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特許7349223目地幅調整治具及びこれを用いた目地幅調整方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-13
(45)【発行日】2023-09-22
(54)【発明の名称】目地幅調整治具及びこれを用いた目地幅調整方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/18 20060101AFI20230914BHJP
   E04F 21/18 20060101ALI20230914BHJP
【FI】
E04G21/18 C
E04F21/18 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019186383
(22)【出願日】2019-10-09
(65)【公開番号】P2021059954
(43)【公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-10-03
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 ・2018年10月22日~2018年10月26日 日鉄鋼板株式会社西日本製造所(湖南地区)内 施工実験棟にて公開
(73)【特許権者】
【識別番号】000207436
【氏名又は名称】日鉄鋼板株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504082025
【氏名又は名称】株式会社イング
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 極
(72)【発明者】
【氏名】永木 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】田中 悦二
【審査官】沖原 有里奈
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-185149(JP,A)
【文献】特開2012-172347(JP,A)
【文献】特開平10-196124(JP,A)
【文献】実開昭51-137907(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/14-21/22
E04F 21/18
E04B 2/56-2/70
E04B 1/348
E04F 13/00-13/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造躯体の一部を構成する横架材に対してその長手方向にスライド可能に係止されるパネルと、このパネルに隣接した位置で固定された固定パネルとの間の目地幅を調整するための目地幅調整治具であって、
前記横架材に係止される係止部と、
前記係止部を前記横架材に固定し、かつ固定を解除することのできる固定操作部と、
前記パネルのうち前記固定パネルとは反対側を向く側面に当てられる押圧部と、
前記押圧部を前記横架材の長手方向にスライド移動させることのできるスライド操作部と、を備える、
目地幅調整治具。
【請求項2】
前記固定操作部は、
前記横架材に対して接離するように、前記係止部に取り付けられた固定用ボルトと、
前記固定用ボルトに連結された操作レバーと、を有する、
請求項1に記載の目地幅調整治具。
【請求項3】
前記スライド操作部は、
前記係止部に取り付けられ、前記横架材の長手方向に移動可能なボルトを有し、
前記ボルトは、回転操作される頭部と、前記押圧部に回転自在に連結された軸部と、を含む、
請求項1又は2に記載の目地幅調整治具。
【請求項4】
前記押圧部は、
前記スライド操作部によってスライド移動される本体部と、
前記本体部に取り付けられた少なくとも一つのパネル受け部と、を有し、
前記少なくとも一つのパネル受け部は、前記パネルの前記側面に当たる受け面を有する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の目地幅調整治具。
【請求項5】
前記少なくとも一つのパネル受け部は、前記パネルの厚み方向に距離をあけて位置する第一パネル受け部と第二パネル受け部であり、
前記本体部と前記第一パネル受け部と前記第二パネル受け部との間には、スペースが設けられている、
請求項4に記載の目地幅調整治具。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の目地幅調整治具を用いて、前記パネルと前記固定パネルとの間の前記目地幅を調整する目地幅調整方法であって、
前記横架材に前記係止部を引っ掛け、
前記固定操作部を操作して、前記係止部を前記横架材に固定し、
前記スライド操作部を操作して、前記押圧部を前記横架材の前記長手方向にスライド移動させることで、前記押圧部で前記パネルを押圧して前記パネルをスライド移動させて、前記パネルと前記固定パネルとの間の前記目地幅を調整する、
目地幅調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、パネル間の目地幅を調整する目地幅調整治具及びこれを用いた目地幅調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、壁下地を構成する水平方向に長い取付枠材に、複数の建築用パネルを固定した固定構造が、記載されている。
【0003】
複数の建築用パネルのそれぞれには、係止金具が取り付けられており、複数の建築用パネルのそれぞれは、係止金具を取付枠材に係止させることで、取付枠材に支持され、この係止状態で、溶接またはねじ具で取付枠材に固定される。
【0004】
この固定構造では、複数の建築用パネルは、隣接する二枚の建築用パネルが、側面に設けられた突条部同士が突き合わさる状態で、配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-043742号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に記載の固定構造では、複数の建築用パネルは、隣接する二枚の建築用パネル間の目地幅が、同じ幅又は任意の幅となるように配置することが好ましい。
