(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-13
(45)【発行日】2023-09-22
(54)【発明の名称】密封装置
(51)【国際特許分類】
F16D 25/12 20060101AFI20230914BHJP
F16D 25/0638 20060101ALI20230914BHJP
F16J 15/3204 20160101ALI20230914BHJP
【FI】
F16D25/12 B
F16D25/0638
F16J15/3204 101
(21)【出願番号】P 2017005974
(22)【出願日】2017-01-17
【審査請求日】2019-12-05
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004385
【氏名又は名称】NOK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】藤井 沢弥
【審査官】西藤 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-242311(JP,A)
【文献】特開2010-190391(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 25/063-25/064
F16D 25/12
F16J 15/3204
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングの内部においてクラッチ部材と対向したまま軸線に沿って往復動可能に配置され、当該ハウジングの前記軸線に沿った内周面と密封摺動する弾性体からなる環状のピストンリップを有し、前記ハウジングと共にピストン油圧室を形成する環状のピストンシールと、
前記ピストンシールを前記ピストン油圧室の側へ付勢する付勢部材と
を備え、
前記ピストンリップは、前記ピストンシールと一体化されて当該ピストンシールを覆うリップ腰部と、当該リップ腰部から前記ハウジングの前記内周面に向かって延び、当該内周面と密封摺動するリップ先端部とを有し、
前記リップ腰部は、前記軸線と平行な前記ハウジングの内周面の部分と対向した環状かつ平坦な円筒面、前記軸線と垂直な前記ハウジングの内周面の部分と対向して前記ピストン油圧室の油圧を受ける環状かつ平坦な円盤状の上方円盤面、前記円筒面の前記クラッチ部材の側の端部から外周側へ延び前記上方円盤面と平行かつ平坦な環状の下方円盤面を有し、
前記リップ先端部は、前記円筒面に対して当該円筒面から前記軸線の方向に向かって離間するように傾斜した第1円錐状面と、前記上方円盤面から前記軸線と垂直な前記ハウジングの内周面の部分に向かって離間するように傾斜した第2円錐状面と、前記第1円錐状面と前記第2円錐状面とを繋ぎ、前記ハウジングの内周面と摺動する環状の接触面と、前記第2円錐状面と前記接触面とを接続する平坦な天井面と、を有し、
前記リップ腰部の肉厚は、当該リップ腰部の前記円筒面の延長線と前記リップ先端部の前記第1円錐状面の延長線との交点を始点として、前記リップ腰部の前記円筒面の延長線に対して外周側へ45度の角度で傾斜した第1仮想線が前記リップ先端部の前記第2円錐状面と交差する交点を終点としたときの前記始点および前記終点の間の距離であり、
前記リップ先端部の肉厚は、当該リップ先端部の前記第1円錐状面と前記接触面との交点を始点として、前記第1仮想線と平行な第2仮想線が前記第2円錐状面と交差する交点を終点としたときの前記始点および前記終点の間の距離であり、
前記リップ腰部の肉厚と前記リップ先端部の肉厚との比率が1:0.5~1:0.7である
ことを特徴とする密封装置。
【請求項2】
前記リップ先端部は、前記リップ腰部から離れるに連れて次第に先細形状になるように形成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の密封装置。
【請求項3】
前記ピストンシールの前記軸線に沿った内周面と密封摺動する弾性体からなる環状のキャンセラリップを有し、前記ハウジングに固定され、前記ピストンシールと共にキャンセラ油圧室を形成する環状のキャンセラシールと、
を更に備え、
前記付勢部材は、前記ピストンシールと前記キャンセラシールとの間のキャンセラ油圧室に設けられ、前記ピストンシールを前記キャンセラシールから離れるように前記ピストン油圧室の側へ付勢し、
前記キャンセラリップは、前記キャンセラシールと一体化されたキャンセラ側リップ腰部と、当該キャンセラ側リップ腰部から前記ピストンシールの内周面に向かって延び、当該内周面と密封摺動するキャンセラ側リップ先端部とを有し、
前記キャンセラ側リップ腰部および前記キャンセラ側リップ先端部は、前記ピストンリップの前記リップ腰部および前記リップ先端部と同一形状からなり、
