(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-09-13
(45)【発行日】2023-09-22
(54)【発明の名称】車両用空気調和装置
(51)【国際特許分類】
B60H 1/22 20060101AFI20230914BHJP
【FI】
B60H1/22 651A
B60H1/22 671
(21)【出願番号】P 2019014285
(22)【出願日】2019-01-30
【審査請求日】2021-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000001845
【氏名又は名称】サンデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石関 徹也
(72)【発明者】
【氏名】重田 めぐみ
(72)【発明者】
【氏名】原口 智規
(72)【発明者】
【氏名】清水 宣伯
【審査官】奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/136447(WO,A1)
【文献】特開2015-186989(JP,A)
【文献】特開2014-225981(JP,A)
【文献】特開2015-123828(JP,A)
【文献】国際公開第2012/114427(WO,A1)
【文献】特開2009-280020(JP,A)
【文献】特開2012-051386(JP,A)
【文献】特開平11-34640(JP,A)
【文献】国際公開第2012/144151(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/114447(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/00-3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機、室内熱交換器、室外熱交換器及び膨張弁を有する冷媒回路を備え、室内熱交換器において車室内に供給する空気と冷媒とを熱交換する車両用空気調和装置であって、
前記室内熱交換器は、車室内に供給する空気を加熱する放熱器であり、
車両に設けられた電動モータが接続され、電動モータから放出される熱を吸収する熱媒体が流通する熱媒体回路と、
冷媒回路を流通する冷媒と熱媒体回路を流通する熱媒体とを熱交換することによって、熱媒体を放熱させて冷媒に吸熱させる熱媒体熱交換器と、
熱媒体回路を流通する熱媒体と車室内に供給する空気とを熱交換することによって、熱媒体を放熱させて空気を加熱する熱媒体放熱器と、を備え、
熱媒体回路には、熱媒体熱交換器と熱媒体放熱器とが互いに並列に接続され、
熱媒体回路は、電動モータから放出される熱を吸収した熱媒体が流通する流路を、熱媒体熱交換器側または熱媒体放熱器側に切り替える流路切替部を有している
車両用空気調和装置。
【請求項2】
熱媒体回路には、熱媒体から車室外の空気に熱を排出するラジエータが接続されている
請求項1に記載の車両用空気調和装置。
【請求項3】
熱媒体回路には、電動モータに電力を供給するバッテリが接続されている
請求項2に記載の車両用空気調和装置。
【請求項4】
バッテリは、電動モータと熱媒体熱交換器との間に設けられ、
流路切替部は、電動モータから放出される熱を吸収した熱媒体が、熱媒体放熱器、熱媒体熱交換器、又はラジエータのいずれかに流れるように切り替え可能であると共に、熱媒体がバッテリへ流れるか否かを切替え可能である
請求項3に記載の車両用空気調和装置。
【請求項5】
電動モータは、発熱量の調整が可能である