【0007】
上記事情に鑑みて、本開示は、パネル間の目地幅の調整がしやすい目地幅調整治具及びこれを用いた目地幅調整方法を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る目地幅調整治具は、構造躯体の一部を構成する横架材に対してその長手方向にスライド可能に係止されるパネルと、このパネルに隣接した位置で固定された固定パネルとの間の目地幅を調整するための目地幅調整治具である。一態様に係る目地幅調整治具は、前記横架材に係止される係止部と、前記係止部を前記横架材に固定し、かつ固定を解除することのできる固定操作部と、前記パネルのうち前記固定パネルとは反対側を向く側面に当てられる押圧部と、前記押圧部を前記横架材の長手方向にスライド移動させることのできるスライド操作部と、を備える。
【0009】
また、本開示の一態様に係る目地幅調整方法は、前記目地幅調整治具を用いて、前記パネルと前記固定パネルとの間の前記目地幅を調整する目地幅調整方法である。一態様に係る目地幅調整方法は、前記横架材に前記係止部を引っ掛け、前記固定操作部を操作して、前記係止部を前記横架材に固定し、前記スライド操作部を操作して、前記押圧部を前記横架材の前記長手方向にスライド移動させることで、前記押圧部で前記パネルを押圧して前記パネルをスライド移動させて、前記パネルと前記固定パネルとの間の前記目地幅を調整する。
【発明の効果】
【0010】
本開示の一態様に係る目地幅調整治具及びこれを用いた目地幅調整方法では、パネル間の目地幅の調整がしやすい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、一実施形態の目地幅調整治具を用いてパネル間の目地幅を調整する様子を示す一部破断した平面図である。
図2図2は、同上の目地幅調整治具を示す斜視図である。
図3図3は、同上の目地幅調整治具を拡大して示す一部破断した平面図である。
図4図4は、同上の目地幅調整治具を示す側面図である。
図5図5は、同上の目地幅調整治具を示す正面図である。
図6図6は、同上の目地幅調整治具によって目地幅が調整されるパネルの一例を示す斜視図である。
図7図7A図7Bは、同上のパネルの側端部を示す平断面図である。
図8図8は、同上のパネルを示す側断面図である。
図9図9A図9B図9Cは、同上の目地幅調整治具を用いてパネル間の目地幅を調整する様子を順に示す平面図である。
図10図10は、同上の目地幅調整治具を用いてパネル間の目地幅が調整された壁構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.概要
図1に示す一実施形態の目地幅調整治具1は、構造躯体の一部を構成する横架材2に対してその長手方向にスライド可能に係止されるパネル3と、このパネル3に隣接した位置で固定された固定パネル4との間の目地幅を調整するための目地幅調整治具である。目地幅調整治具1は、横架材2に係止される係止部5と、係止部5を横架材2に固定し、かつ固定を解除することのできる固定操作部6と、パネル3のうち固定パネル4とは反対側を向く側面30に当てられる押圧部7と、押圧部7を横架材2の長手方向にスライド移動させることのできるスライド操作部8と、を備える。
【0013】
上記構成を備えることで、一実施形態の目地幅調整治具1では、横架材2にスライド可能に係止されたパネル3の側方において、係止部5を横架材2に係止させた状態で、固定操作部6を操作することで、係止部5を横架材2に固定することができる。その後、一実施形態の目地幅調整治具1では、スライド操作部8を操作することで、押圧部7をスライド移動させて、押圧部7によってパネル3を押圧してパネル3をスライド移動させることができ、パネル3と固定パネル4との間の目地幅を調整することができる。このように一実施形態の目地幅調整治具1では、固定操作部6の操作と、スライド操作部8の操作の二つの操作で、パネル3をスライド移動させることができるため、パネル3と固定パネル4との間の目地幅の調整がしやすい。
【0014】
また、一実施形態の目地幅調整方法は、上述した目地幅調整治具1を用いて、パネル3と固定パネル4との間の目地幅を調整する目地幅調整方法である。この目地幅調整方法では、横架材2に係止部5を引っ掛け、固定操作部6を操作して、係止部5を横架材2に固定し、スライド操作部8を操作して、押圧部7を横架材2の長手方向にスライド移動させることで、押圧部7でパネル3を押圧してパネル3をスライド移動させて、パネル3と固定パネル4との間の目地幅を調整する。
【0015】
上記構成を備える一実施形態の目地幅調整方法では、目地幅調整治具1の固定操作部6の操作と、スライド操作部8の操作の二つの操作で、パネル3をスライド移動させることができて、パネル3と固定パネル4との間の目地幅の調整がしやすい。
【0016】
2.詳細
続いて、図1に示す一実施形態の目地幅調整治具1及びこれを用いた目地幅調整方法について更に詳しく説明する。
【0017】
以下では、横架材2の長手方向を左右方向とし、横架材2に対してパネル3が位置する側を前方とし、その反対側を後方とし、この左右方向及び前後方向に対して直交する方向を上下方向として、各構成について詳しく説明する。
【0018】
2-1.目地幅調整治具
目地幅調整治具1は、図2から図5に示すように、係止部5、固定操作部6、押圧部7、及びスライド操作部8を備える。
【0019】
2-1-1.係止部
係止部5は、横架材2の縦板部20が差し込まれる差込溝50が設けられた係止ブロック51と、係止ブロック51から前方に延びた板状の連結部52と、連結部52の前端部に設けられたナット状の軸受け部53とを有する。係止部5は、本実施形態では、金属製である。
【0020】
係止ブロック51は、上下方向を長手方向とする直方体状の第一縦片510と、第一縦片510の上端部から前方に延びた横片511と、横片511の前端部から下方に延びた直方体状の第二縦片512と、を有する。
【0021】
第二縦片512は、第一縦片510に対して平行であり、第一縦片510から横架材2の縦板部20の厚みと同程度の距離だけ離れて位置する。第一縦片510と横片511と第二縦片512で囲まれた空間が、縦板部20が差し込まれる差込溝50である。第一縦片510には、第一縦片510の一部を前後方向に貫通するねじ孔513が設けられている。ねじ孔513は、差込溝50に繋がっている。第一縦片510には、ねじ孔513よりも下側の部分に取付穴514が更に設けられている。取付穴514は、ねじ孔513の下方に距離をおいて位置する。