前記キャンセラ側リップ腰部の肉厚は、当該キャンセラ側リップ腰部の円筒面の延長線と前記キャンセラ側リップ先端部の第1円錐状面の延長線との交点を始点として、前記キャンセラ側リップ腰部の前記円筒面の延長線に対して内周側へ45度の角度で傾斜した第1仮想線が前記キャンセラ側リップ先端部の第2円錐状面と交差する交点を終点としたときの前記始点および前記終点の間の距離であり、
前記キャンセラ側リップ先端部の肉厚は、当該キャンセラ側リップ先端部の前記第1円錐状面と前記第2円錐状面とを、前記
ピストンシールの内周面と摺動する環状の接触面、および、前記第2円錐状面と前記接触面とを接続する平坦な天井面により繋いだ状態において、前記第1円錐状面と前記接触面との交点を始点として前記第1仮想線と平行な第2仮想線が前記第2円錐状面と交差する交点を終点としたときの前記始点および前記終点の間の距離で規定され、
前記キャンセラ側リップ腰部の肉厚と前記キャンセラ側リップ先端部の肉厚との比率が1:0.5~1:0.7である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の密封装置。
【請求項4】
前記ピストンリップにおける前記リップ腰部の肉厚と前記リップ先端部の肉厚との比率が1:0.5であり、
前記キャンセラリップにおける前記キャンセラ側リップ腰部の肉厚と前記キャンセラ側リップ先端部の肉厚との比率が1:0.7である
ことを特徴とする請求項3に記載の密封装置。
【請求項5】
ハウジングの内部においてクラッチ部材と対向したまま軸線に沿って往復動可能に配置され、当該ハウジングの前記軸線に沿った内周面と密封摺動する弾性体からなる環状のピストンリップを有し、前記ハウジングと共にピストン油圧室を形成する環状のピストンシールと、
前記ピストンシールを前記ピストン油圧室の側へ付勢する付勢部材と
を備え、
前記ピストンリップは、前記ピストンシールと一体化されて当該ピストンシールを覆うリップ腰部と、当該リップ腰部から前記ハウジングの前記内周面に向かって延び、当該内周面と密封摺動するリップ先端部とを有し、
前記リップ腰部は、前記軸線と平行な前記ハウジングの内周面の部分と対向した環状かつ平坦な円筒面、前記軸線と垂直な前記ハウジングの内周面の部分と対向して前記ピストン油圧室の油圧を受ける環状かつ平坦な円盤状の上方円盤面、前記円筒面の前記クラッチ部材の側の端部から外周側へ延び前記上方円盤面と平行かつ平坦な環状の下方円盤面を有し、
前記リップ先端部は、前記円筒面に対して当該円筒面から前記軸線の方向に向かって離間するように傾斜した第1円錐状面と、前記上方円盤面から前記軸線と垂直な前記ハウジングの内周面の部分に向かって離間するように傾斜した第2円錐状面と、前記第1円錐状面と前記第2円錐状面とを繋ぎ、前記ハウジングの内周面と摺動する環状の接触面と、前記第2円錐状面と前記接触面とを接続する平坦な天井面と、を有し、
前記リップ腰部の肉厚は、当該リップ腰部の前記円筒面の延長線と前記リップ先端部の前記第1円錐状面の延長線との交点と、前記リップ腰部の前記上方円盤面の延長線と前記リップ先端部の前記第2円錐状面の延長線との交点との間の距離であり、
前記リップ先端部の肉厚は、当該リップ先端部の前記第1円錐状面と前記接触面との交点と、前記リップ先端部の前記天井面と前記第2円錐状面との交点との間の距離であり、
前記リップ腰部の肉厚と前記リップ先端部の肉厚との比率が1:0.5~1:0.7である
ことを特徴とする密封装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密封装置に関し、特に、自動車等の車両用の自動変速機(AT(Automatic Transmission)やCVT(Continuously Variable Transmission)等)に用いられるクラッチピストン機構の密封装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両の自動変速機に用いられるクラッチピストン機構の密封装置は、ボンデッドピストンシール、キャンセラシールおよび、ボンデッドピストンシールとキャンセラシールとの間に設けられたリターンスプリングを備えている。
【0003】
ボンデッドピストンシールは、シリンダ状のクラッチハウジング(以下、これを「ハウジング」ともいう。)の内部に設けられた多板クラッチの締結に使用されるゴムリップ加硫接着タイプのピストンシールを備えている。以下の説明では、ボンデッドピストンシールを、単にピストンシールとも呼ぶ。
【0004】
ピストンシールは、一般に自動変速機の多板クラッチを締結または解放させるため、ハウジングの内部に供給される作動油の供給油圧に応じて当該ハウジングの軸方向に沿って作動(往復動)する金属環からなり、当該金属環に一体形成されたピストンリップを備えている。
【0005】
ピストンシールが装着されるハウジングの内周面と、当該ピストンシールとの間にはピストン油圧室が形成されており、ハウジングに形成された油穴を介してピストン油圧室に作動油が供給される。
【0006】