請求項1乃至4のいずれかに記載の車両用空気調和装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、電気自動車やハイブリッド車等、走行用の電動モータを備えた車両に適用される車両用空気調和装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の車両用空気調和装置では、圧縮機、室内熱交換器、室外熱交換器及び膨張弁を有する冷媒回路を備え、室内熱交換器において冷媒と熱交換した空気を車室内に供給することによって車室内の冷房、暖房、除湿等を行っている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記車両用空気調和装置では、冬期等の車室外の温度が低温となる環境下において、車室内の暖房を行っている場合に、室内熱交換器における冷媒の放熱量が不足し、暖房能力が不足する場合がある。このため、前記車両用空気調和装置では、車室内に供給する空気が流通する空気流通路に電熱ヒータを設け、不足する熱量を電熱ヒータによって補うことによって車室内を目標の温度まで加熱するようになっている。
【0005】
本発明の目的とするところは、車室内に供給する空気を加熱する専用のヒータを必要とすることなく、暖房時における不足する熱量を付加することのできる車両用空気調和装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の車両用空気調和装置は、前記目的を達成するために、圧縮機、室内熱交換器、室外熱交換器及び膨張弁を有する冷媒回路を備え、室内熱交換器において車室内に供給する空気と冷媒とを熱交換する車両用空気調和装置であって、車両に設けられた電動モータが接続され、電動モータから放出される熱を吸収する熱媒体が流通する熱媒体回路と、冷媒回路を流通する冷媒と熱媒体回路を流通する熱媒体とを熱交換することによって、熱媒体を放熱させて冷媒に吸熱させる熱媒体熱交換器と、熱媒体回路を流通する熱媒体と車室内に供給する空気とを熱交換することによって、熱媒体を放熱させて空気を加熱する熱媒体放熱器と、を備え、熱媒体回路には、熱媒体熱交換器と熱媒体放熱器とが互いに並列に接続され、熱媒体回路は、電動モータから放出される熱を吸収した熱媒体が流通する流路を、熱媒体熱交換器側または熱媒体放熱器側に切り替える流路切替部を有している。
【0007】
これにより、電動モータから放出される熱が、冷媒回路を流通する冷媒または車室内に供給する空気に放出されることから、車室内の暖房時に不足する熱量が電動モータから放出される熱によって補填される。
【発明の効果】
【0008】
本発明の車両用空気調和装置によれば、車室内の暖房時に不足する熱量を電動モータから放出される熱によって補填することができるので、車室内に供給する空気を加熱する専用のヒータが不要となり、製造コストの低減を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態を示す車両用空気調和装置の概略構成図である。
【
図2】排熱吸収運転を示す車両用空気調和装置の概略構成図である。
【
図3】排熱吸収・バッテリ加熱運転を示す車両用空気調和装置の概略構成図である。
【
図4】排熱排出・バッテリ冷却運転を示す車両用空気調和装置の概略構成図である。
【
図5】排熱暖房運転を示す車両用空気調和装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1乃至
図5は、本発明の一実施形態を示すものである。
【0011】
本発明の車両用空気調和装置1は、例えば電気自動車やハイブリッド車等、電動モータの駆動力によって走行可能な車両に適用されるものである。
【0012】
車両は、走行用の電動モータMと、電動モータMに電力を供給するための構成機器としての走行用のバッテリBと、を有している。電動モータM及びバッテリBは、使用によって熱を放出するものである。また、バッテリBは、所定の性能を発揮するために、所定の温度帯での使用が要求される。このため、バッテリBは、外気の温度や使用状態に応じて冷却したり加熱したりする必要が生じる場合がある。バッテリBは、例えば10℃~30℃の範囲での使用が望ましい。
【0013】
この車両用空気調和装置1は、