【0022】
第二縦片512に、板状の連結部52の後端部が結合している。第二縦片512と連結部52とは、例えば溶接によって結合されている。
【0023】
連結部52は、平面視台形状の平板であり、前側の部分ほど左右方向の長さが短い。連結部52の後端部は、その後面が第二縦片512の後面と面一となるように、第二縦片512に結合している。連結部52の前端部に、ナット状の軸受け部53が結合されている。軸受け部53は、例えば溶接によって連結部52に結合されている。軸受け部53は、左右方向を軸方向とする筒状であり、その内側に、左右方向に貫通したねじ孔530を有する。
【0024】
2-1-2.固定操作部
固定操作部6は、横架材2に対して接離するように、係止部5に取り付けられた固定用ボルト60と、固定用ボルト60に連結された操作レバー61と、を有する。
【0025】
詳しくは、固定用ボルト60は、係止部5の第一縦片510のねじ孔513に挿入された軸部62と、軸部62の後端部に設けられた頭部63と、を有する。頭部63に、操作レバー61が連結されている。操作レバー61は、図5に示すように、施工者によって把持可能な帯板状のハンドル部610と、ハンドル部610の一端部に設けられた連結孔611とを有する。操作レバー61は、連結孔611に固定用ボルト60の頭部63を嵌め込むことで、固定用ボルト60に連結され、固定用ボルト60と一体に動作する。
【0026】
固定操作部6は、操作レバー61を掴んで、固定用ボルト60をその軸周りに回転させることで、固定用ボルト60の軸部62の第一縦片510から前側への突出量を調整することができる。
【0027】
操作レバー61を後方から見て時計回りに回転操作して、固定用ボルト60の軸部62の先端(前端)を縦板部20に対して押し当てることで、係止部5は横架材2に固定される。また、操作レバー61を反時計回りに回転操作して、固定用ボルト60の軸部62の先端(前端)を、縦板部20から離すことで、係止部5の横架材2に対する固定が解除される。本実施形態では、操作レバー61が右下がり(左上がり)に傾いた状態が、固定解除状態であり、左下がり(右上がり)に傾いた状態が、固定状態である。
【0028】
なお、固定解除状態と固定状態とは、上記の各状態に限定されず、適宜変更可能である。例えば、固定解除状態又は固定状態は、操作レバー61が鉛直方向に対して平行な起立姿勢にある状態であってもよい。
【0029】
また、操作レバー61は、後方から見て反時計回りに回転操作されることによって、固定解除状態から固定状態へと切り替わるように構成されてもよく、すなわち、固定用ボルト60の軸部62は、後方から見て反時計回りに回すとネジが閉まる逆ネジであってもよい。
【0030】
固定操作部6は、操作レバー61の回転範囲を規制する規制ボルト64を更に備える。図4に示すように、規制ボルト64は、その前端部が係止部5の第一縦片510の取付穴514に取り付けられ、残りの部分が取付穴514から後方に突出する。
【0031】
操作レバー61は、規制ボルト64に当たることでそれ以上ねじが緩む方向に回転することが防がれ、これにより、固定用ボルト60が係止部5のねじ孔513から外れ落ちることを防ぐことができる。
【0032】
2-1-3.スライド操作部
スライド操作部8は、図2及び図3に示すように、係止部5に取り付けられ、横架材2の長手方向に移動可能なボルト80を有する。ボルト80は、回転操作される頭部81と、押圧部7に回転自在に連結された軸部82と、を含む。スライド操作部8は、軸部82の左端部に取り付けられ、押圧部7への軸部82の連結に用いられる2つのナット83,84を更に有する。
【0033】
軸部82は、係止部5の軸受け部53のねじ孔530に接続される。軸部82の右端部に頭部81が設けられている。軸部82の左端部が押圧部7に回転自在に連結される。ボルト80は、頭部81を電動工具やラチェットレンチ等の工具で回転操作することで、軸部82を左右に移動させることができ、これにより、押圧部7を左右に移動させることができる。
【0034】
2-1-4.押圧部
押圧部7は、スライド操作部8によってスライド移動される本体部70と、本体部70に取り付けられた少なくとも一つのパネル受け部71と、を有する。少なくとも一つのパネル受け部71は、パネル3の側面30に当たる受け面710を有する。本体部70は、例えば、金属製である。少なくとも一つのパネル受け部71は、例えば、樹脂製である。
【0035】
少なくとも一つのパネル受け部71は、本実施形態では、パネル3の厚み方向に距離をあけて位置する第一パネル受け部71aと第二パネル受け部71bである。本体部70と第一パネル受け部71aと第二パネル受け部71bとの間には、スペースS1が設けられている。
【0036】
本体部70は、本実施形態では、パネル受け部71が取り付けられるベース部材72と、ボルト80の軸部82が取り付けられる接続部材73と、接続部材73をベース部材72に対して取り付ける取付部材74と、を有する。
【0037】
ベース部材72は、矩形板状の平板部720と、平板部720の前後の端部から左方(パネル3側)に突出した一対の規制片721と、平板部720の上下の端部から右方(パネル3とは反対側)に突出した一対の突片722と、を有する。ベース部材72は、例えば一枚の鋼板を折り曲げ加工することで形成される。
【0038】
接続部材73は、左方に開口した中空の半球状(ドーム状)の本体部730と、本体部730の右端部を左右方向に貫通する貫通孔731と、を有する。接続部材73は、貫通孔731にボルト80の軸部82が通され、軸部82に取り付けた二つのナット83,84の間に、本体部730の一部(右端部)が隙間をおいて配置されることで、ボルト80に対して回転可能及び傾斜可能に連結される。接続部材73は、ボルト80の軸部82の周方向に回転可能であり、軸部82の長手方向に対して交差する方向に傾くことが可能である。本体部730の左端面は、ボルト80の軸部82よりも外径の大きい円環状の当接面となっている。この当接面が、ベース部材72の平板部720に当たる。なお、本体部730の形状は、中空の半球状に限らず、その他の形状であってもよい。