ピストンシールは、この作動油の供給油圧にしたがってハウジングの内周面をピストンリップが摺動しながら軸方向に移動し、当該ピストンシールに設けられたフランジ状の押圧部材により当該クラッチ板を締結させる往動作と、供給油圧が解放されたときリターンスプリングの付勢力によりクラッチ板から押圧部材を離間するように移動して元の基準位置まで戻る復動作とが繰り返し行われる(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような上述した構成の密封装置においては、自動変速機の作動性を向上させつつ、かつ、耐圧性を向上させたピストンシールが求められている。ここで、ピストンシールの耐圧性を向上させる手法としては、ピストンリップの肉厚を太くしてリップ剛性を上げることが一般的である。
【0009】
その一般的な例として上述した特許文献1とは異なるが、例えば、
図4に示すように、従来のピストンリップ50は、ピストンシール60の内周側(矢印b方向)の先端部60aと一体に形成されている。ピストンリップ50は、当該先端部60aを全体的に包み込むように一体に形成された基端部分であるリップ腰部51と、そのリップ腰部51から図中斜め上方へ向かって突出し、ハウジングの内周面と接触して摺動するリップ先端部52とを備えている。
【0010】
このような構成のピストンリップ50のリップ剛性を上げるために、
図4において2点鎖線で示すように、リップ腰部51の肉厚tk11とリップ先端部52の肉厚tk12との割合がtk11:tk12=1:0.9~1:0.7程度になるように当該ピストンリップ50を全体的に太くしていた。
【0011】
ここで、リップ腰部51の肉厚tk11は、リップ腰部51とリップ先端部52との境界付近の当該リップ先端部52の付け根部分の厚さ(太さ)であり、リップ先端部52の肉厚tk12は、リップ先端部52の先端側の厚さ(太さ)である。
【0012】
しかしながら、ピストンリップ50のリップ腰部51の肉厚tk11およびリップ先端部52の肉厚tk12を上述した割合(1:0.9~1:0.7)のように全体的に太くすると、リップ剛性は上がる一方でハウジングの内周面に摺動するピストンリップのリップ抵抗が大幅に増大するため、自動変速機の作動性が低下してしまう。
【0013】
本発明は、上記の課題に鑑みなされたものであり、その目的は、自動変速機の作動性を低下させることなく、リップの耐圧性を向上させた密封装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するために、本発明の密封装置は、ハウジングの内部においてクラッチ部材と対向したまま軸線に沿って往復動可能に配置され、当該ハウジングの前記軸線に沿った内周面と密封摺動する弾性体からなる環状のピストンリップを有し、前記ハウジングと共にピストン油圧室を形成する環状のピストンシールと、前記ピストンシールを前記ピストン油圧室の側へ付勢する付勢部材とを備え、前記ピストンリップは、前記ピストンシールと一体化されて当該ピストンシールを覆うリップ腰部と、当該リップ腰部から前記ハウジングの前記内周面に向かって延び、当該内周面と密封摺動するリップ先端部とを有し、前記リップ腰部の肉厚と前記リップ先端部の肉厚との比率が1:0.5~0.7であることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る密封装置において、前記リップ先端部は、前記リップ腰部から離れるに連れて次第に先細形状になるように形成されているようにしてもよい。
【0016】
本発明に係る密封装置において、前記ピストンシールの前記軸線に沿った内周面と密封摺動する弾性体からなる環状のキャンセラリップを有し、前記ハウジングに固定され、前記ピストンシールと共にキャンセラ油圧室を形成する環状のキャンセラシールと、前記キャンセラ油圧室に設けられ、前記ピストンシールを前記キャンセラシールから離れるように付勢する付勢部材とを更に備え、前記キャンセラリップは、前記キャンセラシールと一体化されたキャンセラ側リップ腰部と、当該キャンセラ側リップ腰部から前記ピストンシールの内周面に向かって延び、当該内周面と密封摺動するキャンセラ側リップ先端部とを有し、前記キャンセラ側リップ腰部の肉厚と前記キャンセラ側リップ先端部の肉厚との比率が1:0.5~1:0.7であることを特徴とする。
【0017】
本発明に係る密封装置において、前記ピストンリップにおける前記リップ腰部の肉厚と前記リップ先端部の肉厚との比率が1:0.5であり、前記キャンセラリップにおける前記キャンセラ側リップ腰部の肉厚と前記キャンセラ側リップ先端部の肉厚との比率が1:0.7であることを特徴とする。
【0018】
本発明に係る密封装置において、前記リップ腰部は、前記軸線と平行な前記ハウジングの内周面の部分と対向した環状かつ平坦な円筒状の円筒面と、前記軸線と垂直な前記ハウジングの内周面の部分と対向して前記ピストン油圧室の油圧を受ける環状かつ平坦な円盤状の円盤面を有し、前記リップ先端部は、前記円筒面に対して当該円筒面から前記軸線の方向に向かって離間するように傾斜した第1円錐状面と、前記円盤面から前記軸線と垂直な前記ハウジングの内周面の部分に向かって離間するように傾斜した第2円錐状面と、前記第1円錐状面と前記第2円錐状面とを繋ぎ、前記ハウジングの内周面と摺動する環状の接触面とを有するようにしてもよい。
