(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-13
(45)【発行日】2023-09-22
(54)【発明の名称】反射防止フィルム
(51)【国際特許分類】
G02B 1/11 20150101AFI20230914BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20230914BHJP
G02B 1/111 20150101ALI20230914BHJP
G02B 1/14 20150101ALI20230914BHJP
【FI】
G02B1/11
B32B7/023
G02B1/111
G02B1/14
(21)【出願番号】P 2017197192
(22)【出願日】2017-10-10
【審査請求日】2020-09-11
【審判番号】
【審判請求日】2022-08-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【氏名又は名称】迫田 恭子
(74)【代理人】
【識別番号】100122448
【氏名又は名称】福井 賢一
(72)【発明者】
【氏名】吉田 啓史
(72)【発明者】
【氏名】和田 賢三
【合議体】
【審判長】里村 利光
【審判官】杉山 輝和
【審判官】関根 洋之
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-177183(JP,A)
【文献】特開昭49-29658(JP,A)
【文献】特開2014-167621(JP,A)
【文献】国際公開第2013/140811(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 1/10 - 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材フィルムと、前記透明基材フィルムの少なくとも一方に形成された反射防止層とを備える反射防止フィルムであって、
前記反射防止層は、前記透明基材フィルム側から中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層が積層されて構成されており、
前記中屈折率層の膜厚は85nm~150nmであり、かつ、屈折率は1.55~1.60であり、
前記高屈折率層の膜厚は20nm~55nmであり、かつ、屈折率は1.65~1.75であり、
前記低屈折率層の膜厚は60nm~150nmであり、かつ、屈折率は1.30~1.50であり、
前記反射防止フィルムの入射角5°の正反射に関する視感度反射率は0.6%以下であり、
入射角5°の正反射に関する波長範囲450nm~750nmにおける反射率(%)の最大値と最小値の差が0.75以下であり、
入射角45°の正反射に関する波長範囲400nm~700nmにおける反射率(%)の最大値と最小値の差が1.5以下であり、
入射角35°~45°の全範囲において、反射色相が、(―1.0≦a*≦1.0、―2.0≦b*≦2.0)であることを特徴とする反射防止フィルム。
【請求項2】
前記低屈折率層は、前記高屈折率層側に設けられる第1低屈折率層及び該第1低屈折率層上に設けられる第2低屈折率層を備えており、
前記第1低屈折率層の膜厚は50nm~100nmであり、かつ、屈折率は1.30~1.40であり、
前記第2低屈折率層の膜厚は10nm~50nmであり、かつ、屈折率は前記第1低屈折率層の屈折率よりも高いことを特徴とする請求項1に記載の反射防止フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射防止フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
反射防止フィルムは、陰極管表示装置(CRT)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、液晶表示装置(LCD)、プロジェクションディスプレイ、エレクトロルミネセンスディスプレイ(ELD)等の様々な表示装置、タッチパネル、光学レンズ、眼鏡レンズ、フォトリソグラフィープロセスにおける反射防止処理、太陽電池パネル表面の反射防止処理等の様々な分野で利用されている。
【0003】
反射防止フィルムとしては、例えば、特許文献1に、可撓性を有する透明なプラスチックフィルムの少なくとも片面に、該プラスチックフィルムよりも光屈析率が小さいフッ素系無機化合物が無機バインダーで固結された焼付け被膜を形成したことを特徴とする反射防止フィルムが開示されている。この特許文献1に開示の反射防止フィルムは、長期間にわたって優れた反射防止効果を維持できるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された反射防止フィルムを、陰極管表示装置(CRT)や液晶表示装置(LCD)といった表示装置のディスプレイ表面に設置した場合において、ディスプレイを斜めから見た場合と正面から見た場合とでは、色度の変化が大きく、視認される色味が視認角度に応じて変化してしまうという問題があった。
【0006】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであって、反射防止フィルムを備えたディスプレイを斜めから見た場合であっても、正面から見た場合と比較して、色度の変化が小さく、視認される色味が視認角度に応じて変化することを効果的に抑制できる反射防止フィルムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
また、本発明の上記目的は、透明基材フィルムと、前記透明基材フィルムの少なくとも一方に形成された反射防止層とを備える反射防止フィルムであって、前記反射防止層は、前記透明基材フィルム側から中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層が積層されて構成されており、前記中屈折率層の膜厚は85nm~150nmであり、かつ、屈折率は1.55~1.60であり、前記高屈折率層の膜厚は20nm~55nmであり、かつ、屈折率は1.65~1.75であり、前記低屈折率層の膜厚は60nm~150nmであり、かつ、屈折率は1.30~1.50であり、前記反射防止フィルムの入射角5°の正反射に関する視感度反射率は0.6%以下であり、入射角5°の正反射に関する波長範囲450nm~750nmにおける反射率(%)の最大値と最小値の差が0.75以下であり、入射角45°の正反射に関する波長範囲400nm~700nmにおける反射率(%)の最大値と最小値の差が1.5以下であり、入射角35°~45°の全範囲において、反射色相が、(―1.0≦a*≦1.0、―2.0≦b*≦2.0)であることを特徴とする反射防止フィルムにより達成される。
【0008】
また、前記低屈折率層は、前記高屈折率層側に設けられる第1低屈折率層及び該第1低屈折率層上に設けられる第2低屈折率層を備えており、前記第1低屈折率層の膜厚は50nm~100nmであり、かつ、屈折率は1.30~1.40であり、前記第2低屈折率層の膜厚は10nm~50nmであり、かつ、屈折率は前記第1低屈折率層の屈折率よりも高いことが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、反射防止フィルムを備えたディスプレイを斜めから見た場合であっても、正面から見た場合と比較して、色度の変化が小さく、視認される色味が視認角度に応じて変化することを効果的に抑制できる反射防止フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る反射防止フィルムの概略構成断面図である。
【
図4】実施例について、各入射角におけるa*及びb*の関係を示すグラフである。
【
図5】比較例について、各入射角におけるa*及びb*の関係を示すグラフである。