【0039】
取付部材74は、ボルト80の軸部82に取り付けられたナット83が通る貫通孔740が設けられた矩形板状の支持部741と、支持部741の前後の端部から左方に突出した一対の連結片742と、一対の連結片742の左端部から前後方向外側に延びた一対の固定片743と、を有する。
【0040】
支持部741と一対の連結片742とで囲まれる部分には、接続部材73の本体部730が収まるスペース744が形成される。取付部材74は、接続部材73の本体部730を、スペース744に配置し、ボルト80の軸部82に取り付けられたナット83を貫通孔740に通した状態で、ベース部材72に取り付けられる。取付部材74は、一対の固定片743にねじ等の固定具745を挿入することで、ベース部材72の平板部720に固定される。本実施形態では、固定具745の先端部(左端部)は、パネル受け部71a,71b内に埋め込まれ、これにより、パネル受け部71a,71bは、ベース部材72の平板部720に固定される。
【0041】
第一パネル受け部71aと第二パネル受け部71bは、パネル3の側面30に当たる受け面710a,710bを有する。第一パネル受け部71aの左面が、受け面710aであり、第二パネル受け部71bの左面が、受け面710bである。
【0042】
受け面710a,710bのそれぞれは、パネル3の側面30に対応した形状を有する。本実施形態では、前側に位置する第一パネル受け部71aの受け面710aは、パネル3の側面30の平坦な部分(後述する平板部324a)を受ける平面部711aと、平面部711aの前端部から左方に突出し、パネル3の前面を受けることが可能な規制面712aと、を有する。
【0043】
後側に位置する第二パネル受け部71bの受け面710bは、パネル3の側面30の平坦な部分(後述する平板部332b)を受けることが可能な平面部711bと、平面部711bの後端部に連続し、パネル3の側面30の突出した部分(後述する湾曲部332a)が収まる凹面部712bと、を有する。凹面部712bは、パネル3の後面を受けることが可能な規制面713bを含む。
【0044】
第一パネル受け部71aは、ベース部材72の平板部720の左面の前端部に取り付けられ、前側の規制片721に接する。第一パネル受け部71aの上下長さは、ベース部材72の平板部720の上下長さと略同じである。
【0045】
第二パネル受け部71bは、平板部720の左面の後端部に取り付けられ、後側の規制片721に接する。第二パネル受け部71bの上下長さは、ベース部材72の平板部720の上下長さと略同じである。
【0046】
第一パネル受け部71aと第二パネル受け部71bとの間に形成されるスペースS1には、パネル3の側面30の突出部分(後述する突出部324b、パッキン34、及び耐火材9)が収まる。
【0047】
2-2.パネルと固定パネル
パネル3と固定パネル4は、建物の壁を形成するサンドイッチパネルであり、本実施形態では、同大同形のものである。以下では、パネル3について詳しく説明する。
【0048】
図6に示すように、パネル3は、矩形板状である。パネル3は、上下方向と平行な長手方向と、左右方向と平行な短手方向と、前後方向と平行な厚み方向とを有する。パネル3は、例えば、上下方向の長さが、0.5~6.0mであり、左右方向の長さ(幅)が、0.3~1.5mであり、前後方向の長さ(厚み)が、30~150mmである。
【0049】
パネル3は、図6図7A図7B及び図8に示すように、芯材31と、芯材31を前側から覆う第一外皮32と、芯材31を後側から覆う第二外皮33と、を備える。
【0050】
芯材31は、その全体形状が、矩形の板状である。全体形状が板状とは、1枚の板に限らず、複数の部材を1枚の板をなすように並べたものも含まれる。芯材31は、本体部31aと、本体部31aよりも耐火性の高い耐火部31bを含む。
【0051】
本体部31aは、左右の側面に凹条部310を有している。凹条部310は、本体部31aの左右の側面の前後方向の中央部に上下方向の全長にわたって位置する。凹条部310に、耐火部31bが配置される。耐火部31bは、ステープル等の固定具によって、本体部31aに固定される。
【0052】
本体部31aは、断熱性を有する。本体部31aは、ロックウールやグラスウールなどの繊維状無機材で形成される。本体部31aは、左右方向に並んだ複数のブロック体で構成される。複数のブロック体のそれぞれは、繊維状無機材をバインダー等でブロック状に固めたものである。複数のブロック体は、上下方向の長さが互いに同じであり、前後方向の長さが互いに同じである。複数のブロック体は、隣接する側面同士が当接して、全体として1枚の矩形板状の本体部31aを形成している。複数のブロック体のそれぞれは、繊維状無機材の長手方向が、前後方向に沿っている。なお、複数のブロック体のそれぞれは、例えば、ロックウール製のボードを短冊状に切断したもので構成してもよい。この場合、複数のブロック体は、繊維方向が前後方向に対して平行となり、かつ、全体として1枚の矩形板状をなすように並べられて、本体部31aを形成する。なお、本体部31aは、ウレタンフォーム、フェノールフォーム等の発泡系の有機材で形成されてもよいし、スチレンボード、ウレタンボード等であってもよい。
【0053】
耐火部31bは、本体部31aに比べて耐火性の高い部材であり、例えば、石膏ボードや、珪酸カルシウムボードである。耐火部31bは、凹条部310に対応した形状であり、1枚の矩形板である。耐火部31bは、凹条部310の全体を埋める。
【0054】
第一外皮32と第二外皮33のそれぞれは、金属板をロール加工やプレス加工などにより所望の形状に成形することによって得られる。金属板は、例えば、厚みが0.25~2.0mmである。金属板は、塗装鋼板、亜鉛めっき鋼板、アルミニウム-亜鉛合金めっき鋼板、ガルバリウム鋼板(登録商標)、エスジーエル(登録商標)鋼板等であるが、これらに限定されない。
【0055】
第一外皮32は、後側に向けて開口した矩形の箱状である。第一外皮32は、芯材31の本体部31aの前面を覆う矩形板状の本体部320と、本体部31aの上面を覆う上壁部321と、本体部31aの下面を覆う下壁部322と、を有する。第一外皮32は更に、本体部31aの左の側面のうち凹条部310よりも前側の部分を覆う左の側壁部323と、本体部31aの右の側面のうち凹条部310よりも前側の部分を覆う右の側壁部324と、を有する。