【0019】
本発明に係る密封装置において、前記リップ腰部の肉厚は、当該リップ腰部の円筒面とリップ先端部の第1円錐状面との境界となる交点を始点として、リップ腰部の円筒面に対して外周側へ45度の角度で傾斜した第1仮想線が前記リップ先端部の第2円錐状面と交差する交点を終点としたときの前記始点および前記終点の間の距離であり、前記リップ先端部の肉厚は、前記第1円錐状面と前記接触面との交点を始点として、前記第1仮想線と平行な第2仮想線が前記第2円錐状面と交差する交点を終点としたときの前記始点および前記終点の間の距離であるようにしてもよい。
【0020】
本発明に係る密封装置において、前記リップ腰部の肉厚は、当該リップ腰部の円筒面とリップ先端部の第1円錐状面との境界となる交点を始点として、前記リップ腰部の前記円盤面と前記リップ先端部の前記第2円錐状面との交点を終点とした場合の前記始点と前記終点との間の距離であり、前記リップ先端部の肉厚は、当該リップ先端部の前記第1円錐状面と前記接触面との交点と、前記リップ先端部の前記接触面と前記第2円錐状面との交点との間の距離であるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、自動変速機の作動性を低下させることなく、リップの耐圧性を向上させた密封装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施の形態に係る密封装置が変速機のハウジングに装着された状態を示す軸線に沿う断面における部分断面図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る密封装置のピストンシールのピストンリップにおけるリップ腰部の肉厚とリップ先端部の肉厚との比率の説明に供する軸線に沿う断面における断面図である。
【
図3】他の実施の形態に係る密封装置のピストンシールのピストンリップにおけるリップ腰部の肉厚とリップ先端部の肉厚との比率の説明に供する軸線に沿う断面における断面図である。
【
図4】従来のリップ腰部およびリップ先端部の肉厚を太くして剛性を上げる場合の説明に供する拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
<実施の形態>
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。ここでは、説明の便宜上、
図1乃至
図3において、密封装置1の径方向を矢印ab方向とする。外周側とは、密封装置1の外周側すなわち矢印a方向とし、内周側とは、密封装置1の内周側すなわち矢印b方向とする。また、筐体側とは、密封装置1の径方向(矢印ab方向)とは直交する矢印c方向とする。多板クラッチ側とは、密封装置1の径方向(矢印ab方向)とは直交する矢印d方向とする。なお、軸線xは、駆動軸(図示せず)やハウジング2の回転中心である。
【0024】
図1に示すように、密封装置1は、自動変速機に用いられるものであり、全体として円環状に形成され、ハウジング2の内部に装着されている。密封装置1は、ピストンシール3、キャンセラシール4、および、リターンスプリング6を備えている。なお、密封装置1がハウジング2に装着された状態で所定の機能を発揮するためには、スナップリング5を用いてキャンセラシール4およびリターンスプリング6がハウジング2に取り付けられる必要がある。
【0025】
ピストンシール3は、ハウジング2の軸線xを中心とする環状の金属材からなる環状部材であり、ハウジング2に装着された状態で当該ハウジング2の回転と共に連れ回るものである。ピストンシール3の金属材としては、ステンレス鋼やSPCC(冷間圧延鋼)等があり、主にSPFH(熱間圧延鋼)、SAPH(熱間圧延鋼)である。ピストンシール3は、例えば、プレス加工や鍛造により製造される。
【0026】
ピストンシール3は、軸線xに沿って延び当該軸線xを中心とする板状の環状の部分である内周側円筒部31と、内周側円筒部31の筐体側(矢印c方向)の端部から外周側(矢印a方向)に向かって延びる軸線xを中心とする板状の環状の部分である内周側フランジ部32と、内周側フランジ部32の外周側(矢印a方向)の端部から多板クラッチ側(矢印d方向)に向かって延びる軸線xを中心とする板状の環状の部分である外周側円筒部33と、外周側円筒部33の多板クラッチ側(矢印d方向)の端部から外周側(矢印a方向)に向かって延びる軸線xを中心とする板状の環状の部分である外周側フランジ部34とを備えている。
【0027】