【
図6】本発明に係る反射防止フィルムの変形例に関する概略構成断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態に係る反射防止フィルムについて、添付図面を参照して説明する。なお、図面においては、構成の理解を容易ならしめるために部分的に拡大・縮小している。本発明に係る反射防止フィルム1は、陰極管表示装置(CRT)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、液晶表示装置(LCD)、プロジェクションディスプレイ、エレクトロルミネセンスディスプレイ(ELD)等の様々な表示装置、タッチパネル、光学レンズ、眼鏡レンズ、フォトリソグラフィープロセスにおける反射防止処理、太陽電池パネル表面の反射防止処理等の様々な分野で利用されるものであり、
図1の概略構成断面図に示すように、透明基材フィルム2の少なくとも一方面に、中屈折率層3と、高屈折率層4と、低屈折率層5とを備えている。ここで、中屈折率層3、高屈折率層4、低屈折率層5の3層からなる積層体は、反射防止特性を発揮する反射防止層である。なお、本実施形態においては、透明基材フィルム2の一方面側に中屈折率層3、高屈折率層4、低屈折率層5の順に3層の反射防止層を配置する構成であるが、この反射防止層に加えて、透明基材フィルム2の他方面側に、中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層の順に3層の第2の反射防止層を更に配置する構成を採用することもできる。
【0014】
透明基材フィルム2は、フィルム本体21と、第1ハードコート層22と、第2ハードコート層23とを備えて構成されている。フィルム本体21としては、透明有機高分子材料を用いることが好ましい。透明有機高分子材料は、透明性や光の屈折率等の光学特性、さらには耐衝撃性、耐熱性、耐久性などの諸物性を考慮して、有機高分子化合物をフィルムとしたものを用いる事ができる。この有機高分子化合物としては、透明な有機高分子であれば特に限定されないが、優れた反射防止性能をしめすためには透明基板2の透過率は80%以上、さらには86%以上であることが好ましく、ヘイズは、2.0%以下、さらには1.0%以下であることが好ましく、屈折率は1.40~1.70であることが好ましい。なお、有機高分子化合物としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セロファン等のセルロース系、6-ナイロン、6,6-ナイロン等のポリアミド系、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、エチレンビニルアルコール等をあげることができる。特に、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロース、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレートが好ましい。
【0015】
第1ハードコート層22は、フィルム本体21の一方面側に形成されており、第2ハードコート層23は、フィルム本体21の他方面側に形成されている。中屈折率層3は、第2ハードコート層23の上に積層されており、高屈折率層4は、中屈折率層3上に積層されて構成されている。また、低屈折率層5は、高屈折率層4上に積層されて構成されている。
【0016】
透明基材フィルム2におけるフィルム本体21の膜厚は、通常13~400μm程度、好ましくは25~300μm程度である。また、フィルム本体21には、第1ハードコート層22及び第2ハードコート層23との密着力を高めるため及び干渉低減のため、屈折率は、1.40~1.70で、好ましくは1.50~1.65のアンカー層を設けることもできる。フィルム本体21には、各種の添加剤が含有されていてもよい。そのような添加剤として、例えば紫外線吸収剤、帯電防止剤、安定剤、可塑剤、滑剤、難燃剤等が挙げられる。
【0017】
第1ハードコート層22及び第2ハードコート層23は、反射防止フィルム1の表面強度を担保するための層であり、フィルムへの傷防止のために、第1ハードコート層22及び第2ハードコート層23は形成しておくことが好ましい。第1ハードコート層22の屈折率は、1.50~1.70の範囲内のものが好ましい。また、第2ハードコート層23の屈折率は、1.50~1.70の範囲内のものが好ましい。なお、第1ハードコート層22及び第2ハードコート層23の屈折率が、フィルム本体21の屈折率と最適化が図れていない場合、フィルム本体21と第1ハードコート層22(第2ハードコート層23)の屈折率差から生じる干渉により、干渉ムラが顕著に表れたり、反射防止フィルム1の反射特性として色相の設計が難しくなる場合があるため、好ましくない。
【0018】
第1ハードコート層22及び第2ハードコート層23の厚みは、共に、1~50μmが好ましい。ハードコート層の膜厚が1μm未満の場合には、十分な表面強度が得られないため好ましくない。その一方、膜厚が50μmを超える場合には、耐屈曲性の低下等の問題が生じるため好ましくない。
【0019】
また、第1ハードコート層22及び第2ハードコート層23を形成する材料としては、電離放射線硬化型材料や、熱硬化型材料を用いることができる。電離放射線硬化型材料は、例えばアクリル系材料を用いることができる。アクリル系材料としては、多価アルコールのアクリル酸またはメタクリル酸エステルのような単官能、2官能または3官能以上の(メタ)アクリレート化合物、ジイソシアネートと多価アルコール及びアクリル酸またはメタクリル酸のヒドロキシエステル等から合成されるような多官能のウレタン(メタ)アクリレート化合物を使用することができる。またこれらの他にも、電離放射線硬化型材料として、アクリレート系の官能基を有するポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等を使用することができる。なお、本発明において「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」と「メタクリレート」の両方を示している。たとえば、「ウレタン(メタ)アクリレート」は「ウレタンアクリレート」と「ウレタンメタアクリレート」の両方を示している。
【0020】
また、電離放射線硬化型材料は紫外線により硬化されるため、ハードコート層形成用塗液には光重合開始剤を添加する。光重合開始剤としては、紫外線が照射された際にラジカルを発生するものであれば良く、例えば、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類を用いることができる。
【0021】
また、熱硬化性材料としては、例えばオルガノポリシロキサンを用いることができる。オルガノポリシロキサンからなる層は、オルガノシロキサンを出発原料として湿式法に従い加水分解および脱水重縮合によりえられた層であり、シロキサン(Si-O)骨格に基づく三次元網目構造のポリマーネットワークをなすように構成されている。
【0022】