【0056】
上壁部321は、本体部320の上縁から後側に突出し、下壁部322は、本体部320の下縁から後側に突出し、左の側壁部323は、本体部320の左縁から後側に突出し、右の側壁部324は、本体部320の右縁から後側に突出している。本体部320に対して4つの壁部321,322,323,324のそれぞれは、略直角である。上下の壁部321,322のそれぞれは、矩形の平板状である。左右の側壁部323,324は、矩形の平板部323a,324aと、平板部323a,324aの後端から左右方向外側に略直角に突出した矩形板状の突出部323b,324bとを有する。
【0057】
第二外皮33は、芯材31の本体部31aの後面を覆う矩形板状の本体部330と、本体部31aの左の側面のうち凹条部310よりも後側の部分を覆う左の側壁部331と、本体部31aの右の側面のうち凹条部310よりも後側の部分を覆う右の側壁部332と、を有する。左の側壁部331は、本体部330の左縁から前側に突出し、右の側壁部332は、本体部330の右縁から前側に突出している。なお、第二外皮33は、本体部31aの上面や下面を覆う部分を有さない。
【0058】
左右の側壁部331,332のそれぞれは、平面視U字状に湾曲した湾曲部331a,332aと、湾曲部331a,332aの前端部から前側に突出した矩形状の平板部331b,332bと、を有する。
【0059】
外皮32,33のそれぞれは、本体部320,330が芯材31の本体部31aの前後の面に接着されて、芯材31と一体化している。
【0060】
パネル3は、壁部321,322,323,324のそれぞれに取り付けられるパッキン34を更に備える。なお、図6では、パッキン34の図示は省略している。図7A図7B及び図8に示すように、パッキン34は、上壁部321の上面の前後方向の中央部と、下壁部322の下面の前後方向の中央部と、左右の側壁部323,324の平板部323a,324aの後端部のそれぞれに、取り付けられる。パッキン34は、長手方向に直交する断面が、中空の半円形状である。パッキン34は、パネル3を全周にわたって囲むように正面視にて矩形枠状に設けられる。パッキン34は、例えば合成ゴム製である。
【0061】
図3に示すように、パネル3の右の側面30には、耐火材9がビス等の固着具で取り付けられる。耐火材9は、アルカリアースシリケートブランケット(生体溶解性繊維)などの繊維状無機材料で形成された帯状のものである。本実施形態では、耐火材9は、圧縮した場合に復元しにくい部材である。耐火材9は、パネル3の右の側面30のうち、耐火部31bに対向する部分に、パネル3の長手方向の全長にわたって取り付けられる。なお、耐火材9のパネル3の側面30への取り付けは、施工現場にて行われる。
【0062】
図6及び図8に示すように、パネル3は、パネル3の後面の下端部に固定され、横架材2への取り付けに用いられる下取付部材35と、パネル3の後面の上端部に固定され、他の横架材2への取り付けに用いられる上取付部材36と、を更に備える。
【0063】
下取付部材35は、パネル3の後面の下端部に固定される側面視L字状の三つのパネル固定板35aと、三つのパネル固定板35aのうち左端と右端の二つのパネル固定板35aにボルト37により固定される二つの側面視略Z字状の取付板35bとから構成される。ボルト37は、本実施形態では、片面側から締結することができるワンサイドボルトである。
【0064】
三つのパネル固定板35aは、左右方向に間隔をおいて配置されている。三つのパネル固定板35aのそれぞれは、パネル3の後面に平行な縦片350と、縦片350の下端部から前側に延び、パネル3の下面に平行な横片351とを有する。縦片350がパネル3の第二外皮33の本体部330の下端部にビス等の固定具で固定され、横片351の前端部がパネル3の第一外皮32の下壁部322にビス等の固定具で固定されている。
【0065】
左端と右端の二つのパネル固定板35aのそれぞれの縦片350の上部に、取付板35bの上部がボルト37で固定され、縦片350の下部と、取付板35bの下部との間には、横架材2の縦板部20を差し込み可能な差込溝38が形成される。差込溝38の幅は、ボルト37のねじ締め具合で調整可能である。ボルト37を最後までねじ締めることで、パネル固定板35aを縦板部20に押し当てることができる。
【0066】
上取付部材36は、パネル3の後面の上端部に固定される側面視L字状の二つのパネル固定板36aと、二つのパネル固定板36aのそれぞれにボルト39により固定される二つの矩形板状の取付板36bとから構成される。ボルト39は、本実施形態では、片面側から締結することができるワンサイドボルトである。
【0067】
二つのパネル固定板36aは、左右方向に間隔をおいて配置されている。二つのパネル固定板36aは、左右方向における位置が、三つのパネル固定板35aのうち、左右両端に位置する二つのパネル固定板35aと同じである。二つのパネル固定板36aのそれぞれは、パネル3の後面に平行な縦片360と、縦片360の上端部から前側に延び、パネル3の上面に平行な横片361とを有する。縦片360がパネル3の第二外皮33の本体部330の上端部にビス等の固定具で固定され、横片361の前端部がパネル3の第一外皮32の上壁部321にビス等の固定具で固定されている。二つのパネル固定板36aのそれぞれの縦片360に、取付板36bの下部がボルト39で固定される。
【0068】
パネル3は、下取付部材35の二つの取付板35bとこれに対向する二つのパネル固定板36aとの間の差込溝38に、横架材2の縦板部20を差し込んで、二つの取付板35bを縦板部20に引っ掛けることで、横架材2によって左右方向にスライド移動可能に支持される。なお、このとき、ボルト37は、取付板35bがパネル固定板35aから外れない程度にねじ締めされた仮保持状態とされる。
【0069】
2-3.横架材
図10に示すように、横架材2は、構造躯体の一部を構成するものであり、本実施形態では、側面視L字状のアングル材である。横架材2は、鋼製である。横架材2は、縦板部20と、縦板部20の下端部から後側に延びた横板部21と、を有する。なお、縦板部20の厚み(前後方向の長さ)は、例えば、10mm未満であって、好ましくは、6~9mm程度である。
【0070】