図1に示すように、車両の車室内に設けられる空調ユニット10と、車室内および車室外にわたって設けられる冷媒回路20と、電動モータM及びバッテリBから放出された熱を吸収する熱媒体を流通させるための熱媒体回路30と、を備えている。
【0014】
空調ユニット10は、車室内に供給する空気を流通させるための空気流通路11を有している。空気流通路11の一端側には、車室外の空気を空気流通路11に流入させるための外気吸入口11aと、車室内の空気を空気流通路11に流入させるための内気吸入口11bと、が設けられている。また、空気流通路11の他端側には、空気流通路11を流通した空気を、搭乗者の足元に向かって吹き出させる図示しないフット吹出口、搭乗者の上半身に向かって吹き出させる図示しないベント吹出口、及び、車両のフロントガラスの車室内側の面に向かって吹き出させる図示しないデフ吹出口、が設けられている。
【0015】
空気流通路11の一端側には、外気吸入口11a及び内気吸入口11bの一方を開放して他方を閉鎖することが可能な吸入口切替ダンパ13が設けられている。吸入口切替ダンパ13は、内気吸入口11bを閉鎖して外気吸入口11aを開放する外気供給モードと、外気吸入口11aを閉鎖して内気吸入口11bを開放する内気循環モードと、外気吸入口11aと内気吸入口11bとの間に位置させることで外気吸入口11aと内気吸入口11bとをそれぞれ開放する内外気吸入モードと、を切り替えることが可能である。
【0016】
空気流通路11内の一端側には、空気流通路11の一端側から他端側に向かって空気を流通させるためのシロッコファン等の室内送風機12が設けられている。
【0017】
空気流通路11における室内送風機12の空気流通方向下流側には、空気流通路11を流通する空気を冷却及び除湿するための室内熱交換器としての吸熱器14が設けられている。また、空気流通路11における吸熱器14の空気流通方向下流側には、空気流通路11を流通する空気を加熱するための室内熱交換器としての放熱器15が設けられている。
【0018】
放熱器15は、空気流通路11の直交方向一方側に配置され、空気流通路11の直交方向他方側には、放熱器15を迂回する放熱器バイパス流通路11cが形成される。空気流通路11の直交方向一方側において、吸熱器14と放熱器15と間には、熱媒体回路30を流通する熱媒体と空気とを熱交換するによって車室内に供給する空気を加熱するための熱媒体放熱器16が設けられている。
【0019】
空気流通路11における吸熱器14と熱媒体放熱器16との間には、吸熱器14を通過した空気のうち、放熱器15及び熱媒体放熱器16によって加熱される空気の割合を調整するためのエアミックスダンパ17が設けられている。エアミックスダンパ17は、熱媒体放熱器16及び放熱器バイパス流通路11cの空気流通方向上流側において、放熱器バイパス流通路11c及び熱媒体放熱器16の一方の空気流通方向上流側を閉鎖して他方を開放したり、放熱器バイパス流通路11c及び熱媒体放熱器16の両方を開放し、熱媒体放熱器16の空気流通方向上流側の開度を調整したりする。エアミックスダンパ17は、空気流通路11における熱媒体放熱器16の空気流通方向上流側を閉鎖して放熱器バイパス流通路11cを開放した状態で開度が0%となり、空気流通路11における熱媒体放熱器16の空気流通方向上流側を開放し、放熱器バイパス流通路11cを閉鎖した状態で開度が100%となる。
【0020】
冷媒回路20は、前記吸熱器14、前記放熱器15、冷媒を圧縮するための圧縮機21、冷媒と車室外の空気とを熱交換するための室外熱交換器22、冷媒回路20を流通する冷媒と熱媒体回路30を流通する熱媒体とを熱交換するための熱媒体熱交換器23、全閉と全開との間で弁開度の調整が可能な第1乃至第3膨張弁24a,24b,24c、冷媒の流路を開閉するための第1及び第2電磁弁25a,25b、冷媒の流路における冷媒の流通方向を規制するための第1及び第2逆止弁26a,26b、気体の冷媒と液体の冷媒を分離して液体の冷媒が圧縮機21に吸入されることを防止するためのアキュムレータ27を有し、これらは例えばアルミニウム管や銅管によって接続されている。冷媒回路20を流通する冷媒としては、例えば、R-134a等が用いられる。