外周側フランジ部34は、ピストンシール3全体の軸線xに沿った動きに応じて、多層構造の多板クラッチ8を多板クラッチ側(矢印d方向)に向かって押圧する部分、または、多板クラッチ8から離れる部分であり、多板クラッチ8の締結または解放を行う。
【0028】
ピストンシール3の内周側円筒部31は、その多板クラッチ側(矢印d方向)の端部から内周側(矢印b方向)に向かって延びる軸線xを中心とする板状の環状の部分である内周側突部31aを有し、その内周側突部31aの内周側(矢印b方向)の先端部分に内周側ピストンリップ35が加硫接着されている。
【0029】
内周側ピストンリップ35は、内周側円筒部31の内周側突部31aにおいて、その先端部がハウジング2の内周面2aと摺接するように内周側(矢印b方向)かつ筐体側(矢印c方向)に向かって延在している。すなわち、密封装置1のハウジング2に対する装着時、内周側ピストンリップ35の先端部がハウジング2の内周面2aに対して軸線x方向に沿って摺動するように当接される。
【0030】
ピストンシール3における内周側フランジ部32の外周側(矢印a方向)の端部であり、かつ、外周側円筒部33の筐体側(矢印c方向)の端部には、外周側ピストンリップ39が加硫接着されている。
【0031】
外周側ピストンリップ39は、内周側フランジ部32の外周側(矢印a方向)の端部および外周側円筒部33の筐体側(矢印c方向)の端部を外周側(矢印a方向)および筐体側(矢印c方向)から覆い、かつ、その先端部がハウジング2の内周面2aと軸線xに沿って摺接するように外周側(矢印a方向)かつ筐体側(矢印c方向)へ向かって延在している。すなわち、密封装置1のハウジング2に対する装着時、外周側ピストンリップ39の先端部がハウジング2の内周面2aに対して軸線x方向に沿って摺動するように当接される。
【0032】
内周側ピストンリップ35および外周側ピストンリップ39は、弾性体であり、例えば、各種のゴム状弾性部材により構成されている。ゴム状弾性部材としては、例えば、二トリルゴム(NBR)、水素添加ニトリルゴム(H-NBR)、アクリルゴム(ACM)、フッ素ゴム(FKM)、シリコンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)等の合成ゴムが用いられる。
【0033】
ピストンシール3は、ハウジング2の内部に装着された状態において、当該ピストンシール3の筐体側(矢印c方向)の上面とハウジング2の内周面2aとの間にピストン油圧室38が形成されている。ピストン油圧室38は、ハウジング2に形成されたポート2bと連通されている。
【0034】
ピストンシール3を軸線xに沿って移動させるためのATF(Automatic Transmission Fluid)等からなる作動油は、このポート2bを介してピストン油圧室38へ供給される。すなわち、ピストンシール3は、ポート2bを介してピストン油圧室38に供給される作動油の油圧に応じて、ハウジング2の内周面2aを軸線xに沿って当該ハウジング2と相対移動する移動部材である。
【0035】
キャンセラシール4は、ハウジング2の所定回転数以上の高速回転時に、ピストンシール3の内周側フランジ部32の外周側(矢印a方向)寄りの部分にかかる油圧(以下、これを「遠心油圧」ともいう。)をキャンセルするものである。キャンセラシール4は、ピストンシール3と対向配置された断面略S字状の金属環であり、ハウジング2に対してスナップリング5を介して固定されている。
【0036】
キャンセラシール4は、ピストンシール3の外周側円筒部33の内周面33aと軸線xに沿って密封摺動する弾性体からなる環状のキャンセラリップ44を有している。キャンセラシール4の金属材としては、ステンレス鋼やSPCC(冷間圧延鋼)等があり、主にSPFH(熱間圧延鋼)、SAPH(熱間圧延鋼)である。キャンセラシール4は、ピストシール3と同様に、例えば、プレス加工や鍛造により製造される。
【0037】
キャンセラシール4は、軸線xとは直交する径方向(矢印ab方向)の外周側(矢印a方向)に向かって延び当該軸線xを中心とする板状の環状の部分である内周側フランジ部41と、内周側フランジ部41の外周側(矢印a方向)の端部から軸線xに沿って筐体側(矢印c方向)へ延び、当該軸線xを中心とする板状の環状の部分である円筒部42と、円筒部42の筐体側(矢印c方向)の端部から外周側(矢印a方向)に向かって延び当該軸線xを中心とする板状の環状の部分である外周側フランジ部43とを備えている。
【0038】
キャンセラシール4の内周側フランジ部41における内周側(矢印b方向)の端部は、スナップリング5に固定されている。スナップリング5は、ハウジング2の内周面2aに固定されている。すなわち、キャンセラシール4は、スナップリング5を介してハウジング2に固定された固定部材であるが、ハウジング2に固定された状態で当該ハウジング2の回転と共に連れ回るものである。
【0039】