さらに、ハードコート層形成用塗液には、必要に応じて、溶媒や各種添加剤を加えることができる。溶媒としては、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、シクロヘキシルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、n-ヘキサンなどの炭化水素類、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、ジオキサン、ジオキソラン、トリオキサン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトール等のエーテル類、また、メチルイソブチルケトン、メチルブチルケトン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、およびメチルシクロヘキサノン等のケトン類、また蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸n-ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酢酸n-ペンチル、およびγ-プチロラクトン等のエステル類、さらには、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール類の中から塗工適正等を考慮して適宜選択される。また、塗液には添加剤として、表面調整剤、屈折率調整剤、密着性向上剤、硬化剤等を加えることもできる。
【0023】
また、ハードコート層形成用塗液にはその他添加剤を加えても良い。添加剤としては、例えば消泡剤、レベリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、重合禁止剤などが挙げられる。
【0024】
また、第1ハードコート層22及び第2ハードコート層23の硬度としては、それぞれ、鉛筆硬度でH以上であることが実用上好ましいが、フィルム本体21の影響も受けるためこの限りではない。第1ハードコート層22及び第2ハードコート層23は、フィルム本体21に直接接して設けてもよく、フィルム本体21との密着性を向上するための層を介してフィルム本体21の上に設けてもよい。また、第1ハードコート層22及び第2ハードコート層23を形成するにあたっては、表面を平滑にしてもよい。
【0025】
第1ハードコート層22及び第2ハードコート層23の形成方法としては、ウェットコーティング法とされる、ディップコーティング法、スピンコーティング法、フローコーティング法、スプレーコーティング法、ロールコーティング法、グラビアロールコーティング法、エアドクターコーティング法、プレードコーティング法、ワイヤードクターコーティング法、ナイフコーティング法、リバースコーティング法、トランスファロールコーティング法、マイクログラビアコーティング法、キスコーティング法、キャストコーティング法、スロットオリフィスコーティング法、カレンダーコーティング法、ダイコーティング法等を採用することができ、フィルム本体21の面上にハードコート層形成用塗液を塗布することにより形成することができる。特に、第1ハードコート層22及び第2ハードコート層23は、薄く、均一に層を形成する必要性があることから、マイクログラビアコーティング法を用いることが好ましい。また、第1ハードコート層22及び第2ハードコート層23として、厚い層を構成する必要が生じた場合には、ダイコーティング法を用いることが好ましい。
【0026】
なお、本実施形態においては、
図1に示すように、フィルム本体21の両面にそれぞれ第1ハードコート層22及び第2ハードコート層23を形成するように構成しているが、いずれか一方のハードコート層、或いは、両方のハードコート層を省略して透明基材フィルム2を構成してもよい。
【0027】
次に、中屈折率層3について説明する。中屈折率層3は、無機材料を含む層であり、中屈折率層形成塗液を第2ハードコート層23の表面に塗布して、湿式成膜法により形成することができる。なお、このとき中屈折率層単層の膜厚(d1)は、光学シミュレーションにより最適な値になるように設計される。中屈折率層形成塗液としては、バインダマトリックス形成材料に高屈折率微粒子を分散させたものを用いることができる。本発明の中屈折率層3の膜厚(d1)は、光学干渉層としての特性から、85nm~150nmの範囲内にあることが好ましく、105nm~130nmの範囲内にあることがさらに好ましい。また、中屈折率層3の屈折率(n1)は1.55~1.60までの範囲内にあることが望ましい。中屈折率層3の屈折率(n1)は、低屈折率層5の屈折率と、高屈折率層4の屈折率との間の値となるように調整される。
【0028】
中屈折率層形成塗液に分散される高屈折率微粒子としては、例えば、ZrO2、TiO2、Nb2O5、ITO、ATO、Sb2O5、Sb2O3、SnO2、In2O3、ZnO等の高屈折率材料からなる無機微粒子を用いることができる。本発明で使用される高屈折率微粒子の形状は、特に限定されないが、米粒状、球形状、立方体状、紡錘形状または不定形状が好ましい。本発明における無機微粒子は、単独で用いてもよいが、2種類以上を併用して用いることもできる。
【0029】
また、高屈折率微粒子の平均粒子径は、1nm以上かつ100nm以下であることが好ましい。高屈折率微粒子の平均粒子径が100nmを超える場合、レイリー散乱によって光が著しく反射され、中屈折率層3のヘイズ値が高くなってしまい、反射防止フィルム1の透明性が低下するおそれがある。一方、高屈折率微粒子の平均粒子径が1nm未満の場合、粒子の凝集により、中屈折率層3における粒子の不均一性等の問題が生じるおそれがある。
【0030】
また、中屈折率層3を形成するためのバインダマトリックス形成材料としては、紫外線硬化型材料を含む。紫外線硬化型材料としては、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能性モノマー、または単官能性モノマーを含有する紫外線硬化型材料が用いられる。紫外線硬化型材料としては、例えば、第1及び第2ハードコート層22,23に用いられる電離放射線硬化型材料として例示した、単官能または多官能の(メタ)アクリレート化合物であるアクリル系材料を用いることができる。アクリル系材料の中でも、所望する分子量および分子構造を設計することができ、形成される中屈折率層3の物性のバランスを容易にとることが可能である点から、多官能ウレタンアクリレートを好適に用いることができる。ウレタンアクリレートは、多価アルコール、多価イソシアネートおよび水酸基含有アクリレートを反応させることによって得られる。
【0031】
なお、中屈折率層形成用塗液には、必要に応じて、溶媒を加えることができる。溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、シクロヘキシルベンゼン等の芳香族炭化水素類、n-ヘキサン等の炭化水素類、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、ジオキサン、ジオキソラン、トリオキサン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトール等のエーテル類、また、メチルイソブチルケトン、メチルブチルケトン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、およびメチルシクロヘキサノン等のケトン類、また蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸n-ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酢酸n-ペンチル、およびγ-プチロラクトン等のエステル類、さらには、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、水等の中から、塗工適性等を考慮して適宜選択して用いることができる。
【0032】