【0021】
具体的に説明すると、圧縮機21の冷媒吐出側には、放熱器15の冷媒流入側を接続することにより、冷媒流通路20aが形成されている。放熱器15の冷媒流出側には、室外熱交換器22の冷媒流入側を接続することにより、冷媒流通路20bが形成されている。冷媒流通路20bには、第1膨張弁24aが設けられている。室外熱交換器22の冷媒流出側には、吸熱器14の冷媒流入側を接続することにより、冷媒流通路20cが形成されている。冷媒流通路20cには、室外熱交換器22側から順に、第1逆止弁26a、第2膨張弁24bが設けられている。吸熱器14の冷媒流出側には、圧縮機21の冷媒吸入側を接続することにより、冷媒流通路20dが形成されている。冷媒流通路20dには、吸熱器14側から順に、第2逆止弁26b、アキュムレータ27が設けられている。また、冷媒流通路20bにおける放熱器15と第1膨張弁24aとの間には、室外熱交換器22を迂回し、冷媒流通路20cにおける第1逆止弁26aと第2膨張弁24bとの間を接続することにより、冷媒流通路20eが形成されている。冷媒流通路20eには、第1電磁弁25aが設けられている。冷媒流通路20cにおける室外熱交換器22と第1逆止弁26aとの間には、冷媒流通路20dにおける吸熱器14と第2逆止弁26bとの間を接続することにより、冷媒流通路20fが形成されている。冷媒流通路20fには、第2電磁弁25bが設けられている。さらに、冷媒流通路20cにおける第1逆止弁26aと第2膨張弁24bとの間には、熱媒体熱交換器23の冷媒流入側を接続することにより、冷媒流通路20gが形成されている。冷媒流通路20gには、第3膨張弁24cが設けられている。熱媒体熱交換器23の冷媒流出側には、冷媒流通路20dにおける第2逆止弁26bとアキュムレータ27との間を接続することにより、冷媒流通路20hが形成されている。
【0022】
また、室外熱交換器22は、フィンとチューブとからなる熱交換器であり、エンジンルーム等の車室外において、冷媒と熱交換する空気の流通方向が車両の前後方向に向むくように配置されている。室外熱交換器22の近傍には、車両の停止時に車室外の空気を前後方向に流通させるための室外送風機22aが設けられている。
【0023】
熱媒体回路30は、
図1に示すように、前記熱媒体放熱器16、前記熱媒体熱交換器23、熱媒体を圧送するための第1及び第2熱媒体ポンプ31a,31b、熱媒体回路30を流通する熱媒体と車室外の空気とを熱交換するためのラジエータ32、流路切替部としての第1乃至第4熱媒体三方弁33a,33b,33c,33d、車両走行用のバッテリB、車両走行用の電動モータM、を有し、これらは例えばアルミニウム管や銅管によって接続されている。熱媒体回路30を流通する熱媒体としては、例えば、エチレングリコール等の不凍液が用いられる。
【0024】
具体的に説明すると、第1熱媒体ポンプ31aの熱媒体吐出側には、電動モータMの熱媒体流入側を接続することにより、熱媒体流通路30aが形成されている。電動モータM熱媒体流出側には、第1熱媒体三方弁33aの熱媒体流入口を接続することにより、熱媒体流通路30bが形成されている。第1熱媒体三方弁33aの二つの熱媒体流出口のうちの一方には、第2熱媒体三方弁33bの熱媒体流入口を接続することにより、熱媒体流通路30cが形成されている。第2熱媒体三方弁33bの二つの熱媒体流出口のうちの一方には、熱媒体熱交換器23の熱媒体流入側を接続することにより、熱媒体流通路30dが形成されている。熱媒体熱交換器23の熱媒体流出側には、第3熱媒体三方弁33cの熱媒体流入口を接続することにより熱媒体流通路30eが形成されている。第3熱媒体三方弁33cの二つの熱媒体流出口のうちの一方には、第1熱媒体ポンプ31aの熱媒体吸入側を接続することにより、熱媒体流通路30fが形成されている。また、第1熱媒体三方弁33aの他方の熱媒体流出口には、第4熱媒体三方弁33dの熱媒体流入口を接続することにより、熱媒体流通路30gが形成されている。