構造躯体は、上下に並ぶ複数の横架材2を備える。複数の横架材2のそれぞれは、建物の床や天井を構成する土台10に取り付けられている。なお、複数の横架材2のそれぞれは、梁に固定されてもよいし、複数の柱に架け渡して固定されてもよい。
【0071】
上下に並ぶ複数の横架材2は、パネル3に取り付けられた上下の取付部材35,36の間隔と同程度、上下方向に離れて位置する。上下に並ぶ二つの横架材2のうち、上側に位置する横架材2には、パネル3の上取付部材36が取り付けられ、下側に位置する横架材2には、パネル3の下取付部材35が取り付けられる。
【0072】
各横架材2の縦板部20のうち、パネル3の下取付部材35の左右方向の中央に位置するパネル固定板35aに対応する部分の前面には、このパネル固定板35aを下から支持する側面視L字状の受け部材22が溶接等で固定されている。
【0073】
3.目地幅調整方法
続いて、上述した目地幅調整治具1を用いて、パネル3と固定パネル4の間の目地幅を調整する方法について説明する。
【0074】
まず、図1に示すように、構造躯体(本実施形態では横架材2)に対して位置が固定された固定パネル4の側方に、パネル3を配置する。このとき、パネル3の下端部の下取付部材35の二つの取付板35bを、横架材2の縦板部20に引っ掛ける。取付板35bは、ボルト37によってパネル固定板35aに対して仮止めしておき、パネル3を横架材2の長手方向に沿ってスライド移動可能としておく。パネル3は、パネル3の左の側面が固定パネル4の右の側面に当たるか、もしくは、僅かな隙間を介して位置するように配置する。なお、パネル3は、クレーン等の吊り上げ手段によって吊り上げた状態で、目地幅の調整が行われる。
【0075】
次いで、図9Aに示すように、目地幅調整治具1の係止部5の差込溝50に横架材2の縦板部20を差し込んで、係止部5を縦板部20に係止させる。このとき、目地幅調整治具1の押圧部7の二つのパネル受け部71a,71bを、パネル3の右の側面30に当てる。パネル3の側面30に設けられているパッキン34と耐火材9と突出部324bは、二つのパネル受け部71a,71bの間のスペースS1に収まり、傷付きや変形が抑制される。耐火材9は、スペースS1に収まることで、押圧部7によって圧縮されて変形することを防ぐことができる。これにより、パネル3の右側に他のパネルを施工するときに、パネル3と他のパネルとで耐火材9を圧縮させて変形させることができ、パネル3と他のパネルとの隙間を耐火材9によって適切に埋めることができる。
【0076】
次いで、図9Bに示すように、固定操作部6の操作レバー61を、固定用ボルト60を中心に後方から見て時計回りに回転させて、固定操作部6の固定用ボルト60の先端を縦板部20に押し当て、係止部5を縦板部20に固定する。
【0077】
次いで、図9Cに示すように、スライド操作部8のボルト80の頭部81を電動工具やラチェットレンチ等の工具で回転操作して、押圧部7を横架材2の長手方向に沿って左方にスライド移動させる。これにより、押圧部7でパネル3の右の側面30を押圧してパネル3を左方にスライド移動させて、パネル3と固定パネル4との間の目地幅を調整する。
【0078】
パネル3と固定パネル4の間の目地幅が所定の長さになったら、スライド操作部8の回転操作を止める。
【0079】
次いで、パネル3の上取付部材36の二つの取付板36bを上側の横架材2の縦板部20に対して、溶接等の適宜手段で固定する。
【0080】
次いで、パネル3の下取付部材35の二つのボルト37を最後までねじ締めして、二つの取付板35bを横架材2の縦板部20に押し当てる。このとき、パネル3の下端部の左右方向の中央部に位置するパネル固定板35aは、横架材2の縦板部20に固定された受け部材22の上に載置され、パネル3の自重は受け部材22によって支持される。なお、受け部材22に対してパネル固定板35aは、溶接等で固定しない。
【0081】
パネル3の下側に他のパネル3が既に設置されている場合には、パネル3の二つの取付板35bとこれに対向するパネル固定板35aとの間に、横架材2の縦板部20と他のパネル3の取付板36bとを挟み込む。
【0082】
以上のようにすることで、パネル3は、上下二つの横架材2に対して固定される。
【0083】
パネル3の上下二つの横架材2への固定が終わったら、目地幅調整治具1の固定操作部6の操作レバー61を回転操作して、係止部5の縦板部20への固定を解除し、縦板部20から係止部5を取り外して、目地幅調整治具1を横架材2から取り外す。
【0084】
以上のように施工することで、パネル3は、固定パネル4との間に所定の目地幅を形成した状態で、横架材2に固定される。上述の施工方法により複数のパネル3を横架材2に対して固定することで、例えば、図10に示す壁構造を形成することができる。
【0085】
4.作用効果
以上説明した本実施形態の目地幅調整治具1は、横架材2にスライド可能に係止されたパネル3の側方において、係止部5を横架材2に係止させた状態で、固定操作部6を操作することで、係止部5を横架材2に固定することができる。その後、スライド操作部8を操作することで、押圧部7をスライド移動させて、押圧部7によってパネル3を押圧してパネル3をスライド移動させることができ、パネル3と固定パネル4との間の目地幅を調整することができる。
【0086】
このように本実施形態の目地幅調整治具1では、固定操作部6の操作と、スライド操作部8の操作の二つの操作で、パネル3をスライド移動させることができるため、パネル3と固定パネル4との間の目地幅の調整がしやすい。
【0087】
また、固定操作部6の操作とスライド操作部8の操作はいずれも、施工者が一人で行うことができるため、本実施形態の目地幅調整治具1を用いることで、固定パネル4とパネル3の間の目地幅の調整が簡単に行える。
【0088】
また、本実施形態の目地幅調整治具1では、スライド操作部8を操作して、パネル3と固定パネル4との間の目地幅を所定の長さに調整した状態で、押圧部7がパネル3の固定位置からの移動を制限するストッパーとして機能する。
【0089】
そのため、本実施形態の目地幅調整治具1を用いることで、パネル3の横架材2への固定も、目地幅調整治具1を操作した施工者が行え、パネル3の設置に必要な人数を抑えることができる。
【0090】