また、中屈折率層3を形成するためのバインダマトリックス形成材料として紫外線硬化型材料を用い、紫外線を照射することにより中屈折率層3を形成する場合には、中屈折率層形成用塗液に光重合開始剤が加えられる。光重合開始剤としては、紫外線が照射された際にラジカルを発生するものであればよく、具体例としては、アセトフェノン系化合物、ベンゾイン系化合物、ベンゾフェノン系化合物、オキシムエステル系化合物、チオキサンソン系化合物、トリアジン系化合物、ホスフィン系化合物、キノン系化合物、ボレート系化合物、カルバゾール系化合物、イミダゾール系化合物、チタノセン系化合物等が挙げられる。アセトフェノン系化合物としては、4-フェノキシジクロロアセトフェノン、4-t-ブチル-ジクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン等が例示できる。また、ベンゾイン系化合物としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジメチルケタール等が例示できる。ベンゾフェノン系化合物としては、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4-フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルサルファイド等が例示できる。オキシムエステル系化合物としては、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(0-アセチルオキシム)、1,2-オクタジオン-1-[4-(フェニルチオ)-,2-(O-ベンゾイルオキシム)]等が例示できる。チオキサンソン系化合物としては、チオキサンソン、2-クロルチオキサンソン、2-メチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4-ジイソプロピルチオキサンソン等が例示できる。トリアジン系化合物としては、2,4,6-トリクロロ-s-トリアジン、2-フェニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(p-トリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-ピペニル-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2,4-ビス(トリクロロメチル)-6-スチリルs-トリアジン、2-(ナフト-1-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2-(4-メトキシ-ナフト-1-イル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-s-トリアジン、2,4-トリクロロメチル-(ピペロニル)-6-トリアジン、2,4-トリクロロメチル(4’-メトキシスチリル)-6-トリアジン等が例示できる。ホスフィン系化合物としては、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド等が例示できる。また、キノン系化合物としては、9,10-フェナンスレンキノン、カンファーキノン、エチルアントラキノン等を例示できる。光重合開始剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
また、中屈折率層形成用塗液にはその他添加剤を加えてもよい。添加剤としては、例えば消泡剤、レベリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、重合禁止剤、光増感剤等が挙げられる。
【0034】
中屈折率層3を形成する方法としては、中屈折率層形成用塗液を第2ハードコート層23の表面に塗布して中屈折率層3を形成する湿式成膜法による方法と、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法といった真空中で中屈折率層3を形成する真空成膜法による方法とに分けられるが、特に限定されるものではない。しかしながら、本発明においては、安価に反射防止フィルム1を製造することができるという点から、湿式成膜法を採用することが好ましい。
【0035】
次に、中屈折率層3上に形成される高屈折率層4について説明する。 高屈折率層4は、無機材料を含む層であり、高屈折率層形成塗液を中屈折率層3上の表面に塗布し、湿式成膜法により形成することができる。なお、このとき高屈折率層4単層の膜厚(d2)は、光学シミュレーションにより最適な値になるように設計される。また、高屈折率層4の膜厚(d2)は、光学干渉層としての特性から、20nm~55nmの範囲内にあることが好ましく、30nm~45nmの範囲内にあることがさらに好ましい。
【0036】
本発明の高屈折率層4の屈折率(n2)は、反射防止フィルム1の色付きを抑制する観点からは、1.65~1.75の範囲内にあることが特に好ましい。高屈折率層4の屈折率(n2)を調整する手段は、高屈折率微粒子の添加量が支配的である。高屈折率微粒子としては、中屈折率層形成塗液に記載した高屈折率材料を用いることができる。また、高屈折率微粒子は、中屈折率層形成塗液に記載した無機化合物および/または有機化合物での表面処理を行うことができる。
【0037】
高屈折率層4を形成するためのバインダマトリックス形成材料としては、紫外線硬化型材料を含む。紫外線硬化型材料としては、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能性モノマー、または単官能性モノマーを含有する電離放射線硬化型樹脂が用いられる。紫外線硬化型材料としては、中屈折率層3に用いられる紫外線硬化型材料として例示したアクリル系材料を用いることができる。
【0038】
なお、高屈折率層形成用塗液には、必要に応じて、溶媒や各種添加剤を加えることができる。溶媒としては、例えば、中屈折率層3の用いられる溶媒として例示したものを用いることができる。また、添加剤としては、添加剤としては、例えば消泡剤、レベリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、重合禁止剤、光増感剤等が挙げられる。
【0039】
また、高屈折率層4を形成するためのバインダマトリックス形成材料として紫外線硬化型材料を用い、紫外線を照射することにより高屈折率層4を形成する場合には、高屈折率層形成用塗液に光重合開始剤が加えられる。光重合開始剤としては、中屈折率層形成用塗液に加えられる光重合開始剤として例示したものを用いることができる。
【0040】
高屈折率層4を形成する方法としては、高屈折率層形成用塗液を中屈折率層3の表面に塗布し、高屈折率層4を形成する湿式成膜法による方法と、真空蒸着法、スパッタリング法、CVD法といった真空中で高屈折率層4を形成する真空成膜法による方法とに分けられるが、特に限定されるものではない。しかしながら、本発明においては、安価に反射防止フィルム1を製造することができるという点から、湿式成膜法を採用することが好ましい。
【0041】
次に、高屈折率層4上に形成される低屈折率層5について説明する。低屈折率層5は、バインダー樹脂と無機微粒子とを含む硬化層であり、低屈折率層形成塗液を、高屈折率層4の表面に塗布し、湿式成膜法により形成することができる。なお、このとき低屈折率層5単層の膜厚(d3)は、光学シミュレーションにより最適な値になるように設計される。また、低屈折率層5の膜厚(d3)は、光学干渉層としての特性から、60nm~150nmの範囲内にあることが好ましく、90nm~130nmの範囲内にあることがさらに好ましい。
【0042】
本発明の低屈折率層5の屈折率(n3)は、1.30から1.50までの範囲内にあることが望ましく、1.32から1.45であることがさらに望ましい。低屈折率層5の屈折率(n3)は、できるだけ低い方が空気(屈折率=1)の屈折率に近づき低反射率を実現しやすいものの、低屈折率材料(低屈折率微粒子)を低屈折率層形成塗液中に多量に添加する必要があるため、機械強度が低くなり傷がつきやすくなる。一方、低屈折率層5の屈折率(n3)が1.50をこえる場合、空気との屈折率の差が大きくなり、反射率が上昇してしまうため好ましくない。
【0043】