キャンセラシール4の外周側フランジ部43の外周側(矢印a方向)の端部には、ピストンシール3の軸線xに沿った内周面33aと密封摺動する弾性体からなる環状のキャンセラリップ44が加硫接着されている。キャンセラリップ44は、外周側フランジ部43の外周側(矢印a方向)の端部において、外周側(矢印a方向)かつ筐体側(矢印c方向)へ向かって延在している。すなわち、密封装置1のハウジング2に対する装着時、キャンセラリップ44の先端部がピストンシール3の外周側円筒部33の内周面33aに対して軸線xに沿って密封摺動するように当接される。
【0040】
キャンセラシール4とピストンシール3との間には、キャンセラ油圧室48が形成されている。キャンセラ油圧室48には、作動油が充填されており、ハウジング2の回転時には当該キャンセラ油厚室48に遠心油圧が発生し、ピストン油圧室38に発生する遠心油圧をキャンセルするように作用する。
【0041】
ピストンシール3の内周側フランジ部32とキャンセラシール4の内周側フランジ部41との間には、リターンスプリング6が周方向に等配した状態で介装されている。リターンスプリング6は、例えば金属の圧縮コイルバネ等からなる弾性部材であり、キャンセラシール4からピストンシール3を離間させるように当該ピストンシール3を筐体側(矢印c方向)へ向かって付勢する付勢力を付与する。
【0042】
かくして、ピストンシール3は、ハウジング2の高速回転時であっても、ピストン油圧室38の遠心油圧がキャンセラ油圧室48の遠心油圧によりキャンセルされるので、リターンスプリング6による当該ピストンシール3の軸線xに沿った方向に対する移動動作が阻害されずに済む。これにより、密封装置1は、回転速度依存性が無い状態でピストンシール3をハウジング2の内周面2aに対して円滑に作動させることが可能となる。
【0043】
図2に示すように、内周側ピストンリップ35は、ピストンシール3の内周側円筒部31における内周側突部31aの内周側(矢印b方向)の先端部分に一体に形成されており、リップ腰部36およびリップ先端部37を備えている。ここで、破線で示される部分が従来のピストンリップの形状であり、実線で示される部分が本発明の内周側ピストンリップ35のリップ腰部36およびリップ先端部37の形状を示している。
【0044】
リップ腰部36は、内周側突部31aの先端部分を筐体側(矢印c方向)、内周側(矢印b方向)および多板クラッチ側(矢印d方向)から覆う基端部分である。このリップ腰部36は、リップ先端部37がハウジング2の内周面2aに接触して弾性変形する際の腰部として機能する。
【0045】
リップ先端部37は、リップ腰部36から離れるに連れて次第に先細形状になるように形成され、その先細形状の先端曲面部分37sがハウジング2の内周面2aと摺動する接触部分となる。
【0046】
リップ腰部36は、円筒面36a、上方円盤面36b、下方円盤面36cを有している。リップ腰部36の円筒面36aは、軸線xと平行なハウジング2の内周面2aの部分と対向する環状かつ平坦な面(以下、これを「基準面」ともいう。)である。
【0047】
リップ腰部36の上方円盤面36bは、軸線xとは垂直なハウジング2の内周面2aの部分と対向する平坦な環状かつ円盤状でピストン油圧室38の油圧を受ける面(以下、これを「油圧受面」ともいう。)である。リップ腰部36の下方円盤面36cは、円筒面(基準面)36aの多板クラッチ側(矢印d方向)の端部から外周側(矢印a方向)へ延び、上方円盤面36bと平行かつ平坦な環状の面である。
【0048】
リップ腰部36は、主に、円筒面(基準面)36a、上方円盤面(油圧受面)36b、および、下方円盤面36cにより、ピストンシール3の内周側円筒部31における内周側突部31aの先端部分を覆っている。
【0049】
リップ先端部37は、第1円錐状面37a、第2円錐状面37b、天井面37t、内丸面37y、および、接触面37cを有している。第1円錐状面37aは、リップ腰部36の円筒面(基準面)36aの筐体側(矢印c方向)の端部から内丸面37yを介して内周側(矢印b方向)かつ筐体側(矢印c方向)へ延びるテーパー状の円錐状の面である。内丸面37yは、円筒面(基準面)36aと第1円錐状面37aとを滑らかに結ぶ緩やかなカーブ状の面である。
【0050】
リップ先端部37の第2円錐状面37bは、リップ腰部36の油圧受面36bの内周側(矢印b方向)の端部から筐体側(矢印c方向)へ緩やかに傾斜して内周側(矢印b方向)へ延びるテーパー状の円錐状の面である。なお、第2円錐状面37bは、筐体側(矢印c方向)へ僅かに凸状に膨らんだ面であってもよい。天井面37tは、リップ腰部36の上方円盤面36bと同様に、軸線xとは垂直なハウジング2の内周面2aの部分と対向する平坦な環状かつ円盤状でピストン油圧室38の油圧を受ける油圧受面である。
【0051】
リップ先端部37の接触面37cは、第1円錐状面37aの筐体側(矢印c方向)の端部と天井面37tの内周側(矢印b方向)の端部とを結び、ハウジング2の内周面2aに押し当てられて摺動する環状の湾曲面である。
【0052】
