によって環状部材7を吊り上げて、環状部材7の外側に固定部材3の第二固定板31が位置する姿勢(図5の二点鎖線及び図4A参照)から、環状部材7の内側に固定部材3の第二固定板31の突出部分311が挿し通される姿勢(図5の実線部分及び図4B参照)へと、環状部材7を回転させる。
【0051】
次いで、図6に示すように、吊り上げ手段6によって環状部材7を更に吊り上げて、建築用パネル4の後端部を中心に建築用パネル4の前端部が上方へ移動するように建築用パネル4を回転させて、建築用パネル4を図5に示す倒伏姿勢から図6の実線で示す起立姿勢に至るように起こす。この姿勢を切り換える間に、本実施形態のパネル吊り具1では、環状部材7の内側に固定部材3の第二固定板31の突出部分311が挿し通ることで、環状部材7及び連結部材60が固定部材3に当たることを抑制することができる。
【0052】
次いで、吊り上げ手段6によって環状部材7を更に吊り上げて、起立姿勢の建築用パネル4を起立姿勢のまま吊り上げる。
【0053】
上述のように吊り上げ手段6で環状部材7を吊り上げることで、建築用パネル4を倒伏姿勢から起立姿勢へと起こして、起立姿勢の建築用パネル4を吊り上げることができる。
【0054】
続いて、起立姿勢にある建築用パネル4を構造躯体2に対して取り付ける方法の一例について説明する。
【0055】
まず、吊り上げ手段6で環状部材7を吊り上げながら、起立姿勢の建築用パネル4を構造躯体2への固定箇所まで水平移動させる。
【0056】
次いで、図7に示すように、建築用パネル4の第二固定部材8の左右両端の固定板80にボルト81で仮止めされた左右の取付板82を、構造躯体2の下側の横架材22の縦片220に引っ掛け、建築用パネル4の固定部材3の第二固定板31の突出部分311を、上側の横架材22の縦片220に当てる。このとき、建築用パネル4の第二固定部材8の左右方向の中央に位置する固定板80は、下側の横架材22に固定された受け部材23に載り、建築用パネル4の自重は受け部材23によって支持される。
【0057】
次いで、図1に示すように、吊り上げ手段6によって起立姿勢の建築用パネル4を吊り上げた状態のまま、第二固定板31の突出部分311を、上側の横架材22の縦片220に溶接等で固定する。
【0058】
上述のように施工することで、構造躯体2の上下の横架材22に対して建築用パネル4が取り付けられる。上下の横架材22への建築用パネル4の取り付けが終わった後、パネル吊り具1の吊り具本体5を第一固定板30から取り外す。このとき、吊り具本体5の軸部50を第一固定板30の取付孔301から引き抜くことで、吊り具本体5は第一固定板30、つまり、建築用パネル4から取り外される。
【0059】
上述した施工方法により、複数の建築用パネル4を構造躯体2の横架材22に対して取り付けることで、例えば、図7に示す壁構造を形成することができる。図7において、上下又は左右に隣接する建築用パネル4間には、耐火用の目地材9が配置されている。
【0060】
各建築用パネル4の第二固定部材8の仮止め状態の左右の取付板82は、固定板80との間に、下側の横架材22の縦片220と、下側に設置されている他の建築用パネル4の第二固定板31の突出部分311とが位置する状態で、ボルト81に更にねじ締めする。これにより、各建築用パネル4の第二固定部材8の左右の取付板82と固定板80との間に、下側の横架材22の縦片220と、下側に設置されている他の建築用パネル4の第二固定板31の突出部分311とが挟み込まれて、各建築用パネル4の下端部が下側の横架材22に対して固定される。
【0061】
4.作用効果
以上説明した本実施形態のパネル吊り具1では、図5及び図6に示すように、吊り上げ手段6によって倒伏姿勢にある建築用パネル4を吊り上げる際に、建築用パネル4から突出する固定部材3の突出部分311が、パネル吊り具1の環状部材7の内側に挿し通りながら、建築用パネル4が起立姿勢へと起きる。
【0062】