低屈折率層形成塗液に含まれる低屈折率微粒子としては、例えば、LiF、MgF、3NaF・AlFまたはAlF(いずれも、屈折率1.4)、もしくはNa3AlF6(氷晶石、屈折率1.33)等の低屈折率材料からなる微粒子を用いることができる。また、粒子内部に空隙を有するシリカ粒子を好適に用いることができる。粒子内部に空隙を有するシリカ粒子は、空隙の部分を空気の屈折率(約1.0)とすることができるので、非常に低い屈折率を備える低屈折率微粒子とすることができる。具体的には、多孔質シリカ粒子、シェル(殻)構造のシリカ粒子を用いることができる。
【0044】
低屈折率微粒子の平均粒子径は、1nm以上かつ100nm以下であることが好ましい。低屈折率微粒子の平均粒子径が100nmを超える場合、レイリー散乱によって光が著しく反射され、低屈折率層5が白化して反射防止フィルム1の透明性が低下するおそれがある。一方、低屈折率微粒子の平均粒子径が1nm未満の場合、粒子の凝集により、低屈折率層5における粒子の不均一性等の問題が生じるおそれがある。
【0045】
低屈折率層5を形成するためのバインダマトリックス形成材料としては、紫外線硬化型材料や、熱硬化型材料を用いることができ、紫外線硬化型材料としては、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能性モノマー、または単官能性モノマーを含有する電離放射線硬化型樹脂が用いられる。紫外線硬化型材料としては、中屈折率層3に用いられる紫外線硬化型材料として例示したアクリル系材料を用いることができ、熱硬化型材料としては、例えばオルガノポリシロキサンを用いることができる。オルガノポリシロキサンからなる層は、オルガノシロキサンを出発原料として湿式法に従い加水分解および脱水重縮合によりえられた層であり、シロキサン(Si-O)骨格に基づく三次元網目構造のポリマーネットワークをなすように構成されている。
【0046】
なお、低屈折率層5を形成するための低屈折率層形成用塗液には、必要に応じて、溶媒や各種添加剤を加えることができる。溶媒としては、例えば、中屈折率層3に用いられる溶媒として例示したものを用いることができる。また、添加剤としては、例えば消泡剤、レベリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、重合禁止剤、光増感剤等が挙げられる。
【0047】
また、低屈折率層5を形成するためのバインダマトリックス形成材料として紫外線硬化型材料を用い、紫外線を照射することにより低屈折率層5を形成する場合には、低屈折率層形成用塗液に光重合開始剤が加えられる。光重合開始剤としては、中屈折率層形成用塗液に加えられる光重合開始剤として例示したものを用いることができる。
【0048】
低屈折率層5を形成する方法としては、低屈折率層形成用塗液を高屈折率層4の表面に塗布して形成する湿式成膜法による方法を用いることが、安価に反射防止フィルム1を製造することができるという点から好ましい。
【0049】
ここで、必要に応じて、
図1に示すように、低屈折率層5上に滑剤層6を設けるようにして、反射防止フィルム1を構成してもよい。滑剤層6は、低屈折率層5を汚れから保護し、耐擦傷性を向上させるために設けられるものである。この滑剤層6は、フッ素含有シラン化合物を滑剤コート層形成用組成物に含有することが好ましく、フルオロアルキル基またはフルオロアルキルエーテル基を有するシラン化合物溶液をコーティングして作製する。特に、フッ素含有シラン化合物がポリシラザンもしくはアルコキシシランであることが好ましい。なお、滑剤層6の膜厚は、0.1nm~15nmであることが好ましい。更には、1nm~10nmであることが好ましい。
【0050】
また、上述のフルオロアルキル基またはフルオロアルキルエーテル基を有するシラン化合物のなかでも、シラン化合物中のフルオロアルキル基が、Si原子1つに対し、1つ以下の割合でSi原子と結合されており、残りは加水分解性基もしくはシロキサン結合基であるシラン化合物が好ましい。ここでいう加水分解性の基としては、例えばアルコキシ基等の基であり、加水分解によりヒドロキシル基となり、それにより前記シラン化合物は重縮合物を形成する。
【0051】
例えば、上記シラン化合物は水と(必要なら酸触媒の存在下)、副生するアルコールを留去しながら、通常、室温~100℃の範囲で反応させる。これによりアルコキシシランは(部分的に)加水分解し、一部縮合反応が起こり、ヒドロキシル基を有する加水分解物として得ることができる。加水分解、縮合の程度は、反応させる水の量により適宜調節することができるが、本発明においては、滑剤層6に用いるシラン化合物溶液に積極的には水を添加せず、調製後、主として乾燥時に、空気中の水分等により加水分解反応を起こさせるため溶液の固形分濃度を薄く希釈して用いることが好ましい。
【0052】
なお、好ましくは、滑剤層6形成用組成物において、上述のフルオロアルキル基を有するシラン化合物は下記一般式(1)で表され、かつ該シラン化合物の濃度を0.01~5質量%に希釈した溶液として用いることができる。
【0053】
一般式(1) CF3(CF2)m(CH2)n-Si-(ORa)3
ここにおいて、mは1~10の整数、nは0~10の整数、Raは同一もしくは異なるアルキル基を表す。
【0054】
前記一般式(1)で表される化合物中、Raは炭素原子数3つ以下であり炭素と水素のみからなるアルキル基、例えば、メチル、エチル、イソプロピル等の基が好ましい。
【0055】
これら本発明において好ましく用いられるフルオロアルキル基またはフルオロアルキルエーテル基を有するシラン化合物としては、CF3(CH2)2Si(OCH3)3、CF3(CH2)2Si(OC2H5)3、CF3(CH2)2Si(OC3H7)3、CF3(CH2)2Si(OC4H9)3、CF3(CF2)5(CH2)2Si(OCH3)3、CF3(CF2)5(CH2)2Si(OC2H5)3、CF3(CF2)5(CH2)2Si(OC3H7)3、CF3(CF2)7(CH2)2Si(OCH3)3、CF3(CF2)7(CH2)2Si(OC2H5)3、CF3(CF2)7(CH2)2Si(OC3H7)3、CF3(CF2)7(CH2)2Si(OCH3)(OC3H7)2、CF3(CF2)7(CH2)2Si(OCH3)2OC3H7、CF3(CF2)7(CH2)2SiCH3(OCH3)2、CF3(CF2)7(CH2)2SiCH3(OC2H5)2、CF3(CF2)7(CH2)2SiCH3(OC3H7)2、(CF3)2CF(CF2)8(CH2)2Si(OCH3)3、C7F15CONH(CH2)3Si(OC2H5)3、C8F17SO2NH(CH2)3Si(OC2H5)3、C8F17(CH2)2OCONH(CH2)3Si(OCH3)3、CF3(CF2)7(CH2)2Si(CH3)(OCH3)2、CF3(CF2)7(CH2)2Si(CH3)(OC2H5)2、CF3(CF2)7(CH2)2Si(CH3)(OC3H7)2、CF3(CF2)7(CH2)2Si(C2H5)(OCH3)2、CF3(CF2)7(CH2)2Si(C2H5)(OC3H7)2、CF3(CH2)2Si(CH3)(OCH3)2、CF3(CH2)2Si(CH3)(OC2H5)2、CF3(CH2)2Si(CH3)(OC3H7)2、CF3(CF2)5(CH2)2Si(CH3)(OCH3)2、CF3(CF2)5(CH2)2Si(CH3)(OC3H7)2、CF3(CF2)2O(CF2)3(CH2)2Si(OC3H7)、C7F15CH2O(CH2)3Si(OC2H5)3、C8F17SO2O(CH2)3Si(OC2H5)3、C8F17(CH2)2OCHO(CH2)3Si(OCH3)3などがあげられるが、この限りでない。
【0056】
上記フッ素系シラン化合物としては、例えば信越化学工業株式会社製KP801M、ダイキン工業株式会社製オプツールDSX、フロロテクノロジー株式会社製FG5010などがあげられる。
【0057】