リップ腰部36の肉厚tk1は、当該リップ腰部36の円筒面(基準面)36aの延長線とリップ先端部37の第1円錐状面37aの延長線との交点P1を始点として、リップ腰部36の円筒面(基準面)36aの延長線に対して外周側(矢印a方向)へ傾斜した45度の角度の仮想線CL1が第2円錐状面37bと交差する交点P2を終点としたときの始点および終点間の距離で規定される。
【0053】
リップ先端部37の肉厚tk2は、第1円錐状面37aと接触面37cとの交点P3を始点として、仮想線CL1と平行な仮想線CL2が第2円錐状面37bと交差する交点P4を終点としたときの始点および終点間の距離で規定される。
【0054】
このような構成の内周側ピストンリップ35において、リップ腰部36の肉厚tk1とリップ先端部37の肉厚tk2との比率は、tk1:tk2=1:0.5~1:0.7である。この場合、リップ腰部36の肉厚tk1とリップ先端部37の肉厚tk2との比率は、tk1:tk2=1:0.5とすることが好ましい。
【0055】
ここで、リップ腰部36の肉厚tk1およびリップ先端部37の肉厚tk2は、従来のピストンリップ(破線で示す)の太さよりも双方共に太くなっている。ただし、これに限るものではなく、上記の比率であるtk1:tk2=1:0.5が得られれば、リップ先端部37の肉厚tk2については従来のピストンリップの太さと基本的に同じ程度であってもよい。
【0056】
なお、外周側ピストンリップ39についても、内周側ピストンリップ35の向きと逆であるものの同一形状のリップ腰部およびリップ先端部を備えており、そのリップ腰部の肉厚をtk3、リップ先端部の肉厚をtk4としたときの比率についても、同様にtk3:tk4=1:0.5~1:0.7である。
【0057】
ただし、外周側ピストンリップ39については、キャンセラシール4によって遠心油圧を完全にキャンセルできていない場合にリップ抵抗が増大して自動変速機の作動性が低下してしまうことを考慮し、リップ腰部の肉厚tk3とリップ先端部の肉厚tk4との比率を、例えばtk3:tk4=1:0.7としてリップ抵抗の増大を抑えつつリップ剛性を上げるようにする。
【0058】
さらに、キャンセラシール4のキャンセラリップ44についても、内周側ピストンリップ35と同一形状のリップ腰部およびリップ先端部を備えており、そのリップ腰部の肉厚をtk5、リップ先端部の肉厚をtk6としたときの比率についても、同様にtk5:tk6=1:0.5~1:0.7である。
【0059】
この場合も、キャンセラリップ44については、キャンセラシール4によって遠心油圧を完全にキャンセルできていない場合にリップ抵抗が増大して自動変速機の作動性が低下してしまうことを考慮し、リップ腰部の肉厚tk5とリップ先端部の肉厚tk6との比率を、例えばtk5:tk6=1:0.7としてリップ抵抗の増大を抑えつつリップ剛性を上げるようにする。
【0060】
以上の構成において、密封装置1において、ピストンシール3が装着されるハウジング2の内周面2aと、当該ピストンシール3との間にはピストン油圧室38が形成されており、このピストン油圧室38にハウジング2のポート2bから作動油が供給される。
【0061】
このとき、駆動軸と一体に回転するハウジング2の高速回転時には、ピストン油圧室38に遠心油圧が発生するが、ピストンシール3とキャンセラシール4との間のキャンセラ油圧室48には、ハウジング2の高速回転時に、ピストン油圧室38と同じ遠心油圧が発生する。
【0062】
これにより、ハウジング2の高速回転時において、ピストン油圧室38に発生する遠心油圧を、キャンセラ油圧室48に発生する遠心油圧でキャンセルすることができる。このため、密封装置1は、ハウジング2の回転速度依存性が無くなり、ピストンシール3の応答性が向上する。
【0063】
ピストンシール3の内周側ピストンリップ35においては、リップ先端部37およびリップ腰部36の双方ともに従来よりも太くしたものの、リップ腰部36の肉厚tk1とリップ先端部37の肉厚tk2との比率tk1:tk2=1:0.7~1:0.5とした。これにより、従来に比して内周側ピストンリップ35のリップ抵抗の増大を抑えつつリップ剛性を上げることができる。
【0064】
同様に、ピストンシール3の外周側ピストンリップ39、および、キャンセラシール4のキャンセラリップ44においても、リップ先端部およびリップ腰部の双方を従来よりも太くしたものの、tk3:tk4=1:0.7、tk5:tk6=1:0.5~1:0.7としたことにより、外周側ピストンリップ39、キャンセラリップ44のリップ抵抗の増大を抑えつつリップ剛性を上げることができる。
【0065】
かくして、ピストンシール3の内周側ピストンリップ35、外周側ピストンリップ39およびキャンセラシール4のキャンセラリップ44の何れにおいても、リップ抵抗を増大させることなくリップ剛性を上げることができるので、自動変速機の作動性を低下させることなく、リップの耐圧性を向上させることができる。
【0066】