そのため、本実施形態のパネル吊り具1では、固定部材3の第二固定板31の突出部分311にパネル吊り具1や吊り上げ手段6の連結部材60が接触することを抑制できて、第二固定板31が第一固定板30に対して回転したり、第二固定板31がその厚み方向に変形したりすることを抑制することができる。
【0063】
これにより、本実施形態のパネル吊り具1では、固定部材3が突出するように取り付けられた建築用パネル4を、固定部材3への干渉を抑えたうえで、吊り上げることができる。
【0064】
また、本実施形態のパネル吊り具1では、環状部材7が円環状であるため、環状部材7がその周方向にずれても、固定部材3に対する環状部材7の形状が一定であるため、環状部材7の内側に固定部材3を挿し通しやすくて、固定部材3への干渉を抑えやすい。
【0065】
また、本実施形態のパネル吊り具1は、構造躯体2に固定される第二固定板31とは別の部材である第一固定板30に取り付けられるため、構造躯体2に第二固定板31を固定する際に、パネル吊り具1が邪魔になりにくい。
【0066】
また、本実施形態のパネル吊り具1では、建築用パネル4の一対の金属外皮40,41を連結する第一固定板30に吊り具本体5が装着される。そのため、本実施形態のパネル吊り具1では、建築用パネル4を吊り上げる際に、一対の金属外皮40,41のうち一方にだけ負荷がかかって、芯材42から剥がれ落ちることを防ぐことができる。
【0067】
また、本実施形態のパネル吊り具1は、一対の金属外皮40,41を連結する肉厚の第一固定板30に、吊り具本体5を取り付けることができるため、建築用パネル4に直接取り付ける場合に比べて、取付強度が確保しやすい。
【0068】
また、本実施形態のパネル吊り具1では、第二固定板31の突出部分311に対してL字をなすように並んだ第一固定板30の第二片部30bに吊り具本体5が装着されるため、環状部材7を突出部分311に対して極力近付けて配置することができる。そのため、本実施形態のパネル吊り具1では、環状部材7の径を、突出部分311を挿し通すことが可能な範囲で極力小さく抑えることができる。
【0069】
5.変形例
以上説明した本実施形態のパネル吊り具1及びこれを用いたパネル吊り上げ方法の変形例について説明する。
【0070】
吊り具本体5は、建築用パネル4のうち、起立姿勢において建築用パネル4の上面を構成する部分に、着脱可能に取り付けられ、かつ環状部材7が回転可能に連結されるように構成されたものであればよく、図3等に示す形状のものに限定されない。例えば、吊り具本体5は、リング状の頭部と、ねじ溝が外周面に設けられた軸部とを有するアイボルトであってもよく、この場合、第一固定板30の取付孔301にはその内周面にねじ溝が設けられる。また、吊り具本体5は、アイボルトに限らず、その他の、リング状の連結部と、ねじ溝が外周面に設けられた軸部とを有する部材であってもよい。なお、吊り具本体5は、第一固定板30の第二片部30bに着脱可能であればよく、軸部を有さず、その他の着脱可能な構造を有してもよい。
【0071】
吊り具本体5は、建築用パネル4のうち、起立姿勢において建築用パネル4の上面を構成する部分に着脱可能に取り付けられればよい。すなわち、吊り具本体5は、建築用パネル4の上面に間接的に、つまり第一固定板30の第二片部30bを介して取り付けられるのではなく、建築用パネル4の上面に直接取り付けられてもよい。
【0072】
環状部材7は、円環状に限らず、楕円、三角形、矩形等、その他の形状の環状であってもよい。
【0073】
固定部材3は、建築用パネル4から上方に突出するように建築用パネル4に取り付けられたものであればよく、図3等に示す構造のものに限定されない。例えば、固定部材3は、第一固定板30を有さず、第二固定板31のみで構成されるものであってもよい。また、固定部材3は、第一固定板30と第二固定板31の二部材から構成されるものに限らず、例えばT字状に設けられた一部材で構成されてもよい。
【0074】