以下に実施例を揚げて本発明の具体的な態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0058】
(実施例)
[フィルム本体21]
フィルム本体21として、厚さ188μm、幅300mmのPETフィルム(東レ株式会社製「ルミラー」)を用意する。
【0059】
[第1ハードコート層22の形成]
荒川化学工業株式会社製「オプスター」(屈折率 1.5)をテスター産業株式会社製SA-203 バーコーターROD No.10でフィルム本体21の片面に塗布形成後、80℃2分にて有機溶媒を揮発させた。次に、高圧水銀ランプを用いて紫外線を照射することで約5μmの厚みを有する第1ハードコート層22を形成した。
【0060】
[第2ハードコート層23の形成]
荒川化学工業株式会社製「オプスター」(屈折率 1.5)をテスター産業株式会社製SA-203 バーコーターROD No.10でフィルム本体21の第1ハードコート層22とは反対面に塗布形成後、80℃2分にて有機溶媒を揮発させた。次に、高圧水銀ランプを用いて紫外線を照射することで約5μmの厚みを有する第2ハードコート層23を形成した。
【0061】
[反射防止層における中屈折率層3の形成]
東洋インキ株式会社製「リオデュラス」(屈折率 1.6)をメチルイソブチルケトンを用い濃度を6.0重量%に希釈する。次に、第2ハードコート層23上にこの塗料をオーエスジーシステムプロダクツ株式会社製 D-Bar#2で塗布形成後、80℃2分間有機溶媒を揮発させた。次に、高圧水銀ランプを用いて紫外線を照射することで、125nmの中屈折率層3を形成した。
【0062】
[反射防止層における高屈折率層4の形成]
東洋インキ株式会社製「リオデュラス」(屈折率 1.7)をメチルイソブチルケトンを用い濃度を2.0重量%に希釈する。次に、中屈折率層3上にこの塗料をオーエスジーシステムプロダクツ株式会社製 D-Bar#2で塗布形成後、80℃2分間有機溶媒を揮発させた。次に、高圧水銀ランプを用いて紫外線を照射することで、35nmの高屈折率層4を形成した。
【0063】
[反射防止層における低屈折率層5の形成]
荒川工業株式会社製「オプスター」 (屈折率 1.32)をメチルイソブチルケトンを用い濃度を3.5重量%に希釈する。次に、高屈折率層4の上にこの塗料をオーエスジーシステムプロダクツ株式会社製 D-Bar#2で塗布形成後、80℃2分間有機溶媒を揮発させた。次に、高圧水銀ランプを用いて紫外線を照射することで、115nmの低屈折率層5を形成した。
【0064】
上記の作製工程を得て、第1ハードコート層22/フィルム本体21/第2ハードコート層23/中屈折率層3/高屈折率層4/低屈折率層5からなる実施例に係る反射防止フィルム1を作製した。なお、実施例における反射防止層は、中屈折率層3/高屈折率層4/低屈折率層5からなる三層構造を有する。
【0065】
(比較例)
[フィルム本体21]
フィルム本体21として、厚さ188μm、幅300mmのPETフィルム(東レ株式会社製「ルミラー」)を用意する。
【0066】
[第1ハードコート層22の形成]
荒川化学工業株式会社製「オプスター」(屈折率 1.5)をテスター産業株式会社製SA-203 バーコーターROD No.10でフィルム本体21の片面に塗布形成後、80℃2分にて有機溶媒を揮発させた。次に、高圧水銀ランプを用いて紫外線を照射することで約5μmの厚みを有する第1ハードコート層22を形成した。
【0067】
[第2ハードコート層23の形成]
荒川化学工業株式会社製「オプスター」(屈折率 1.5)をテスター産業株式会社製SA-203 バーコーターROD No.10でフィルム本体21の第1ハードコート層22とは反対面に塗布形成後、80℃2分にて有機溶媒を揮発させた。次に、高圧水銀ランプを用いて紫外線を照射することで約5μmの厚みを有する第2ハードコート層23を形成した。
【0068】
[反射防止層の形成]
荒川工業株式会社製「オプスター」 (屈折率 1.32)をメチルイソブチルケトンを用い濃度を3.5重量%に希釈する。次に、高屈折率層4の上にこの塗料をオーエスジーシステムプロダクツ株式会社製 D-Bar#2で塗布形成後、80℃2分間有機溶媒を揮発させた。次に、高圧水銀ランプを用いて紫外線を照射することで、厚み105nmの単層構成の反射防止層を形成した。
【0069】
上記の作製工程を得て、第1ハードコート層22/フィルム本体21/第2ハードコート層23/反射防止層(単層構成)からなる比較例に係る反射防止フィルムを作製した。
【0070】
[反射率の評価]
実施例と、比較例の反射防止フィルムについて、JIS Z8701に基づき視感度反射率を計算より求めた。視感度反射率は、380nm~780nmの範囲の反射防止層の反射スペクトルから標準の光Cにおける3刺激値(XYZ)を求め、そのYの値が視感度反射率となる。実施例、比較例の各反射防止フィルムについての反射率に関するグラフを
図2及び
図3に示す。ここで、
図2は、実施例に係る反射率に関するグラフであり、横軸を波長(nm)、縦軸を反射率(%)としており、グラフ中、“入射角5°:正反射に関する反射率”及び“入射角45°:正反射に関する反射率”についての結果を併せて表記している。また、
図3は、比較例に係る反射率に関するグラフであり、横軸を波長(nm)、縦軸を反射率(%)としており、グラフ中、“入射角5°:正反射に関する反射率”及び“入射角45°:正反射に関する反射率”についての結果を併せて表記している。また、表1に、実施例及び比較例に関して、視感度反射率(入射角5°:正反射)の値を表示している。また、表1中に、実施例及び比較例に関して、入射角5°:正反射の場合において、波長:450nm~750nmの範囲で射率の最大値と最小値について表示している。更に、表1中に、実施例及び比較例に関して、入射角45°:正反射の場合において、波長:400nm~700nmの範囲での反射率の最大値と最小値について表示している。ここで、入射角とは、反射防止フィルムの表面に入射する光と、反射防止フィルムの表面に対して垂直な仮想ラインとで作られる角度を意味する。
【0071】
【0072】
ここで、表1より、実施例及び比較例に関して、視感度反射率(入射角5°:正反射)の値は、それぞれ0.23%、0.16%であり、共に0.6%以下の値を示すことから、実施例及び比較例に係る反射防止フィルムは、反射防止特性に優れるものであることが分かる。
【0073】
また、表1より、実施例においては、入射角5°の場合の波長:450nm~750nmの範囲での反射率(%)の最大値と最小値との差が0.52であり(0.68-0.16)、入射角45°の場合の波長:400nm~700nmの範囲での反射率(%)の最大値と最小値との差が1.14となっている(1.68-0.46)。
【0074】
一方、比較例においては、入射角5°の場合の波長:450nm~750nmの範囲での反射率(%)の最大値と最小値との差が1.01であり(1.08-0.07)、入射角45°の場合の波長:400nm~700nmの範囲での反射率(%)の最大値と最小値との差が1.83となっている(2.20-0.37)。
【0075】
また、
図3の比較例における反射率に関するグラフに着目すると、波長400nm~800nmの範囲において、入射角5°の場合と入射角45°の場合共に、反射率は、下に凸となる曲線を示すように推移していることが分かる。これに対し、
図4の実施例にける反射率に関するグラフでは、入射角5°の場合は、波長450nm~700nmの範囲において、略フラットに反射率が推移し、入射角45°の場合には、波長400nm~600nmの範囲において、略フラットに反射率が推移していることが分かる。つまり、実施例に係る反射防止フィルムは、少なくとも波長450nm~600nmの範囲において、入射角5°の場合と入射角45°の場合とで、各波長における反射率の変化が極めて小さいものになることから、実施例に係る反射防止フィルムは、比較例に係る反射防止フィルムに比べて、視認角度の変化に応じて視認される色味変化が小さく、反射防止フィルムを備えたディスプレイを斜めから見た場合であっても、正面から見た場合と比較して、色度の変化が小さいものであることが分かる。