第4熱媒体三方弁33dの二つの熱媒体流出口のうちの一方には、熱媒体放熱器16の熱媒体流入側を接続することにより、熱媒体流通路30hが形成されている。熱媒体放熱器16の熱媒体流出側には、熱媒体流通路30fを接続することにより、熱媒体流通路30iが形成されている。また、第2熱媒体三方弁33bの他方の熱媒体流出口には、バッテリBの熱媒体流入側を接続することにより、熱媒体流通路30jが形成されている。バッテリBの熱媒体流出側には、熱媒体流通路30dを接続することにより、熱媒体流通路30kが形成されている。また、第3熱媒体三方弁33cの他方の熱媒体流出口には、第2熱媒体ポンプ31bの熱媒体吸入側を接続することにより、熱媒体流通路30lが形成されている。第2熱媒体ポンプ31bの熱媒体吐出側には、熱媒体流通路30cを接続することにより、熱媒体流通路30mが形成されている。また、第4熱媒体三方弁33dの他方の熱媒体流出口には、ラジエータ32の熱媒体流入側を接続することにより、熱媒体流通路30nが形成されている。ラジエータ32の熱媒体流出側には、熱媒体流通路30iを接続することにより、熱媒体流通路30oが形成されている。第1熱媒体三方弁33aは、熱媒体流通路30bが連通する先を熱媒体流通路30c側または熱媒体流通路30g側に切り替える。第2熱媒体三方弁33bは、熱媒体流通路30cが連通する先を熱媒体流通路30d側または熱媒体流通路30j側に切り替える。第3熱媒体三方弁33cは、熱媒体流通路30eが連通する先を熱媒体流通路30f側または熱媒体流通路30l側に切り替える。第4熱媒体三方弁33dは、熱媒体流通路30gが連通する先を熱媒体流通路30h側または熱媒体流通路30n側に切り替える。
【0025】
ラジエータ32は、フィンとチューブとからなる熱交換器であり、室外熱交換器22に対して空気流通方向に隣接した位置に設けられている。
【0026】
電動モータMは、作用する負荷の大きさに応じて発熱量が変化する。電動モータMは、作用する負荷の大きさを変化させることが可能であり、駆動によって発生する発熱量を調整することができるようになっている。
【0027】
以上のように構成された車両用空気調和装置1では、空調ユニット10及び冷媒回路20を用いて車室内の空気の温度及び湿度を調節する。
【0028】
例えば、車室内の温度を低下させる冷房運転では、空調ユニット10において、室内送風機12を駆動させるとともに、エアミックスダンパ17の開度を0%に設定する。また、冷媒回路20において、第1膨張弁24aを全開、第2膨張弁24bを所定の弁開度、第1電磁弁25aを閉鎖、第2電磁弁25bを閉鎖した状態で圧縮機21を駆動させる。
【0029】
これにより、圧縮機21から吐出された冷媒は、
図1の冷媒回路20における実線の矢印で示すように、放熱器15、室外熱交換器22、第2膨張弁24b、吸熱器14の順に流通して圧縮機21に吸入される。
【0030】
冷媒回路20を流通する冷媒は、エアミックスダンパ17の開度が0%であるため放熱器15において放熱することなく、室外熱交換器22において放熱し、吸熱器14において吸熱する。
【0031】
空気流通路11を流通する空気は、吸熱器14において吸熱する冷媒と熱交換することによって冷却されて車室内に吹き出される。
【0032】
また、例えば、車室内の温度及び湿度を低下させる除湿冷房運転では、冷房運転時における冷媒回路20の冷媒の流路において、空調ユニット10のエアミックスダンパ17の開度を0%よりも大きい開度に設定する。
【0033】
これにより、冷媒回路20を流通する冷媒は、放熱器15及び室外熱交換器22において放熱し、吸熱器14において吸熱する。
【0034】
空気流通路11を流通する空気は、吸熱器14において吸熱する冷媒と熱交換することによって除湿されるとともに冷却され、放熱器15において目標吹出温度まで加熱されて車室内に吹き出される。
【0035】