また、固定部材3は、第二固定板31が第一固定板30にボルト接合されたものに限らず、第二固定板31が第一固定板30に溶接されたものであってもよい。
【0075】
また、建築用パネル4における固定部材3と第二固定部材8の左右方向における配置は、図3に示す配置に限定されない。例えば、固定部材3の左右の第一固定板30は、建築用パネル4の左右方向の中心から互いに異なる距離離れて配置されてもよい。
【0076】
建築用パネル4は、一対の金属外皮40,41とその間に位置する芯材42とを有するサンドイッチパネルに限定されない。建築用パネル4は、ALC(autoclaved lightweight concrete)パネル、窯業系のパネル、金属サイディング材、木製のパネル等であってもよい。
【0077】
また、建築用パネル4は、固定部材3のみが取り付けられ、第二固定部材8が取り付けられないものであってもよい。
【0078】
また、起立姿勢にある建築用パネル4を構造躯体2に対して取り付ける方法は、上記の方法に限定されない。例えば、第二固定板31の突出部分311を、上側の横架材22の縦片220に溶接等で固定する工程は、パネル吊り具1の吊り具本体5を第一固定板30から取り外した後、行ってもよい。また、各建築用パネル4の第二固定部材8の左右の取付板82と固定板80との間には、下側に他の建築用パネル4が存在しない場合、突出部分311を挟み込まずに下側の横架材22の縦片220のみを挟み込み、これにより、各建築用パネル4の下端部を下側の横架材22に対して固定してもよい。
【0079】
6.まとめ
以上説明した一実施形態及びその変形例のように、第一態様のパネル吊り具(1)は、下記の構成を備える。
【0080】
すなわち、第一態様のパネル吊り具(1)は、構造躯体(2)に固定される固定部材(3)が突出するように取り付けられた建築用パネル(4)を、倒伏姿勢から起立姿勢に至るように起こして吊り上げるために使用される。パネル吊り具(1)は、建築用パネル(4)に取り付けられる吊り具本体(5)と、吊り具本体(5)に対して回転可能に連結され、かつ吊り上げ手段(6)が接続される環状部材(7)と、を備える。吊り具本体(5)は、建築用パネル(4)のうち、起立姿勢において建築用パネル(4)の上面を構成する部分に、着脱可能に取り付けられる。環状部材(7)は、環状部材(7)の内側に固定部材(3)が挿し通される姿勢と、環状部材(7)の外側に固定部材(3)が位置する姿勢との間で、回転可能である。
【0081】
上記構成を備える第一態様のパネル吊り具(1)では、吊り上げ手段(6)で建築用パネル(4)を倒伏姿勢から起立姿勢に至るように起こして吊り上げる際に、環状部材(7)の内側に固定部材(3)が挿し通されるように、環状部材(7)を回転させることができる。これにより、第一態様のパネル吊り具(1)では、固定部材(3)が突出するように取り付けられた建築用パネル(4)を、固定部材(3)への干渉を抑えたうえで吊り上げることができる。
【0082】
また、上述した一実施形態及びその変形例のように、第二態様のパネル吊り具(1)は、第一態様のパネル吊り具(1)の構成に加えて、下記の構成を付加的に備える。
【0083】
すなわち、第二態様のパネル吊り具(1)では、環状部材(7)は、円環状である。
【0084】
上記構成を備えることで、第二態様のパネル吊り具(1)では、環状部材(7)がその周方向にずれても、固定部材(3)に対する環状部材(7)の形状が一定であるため、環状部材(7)の内側に固定部材(3)を挿し通しやすくて、固定部材(3)への干渉を抑えやすい。
【0085】
また、上述した一実施形態及びその変形例のように、第三態様のパネル吊り具(1)は、第一又は第二態様のパネル吊り具(1)の構成に加えて、下記の構成を付加的に備える。
【0086】
すなわち、第三態様のパネル吊り具(1)では、固定部材(3)は、建築用パネル(4)に固定された第一固定板(30)と、第一固定板(30)に結合され、建築用パネル(4)が起立姿勢にあるときに建築用パネル(4)よりも上方に突出する第二固定板(31)と、を備える。吊り具本体(5)は、第一固定板(30)に対して着脱可能に取り付けられ、構造躯体(2)には、第二固定板(31)が固定される。