【0076】
ここで、実施例と比較例との結果から、“入射角5°の正反射に関する波長範囲450nm~750nmにおける反射率(%)の最大値と最小値の差”が、0.75以下の範囲となる場合に、反射防止フィルムを備えたディスプレイを斜めから見た場合であっても、正面から見た場合と比較して、色度の変化が小さくなるという効果を得らえると考えられる。なお、この“0.75”という値は、実施例における入射角5°の場合の波長:450nm~750nmの範囲での反射率(%)の最大値と最小値との差である“0.52”と、比較例における入射角5°の場合の波長:450nm~750nmの範囲での反射率(%)の最大値と最小値との差である“1.01”の算術平均値(0.765)から導いたものである。
【0077】
また、実施例と比較例との結果から、“入射角45°の正反射に関する波長範囲400nm~700nmにおける反射率(%)の最大値と最小値の差”が、1.5以下の範囲となる場合に、反射防止フィルムを備えたディスプレイを斜めから見た場合であっても、正面から見た場合と比較して、色度の変化が小さくなるという効果を得らえると考えられる。なお、この“1.5”という値は、実施例における入射角45°の場合の波長:400nm~700nmの範囲での反射率(%)の最大値と最小値との差である“1.14”と、比較例における入射角45°の場合の波長:400nm~700nmの範囲での反射率(%)の最大値と最小値との差である“1.83”の算術平均値(1.485)から導いたものである。
【0078】
[反射色相の評価]
次に、実施例と、比較例の反射防止フィルムの表面(実施例においては低屈折率層5の表面、比較例においては単層の反射防止層の表面)について、分光光度計(日立製作所製、U-4100)を用い、入射角5°~45°における分光反射率を測定し、得られた分光反射率曲線から反射光の色相を求め、この色相がCIE1976L*a*b*色空間において、-15≦a*≦15、-15≦b*≦15を満たすかどうかを確認した。なお、測定の際には透明支持体であるフィルム本体21のうち低屈折率層5が形成されてない面(比較例においては単層の反射防止層が形成されていない面)に粘着層を介して黒色アクリル板を貼り合せ、反射防止の処置をおこなった。測定結果を表2として以下に示す。また、表2の結果に基づいて、実施例及び比較例のそれぞれに関し、各入射角におけるa*及びb*の関係について、横軸をa*、縦軸b*としてプロットしたグラフを
図4及び
図5に示す。なお、
図4が実施例に関するグラフであり、
図5が比較例に関するグラフである。
【0079】
【0080】
まず、表2の結果から、実施例及び比較例ともに、CIE1976L*a*b*色空間において、各入射角においてみた場合、-15≦a*≦15、-15≦b*≦15を満たすものであることから、反射光に対して色味が付くことが抑制されていると認められる。しかしながら、表2や
図5の比較例におけるa*及びb*に関するグラフに着目すると、比較例に係る反射防止フィルムは、入射角が増加するに従い、a*は略一定の値を示すものの、b*は、-10.27(入射角5°)から6.79(入射角45°)へと大幅に増加しており、視認角度の変化に応じて視認される色味変化が大きいものであることが分かる。これに対し、表2や
図4の実施例におけるa*及びb*に関するグラフでは、入射角が変化しても、a*の値は、-0.69(入射角30°)から1.04(入射角0°)の範囲内に収まる程度の変化を示すものであり、b*の値は、-5.71(入射角0°)から0.16(入射角45°)の範囲内に収まる程度の変化を示すに過ぎず、入射角が変化しても、a*の値、b*の値共に、その変化は小さいものであることが分かる。このことからも、実施例に係る反射防止フィルムは、視認角度の変化に応じて視認される色味変化が小さいものであるということができる。
【0081】
また、
図4及び
図5の実施例及び比較例におけるa*及びb*に関するグラフに注目すると、実施例に係る反射防止フィルムは、比較例に係る反射防止フィルムに比べて、a*及びb*が、原点(a*=0、b*=0)近傍に存在している。このことから、実施例に係る反射防止フィルムは、比較例に係る反射防止フィルムよりも、反射光が色づくことをより一層効果的に抑制できるものであり、優れた反射特性を有することが分かる。
【0082】
このように、実施例に係る反射防止フィルムは、斜めから見た場合であっても、正面から見た場合と比較して、色度の変化が小さく、視認される色味が視認角度に応じて変化することを効果的に防止できるものであり、更に、任意の視認角度において反射光が色づいてしまうことを効果的に防止できるものであることが分かる。
【0083】
また、本発明に係る実施例の反射防止フィルムは、斜めから見た場合(入射角35°~45°の範囲)に、反射光に色づきが発生することを極めて効果的に抑制できることを官能試験(視認検査)において確認された。このことは、実施例に係る反射防止フィルムにおけるa*及びb*共に、0近傍の値を示すことからもわかる。斜めから見た場合の反射光に色づきが発生することを効果的に抑制するためには、入射角35°~45°の範囲において、少なくとも一の入射角についての反射色相が(―3.0≦a*≦3.0、―3.0≦b*≦3.0)であることが好ましい。また、より一層、反射光が色づくことを抑制するためには、入射角35°~45°の範囲において、少なくとも一の入射角についての反射色相が(―1.0≦a*≦1.0、―2.0≦b*≦2.0)となるように設定することが好ましい。また、斜めから見た場合に、より一層、反射光が色づくことを抑制するためには、入射角35°~45°の全範囲において、反射色相が(―3.0≦a*≦3.0、―3.0≦b*≦3.0)となるように設定することが好ましく、更には、(―1.0≦a*≦1.0、―2.0≦b*≦2.0)となるように設定することが好ましい。ここで、斜めから見た場合の反射光に色づきが発生することを効果的に抑制するためには、入射角35°~45°の範囲における反射色相に関し、a*及びb*の絶対値が低い方が好ましい。表2の結果において入射各35°~45°の範囲に着目すると、実施例におけるa*は、略0付近の値を示すのに対し、比較例におけるa*は、略6付近の値を示す。このことから、斜めから見た場合に反射光への色づきを抑制するためには、入射角35°~45°の範囲において、少なくとも一の入射角についての反射色相に関し、a*の絶対値として、“0”と“6”の算術平均値である“3”以下であることが好ましいと考えられ、同様に、実施例におけるb*は、略0付近の値を示すのに対し、比較例におけるb*は、最大6~7付近の値を示すことから、斜めから見た場合に反射光への色づきを抑制するためには、入射角35°~45°の範囲において、少なくとも一の入射角についての反射色相に関し、b*の絶対値として、“0”と“6”の算術平均値である“3”以下であることが好ましいと考えられることから、上記の反射色相(―3.0≦a*≦3.0、―3.0≦b*≦3.0)における数値範囲の各境界値が選定されている。
【0084】
以上、本発明に係る反射防止フィルム1の一実施形態について説明したが、反射防止フィルム1の具体的構成は、上記実施形態に限定されない。例えば、上記低屈折率層5について、