また、例えば、車室内の温度を上昇させる暖房運転では、空調ユニット10において、室内送風機12を駆動させるとともに、エアミックスダンパ17を0%よりも大きい開度に設定する。また、冷媒回路20において、第1膨張弁24aを全開よりも小さい所定の弁開度、第2膨張弁24bを全閉、第1電磁弁25aを閉鎖、第2電磁弁25bを開放した状態で、圧縮機21を駆動させる。
【0036】
これにより、圧縮機21から吐出された冷媒は、
図1の破線の矢印で示すように、放熱器15、第1膨張弁24a、室外熱交換器22の順に流通して圧縮機21に吸入される。
【0037】
冷媒回路20を流通する冷媒は、放熱器15において放熱し、室外熱交換器22において吸熱する。
【0038】
空調ユニット10の空気流通路11を流通する空気は、吸熱器14において冷媒と熱交換することなく、放熱器15において放熱する冷媒と熱交換することによって加熱されて車室内に吹き出される。
【0039】
また、車両用空気調和装置1では、例えば暖房運転時において車室外の空気が低温の場合に、室外熱交換器22からの吸熱量が不足し、暖房能力が不足する場合がある。そこで、車両用空気調和装置1では、空調ユニット10及び冷媒回路20を用いて車室内の温度及び湿度を調節している状態において、電動モータMから放出される熱を冷媒回路20において吸収するための排熱吸収運転を行う。
【0040】
排熱吸収運転では、冷媒回路20において、第1電磁弁25aを開放、第3膨張弁24cを所定の弁開度とする。また、排熱吸収運転では、熱媒体回路30において、第1熱媒体三方弁33aの流路を熱媒体流通路30c側に連通させ、第2熱媒体三方弁33bの流路を熱媒体流通路30d側に連通させ、第3熱媒体三方弁33cの流路を熱媒体流通路30fに連通させ、第2熱媒体ポンプ31bを停止した状態で、第1熱媒体ポンプ31aを駆動させる。このとき、電動モータMは、必要な熱量を発生するように駆動させる。
【0041】
これにより、冷媒回路20において、放熱器15から流出した冷媒の一部は、
図2に示すように、第3膨張弁24cを通過して減圧され、熱媒体熱交換器23において熱媒体回路30を流通する熱媒体と熱交換することによって吸熱し、アキュムレータ27を通過して圧縮機21に吸入される。
【0042】
また、熱媒体回路30において、第1熱媒体ポンプ31aから吐出された熱媒体は、
図2に示すように、電動モータM、熱媒体熱交換器23の順に流通して第1熱媒体ポンプ31aに吸入される。第1熱媒体ポンプ31aから吐出されて熱媒体回路30を流通する熱媒体は、電動モータMから放出された熱によって加熱され、熱媒体熱交換器23において冷媒と熱交換することによって放熱する。
【0043】
電動モータMは、熱媒体熱交換器23を介して冷媒と熱交換した熱媒体によって冷却される。
【0044】
また、車両用空気調和装置1では、例えば暖房運転時に、電動モータMから放出される熱を冷媒回路20において吸収すると同時に、バッテリBを加熱する排熱吸収・バッテリ加熱運転を行う。
【0045】
排熱吸収・バッテリ加熱運転では、暖房運転を行う冷媒回路20において、第1電磁弁25aを開放、第3膨張弁24cを所定の弁開度とする。また、排熱吸収・バッテリ加熱運転では、熱媒体回路30において、第1熱媒体三方弁33aの流路を熱媒体流通路30c側に連通させ、第2熱媒体三方弁33bの流路を熱媒体流通路30j側に連通させ、第3熱媒体三方弁33cの流路を熱媒体流通路30f側に連通させ、第2熱媒体ポンプ31bを停止した状態で、第1熱媒体ポンプ31aを駆動させる。このとき、電動モータMは、必要な熱量を発生するように駆動させる。
【0046】
これにより、冷媒回路20において、放熱器15から流出した冷媒の一部は、
図3に示すように、第3膨張弁24cを通過して減圧され、熱媒体熱交換器23において熱媒体回路30を流通する熱媒体と熱交換することによって吸熱し、アキュムレータ27を通過して圧縮機21に吸入される。
【0047】
また、熱媒体回路30において、第1熱媒体ポンプ31aから吐出された熱媒体は、