また、本実施形態の目地幅調整治具1は、パネル3が係止される横架材2に固定して用いるため、押圧部7をスライド移動させる方向と、パネル3をスライド移動させる方向とを合わせやすい。
【0091】
また、本実施形態の目地幅調整治具1では、横架材2に対して係止部5を固定及び固定解除する固定操作部6が、把持可能な操作レバー61を有するため、電動工具やラチェットレンチ等の工具を用いなくてもよく、固定及び固定解除の操作がしやすい。
【0092】
また、本実施形態の目地幅調整治具1では、スライド操作部8が、押圧部7に連結され、回転操作されるボルト80を有するため、押圧部7のスライド位置を無段階で調整することができて、パネル3と固定パネル4の間の目地幅の調整がしやすい。
【0093】
また、本実施形態の目地幅調整治具1では、パネル3の側面30を押圧する押圧部7が、本体部70と、本体部70に取り付けられるパネル受け部71とを有し、パネル受け部71がパネル3の側面30を受ける受け面710を有している。そのため、本実施形態の目地幅調整治具1では、本体部70は金属で形成して強度の向上を図ったうえで、パネル受け部71は樹脂で形成してパネル3の側面30に傷を付けにくくすることができる。なお、パネル受け部71を取り換えることで、側面の形状が異なるパネル3の目地幅の調整にも用いることができる。
【0094】
また、本実施形態の目地幅調整治具1では、押圧部7のパネル受け部71が、パネル3の厚み方向に距離をあけて位置する第一パネル受け部71aと第二パネル受け部71bで構成され、第一パネル受け部71aと第二パネル受け部71bの間にスペースS1が形成される。
【0095】
そのため、本実施形態の目地幅調整治具1では、パネル3が側面30に突出部分(パッキン34、耐火材9、及び突出部324b)を有していても、この突出部分が押圧部7に押されて変形することを防ぐことができる。
【0096】
また、本実施形態の目地幅調整治具1では、第二パネル受け部71bが凹面部712bを有するため、パネル3の湾曲部332aを凹面部712b内に収めることができ、パネル3の湾曲部332aが押圧部7に押されて変形することを防ぐことができる。
【0097】
また、本実施形態の目地幅調整治具1では、接続部材73がボルト80の軸部82に対して傾斜可能であるため、押圧部7をパネル3の側面30に合わせて傾けることができ、押圧部7をパネル3の側面30に押し当てやすい。
【0098】
5.変形例
以上説明した本実施形態の目地幅調整治具1及びこれを用いた目地幅調整方法の変形例について説明する。
【0099】
固定操作部6は、係止部5を横架材2に固定することができるように構成されたものであればよく、図5等に示す構造のものに限定されない。例えば、固定操作部6は、操作レバー61を有さなくてよく、固定用ボルト60のみで構成されてもよい。この場合、固定用ボルト60の頭部63を、電動工具やラチェットレンチ等の工具で回転操作することで、係止部5を横架材2に対して固定及び固定解除することができる。
【0100】
スライド操作部8は、押圧部7を横架材2の長手方向にスライド移動させることができるように構成されたものであればよく、図3等に示す構造のものに限定されない。例えば、スライド操作部8は、回転しながらスライド移動するものに限らず、回転せずにスライド移動するものであってもよい。また、スライド操作部8は、ボルト80の頭部81に連結される操作レバーを更に有してもよい。
【0101】
押圧部7は、パネル3の側面30に当てられるように構成されたものであればよく、図3等に示す構造のものに限定されない。例えば、押圧部7は、本体部70に、パネル受け部71を一つだけ取り付けたものであってもよい。この場合、パネル受け部71は、例えば、パネル3の側面30に前後方向の全長にわたって当たる受け面710を有する。
【0102】
横架材2は、側面視L字状のアングル材に限らず、縦板部20のみで構成されるものであってよい。
【0103】
パネル3は、下取付部材35(横架材2の縦板部20に引っ掛かる部分)を、パネル3の下端部に限らず、パネル3の上端部に備えてもよい。
【0104】
固定パネル4は、パネル3とは異なる形状及び大きさのパネルであってもよい。また、固定パネル4は、パネル3が引っ掛かる横架材2とは別の構造躯体に対して位置が固定されたものであってもよい。
【0105】
目地幅調整治具1は、パネル3の右の側面30を押圧するものに限らず、パネル3の左の側面を押圧して、パネル3の右側に配置された固定パネル4との間の目地幅を調整するものであってもよい。
【0106】
目地幅調整治具1によって、目地幅が調整されるパネル3と固定パネル4は、図6から図8に示す構造のサンドイッチパネルに限定されない。パネル3と固定パネル4は、金属製の外皮を有するサンドイッチパネルに限らず、窯業系のパネルであってもよいし、金属サイディング材であってもよいし、木製のパネルであってもよく、特に限定されない。
【0107】
6.まとめ
以上説明した一実施形態及びその変形例のように、第一態様の目地幅調整治具(1)は、下記の構成を備える。
【0108】
すなわち、第一態様の目地幅調整治具(1)は、構造躯体の一部を構成する横架材(2)に対してその長手方向にスライド可能に係止されるパネル(3)と、このパネル(3)に隣接した位置で固定された固定パネル(4)との間の目地幅を調整するための目地幅調整治具である。目地幅調整治具(1)は、横架材(2)に係止される係止部(5)と、係止部(5)を横架材(2)に固定し、かつ固定を解除することのできる固定操作部(6)と、パネル(3)のうち固定パネル(4)とは反対側を向く側面(30)に当てられる押圧部(7)と、押圧部(7)を横架材(2)の長手方向にスライド移動させることのできるスライド操作部(8)と、を備える。
【0109】
上記構成を備える第一態様の目地幅調整治具(1)では、横架材(2)にスライド可能に係止されたパネル(3)の側方において、係止部(5)を横架材(2)に係止させた状態で、固定操作部(6)を操作することで、係止部(5)を横架材(2)に固定することができる。その後、第一態様の目地幅調整治具(1)では、スライド操作部(8)を操作することで、押圧部(7)をスライド移動させて、押圧部(7)によってパネル(3)を押圧してパネル(3)をスライド移動させることができ、パネル(3)と固定パネル(4)との間の目地幅を調整することができる。このように第一態様の目地幅調整治具(1)では、固定操作部(6)の操作と、スライド操作部(8)の操作の二つの操作で、パネル(3)をスライド移動させることができて、パネル(3)と固定パネル(4)との間の目地幅の調整がしやすい。