図6の断面図に示すように、第1低屈折率層51及び第2低屈折率層52からなる2層構造として構成することもできる。このような2層構造として低屈折率層5を構成する場合、第1低屈折率層51としては、バインダー樹脂と無機微粒子とを含む硬化層として構成することが好ましく、第1低屈折率層形成塗液を、高屈折率層4の表面に塗布し、湿式成膜法により形成することができる。なお、このとき第1低屈折率層51単層の膜厚(d4)は、光学シミュレーションにより最適な値になるように設計される。また、第1低屈折率層51の膜厚(d4)は、光学干渉層としての特性から、50nm~100nmの範囲内にあることが好ましく、70nm~90nmの範囲内にあることがさらに好ましい。また、第1低屈折率層51の屈折率(n4)は、1.30から1.40までの範囲内にあることが望ましく、1.32から1.38であることがさらに望ましい。第1低屈折率層51の屈折率(n4)は、できるだけ低い方が空気(屈折率=1)の屈折率に近づき低反射率を実現しやすいものの、低屈折率材料(低屈折率微粒子)を低屈折率層形成塗液中に多量に添加する必要があるため、機械強度が低くなり傷がつきやすくなる。一方、第1低屈折率層51の屈折率(n4)が1.40以上の場合、空気との屈折率の差が大きくなり、反射率が上昇してしまうため好ましくない。
【0085】
第1低屈折率層形成塗液に含まれる第1低屈折率微粒子としては、例えば、LiF、MgF、3NaF・AlFまたはAlF(いずれも、屈折率1.4)、もしくはNa3AlF6(氷晶石、屈折率1.33)等の低屈折率材料からなる微粒子を用いることができる。また、粒子内部に空隙を有するシリカ粒子を好適に用いることができる。粒子内部に空隙を有するシリカ粒子は、空隙の部分を空気の屈折率(約1.0)とすることができるので、非常に低い屈折率を備える低屈折率微粒子とすることができる。具体的には、多孔質シリカ粒子、シェル(殻)構造のシリカ粒子を用いることができる。
【0086】
第1低屈折率微粒子の平均粒子径は、1nm以上かつ100nm以下であることが好ましい。第1低屈折率微粒子の平均粒子径が100nmを超える場合、レイリー散乱によって光が著しく反射され、第1低屈折率層51が白化して反射防止フィルム1の透明性が低下するおそれがある。一方、第1低屈折率微粒子の平均粒子径が1nm未満の場合、粒子の凝集により、第1低屈折率層51における粒子の不均一性等の問題が生じるおそれがある。
【0087】
第1低屈折率層51を形成するためのバインダマトリックス形成材料としては、紫外線硬化型材料や、熱硬化型材料を用いることができ、紫外線硬化型材料としては、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能性モノマー、または単官能性モノマーを含有する電離放射線硬化型樹脂が用いられる。紫外線硬化型材料としては、中屈折率層3に用いられる紫外線硬化型材料として例示したアクリル系材料を用いることができ、熱硬化型材料としては、例えばオルガノポリシロキサンを用いることができる。オルガノポリシロキサンからなる層は、オルガノシロキサンを出発原料として湿式法に従い加水分解および脱水重縮合によりえられた層であり、シロキサン(Si-O)骨格に基づく三次元網目構造のポリマーネットワークをなすように構成されている。
【0088】
なお、第1低屈折率層51を形成するための第1低屈折率層形成用塗液には、必要に応じて、溶媒や各種添加剤を加えることができる。溶媒としては、例えば、中屈折率層3に用いられる溶媒として例示したものを用いることができる。また、添加剤としては、例えば消泡剤、レベリング剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、重合禁止剤、光増感剤等が挙げられる。
【0089】
また、第1低屈折率層51を形成するためのバインダマトリックス形成材料として紫外線硬化型材料を用い、紫外線を照射することにより第1低屈折率層51を形成する場合には、第1低屈折率層形成用塗液に光重合開始剤が加えられる。光重合開始剤としては、中屈折率層形成用塗液に加えられる光重合開始剤として例示したものを用いることができる。
【0090】
第1低屈折率層51を形成する方法としては、第1低屈折率層形成用塗液を高屈折率層4の表面に塗布して形成する湿式成膜法による方法を用いることが、安価に反射防止フィルム1を製造することができるという点から好ましい。
【0091】
一方、2層構造として低屈折率層5を構成する場合において形成される第2低屈折率層52は、第1低屈折率層51よりも屈折率が高く、中屈折率層3やフィルム本体21よりも屈折率が低い層である。この第2低屈折率層52は、酸化珪素、フッ化マグネシウム、フッ化リチウムから選ばれる1つまたは複数の材料を主成分とする層であり、乾式法を用いて形成することが好ましい。この乾式法によれば、一般的に、湿式法に比べ、より精密な膜厚制御が可能であり、成膜の密着性、均一性が良い等の利点がある。特に密着性においては、湿式法による場合は、接する他の層の濡れ性に依存する事が多く、他の層の材料によっては十分に密着性が得られない場合もある。しかし、乾式法を用いた場合は、比較的他の層の濡れ性に関わらず高い密着性を得る事が出来る。
【0092】
第2低屈折率層52の材料としては、酸化珪素、フッ化マグネシウム、フッ化リチウム等があげられるが、特に酸化珪素が好ましい。酸化珪素は第1低屈折率層51とも高い密着性を示し、さらに、第2低屈折率層52上の最表面に滑剤層6を設けるが、酸化珪素は、他の材料よりもシランカップリング基を有するフッ素系滑剤を主成分とする滑剤層6と高い密着性を示すので好ましい。第2低屈折率層52を形成する方法としては特に限定されないが、例えば、真空蒸着法、反応性蒸着法、イオンビームアシスト蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、プラズマCVD法などの真空成膜プロセスを用いることができるが、特に密着性の面からスパッタリング法が好ましい。
【0093】
第2低屈折率層52の屈折率(n5)は、1.40から1.50までの範囲内にあることが望ましい。第2低屈折率層52の屈折率(n5)は、できるだけ低い方が空気(屈折率=1)の屈折率に近づき低反射率を実現しやすいものの、第2低屈折率層52としての特性発現に好適な材料の屈折率に制限がある。一方、第2低屈折率層52の屈折率(n5が1.50以上の場合、空気との屈折率の差が大きくなり、反射率が上昇してしまうため好ましくない。
【0094】
第2低屈折率層52の膜厚は、第1屈折率層51の最表面に形成されるため、反射防止性を得られる膜厚であることに加え、耐擦傷性を示す膜厚でなければならない。反射防止性、耐擦傷性を得られる膜厚であれば限定されないが、第2低屈折率層52の膜厚は、10nm~50nmであることが好ましく、20nm~40nmの範囲内にあることがさらに好ましい。なお、低屈折率層5を第1低屈折率層51及び第2低屈折率層52からなる二層構造を採用する場合、第1低屈折率層52、高屈折率層4、第2低屈折率層51、中屈折率層3の順に膜厚が大きくなるように形成されることが好ましい。
【0095】
ここで、上述のように、低屈折率層5を第1低屈折率層51及び第2低屈折率層52からなる2層構造として構成する場合、反射防止フィルム1は、中屈折率層3、高屈折率層4、第1低屈折率層51が湿式法によって形成されると共に、第2低屈折率層52が乾式法によって形成されるため、生産性を向上させることが可能であり、また、製造コストを低減させることが可能となる。また、中屈折率層3、高屈折率層4、第1低屈折率層51、第2低屈折率層52をこの順で積層して構成される光学調整層の表面に滑剤層7を積層して反射防止フィルム1を構成するため、極めて優れた反射防止特性を発揮する上、更に、高い耐擦傷性を発揮することが可能となる。
【符号の説明】
【0096】
1 反射防止フィルム
2 透明基材フィルム
21 フィルム本体
22 第1ハードコート層
23 第2ハードコート層
3 中屈折率層
4 高屈折率層
5 低屈折率層
51 第1低屈折率層
52 第2低屈折率層
6 滑剤層