図3に示すように、電動モータM、バッテリB、熱媒体熱交換器23の順に流通して第1熱媒体ポンプ31aに吸入される。第1熱媒体ポンプ31aから吐出されて熱媒体回路30を流通する熱媒体は、電動モータMから放出された熱によって加熱され、バッテリBを加熱することによって放熱するとともに、熱媒体熱交換器23において冷媒と熱交換することによって放熱する。
【0048】
電動モータMは、熱媒体熱交換器23を介して冷媒と熱交換した熱媒体によって冷却される。
【0049】
また、車両用空気調和装置1では、例えば冷房運転時に、電動モータMから放出される熱を車室外に排出するとともに、バッテリBを冷却する排熱排出・バッテリ冷却運転を行う。
【0050】
排熱排出・バッテリ冷却運転では、冷房運転を行う冷媒回路20において、第3膨張弁24cを所定の弁開度とする。また、排熱排出・バッテリ冷却運転では、熱媒体回路30において、第1熱媒体三方弁33aの流路を熱媒体流通路30g側に連通させ、第2熱媒体三方弁33bの流路を熱媒体流通路30j側に連通させ、第3熱媒体三方弁33cの流路を熱媒体流通路30l側に連通させ、第4熱媒体三方弁33dの流路を熱媒体流通路30n側に連通させ、第1及び第2熱媒体ポンプ31a,31bを駆動させる。
【0051】
これにより、冷媒回路20において、放熱器15から流出した冷媒の一部は、
図4に示すように、第3膨張弁24cを通過して減圧され、熱媒体熱交換器23において熱媒体回路30を流通する熱媒体と熱交換することによって吸熱し、アキュムレータ27を通過して圧縮機21に吸入される。
【0052】
また、熱媒体回路30において、第1熱媒体ポンプ31aから吐出された熱媒体は、
図4に示すように、電動モータM、ラジエータ32の順に流通して第1熱媒体ポンプ31aに吸入される。第1熱媒体ポンプ31aから吐出されて熱媒体回路30を流通する熱媒体は、電動モータMから放出された熱によって加熱され、ラジエータ32において車室外の空気と熱交換することによって放熱する。
【0053】
また、熱媒体回路30において、第2熱媒体ポンプ31bから吐出された熱媒体は、
図4に示すように、バッテリB、熱媒体熱交換器23の順に流通して第2熱媒体ポンプ31bに吸入される。第2熱媒体ポンプ31bから吐出されて熱媒体回路30を流通する熱媒体は、バッテリBを冷却することによって吸熱するとともに、熱媒体熱交換器23において冷媒と熱交換することによって放熱する。
【0054】
電動モータMは、ラジエータ32を介して車室外の空気と熱交換した熱媒体によって冷却される。
【0055】
バッテリBは、熱媒体熱交換器23において放熱した熱媒体によって冷却される。
【0056】
さらに、車両用空気調和装置1では、例えば、暖房能力が不足する場合や、故障等によって圧縮機の駆動が停止している状態で、電動モータMから放出される熱を利用して車室内に供給する空気を加熱する排熱暖房運転を行う。
【0057】
排熱暖房運転では、空調ユニット10において室内送風機12を駆動させるとともに、エアミックスダンパ17を0%よりも大きい開度に設定する。また、冷媒回路20では、暖房運転を行っていてもよいし、圧縮機21を停止していてもよい。さらに、熱媒体回路30では、第1熱媒体三方弁33aの流路を熱媒体流通路30g側に連通させ、第4熱媒体三方弁33dの流路を熱媒体流通路30h側に連通させ、第2熱媒体ポンプ31bを停止した状態で、第1熱媒体ポンプ31aを駆動させる。このとき、電動モータMは、必要な熱量を発生するように駆動させる。
【0058】
これにより、熱媒体回路30において、第1熱媒体ポンプ31aから吐出された熱媒体は、
図5に示すように、電動モータM、熱媒体放熱器16の順に流通して第1熱媒体ポンプ31aに吸入される。第1熱媒体ポンプ31aから吐出されて熱媒体回路30を流通する熱媒体は、電動モータMから放出された熱によって加熱され、熱媒体放熱器16において空気流通路11を流通する空気と熱交換することによって放熱する。
【0059】
また、空調ユニット10において、空気流通路11を流通する空気は、熱媒体放熱器16において熱媒体と熱交換することによって加熱されて車室内に供給される。