特に、密封装置1では、ピストンシール3の内周側ピストンリップ35におけるピストン腰部36の肉厚tk1とリップ先端部37の肉厚保tk2との比率をtk1:tk2=1:0.5とする一方、外周側ピストンリップ39およびキャンセラシール4のキャンセラリップ44における比率をtk3:tk4=1:0.7、比率tk5:tk6=1:0.7とした。
【0067】
これにより、キャンセラシール4により遠心油圧を完全にキャンセルできていない場合でも、外周側ピストンリップ39およびキャンセラリップ44のリップ腰部およびリップ先端部によるリップ抵抗を内周側ピストンリップ35よりも小さく抑制できるので、自動変速機の作動性を低下させることなく、リップの耐圧性を向上させることができる。
【0068】
<他の実施の形態>
なお、上述した実施の形態においては、リップ腰部36の肉厚tk1を、円筒面(基準面)36aとリップ先端部37の第1円錐状面37aとの境界となる交点P1を始点として仮想線CL1が第2円錐状面37bと交差する交点P2を終点としたときの始点および終点間の距離として規定するようにした場合について述べた。
【0069】
しかしながら、本発明はこれに限らず、
図3に示すように、リップ腰部36の円筒面(基準面)36aの延長線とリップ先端部37の第1円錐状面37aの延長線との交点P1と、リップ腰部36の円盤面36bの延長線とリップ先端部37の第2円錐状面37bの延長線との交点Q1との間の距離をリップ腰部36の肉厚tk1として規定してもよい。
【0070】
また、リップ先端部37の第1円錐状面37aと接触面37cとの交点P3を始点として、仮想線CL1と平行な仮想線CL2が第2円錐状面37bと交差する交点P4を終点としたときの始点および終点間の距離をリップ先端部37の肉厚tk2として規定するようにした場合について述べた。
【0071】
しかしながら、本発明はこれに限らず、リップ先端部37の第1円錐状面37aと接触面37cとの交点P3と、リップ先端部37の天井面37tと第2円錐状面37bとの交点Q2との間の距離をリップ先端部37の肉厚tk2として規定してもよい。
【0072】
さらに、上述した実施の形態においては、内周側ピストンリップ35におけるリップ腰部36の肉厚tk1とリップ先端部37の肉厚tk2との比率をtk1:tk2=1:0.5とし、外周側ピストンリップ39におけるリップ腰部の肉厚tk3とリップ先端部の肉厚tk4との比率をtk3:tk4=1:0.7とするようにした場合について述べた。
【0073】
しかしながら、本発明はこれに限らず、要求されるリップ剛性およびリップ抵抗の兼ね合いに応じて、内周側ピストンリップ35における比率をtk1:tk2=1:0.7とする一方、外周側ピストンリップ39における比率をtk3:tk4=1:0.5としたり、或いは、同じ比率にしたり、任意の比率の組み合わせとしてもよい。
【0074】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に係る密封装置1に限定されるものではなく、本発明の概念および特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題および効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。例えば、上記実施の形態における各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的使用態様によって適宜変更され得る。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本願発明の密封装置は、自動車等の車両およびその補機、一般産業機械、建設機械等の汎用機械においてピストンシールを移動させる際の部品点数を削減して簡素化および小型化する場合に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0076】
1 密封装置
2 ハウジング
2a 内周面
2b ポート
3 ピストンシール
4 キャンセラシール
5 スナップリング
6 リターンスプリング(付勢部材)
8 多板クラッチ(クラッチ部材)
31 内周側円筒部
31a 内周側突部
32 内周側フランジ部
33 外周側円筒部
33a 内周面
34 外周側フランジ部
35 内周側ピストンリップ(ピストンリップ)
36 リップ腰部(ピストン側リップ腰部)
36a 円筒面
36b 上方円盤面
36c 下方円盤面
37 リップ先端部(ピストン側リップ先端部)
37a 第1円錐状面
37b 第2円錐状面
37c 接触面
37s 先端曲面部分
38 ピストン油圧室
39 外周側ピストンリップ(ピストンリップ)
41 内周側フランジ部
42 円筒部
43 外周側フランジ部
44 キャンセラリップ
48 キャンセラ油圧室
51 リップ腰部
52 リップ先端部
60 ピストンシール
60a 先端部
tk1~tk6、tk11、tk12 肉厚
CL1、CL2 仮想線
P1~P4、Q1、Q2 交点
x 軸線