【0087】
上記構成を備える第三態様のパネル吊り具(1)では、建築用パネル(4)に固定された第一固定板(30)を利用して、建築用パネル(4)に吊り具本体(5)を取り付けることができる。また、第三態様のパネル吊り具(1)では、この第一固定板(30)とは別の部材である第二固定板(31)を、構造躯体(2)に固定することができる。そのため、第三態様のパネル吊り具(1)では、建築用パネル(4)に取り付けた固定部材(3)を構造躯体(2)に固定する際に、吊り具本体(5)が邪魔になりにくい。
【0088】
また、上述した一実施形態及びその変形例のように、第四態様のパネル吊り具(1)は、第三態様のパネル吊り具(1)の構成に加えて、下記の構成を付加的に備える。
【0089】
すなわち、第四態様のパネル吊り具(1)では、第二固定板(31)は、第一固定板(30)にボルト接合されている。
【0090】
上記構成を備える第四態様のパネル吊り具(1)では、第一固定板(30)にボルト接合されている第二固定板(31)が、環状部材(7)や環状部材(7)に接続された吊り上げ手段(6)に当たって回転することを抑制でき、この回転を元に戻す施工を省略することができる。
【0091】
また、上述した一実施形態及びその変形例のように、第五態様のパネル吊り具(1)は、第一から第四態様のいずれか一つの態様のパネル吊り具(1)の構成に加えて、下記の構成を付加的に備える。
【0092】
すなわち、第五態様のパネル吊り具(1)では、建築用パネル(4)は、一対の金属外皮(40,41)と、一対の金属外皮(40,41)の間に位置する芯材(42)と、を有するサンドイッチパネルである。
【0093】
上記構成を備える第五態様のパネル吊り具(1)では、サンドイッチパネルのうち、起立姿勢における上面を構成する部分を吊り上げることができて、サンドイッチパネルの一対の金属外皮(40,41)の表面に傷が付くことを抑制しやすい。
【0094】
また、上述した一実施形態及びその変形例のように、第六態様のパネル吊り上げ方法は、第一から第五態様のいずれか一つの態様のパネル吊り具(1)を用いて、建築用パネル(4)を倒伏姿勢から起立姿勢に至るように起こして吊り上げるパネル吊り上げ方法である。このパネル吊り上げ方法では、倒伏姿勢にある建築用パネル(4)に吊り具本体(5)を取り付け、環状部材(7)に吊り上げ手段(6)を接続する。このパネル吊り上げ方法では、吊り上げ手段(6)で環状部材(7)を吊り上げることで、環状部材(7)の内側に挿し通されるように固定部材(3)を位置させながら、建築用パネル(4)を倒伏姿勢から起立姿勢に至るように起こし、建築用パネル(4)を吊り上げる。
【0095】
上記構成を備える第六態様のパネル吊り上げ方法では、環状部材(7)の内側に挿し通されるように固定部材(3)を位置させながら、建築用パネル(4)を倒伏姿勢から起立姿勢に至るように起こして、建築用パネル(4)を吊り上げることができる。そのため、第六態様のパネル吊り上げ方法では、固定部材(3)が突出するように取り付けられた建築用パネル(4)を、固定部材(3)への干渉を抑えたうえで吊り上げることができる。
【0096】
以上、本開示を添付図面に示す実施形態に基づいて説明したが、本開示は上記の各実施形態に限定されるものではなく、本開示の意図する範囲内であれば、適宜の設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0097】
1 パネル吊り具
2 構造躯体
3 固定部材
30 第一固定板
31 第二固定板
4 建築用パネル
40 金属外皮
41 金属外皮
42 芯材
5 吊り具本体
6 吊り上げ手段
7 環状部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7