【0060】
電動モータMは、熱媒体放熱器16を介して車室内に供給する空気と熱交換した熱媒体によって冷却される。
【0061】
このように、本実施形態の車両用空気調和装置によれば、熱媒体回路30には、熱媒体熱交換器23と熱媒体放熱器16とが互いに並列に接続され、熱媒体回路30は、電動モータMから放出される熱を吸収した熱媒体が流通する流路が、熱媒体熱交換器23側または熱媒体放熱器16側に切り替えられる。
【0062】
これにより、車室内の暖房時に不足する熱量を電動モータMから放出される熱によって補填することができるので、車室内に供給する空気を加熱する専用のヒータが不要となり、製造コストの低減を図ることが可能となる。
【0063】
また、熱媒体回路30には、熱媒体から車室外の空気に熱を排出するラジエータ32が接続されている。
【0064】
これにより、電動モータMから放出される熱を必要としない場合に、電動モータMから放出される熱をラジエータ32から車室外の空気に排出することができるので、電動モータMの熱による不具合の発生を防止することが可能となる。
【0065】
また、熱媒体回路30には、電動モータMに電力を供給するバッテリBが接続されている。
【0066】
これにより、バッテリBから放出される熱を冷媒回路20に吸収させたり、バッテリBを電動モータMから放出される熱によって加熱したりすることが可能となり、1つの熱媒体回路30によって複数の機器の温度を調整することが可能となる。
【0067】
また、熱媒体回路30は、電動モータMから放出される熱をラジエータ32から車室外に排出する熱媒体の流路とともに、バッテリBから放出される熱を熱媒体熱交換器23において冷媒回路20を流通する冷媒に放出する熱媒体の流路が設定可能である。
【0068】
これにより、電動モータM及びバッテリBを同時に放熱させて冷却することが可能となるので、夏期等の外気が高温の環境下において電動モータM及びバッテリBの熱による不具合の発生を防止することが可能である。
【0069】
また、電動モータMは、発熱量の調整が可能である。
【0070】
これにより、車室内の暖房で不足する熱量や冷媒回路20における必要な吸熱量に応じて電動モータMの発熱量を調整することによって、車室内を温度を確実に設定温度に調整することが可能となる。
【0071】
尚、前記実施形態では、温度の調節が必要な機器としてバッテリBを熱媒体回路30に接続したものを示したが、これに限られるものではない。温度の調節が必要な車両の構成機器としては、例えば、コンバータ等の電源装置や電子部品等を熱媒体回路30に接続してもよい。
【0072】
また、前記実施形態では、熱媒体回路30を流通する熱媒体として、不凍液を用いたものを示したが、これに限られるものではない。熱媒体熱交換器23において空気と熱交換可能であれば、例えば、水や油等を熱媒体として用いることも可能である。
【0073】
また、前記実施形態では、空気流通路11において、熱媒体放熱器16を放熱器15の空気流通方向上流側に配置したものを示したが、これに限られるものではない。空気流通路11を流通する空気を加熱することができれば、放熱器15の空気流通方向下流側に熱媒体放熱器16を配置してもよい。
【0074】
また、前記実施形態では、排熱暖房運転時に、熱媒体熱交換器23における冷媒の吸熱を行わないものを示したが、これに限られるものではない。排熱暖房運転時においても、第2熱媒体ポンプ31bを駆動してバッテリBから放出される熱を熱媒体熱交換器23において冷媒に吸収させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0075】
1…車両用空気調和装置、16…熱媒体放熱器、20…冷媒回路、21…圧縮機、22…室外熱交換器、23…熱媒体熱交換器、24a…第1膨張弁、24b…第2膨張弁、30…熱媒体回路、32…ラジエータ、33a…第1熱媒体三方弁、33b…第2熱媒体三方弁、33c…第3熱媒体三方弁、33d…第4熱媒体三方弁、B…バッテリ、M…電動モータ。