【0110】
また、上述した一実施形態及びその変形例のように、第二態様の目地幅調整治具(1)は、第一態様の目地幅調整治具(1)の構成に加えて、下記の構成を付加的に備える。
【0111】
すなわち、第二態様の目地幅調整治具(1)では、固定操作部(6)は、横架材(2)に対して接離するように、係止部(5)に取り付けられた固定用ボルト(60)と、固定用ボルト(60)に連結された操作レバー(61)と、を有する。
【0112】
上記構成を備えることで、第二態様の目地幅調整治具(1)では、操作レバー(61)を操作して固定用ボルト(60)を回転させることで、固定用ボルト(60)が横架材(2)に当たる固定状態と、固定用ボルト(60)が横架材(2)から離れる固定解除状態とを切り替えることができる。そのため、第二態様の目地幅調整治具(1)では、係止部(5)を横架材(2)に対して固定及び固定解除する操作が簡単に行える。
【0113】
また、上述した一実施形態及びその変形例のように、第三態様の目地幅調整治具(1)は、第一又は第二態様の目地幅調整治具(1)の構成に加えて、下記の構成を付加的に備える。
【0114】
すなわち、第三態様の目地幅調整治具(1)では、スライド操作部(8)は、係止部(5)に取り付けられ、横架材(2)の長手方向に移動可能なボルト(80)を有する。ボルト(80)は、回転操作される頭部(81)と、押圧部(7)に回転自在に連結された軸部(82)と、を含む。
【0115】
上記構成を備えることで、第三態様の目地幅調整治具(1)では、ボルト(80)の頭部(81)を回転操作することで、係止部(5)に対してボルト(80)を横架材(2)の長手方向に移動させることができる。これにより、第三態様の目地幅調整治具(1)では、ボルト(80)の軸部(82)で押圧部(7)を押して、押圧部(7)でパネル(3)を押圧してパネル(3)を固定パネル(4)側へ移動させることができる。このように、第三態様の目地幅調整治具(1)では、ボルト(80)の回転によって押圧部(7)を移動させるため、パネル(3)の移動の微調整が行いやすい。
【0116】
また、上述した一実施形態及びその変形例のように、第四態様の目地幅調整治具(1)は、第一から第三態様のいずれか一つの態様の目地幅調整治具(1)の構成に加えて、下記の構成を付加的に備える。
【0117】
すなわち、第四態様の目地幅調整治具(1)では、押圧部(7)は、スライド操作部(8)によってスライド移動される本体部(70)と、本体部(70)に取り付けられた少なくとも一つのパネル受け部(71)と、を有する。少なくとも一つのパネル受け部(71)は、パネル(3)の側面(30)に当たる受け面(710)を有する。
【0118】
上記構成を備える第四態様の目地幅調整治具(1)では、押圧部(7)が、本体部(70)とこれに取り付けられるパネル受け部(71)とを有するため、パネル受け部(71)を加工しやすい材料で形成することができる。そのため、第四態様の目地幅調整治具(1)では、パネル受け部(71)の受け面(710)の形状を、パネル(3)の側面(30)の形状に合わせやすく、パネル(3)の側面(30)を押圧部(7)で押圧する際に、パネル(3)の側面(30)の突起等の変形を防ぐことができる。また、パネル(3)の側面(30)に傷が付くことも抑制することができる。
【0119】
また、上述した一実施形態及びその変形例のように、第五態様の目地幅調整治具(1)は、第四態様の目地幅調整治具(1)の構成に加えて、下記の構成を付加的に備える。
【0120】
すなわち、第五態様の目地幅調整治具(1)では、少なくとも一つのパネル受け部(71)は、パネル(3)の厚み方向に距離をあけて位置する第一パネル受け部(71a)と第二パネル受け部(71b)である。本体部(70)と第一パネル受け部(71a)と第二パネル受け部(71b)との間には、スペース(S1)が設けられている。
【0121】
上記構成を備えることで、第五態様の目地幅調整治具(1)では、第一パネル受け部(71a)と第二パネル受け部(71b)との間のスペース(S1)に、パネル(3)の側面(30)の突出部分(突出部324b、パッキン34、及び耐火材9)を収めることができる。そのため、第五態様の目地幅調整治具(1)では、パネル(3)の側面(30)を押圧部(7)で押圧する際に、パネル(3)の側面(30)の突出部分の変形を防ぎやすい。
【0122】
また、上述した一実施形態及びその変形例のように、第六態様の目地幅調整方法は、第一から第五態様のいずれか一つの態様の目地幅調整治具(1)を用いて、パネル(3)と固定パネル(4)との間の目地幅を調整する目地幅調整方法である。第六態様の目地幅調整方法では、横架材(2)に係止部(5)を引っ掛け、固定操作部(6)を操作して、係止部(5)を横架材(2)に固定し、スライド操作部(8)を操作して、押圧部(7)を横架材(2)の長手方向にスライド移動させることで、押圧部(7)でパネル(3)を押圧してパネル(3)をスライド移動させて、パネル(3)と固定パネル(4)との間の目地幅を調整する。
【0123】
上記構成を備える第六態様の目地幅調整治具(1)では、固定操作部(6)の操作と、スライド操作部(8)の操作の二つの操作で、パネル(3)をスライド移動させることができて、パネル(3)と固定パネル(4)との間の目地幅の調整がしやすい。
【0124】
以上、本開示を添付図面に示す実施形態に基づいて説明したが、本開示は上記の各実施形態に限定されるものではなく、本開示の意図する範囲内であれば、適宜の設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0125】
1 目地幅調整治具
2 横架材
3 パネル
30 側面
4 固定パネル
5 係止部
6 固定操作部
60 固定用ボルト
61 操作レバー
7 押圧部
70 本体部
71 パネル受け部
71a 第一パネル受け部
71b 第二パネル受け部
710 受け面
8 スライド操作部
80 ボルト
81 頭部
82 軸部
S1 スペース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10